新型コロナ対策 関連コラム

【緊急レポート】新型コロナウイルス対策、今後の長期シナリオを見すえた緊急事態宣言解除後の事業継続における5つのポイント

2020.05.19

政府は5月14日、現在実施されている新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく緊急事態宣言を今後どのように解除していくか、指針を発表した。いわゆる出口戦略だ。重点的に対策を講じる13県の「特定警戒都道府県」のうち、茨城、岐阜、愛知、石川、福岡の5県と、それ以外の34県を解除する。茨城県、岐阜県に関しては1週間以上新規感染者が確認されていなかった。一方で北海道、東京、神奈川、千葉、大阪、京都、兵庫の8都道府県においては感染者が十分に減っていない、もしくは大都市への人の移動が多いため、解除は見送られた。全国の現在(5月15日時点)の感染状況は以下の通りだ。

日本国内の感染状況
感染者数 1万6761人 退院者数 1万338人 死亡者数 713人
前日比 +81人 前日比 +948人 前日比 +16人
※クルーズ船含む 感染者数=PCR検査で陽性だった人(症状がない人も含む)、退院者数=PCR検査陽性で退院した人、死亡者数=PCR検査陽性で亡くなった方

【都道府県別感染者数トップ10】(※かっこ内は前日比)

  • 東京都  5027人 (+30人)
  • 大阪府  1765人 (+3人)
  • 神奈川県 1233人 (+21人)
  • 北海道  989人 (+25人)
  • 埼玉県  989人 (+19人)
  • 千葉県  885人 (+2人)
  • 兵庫県  698人 (+1人)
  • 福岡県  657人 (+2人)
  • 愛知県  506人 (+7人)
  • 京都府  358人 (+1人)

緊急事態宣言解除の新基準

緊急事態宣言解除の新基準としては、「直近2週間で新規感染者が減少傾向にある」「直近1週間の新規感染者数が人口10万人あたり0.5人以下」といった状況を根拠とする。例えば東京都で計算すると、人口はおよそ1400万人のため1週間あたりで計算すると70人、1日にすると10人程度の新規感染者数が目安となる。同様に計算すると大阪は1週間あたり44人、神奈川は46人といった計算になる。自分の住む地域にあわせ、目安を試算してほしい。

ただし、10万人あたり1人程度でも感染経路が把握できている割合が高い場合や、医療態勢に余裕がある場合のほか、PCR検査の拡充などともあわせて総合的に判断するとした。政府としては21日にも、状況を総合的に判断しながら今後について再度公表する予定だ。

このほかに、自治体独自で基準を設定しているところもある。大阪の吉村知事は8日、独自の解除基準として(1)経路不明な感染者が10人未満(2)陽性率は7%未満(3)重症病床使用率60%未満―の3つの指標を上げている。吉村知事は5月14日の数字として(1)2.86人(2)1.6人(3)22.9%であるとし、一週間連続での達成を報告。16日から段階的に休業要請を解除する予定だ。このように医療機関の受け入れ体制や感染経路に着目した指標も、自治体ごとの特性を加味することができるため良い例と考えられるだろう。東京都も同様に15日、感染1日20人未満(1週間平均)を2週間連続で達成するなどの基準に合わせ、段階的な出口戦略を発表した。メディアなどに速報が出ているので詳細は確認してほしい。

民間側としては、経団連をはじめ81の業界団体は14日、各業界に合わせたガイドラインをHPなどで公開した。非常に重要なものなので、ぜひ参考にしていただきたい。以下に主だったもののリンクを掲載するが、経団連のガイドラインで指摘している「感染予防対策の体制‥経営トップが率先し、新型コロナウイルス感染防止のための対策の策定・変更について検討する体制を整える」という一文は特に重要だ。これまでも本稿で何度も指摘しているように、トップが対策本部長となり、組織を超えた対策本部体制を構築していただきたい。

