30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

訓練が必要な理由

北朝鮮の度重なる弾頭ミサイル発射を受けて、各地で様々な訓練が行われている。「いたずらに脅威をあおる」との的外れの批判もあったが、今はさすがにその意義を否定できまい。だが、危機管理上必要な訓練がこれまで実施されなかったのは、「脅威を認識させてはいけない」という誤った危機管理意識が蔓延っていたためだ。脅威を認識させないことこそ「真の脅威」であり、脅威を認知し、それと向き合うところから危機管理は始まる。また、訓練は課題の抽出や改善につなげる良い機会だ。「今ミサイル発射って、どこへ逃げるのよ?」といったツイートですら、自らの行動を考えてみたという意味では、今後の危機管理の強化に役立つはずだ。正しい知識と訓練の積み重ねこそが、有事でも「正常性バイアス」に囚われない、命を守る為の正しい行動を可能にする。(芳賀)

危機対応時の機転、偶発事象と安全装置の功罪~危機管理の現場における難しさ

沿線火災が鉄道車両に燃え移り乗客が避難した。報道によると、警察官が踏切の非常停止ボタンを押したが、火災現場の前で停止したとのこと。非常停止ボタンにより強制的にブレーキがかかり、火災現場前に停止したとしても、運転士としては線路上の安全が確認できなければ乗客を降ろす訳にはいかない。警察官も災害予防の為、咄嗟に非常停止ボタンを押したと思われ、その判断は責められまい。システムで強制的にブレーキがかかってしまう非常停止ブレーキ、安易に解除されれば何のための安全装置かわからないが、安全装置が原因で危機に陥ることも避けなければならない。システムとヒューマンリソースのバランスによるリスク回避のあり方を考える一方で、沿線有事や鉄道対象テロを想定した、鉄道会社と警察、消防、住民との連携、訓練も不可避である。(西尾)

米信用情報サービスで大規模個人情報漏えい

信用取引、保険取引、雇用などの目的で照会する個人情報を収集・提供しているEquifaxが、7月にサービスへの不正アクセスがあり、約1億4300万人の米国顧客の個人情報が流出したと発表した。氏名、社会保障番号、生年月日、住所、免許証番号のほか、一部顧客についてはクレジットカード番号も盗まれた可能性があるという。本件、扱う情報量、種類からして一見強固なセキュリティ施策を想像するが、実際には侵入や感染を検知できず、適切な対応がとられなかったがためにいたずらに被害が拡大したと指摘されている。被害が顕在化するまで侵入の事実に”気づけない”ケースが増えており、潜在的なリスクは既に拡大していると認識すべきだ。侵入をいち早く検知し対処できる仕組みと、それが機能しているかを継続的に確認する、繰り返しの訓練や検証が求められる。(佐藤)

働き方改革と出生率、男性の働き方がポイント

総務省の7月の調査によると働く女性が増えてきている(女性の労働力率は69.7%)。労働力とみなされる女性の割合を示すグラフの30~40歳代の部分が顕著に落ち込む「M字カーブ」と呼ばれる特徴が薄れ、欧米に似通ってきた。しかしながら、未だ指導的立場に就く女性を増やすという目標と出生率を上げるという目標との間にジレンマが生じている。最近の研究では、出産適齢女性の労働参加率と出生率との関係は「U字カーブ」になるという仮説がある。家族向け政府支出と家事育児にあてる時間を男性が負う比率が増加するにしたがい、女性の労働参加率の増加と出生率の上昇が同時に可能になるものだ。鍵は、性的役割分担意識の修正とリモートワークなどの柔軟な働き方ができるかだ。その導入には社内の報告、情報共有、意思決定の仕組みまで変える必要がある。(伊藤)

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