暴排トピックス

コンプライアンスやリスク管理に関するその時々のホットなテーマを、現場を知る
危機管理専門会社ならではの時流を先取りする鋭い視点から切り込み、提言するコラムです。

暴排とAML(アンチ・マネー・ローンダリング)(2013.5)

1.暴排とAML(アンチ・マネー・ローンダリング)

 既にご案内の通り、平成25年4月1日より、犯罪収益移転防止法(以下「犯収法」)が改正施行されています。この法律は、直接的にはマネー・ローンダリング行為を規制する法律ではありますが、反社会的勢力排除・暴力団排除(以下、まとめて「暴排」という)にとっても、直接・間接に重要な意味を持っています。

▼警察庁刑事局組織犯罪対策部犯罪収益移転防止管理官(JAFIC)「犯罪収益移転防止法の概要(平成25年4月1日施行対応)」

 今回の改正の眼目は、「本人確認」の厳格化(実務としては、「本人確認」から「取引実態確認」への流れ)と「リスクの高い取引の確認」の厳格化と言えると思います。

 その中で、「リスクの高い取引」としては、以下の4つの類型が挙げられており、このようなハイリスク取引時には、より厳格な管理が求められることとなります。

①なりすましが疑われる取引(改正犯収法4条2項1号)

②関連取引時の確認事項を偽っていた疑いのある顧客等との取引(改正犯収法4条2項1号)

③犯罪収益移転防止の制度が十分に整備されていない特定国等に居住・所在する顧客等との取引(改正犯収法4条2項2号)

④厳格な顧客管理を行う必要性が特に高い取引(改正犯収法4条2項3号)

 また、取引時に確認が必要な「本人特定事項」については、従来、個人は「住所・氏名・生年月日」、法人は「名称および本店または主たる事務所の所在地」が対象となっていましたが、今回の改正で「取引目的、(個人の場合は)職業、(法人の場合は)事業内容および実質的支配者」にまでふみこんで確認することが求められることとなりました。

 前回ご紹介した通り、暴力団等がマネー・ローンダリング事件に関与している実態(昨年のマネー・ローンダリング全事案の23.1%に暴力団等が関与)をふまえれば、実質的支配者の抽出など取引実態の確認が厳格化されることによって、不透明化する反社会的勢力の見極めについても大きく寄与することが期待されます。

 このような暴排とAMLの実務上の関連については、既に、金融庁のパブコメで以下の通り指摘されていることからもご理解いただけると思います。

 「金融機関が「犯罪による収益の移転防止に関する法律」に基づく「取引時確認」及び「疑わしい取引の届出」を行うに際しては、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(平成19年6月19日犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)の趣旨を踏まえ、反社会的勢力との関係遮断を念頭に置いて、態勢を整備し、適正にこれらを実施する必要があると考えます。」(以上引用)

▼金融庁「主要行等向けの総合的な監督指針」及び「金融検査マニュアル」等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等について(平成24年11月)

 もう少し実務的に噛み砕いて言うならば、例えば、AMLにおいて重視されている「KYC(=KnowYourCustomer)」という、「顧客情報を積極的に収集・分析して実態を把握することを通じて懸念事項の端緒を抽出しようとする姿勢」は、暴排における反社チェック実務の基本スタンスそのものと言えます。

 さらには、AMLにおいて、最近特に言われている「KYCC(=KnowYourCustomer’sCustomer)」という「もう一歩踏み込んで顧客の関係者にまで注意を払うべき」とする考え方については、反社チェック実務においても当該取引先の上流・下流の取引先や周辺関係者にまでそのチェック対象を拡げることによって精度の向上を図るという「商流における取引先管理」の厳格化の流れと全く同じものと言えます。

 以前の暴排トピックス(2012年2月号)でも指摘させて頂いておりますが、暴排の取組みは、ここにきて、不透明化・巧妙化に加えて「グローバル化」が重要なキーワードとなっており、覚せい剤等の薬物や武器の売買、人身売買や臓器売買といった国際的な取引、現地マフィアとの提携、国内事業者等の海外展開に伴う伝統的資金獲得犯罪の海外市場開拓と展開・現地化、現地高官等との癒着・不適切な贈収賄行為など、暴力団等の活動のグローバル化や「海外法規制の周縁(域外)への拡大に対する対応」という視点が求められています。

