KYCチェックからKYCCチェックへ(1)(2018.3)

2018/03/14 / 取締役 総合研究室 主席研究員 芳賀 恒人 プリント

1. KYCチェックからKYCCチェックへ

 金融庁の「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」(以下、「AML/CFTガイドライン」)は、金融機関の実効的なAML(アンチ・マネー・ローンダリング)/CFT(テロ資金供与対策)のリスク管理態勢の構築を促すため、リスクベース・アプローチ(RBA)の内容を明らかにするとともに、経営陣の関与、他のリスク管理でも用いられている「3つの防衛線」に基づくガバナンス(3線管理)、グローバルに展開する金融機関への視点、官民連携等をあげています(本ガイドラインの内容のポイントについては、暴排トピックス2017年12月号も参照ください)。本コラムでは、これまでも、AML/CFTと反社リスク対策については、実務上の共通項が多いこともあり、両者を高次元で融合させ統合的に実施すべきであって、それにより両者の実効性が高まること、犯罪の高度化やサプライチェーン・マネジメントの厳格化などの昨今の社会の要請から、犯罪収益移転防止法(犯収法)上の特定事業者だけでなく、一般の事業者においても、AML/CFTの観点から取り組む必要があることを指摘してきました。今回は、AML/CFTガイドラインからみた反社リスク対策への応用とその統合的な実務の基本的な考え方について整理してみたいと思います。


 まず、リスクべース・アプローチ(RBA)については、これまでAML/CFTの実務が、「画一的・硬直的・形式的なチェック」になっており、疑わしい取引の届出についても、あくまでも「犯罪協力・コンプライアンス」の一環としての取り組みにとどまっていること(疑わしい取引はリスクの端緒であって、その実務の本質はリスク管理に他ならないとの認識に乏しく、届け出るまでが実務と勘違いしているケースが多いのではないか)、その後の継続的な顧客情報の確認や取引のモニタリングが行われないなど、時々刻々と変化する犯罪の手口やテロの動向等への柔軟な対応ができずにきた(結果的に、AML/CFTのグローバル・スタンダードを充足できず、日本の金融機関等が「抜け穴」として犯罪組織やテロリスト等に悪用されることを許してきた)反省をふまえ、これまでのリスク管理の限界を乗り越えるために導入された考え方です。一方の反社リスク対策においても、反社会的勢力の不透明化・潜在化の進展から、相手を見抜くことが困難になる中、一律の反社チェック・ルールだけでは見極めの実効性は担保されず(結果的に「入口」の反社チェックが意味をなさない状況があり)、自社にとっての重要性(取引等の取引額・態様・属性等について、その重要性を自社において自立的・自律的に決定するもの)に鑑み反社チェックの軽重をルール化する「層別管理」を当社としては提唱してきたところです。さらには、数年前のメガバンク等の融資事件以降、「中間管理(モニタリング)」を強化する考え方が金融機関から一般の事業者にも浸透しつつあり、「入口」の限界を乗り越えようとする取り組みが定着しつつある状況です。そのような中、AML/CFTガイドラインが求めるRBAにおいては、非対面取引や反社会的勢力等の法令等で想定されている個別の取引や顧客等以外のリスクも含め、自らが直面するマネロン・テロ資金供与リスクを包括的に(AML/CFT+反社リスク対策等として包括的・統合的な視点から)特定・評価したうえで、当該リスクの高低に応じた適切な措置の要否を検討するものであり、個々の取引等の取引額・態様・属性等を総合的に勘案して、追加の分析・調査等も必要に応じ行いながら、リスクに見合う実質的な対応を丁寧に検討しいくことが重要となります。


 また、AML/CFTガイドラインでは、「経営陣の積極的な関与」と「3線管理」が強調されています。AML/CFTについては、当然ながら国際的な包囲網の一員としての責任を果たすべく、経営上の課題として強いリーダーシップが求められています。また、反社リスク対策においても、平成19年の政府指針(企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針)でも、「担当者や担当部署だけに任せずに、代表取締役等の経営トップ以下、組織全体として対応する」、「反社会的勢力による被害の防止は、業務の適正を確保するために必要な法令等遵守・リスク管理事項として、内部統制システムに明確に位置付けることが必要である」ことが明記されており、その組織としての対応態勢の基本的な考え方には共通項が多いものと考えられます。また、AML/CFTガイドラインでは、その経営陣の強い姿勢を反映させるべく、組織全体を俯瞰した実効的な管理態勢の構築(いわゆる内部統制システム、AML/CFTリスク管理態勢の構築)を進めるにあたっては、「営業」「管理」「監査」の「3つの防衛線」による3線管理の考え方が採用されています。第1線の営業部門は、顧客と直接対峙し、その際にリスクを適切に把握して当該リスクに見合った措置を講ずる等、金融機関をマネロン・テロ資金供与に利用させないためのいわば「最初の防波堤」として重要な役割を担っていると言えます。反社リスク対策においても、最前線にいる営業部門(取引担当窓口)の「暴排意識」と「リスクセンス」の如何によって、営業部門が、反社会的勢力の侵入(アプローチ)に対する「防波堤」にも「協力者」にもなってしまうことをふまえ、営業部門の感度を高める取り組みを行うことが最も重要となります(AML/CFTにおける営業部門にとっても、「リスクセンス」「目利き力」を適切に発揮することは極めて重要な役割であり、それが、AML・CFT・反社リスク対策など個々のリスク領域のうちのどれかに該当するか否かに着目するのではなく、包括的・統合的な視点から、顧客の何らかの「リスクの芽」(端緒情報)に気付くことが重要であり、それこそが「AML/CFT+反社リスク対策+α」=「KYC(KnowYour Customer)チェック」という考え方の肝となります)。サ続く第2線の管理部門は、第1線による対策の実効性につき、一歩離れた視点で監視する、監視の実効性確認(シナリオの適切性等の定期的な検証等)などの重要な役割がある他、立案した対策の整備・周知、研修等の機会の提供や相談対応等のサポート態勢の構築を担っています。反社リスク対策においても、営業部門からの端緒情報を集約し、組織としての見極め・取引可否判断・排除の方向性の決定などを行う重要な役割を担っており、AML/CFTとの共通項も多いと言えます。そして、第3線の監査部門が、営業部門や管理部門から独立した立場で実効性を監査する(例えば、データの適切性の確認やチェック態勢がルール通りに運用されているか等の確認など)ことが求められています。

