リスク・フォーカスレポート

危機管理的顧客対応5ヶ条編 第三回(2013.11)

2013.11.27
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危機管理的顧客対応5ヶ条の有用性と意義

 前回は、顧客対応プロセスにおけるリスクの状況と、当該リスクを踏まえたリスクアプローチ的発想に基づく顧客対応にかかる内部統制システムの重要性、そしてその内部統制システムの観点からの要請に対応する危機管理的顧客対応指針5ヶ条の意義について概観しました。今回は、危機管理的顧客対応指針5ヶ条の総決算として、その有用性と意義を纏めてみたいと思います。

 なお、現場担当者にとっては、どんな事例でも”負けないための顧客対応”の基本エッセンスを5つに集約・体系化されたノウハウが、また経営者やマネジメント層としては、顧客対応に伴うリスクと内部統制システムを構築するための視点が書かれた書籍、『クレーム対応の「超」基本エッセンス~エキスパートが実践する負けないための鉄壁5ヶ条~』が、いよいよ、明後日、11月29日に全国の書店で発売されます。

 危機管理的顧客対応指針5ヶ条に関するセミナーは満員・追加開催になるなど、多くの皆様からのご支持を頂いており、私がメイン講師を務めさせていただいた本年7月の定例セミナー(福岡開催については、弊社福岡支社の上野が担当)にも、多くの会員企業の皆様にご参加いただきました。その後も危機管理的顧客対応指針5ヶ条に関するセミナーを多数ご依頼頂いております。

 今までのセミナーの際にも、受講された方々から、「書籍はないのか」等多数お問合せを頂いておりました。これらの書籍化のご要望を受け、出版を模索していたところ、大手出版社のレクシスネクシス・ジャパン様から、「他の類書にはない出色の内容なので、ぜひ書籍に」というご厚意をいただき、ようやく皆様のお手元に書籍としてお届けすることができるようになりました。

 ぜひ、今後も皆様のクレーム対応に関するバイブルとして活用いただき、5つの基本エッセンスに皆様の経験をスパイスとして加えていただき、皆様なりの「危機管理的対応指針」、戦うための武器として、お役立ていただけましたら、執筆者としてこれに勝る慶びはございません。

 さて、前置きが少し長くなりましたので、本編に入りたいと思います。改めて記せば、危機管理的顧客対応指針5ヶ条は、顧客対応の現場での負けないための基本として活用できる実践ノウハウであると共に、企業での顧客対応プロセスないし、顧客対応内部統制システムにおけるリスクへの対応をも視野に入れた、現場と経営を架橋する体系性を有しています。

 端的に言うと、危機管理的顧客対応指針5ヶ条に基づく顧客対応プロセスを組織全員で実践することで、現場レベルにおいては、どんな不当要求にも屈しないノウハウとして機能する一方で、経営レベルでは、顧客対応プロセスの標準化・可視化を通じた不正予防やリスクマネジメントが可能となるのです。今回のリスクフォーカスレポートは、危機管理的顧客対応指針5ヶ条の経営的視点、内部統制システムの整備との関係で、その意義を明らかにすることが目的ですので、改めて、その視点から5ヶ条の流れと意義について整理すると、下記の通りとなります。

【危機管理的顧客対応5ヶ条の意義と有用性】
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(危機管理的顧客対応5ヶ条の4つの意義)

1.対応現場における実践的意義:対応の現場で使えるシンプルな指針

2.危機管理的意義:どんな事例でも負けない(大怪我しない)高い汎用性有した指針

3.経営的意義:真に収益性を意識した(不当要求を明確にロスと位置づけた)顧客対応指針

4.内部統制的意義:標準化されたプロセスと顧客対応プロセスにおけるリスクへの対応を通じた内部統制強化に寄与する指針

 実際の顧客対応に当る際の5ヶ条の流れについては、既に説明した通り、「第1条:初期対応の重要性」→「第3条:初期対応における3つの基本」→「第4条:お客様の話の4つの要素」→「第5条:要求見極めの5つの基準」→「第2条:クレーム・不当要求の2分類」という形で流れていきます。

①「第1条:初期対応の重要性」のリスクアプローチ的視点からの意義

 第1条については、状況が十分に分からない中で対応するという意味で、初期対応は不確実性が高いということを皆さんに改めて確認していただくためのものです。

 すなわち、顧客対応のプロセスとしては、お客様から発せられる商品・サービス、そしてそれを支える社内体制に関するリスク情報が発せられる初期対応のプロセスは極めて重要なステージであるにもかかわらず、実務では、意外なほど重視されておらず、最初の段階での致命的ミスが、不当要求応諾や対応負担増のロスをもたらしています。

 そこで、全ての出発点となる初動対応の重要性を認識してもらうための指針として明文化したのが、「危機管理的顧客対応5ヶ条:第1条初期対応の重要性」なのです。

②「第3条:初期対応における3つの基本」のリスクアプローチ的視点からの意義

 次のプロセスは第3条ですが、これは初期対応において、特に事実確認をミスすると、不当要求に応じてしまいかねないリスクがあり、不当要求に応じることでロスが生じ、企業の収益性を著しく低下させる懸念が大きいことから、ロス直結を抑止するためのリスク対策として、初期対応において徹底すべきアクションを明文化したものとなります。

 3つの基本として提示されている、「お客様の話を聞くに徹する」「事実関係の確認・明確化」「対応時の内容の記録・共有」については、いずれも至極当たり前の内容ではありますが、この3つが出来ていないからこそ、事案対応をミスしているという現実を直視してもらうための戒め的な内容となっていることを忘れてはなりません。

