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HRリスクマネジメント トピックス

「『三匹』ができるまで ~チャットによるディスカッションの効果~」三匹(?)が語る!HRリスクマネジメント相談室(番外編)

2021.11.22
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パソコンを操作する手元とリモートワークのイメージ

職場におけるトラブルは複合的。社内の様々な関係者の協力を得て、複数の視点で捉えなければ、解決が難しい問題も多々あります。でもやっぱり最後は「人」!HRリスクマネジメントが重要です。

職場における様々なトラブルを解決すべく、エス・ピー・ネットワークに生息する動物たちが奮闘するこのレポートですが、今回は番外編として、このレポートを通して気付いた「チャットによるディスカッションの効果」について、ネコさんが語ります。

【プロフィール】
ネコさんのイラストネコさん(ネコ):
当相談室の留守番ネコ。猫なで声と鋭い爪をあわせ持ち、企業内での人事実務経験が豊富。社会保険労務士で、産業カウンセラー&キャリアコンサルタント。今回は1匹。コタツの中からお届けするニャ。

こんにちは、ネコです。今回は番外編ということで、いつもこのレポートがどのように書かれているか、そしてこのレポートを書く過程で気付いた「効果」について、ご紹介したいと思います。

〈まずは手順をご紹介〉

コロナ禍で在宅勤務が増え、コミュニケーションの取り方も変化しました。その変化に合わせて、最近はすっかり以下のパターンが定着しました。

(1)今月のご相談内容を提示(担当:ネコ)

基本的には、お客様からいただいたご相談や、リアルマイニング®等で抽出されたリスク、この時期に注意すべきリスクを題材としています。ただし、設定や出てくる会話の内容等は全て創作です。できるだけ多くの方に、「うちもこんなことあるある!」と思っていただけるように、あえて一般化しています。

メンバーは、ご相談内容をよく読み、各自で事前によく考えたり、考えなかったり…します。(ちなみにネコはなーんにも考えないで参加する派です。)

(2)チャットでディスカッション(担当:全メンバー)

各回で出席するメンバーは多少変わりますが、最近はほぼ固定のメンバーになりました。このメンバー、実は当社総合研究部内の「HRリスクマネジメントワーキンググループ」のメンバーなんです。業務上、お客様から人事労務関連の相談を受けたり、「人」に関連するリスクについて情報発信したりするメンバーが集まっています。(誰が誰かは、ここでは内緒ニャ。)

チャットは、日時を決めて行います。専用のチャットルームを立ち上げ、定刻の少し前にご相談内容を再掲。そして定刻ぴったりに「では、はじめましょうか」とスタート!

言いたいことがあふれている動物さんの発言を皮切りに、それを聴いた動物さんが反応していく…といった感じでしょうか。

時々脱線もしますし、本線と並行して、ずーっと二匹で会話が続いている動物さんたちがいたり、かと思えば本線にいた動物さんがその内容に反応して合流したり…。(もう、みんな自由なんだから…!)

ディスカッションは通常1時間。でもまだしゃべり足りなくて、延長戦に突入することもあります。チャットルームをそのまま解放しておき、「じゃあ、あとはまた何か気付いたら、このルームで呟いておいてねー」と解散。

(3)まとめ作業(担当:ネコ)

これがなかなか大変なんです。皆さん好き勝手にしゃべるから(笑)

まずはチャットの会話をテキストでダウンロードします。それを、誰が誰に応答しているかを確認しながら順番を整理したり、テーマごとに内容を移動させたり、わかりづらいところは補足説明を入れたり、場合によっては一部をカットしたり。特に、誤解を生みそうな表現には細心の注意を払います。そして、話している内容によっていくつかのブロックに分け、小タイトルを付けます。

ここまで一気に行い、まとめた文書ファイルをチャットルームに投下!「○日までに加筆修正してくださいねー」と、全メンバーに見てもらいます。

(4)メンバーによる加筆修正(担当:全メンバー)

多くの動物さんがどんどん文書ファイルを修正してくれるので、ネコは助かります。自分の発言を補足したり、修正したり、新たな意見を付け加えたり。時々、「これは私の発言ではありません」というご指摘も…。(間違えたー、ごめんニャ!)