 これらの、RBAや3線管理を含む「KYCチェック」あるいはKYC管理という考え方は、今後、一般の事業者においても、是非、積極的に取り組んでいただきたいものでもあります。AML/CFTはお金の流れを中心とした考え方ですが、今後のリスク管理の重要なキーワードの一つである「サプライチェーン・マネジメント」における実務においても参考になるものと思われます(今後、「サプライチェーン・マネジメント」の要素を加味する必要性に迫られることになります。そうなれば、従来の「KYCチェック」だけでは不十分であり、よりスコープを拡げた「KYCC(Know Your Customer's Customer)チェック」「KYCC管理態勢の構築」へと取り組みを進化・深化させていくことになると考えられます)。このあたりのより詳細な実務のあり方については、本コラムでは今後も議論を深めていきたいと考えています(なお、後述する「北朝鮮を巡る動向」においても金融機関のKYCチェックにかかる事例を分析していますので、あわせて参照願います)。


 さて、JAFICから平成29年犯罪収益移転防止法に関する年次報告書(暫定版)が公表されましたので、そのポイントを簡単に紹介しておきます。

▼警察庁 JAFIC 年次報告書など
▼平成29年犯罪収益移転防止法に関する年次報告書(暫定)

 疑わしい取引の届出制度は、平成4年の麻薬特例法の施行により創設されましたが、当初は届出の対象が薬物犯罪に関するものに限られていたことなどから、届出受理件数は平成4年から平成10年までは毎年20件未満でした。しかし、平成11年の組織的犯罪処罰法制定により届出の対象が薬物犯罪から重大犯罪に拡大され、同年における届出受理件数は1,000件を超えました。その後、組織的犯罪処罰法が施行された平成12年以降、届出受理件数は年々増加し、平成19年の犯罪収益移転防止法の一部施行後もおおむね増加しています。平成29年中の届出受理件数は400,043件と、前年より1,048件(▲0.3%)減少する結果となりましたが、ほぼ横ばいとなっています。また、今回から新たに対象に加わった「仮想通貨交換業者による疑わしい取引の届出」件数は669件と全体の0.3%を占めています。今後、仮想通貨交換業者のAML/CFT態勢が整備されていくことに伴い、疑わしい取引の届出件数も増加することが予想されます(前述した通り、疑わしい取引の届出自体がリスク管理の重要な実務です)。なお、平成29年中に抹消された疑わしい取引に関する情報は5,868件で、平成29年末における同情報の保管件数は395万9,057件となっています。さらに、平成29年中の疑わしい取引の届出受理件数を届出事業者の業態別に見ると、銀行等が346,595件で届出件数全体の86.6%と最も多く、次いでクレジットカード事業者(15,448件、3.9%)、信用金庫・信用協同組合(13,259件、3.3%)の順となっています。以前に比べると銀行等の割合は減少してはいるものの、他の業態の取り組みが本格化した結果であり、銀行等における取り組みが圧倒的に進んでいることは間違いありません。
 また、捜査機関等に対する疑わしい取引に関する情報の提供件数は毎年増加しており、平成29年中は446,085件と、前年より2,380件(+0.5%)増加し、過去最多になっています。その結果、疑わしい取引に関する情報を端緒として都道府県警察が検挙した事件の数は、平成29年中は1,097事件と、前年より6事件(+0.5%)増加し、こちらも過去最多となっています。事犯類型別では、詐欺関連事犯(詐欺、犯罪収益移転防止法違反等)は計933事件と全体の85.1%を占めて最も多く、預貯金通帳等の詐欺又は譲受・譲渡、生活保護費等の不正受給、コンサートチケット販売や携帯電話機契約に関する詐欺等の事件を検挙する成果があがっています。薬物事犯(覚せい剤取締法違反、麻薬特例法違反等)は計42事件であり、覚せい剤等の違法薬物の所持・譲渡・譲受、インターネットや宅配を利用した違法薬物の売買等の事件を検挙しています。さらに、マネー・ローンダリング事犯(組織的犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿・収受等))は計17事件であり、詐欺、ヤミ金融事犯等により得た不法収益等の隠匿・収受等の事件を検挙しています。また、多くのマネー・ローンダリング事犯において、他人名義の預貯金通帳、為替取引カード等が悪用されている実態がありますが、平成29年中における預貯金通帳等の不正譲渡等の検挙件数は2,581件と、前年より602件(+30.4%)増加しており、注意が必要な状況です。
 なお、平成29年中における組織的犯罪処罰法に係るマネー・ローンダリング事犯の検挙事件数は、法人等経営支配事件2事件、犯罪収益等隠匿事件240事件、犯罪収益等収受事件111事件の合計353事件と、前年より27事件(▲7.1%)減少しています。組織的犯罪処罰法に係るマネー・ローンダリング事犯を前提犯罪別に見ると、窃盗が136事件と最も多く、詐欺が103事件、電子計算機使用詐欺が24事件、ヤミ金融事犯が22事件等となっています。


