週刊・危機管理PLUS

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

仮想通貨リスクに国際社会による包囲網を

仮想通貨「NEM」(時価約580億円相当)が不正アクセスによって外部に流出する事件が発生した。金融庁は、事件前から不正アクセスに対する脆弱性を事業者に指摘していたが未然に防げなかった。日本は世界に先駆けて仮想通貨交換業者の登録制を導入、「利用者保護とイノベーションのバランスに注意」しつつとのスタンスだが、国際社会は急速に規制強化に傾く。北朝鮮や犯罪組織等が、マネロンや相場操縦等に悪用して莫大な利益を得ており、仮想通貨の「犯罪インフラ化」の阻止は喫緊の課題だ。その意味で、ドイツ連銀の「国ごとの規制は限定的で、国際的な協力を通じた規制のみが効果的」との指摘は仮想通貨リスクの本質を突くものであり、3月のG20での議論が注目される。中央集権の軛から解放されたはずの仮想通貨に、国際社会による規制が本格化する。(芳賀)

ストーカー加害者対策と働きかけ

警察庁が発表したストーカー加害者の心理に関する調査結果によると、加害者の4人に1人がその自覚がないという。加害者の中には警告などを受けても付きまとい行為を繰り返したり、暴力をエスカレートさせたりするケースも少なくない。むしろ、加害者は自分では自分の行動を止められない心理状態にあり、犯罪者として強く扱うことで、事態が悪化してしまうような場合がある。犯罪対策閣僚会議の「再発防止推進計画」では、再犯リスクの高い性犯罪者や暴力団関係者等も同様にそれぞれの特性に応じた指導が必要だとしている。被害者への対応やケアは当然として、加害者へは注意や警告だけでなく、被害者への執着や憎悪の感情を取り除き、行動をコントロールできるよう、カウンセリングや治療を受けられることによって、再発防止に役立つ支援が求められる。(佐藤)

相撲協会に求められるガバナンス

角界で無免許運転での事故、傷害事件が表面化した。元横綱による傷害事件、立行司によるセクハラ騒動に次ぐ不祥事だ。遡れば暴行死、薬物、野球賭博、八百長など繰り返される不祥事の原因は、モラルや能力の低下、教育不足とする協会の自己分析は説得力に欠ける。根本的な原因は、閉鎖社会ゆえの身内ルール、相撲部屋ありきのガバナンスの欠如だ。協会は相撲部屋に力士の募集・育成、生活を委託しているため現場の親方の力が強い。理事会に現場の親方が入っているため、師匠が審判と理事、さらには評議委員を兼任するという状況は、野球なら監督やコーチが審判をしているようなものだ。力士の異動が禁じられているため相撲部屋間の競争はなく協調関係だ。協会のガバナンスは、経営と現場の分離、さらには協調に競争をどう配合していくかに懸かっている。(伊藤)

ウナギの絶滅危機まったなし、繰り返される日本的「失敗の本質」

ウナギの今冬の国際漁獲量は前期比1%と過去最低に落ち込み、いよいよ絶滅の危機にある。他方、日本人の4割が「ウナギが絶滅危惧種であることを知らない」とも言われ、乱獲や不正取引を黙認してきた大量消費国としては当事者意識の欠如が際だつ。この危機を前に消費者は消費の抑制を余儀なくされる一方、行政および事業者はどう向き合うのか。そもそもウナギの絶滅危機は10年以上前から指摘されており、その端緒(=ミドル・クライシス®)を放置してきたのは行政と関連事業者でなかったか。不都合な真実に目をそむけ、ステークホルダーとの調整を避けて「誤った和」を尊んだ結果、その「空気」が破滅を招くという構図は、日本が忘れてはならない「失敗」の類型である。日本が誇る豊かな食文化のひとつを失いつつある今、学ぶべきところは少なくない。(山岡)

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