SPNの眼

【緊急レポート】新型コロナウイルス警戒期の株主総会の開催について

2020.03.10
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1.はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は大規模イベントの自粛を要請し、様々なイベントをはじめ、企業内研修や会議、出張等の移動も自粛・延期されている。また、在宅ワークやWEBを使ったミーティングの実施に切り替える企業もある。セミナーなども、急遽動画での配信に切り替えられて実施されているケースも出始めた。

こんな中、上場企業においては、株主総会を開催しなければならない。通常であれば、株主総会には、相応の株主の来場が予想され、個人株主の中には、現役を引退された高齢者の方々も少なくない。新型コロナウイルスの感染状況をみると、相応の人数が集まる場所でのクラスター(集団)感染や高齢者の感染・重篤化等が多く報告されており、このような状況での株主総会の開催はリスクもあることは間違いない。

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2.法務省の指針

法務省は、「定時株主総会の開催について」を公表し、「新型コロナウイルス感染症に関連し、当初予定していた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合における定時株主総会の開催」について、以下のように見解(筆者にて要約)を示している。

  1. 定時株主総会の開催時期に関する定款の定めについて
    • 定時株主総会の開催時期に関する定款の定め
      • →天災その他の事由により、定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じたときまで、その時期に定時株主総会を開催することを要求する趣旨ではない
    • 新型コロナウイルス感染症に関連して定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合
      • →その状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りるものと考えられる
    • 会社法:株式会社の定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないと規定(会社法第296条第1項)
      • →事業年度の終了後3か月以内に定時株主総会を開催することを求めているわけではない
  2. 定時株主総会の議決権行使のための基準日について
    • 会社法上、基準日株主が行使することができる権利は、当該基準日から3か月以内に行使するものに限られる(会社法第124条第2項)
    • 定款で定時株主総会の議決権の基準日が定められている場合は
      • →新型コロナウイルス感染症に関連し、当該基準日から3か月以内に定時株主総会を開催できない状況が生じたときは、会社は、新たに議決権行使のための基準日を定める
      • →当該基準日の2週間前までに当該基準日及び基準日株主が行使できる権利の内容を公告する必要がある
      • ※会社法第124条第3項本文参照
  3. 剰余金の配当に関する定款の定めについて
    • 特定の日を剰余金の配当の基準日とする定款の定めがある場合
      • →新型コロナウイルス感染症に関連して、その特定の日を基準日として剰余金の配当をすることができない状況を生じたときは、定款で定めた剰余金の配当の基準日株主には配当せず、その特定の日と異なる日を剰余金の配当の基準日と定め、剰余金の配当をすることもできる
      • →剰余金の配当の基準日を改めて定める場合には、当該基準日の2週間前までに公告する必要がある
      • ※会社法第124条第3項本文参照

可能であれば、上記の法務省の見解に参考に、3月期の株主総会については、延期を検討することも一手である。

但し、感染症対応のBCPでも言われることだが、感染症の影響は、長期化するのが一つの特徴である。延期の判断は比較的容易でも、それではいつの時点で再開・実施の判断をするのかは、非常に難しいのが、感染症対策のBCPの特徴である。これは、株主総会についてもしかりである。

自社の施設で株主総会を開催する場合は延期しても、比較的新型コロナウイルスの状況が落ち着いた段階で改めて開催の案内をして株主総会を行うことはできるが、外部の会場を利用して株主総会を開催する場合は、他のイベント等も軒並み延期となっている関係上、また、特に首都圏においては東京オリンピック関連のイベントなども想定されることから、会場がなかなか手配できず、株主総会開催の目途がたたないという事態にも陥りかねない。

このあたりの事情も考慮して、地域的な発症状況も加味して、総合的に判断していく必要がある。感染症、特に今回は新型のものであり、治療薬の開発にも時間がかかりそうであり、収束の目途が立てにくいことを考慮すると、新型コロナウイルス対策を十分に行った上で、株主総会は開催するという判断もある(その他、法務省の指針にあるように、基準日の再設定その他の手続的な負荷も考慮する必要がある)。