 さらに、平成29年中に組織的犯罪処罰法に係るマネー・ローンダリング事犯で検挙されたもののうち、暴力団構成員等(暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者をいう)が関与したものは、犯罪収益等隠匿事件22事件及び犯罪収益等収受事件24事件の合計46事件で、全体の13.0%を占めています(前年の平成28年は18.4%、平成27年は23.4%であり、それらと比較すると、昨年は暴力団の関与度合が低い結果となっています)。また、暴力団構成員等が関与したマネー・ローンダリング事犯を前提犯罪別に見ると、詐欺が19事件、窃盗が8事件、賭博事犯が4事件、恐喝及び売春事犯がそれぞれ3事件等であり、暴力団構成員等が多様な犯罪に関与し、マネー・ローンダリング事犯を敢行している実態がうかがわれます。なお、暴力団が関与した事例としては、以下が紹介されています。

  • 共政会傘下組織幹部の男は、数名の者と共謀し、携帯電話機等販売店から携帯電話機等を騙し取り、それを他人名義の身分証明書等を用いて売却した上、自己が管理する他人名義の口座に振込入金させていたことから、組織的犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)で検挙した(1月 広島)
  • 六代目山口組傘下組織の男は、風俗店経営の女らが売春の場所提供で得た利益であることを知りながら、みかじめ料の名目で現金を受け取っていたことから、組織的犯罪処罰法違反(犯罪収益等収受)で検挙した(3月大阪)

 なお、来日外国人が関与したものは、犯罪収益等隠匿事件20事件及び犯罪収益等収受事件7事件の合計27事件で、全体の7.6%を占めています。また、平成29年中の麻薬特例法が定めるマネー・ローンダリング事犯の検挙事件数は8事件と前年と同数でした。覚せい剤を密売し、購入客からの代金を他人名義の口座に入金させていた薬物犯罪収益等隠匿事件のように、薬物事犯で得た資金について、巧妙にマネー・ローンダリングを行っている実態がうかがわれます。
 国境を越えて行われるマネー・ローンダリング関連事犯としては、「日本人の男は、商取引に係る偽りのメールを信じたフランスの建設会社から日本国内の銀行の日本人名義の口座に送金された詐欺の被害金(約3,950万円)を当該口座から払い戻すに当たり、銀行担当者に対して、通常の商取引による送金であるなどと虚偽の説明をして、被害金を正当な事業収益であるかのように装ったことから、同人を組織的犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)及び詐欺で検挙した(3月 警視庁)」事例が紹介されています。平成28年の事例で取り上げられていたビジネスメール詐欺の構図とほぼ同一であり、やはり銀行が「通常の商取引」であるとの虚偽の説明を見抜けずに送金手続きを行ったことが原因で、国際的に日本の金融機関が「抜け穴」であると犯罪組織から見られている可能性が高く、AML/CFT実務レベルの底上げが急務であることが実感されます。


 さて、その金融機関のAML/CFTの実務レベルの底上げは正に喫緊の課題であり、金融庁もいら立ちを隠していません。報道によれば、2月中旬の地域銀行の定例会合の席上、金融庁幹部は、「リスク管理態勢の機能発揮状況に重大な懸念を持たざるを得ない」と強い口調で指摘し、窓口の形式的なチェックが原因で複数回にわたり不自然な海外送金をされた銀行の例をやり玉にあげて、対応が遅れている地域金融機関に警告を与えたということがありました。そして、この3月には、AML/CFTに向けた金融機関の体制整備を強化するため、金融庁が全国銀行協会などと「マネロン対応高度化官民連絡会」を立ち上げ、初会合を開く予定となっています。さらには、3月に入って、金融庁総括審議官が、某所で開催された講演で、対策が不十分なら、立ち入り検査を含めて検証すると述べたということです。報道(平成30年3月7日付ロイター)によれば、体制や警戒感の低い金融機関が、意図せずマネロンやテロ資金供与に加担してしまうリスクが高まっているとして、経営陣が主体的に関与して営業の最前線まで対策を浸透させること、「(マネロンやテロ資金供与の)リスクは世界的にますます増大している。一方、金融機関の対応はあまり進んでいない」と指摘して、リスクと金融機関の対応の格差を早期に埋めるため、金融機関が示した「ギャップ分析の結果や改善策について、立ち入り検査を含めてより深度ある検証をする必要がある」と述べたということです。さらに、「新しい分野ほど、リスクへの感度が低い一方でリスクは高い」と仮想通貨業界におけるAML/CFTの底上げの必要性にも触れています。このあたりは本コラムでたびたび指摘している内容と共通しており、新たな分野は利用者の利便性に偏りがちであり、顧客の保護(リスク対策)は後回しとなることが多い現実があり、その問題がNEMの流出問題で顕在化したと言えます。
 また、毎月開催されている金融庁と業界団体との意見交換会でも、AML/CFTおよび反社リスク対策について、金融庁は、主要行にはグローバル・スタンダードを見据えた対応を、地銀・第二地銀には、リスクベース・アプローチに基づく自立・自律的な取り組みと対策の高度化を、それぞれ要請しています。

