暴排トピックス

1. 継続監視(モニタリング)の実務

1) 反社会的勢力の実態をふまえた反社チェックの考え方

 本来、反社会的勢力かどうかを見極める作業(反社チェック)とは、日常業務の中から「疑わしい」端緒を把握し、それを組織的に精査、判断して、排除に向けて取り組む一連の作業だと言えます。

 その中で、外部から提供される情報や自社で収集した情報をベースに、各社で整備している反社会的勢力データベース(以下「データベース」)を利用した「スクリーニング」が、反社チェックの代表的な手法であり、データベースへの該当から反社会的勢力を見極める重要な手がかりを得ることができます。

 しかしながら、反社会的勢力は、データベースに該当しないよう実態を巧妙に隠して接近してくるため、必ずしも「データベースに該当しない=反社会的勢力ではない」ことに注意が必要です。このような反社会的勢力の実態の不透明化や巧妙化の現実、データベースの限界をふまえれば、データベースに過度に依存していては、彼らを正しく見極めることは難しいと言ってよいでしょう。

 一方で、反社会的勢力は、「組織性」「暴力性」「犯罪性(犯罪親和性)」「利欲性」といった本質的性格を有し、そこから、「違法性を認識」しながらも、「手っ取り早く、大きく儲けようとする」「弱いところから侵入する」といった行動様式が導かれます。それらの行動様式が、普通の人や企業とは何か違うという「違和感」とか「疑わしい」といった感覚を私たちに感じさせる端緒になります。

 スクリーニングだけではうかがい知ることのできないこれらの端緒情報こそ、反社チェックにおいては極めて重要であり、データベース情報より「鮮度」が良く、「精度」も高い傾向にあると言えます。

 そして、このような端緒情報は、必ず日常業務の中に潜んでおり、それを鋭敏にキャッチできるためには、正に最前線にいる現場の役職員の「暴排意識」や「リスクセンス」を磨いていくことが求められているのです。その意味では、規程・マニュアル類の周知やeラーニングなど各種研修を通じて、認識を高める取組みが企業には必須と言えます。

 また、別の言い方をすれば、反社会的勢力が高い「組織性」と人脈等を駆使した活動を行っているという現実をふまえれば、反社チェックとは、調査対象者(社)である「点」とつながる関係者の拡がりの状況をふまえ、「真の受益者」(実質的に利益を得ている者)の特定に向けて、「面」でその全体像を捉えることで、その「点」の本来の属性を導き出す作業だとも言えます。

 スクリーニングの結果だけでは捉えきれない、表面的な属性で問題がないと思われた「点」が、「面」の一部として暴力団等と何らかの関係がうかがわれることをもって、それを反社会的勢力として、関係を持つべきでない、排除すべき対象と位置付けていかなければなりません。

 そして、このような本質的な反社チェックのあり方から見た場合、預金取引や賃貸借契約、保証契約、既存取引先の一括チェック等におけるデータベース・スクリーニングに代表される、機械的・システム的な方法やそれに伴う判断は、あくまで本来的な反社チェックの「代替策」に過ぎません。

 したがって、このような効率的な手法に依存するしかない「入口」審査においては、データベースの限界と相まって「精度」が不十分である(すなわち、100%見抜くことは困難である)こと、結果として、自社が既に反社会的勢力と関係が生じてしまっていることを強く認識した業務運営を行うべきだと言えます。

 つまり、「入口」審査の限界をふまえた「事後検証(事後チェック)」の精度向上の視点が一層重要となるのです。

2) 預金取引における継続監視(モニタリング)

 機械的・システム的なチェックとならざるを得ない既存取引先チェックの代表例として、預金取引の継続監視(モニタリング)について考えてみます。この大量の対象先をモニタリングしていくにあたっては、まずは、データベースの活用の仕方を工夫することが最も効率的です。

 具体的には、各行が整備しているデータベースが適宜更新されていることをふまえ、一定期間(週単位、月単位、4半期/半年など、頻度については各行が主体的に判断することになります)のサイクルで、繰り返し照合作業を行うという「高頻度のスクリーニング」、あるいは、暴力追放運動推進センター(暴追センター)や民間で提供されているデータベースや記事検索サービスの活用といった複数のデータベースを組み合わせて利用することで「粗い網の目」を狭めていく「重層的なスクリーニング」の実施などが考えられます。