 したがって、「自社とは直接的に関係ないから問題ない」ではなく、自社の関与する商品・サービスやスキームが国内外の犯罪組織に利用されるなどして直接・間接に犯罪組織との接点を持ってしまう、すなわち「知らず知らずのうちに(意図しないままに)巻き込まれるリスク」があるという点をあらためて認識する必要があります。

 さらには、グローバル化だけではなく、新たなビジネスモデルやサービス、スキームの登場に伴う、それまで予期していなかった「新しいリスクへの対応」といった視点からも暴排やAMLに取組んでいく必要があります。

 最近では、米国が、マネー・ローンダリング規制を、いわゆる「仮想通貨」にも適用する方向だということが報道されていますが、これなどもその最たる例だと言えると思います(FBIの内部資料には「たとえば、児童ポルノやインターネットギャンブルなどの違法行為がオンライン上ですでに行われており、簡単に使える決済手段を必要としている。「仮想通貨」は資金洗浄や人身売買の関係者、テロリストなど、インターネットを利用してグローバルに金のやりとりを行い、従来の金融システムを避ける犯罪者らにとって魅力的な手段になる可能性がある」との記述がみられるとのことです)。

 インターネット上で取引されている新しい形の貨幣が、違法行為の資金源になっているとの懸念や事件化された事例(福井県の高校生の不正アクセス事件など)は以前からありましたが、規制が拡大されれば、仮想通貨を発行・交換する企業にも、従来型の送金サービス業者等と同様の規制が適用されることになります。

 そして、米国で規制対象になれば、国内の事業者においても、その時点で直接・間接にその影響を受けるだけでなく、遅かれ早かれ日本でも同様の規制が導入されるであろうことは容易に想定できるところであり、一般事業者(オンラインサービス事業者等)が犯収法の定める「特定事業者」として金融機関や不動産事業者等と同等のレベルでAMLの取組みを行うことが求められる可能性があるということになります。

 したがって、今後の規制動向については、自社の事業領域か否かを問わず、経営リスクとして重大な関心をもって注視していく必要があると言えます。

 このように、改正犯収法の施行は、実は暴排の取組みにおいても、大きなインパクトを持つものです。重要なことは、海外の規制動向と日本のAMLの取組みに対する国際的な評価を見る限り、日本においても、今後、その要求レベルがますます高くなること(まだまだ欧米の規制水準から見れば甘いということ)、広く一般事業者にも規制の範囲が拡がっていくことは間違いないということであり、その実務においては、暴排とAMLの関連を意識しながら、実効性と効率性を追及していく必要があるということだと言えます。

2.テロ対策/CTF(テロ資金供与対策)

1)在アルジェリア邦人に対するテロ事件

 今年1月の在アルジェリア邦人に対するテロ事件は記憶に新しいところですが、海外における「邦人・企業の保護」という難問に対して、このような事件は「国家安全保障」ではなく、政府と民間による「危機管理」と「情報収集・分析」に関わる問題であるとして、官民それぞれの対応とその連携強化についての提言がなされています。

▼首相官邸「在留邦人・在外日本企業保護に関する有識者懇談会報告書」(平成25年4月)

 この提言では、「長続きする官民連携メカニズムを作り、育てていかなければならない」として、政府と海外進出企業との間でテロ関連情報を平時から共有するため、在外公館での「海外安全対策連絡協議会」の定期開催を徹底することや、政府内に「危機管理研修センター」(仮称)を設置して、開発途上国に進出している企業を対象に、テロ対策などの研修(官民合同海外安全セミナー・演習)を組織的、効率的に実施すること、国民の意識改革・啓発活動の推進、在外公館警備対策の拡充、情報機関間の人事交流と資源の重点的配分などが盛り込まれています。