▼金融庁 業界団体との意見交換会において金融庁が提起した主な論点
▼主要行(平成30年1月17日)
▼全国地方銀行協会(平成30年1月17日)/第二地方銀行協会(平成30年1月18日)

【主要行】
 マネロン・テロ資金供与対策については、グローバルな要求水準が年々上がってきている中、タイムリーに対応できていない、管理態勢が不十分であるといったケースが見受けられる。例えば、顧客情報の取得(いわゆるKYC)の深度及び頻度が十分でない、リスクの高い取引を検知するためのシステムの検証が十分ではない、データの整備に遅れがみられる、コルレス先管理が適切でない、必要な人材の確保ができていない、業務委託やテクノロジー活用のための戦略がない等の課題があると認識している。
 また、主要行においては、現状の対応がグローバルな要求水準と比較して十分な水準となっているか、ギャップ分析を行い、速やかに必要なアクションを取ってほしい。


【地銀/第二地銀】
 本年1月より、銀行業界による警察庁の暴力団情報データベースへの照会が、新規の個人向け融資を対象に開始されたところであり、各行におかれては本データベースを適切に運用し、銀行取引からの反社排除に努めてほしい。また、既存の制度としては、平成24年6月に預金保険機構(業務は整理回収機構に委託)が預金取扱金融機関から反社債権を買い取る「特定回収困難債権」の買取りが、また、平成26年7月に整理回収機構がそのサービサー機能を活用することによる、それ以外の金融機関からの反社債権の買取りが、それぞれ始まっている。入口対策として警察庁の暴力団情報データベースを適切に運用するとともに、出口対策として預金保険機構、整理回収機構による反社債権の買取制度を積極的に活用し、反社会的勢力との関係遮断を徹底してほしい。また、マネロン・テロ資金供与対策について、ガイドラインで求められているリスクベース・アプローチの実施に当たって、各金融機関が自らの業容・規模・取引形態等を考慮すべきことは当然であるが、様々な特性に応じたリスクの評価とリスクに見合った対策等について、対策の高度化を図る必要がある。


 さて、AML/CFTの実務に関連して、国税庁から、税制改正に基づき、法人が口座開設等をする際に「特定法人」に該当するかどうか確認をする必要があること、その法人の「実質的支配者」についての届出を行う必要がある旨、あらためて通知がなされていますので、紹介しておきます。

▼国税庁 口座開設等を行う法人の方へ 金融機関等で法人の方が口座開設等をする際は「特定法人」に該当するかどうかの確認が必要です!(平成30年2月)

 平成27年度税制改正(平成29年1月1日施行)により、平成29年1月1日以後、新たに国内に所在する金融機関等(銀行、証券会社、保険会社、組合、信託等)で口座開設等を行う方(自然人、法人、組合等)は、金融機関等へその方の居住地国等を記載した届出書の提出が必要となること、さらに、口座開設等を行う方が法人である場合、「特定法人」に該当するかどうかを確認し、「特定法人」に該当するときには、その法人の「実質的支配者」に係る居住地国等についても届出書に記載する必要があることになっています。なお、「特定法人」とは、下記(1)~(9)のいずれかに該当しないものを指します。また、「実質的支配者」については、「法人の事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にある者をいう。どのような者が「実質的支配者」に該当するかについては、犯罪による収益の移転防止に関する法令の規定により、法人の性質に従い決定される。例えば、株式会社、投資法人、特定目的会社等の議決権の総数の25%を超える議決権を直接又は間接に有していると認められる自然人等が「実質的支配者」に該当する」と説明されており、犯収法上の定義に同じものとなっており、犯収法上の実務が税法上の実務を兼ねる形となっています。

  1. 上場法人
  2. 上場法人の関係法人(子会社・孫会社・曾孫会社・兄弟会社)
  3. 国・地方公共団体・日本銀行・国際機関等
  4. 上記(3)の法人が全額出資している法人
  5. 収益事業を行っていない公共法人及び公益法人等
  6. 日本の報告金融機関等
  7. 外国の報告金融機関等(外国の法令に準拠して設立された一定の投資事業体を除く)
  8. 持株会社(子会社の経営管理のみを行うものに限る)
  9. グループ金融会社(主として上記(2)の関係にある法人に対する出資、融資等を行うことを業務とする法人)