 次に、このようにして得られたデータベースへの該当情報については、その信憑性や精度を高めるために、個人であれば周辺情報や警察への情報提供を求めるなどして同一性を精査することが求められます。また、法人であれば、チェック対象範囲をさらに拡大することやチェック手法を多面的に展開することにより、自社で詳しい追加調査を行う、外部専門家に依頼するなどして、より深く事実関係を把握する、今後の対応を見据えた証拠を収集するといった対応が考えられます。

 なお、この法人に対する追加調査のポイントとしては、以下のようなものがあげられます。

① チェック対象者の範囲を拡大する

  • 退任した役員 
  • 子会社や関係会社 
  • 過去の商号 
  • 取引の仲介者(紹介者) 
  • 疑わしい先の主要な取引先や株主、融資先・投資先など
  • 経営に関与しうる顧問や相談役、外部のコンサルタント・アドバイザーなど
  • 同一所在地の別会社・入居ビル所有企業等およびその役員・株主など
  • 株主や取引先の実質的な支配者など

② チェック手法を追加し多面的に情報を収集する

  • 商業登記情報(履歴事項全部証明書・閉鎖事項全部証明書)の分析 
  • 風評の収集(リアル/Web)
  • 許認可・届出の状況
  • 代表者等の自宅等に関する不動産登記の状況など
  • 資金調達の状況、業績、財務状況など 
  • 現地確認(実体確認)および実態確認

 また、これらの追加調査の状況とデータベース・スクリーニングや新聞記事等の詳細を多面的に照合していくことにより、調査の精度を上げていくことになりますが、個人の場合も含め、これらの作業においては、「同一性の精査」(同姓同名・同年齢の精査)が重要なポイントとなり、実務上高いハードルとなっています。

 なお、具体的な同一性の精査のポイントについては、以下の通りです。

① データベース・スクリーニング等で判明した事件・事故報道に関する、報道当時の新聞紙面等(原典)を図書館等で入手することが望ましい。実際の新聞紙面からは、以下の情報が入手できるため、有効に活用したい。

    • 事案発生当時の年齢(±1歳の誤差で現在の年齢を推定できる)
    • 生活圏・職業履歴等(事案発生当時の背景事情を把握することで当時と現在の連続性など一定の推定も可能となる)

【例】役員の欠格期間と実際の就任状況の不整合(報道等から判明した社会不在の時期に役員として登記されている等)、生活圏・職業履歴の不整合(例えば、報道では医師、実際は弁護士といった相違)など

  • 掲載されている写真(風体等)

② 許認可・資格取得状況など入手可能な公知情報を追加で収集し精査する。

③ それでも疑わしい場合は、警察に相談することが望ましい。

 追加調査、同一性の精査の結果、全く別人であると判断できる場合以外については、「グレー」先として、継続監視(モニタリング)すべき対象先と位置付けます。

 そこでは、預金取引の状況(入金先・送金先等の把握、特異な動きはないか等)を重点的に確認していくともに、定期的なスクリーニングや風評チェックの実施等により、反社会的勢力を裏付ける情報の収集に努めることが求められます。

【注】前回のコラムでもお話した通り、例えば、暴力団構成員の生活口座の契約解除実務においては、本来速やかに解除すべきところ、口座の動きをモニタリングすることで生活口座としての利用を確認できていることをもって、解除の実行を猶予しているといった合理的な理由も考えられるところです。同様に、グレーの法人取引先において、不審な資金の流れや商流がないかをモニタリングすることは極めて重要な意味を持っています。

 さらには、定期的なモニタリングの実施状況を、管理部門や内部監査部門が確実にフォローしていくところまでチェック態勢(プロセス)を整備しておく必要があります。

3) 融資取引における既存先のモニタリング

 預金取引の一斉チェックが機械的・システム的な手法の代表とすれば、融資取引はその対極の例となります。資金の提供により直接的に活動を助長する可能性のある取引形態であることから、当然ながらより深度のあるチェックが求められています。

 すなわち、データベース・スクリーニングのみのチェックが、本来的な反社チェックの「代替策」に過ぎないことをふまえれば、融資取引においては、前述した「登記情報の精査」「風評の収集」「実体・実態確認」その他の手法を組み合わせるなどして、反社チェック本来の形に近づける努力をすべきですし、そうすることが求められていると言えます。