 なお、本報告書の中で「危機管理」のあり方(クライシス対応における真髄)についての正鵠を得た記述がありましたので引用しておきます。

 「危機」とは、不正確な情報しか入手できない中、不完全な対処を余儀なくされる状況である。「危機管理」とは、そのような状況下でも、政府・民間企業が最善と考えられる情報分析、政策判断及びその実行を強いられる知的プロセスである。この点は正確に理解されなければならない。

 また、本報告書に先立ち、政府間関係者が本事件の対応に関する検証を行った報告書も公表されていますので、あわせてご参照ください。

▼首相官邸「在アルジェリア邦人に対するテロ事件の対応に関する検証委員会検証報告書」(平成25年2月)

2)ボストン爆弾テロ事件

 先月発生したボストンマラソンを狙った爆弾テロ事件もまた衝撃的なニュースでしたが、今回のテロ事件においては、テロの発生メカニズムを考えるうえで特徴的な要素がいくつかあったように思われます。

 例えば、アメリカを狙うテロは「イスラム教過激派組織に操られたアラブ系テロ」との固定観念から外れ、テロ組織とつながりを持たない単独行動型のアメリカ育ちのテロリスト、いわば「内なるテロリスト」によるものであったという意味で衝撃的だったという指摘や、イスラム系移民の若者が抱えるアイデンティティー・クライシスを解消するメッセージを政治指導者が発信し、1つにまとまった社会を構築する努力を続けない限り、サイバー空間等でも1匹狼テロリストは増殖し続けるといった指摘などが識者からなされています。

 事業者においては、テロ組織やテロリスト、あるいはそれらと人的・経済的に関与があるとされる個人・団体等に関して各国・機関が公表している「制裁リスト」に該当がないかスクリーニングすること、あるいは、「資金の流れ」を端緒としながらもむしろそれ以上に「当事者間の関係」を探る努力をすることが、CTFの取組みとして当面は重要となりますが、「自らが標的になる場合」や「単独行動型の内なるテロリストによる(異分子というより身内による)犯行」などについても、直接、暴排とは関係はありませんが、好むと好まざるに関わらず、日本の置かれている状況からみても、企業の危機管理として、十分にそのリスクを認識しておくことが重要であるのは言うまでもありません。

3.最近のトピックス

1)準構成員の認定を巡る裁判

 詐欺事件で被告が暴力団の周辺者とされる「準構成員」に当たるかどうかを巡る裁判が京都地裁で審理されています。

 問題となっている事件は、元会社役員の男が準構成員であることを隠して、不動産業者を通じて自宅用マンションの売買契約をしたとして、詐欺罪に問われているもので、契約書には準構成員など「反社会的勢力」でないことを確約する暴排条項があったもので、この条項への該当の可否が問われているものです。

 準構成員については、日ごろの人間関係や暴力団との関与の度合いなどで警察が認定するとされています。

 報道によれば、検察側が「組事務所の掃除や組員の送り迎えをしていた」との元組員の証言を引き出す一方で、弁護側は「知人に組員はいるが、組員になる前からの知り合いで、組の活動とは無関係」と主張しています。また、警察に照会した際には、準構成員としての開示はなされなかったといいます。

 いずれにしても、今後の暴排実務にとっても重要な裁判であり、注目していきたいと思います。

2)準暴力団の取締り強化

 警察庁は、集団で常習的に暴力的な不法行為をしているグループを「準暴力団」として取組みを強化するとしていますが、最近でも、以下のような事件がありました。

①競合エステ店脅迫容疑などで「怒羅権(ドラゴン)」幹部ら5人を逮捕

 千葉県松戸市で経営していたエステ店の競合店を廃業させようと、経営者の女性を「早く店を閉めないと何をするか分からないよ」などと脅迫したり、路上で女性の夫の顔を平手でたたく暴行を加えたとして、脅迫と暴力行為処罰法違反の疑いで逮捕されています。

②抗争続ける暴走族OBループ11人を逮捕

 対立グループを襲撃する目的で金属バットを持って集合したなどとして、凶器準備集合容疑などで暴走族「太田連合」OBグループのリーダーら8人と、対立する「零神」OBグループの男ら3人の計11人が逮捕されています。

