30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

Society5.0のガバナンスモデル~「アジャイル・ガバナンス」に注目したい

「アジャイル・ガバナンス」とは、「政府、企業、個人・コミュニティといった様々なステークホルダーが、自らの置かれた社会的状況を継続的に分析し、目指すゴールを設定した上で、それを実現するためのシステムや法規制、市場、インフラといった様々なガバナンスシステムをデザインし、その結果を対話に基づき継続的に評価し改善していくモデル」だ。社会情勢の継続的な変化、結果の予見・統制の困難性といった特徴を有するVUCAの時代にあっては、「基本的人権」、「公正競争」、「民主主義」、「環境保護」といった一定の「ゴール」をステークホルダーで共有し、そのゴールに向けて柔軟かつ臨機応変なガバナンスを行っていくゴールベース・アプローチが必須だ。そして、その適切性や信頼性の確保には、社会への説得的コミュニケーションが重要性を増す。(芳賀)

▼経済産業省 GOVERNANCE INNOVATION Ver.2: アジャイル・ガバナンスのデザインと実装に向けて」報告書(案)

白か黒かではない、段階的・効果的なリスクコミュニケーション・危機対応を!

新型コロナの陽性者数が日々公表されているが、リスク情報として数値を公表する場合は注意が必要だ。増加傾向の時は国民に対する注意喚起効果があるが、減少傾向の場合は大きく減少した数値が続くと、「下がったからもう大丈夫」と思いだす。そして低数値が継続しているのに緊急事態宣言等が続くと、徐々に緊急事態宣言等の意義に疑問を持ち始める人が増え、効果が薄まる。こうなっては今後の感染症対策にも影響が出る。緊急事態だからこそ、限界値を踏まえた宣言解除や新しいフェーズ(信号が赤から黄色に変わった)に移行しての新たな情報発信が重要なのだ。日本企業は、BCPでも対策本部の「解除」が遅れがちだ。安倍前総理は5月途中で緊急事態宣言を解除した。GO TOトラベルの中止判断が遅れた菅首相。今、その危機管理が問われている。(西尾)

なりすまし電話に注意

奈良県は、実在する医学部卒業生を名乗る人物からの不審な電話に対して、県内の医療機関で働く医師19名の個人情報を本人の同意なく提供していたことを明らかにした。本事案だけではなく、申出者の確認を十分におこなわないまま、本人以外に情報を伝えてしまった等の事故が最近相次いでいる。このような電話を利用したソーシャルエンジニアリングは、対面せずターゲットに近づいて情報を入手しやすいのが特徴で、昔からある代表的な手口だ。さまざまな心理的詐術を完全に防ぐことはできないが、日々受信するメールや電話には偽物やなりすましが多く存在し、騙される可能性があるということを客観的に理解しておくことが大事だ。「自分は騙されるわけがない」という意識こそが、最大の弱点になり得る。「手口を知る」ことで、あらためて注意したい。(佐藤)

人材サービスのパソナ、50歳からの転身支援 70歳まで就業の時代への対応

同社は大手企業で働く50歳以上の現役社員の転職や起業を支援する事業を始める。高齢者雇用安定法の改正が背景にある。これまでは65歳への定年の引き上げ、定年の廃止、65歳までの継続雇用制度の導入のいずれかの措置をとることが義務付けられていたが、4月から定年引上げ努力義務の年齢が70歳、雇用継続についても70歳までとなる。さらに高齢者が希望する場合、業務委託契約を締結する制度と社会貢献事業に従事できる制度の選択肢が追加された。企業にとっての人材の活用が課題のように見えるが、就業者自身の定年前後10年、20年のキャリアプランの見直しを迫ることにもなる。大組織に依存する「リスク回避思考」そのものが最大のリスクになり得る時代だ。30年以上培った経験値を「働きがい」と「稼ぎ」に変えるキャリアを考えることが求められている。(伊藤)

ロシアのH5N8亜型にご用心

ロシアの衛生当局は20日、高病原性H5N8亜型の鳥インフルエンザウイルスについて、世界で初めてトリからヒトへの感染を確認し、WHO(世界保健機関)に報告した。BCP担当者は、少し注意して今後の情報収集に当たってほしい。H5N8型は近年韓国や日本国内でもアヒルなどから検出されており、「ヒトには感染しない」とされてきたものだ。この一年で学んだように、ウイルスは突然に変異する。万が一、今後ロシアの高病原性H5N8亜型の「ヒト-ヒト」感染が確認され、WHOが緊急事態を発するようになれば、今回の新型コロナと同じような対応が必要になるだろう。ただ、闇雲に騒ぐ必要はない。この稿でも何度も指摘しているように、新型ウイルス対策は「情報戦」だ。担当者は注意深く今後の動静に注目し、適切な時期に必要な準備を開始してほしい。本稿でも逐次報告していく。(大越)

Back to Top