 したがって、継続監視(モニタリング)手法としては、金融庁も例示している経営陣や株主の変動、売上・利益等の状況、債務の返済状況のほかに、最新のデータベースとの照合、直近の登記情報の取得・精査、直近の風評の収集、最新の稼働状況や実態・実体の確認といった、入口審査に準じたチェックを定期・不定期的に実施していくことがポイントとなります。

 そして、これら「事後チェック」の主役は、現場レベルの「日常業務における端緒情報の把握」であり、現場の役職員の「暴排意識」や「リスクセンス」をフルに発揮して、些細な変化、違和感を認知していくことが最も重要となります。

 また、いわゆる「行為要件」とされる、「法的責任を超えた不当な要求行為」や「暴力的要求行為」、「誹謗中傷」「名誉棄損」「信用棄損」といった悪質な行為が、モニタリングや接触の過程で確認された場合には、それらを証拠化して取引停止・解約に向けて法的な対応を検討していくこともできます。

 なお、社会情勢の変化によって、継続監視としていた「グレー」の取引自体が問題となってしまう可能性もありますが、「放置」していたなど深刻なレピュテーション・リスクに直面する可能性も否定できず、「短期的な損失を被ることも厭わず関係を解消する」「訴訟リスクを認識しながら契約解除に踏み込む」といった対応も、場合によっては求められると思われます。

 ただし、現時点で出来ることとしては、民間企業として出来る最大限の努力を講じて解消に向けて取り組んでいること、弁護士など外部専門家と連携した対応を行っていること、それでも法的なリスクを含め完全に排除できないものについては、「最終的に属性を確認できる根拠が得られれば関係を解消する」「関係解消のタイミングを注意深く監視する」といった組織的判断のもと、常に必要な注意を払いながら厳格に継続監視(モニタリング)を行っていることを、状況に応じて、「いつでも」「丁寧に」説明できるようにしておくことが重要となります。

 そのためにも、常に「グレー」だからといって放置するのではなく、重大な関心を持って監視しているという状況を作り出しておくこと=継続監視(モニタリング)プログラムを確実に履行しておくことがポイントとなるのです。

2.最近のトピックス

1) 全銀協と警察庁データベース接続の動向

 昨年の暴力団融資問題以降、全国銀行協会(全銀協)は、警察庁のデータ活用について、本格的に検討を進めていると言われています。しかし、警察庁は、民間団体である全銀協とのデータ接続には守秘義務などの面で課題があるとして、慎重な姿勢を崩しておらず、その先行きは不透明です。

 報道によれば、金融庁、警察庁、全銀協の三者は2015年度予算にシステム開発の経費を計上する方向で協議してきたものの、今回は見送ることを決定、最短でも16年度以降となることが確実な情勢ということです。

 また、一方で、全銀協は、「預金保険機構」に警察庁とのデータベースを接続し、同機構を通じて照会する方法を模索しているとも報じられています。

 同機構は、預金保険法に基づいて守秘義務が課せられているため、警察庁が懸念する情報管理面の問題をクリアできるほか、整理回収機構による特定回収困難債権の買い取りなどを通じて、反社会的勢力への融資債権を回収するなどの対応実績が既にあります。

 しかしながら、金融庁が「警察庁データベースとの接続のみをもって、『反社会的勢力との関係を遮断するための取組みの実効性を確保する体制』や『適切な事後検証を行うための態勢』が構築されたと判断するものではない」とコメントしている意味を理解する必要があります。

 民間事業者におけるデータベースの拡充においては、個社単位で行う「自助」がまずもっての基本であり、それを補う業界データベース(共助)、警察等の情報提供(公助)を組み合わせながら、その精度を高めていくことになります。そして、前述の通り、各事業者においては、データベースに過度に依存することなく、データベースの限界を乗り越えるために、多面的な手法を活用した本来の反社チェックや内部管理態勢のあり方に近づける努力をすることも必要です。