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2. 最近のトピックス

(1) 最近の暴力団情勢

 指定暴力団神戸山口組から分裂した任侠山口組について、兵庫県公安委員会は、指定暴力団化に向けて暴力団対策法に基づく意見聴取の場を兵庫県警本部に設定しましたが組側は欠席、暴力団対策法では聴取に応じなくても指定は可能であるため、兵庫県公安委員会は今年度中の指定を目指して手続きを進めています。なお、報道によれば、任侠山口組の現有勢力範囲は1都1道2府12県に及び、構成員数は約460人で、兵庫県尼崎市内の傘下組織「真鍋組」事務所が本部と認定されています。前回の本コラム(暴排トピックス2018年2月号)でも指摘しましたが、指定暴力団への指定によって暴力団対策法上の各種規制の対象になるほか(実質的には、任侠山口組については、これまでも神戸山口組との内紛という形で指定暴力団の枠内で規制されていました)、「特定危険指定暴力団」や「特定抗争指定暴力団」といった一層厳しい規制をかけることも可能になります。「盃事を否定し、組長を置かず、フラットな組織を志向する親睦団体」を標榜して既存の暴力団のあり方に一石を投じ、自らを反社会的勢力から脱却(暴力団から離脱)することを最終的な目標としていた任侠山口組ですが、まずは、既存の規制の枠内で再定義され、指定暴力団・反社会的勢力として、自らの存在意義を社会に示していくことが迫られています。


 また、前回の本コラム(暴排トピックス2018年2月号)でも紹介した通り、指定暴力団の本拠地が全国最多で5つある福岡県の暴力団勢力(組員や準構成員)は2,040人(2017年末現在)となり、4年連続で過去最少を更新しています。指定暴力団工藤会の最高幹部らを相次いで逮捕した「頂上作戦」に加え、組織を離脱した組員(ヤメ暴)の就職支援など、社会復帰を後押しする制度も奏功していると言えます。暴排の定着の結果、暴力団員が減少する(暴力団の弱体化)は社会の目指す方向ではありますが、そのことによって、次に社会問題としてクローズアップされるのは「離脱者支援」問題です。福岡県では、既に福岡県暴排条例を改正するなどして事業者への給付金制度等を整備したほか、(特定危険指定暴力団工藤会など組からの報復を恐れることへの対応として)福岡県外で就職できるよう、各警察が就職情報などを共有する枠組みは27都府県まで広がるなど、一定の成果を挙げつつあります。さらに、新年度からは、福岡県と福岡県警が、離脱を希望する組員に避難先の宿泊費や交通費を支出する制度を新設することになりました。報道(平成30年2月19日付西日本新聞)によれば、新制度では、(1)組織から危害を加えられる恐れがある、(2)家族や友人など頼る場所がない、(3)所持金がなく、誰からも援助が受けられないことを条件に、交通費や宿泊費などを支給、1人当たり20万円前後を想定しているということであり、金銭的な理由で暴力団から抜けられない組員の離脱と社会復帰を支援し、暴力団勢力の切り崩しを進める狙いがあるとされます。さらには、工藤会壊滅作戦を巡る裁判の証人らの保護対策も強化する(保護対象者宅などに設置する遠隔監視機能付きの防犯カメラを大幅に増やす、襲撃の下見など「予兆行為」を早期にキャッチできるシステムの構築を目指すなど)こととしており、いずれも全国初の取り組みとなります。暴排先進県である福岡県と福岡県警のタッグにより、離脱者支援を含む暴排のさらなる厚みと深みが実現されることを期待したいと思います。
 その工藤会による一連の一般人襲撃事件の裁判を巡っては、工藤会が関与したとされる歯科医師刺傷事件で、被害者の歯科医師男性が、実行役とされる組員に対する使用者責任に基づき、工藤会トップの野村悟被告ら4人を相手取って8,365万円の損害賠償を求める訴訟を福岡地裁に起こしています。工藤会トップを相手取った提訴は銃撃被害者の元福岡県警警部に続いて2件目となります。なお、本事件については、福岡地裁は、これまでに実行役の元組幹部や送迎役の元組員の判決で、野村被告ら上層部の指揮命令によって実行されたと認定、港湾利権介入を狙い、漁協幹部の息子だった歯科医を襲ったと指摘しており、報道によれば、男性は、「事件で後遺症を負い、身勝手な行為に強い憤りを覚える。刑事だけでなく、民事裁判でも償ってほしい」とコメントしています。本コラムでたびたび紹介している通り、使用者責任に基づく損害賠償請求は、これまで判決・和解ともに判明しているものはすべて暴力団側が莫大な損害賠償金を支払う形となっており、暴力団の資金源にダイレクトに打撃を与えうる手段のひとつとして、(既にみかじめ料被害や特殊詐欺被害なども事例も出始めていますが)もっと活用していくべきだと思われます。
 一方、福岡県行橋市発注の工事を受注したゼネコンが2013年、工藤会への地元対策費(みかじめ料)を含む4,270万円を脅し取られた事件で、ゼネコン側が被害回復給付金支給制度に基づいて800万円の支給を求めて福岡地検に申請しています。この幹部は組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等収受)で有罪判決を受けて800万円の追徴金を課せられており、給付金にはこの800万円が充てられる見通しとなっています。ゼネコン側の被害回復が図られる先例ができることで、同様の被害に遭った方々が続いていくことが望まれますが、確認しておきたい点として、暴力団のみかじめ料要求に対して、何等かの見返りがあることを期待して安易に応じることはなかったのか(暴排条例に抵触するような「利益供与」に該当しないのか)は厳しく見極めていく必要があるのではないかということが挙げられます。さらに言えば、暴力団等からの不当要求を拒否する姿勢を見せたのか、本当にみかじめ料の支払いが「やむを得ない」ことだったのか(単なる商習慣として厳格な吟味をしないまま支払っていないのか)について、被害回復を訴える側がある程度の説明責任を果たすべきではないかと考えます。


