30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

犯罪インフラ対策が急務だ~改正入管法施行をふまえて

帰国前に不要となった技能実習生の口座が第三者に売られ、不正送金の受け口座として金融犯罪に悪用される事案が多発している。金融庁幹部は「外国人を受け入れて管理するのが世界標準だ」と言うが、地銀等にとってはAML/CFTへの対応コストの負担感はすでに相当なものがある。これまで「外国人雇用先を訪問して解約手続きを説明」といった地道な取り組みが犯罪を水際で防いできたが、今後はそれも難しくなろう。それに加え、総務省からは携帯電話の利便性向上も求められている。「飛ばしの携帯」「他人名義の口座」「名簿(個人情報)」が特殊詐欺の「三種の神器」だが、開設手続きや本人確認手続きの緩和が、携帯電話や預金口座のさらなる「犯罪インフラ化」を助長しかねない。外国人口座売買を阻止できないまま、利便性の要請が先行する状況は極めて危うい。(芳賀)

BCPは形の問題ではない。実質的・本質的な検証を!

関西国際空港が昨年の浸水被害を受けてBCPの見直しを行うとのこと。これまで地震・津波と新型インフルエンザの2種類の事象で作成されていたが、連絡橋の通行不能、電源喪失、滑走路の浸水等、機能喪失別に切り替えるとのこと。前者は原因事象型BCP、後者は結果事象型BCPと呼ばれるが、東日本大震災以降、複合事象に強いとして結果事象型BCPが推奨される。しかし、危機管理の観点からは結果事象型BCPには大きな欠点もある(詳細は当社HP参照)。そもそも津波BCPがありながら、連絡橋の通行不能や滑走路の浸水が想定されなったことが本質的な問題であり、原因事象が悪いということではない。災害対策とBCPを一体的に運用していく場合、災害毎の事前対策は異なるが、結果事象型ではその備えには注目されにくい。災害に更に弱くならないよう願うばかりである。(西尾)

【注意喚起】偽SMSによるスミッシング被害

佐川急便などで不在通知を騙り、スマートフォンのSMS(ショートメッセージサービス)を使って個人情報を盗み取ろうとする「スミッシング」詐欺の被害が増加している。最近目立つのが、NTTドコモなど携帯電話の事業者を装う手口だ。例えば、セキュリティ強化サービスを装って偽サイトに誘導、不正アプリをダウンロードさせる手口も確認されている。SMSは社員が持つスマホ電話番号に直接メッセージを届けられるもので、取引先や顧客とのやりとりでも使うことがあるだろう。個人で利用するものだけではなく、迷惑メールフィルターなど、システム側での対処ができないSMSを悪用して会社が貸与するスマホもターゲットにされる危険性がある。身に覚えのないメッセージは正規のサービスのものであるかきちんと確認するとともに、脅威として認識しておく必要がある。(佐藤)

食品ロスの認知度と取組状況等に関する調査、消費者庁

消費者庁は消費者の意識に関する調査として同調査結果を発表した。食品ロス問題を「知っている」と回答した人の割合は74.5%に達し、過去の調査に比べ増加した。また、食品ロス削減のための「取組を行っている」と回答した人の割合は71.0%で前回と比べ変化はなかった。これらは、関係省庁が連携したロス削減の取組として消費者に「もったいない」を啓蒙する活動の成果とその限界といえよう。一方で、食品のサプライチェーンで発生する食品ロスは「もったいない」では解決しない。ロス発生が、捨てないという選択をするよりも捨てるほうが損をしない、または、利益が大きいというコストに起因するためだ。だが、捨てることを前提としたビジネスモデルは、社会倫理とは乖離し持続できないだろう。未来志向の破壊によって「正しい商売」への是正が求められる。(伊藤)

一般人クラスのテロ対策が必要だ

昨日スリランカで、現地時間午前9時ころ、最大の都市コロンボとその郊外などにあるホテルやキリスト教の教会など、合わせて6か所で同時多発テロ爆破事件が発生。同国政府によると、これまでに15人が死亡、400人以上が負傷しており、けが人には日本人も数名含まれているという。同国はインドの南端に位置する北海道よりも少し小さいくらいの島国で、「インドの真珠」とも呼ばれる美しい国だ。10年ほど前には内戦も終結し、徐々に観光立国として経済が復興してきた矢先の出来事だったという。近年、テロの傾向が大きく変わった。現在は不特定多数の民間人がテロの対象になるため、ソフトターゲットと呼ばれる、いわゆる人が集まりやすい場所が狙われる傾向にある。オリンピックを来年に控える日本では、今後一般人クラスのテロ対策が求められる。(大越)

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