③「第4条:お客様の話の4つの要素」のリスクアプローチ的視点からの意義

 次は、第4条です。第4条については、CS対応及び不当要求対応それぞれにおいて、お客様の話の要素として力点を置くべき事項に着目することで、対応の基本スタンスを明示すると共に、特に不当要求対応において、お客様の「意見」に引きずられて、不当な「要求」に応じてしまい、結果として、当初の対応方針からブレてしまうことで組織的統一的対応が取れなくなってしまう、そのようなリスクへの対応指針を提供しようとするものです。

 そして、これこそが、どんな事案にも負けないための危機管理的実務要領の肝をなすものと言えます。要するに、顧客対応プロセスにおけるリスクアプローチで説明したように、実際の対応においては、事実の確認不足や主観を前面に出された申し出による対応方針のブレ等の事態が生じていることに鑑みて、実際の対応において肝となる、お客様の「話」について、その構成要素に着目する意識を持たせることで、上記リスクを回避することを狙いとするものです。

 不当要求対応の極意は、既に説明したようにこの第4条の実践に他ならならないのです。

④「第5条:要求見極めの5つの基準」のリスクアプローチ的視点からの意義

 そして、要求についてはその是非を判断し、対応していく範囲を決めていかなければなりませんが、その対応方針(範囲)決定の基準を明確化したものが、第5条であると言えます。第5条については、対応基準が不明確あるいは恣意的に運用されること、及びそれにその過程で生じる様々な不正リスクを抑止することを意図したものです。

 すなわち、明確かつ合理的な基準が無ければ、事案を上手く丸めようと、相手の言いなりになるといった、対応方針の決定プロセスが恣意的に運用されたり、人により判断内容が異なる等の不合理・不効率が生じる上、この過程で不正や隠蔽・改竄も行われかねません。そこで、そのような事態を防止するため、判断基準を明確にしたものが、この「危機管理的顧客対応5ヶ条:第5条要求見極めのための5つの基準」なのです。

⑤「第2条:クレーム・不当要求の2分類」のリスクアプローチ的視点からの意義

 5つの基準を用いてその内容の適正と要求応諾の是非を判断することで、顧客の声として収益向上に繋げていくべき「クレーム」なのか、ロスに直結して収益を低下させる「不当要求」なのか、その具体的な対応要領が定まってくることになります。

 対応担当者の属人的判断やケースバイケースの判断により、企業の収益が左右されることのないよう、収益に与える影響の観点から、プラスのベクトルに作用するもの(クレーム)とマイナスのベクトルに作用するもの(不当要求)の違いを明確に区別してもらうことを意図しています。

 クレームは顧客の声として収益向上に繋がるものですが、不当要求は種々のロスを生じさせ、かえって収益を低下させるものではありますが、残念ながら、国内の企業においては、「お客様は神様」とか「顧客満足」「(利益重視ではなく)売上重視」のスローガンの下、両者が曖昧なまま運用され、結果的に不当要求を助長し、企業の収益性を低下させていると言えます。

 そこで、企業の収益向上につなげるための指針として、両者の違いを明確にしたのが、「危機管理的顧客対応5ヶ条:第2条クレーム・不当要求の2分類」なのです。

 以上、説明してきたように、危機管理的顧客対応5ヶ条の経営的意義を端的に表現すれば、「対応プロセスを標準化することで、収益性を意識したリスク管理と内部統制システム強化の有効性の確保に資する統一的・組織的・汎用的・合理的対応を可能にした効率性に優れた顧客対応指針であって、インターネットの特性を踏まえた現代的事情にも高い応用性・実践性を有するもの」と言うことができます。

 これこそが、本書の表題、『クレーム対応の「超」基本エッセンス~エキスパートが実践する負けないための鉄壁5ヶ条』に込められたメッセージなのです。

 これまで、クレーム対応のノウハウは、現場での対応テクニック論が主流でした。というより、実際の顧客対応プロセスでのリスクアプローチや、内部統制的な観点、収益性を低下させる「不当要求=ロス」の視点を明確に打ち出したもの、そしてそれをシンプルに体系化された形で提示している指針は、私の知る限り有りません。

 顧客対応、特に不当要求対応は、組織的な対応が重要であるからこそ、現場での対応のテクニック論に留まらない、標準化や内部統制的意義が重要になるのです。これなくして、真の組織的対応体制の整備は実現できません。

 危機管理的顧客対応指針は、シンプルな基本を整理したものです。そこに色々なスパイスが付け加えられて、各社オリジナルの危機管理的指針に昇華していただくことを否定するものでは有りませんし、むしろ、一度基本に立ち返った上で、改めて顧客対応のあり方を整理していただくためのエッセンスです。ぜひ、これを機会に危機管理的顧客対応指針5ヶ条を積極的にご活用下さい。

 最後になりましたが、11月29日の書籍の出版を記念して、そのコア部分をダイジェストで解説させていただく、出版記念セミナーを開催致します。東京では12月3日に、大阪では来年1月20日に、それぞれ開催いたします。他の当社拠点でも、今後開催を予定しております。

 満員でなかなかご参加いただけない危機管理的顧客対応5ヶ条のセミナーですが、出版記念セミナーについては、まだ若干席に余裕があるようです。今回は弊社代表取締役熊谷が、皆様への日頃のご支援への感謝を込めて、当社が自信をもってお届けする危機管理的顧客対応指針5ヶ条の神髄を時間の許す限り、解説させていただきます。ぜひ、ご参加いただけますと幸いです。

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