 また、最近の暴排の大きなうねりを形成しているひとつが、住民からの「暴力団事務所の使用差し止め、立ち退き請求」です。直近でも、神戸山口組の有力組織「山健組」の傘下組織が神戸・三宮の繁華街に置く暴力団事務所の使用禁止を求めた仮処分申請では、事務所を閉鎖する内容の和解が神戸地裁で成立しました。暴力団追放兵庫県民センターが住民の代理として、昨年12月に申し立てていたもので、この事務所は、山健組が飲食店などからあいさつ料を集める拠点になっていたほか、2016年にはダンプカーが突っ込む事件も起きており、住民の生活の平穏を脅かす存在であることが明らかな中、事務所閉鎖という和解内容は妥当だと思われます。なお、組側は今年1月末までに荷物を運び出し退去したということです。また、浜松市の指定暴力団山口組国領屋一家傘下「服部会」の事務所について、地元関係者が服部会側と協議した結果、同事務所の閉鎖が決まり、既に暴力団事務所の撤去が行われました。この事務所を巡っては、2016年8月、トラックが突入する事件が発生したことをきっかけとして、地元関係者らから立ち退きを求める声が上がり、静岡県警や静岡県弁護士会、静岡県暴力追放運動推進センターなどの仲介で、今年の1月上旬までに服部会が土地を明け渡したということであり、このように裁判以外の話し合いで暴力団事務所が撤去されるのは珍しいということです。

(2) 仮想通貨を巡る動向

 仮想通貨NEMの流出事件を受けて、金融庁は、規制強化・監督強化に大きく舵を切り、矢継ぎ早に様々な施策を打ち出しています。既に、仮想通貨交換業者(登録業者)およびみなし業者への立ち入り検査に着手、コインチェック社への2回目を含む7社に対して行政処分(2社に1か月の業務停止命令、5社には業務改善命令)を下しています。コンピューターシステムの安全性など顧客資産を適切に管理する体制、顧客保護やマネー・ローンダリング対策など経営管理体制が不十分と判断されたほか、私的流用が発覚したケース(100%株主だった経営企画部長が、顧客から預かった仮想通貨(ビットコイン)について計数百万円相当を私的に流用、返還は済んでいるものの懲戒解雇となった事例)や、システム障害事案が頻発していながら適切な再発防止策が講じられていなかったケース、帳簿書類の一部未作成などの杜撰な管理が横行していた実態などが明らかとなり、報道によれば、金融庁は、「法令を順守する意識が希薄で、利用者保護が優先されていない」と指摘、「利用者保護の観点で問題が発生した。検査・監督を強化していく」としています。なお、今回の行政処分を受けて、みなし業者のうちビットステーション、ビットエクスプレス、来夢の3社から申請取り下げの申し出があったということです。同庁による監督の大幅強化に伴い、対応が間に合わないと判断したもようであり、この3社は顧客資産の返還方法などを詰め、仮想通貨交換業を廃業することになります。このように、今回、金融庁が一斉行政処分に踏み切ったのは、利用者保護の徹底に向けた強い意向があるためです。そもそも、今回の処分対象には金融庁の登録を受けた業者も2社含まれており、(本コラムでも指摘した)みなし業者の問題を先送りし(問題があることが分かっていたにもかかわらず)「信用」を与えてしまった点も含め、業界全体に共通するずさんな体質を事前に見抜けず、営業を継続させた金融庁の判断に批判が集まる可能性も否定できません。金融庁は、仮想通貨市場の成長に伴って急増した「緩い」交換業者に対し、厳格な検査を通じて「選別」を強める構えで、(今回、3社が廃業することとなったように)今後、業界で淘汰が進む可能性があります。
 また、金融庁は、新たな動きとして、仮想通貨の研究会を設置しています。

▼金融庁 「仮想通貨交換業等に関する研究会」の設置について

 金融庁は研究会設置の趣旨について、「仮想通貨に関しては、マネーロンダリング・テロ資金供与対策に関する国際的要請がなされたことや、国内で当時世界最大規模の仮想通貨交換業者が破綻したことを受け、2017年4月より、仮想通貨と法定通貨等の交換業者に対し、登録制を導入し、本人確認義務等の導入や説明義務等の一定の利用者保護規定の整備を行った」、「その後、コインチェック株式会社が、不正アクセスを受け、顧客からの預かり資産が外部に流出するという事案が発生したほか、立入検査により、みなし登録業者や登録業者における内部管理態勢等の不備が把握された。また、仮想通貨の価格が乱高下し、仮想通貨が決済手段ではなく投機の対象となっている中、投資者保護が不十分であるとの指摘も聞かれる。さらに、証拠金を用いた仮想通貨の取引や仮想通貨による資金調達など新たな取引が登場しているという動きも見られる」、こうした状況を受け、「仮想通貨交換業等をめぐる諸問題について制度的な対応を検討する」必要があると説明しています。
 また、金融庁の新たな動きとしては、全仮想通貨交換業者に対して、AML/CFTの徹底を要請し、報告命令を出したことも挙げられます。今回の報告命令では、金融庁が2月に導入した金融機関向けのAML/CFTガイドラインに基づき各業者の取り組み状況を調査、同対策を担当する社員の数や、疑わしい取引の検知方法などに加え、匿名性が高く、マネロンに利用される可能性が高い通貨の取り扱い状況についても報告を求めています。