■「新型コロナウイルス感染予防対策ガイドラインについて」(経団連)
■「新型コロナウイルス感染症対策ガイドラインについて」(全国銀行協会)
■「小売業の店舗における新型コロナウイルス感染症感染拡大予防ガイドライン」(ドラッグストア協会など小売関連12団体)
■「タクシーにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」(全国タクシー・ハイヤー連合会)
■トラックにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン(全日本トラック協会)

もちろん解除後であっても、再び感染者が増加傾向にある場合は再度緊急事態を宣言する事態もありうる。企業としては緊急事態解除後も油断せずになりゆきを見守る必要がある。今後は、どのようなシナリオをもとに対策を講じる必要があるのだろうか。興味深いシナリオを紹介する。

新型コロナウイルス感染状況における3つのシナリオ

米ミネソタ大学感染症研究政策センターは、4月末に「COVID-19パンデミックの今後:パンデミック・インフルエンザから学んだ教訓」(COVID-19:The CIDRAP Viewpoint)を公表した。その中で、これまでの経験を踏まえた上で可能性の高い3つのシナリオを作成しているのでご紹介したい(翻訳・意訳は筆者。日本の現状にあわせた解説もしている)。本シナリオでは、前提条件として集団免疫の獲得やワクチンの開発が最短でも2021年になることから、18カ月~24カ月はパンデミックが継続することが考えられるとしている。

■COVID-19: The CIDRAP Viewpoint(英文)
<第1のシナリオ>最も現実的な「山あり谷あり型」(「Peaks & Valleys」)

2020年春のCOVID-19の第1波の後、夏以降、波が繰り返し発生。1~2年間、波は継続するが、2021年のある時点で、次第にその数が減少していく(※筆者注:集団免疫の獲得やワクチンの開発によるものと考えられる)。波の発生状況は地域により異なり、その地域で行われている感染症対策に依存する。波のピークの高さ次第で、1~2年の間、定期的に感染症対策の実施と緩和を繰り返す必要がある。

<第2のシナリオ>最悪のシナリオ「スペイン風邪型(秋に大ピーク型)」(Fall Peak)

2020年春の第1波の後、2020年の秋か冬に大きな波が起き、2021年に1つ以上の波が発生するパターン。1918年-19年のスペイン風邪の時は、1918年3月に小さな波が発生した後、夏の間は沈静化したが、その後大きなピークが秋と冬に発生した。このパターンでは、秋の感染拡大に備える対策を早期からとる必要がある。1957年-58年のパンデミック、2009年-10年の鳥インフルエンザの時にも類似したパターンが発生している。

スペイン風邪については、馴染みの薄い方も多いと思うので若干補足しておく。IDSC(国立感染症研究所感染症情報センター)の解説によると、正式名称は「スペインインフルエンザ」で、第一次世界大戦中の1918年に発生したもの。世界的な患者数や死亡者数については当時の文献などを参考にしているため推定になるが、WHO(世界保健機構)によると全世界人口の25~30%が罹患し、死亡者は推定4000万人(一説では1億人)とされ、日本でも2300万人の罹患者と38万人の死亡者が出たと報告されている。世界の記録に残っている上で最も被害者の多い風邪といえるだろう。

この時には、1918年3月に主に米国とヨーロッパで発生したが春と夏に発生した第1波は、感染性は高かったものの、特に致死性は高くなかったとされている。しかしその年の晩秋からヨーロッパや米国で始まった第2波では10倍の致死率になり、特に15才から35才までの若年層に多くの死亡者が見られ、死亡者の99%が65才以下だったという。1919年初頭にも第3波が発生し、1年のうちに3回大きな波が発生している。なぜ若者に発症者が多かったなどの原因は未だに不明だ。

<第3のシナリオ>最も楽観的な「くすぶり継続型」(Slow Burn)

