30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

内部統制の限界は「人」~SMBC日興証券調査報告書を読み解く

報告書は、根本原因として「証券業務全体の中での潜在的リスクに見合った自己規律及び態勢整備の不足」「社内全般にわたる規範意識の希薄性」「ガバナンス態勢全般の機能不全」「人事政策におけるコンプライアンスの位置づけの弱さ」の4つを挙げた。「確かな法的根拠に基づいて業務を実施しようとする姿勢に欠け」、「法令の解釈及び適用における共通認識が社内に形成されていない」「利益を追求するあまり、法令を安易に都合よく解釈する姿勢も窺える」、「自律的なブレーキが働くことはなかった」、「禁止する明文規定はない(から本自己勘定取引は)非難されるべきいわれはない」旨の弁明など、高度な倫理観が求められる金融機関とは思えない「異常な状況」だ。各種ルールや規制が「人」によって悉く無力化され、内部統制の限界がここでも露呈した。(芳賀)

▼SMBC日興証券 調査報告書(開示版)

時には一拍置いて対応することも必要

先週6月23日、尼崎市長の稲村和美氏は記者会見を行い、全市民約46万人分の個人情報が入ったUSBメモリを委託業者が紛失したことを公表した。データには住民基本台帳の情報のほか、生活保護受給者や児童手当受給者の口座番号なども含まれていたという。USBにはパスワードロックがかかっており、二次被害は発生していなかったがコールセンターを設置し、住民に対応した。ところが翌日には事態は急転直下し、USBが発見される。泥酔してUSB入りのカバンを紛失した業者が、酔って寝ていた周辺のマンションの敷地内で見つかったという。なんともお粗末な事件だったが、1つの教訓がある。それは「焦って公表しても事態は好転しない」ということだ。厳しい案件ほど、事態を冷静に捉え事実確認をしっかりする必要がある。時には一拍置いて対応することも必要なのだ。(大越)

「無責任な褒め」では、人も組織も伸ばせない

「褒めて伸ばす」と言うものの、指示や判断を伴わない「無責任な褒め」では伸ばせない。A・B・Cの3人から企画案が出たとする。Aの案は実用的だね、Bの案は斬新だ、そしてCの案は手堅い。3人とも個性を活かした案を褒められご満悦だ。しかし実施する企画は1つ。各案の良さを融合させようにも、3人とも自分の個性や案に自信を持ち、誰も譲らず、企画は紛糾するばかり。人の個性は様々で、それらは褒めて伸ばして活かしたい。しかし仕事には「今のあるべき姿」がある。上司はただ長所を褒めるのではなく、「この仕事はこうあるべきだ」と方向性を示し、短所も含めて議論すべきだ。しかし経営者のビジョンが伝わっていなければ、そもそも上司が「こうあるべき」を描けない。ビジョンのない中、無責任に褒めたところで、企業も社員も伸びはしない。(吉原)

Back to Top