 なお、今回の仮想通貨に対する金融庁の対応については、海外に先んじた規制の導入がもたらしたものだと言えるかもしれません。日本経済新聞(平成30年2月27日付)の指摘が興味深く、「日本が規制作りに奔走するなか、プレッシャーをかけてきた欧米諸国は実は投資家保護の規制にまで手が回らなかった。取引規模がここまで急激に大きくなるとは思わなかったのだろう。「はしごを外された気分だった」とは金融庁幹部の弁。気づけば日本は世界有数の「仮想通貨先進国」に。きちんとした取引環境が投資家に安心感を抱かせる。投資家の売買が増えれば値動きも激しくなる。リターンを得ようとさらに投資家を呼び込む。市場が膨らめばサイバー犯罪者に狙われる。規制はきちんとしていたが、業者のシステム管理の不備を突かれ、コインチェックで巨額の通貨が流出した」というものです。利用者保護の脆弱性が露呈したとはいえ、世界から見れば規制が整った日本を舞台に仮想通貨に資金が大量に流入、サイバー攻撃も激化した結果がNEM流出につながったという皮肉な状況は、おそらくは今回の一連の事態の本質を突いたものではないかと考えます。


 さて、前回の本コラム(暴排トピックス2018年2月号)でも説明した通り、流出したNEMは、NEM財団が付けた「モザイク」と呼ばれるマークによる監視を振り切って、ダークウェブに大量に流れ込み、悪質な海外の取引所を介して他の仮想通貨への交換や現金化がなされ、その規模は既に165億円を大きく超えているようです。その具体的な動きの一部については、報道(平成30年3月5日付IT Media News)に詳しく、例えば、「犯人は、匿名通貨「DASH」を経由して資金洗浄を企てたとみられるほか、盗んだNEMを販売するサイトをダークウェブ上に立ち上げたとみられ、このサイトではNEMの売買が活発に行われている」、「大手仮想通貨取引所の多くは、NEM財団からの要請を受け、コインチェックからの流出NEMを示すモザイク付きアドレスからのNEMの入金を拒否している。Zaif(仮想通貨交換業者大手のテックビューローが運営)もこの対応を行っているとみられるが、なぜ、入金が続いているのか。ダークウェブ上で犯人から購入した流出NEMを、いったん仮想通貨の決済プラットフォームCoinPaymentsに送金し、CoinPaymentsから取引所に入金させることで、モザイクがないアドレスからの送金に見せかけているという。ダークウェブ上で犯人から購入されたNEMを受け入れていた海外取引所のうちいくつかは、NEMの入金を停止したという」、このような状況について、専門家は、「Zaifも、モザイク付きアドレスからの入金と同様に、CoinPaymentsから現在流入している入金を拒否し、他通貨への交換などの取引ができないようにするべきだ」と指摘」しています。


 また、本事件のそもそもの原因となった不正アクセスについては、流出の数日前、同社の社内ネットワークから、欧米のサーバーに向けて不審な通信があったことが判明しており、仮想通貨の管理情報が外部に持ち出された可能性が高いと言われています。警視庁は、海外のハッカーグループが関与している可能性を視野に捜査を進めているところですが、この流出が起きたそもそもの原因が、従業員のパソコンが外部から電子メール経由で送り込まれたウイルスに感染したことだと報道されています。これにより、不正アクセスを受けNEMが盗まれたということであり、送信元は判明しているとのことですが(捜査中でもあり)明らかにはなっていません。なお、関連して、コインチェック社の直近の発表によれば、流出したNEMの顧客に対し、今週(3月12日の週)をメドに補償すること、補償として約460億円の返還方針が示されています。また、同社は取引をビットコインに限っているところ、同じく今週以降、ほかの仮想通貨について順次取引を再開するということです。一方で、本件については、顧客らが仮想通貨の返還などを求めて相次いで集団提訴しています。2月末には、2月15日に続き、新たに顧客の3法人と129人は、同社と幹部ら4人を相手取り、仮想通貨の返還や価値の下落に伴う損害賠償など総額約4億円を請求する訴えを起こしています(被害対策弁護団は今後も追加提訴する予定ということです)。
 なお、NEM流出事件以外で、直近の仮想通貨が絡んだ犯罪がいくつか見られましたので、紹介しておきます。

  • 仮想通貨の取引に使う口座を転売したとして、警視庁がベトナム国籍の20代の男女4人を犯罪収益移転防止法違反(仮想通貨口座の有償譲り渡し)の疑いで逮捕しています。昨年4月、同法の対象となる犯罪収益に仮想通貨を加えた改正法が施行されており、仮想通貨口座の転売をめぐる逮捕は全国初となります。なお、東京都の仮想通貨交換業者に開設した口座を正当な理由がないにもかかわらず何者かに売ったとされ、これらの口座は不正送金グループに渡り、マネー・ローンダリングに悪用されていたということです。
  • トレンドマイクロの調査によれば、2017年は、国内外で仮想通貨を狙う攻撃が急増したということです。特に、Web閲覧者のPCリソースを不正に利用して仮想通貨の発掘(マイニング)を行う「コインマイナー」の被害が急増したといいいます。特に、アルトコインの「Monero」は匿名性が高く、不正に利益を上げた仮想通貨交換の資金洗浄に利用されているのでは、という見方もあるとされます。
  • 金融庁が、無登録で仮想通貨交換業を行う者について(Blockchain Laboratory Limited)、警告を行っています(なお、勧誘資料等に基づいて記載された「業者名等」「所在地又は住所」は虚偽の可能性があるとの金融庁のコメントがありました)

