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天災は、忘れぬうちにやってくる!これから始めるBCP

「0~0.9%」という確率はやや高い?切迫したSクラスの活断層は全国に31本! ~BCPの基本を知って、来るべき大災害に備えよう~

総合研究部 専門研究員 大越 聡 総合研究部 専門研究員 大越 聡

資格:防災士 主な研究分野: BCM(事業継続マネジメント)、防災、リスクコミュニケーション、危機管理広報

2022.02.21
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地震 地割れのイメージ

「0~0.9%」という確率はやや高い?切迫したSクラスの活断層は全国に31本!
~BCPの基本を知って、来るべき大災害に備えよう~

防災に限らず、国のテロ対策や今回の新型コロナなどの感染症対策など、さまざまな危機管理を考えるときに重要なのは「予測」「予防」「対応」の3つのフェーズだといわれています。近年、水害時のハザードマップに関してニュースなどで取り上げられることが多いと思いますが、ご自宅や会社の場所などを自治体が発行しているハザードマップで確認することはとても重要です。このハザードマップによる分析が「予測」にあたります。南海トラフ地震が「今後30年以内に70%~80%の確率で発生する」というのも、同じく予測に入ります。その予測に応じて、日ごろからしておくことが「予防」です。地震の対応であればオフィスのキャビネットを固定することや、帰宅困難になった場合に備えて会社に備蓄をしておくことなどが予防になります。そして災害が発生した時に実際にとる行動が「対応」です。あらかじめ初動対応や事業継続のためのマニュアルを整備しておくことです。まとめると、以下のようになります。

①予測…ハザードマップや政府が出す地震の被害予測を確かめ、大災害が発生したら自社や社会的なインフラがどのような状況に陥るかを確認する。

②予防…予測に応じ、自社のオフィスの耐震やキャビネットの耐震固定など、ハードにおける耐震対策を実施するとともに、従業員をオフィスに3日間とどめておくための備蓄を進める。

③対応…地震が発生したときのために、あらかじめ初動対応や避難活動・救護活動のマニュアルを整備しておき、事業の復旧スピードを上げる。

大切なのは、この「予測」「予防」「対応」はセットで考えることが必要だということです。企業のBCPを拝見していて最も足りないと筆者が考えるのは、「予測」の部分です。必要な被害想定をきちんと行っていないために、予防策、対応策が「絵に描いた餅」になってしまうケースが多いと感じています。現在、政府では様々な災害の被害想定をホームページなどで公開していますので、ぜひ一度チェックしてみてください。

▼J-SHIS 地震ハザードステーション (防災科学研究所)
▼重ねるハザードマップ (国土交通省)

さて、地震のハザードマップを見るうえで、少し注意点があります。よく、「今後30年間における南海トラフ地震の発生確率は70%~80%」という政府の予想を目にしますが、これだと一見して「確率が高いな」と分かります。ただ、「この断層で地震の発生する確率は0~0.9%」などといわれると、皆さん「発生確率は少ないな。これなら対策をしなくてもいいや」と考えてしまうかもしれません。実は2016年に発生した熊本地震を引き起こしたと言われる布田川・日奈久断層帯では、「今後30年間に地震が発生する可能性は0~0.9%」と、政府の地震調査研究推進本部では発表していました。同時に、「この「0~0.9%」は日本にある約120本の主な活断層の中では可能性が「やや高い」に分類される」とも記述しています。どういうことなのでしょうか。

実は、日本には2000本以上の活断層が存在すると言われており、それらが複雑に絡み合う地域も存在しています。そのなかで、前述した政府の地震調査研究推進本部では過去の災害の履歴などを調べ、そのなかから地震の発生可能性の高い114本を厳選して「主要活断層」として評価しているのです。熊本地震を引き起こした布田川・日奈久断層帯も主要活断層の1つでした。現在、政府が主要活断層としている活断層は、確率が低くても、実は「いつ地震が発生してもおかしくはない」断層であると考えてもいいでしょう。

▼主要活断層帯 (政府 地震調査研究推進本部)

さて、そのような状況のなか、政府は今年1月に「今までに公表した活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧」のなかで「今後30年間に発生する確率3%以上」の断層31本をを「Sランク」の活断層として発表しました。

▼今までに公表した活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧 (政府 地震調査研究推進本部)
参考図の画像
▼主要活断層の評価結果 (政府 地震調査研究推進本部)

なかでも、以下の8つの断層については確率が8%を超え、阪神・淡路大震災の発生前よりも切迫度が高くなっているとしています。

【阪神・淡路大震災の発生前よりも切迫度が高くなっているSクラス断層帯】

(いずれも今後30年以内)

  • 「糸魚川ー静岡構造線断層帯」(中北部区間) 14%~30%
  • 「糸魚川ー静岡構造線断層帯」(北部区間) 0.009%~16%
  • 「日奈久断層帯」(八代海区間) ほぼ0%~16%
  • 「境峠・神谷断層帯」(主部) 0.02%~13%
  • 「中央構造線断層帯」(石鎚山脈北縁西部区間) ほぼ0%~12%
  • 「阿寺断層帯」(主部・北部) 6%~11%
  • 「三浦半島断層帯」(主部/武山断層帯) 6%~11%
  • 「安芸灘断層帯」 0.1%~10%

Sクラスの31本に次いで切迫度が高い「Aランク」の区間を含む活断層帯は、全国に35あるとしました。2016年に熊本地震を引き起こした「布田川断層帯」は、地震直前の評価で「Aランク」でした。また「不明」(すぐに地震が起きることが否定できない)とされている「Xランク」についても、地震本部では「たとえZランクと評価された活断層でも、活断層が存在していること自体、当該地域で大きな地震が発生する可能性を示すものであることから、活断層であることに留意する必要がある」としています。いずれにせよ、全国に114本ある「主要活断層」については日ごろから十分な備えが必要なことに、間違いはないでしょう。

また、「主要活断層」が引き起こすのが内陸型の地震であるのに対し、東日本大震災を引き起こした海溝型地震の調査結果もあわせて発表されています。南海トラフに加え、「千島海溝の17世紀型」「根室沖から色丹島沖及び択捉島沖」「青森県東方沖から岩手県沖南部」「宮城県沖」「福島県沖」「福島県沖から茨城県沖」「青森県東北沖から房総沖の海溝沖」などが「今後30年以内の発生確率が26%以上」の「高いランク」が予測されています。自社の拠点などには警戒を怠らぬよう、呼び掛けることなどが必要でしょう。

参考図の画像
▼出典:主な海溝型地震の評価結果 (政府 地震調査研究推進本部)

(了)

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