2020年春の第1波の後、はっきりとした波が起きることなく、じわじわと感染が起きる状況が続く。このパターンは、地域でどの程度の感染症対策が取られているかの影響を受ける。このシナリオでは、感染者も死者も出続けるものの、国家規模の大規模な感染症対策(緊急事態宣言)を再実施する必要はない場合もある。

3つのシナリオを見据えた今後の企業の事業継続とは

以上、3つのシナリオを俯瞰してみたが、最も楽観的なシナリオであっても、緊急事態宣言が解除された後も「新しい生活様式」を踏まえつつ、1年~2年は予断の許さない状況が続く。状況に応じて地域ごとの感染症対策は必須となるため、企業にとってこれまでの対応に準じつつ、早期の備えが必要と考えられる。

最悪の状況としては、今年の秋~冬にかけてこれまで以上の経験したことのない大きな波が訪れることだ。もちろん、再度の緊急事態宣言や本格的な医療崩壊も視野に入れなければいけない状況となるだろう。それに備えるためには、例え5月末で緊急事態宣言が解除されたとしても、すぐに感染症対策BCP計画の見直しや、さらに大きな備えが必要となるだろう。これらのシナリオを踏まえ、事業継続において以下5つのポイントを上げてみた。今後の方針の参考にしてほしい。

  1. 緊急事態宣言が解除されたからといって、危機は完全に去ったわけではないため、急にすべてを元通りにするのは現実的ではない。まずは業務の優先順位に基づき、段階的に通常業務に戻していく。
  2. 「新しい生活様式」に基づき、可能な限り感染リスクを下げるためにテレワークやオンラインミーティングは今後も継続して行う。
  3. 秋の大きな波や、今後の小~中の波に備え、緊急事態宣言解除後も対策本部の継続のほか、今回の経験をもとにBCPの見直しを図る。
  4. 完全な終息は政府、もしくはWHOの「終息宣言」をもってなされると考える。
  5. 今後1~2年間は現在の生活が続くと考え、それを踏まえた上でのサービスや事業開発を推進する。

気をつけるべき点としては、緊急事態宣言が解除されたとしても、完全に危機は去っていないというところだ。完全な事態の終息は4.に挙げたように政府、もしくはWHOの「終息宣言」を持ってなされると見た方が良いだろう。終息宣言が発せられたとしても、WHOは過去に宣言の撤回を行なった事例もある。自分たちの眼で事態を厳しく判断することも必要だ。

今後の注意点と複合災害への対応の重要性

今後は事態の長期化により、これまでも本稿で何度も取り上げているように社会からの言われない「コロナ・ハラスメント」や従業員のメンタルヘルスの悪化などもさらに深刻化していくと考えられる。さらに、昨今頻発化する地震や水害に対してもこれまで以上に注視する必要がある。新型コロナが蔓延している中の地震や水害(いわゆる「複合災害」)も考えられるためだ。

たとえば地震の場合は帰宅困難者対策や避難所の生活の中での感染症予防対策が不可欠になる。これには紛争地帯の難民キャンプなどでも国際的に活用されているスフィア基準(人道憲章と人道支援における最低基準)が参考になる可能性がある。紛争地において、感染症は未だ深刻な問題であるため随所に対策方法が記載されているのだ。

また、特に水害復旧(津波も含む)の場面ではゴミや瓦礫の撤去の場面でこれまでも感染症対策が指摘されてきた。これまで地面に隠れていた破傷風菌などの人体に有害な細菌が水害によって掘り起こされ、空中に舞うことで体内に吸引される可能性があるからだ。ゴーグルやマスクの備蓄はさらに強化する必要があるだろう。複合災害における感染症対策はまた改めてじっくりお届けしたい。一つ確実に言えるのは、企業のBCPも、これからさらに進化していくことが不可欠だということだ。

■被災地において特に注意すべき感染症(国立感染症研究所)
■被災した家屋での感染症対策(厚生労働省)

(了)

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