2) 警察庁の各種統計資料から

① 平成26年上半期の暴力団情勢

 ▼ 警察庁「平成26年上半期の暴力団情勢」

 今年上半期(1~6月)の特徴的な事項としては、以下のような点があげられます。

  • 暴力団等によるとみられる事業者襲撃等事件が2件、対立抗争に起因するとみられる不法行為が3回発生している
  • 平成24年12月以降、対立抗争に起因するとみられる不法行為の発生はみられず、平成26年6月には、道仁会と浪川睦会に対して行ってきた特定抗争指定の期限の延長を行わなかった
  • 平成17年以降、暴力団構成員等の検挙人員は減少傾向にあったが、平成26年上半期においては、10,908人と前年同期に比べ546人増加した
  • 5月に鹿児島、6月に熊本において、それぞれの県の暴力団情勢を踏まえた改正条例が施行された
  • 市町村における暴排条例については、平成25年末までに35府県内の全市町村で制定され、他の都道府県の市町村においても、制定に向けた動きが見られる
  • 暴排条例の適用状況は、勧告が29件、中止命令が4件、検挙が2件との結果となった(平成25年上半期は勧告が29件、指導が2件、中止命令が2件、検挙が1件)
  • 徳島県暴力追放県民センターが、全国で初めて内容証明郵便の送付による裁判外の事務所使用差止請求を行い事務所の撤去に成功

 一方、準構成員や周辺者も含めた詐欺による摘発人数が1,131人に上り、平成15年に半期ごとの統計を取り始めて以来、初めて窃盗(1,123人)を上回った点が注目されます。昭和47年から取り始めた年間統計でも詐欺が窃盗を上回ったことはなく、振り込め詐欺などの特殊詐欺が、暴力団の資金源になっていることを反映した形だと言えます。

 ただ、そもそも暴力団においては、詐欺や窃盗などは禁止されており、不届者が個人的に悪さを行っているという建前をとっています。この事実だけみても、もはや暴力団が、任侠道、極道から外れた「外道」であり、「必要悪」ではなく「社会悪」として排除すべき存在となっていることが理解されます。

② 特殊詐欺認知・検挙状況(平成26年8月)

 ▼ 警察庁「平成26年8月の特殊詐欺認知・検挙状況等について」

 先月に引き続きとなりますが、特殊詐欺の状況(1月~8月)については、以下のような特徴が挙げられます。

  • 特殊詐欺全体の認知件数は8,321件、被害総額は353億7,500万円(前年同期比 121%)に上る
  • うち振り込め詐欺の認知件数は6,762件、被害総額は221億2,928万円(前年同期比 148%)と急増している
  • とりわけ、架空請求詐欺の認知件数は1,728件、被害総額は92億9,025万円(前年同期比 290%)の増加が著しい

 昨年1年間の特殊詐欺全体の被害総額が395億円強であることから、既に8月末の段階で、昨年1年間の被害総額に匹敵する規模まで急増する深刻な状況となっています。また、振り込め詐欺に絞った場合の昨年1年間の被害総額は255億円強であり、こちらも昨年を上回る勢いとなっています。

 とりわけ、今期については、架空請求詐欺(郵便、インターネット、メール等を利用して、不特定の者に対して架空の事実を口実とした料金を請求する文書等を送付するなどして、現金を口座に振り込ませるなどの方法によりだまし取る詐欺(同種の手段・方法による恐喝を含む)事件)の被害が深刻であり、今後の動向に注視が必要です。

③ 平成26年上半期の薬物・銃器情勢

 ▼ 警察庁「平成26年上半期の薬物・銃器情勢(暫定値)」

 今年上半期(1月~6月)においては、以下のような事項が特徴的となっています。

  • 全薬物事犯の検挙件数は8,484件(前年同期比+52件、+0.6%)、検挙人員は6,090人(前年同期比+14人、+0.2%)に上る
  • 暴力団構成員等の検挙人員は3,160人(前年同期比+104人、+3.4%)で、依然として検挙人員の過半数を占めている
  • 覚醒剤(粉末)押収量は254.1㎏と、前年同期比で大きく減少(▲307.0㎏、▲54.7%)したが、過去5年間の上半期平均押収量(233.2kg)を上回った
  • 危険ドラッグに係る検挙状況は、128事件(前年同期比+77事件、+151.0%)、145人(前年同期比+79人、+119.7%)と急激に増加している
  • 密輸元の最多は中国で、メキシコ、香港などの順になっている

