30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

リスキリングの本質を理解すべきだ

従業員に「リスキリング」を推奨し、人材の「人財化」を進める企業が増えている。一方、こうした専門性やスキルを有する高度な人財こそ、「柔軟性」や「耐性」の源であり、VUCAの時代にあって自らの持続可能性を高めるために企業にとって必要不可欠な存在でもある。だが、「人財化」を推し進めるほど、皮肉にも「人財の流動化(雇用の流動化)」も進むことになる。そもそも企業とこうした人財との関係は、雇用関係の有無にかかわらず、従属的ではない、対等な「パートナー」として「フラット」な関係性の中で相互に「選ばれる」ことで生じるもので「帰属意識」とは異なる性質のものだ。企業がリスキリングを行うのは「選ばれる」ため、「持続可能性」を高めるためであり、「企業理念」「社会的な存在意義」「働きがい」を磨くのはそのためでもあるのだ。(芳賀)

▼企業が主導する学び直し、人材移動を促すか 変わる雇用/中(2023年5月5日付毎日新聞)

行政の不作為が犯罪を助長してきたのではないか~休眠宗教法人問題

休眠宗教法人が売買され不正や犯罪の温床になっている実態について、筆者は数年前から警鐘を鳴らしてきたが、何ら取組みがなされず忸怩たる思いでいた。国内には約18万の宗教法人があり、2021年末時点で不活動宗教法人は3348あるが、同年解散命令請求に至ったのはわずか6件と、自治体による管理が機能不全に陥っていた。宗教法人法に売買を禁じる規定はないが、文化庁は宗教活動以外の目的で法人経営に関与すれば現行法の趣旨に悖るとし、法人売買を「脱法行為」と位置づける。にもかかわらず、宗教法人を悪用した脱税やマネー・ローンダリングなどを狙う暴力団や中国人投資家などが半ば公然と蠢いている状況は異常だ。国会で追及された文化庁が3月末、都道府県に対し不活動宗教法人を判断する基準を示し、今後風向きが変わる可能性がある。期待したい。(芳賀)

5月8日からコロナウイルスが5類へ変更

5月8日から、新型コロナウイルス感染症の感染症法上における位置づけが「新型インフルエンザ等感染症(2類相当)」から「5類感染症」に変更される。「終息」ではないが、実質的な政府の「収束」宣言ともいえるだろう。主な変更ポイントは①政府として一律に日常における基本的感染対策を求めることはない②新型コロナ陽性者及び濃厚接触者の外出自粛は求められなくなる③限られた医療機関でのみ受診可能であったが、幅広い医療機関において受診可能になる④医療費等について、健康保険が適用され自己負担が基本となるが、一定期間は公費支援を継続する-の4つだ。マスクの着用なども、基本的には個人や事業者の判断となる。ただし、新型感染症は10年に一度は現れるといわれている。BCP担当者は今回のコロナ対応を検証し、次の感染症に備えてほしい。(大越)

石川県能登地方を震源として震度6強の地震発生

石川県能登地方を震源として5月5日、午後2時半過ぎに珠洲市で震度6強、午後10時ごろには能登市で震度5強の地震を観測した。地震活動は活発な状況が続き、5日だけで震度1以上の地震は58回に達している。この地震で1人が亡くなり、33人が負傷した(7日時点)。さら6~7日には現地が激しい雨に襲われ、大雨警報や土砂災害警報も発出されている。東京大学名誉教授の平田直氏はNHKのインタビューに対し「今回の地震で損傷した家屋などを一刻も早く補修する必要はあるが、この2、3日は非常に強い揺れが起きる可能性が高い。むしろ近寄らずに安全なところにいて欲しい」と述べている。今後の復旧は長期にわたることが考えられる。現地の方々の心中を察するに余りあるが、被災した方は今はまず安全な場所に避難し、復旧に向けて体力を蓄えていただきたい。(大越)

無茶な服務規程が就業規則を骨抜きにする

多くの就業規則を見てきたが、服務に関する規程に「常に明朗はつらつと」「職場では常に笑顔で」のような文言を見るたびにげんなりする。就業規則の服務の項目には、通常、違反すれば懲戒の対象となるようなことが並んでいるはずだ。セクハラやパワハラ、横領、不正、無断欠勤等、深刻なルール違反が並ぶ中、「明朗」「はつらつ」「笑顔」は同列に扱うべき内容だろうか?懸命に働いていても、業績が伸び悩むときはあるし、悪質なクレーマーに憤慨することも、体調が悪くても休めず、歯を食いしばって働く日もある。「常に」元気でいられるはずはなく、これで懲戒などあり得ない!就業規則は会社と従業員間の約束事であり、従業員も会社も守る必要がある。無茶な規程を混ぜ込むことで、「守らなくてもよいもの」「どうせ守れないもの」にしてはいけない。(吉原)

4月26日から「熱中症警戒アラート」運用開始

熱中症警戒アラートとは、熱中症を予防することを目的に、環境省と気象庁が共同で発表し、暑さへの「気づき」を呼びかけるための情報である。前の日の夕方17時とその日の朝5時に、暑さ指数(WBGT)が33以上になると予測した場合に発表される。また、改正気候変動適応法が4月28日の参院本会議で可決成立した。今回の改正で市町村長が冷房設備を有する図書館やショッピングセンターなどを「クーリングシェルター」として指定できるようになり、施設管理者は特別警戒情報の発表時に施設を開放することが求められる。そして、就業時間中に熱中症により死亡した事案で安全配慮義務違反とされた判例もある。自分や周りの健康や安全を守るために熱中症警戒アラートを活用していくと共に、気候変動による法令等の変化に対してもアンテナを張っていきたい。(長谷部)

※参考:大阪高等裁判所平成26年(ネ)第1206号、損害賠償請求控訴事件

▼気候変動適応法及び独立行政法人環境再生保全機構法の一部を改正する法律案の閣議決定について(環境省)

▼熱中症警戒アラート(環境省)

Back to Top