リスク・フォーカスレポート

「公益通報者保護制度と内部通報制度と企業方針に関する考察」

 皆さま、こんにちは。今月から毎月第4週目のリスクフォーカスレポートは「内部通報編」となります。当社が、他社の従業員様からの内部通報を受け付けるサービス「リスクホットライン」を立ち上げてから今年で10年を迎え、これまでに受け付けた通報の総数は、先月末(平成25年2月末)現在で1957件に達しました。本日から全6回にわたり、このリスクホットラインの運営実績や通報事例、公益通報保護制度に関する社会動向や内部通報制度に対する企業の取組み等を検証しながら、企業における内部通報窓口のあり方等について考えて行きたいと思います。最後までお付き合いいただけましたら幸いです。

 さて、初回である今回は、「公益通報者保護制度と内部通報制度と企業方針に関する考察」と題して、混同して話されることの多い「公益通報者保護制度」と「内部通報制度」の違いや、企業の内部通報窓口の現状の課題から、内部通報制度の制度設計等について考えます。

1.「公益通報者保護制度」と「内部通報制度」の違い

 平成18年4月の公益通報者保護法の施行を契機に内部通報制度を導入する企業が急増した。公益通報者保護法と内部通報制度は切り離せない関係ではあるが、公益通報者保護法が対象としている通報と、実際に企業が日常的に受け付けている内部通報には大きな乖離がある。

 公益通報者保護法は、通報者が通報したことを理由に組織内で不当な扱いを受けないよう守るための法律であり、対象とされる通報は、公益に影響を及ぼす(指定された435本の法律に抵触する)レベルのものとされている。

 一方の内部通報制度に関して言えば、制度を導入している多くの企業が、内閣府のガイドラインや弁護士等の有識者の進言に従い、通報できる内容を法令違反等に限定せず広く定めている。そのため、上がってくる通報のレベルは多岐にわたり、「果たして企業の担当者が時間を割いて対処する必要があるのか」という疑義を感じさせる通報も少なくない現状がある。

2.企業の内部通報窓口担当者の負担・悩み

 内部通報窓口に上がってくる通報のレベルに疑義を感じている企業が多いことは、「民間事業者における通報処理制度の実態調査報告書(※)」からも窺える。

(※)当該報告書は、平成20年に当時公益通報者保護法の主管であった旧内閣府国民生活局が公表し、その2年後には、平成21年9月から同法の主管となっている消費者庁が引き継ぐ形で、平成22年度版を公表している。

▼平成20年度版 ▼平成22年度版

 この報告書のベースとなっている調査は、民間企業向けにアンケート形式で実施されているのだが、そのアンケート項目の中に、「内部通報制度を運用する上で、どのような課題や実務上の負担があるとお感じですか」という設問があり、この設問に対する20年度版と22年度版における回答結果(上位6位までを抜粋)は以下の通りである。

【平成20年度版】(n=1310)

①.制度の周知が進まない(24.4%)

②.通報というより、不満や悩みの窓口となっている(24.0%)

③.本当に保護されるのか、職員に不信感がある(18.3%)

④.社内風土から、通報への心理的な圧迫感がある(17.9%)

⑤.通報者の個人情報の保護が難しい(13.3%)

⑥.人手不足(6.6%)

【平成22年度版】(n=2604)

①.通報というより不満や悩みの窓口となっている(29.6%)

②.本当に保護されるのか、職員に不信感がある(23.9%)

③.不利益な取り扱いを受けた事実の確認が難しい(22.3%)

④.保護すべき通報かどうかの判断が難しい(17.4%)

⑤.制度の周知が進まない(16.7%)

⑥.社内風土から、通報への心理的な圧迫感がある(16.4%)

 上記のように、「通報というより、不満や悩みの窓口となっている」の回答数が、20年度が2位、22年度が1位といずれも高く、22年度版の詳細内訳によると、従業員数3000人超の企業では、54.4%がこの回答を選択している。また、22年度版では回答の選択肢に「保護すべき通報かどうかの判断が難しい」という項目が追加され、これが4位に入っていることも、本来企業が期待する目的外の通報が多く、その扱いに悩んでいる企業が増えていることの裏付けと言えよう。

 その他、特筆したいのは、22年度版で新たに設定された「不利益な取り扱いを受けた事実の確認が難しい」という項目が3位に入っている点である。ここで言う『不利益』に関しては、訴訟案件等でよく争点となっている「通報者の異動措置に合理性があったか(不利益な取り扱いでなかったか)」といった事象を思い浮かべる方も多いと思うが、企業が日常受け付ける通報において、通報者が不利益として訴える例としては、「通報してから、上司の態度が何となく冷たくなったような気がする」、「先日の飲み会に誘われなかったのは通報したことが原因ではないのか…」等、「かも知れない」レベルのものが少なくないという現状がある。これらの訴えについての事実確認が難しいことは言うまでもなく、当該アンケートでこの項目を選択した企業担当者(特に内部通報制度が十分に稼働している企業の担当者)は、前掲のようなケースをイメージしているのではないかと考える。

3.内部通報制度の制度設計

 前項で、内部通報制度の運用に関して企業担当者が一番負担に感じているのは、「通報というより、不満や悩みの窓口となっている」という点であると紹介したが、では、「不満や悩みは取り扱わないよう制限すればいいか」というと、それが正しいとも言えないだろう。

 冒頭でもお伝えしたが、当社のリスクホットラインにおいて、平成16年7月の開設以降に受付けた通報件数が、先月末現在で1957件に達した。

 リスクホットラインでも、開設当初から契約企業に対し、「通報の受付範囲を法令違反等に限定しないことが窓口を活性化させるための勘所であり、窓口が活性化すれば重要な情報も上がって来易くなる」とアナウンスしてきた。この考えは基本的に現在も変わらないが、やはり「企業の担当者が時間を割いて対応する必要があるのか」と考えさせられる通報が多い現状は看過できない課題として実在している。しかしながら一方で、個人的な不満とも言えるような通報にも真摯かつ適切に対処し、意見を言う従業員を大切にする風土が出来上がっている企業もあり、そのような企業では(担当者が費やす労力が大きいものの)、職場環境が年々改善されてきている状況が見受けられるのも事実である。

 内部通報制度をどのように整備するかについては、経営陣が自社の方針に沿って最適と思う制度設計をすればよいとされている。内部通報制度を通じて上がってきた通報をしっかりと内部統制の強化に役立てられるかは、それを受け止める社内体制や経営陣の姿勢次第ということであり、各企業が、業種や業態、拠点数、非正社員の雇用比率等と経営方針に鑑み、どのような運用が自社にとって最適かを見極めることが肝要なのである。

 次回は、企業の取り組み事例を紹介しながら、「内部通報制度をどのように整備するか」について考えてみたいと思います。

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