 薬物は、暴力団の伝統的資金獲得犯罪の一つとして、相変わらず暴力団の関与の大きさが認められますが、とりわけ、「ゲートウェイ・ドラッグ」とも位置付けられる危険ドラッグの蔓延には注意が必要な状況です。

 本報告書からは、覚せい剤事犯における初犯者の割合は35.2%、再犯者数の構成比率は64.8%といったデータが読み取れますが、一方で、警察庁が先日発表した「平成26年上半期の危険ドラッグに係る検挙状況について(暫定値)」によれば、危険ドラッグ乱用者の検挙状況として、検挙者116名(男性111人、女性5人)について、平均年齢が34.0歳、約8割が薬物事犯初犯者だとの分析結果があります。

 さらに、覚せい剤取締法違反容疑で摘発した50歳以上の容疑者は1,204人(前年同期比235人増)で、全摘発者5,105人の23.6%(同4.7ポイント増)を占める(40代も同様)一方で、20代・30代は減少傾向を示しているなど全体的な高齢化の傾向がうかがえ、覚せい剤から危険ドラッグへという流れがあるように思われます。

 加えて、報道によれば、1グラムあたりの末端購入価格の相場について、覚せい剤が70,000円程度するのに対し、危険ドラッグは1,500円程度と言われており、その手軽さゆえに、若年層を中心に拡がっている状況であることがうかがえます。

 危険ドラッグの売買に暴力団関係者が直接関与した事例はまだ多くはないようですが、危険ドラッグへの依存を契機として、本格的な覚せい剤等に手を出す薬物乱用者が増加することになれば、直接・間接的に暴力団の活動を助長してしまう点から、今後も注視していく必要があります。

3) 危険ドラッグ対策の動向

 危険ドラッグ対策の状況について、先月は、厚生労働省による販売店への立入り検査結果をはじめ、愛知県、和歌山県、静岡県、佐賀県の取組みについてご紹介しました。今回も、この1カ月の間に全国各地で様々な取組みが進展しておりますので、以下にまとめておきたいと思います。

 なお、内閣府では、薬物乱用防止対策に関して、以下のようなサイトを開設し、自治体の取り組みを紹介しています。また、都道府県警察の薬物乱用対策に関するホームページ等へのリンクを掲載しています。あわせて、参考にしてください。

 ▼ 内閣府「自治体の取り組み・都道府県警察へのリンク」

① 救急搬送の状況

 消防庁が危険ドラッグに起因する救急搬送状況に関する初の調査結果を公表しています。

 ▼ 総務省消防庁「危険ドラッグ」によるものと疑われる救急搬送の状況

 それによると、平成21年1月から平成26年6月までに、救急搬送された傷病者の中で、「危険ドラッグ」によるものと疑われるものとして、各消防本部が把握している人員数は、合計4,469人、年別に見ると、平成21年が1年間で30人だったのに対し、平成26年上半期(1月~6月)だけで621人に上っています。

 また、報道によれば、救急の現場では今年に入って搬送後に死亡するなど、より重い症状を訴える患者が増加する傾向にあるといい、麻薬の一種である成分が含まれるなどにより、毒性の強い成分が使われ始めたためとみられるということであり、健康被害についても深刻度合いを増している状況と言えます。

② 厚生労働省の取組み

 厚生労働省では、指定薬物を新たに14物質指定(計1,414種類)しましたが、うち3物質は国内流通が確認されていないものの、海外流通が確認されたため、国内流通を防ぐために予防的に指定されたということです。また、本来は、パブリック・コメント手続きを経て指定するところ、使用による健康被害等を防止するため、その手続きを省略して対応の迅速化を図っています。

 また、インターネットで危険ドラッグを販売する計83のサイトについて、プロバイダーなどに削除要請し、65のサイト(国内36サイト、国外29サイト)が閉鎖されるなどして購入できなくさせるといった取組みも継続して行っています。

③ 鳥取県

 先月、静岡県宅地建物取引業協会の取組みを紹介しましたが、鳥取県の同協会も、販売防止に関する条項を契約書に盛り込むよう加盟事業者に対し要請しています。 具体的には、鳥取県薬物の濫用の防止に関する条例第2条に規定する薬物(危険ドラッグ)について、物件を以下の事項に利用しないことを確約させるもので、禁止事項に該当することが判明した場合、即時に契約を解除できる禁止条項を契約書に盛り込むものです 。