3.3月総会開催の上場企業の対応例

3月中に株主総会を開催する上場企業においては、すでに「定時株主総会における新型コロナウイルス感染対策についてのお知らせ等」をホームページに掲載している企業も少なくない。ほぼ内容が共通しているため、代表的な内容を紹介するとともに、+αの対策例も合わせて紹介する(なお、インターネットでの検索による調査が容易なため、企業名は記載しない)。

上場企業での株主総会における新型コロナウイルス対策として挙げられている例としては、以下のようなものがある。

  • 出席取締役、運営スタッフはマスクを着用する
  • 受付付近(会場内各所)にアルコール消毒液を設置する
  • お土産、キッズルーム、展示コーナー、喫茶コーナー等の中止
  • 経営近況報告会や株主との懇談会の中止
  • 高齢者、妊婦、基礎疾患のある株主の出席見合わせ要請
  • 映像活用等による議事進行時間の短縮、規模の縮小
  • 株主に対する会場内でのマスク着用、アルコール噴霧要請
  • 株主に対して、当日の健康状態への留意と無理をしないようお願い
  • マイクを回さず、スタンドマイクまで来てもらう
  • 株主発言後にマイクを消毒
  • 看護師が会場内に待機
  • スタッフの手袋の着用
  • サーモグラフィーを設置し高温なら検温
  • 会場を複数に分ける
  • 株主間の席の間隔を従来より広くとる
  • 書面又はインターネットでも議決権行使が可能である旨の案内
  • 当日の状況をインターネット・ライブで中継する(経済産業省が実施ガイドを公表したハイブリット型バーチャル株主総会に近い?)
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4.新型コロナウイルス感染症対策と株主総会対策

さて、3.で紹介した企業の対応例を見ても参考になるものが多いが、危機管理(感染症対策)の観点から、当社としても、最低限、株主総会においては下記のような対策をとることをお勧めする。

(1)見えてきた新型コロナウイルス感染の特徴

これまでの感染症対策の専門家の知見や政府の見解を総合すると、新型コロナウイルスは、飛沫感染ないし接触感染により感染している。したがって、株主総会においても、飛沫感染対策及び接触感染防止対策に重点が置かれることになる。

また、多くの人が一気に感染するクラスター感染は、換気の悪い場所に多くの人が集まることで引き起こされている。したがって、株主総会会場でクラスター感染が発生しないような室内環境の維持が重要となる。

さらに、そもそも感染症対策で重要なのは不特定多数の人が、一か所に集まる状況を回避することである。したがって、少なくとも本年の株主総会については、極力、書面やインターネットによる議決権行使を最大限お願いするなど、臨場株主が少なくなるようなお願いを行う。臨場株主がすくなければ、間隔をあけて着席いただくことが可能となり、飛沫感染のリスクも接触感染のリスクも低減できる。

(2)書面やインターネットによる議決権行使の活用の要請

繰り返しになるが、感染症対策の観点からは、主催者はイベント等で多くの人を極力一か所に集めないことが重要であり、株主総会においても同様である。したがって、本年については、万が一、株主の皆様が新型コロナウイルスに感染することを予防するため、書面やインターネットによる議決権行使も活用いただきたい旨を積極的に案内していくべきである。

なお、株主総会招集通知において、もし来場する場合には、受付で簡単なアンケートに回答いただくことを記載しておくことも考えられる。アンケートの内容としては、たとえば、体温に異常はないか、家族に感染された方はいないか、1か月以内に海外渡航歴はないか、陽性と診断されたことはないか、といった程度で良いであろう。但し、アンケートの結果、感染が疑われる場合は、他の株主の健康への配慮の必要から、株主総会会場への入場は控えていただく必要があることから、この場合の対応要領や法的問題点の検証(違法性も含めて)等を予め、顧問弁護士と協議しておくべきである。

(3)マスクの着用とアルコール消毒液の設置

会場内では、どうしても近距離での着席、接触、行列や会話が避けられないため、出席役員やスタッフは、マスクを着用する。同様に、株主にも、会場(受付)周辺及び会場内でのマスク着用の徹底をお願いする。