 太田連合と零神は、警察当局によるメンバーの摘発で平成22年に壊滅状態となっていますが、いずれもOBグループとして活動を継続しているとのことです。

③「怒羅権」がネット不正送金に関与の疑い

 インターネットバンキングの口座から預金を不正送金したとして、不正アクセス禁止法違反と電子計算機使用詐欺の疑いで、中国籍の建築作業員が逮捕されています。警察では同容疑者を現金を引き出す「出し子」とみていますが、預金を引き出す際に「怒羅権」幹部に携帯電話で連絡したり、預金引き出し後に逃走する際に別の怒羅権関係者の車を使っているなど、怒羅権の組織的な関与が疑われるということです。

 以前から、怒羅権や関東連合OBなどが振り込め詐欺などの犯罪を敢行しており、その背後には暴力団がいると噂されていますが、全容が解明されてくれば、彼らの行動様式から「準暴力団」と定義されていたものから、正に「共生者」として位置づけられるようになるものと期待されます。

3)警察・行政・司法の動向
①福岡県暴追センターが「適格団体」に

 昨年改正された暴力団対策法において、暴力団事務所の立ち退きを求める住民に代わって、都道府県暴力追放運動推進センターが原告として暴力団事務所使用の差止請求訴訟を行うことができる新たな制度が導入されています。ただし、各センターが認定を受けるには、「業務遂行に必要な規定の整備」「専門知識を持つ弁護士らが所属」「訴訟を遂行できる財源を確保」の3つの要件を満たす必要があり、最大のネックは、1案件200万円以上はかかるとされている訴訟費用を負担できるかという「財源の確保」になっているようです。

 今回、福岡県と神奈川県の暴力追放運動推進センターが新たに「適格団体」に認定され、7都県まで広がりましたが、福岡県のセンターは、福岡県の補助金支給が決まったため認定を申請したということです。

▼警察庁「全国の適格都道府県センター一覧」

②久留米市が暴力団事務所の購入検討

 福岡県久留米市にある指定暴力団道仁会の旧本部事務所を巡り、周辺住民が使用差し止めを求めた訴訟で、久留米市が旧本部事務所の買い取りを検討しているということです。訴訟は福岡地裁久留米支部で昨年11月から和解協議が続いています。

 なお、久留米市では1989年、道仁会と指定暴力団山口組系暴力団との抗争事件をきっかけに道仁会の本部事務所を購入しており、今回買収が実現すれば2回目になります。

 ちなみに、暴力団と不動産売買を行うこの取引について、暴排条例との関連で言えば、不当に暴力団側を利することにならない限り「やむを得ない場合」に該当するものと思われます(事業者の場合として福岡県暴力団排除条例で言えば、第15条第3項の「ただし、・・・その他正当な理由がある場合は、この限りではない」に該当するものと考えられます)。

③暴力団の離脱と復帰

 警察の調査として、刑務所に服役中、警察の説得などで暴力団を離脱した元組員の2割弱が出所後、暴力団に復帰していたことが分かったと報道されています。

 復帰を防ぐため警察庁は暴力団離脱者の出所情報を保護観察所などと共有、就労支援などで社会復帰に促すよう全国の警察本部に通達を出すということです。

④山口組弘道会ナンバー2一部無罪破棄、猶予刑言い渡し

 暴力団幹部であることを隠してゴルフ場でプレーしたり、クレジットカードをだまし取ったりしたとして詐欺罪に問われた指定暴力団山口組弘道会ナンバー2の控訴審で、名古屋高裁は、懲役1年6月、執行猶予3年の判決を言い渡しています。

 判決によると、同被告は過去、クレジットカード会社に勤務先などを偽って申告し、カード2枚を詐取。また、暴力団の入場や利用を禁じた長野県内のゴルフ場で、暴力団幹部であることを隠してプレーし、ゴルフ場に財産的被害を与えたということです。とりわけ、ゴルフ場詐欺事件については、裁判長は「自ら利用手続きをしなくてもいいように共犯者が取りはからっていたことを承知し、詐欺の故意や共謀は認められる」としています。