  • 製造、栽培、販売又は販売する目的で保管若しくは陳列する場所として利用すること
  • 危険ドラッグなどを多数の者が集まって使用することを知りながら、その為の場所として提供すること

④ 兵庫県

 兵庫県は、人体に有害な影響を与えるおそれがある危険ドラッグなどを「危険薬物」に定義し、危険薬物を販売する店を知事が「監視店」に指定するなどの試みを盛り込んだ条例を新たに制定しました。

 監視店が危険ドラッグなどをお香やアロマとして販売する際、包装紙などに販売者や製造者の氏名、住所を明記し、危険性や順守事項を客に説明しなければならないと規定、客には用途以外の摂取をしないとの誓約書提出を求めたり、インターネットなどで危険薬物を購入した際は、購入者に知事への誓約書提出を義務づけるといった内容が盛り込まれています。

 ▼ 第324回定例兵庫県議会に提案した「薬物の濫用の防止に関する条例」(概要)

⑤ 東京都

 都内の薬物濫用拡大の状況を踏まえ、警察職員に立入調査権を付与する、立入調査を行う都職員に知事指定薬物等の収去権を付与するなど、監視指導の強化を図る目的での改正案が成立しています。警察官に調査権限を与える条例は大阪府に次いで全国で2番目ということです。

 ▼ 東京都「東京都薬物の濫用防止に関する条例(一部改正)」

⑥ 東京都豊島区

 事務所などを借りる相手と賃貸契約を結ぶ際、危険ドラッグ販売を禁じる条項を盛り込むようビルのオーナーらに求める条例案を検討しているということです。賃貸契約書に同種の条項を盛り込む協定については、前述した通り、静岡県や鳥取県がそれぞれの県宅地建物取引業協会と締結していますが、条例化は全国でも珍しいということです。

⑦ 検挙の工夫

 警視庁では、危険ドラッグの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で車両を運転した場合、道路交通法第66条(過労運転等の禁止、3年以下の懲役・50万円以下の罰金)が適用され、その場で現行犯逮捕されることもあるといった運用を開始しています。

 また、愛知県警では、危険ドラッグを無承認の医薬品と認定し、名古屋市の業者を薬事法違反(医薬品の販売目的貯蔵)の疑いで逮捕しています。危険ドラッグの鑑定は3カ月近くかかることもありますが、人体への影響が大きい医薬品の鑑定は約2週間で済むことを応用して迅速な検挙につなげており、こうした形の立件は珍しいということです。

 北海道厚生局などが、道内の3店舗に薬事法に基づく販売中止命令を出しています。薬事法では、指定薬物の疑いがある商品を発見した場合、成分の検査と、結果判明までの販売中止を命じることができますが、道内の店舗に対し、同命令を出したのは初めてということです。

4) CTF(テロ資金供与対策)

 マネー・ローンダリングやテロ資金を監視する国際組織「金融活動作業部会(FATF)」から、国際テロリストの資金を遅滞なく凍結する等の措置を講ずるとの国連安保理決議に関し、国内法整備の遅れが指摘されている状況下にあって、先月のコラムで、テロ組織が重大犯罪を実行する前の計画・準備に加担した段階で処罰する「共謀罪」創設を柱とする組織犯罪処罰法改正案について、この秋の臨時国会への提出が見送られることをご紹介しました。そのような中、今般、国際テロリストの国内財産を凍結する新法案が閣議決定されています。

 ▼ 警察庁「国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法(平成26年10月) 規制の事前評価書」

 本法案では、国連安全保障理事会の指定や決議を元に対象を指定、資産の売却や資金借り入れなどの国内取引を都道府県公安委員会の許可制とし、取引相手への罰則も設けるとしています。今後の、日本におけるAML/CTFの取組みの深化につながるものと期待されます。

