週刊・危機管理PLUS

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

利便性と悪用リスクのトレードオフへの慎重な対応が必要だ

「陸・海・空・宇宙」に続く第5の空間である「サイバー空間」では、政府機関やインフラの機能を麻痺させる「サイバー戦争」や「サイバーテロ」の脅威が顕在化している。サイバー空間は、高い利便性や革新性を生み出す「表の側面」の一方で、企業や個人への攻撃の舞台として、ダークウェブのような様々な犯罪の隠れ蓑として、高い匿名性や悪意による詐欺等の「犯罪インフラ」として、悪用されてしまう「裏の側面」もある。犯罪組織は常に規制の緩いところ、新しいビジネスキーム等を狙って介入してくるが、最近の事例を見ても、利便性を追求するあまり悪用リスク対応が後手に回っているのが現状だろう。今後、AIやIoTによって事態の深刻化が想定されるところ、事業者には利便性と悪用リスクのトレードオフを冷静かつ慎重に見極めていく勇気が求められる。(芳賀)

2019年のセキュリティ動向(3)

昨年、企業の防衛を目的とした改正サイバーセキュリティ基本法が国会で成立した。縦割り行政の排除と情報収集体制の強化を狙ったものだが、機能はなお限られる。重要とされる「検知・分析・判断・対処」のうち、できるのは検知までであり、「誰が何の目的で攻撃し、どうしたら抑止できるか」を探るところまでは対処できていない。政府は省庁や自衛隊で使う通信機器の調達から中国製品の排除を決めたが、米国政府の意向が多く滲む。要するに、真偽は別として日本ではその見極めが難しく、独自に判別する能力を欠いているということだ。専門の人材不足の問題も見逃せない。日本では20万人規模の要員が必要だとの試算もあり、身動きができない状況だ。サイバー防衛はまだ重要な産業だとの視点が大きく欠けているということに目を向けなければならない。(佐藤)

労働力人口の減少、生産性重視の働き方が求められる

厚労省の有識者研究会が就業者数の2040年までの推計結果を含めた報告書をまとめた。2040年の就業者数は2017年に比べ20%も減る可能性があるという。働き手を増やす取り組みを強化すべきで、女性や高齢者就労増へ働きやすい環境づくりが必要だ。併せて企業は生産性の向上が必須だろう。人工知能やITを活用したビジネスモデルづくりやイノベーションによる業務の効率化が求められる。一方で、職場の生産性の向上は改善しているだろうか。イノベーションを生む事と生産性の向上はトレードオフではない。定型業務の生産性の向上が、イノベーションのための余裕時間を生み、イノベーションによって大幅な生産性の向上が実現する。働く人が疲弊するのは、無意味と思われる仕事を延々と続けるときだ。組織全体の生産性を重視した働き方を定着させることが先決である。(伊藤)

南海トラフ地震情報の最新事情(5)

3つのケースを具体的に見ていこう。(1)半割れ:南海トラフの想定震源域内でM8クラスの大規模地震が発生し、残りの領域内で大規模地震の発生が高まったと考えられる状況。(2)一部割れ:東日本大震災のように、大規模地震に比べて一回り小さいM7クラスの地震が発生した後に、より大きなM8クラス以上の地震が発生する可能性がある状況。(3)ゆっくりすべり:基準を超えた大きなすべりが観測され、前例のない事例として学術的にも社会的にも集める状況。以上を簡単に言うと、(1)(2)は「南海トラフの想定震源域内でM7~8の地震が発生したら、また近いうちに大きな地震が発生する可能性がある」というもの。(3)は大震法で想定されていたもので、「平常時と比べて相対的に高まったと評価できる」もの。では、これらを企業はどう評価すればよいのだろうか。(大越)

東京オリンピックは予定通り実施されるのか?

仏司法当局が東京五輪誘致に関わる収賄容疑で、JOC竹田恒和会長の刑事訴訟手続を始めた。ゴーン氏逮捕との関係は不明だが、実際は3年前から続いている捜査の一環だ。今回、東京五輪招致委員会からシンガポールのコンサルタント会社ブラック・タイディングズに支払われた約2億2000万円の流れが焦点だが、前回のリオ五輪では同様の構図(ラミン・ディアク氏親子介在)で、ブラジル・オリンピック委員会(BOC)のカルロス・ヌズマン会長がブラジル捜査当局に逮捕されている。竹田会長は会見を7分間で終了させ、質疑応答を行わなかった。仏当局が捜査中であっても、これでは何のための会見か分からない。五輪誘致に賄賂が動くのは公然たる秘密とも言われるが、開催国の熱狂と感動で開催される大会の裏で巨額の金が動いている事実はいつまでも闇の中のままか。(石原)

中西経団連会長、原発発言で揺れる?

日立製作所会長で経団連会長でもある中西宏明氏の原発関連発言が揺れている。昨年12月17日の会見では、原発新増設するにしても立地が少ないことに不満を表明し、今年の年頭会見では、「国民が反対するものは作れない」と発言、さらに15日の会見では「(福島原発事故後停止しているが)再稼動はどんどんやるべきだ」と語った。輸出についても目玉とされてきたが、日立が英国での建設計画を凍結し、三菱重工もトルコの原発建設を断念する見通しが伝えられている。未曾有の福島原発事故から8年、未だ国民からの原発への不信は根強い。また原発の廃炉には30~40年掛かるとも言われており、放射性廃棄物処理プロセスに関しては、中間も最終も国民的コンセンサスは得られてはいない。中西氏の真意がどちらにあるにせよ、政府の無理強いは困難になりつつある。(石原)

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