素晴らしいことに、だいたい締切日よりも前に全メンバーが見てくれることが多いです。それだけメンバーの関心が高いということかニャ?ありがたいことニャ。

(5)最終仕上げ(担当:ネコ)

もう一度、通しで全体を読み、話の流れや誤字脱字を確認。それぞれに加筆修正しているので、時々話題がブレることもあります。その場合は、つなぎの言葉を入れたり、場所を変えたりと、微調整を行います。

そして最終版をみみずくさんにチェックしてもらい、やっと掲載となるわけです。

〈気付いた「効果」〉

チャット時の会話、なんだか「飲み会での雑談」に似ていませんか?皆でわーっと盛り上がっている中、隣同士でずっとおしゃべりしている人がいたり、おかしな方向に脱線したり、また戻ったり。すっかり「飲み会」ができない生活に慣れてしまいましたが、ちょっと似たような感覚を思い出しました。

ただ、「飲み会」と違うのは、全部文字だということと、しっかり仕事の話をしていること!

リアルの会話は(お酒の勢いも借りながら)そのままザーッと流れ去ってしまいますが、文字は残ります。そして、リアルの会話では、何か言いたいことがあっても、タイミングを逃すと話せなくなりがちですが、チャットならいつでも好きな時に書けます。そして話題をそこに戻すこともできるし、並行して話すこともできるんです。まとめようと思うと少々大変ですが、大変なくらい自由にディスカッションすることが、結果的には効果につながるのだと思います。(だから、これからもどんどん自由にディスカッションしてニャ!)

また、ただ「話す」よりも「書く」方が、思考が深まる気がします。言いたいことを文字にする過程で、どうしても「考える」ことが必要になるのでしょう。キーボードを打つスピード、文章化するスピードが思考に追いつかず、もどかしい思いをするメンバーもいると思います。しかし、流れ去った言葉は帰ってきませんが、文字として残っているチャットは、あとから読み返すことも、書き加えることもできるのですね。加筆修正をする際に、全メンバーがもう一度ディスカッションした内容を読み返し、言葉足らずだった部分を足したり、より適切な表現に修正したりすることができます。また、通しで読み返すことで、新たに気付くこともあるでしょう。ここで新たな意見を加えることもできるのです。(ただ現実には…大きく話の流れを変えるような発言は、締め切りに追われるネコを気遣って、皆さんぐっと我慢してくれているかもしれません。ネコが怒りだすと思っているのかニャ…?怒らないニャ。)

そしてもう一つ。仕事に関する話を、ここまで真剣に議論する機会はなかなかありません。リアルの会議でもWeb会議でも、話せる人は、原則として1度に1人です。1人が発言できる時間や回数は、リアルの会話より文字だけのチャットの方が、断然多いんです!それだけ中身が濃くなります。さらに、音声での会議では、自分が何を話そうかと考えている間は、他の人の話を聴けなくなりがちです。そして流れて行った言葉は、もう議事録になるまで戻ってきませんが、チャットならその場で読み返せます。(読み返している間にも、議論はものすごい勢いで進んで行ってしまいますが…。)

誰かの意見を聴いて、それに対して反応することは、実はチャットの方がやりやすかったのではないか?と思うわけです。

〈動物キャラクターによる「心理的安全性」の確保〉

もう一つ、「三匹」のディスカッションでは、私たちメンバー全員が「動物キャラクター」として話していることも、自由な発言ができる秘訣なのではないかと思っています。

ここだけの話ですが(いや、公開されますが)、みみずくさんは当社の副社長です。メンバーには管理職も入っていますし、その直属の部下もいます。このメンバーが自由にニャーニャー言えるのは、「だってネコだもん!」という開き直り(?)と「気まぐれで好き放題、コタツに潜り込むのが大好き」のような、キャラクター設定のおかげだと思うのです。「私が言っているのではありませんよ、ネコさんの発言ですから」と思えば、みみずくさんやパンダさん(=上司)にも安心して「シャーッ!」と言えます。(品行方正なキャラクター設定をしているメンバーもいますよ。そこは各自の自由ですので。)