5) 忘れられる権利

 暴排トピックス8月号でも取り上げた「忘れられる権利」に関して、今般、グーグルで自分の名前を検索すると、犯罪に関わっているかのような検索結果が出てくるのはプライバシー侵害だとして、日本人男性がグーグルの米国本社に検索結果の削除を求めていた仮処分申請で、東京地裁が、検索結果の一部の削除を命じる決定(男性が求めた237件のうち、著しい損害を与えるおそれがある122件について、検索結果それぞれの「表題」とその下に表示される「内容の抜粋」の削除を命じる決定)を出しています。

 これまで、検索の補助機能(サジェスト機能)の表示差し止めを命じる判決はありましたが、検索結果の削除を求める司法判断は国内で初めてであり、その判断の詳細や今後の動向が注目されます。

6) 工藤会トップ3の逮捕

 今年7月、米財務省により「最も暴力的な組織」として金融制裁の対象とされた指定暴力団工藤会について、福岡県警は、福岡市の看護師の女性が刺された事件に組織的に関与したとして、同総裁およびナンバー2の会長、ナンバー3の理事長ら幹部を組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)などの容疑で逮捕しました。指定暴力団工藤会は福岡県内での数々の事件に関与しているとされ、福岡地域における暴排の取組みの最大の障壁と目されてきただけに、今後、一気に暴排の機運が高まることが予想され、このトップ3の一斉逮捕は極めて大きな出来事と評価できると思います。

 また、本件を受け、福岡県議会は、官民一体で暴力団を壊滅させることを全会一致で決議しています。同県議会による暴力団壊滅決議は、同県内で銃撃事件が相次いだ2007年の12月以来ということです。

 ▼ 福岡県議会「暴力団壊滅に関する決議」

 なお、本件逮捕については、総裁の携帯電話を傍受が決め手となったという点でも注目されます。通信傍受法では、4種(薬物犯罪、銃器犯罪、集団密航、組織的殺人)の組織犯罪に限って裁判所に令状を請求した上で電話やメールを傍受できるとされていますが、その実施要件が厳格なためなかなか活用されてこなかった現実があります。今回の警察の強い意気込みが感じられます。

3.最近の暴排条例による勧告事例ほか

1) 福岡県

 福岡県公安委員会は、特定危険指定暴力団工藤会系組幹部に用心棒代などの「みかじめ料」を払っていたとして、北九州市八幡西区のスナックなど計16店舗(12業者)に、福岡県暴排条例に基づき、利益供与を禁じる勧告を行っています。

 勧告を受けた業者の中には、暴力団員の立ち入りを禁止する「標章」を掲示していた店もあったということです。また、報道によれば、業者は「長年の慣習」「何かあったら守ってくれる」などと理由を説明したといい、残念ながら、暴排条例施行前と全く変わらない状況が未だに続いていることがうかがえます。

2) 東京都

 東京都公安委員会は、暴力団事務所に防弾用の鉄板を取り付けたとして、港区で内装業を営む60代男性に対し、東京都暴排条例に基づく勧告を行っています。

3) 愛知県

 指定暴力団山口組系組員らが、愛知県内の飲食店など約70業者からみかじめ料を徴収していたとのことです。

 このうち約45業者は支払いを強制されており、暴力団対策法に基づき、業者から徴収しないよう組員に中止命令(用心棒代要求行為など)を出す一方、残りの約25業者の中には、自主的に払っていたケースもあるとのことで、愛知県暴排条例に基づき、利益供与や受け取りをやめるよう業者と組側の双方に勧告するということです。

4) 警察庁「平成26年上半期の暴力団情勢」

 今年上半期の暴排条例による全国の勧告事例について、本報告書に以下のような事例が紹介されています。

  • 建築リフォーム会社が、稲川会系組幹部から依頼された組事務所の改装工事を請け負ったことから、同会社と同幹部に対し勧告を実施(神奈川)
  • 露天商を営む事業者が、暴力団の威力を利用する目的で、山口組系組長らに現金を供与したことから、同業者と同組長らに対し勧告を実施(愛知)
  • 飲食店経営者が、条例で定める暴力団排除特別強化地域において、山口組系組幹部に、他の客から未払い飲食代金名目で現金を取り立ててもらった上、同幹部の飲食代金の支払いを免除したことから、同経営者と同幹部に対し勧告(福井)
  • 太州会傘下組織組長らが、条例で定める暴力団事務所の開設又は運営の禁止区域内に暴力団事務所を開設し、運営したことから、条例違反として検挙(福岡)
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