 ゴルフ場詐欺事案については、地裁での判決が2分される傾向にありましたが、ここにきて、詐欺罪が成立するとする判決が優勢となってきたように思われます。

4)山梨県の暴力団抗争激化

 山梨県で山梨侠友会と稲川会山梨一家の抗争に絡んだ暴力団の抗争による発砲事件などが相次いでいます。

 4月30日には、笛吹市の石和温泉街で、暴力団・山梨侠友会が所有するワゴン車に複数か所、近くに駐車中の一般市民の乗用車に1か所、衣料品チェーン店の外壁に1か所の弾痕とみられる痕が見つかっておりますが、昨年11月から続く発砲事件は、今回で19件に上り、一般の商業施設が被害を受けるのは初めてということです。

5)生活保護と薬物と暴力団

 インターネットで販売する目的で覚醒剤などを所持したとして、警視庁と秋田県警の合同捜査本部は、覚せい剤取締法違反(営利目的所持)などの容疑で、指定暴力団住吉会系組員らを逮捕しています。同組員らは、「確実手渡し」を意味する「○実○渡」というホームページを開設し、200人以上に覚醒剤を販売し、3,000万以上を売り上げており、一部が暴力団に渡ったとみられていています。また、覚醒剤を購入した男女17人も逮捕され、うち9人が薬物乱用の前歴のない”初心者”で、同容疑者らはまとめ買いした顧客には注射器を無料で付けたりして初心者向けの販売を得意としており、中には生活保護受給者もいたということです。

6)脱法ドラッグ規制を巡る動向
①消費者庁が脱法ドラッグ販売の37サイトを公表

 脱法ドラッグを通信販売する37サイトが、特定商取引法(表示義務)違反に基づく是正要請に応じなかったとして、サイト名とURLが公表されています。

 消費者庁によれば、是正要請は142サイト、うち31サイトは既に閉鎖されているということです。なお、特定商取引法では通販サイト運営業者に、事業者名や住所、電話番号などの表示を義務づけています。

▼消費者庁「特定商取引に違反しているおそれのあるいわゆる「脱法ドラッグ」の通信販売サイトの公表について」

②脱法ドラッグ2種類を麻薬指定

 政府は、脱法ドラッグとして流通している2物質について麻薬に指定する政令を閣議決定しました。前回取り上げたように、すでに「指定薬物」として製造、販売が禁止されていますが、依存性など麻薬と同様の有害作用が確認されたということで、今後は所持や使用も罰則付きで禁止されることになります。

③脱法ドラッグ対策強化に向けた法改正の動向

 自民党などが提出していた脱法ドラッグ対策強化の一環で薬事法と麻薬取締法の一部改正案が、参院本会議で、全会一致で可決されています。

 法案は、薬事法で製造や販売が禁止されている「指定薬物」の疑いがある商品を、自治体職員らが検査のために強制没収できる、麻薬取締官に指定薬物を捜査する権限を与えるとの内容となっています。

▼衆議院「麻薬及び向精神薬取締法及び薬事法の一部を改正する法律案」

7)詐欺的手法の高度化・洗練化
①「詐欺注意」電話作戦

 オレオレ詐欺の被害に遭わないように、県民に電話で注意を呼びかけて効果を発揮してきた神奈川県警の「振り込め詐欺被害防止コールセンター」が、3月中旬から休止。一方で、今年1月から4月24日までに、神奈川県内の500万円以上の被害は53件あり、昨年の同時期の22件を大きく上回る結果となっています。このコールセンターが今年度の予算が執行される5月中旬まで再開できないため、高額の被害が最近相次いでいる原因になっているとの報道がなされています。

 事実であれば、この取組みの抑止効果の大きさが立証されたことになる一方、有効な対策をこのような理由で中断することに合理性を欠き県民の理解が得られないという点で主客転倒であり、「お役所仕事」振りが大変残念なことと思われます。

②ヤミ金が「偽装質屋」

 ヤミ金業者が、質屋の法定金利が貸金業より高いことに目を付け、価値のない品を”質入れ”させて金を貸す「偽装質屋」の活動を活発化させており、警察に摘発された3業者だけでも貸付金額は計23億円にのぼるといった報道がなされています。

