SPNの眼

コンプライアンスやリスク管理に関するその時々のホットなテーマを、現場を知る
危機管理専門会社ならではの時流を先取りする鋭い視点から切り込み、提言するコラムです。

最近の反社会的勢力の動向(2016.6)

 私は企業情報課にて、反社会的勢力に関する情報収集、健全度分析業務を担当しています。健全度分析業務は、QSSに並ぶ当社の反社チェックに関する有力サービスで、クライアントとなる会員企業様からのご依頼に基づいて、取引先等の対象となる会社における反社会的勢力等との関係や企業の健全性に関わるような情報の収集、分析を行う業務で、種々の情報から、企業のバックグラウンドや関係者の人的関係を洗い出し、チャート等を用いて可視化するものです。いわば反社チェックに際して、対象企業等を深掘りしたい時にご利用いただくサービスとなります。

 業務の特性上、私は、最近の暴力団情勢や反社会的勢力、及びその周辺者等の動向に注目していますが、山口組の分裂以降、暴力団情勢に関する関心が高まっていますので、今回、日ごろ健全度分析業務で携わった案件や最近のニュースを題材に、一般的にはあまり紹介されることのない、反社会的勢力やその周辺者等の潜在化と巧妙化する資金獲得活動の一端をご紹介させていただくことになりました。

 皆様の企業防衛、反社会的勢力排除にお役立ていただければ幸いです。

1.暴力団関係者が関係会社の株主となっていた事例

 まずは、以前に担当した健全度分析業務の実際の事例から紹介します。

 クライアント企業が、「新規取引を検討している会社(※以下、「対象会社」と呼称)が、数年前に暴力団と共に取締役が恐喝容疑で逮捕された事件があった」との情報を得たため、対象会社に確認したところ、当該取締役を事件発覚後すぐに解任したとの説明があり、それを裏付ける登記情報の提供があったが、その実態を第三者機関に調べて欲しいとのことから、当社にご依頼いただいた案件です。

(1) 対象会社について

 健全度分析の過程で、当社で設立まで遡って登記情報を確認したところ、現在の代表取締役(※以下「A氏」と呼称)は創業時から代表に就任していたことや、解任された元取締役(※以下「B氏」と呼称)も創業時から取締役を務めていて、創業時の役員はこの2名だけであることが確認できました。

 また、本店所在地の現地確認を行ったところ、郵便受けを共有する会社(※以下、「関係会社」と呼称)1社が確認できました。

(2) 関係会社について

 同居企業を使い分けて種々の行為や犯罪、資金獲得活動を行うのが、暴力団関連企業(いわゆるフロント企業)の特徴でもあることから、当社で、現地確認で確認できた関係会社についても調査したところ、設立年月日は対象会社よりも古く、同社の役員は調査時点で3名、A氏が代表を兼任し、その他、A氏と同姓者が取締役、監査役にB氏と同姓者が就任していることが判明しました。

 なお、この関係会社は、創業時の役員は4名で、上記3名の他にはB氏が代表取締役に就任していた記録があり、B氏が対象会社を解任された際に関連会社についてもA氏と代表取締役を交替し、取締役からも退任していました。

 また、関係会社は、宅地建物取引業者の免許申請をしていて、その名簿閲覧を実施したところ、同社の株主は2名で、A氏が35%保有、B氏が65%保有していました。

(3) 報告及びクライアント企業の対応

 上記(1)、(2)のように、A氏が代表を兼任する関係会社の筆頭株主が対象会社を解任されたB氏である等のことから、上記の分析結果とともに、両者の関係継続が窺われる旨をクライアント企業に報告したところ、クライアント企業からは、後日、対象会社との取引を中止したとのお話がありました。

 この事例では暴力団と関係した人物が「関係会社の株主」となっていましたが、その他、最近では「執行役員」や「債権者」等の登記情報に記載されない地位に潜んでいた事例もありました。暴力団組員だけでなく、共生者等についても潜在化の傾向が顕著になっているのが最近の特徴の一つでもあります。

