30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

2022年10月31日号

危機管理は経営の根幹をなすものである

G20とOECDはコーポレートガバナンス原則の見直しの中で、「取締役が監督責任を十分に果たせるようにするため、監査委員会等とは別に、リスク委員会を設置することも1つの選択肢だ」と指摘した。企業が対処すべきリスクは困難さを増すばかりだ。長時間労働や自然災害など「古くからあるリスク」も、対応の徹底がより一層求められているという意味では「古くて新しいリスク」だし、サイバー攻撃やAIなどの「新しいリスク」、人権DD、経済安全保障、サプライチェーン・リスクマネジメント、SDGs、ESG投資、エシカル消費など、企業が真に「社会的」な存在であるために向き合うべき課題は増える一方だ。さらに、VUCAの時代にあって、リスク自体の多様化・複雑化が進む。危機管理は経営と一体のものであり、その巧拙が持続可能性を左右すると言っても過言ではない。(芳賀)

▼OECD Public Consultation on Draft Revisions to the G20/OECD Principles of Corporate Governance

カスハラ・ハラスメントに注意せよ

本年2月に厚生労働省が「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を公表した。当社でも「クレーム対応の『超』基本エッセンス」の新訂第2版を本年7月に刊行し、対応要領の他、同マニュアルの内容や使用時の留意点を解説した。巷でもカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)に関する書籍が出だしているが、「カスハラを行う人たちはもはやお客様ではない」と彼らの存在・尊敬を否定してしまうものもある。しかし、このようなアプローチは、相手方の存在・人格の否定であり、それこそハラスメントにほかならない。このようなハラスメント的な見方は危険だ。カスハラは、ハラスメントという名のごとく、顧客の言動に関するもので、当社の5ヶ条では要求行為の正当性関する問題と整理している。「罪を憎んで人を憎まず」の発想を忘れてはならない。(西尾)

群衆雪崩の恐怖と帰宅困難者対策

先週のBCPコラムで「群衆雪崩」に触れていたばかりだったので、慄然としている。コロナ規制も緩み始めたハロウィーン前の韓国。ドラマで有名な梨泰院付近での転倒事故は、日本人2人を含む154人の若者の命を奪った。日本でも2001年7月の明石花火大会では歩道橋で11人が同じ原因で亡くなっている。当時の事故を調査した神戸大学名誉教授の室崎益輝教授はテレビの取材に「1平米に15人が密集する超過密状態だった。人が押しつぶされ、あばら骨が折れる音が聞こえていた」と話す。回避する方法として室崎教授は「グループで分散して行動するなど、過密にならないように注意する」としている。災害時の帰宅困難者は、首都圏で517万人にのぼると想定される。自らの命を守るためにも、「発災から3日間はむやみに移動を開始しない」という基本方針の徹底が重要だ。(大越)

▼帰宅困難者対策をより柔軟に~新しい政府の帰宅困難者対策方針についての考察~

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