会場(施設)の協力を得て、動線上及び会場内、会場周辺にはアルコール消毒液を設置し、案内係等が、株主に、アルコール消毒液の利用を促す。役員・案内・会場スタッフも、こまめにアルコール消毒を行う(スタッフも消毒をこまめに行う旨告知して、理解を得ておく)。

エレベーターのボタンや会場扉のドアノブ等は接触感染の原因となる代表的な場所であることに鑑み、スタッフが手袋着用の上、エレベーターのボタンを押したり、会場の扉を開けたりして、極力、株主がそのような感染源となりうる場所に触れることを防ぐことが望ましい。

また、トイレ利用時は、石鹸を利用した手洗いの徹底をお願いすることが望ましい。

なお、役員・スタッフのマスクの着用及び株主へのマスク着用要請については、事前に株主等に案内しておくことが望ましいであろう。それでもマスクを持参されない方のために、会社としてもマスクを準備し、受付でお渡しして、着用をお願いする必要があることも考慮しておくべきである。

(4)換気の確保と総会運営の工夫

クラスター感染の際の特徴は、換気の悪い場所に集団が相応の時間滞在することで起きているとされる。したがって、この特徴を踏まえて株主総会対策を考えると、以下の3点が重要である。

まずは、施設側と協力して、総会会場の換気をよくすることである。これは施設や設備上の限界はあるかもしれないが、換気の確保(館内を循環させると拡散させる可能性があるので、外気に放出するのが望ましい)に可能な限り努めてもらいたい。

次に、株主総会運営の工夫である。である。昨今のコーポレートガバンス・コードの流れを踏まえると、質疑には相応の時間を確保する必要があるが、報告事項等は、基本的に招集通知や株主総会参考書類等に相応の内容が書かれていることから、報告事項の報告の部分はナレーションを活用して効率的に行うなど、少なくとも、この3月期の株主総会に限っては顧問弁護士とも相談の上、可能な限りの運営の効率化を志向することが望ましい。

もちろん、3月期に開催する以上は、十分審議をつくさなければならないことは間違いなく、質疑応答を強引に打ち切るような議事進行は控えるべきであることは言うまでもない。

(5)マイクの取扱い

株主総会において、接触感染の原因となりうるものとして、マイクがある。質疑応答時のスタッフと株主のマイクの受け渡し、そしてそのマイクをまた別の株主様に渡す等のやり取りの過程で、仮に感染者が会場内にいれば、マイクの持ち手部分にウイルスが付着し、それが別の方の手につき、感染に繋がる可能性がある。したがって、株主総会においては、マイクの取扱いに十分注意する必要がある。

