30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

役職員の薬物リスクは他人事ではない

米実業家イーロン・マスク氏の違法薬物常用問題が報じられた。米では一部薬物の使用は州や目的により合法化されているケースもあるが、連邦レベルはそうではない。今後、政府との契約に反する行為で宇宙開発分野など国家的な事業に影響が及ぶ可能性がある。一方、米では経営トップの間で薬物が広がっているという。また、民間企業で従業員に薬物検査を実施している割合が2021年時点で16%(1996年の半分以下)となったほか、従業員の陽性比率が上昇している。心の病を治療する目的でケタミンを処方するケースが増加、企業はもはや勤務時間外の役職員による薬物使用に厳しい姿勢では臨めなくなっているという。役職員の薬物リスクは企業価値に負の影響を及ぼす。昨年、日本の上場企業トップも違法薬物所持の疑いから辞任している。もはや対岸の火事ではない。(芳賀)

短納期の圧力が生む不正の抜本的対策の考察

ダイハツ工業の品質不正問題について第三者委員会の調査報告書によると、不正が繰り返された原因として"短納期の圧力"を挙げている。これは自動車以外の業界でもみられ、納期厳守で事が進む企業は同じ課題と対峙している。第一の再発防止策は、むろん自社で不正が起きない経営の実現が第一、最優先である。自社の責任において不正を失くさなければならない。だが、これだけ不祥事が多い、すなわち不正の防止が難しい現代においては、不正が起きた時を想定した第二の対策を、会社を超えて「業界」で決めてはどうだろうか。例えば「やむなく不良品が製造されたときは、速やかに注文者や購入予定者に説明を行うところ、 "この説明は原因者に押し付けず、商流に含まれる他社も支援する義務を負う"」といったルールだ。各業界でぜひ検討してほしい。(宮本)

災害から何時間でトイレに行きたくなる?

「避難生活が始まって最も苦しかったのは、トイレが使えなかったこと」-今回の能登地震の話ではない。2011年に発生した東日本大震災の被災者の言葉だ。災害時に、生き残った避難者にとって何が必要かを考えたとき、まず「水と食料」を多くの人が思い浮かべるだろう。しかし、実態は少し違うようだ。災害時のトイレ問題に詳しい日本トイレ研究所の調査結果によると、東日本大震災後、宮城県気仙沼市の小学校の保護者36人に「発災から何時間でトイレに行きたくなりましたか?」と聞いたところ、3時間以内に31%、9時間以内では78%がトイレに行きたくなっている。阪神・淡路大震災においても神戸の主婦グループが実施した聞き取り調査では、3時間以内に55%がトイレに行きたくなったと回答しているという。トイレ問題は災害時の最優先事項として捉えたい。(大越)

▼東日本大震災 3.11のトイレ 現場の声から学ぶ (NPO法人日本トイレ研究所)

ハラスメント防止研修は、背景となる問題に応じて行うべきもの

ハラスメント防止の研修依頼を受ける際、「一般的な内容で」と言われると、実はとても困ってしまう。何が一般的かは組織によって異なるもの。どんな常識の中、どんな状況で、どんな逸脱が起きているかがわからないと、何に重点を置くべきかの判断がつかないのだ。例えば暴力や暴言の防止。「暴力や暴言はいけません」までは同じでも、背景に応じてその先の構成を変えていく。厳しく当たれば部下は奮起すると思い込み、叩き潰すばかりの人がいるなら、人権尊重の重要性や効果のない「指導もどき」がいかに無駄かを話すだろう。感情をうまく制御できない人がいるなら、不安に振り回されることの問題点や対処法、周囲が適切にフォローするためのコミュニケーションについて話すだろう。言動と共に背景を聴けば、言動の理由を推察でき、対処法も見えてくる。(吉原)

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