 このような傾向が見受けられることからこそ、我々担当者は、多面的な情報収集及び当該情報の分析が一層、重要となるのです。

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2.暴力団理事長のマネー・ローンダリングが窺われるニュース事例

 これまで出資者や株主等についての匿名性が高く、犯罪者等のマネー・ローンダリングの温床になっているといわれるタックスヘイブン(租税回避地)を使った企業や個人の節税行為について、それを裏付ける流出文書いわゆる「パナマ文書」が、新聞各社の紙面やインターネットのニュースサイト等を賑わせています。

 その中で、本年5月11日には、日刊紙等に、「指定暴力団の理事長(ナンバー2)と近しい関係にある会社代表者の名前があった」との捜査関係者の証言が記載されていました。
 さらに、記事では、取材によって、その会社において、暴力団理事長の親族が過去に役員を務めていたことが判明したため、両者の関係について同社に質問を行ったが両者から回答はなかったこと、パナマ文書でも資金の流れについての記載はなかったこと等が報道されていました。

 現時点では、両者間での資金の流れを示すものは見受けられていませんが、当該理事長は、アメリカの国際緊急経済権限法・大統領令等で、資産凍結や取引禁止措置を受けており、元銀行員との風評もある暴力団理事長が、近しい関係にある会社代表者を通じてマネー・ローンダリングを行っているという可能性は十分考えられます。
 今回の報道をきっかけに捜査機関によって、会社代表者との関係が解明されるという可能性もありますので、今後の関連報道に注視していきたいと考えています。

 なお、当該理事長との関係が報じられた会社代表者の氏名とその会社名について、記事では具体的な記載はされていませんでしたが、インターネットの風評を元に、対象企業と考えられる会社の登記情報を取得して、登記事項の確認を行ったところ、下記の通り、記事との共通点がある会社が1社見つかりました。この会社は、未上場で、宅地建物取引業者等の許認可業務の登録申請もしていないため、株主等も不明な会社なのですが、関係会社と思われる会社を数社確認できました。

 このように未上場でありながら、関係会社が複数あるというのも、フロント企業で見られるひとつの特徴でもありますが、皆様が、このようなスキームを取るフロント企業の関係会社のいずれかと取引を行ってしまう可能性も十分に考えられます。契約書への暴排条項等の備えはもちろんのこと、幅広い情報収集とそれに基づく深掘り分析を欠かされないことが極めて重要です。

 ちなみに、分析の結果判明した情報を紹介すると、

(1) 代表取締役について

 代表取締役の氏名やその住所地を確認し、パナマ文書との比較を行ったところ、同姓同名で同一住所地(※パナマ文書等を公開しているICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)の検索サイトでの検索結果は全て英語表記)であることが確認できました。

 また、代表取締役について、当社のデーターベースにてスクリーニングを実施したところ、市区町村単位まで同一住所地の同姓同名者が、過去に暴力団組員と共に競馬法違反の疑いで逮捕された旨の新聞報道が確認できました。

(2) その他の役員について

 指定暴力団の理事長と同姓の人物2名が過去に当該企業の取締役と監査役に就任していて、そのうち監査役は創業時から数年間就任していました。

 そこで両者について当社のデーターベース・スクリーニングを実施したところ、当該理事長が強制執行妨害容疑で逮捕された事件において、この2人の同姓同名者は、当該理事長の「妻」や「長男」であるとして、同容疑で一緒に逮捕されたとの新聞記事がヒットしました。

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3.暴力団ボランティアと震災復興時の利権狙いが窺われるニュース事例

 震度7を2度記録した熊本地震において、国内最大の指定暴力団から分裂して結成された22番目の指定暴力団の直系団体が、食料や日用品の配布等の被災地での支援活動をいち早く行ったことが、雑誌や日刊紙、ニュースサイト等において、報道されました。報道では、その支援活動に対しては、手放しで称賛するもの、復興事業に食い込むためのイメージ戦略として警鐘を鳴らすものと両極端の評価がされています。

