30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

2022年08月01日号

テロリスクの高まりに注意が必要だ

元首相銃撃事件のようなローンウルフ型の犯行の連鎖を食い止めることが今後の治安対策上の課題だ。国際テロリズム要覧2022は、ISILやアルカイダといった「テロ組織と直接の関係を有さない「ホームグロウン・テロリスト」らによるローンウルフ型テロは、依然として欧州で継続的に発生しており、主要な脅威の一つとみられている」、「特に、新型コロナウイルス感染症対策を目的に実施されている移動、渡航、集会等の制限が緩和又は解除され、人流が回復した際には、これまで大きな被害を生じさせ得る標的が欠如していたためにテロの実行を見合わせていた者が犯行に及ぶ可能性があるため、警戒を要する」と指摘する。他者との「つながり」をつくり、社会の一員であるとの意識を醸成させる「社会的包摂」により孤独化を防ぐこと。私たちでもできることは多い。(芳賀)

▼公安調査庁「国際テロリズム要覧2022」

子どもは静かに沈んでいく

日本列島を、息をするとむせかえるような深刻な暑さが続く。意識的に水分や塩分を補給するなど、熱中症に厳重な警戒が必要だ。同時に、海やプールなど水辺の遊びが楽しくなる季節でもある。米国の水難救助の専門家らの調査によると「子どもは溺れるとき、映画のように声を上げるでもなく、バシャバシャと水面をたたくわけでもなく、静かに沈んでいく」のだという。「本能的溺水反応(instinctive drowning response)」と呼ばれ、米国では広く啓発されている。子どもは溺れるときに、自分が溺れていることも分からず、もしくは呼吸に精いっぱいで声を出す余裕もなく、静かに沈んでいくのだ。筆者が信頼する長野県佐久市の医師会が作成する「教えて!ドクター」でもポスターなどを作成し、国内の啓発に努めている。「子どもから目を離さない」という基本を忘れないようにしたい。(大越)

▼子どもは静かに溺れます(教えて!ドクター)

伝えるリスク、伝えないリスク

例えば半年後に賃金制度の大改革が予定されているが、まだ詳細が確定していない場合、中途採用者には事前にどこまで伝えるべきか?労働条件通知書では入社直後の労働条件を示すのがルールだ。未確定ならば「余計なことは言わない」という考え方もある。しかし例えば手当が廃止される場合等、その人が大きな影響を受ける可能性があっても、説明の必要はないだろうか。何も聞かされず、入社した途端に不利益変更となれば、会社への不信感は一気に高まるだろう。「まだ確定ではないが、手当がなくなる可能性があること、こういう面で実力を発揮できなければ賃金が下がる可能性もあること」など、「可能性」として伝えておけば、入社するかしないかから考え直すこともできよう。余計なことを言うよりも、十分に伝えていない方が、リスクは高いこともある。(吉原)

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