少なくとも3月期の株主総会については、下記のように対応も検討されたい。

  1. マイクスタンドを利用する場合
    マイクスタンドを利用する企業は、次の対策をお勧めする
    • マイクスタンドは2本以上準備して、株主は交互にマイクを使う。マイクスタンドをA、Bとすれば、最初の株主がAのマイクスタンドを利用したら、次の株主はBのマイクスタンドを利用する。その次の株主は、マスクスタンドAを利用する。
    • このように、マイクススタンドをローテーションし、株主の発言が終わると同時時に使用したマイクの消毒を行う。先の例でいえば、2番目の株主は、マイクスタンドBを使っているので、その間に係員が、マイクスタンドAのマイクを消毒するという具合に順に対応していく。
    • 消毒は、音響の専門家等が使うエタノール使用のマイククリーナー(スプレー)等が望ましいが、各施設で利用しているものはがあれば、それでもよいであろう。
    • ※【エタノール使用のマイククリーナー】JASSC MRC-ZERO
    • マイククリーナーがスプレー式の場合、噴射圧でマイクからウイルスが飛散しないように、いったんマイクスタンドからマイクを外し、株主から少し離れ、利用方法に従って消毒を行うことも検討すべきであろう。
    • マイクの消毒を行うスタッフは、マスクとビニール(ゴム)手袋を着用する。
    • 株主には、マイクスタンドやマイクに触れないようにお願いする。株主がスイッチの確認でマイクに触れないよう、係員がスイッチを入れ、議長から、マイクのスイッチは入っていることを案内する。
    • なお、このマイクスタンドのローテーションとマイクの消毒については、質疑に入る前に、議長が議場の株主に説明をして、協力を要請しておくことが肝要であろう。
  2. マイク係で対応する場合
    マイク係で対応する場合は、マイクによる接触感染および近くにいる株主やスタッフへの飛沫感染が懸念されるため、3月期の株主総会においては十分な注意が必要である。
    • 株主にマスクの着用をお願いすると共に、株主にマイクを渡して発言していただくのであれば、係員がマイクと合わせてビニール(ゴム)手袋をお持ちし、議長から「ビニール(ゴム)手袋も準備しておりますので、発言時に着用をご希望する株主様は、係員に申しつけください」と案内して、希望する株主には、マイクを使って発言する際に、ビニール(ゴム)手袋等を着用して発言していただくことができるような体制を整えておくことも、検討してよいのではないだろうか(アルコール消毒を徹底いただければ、基本的には手袋の着用までは不要と考えられるが、それでも希望する株主がいた場合は、手袋をお渡しできる環境を整備しておくという趣旨)。
    • 接触感染を避けるため、マイクを渡さずに、係員がマイクを差し出して、そのマイクに向かって株主に話してもらう方法もある。ただ、この場合は、係員が飛沫感染のリスクを負うため、株主及びスタッフ共に、マスクの着用がマストである。その点は、議長から株主にも案内して、協力を求めるほかない。
    • なお、マイク係による対応を行う場合も、マスクの消毒を実施することが望ましいことから、マイク係りも複数チーム用意していく必要がある。
    • また、株主にビニール(ゴム)手袋の着用をお願いする方がよいが、ビニール(ゴム)手袋の使い回しは内側についたウイルスが他の株主に付着して、感染を広げる可能性があることから、都度、新しいビニール(ゴム)手袋を渡すことが望ましい。
      その意味では、マイク係は2人一組とすることも検討すべきであろう。なお、回収する際は、スタッフが持ったビニール袋に直接入れてもらい、速やかに封をして廃棄する。
      なお、さらに慎重を期すのであれば、株主には、その後にアルコール消毒をしていただくこと、スタッフは手袋を代えることが望ましい。
    • マイク係もビニール(ゴム)手袋の着用を徹底するべきである。
    • なお、このような対応を行う場合、従来の株主総会のように椅子を繋げて、間隔を詰めてならべてしまうと、結局株主伝いにマイクの受け渡しをしなければいけなくなってしまい接触感染リスクを高めてしまうことから、椅子の間隔を左右、前後少し開けて、マイク係が直接株主のところに行けるように椅子の配置を工夫する必要がある。

(6)間隔にゆとりを持った椅子の配置

マイク係活用の場合の留意点としても言及したが、椅子の間隔が詰まっていると、前の株主と接触したり、飛沫がまともに飛んだりするため、感染のリスクを高めかねない。換気を確保するためにも、椅子の前後の間隔や左右の間隔をあけたり、波状にする形で配置したりして、株主の前に別の株主が来ないようにする等の工夫も検討すべきであろう。また、誘導時も、来場株主の数が想定しにくいという事情はあるものの、少しゆとりをもって座っていただくことを案内するのも、一手であろう。

(7)お土産、展示会、イベント等の中止

政府から不特定多数の方が全国から集まるイベントの自粛が要請されていりように、法的に開催が必要な株主総会以外の展示会、イベントなどは、ともに接触感染、飛沫感染のリスクを高めるほか、懇談会等のビュッフェ形式の食事は、トングなど通じて感染を広める可能性もあり、実施は控えるべきである。また、お土産についても、お渡しの時に、スタッフと株主が接触することになるため、接触感染のリスクが高いし、お土産を受け取るための行列も飛沫感染や接触感染を広げる可能性がある。お土産についても、今期は自粛することが望ましい。

