2025年09月29日号
【もくじ】―――――――――――――――――――
テレビを視聴しただけなのに~STBが証券口座乗っ取りに悪用
証券口座乗っ取り事件で、口座への不正アクセスに一般家庭のテレビ用受信機が「踏み台」となった疑いがある。「セットトップボックス(STB)」と呼ばれるIoT機器は、テレビに接続するとネットを通じて動画などを視聴できるものだが、そこにマルウエアが仕込まれ、犯罪集団は海外からのアクセスを日本国内の通信のように偽装可能となる。被害口座へのアクセス記録の中には、中国を発信元とする形跡が確認されているが、その手口の分析から複数の犯罪グループの関与も判明している。これまで海外の犯罪グループによる日本の証券口座を狙った攻撃は少なかったが、対策の遅れが露見したことで相次いで標的にされているということだろう。身近なIoT機器の犯罪インフラ化の実態と犯罪の匿名化の進展、さらに「海外から日本が狙われている」ことを痛感させられる。(芳賀)
水害対策も進化する必要がある
東京都は9月24日、「東京都地下空間浸水対策ガイドライン」の改定版を公表した。前回のガイドライン作成から17年が経過し、気象状況の変化や下水道整備など地下空間を取り巻く環境が変化することも踏まえ改定に至った。対象は地下室や地下駐車場を有する中小ビルや大規模地下街等の管理者。「水圧でドアが開かなくなる水深」は外開きのドアでは26㎝以上、内開きのドアでも47㎝以上の浸水で開かなくなるなど具体的な数値が多く記載されており、非常に参考になる。都では今後の気候変動の状況として、20世紀末から気温が2℃上昇すると1時間降水量50㎜以上の年間発生回数は1.9倍、4℃上昇シナリオでは3.5倍に増加するとし、今後は台風の発生回数は減少するが、強度は強まりこれに伴う降水量も増加すると予測する。企業の水害対策も進化する必要がある。(大越)
「ありがとう」は明日へのエネルギー
立て続けに、近所のよく利用していた店が閉店。サンドウィッチ店の店主は最終日に、「いつも優しい言葉をかけてくれたのはほんの数人だったのに、次々と惜しむ声をかけてもらえる。早く言ってほしかった!」と笑顔。次の夢に向け、エネルギーをたくさん補充したように見えた。月末に閉店する某チェーンのカフェは、チェーン店とはいえ長く続いた店舗で常連客も多かった様子。メッセージボードが設置され、来店客が次々と感謝の言葉を残していく。温かいメッセージは、きっとスタッフさんたちの明日への活力になるだろう。「指導」と称してネガティブなことばかり伝えていたら、素直に指導を受け入れ、「やってみよう」と動き出すエネルギーもなくなってしまう。おいしかったら「おいしかった!」と言おう。何かしてもらったら「ありがとう!」と言おう。(吉原)
インターネットの向こう側にいるのは生身の人間だということを忘れずに
2020年、プロレスラーの木村花氏がSNSでの誹謗中傷を受けて自ら命を絶ったという非常に痛ましい出来事を思い出してほしい。これを契機に侮辱罪の法定刑が引上げられ、2022年から施行された。法務省によると、法改正で導入された罰金刑を科された延べ118人のうちインターネット上の行為によるものは延べ85人で約7割を占めている。法務省は侮辱罪が適用された具体的な事例も公表しており、SNSに被害者の容姿が映し出された画像と共に「見た目からしてバケモノかよ」と掲載したケースや、SNSに「アホすぎるな」、「バカすぎんねんだから頭が」等と発言する動画を投稿したケースがあった。匿名発信でも技術的に発信者は特定できる。インターネットの向こう側にいるのは生身の人間だ。誹謗中傷によって、最悪の場合、人を死に追いやることを肝に銘じておくべきだ。(安藤(未))
▼法務省 侮辱罪の施行状況に関する刑事検討会 第1回
※配布資料4「侮辱罪の事件処理状況」の侮辱罪の科刑状況では、罰金刑を科された人数のうち、インターネット事案が延べ85人、非インターネット事案が延べ33人となっている。合計118人のうち、インターネット事案は約7割を占めている。
※侮辱罪が適用された具体的な事例については、配布資料5「侮辱罪の事例集」に掲載。
▼読売新聞『改正刑法成立 侮辱罪厳罰化「抑止力に」 木村花さん母ら評価』(2022/6/14 5:00)
▼日本経済新聞『ネット中傷へ侮辱罪適用、厳罰化後100人超 法務省検討会が検証開始』(2025/9/12 20:10)
▼NHK『侮辱罪 罰金刑科された人の約70%がネット上の行為で』(2025/9/28 15:35)