 例えば、ある雑誌では、豊富な支援物資が迅速に送られてくるその組織力と、乳児の年齢に適した粉ミルクを配布するよう指示する暴力団会長の細かな配慮を紹介・賞賛するとともに、阪神大震災でのボランティア経験談等が地元の人の感謝のコメントと合わせて掲載されており、さながら暴力団の広告記事のような様相を呈しています。

 支援活動自体は称賛されるべきことではありますが、これまでの震災後の事例をみると、暴力団やその関連団体が行う支援活動は、復興利権狙いのしたたかな戦略があることを忘れてはなりません。

 阪神淡路大震災や東日本大震災等において、国内最大の指定暴力団等は、ボランティアや炊き出しに留まらず、現金を個別に被災者に配る等の支援活動を展開し、これに対して、好意的な報道が国内外で行われましたが、彼らは、それらの行為によって、組織の存在感を示したり、被災者に恩義を感じさせ、不動産の所有権や賃借権の譲渡を持ちかけたり、それを強要したりしている実態や、仮設住宅関係の工事やがれき撤去作業に暴力団組員やその息のかかった会社による労働者の(違法)派遣等を通じて、復興事業(利権)に食い込んだりしている事例が確認されているのです。

 今回の熊本地震においても、混乱に乗じての不動産権利関係への介入や暴力団関係会社であることを巧妙に隠して復興事業に介入してくる(いる)可能性が高いことから、復興事業や被災地支援に関わる企業は、土地の権利関係、下請けや孫請けの取引先、協力者等について十分ご注意しておかなければなりません。

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4.総括

 今回ご紹介したように、最近は、暴力団組員はもちろんのこと、共生者等についても潜在化の傾向が見受けられ、反社チェックについても、多面的な情報収集と分析が不可欠となっています。

 もちろん、全ての取引先に対して満足の行くチェックを実施することは、人員や費用面、違法な情報収集を行わないというコンプライアンス上の面からも限界がありますが、取引額や契約期間、懸念事項の有無等によるランク付けと、それぞれの重要度等のリスクに応じて、適宜、レベルに応じた反社チェックを実施することが、自社の企業価値や社会的評価に直結します。

 しかしながら、暴力団の実態の偽装化や反社会的勢力による資金獲得活動の巧妙化がかなり進んでいますので、必要に応じて、外部の専門企業を利用することも有益です。そして、その際には、何よりも当該専門企業自体の健全性や反社会的勢力排除に関する総合的な知見、社会的信用性も考慮しておかなければ、当該企業を利用したことが、いらぬ風評を生みかねないリスクになることを忘れてはなりません。

 なお、情報分析結果についても、「シロ」「クロ」だけでなく「グレー」と判断される場合もありますが、その場合は、継続的なモニタリングを実施していくことが肝要です。また、分析の結果や継続的モニタリングの結果、当該企業との関係解消のアクションをとることが求められます。これらのケースは決して少なくないことを考えると企業調査のスキルだけではなく、総合的な反社対策に関する知見とノウハウが無ければ、真に費用対効果や実効性を考慮した対策・対応はなしえません。

 当社では、日々、専門部署・専門要員が反社会的勢力に関する情報を収集する一方で、反社会的勢力の動向を踏まえた企業の防衛策や対策の研究に余念がありません。また、いざ反社会的勢力との関係解消や対応を行う際に直接的な支援が可能なエキスパートスタッフがおり、日々各種の現場において、多くの実績を積み上げて、企業の反社会的勢力の排除をサポートしています。

 企業危機管理の専門企業として、従業員への研修はもちろん、事案によっては対外的なメディア・ステークホルダー対策や警備・身辺警護まで、反社対策はもちろん、それに留まらない幅広い危機管理サポートを行っていますので、お困りの際や、ちょっと相談したい、意見やアドバイスが欲しいという場合は、お気軽にお問い合わせください。

以上

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