〈テーマは「他人事」なのに、頭をよぎる「自分事」〉

テーマは毎回、「ご相談」という形式で設定しています。基本的には「他人事」として考えていくスタイルです。しかし、ディスカッションが進むにつれて、不思議とどんどん「自分事」が顔を出すようになってきます。自分の経験を思い出したり(もはや定番、ペルシャ猫さんの「前の森」の話はとても興味深いニャ)、今の職場の問題が頭をよぎったり(小声)。「聴いて、話す」ことができれば、自然と「考えを深める」ことにつながるものです。

ネコは、ハラスメント防止やコミュニケーション研修のお仕事をよくさせていただきますが、その際も、「架空の職場における、どこかの誰かの事例」(これも全て創作です。)を使ったワーク等を組み込むことが多いです。事例を読み上げ、ディスカッションしてほしいポイントを具体的に伝え、さらに時間を区切ることで、半ば強制的に「聴いて、話す」場を設定します。指示通りにまじめに取り組んでいただければ、考えは深まり、なかなか深い話をしているグループも出てきますので、きっと「自分事」になっていることと思います。

きっかけは「他人事」で十分です。むしろ「他人事」の方が、日頃の自分の言動を棚に上げられますので、「本来、どうあるべきか」を具体的、かつ自由に思い描くには向いていると思っています。私たちも、「三匹」のディスカッションを通して、「HRリスクマネジメントの理想形」や当社の目指すべき姿を論じているのだと思います。もちろん、すぐに何かが変わるわけではありません。でも、「理想の将来像」を描くことはなかなか楽しいものですし、メンバーの目指すべき方向性を合わせることもできます。

〈新しい取組のアイディアも〉

リモートワークがすっかり定着し、「従来の業務」は問題なく進むことがわかった、という声が多々あります。一方で、雑談がなくなったことで、そこから生まれていた「新しい業務」が生まれなくなった、という声もよく聞きます。実は「三匹」のディスカッションでは、「新しい業務」のアイディアもいろいろ出てきます。(ゴメンナサイ、すぐに実現できるかは別の問題なのですが…。)

例えば、前回のHRリスクマネジメント相談室(26)「『どっちが重要なの?!』経営層と現場の意識の違いに悩む組織」では、
「じゃあ各々、『危機感を持つべき組織の兆候』を、次の打合せまでに考えましょう!」
「はーい!」
というやりとりで終わります。

新しいアイディアは、雑談の中で、「こんなことをしたら面白いんじゃないかな?」などと自然発生的に湧いてくるものではないでしょうか。これ、そんな感じではありませんか?私たちは、チャットでのディスカッションが、「雑談」の代わりを果たした瞬間に出会ってしまったのかな…?と思っています。(ちょっと大げさニャ…。)

このように、私たちも日々、より良いHRリスクマネジメントに向けて試行錯誤を続けています。チャットによるディスカッションも、いろいろな会社の方を交えてできたらよいのでは?などと夢は膨らみますが、その場合には、ツールやテーマも工夫しなければならないでしょう。研修の中に組み込んだり、お客様の組織で取り入れやすいように整えたりもしたいですが…「どんな組織でも効果を出せる」方法として整えるのは、なかなか難しいかもしれません。

全てが「今すぐ誰もが使える」「確実に効果がある」とは限りませんが、今後も何か新しいやり方を試したり、「これはいいぞ!」と気付いたりしたときには、皆さまにご紹介していきたいと思っております。これからも、どうぞお付き合いくださいませ。よろしくニャーン!

「HRリスク」とは、職場における、「人」に関連するリスク全般のこと。組織の健全な運営や成長を阻害する全ての要因をさします。

職場トラブル解決とHRリスクの低減に向けて、エス・ピー・ネットワークの動物たちは今日も行く!

※このコーナーで扱って欲しい「お悩み」を、随時募集しております。

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