(8)株主総会会場の使用制限等による開催への影響に対する検討

新型コロナウイルスへの感染者がでたケースで当該社員が属する企業が入館するビル等が、保健所の指示等により、閉鎖されたケースもある。現在の新型コロナウイルスの感染拡大の状況をみると、政府としても封じ込めの為の策を積極的に行使していくものと考えられることから、上記の措置等により、各社の本社が入居するビルや株主総会を開催する予定の施設(会議室やホテル)が株主総会直前に複数の感染者が出るなどして、一時的に閉鎖されたり、消毒作業で入館できなかったりして、株主総会当日に会場が使えなくリスクも十分に想定できる。なお、感染症の予防、感染拡大防止については、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」において、都道府県知事による建物の消毒指示(消毒作業に伴う、閉館・立ち入り制限の事態が生じる)、使用禁止(封鎖)や感染地域一帯の交通制限(72時間以内)等の処置が可能である。参考までに、当該条文を下記に掲載する。

※感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律

(感染症の病原体に汚染された場所の消毒)

 第二十七条 都道府県知事は、一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該感染症の患者がいる場所又はいた場所、当該感染症により死亡した者の死体がある場所又はあった場所その他当該感染症の病原体に汚染された場所又は汚染された疑いがある場所について、当該患者若しくはその保護者又はその場所の管理をする者若しくはその代理をする者に対し、消毒すべきことを命ずることができる。

 2 都道府県知事は、前項に規定する命令によっては一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止することが困難であると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該感染症の患者がいる場所又はいた場所、当該感染症により死亡した者の死体がある場所又はあった場所その他当該感染症の病原体に汚染された場所又は汚染された疑いがある場所について、市町村に消毒するよう指示し、又は当該都道府県の職員に消毒させることができる。

(建物に係る措置)

 第三十二条 都道府県知事は、一類感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある建物について、当該感染症のまん延を防止するため必要があると認める場合であって、消毒により難いときは、厚生労働省令で定めるところにより、期間を定めて、当該建物への立入りを制限し、又は禁止することができる。

 2 都道府県知事は、前項に規定する措置によっても一類感染症のまん延を防止できない場合であって、緊急の必要があると認められるときに限り、政令で定める基準に従い、当該感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある建物について封鎖その他当該感染症のまん延の防止のために必要な措置を講ずることができる。

(交通の制限又は遮断)

 第三十三条 都道府県知事は、一類感染症のまん延を防止するため緊急の必要があると認める場合であって、消毒により難いときは、政令で定める基準に従い、七十二時間以内の期間を定めて、当該感染症の患者がいる場所その他当該感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある場所の交通を制限し、又は遮断することができる。

「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」において、都道府県知事により建物の閉鎖指示や感染地域一帯の交通制限がかけられるのは、エボラ出血熱等の「一類感染症の場合」(上記、32条、33条参照)であり、今回の新型コロナウイルスは「2類感染症相当」とされていることから、建物封鎖や交通遮断については、新型コロナウイルスの場合は同法に基づいて行わることはない。

しかし、同法27条に規定する消毒作業の指示は可能であること(参考資料参照)から、消毒作業の為等の理由で、施設が閉鎖されれば、実質的に予定した日に株主総会の開催することは不可能であり、予定日に開催できないということになれば、会社法その他の法律上の問題も生じかねない。

※参考資料:新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令等の施行について(施行通知)(厚生労働省)
→「別紙」に、「新型コロナウイルス感染症について講じることのできる主な感染症法上の措置」として記載されている。

このように、株主総会直前に施設が使えなくなるリスクも想定し、早い段階で、その場合の法的な問題や対応策について、顧問弁護士等と協議し、万が一の事態に備えておく必要がある(この点は、新型コロナウイルスの収束見通しがつかない以上、3月期の株主総会に限らないであろう)。

以上、やるべき対策はほかにもあり得るが、3月期の株主総会に向けて新型コロナウイルス対策として最低限、検討いただきたい点をまとめてみた。参考にしていただければ幸いである。

なお、上記施策の実施も含め、最終的な法的な検証は、顧問弁護士に確認いただきたい。

以上

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