週刊・危機管理PLUS

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

仮想通貨におけるマネロンリスクの高まりに注意が必要だ

テックビューロ仮想通貨不正流通事件では、流出したコインがさらに数千口座へ分散、不特定多数の取引を組み合わせて追跡を困難にする「ミキシング技術」と呼ばれる仕組みが使われたという。仮想通貨の持つマネロンリスクという点から言えば、例えば、匿名性の高い仮想通貨が使われるだけで所在の特定はさらに困難となる。また、交換所や取引所を介さないでWebサイト上の掲示板やSNSを通じて仮想通貨を取引する「相対取引」は、当局の規制対象外の匿名取引が横行するリスクを孕む。さらには、ウォレットを開設する際に個人情報の提供を求めないウォレット会社(そもそも監督・規制の対象外だ)もあり、匿名性の高い取引を助長しかねない。もはや仮想通貨にはこれまでのAML/CFTの常識は通用しない。あらたな監督・規制の発想が国際的に求められていると言えよう。(芳賀)

予測可能災害の事前減災対策の一層の推進を

台風24号は大雨と猛烈な風で全国に被害をもたらした。今回は、早い段階で気象庁から警告がなされ、公共交通機関(航空機、鉄道、フェリー等)は早々と運休を決めた。予測可能な災害は、被害の予防・低減に向けた事前対策が重要である。従来、防災・BCP対策の観点からは、この事前の被害低減対策は重視されていなかったが、このような動きが定着してきたことは、災害が多かった本年の一つの教訓であろう。早い段階で避難所も開設されたり、地理的状況を踏まえ避難所を高台に変更されたり、夜間の避難を控えるよう啓蒙もなされた。一方、今回は、主に週末に台風が日本列島を縦断したため、通勤者が相対的に少なかった事情がある。通勤者が多い週半ばに同様の事態が発生した場合、どこまで対応できるか。今後、社会的合意形成と一層の推進を期待したい。(西尾)

情報銀行が来年から相次ぎサービス開始、監視監督体制は十分か

個人の購買履歴、家計収支、健康情報といった多様なデータを一元的に管理し、個人の意向に合わせて、情報を必要とする企業への提供を仲介するビジネスへの参入に向けた企業の動きが相次いでいる。いわゆる情報銀行は、個人あるいは事業者が保有する個人データを、同意を得た上で収集・管理・提供する仕組みだ。IT企業らで作る民間団体が、国が定めた指針に基づきプライバシーやセキュリティ対策などの基準を満たした企業を認定する制度も開始されるという。認定基準に違反した場合は、民間団体が認定取り消しや事業者名公表などの処分を行うなどとしているよう、利便性の向上とともに利用者保護を徹底しなければならない。情報の提供先に関する透明性をも保証し、高いレベルの信頼性を確保するには情報銀行を審査・監督する側の体制の整備も求められる。(佐藤)

相次ぐ検査不正、自動車大手の自浄作用不全

日産とスズキで完成車検査における不正が相次いで発覚した。日産の無資格者による検査の発覚をきっかけに国土交通省が各社に調査を求めた結果、トヨタ自動車、ホンダ、ダイハツ工業を除く各社で問題が発覚している。日産では国内外の工場に生産効率を競わせ、優秀な工場に人気車の生産を割り振るという。国内工場が海外工場との生産費の差を埋めようとして適切に人員を配置できなかった可能性が指摘されている。問題があっても是正できなかった背景として「ものが言えない」「報告しない」風通しの悪さがあろう。現場の規範意識の欠如は厳しく指摘されて当然だが、「雲の上から現場を見ていた」経営の責任は免れない。松下幸之助は工場に足を運び、現場の声に耳を傾けたという。今まさに自動車各社は、現場と経営が一体となるための姿勢が問われている。(伊藤)

職場の敬称だいじょうぶ?─女性同僚への「ちゃん」付けに公務災害、無自覚ハラスメントに要注意

本年9月末、警察庁の女性職員が同僚男性からセクハラを受けて抑うつ状態となり、公務災害と認定されていた(2017年3月)ことが発覚した。同僚男性はこの職員を「ちゃん」付けで呼び、卑猥な言動を繰り返したという。本欄ではこの認定の是非には触れないが、本件にみられる「女性に対する一方的なちゃん付け」はジェンダー・ハラスメントの典型であり、注意が必要だ。そもそも「ちゃん」付けは子供に対する接尾辞だが、女性を性的主体として性愛化する性別規範のもとで(とりわけ若い)女性に対しても使われるようになった。一方的な「ちゃん」付けに際しては、こういった規範性が無自覚に露出するため、セクハラのリスクも潜在する。事業者においてもこんにち的なイクアリティ(平等性)推進に先立ち、年齢や性別を問わない均一的な敬称使用が望ましい。(山岡)

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