 各種統計を見る限り、平成19年以降、ヤミ金による被害は減少傾向、さらには小型化の傾向にあります。貸金業法の改正や、金融機関による不正利用口座の凍結措置の取組みなどが犯罪の拡大を押しとどめている状況にあるようですが、このような脱法行為は正に彼らの得意とするところでもあり、早急な対応が必要になると思われます。

③預金口座の不正利用への金融機関の対応

 上記の通り、金融機関では、犯罪等に利用された不正な口座について、現在、積極的な情報提供と情報共有を図り、凍結等の実施などの措置を講じています。

 平成25年1月1日から3月31日までに金融庁及び全国の財務局等において、金融機関及び警察当局へ情報提供を行った件数は372件、平成15年9月以降、情報提供を行った累計は39,680件という結果が公表されています。

 なお、平成25年3月31日までに、当局が情報提供を行ったものに対し、金融機関において、21,881件の利用停止、14,045件の強制解約等が行われたということで、これらが一定の抑止効果を果たしているものと思われます。

▼金融庁「預金口座の不正利用に係る情報提供件数等について」

④レンタル携帯の犯罪への悪用

 振り込め詐欺やヤミ金融などの犯罪に悪用されたレンタル携帯電話の約98%がNTTドコモだという警察の調査結果があったということです。他の大手通信会社が契約先の事業規模に応じて回線数を制限しているのに対し、ドコモは上限を設けていないことも判明しており、捜査関係者はこれが「一つの大きな要因」とみて、警視庁が契約先のレンタル業者の審査を厳格化するよう要請しています。

 携帯電話は、これらの犯罪の「三種の神器」(他は、「借名・偽名口座」「名簿(個人情報)」)とも呼ばれていることも事業者として十分認識のうえ、犯罪を助長することのない、「社会の公器」としての責任を果たす意味でも厳格な取引先管理・審査を実施する必要があると思われます。

⑤ワンクリック詐欺が巧妙化

 悪質サイトの運営者が詐欺容疑での摘発を免れるため、内容の異なる確認画面を被害者に複数回クリックさせて高額請求を正当化する「4クリック詐欺」の手口が横行しているとのことです。

 また、スマホ向けにはインストールするだけで請求画面が表示されるアプリの配信が目立ち始め、グーグルの公式サイトでも500以上見つかっているとのことであり、十分な注意が必要です。

4.最近の暴排条例による勧告事例ほか

1)東京都暴排条例による中止命令事例

 暴力団排除宣言をした飲食店で店長を脅したとして、東京都公安委員会は、指定暴力団山口組系組幹部に、東京都暴力団排除条例に基づき中止命令を出しています。同条例が施行されてから、中止命令が出されたのは初めてということです。

2)大阪府の勧告事例

 暴力団組長に、計19回に渡り飲食店で組の指示や伝達を行う「定例会」の場を提供したとして、大阪府警は、大阪府内の飲食店経営者と山口組直系組長に対し、大阪府暴力団排除条例に基づき指導を行っています。

 経営者は「暴力団とは分かっていたが、店の売り上げになるので引き受けていた」と話しているということですが、以前もご紹介した通り、大阪府警の調査によれば、過去、暴排条例により勧告を行った事業者は、全て「相手が暴力団と知っていた」「条例違反となることは分かっていた」ということであり、暴排の取組みはまだまだ緒に就いたばかりだと思い知らされます。

3)神奈川県の暴排条例施行から2年

 神奈川県では、同条例の適用件数が17件に上るといいます。代表的なものとしては、これまでご紹介してきた通り、「暴力団の行事と知りながら場所を提供した飲食店」「暴力団の車を無料で敷地内に駐車させたガソリンスタンド」「暴力団が関与する海の家に出店資格を与えた海水浴場の組合」への勧告などがあり、利益供与した事業者や組員への勧告の他にも、暴力団員の逮捕や中止命令の発出事案も出ています。

 また、暴力団が関係する企業に自治体発注の事業を受注させないため、これまでに、暴力団と密接な関係があった印刷業者と広告業者、暴力団が実質経営していた災害用仮設トイレの提供業者の計3事業者に対する排除措置が実施されています。

▼神奈川県「暴力団排除に関連した、指名停止等措置、排除措置の情報」

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