 また、海外の仮想通貨の規制等に関わる直近の動向についても、簡単に紹介しておきます。

  • 米商品先物取引委員会(CFTC)は、仮想通貨市場でソーシャルメディアを使って怪しい情報を流して価格を吊り上げ、売り抜ける「ポンプ・アンド・ダンプ」と呼ばれる手法が広まっているとして投資家に警戒を呼び掛けています。CFTCにはこうした手口に引っ掛かって損失を被った投資家から苦情が寄せられており、ソーシャルメディアに投稿された情報に基づいて仮想通貨を購入するのは危険だとしています。
  • 米証券取引委員会(SEC)は、多くの仮想通貨の交換業者が、連邦法で規定する「証券」の取引の仕組みを提供しているとして、SECへの登録が必要だとの見解を示しています。投資家保護に向け、仮想通貨への監視を強化し、仮想通貨交換業者の登録を求めていくものと考えられます。
  • 中国人民銀行(中央銀行)総裁は、ビットコインなどの仮想通貨を合法的な決済手段として認めないとし、銀行システムが同通貨を受け入れることは無いと述べています。またこれらのベースとなる分散型台帳技術を注視しているが、同技術の応用の広がりが早過ぎると指摘、「同技術が急速に広がった場合、消費者に大きな悪影響を与えかねない。金融安定性や金融政策の伝達に予期できない影響を与える可能性もある」との見方を示しています。
  • 韓国の金融監督院の院長は、自主規制の環境下で仮想通貨ビジネスが正常化することを期待していると表明しています。「全世界が(仮想通貨の)枠組みを構築中であり、従って(政府は)規制強化よりは正常化に向けて取り組んでいく」と語ったということです。
  • 東南アジアで仮想通貨取引の勢いが強まっています。タイでは携帯電話販売大手が初めて仮想通貨技術を使った資金調達(ICO=イニシャル・コイン・オファリング)に乗り出し、シンガポールやインドネシアでも取り組みが相次いでいます。ただICOをめぐる法的な枠組みのない国が大半であり、各国当局は規制作りに奔走している状況にあります。
(3) 特殊詐欺を巡る動向

 前回の本コラム(暴排トピックス2018年2月号)では、平成29年における特殊詐欺の被害状況等について紹介しました。概略だけ申し上げると、特殊詐欺全体の認知件数は18,201件(前年比+4,047件、+28.6%)と前年から大きく増加し、7年連続の増加となった一方で、被害額は390.3億円(▲17.4億円、▲4.3%)と3年連続で減少する結果となりましたが、依然として被害状況は高水準だと言えます。特徴的なこととしては、都道府県別では、5県(青森、山梨、愛知、香川、宮崎)において被害額が5割以上減少した一方で、東京、埼玉、千葉、神奈川、兵庫、福岡など一部の大都市圏を中心に、16都道府県において、認知件数・被害額がいずれも増加する対照的な結果となり、地域ごとの違いが拡大している様子がうかがえます。とりわけ、東京と大阪の2大都市圏の状況は対照的であり、東京は認知件数・被害額がいずれも増加、大阪はいずれも減少という結果となりました(大阪では特に還付金等詐欺による被害が劇的に減少、東京は特殊詐欺全体の被害が深刻化している傾向にあります)。警察庁から、直近の平成30年1月における状況が公表されていますが、傾向としては引き続き同様の状況となっています。

▼警察庁 平成30年1月の特殊詐欺認知・検挙状況等について

 平成30年1月の特殊詐欺全体の認知件数は984件(前年同期904件、前年同期比+8.8%)、被害総額は16.9億円(20.3億円、▲16.7%)、うち振り込め詐欺の認知件数は972件(883件、+10.1%)、被害総額は16.6億円(19.2億円、▲13.5%)となっており、件数の増加と被害額の減少と言う傾向は継続して続いています。一方、類型別の被害状況をみると、オレオレ詐欺の認知件数は553件(300件、+84.3%)、被害総額は7.7億円(7.2億円、+6.9%)と件数・被害額ともに増加している一方で、架空請求詐欺の認知件数は305件(264件、+15.5%)、被害総額は7.4億円(8.6億円、▲14.0%)と件数の増加と被害額の減少がみられ、融資保証金詐欺の認知件数は23件(42件、▲45.2%)、被害総額は0.3億円(0.4億円、▲21.5%)、さらに還付金等詐欺の認知件数は91件(277件、▲67.1%)、被害総額は1.2億円(3.0億円、▲59.2%)については、件数・被害額ともに減少するという結果となりました。これまで猛威をふるってきた還付金等詐欺の被害が落ち着いてきた(それでも高水準です)一方で、あらためてオレオレ詐欺が増え始めている点に注意が必要です。
 なお、それぞれの類型について、あらためて警察庁の定義を紹介すると、以下の通りです。

  • 「特殊詐欺」とは、面識のない不特定の者に対し、電話その他の通信手段を用いて、預貯金口座への振込みその他の方法により、現金等をだまし取る詐欺をいい、オレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺、還付金等詐欺、金融商品等取引名目の特殊詐欺、ギャンブル必勝法情報提供名目の特殊詐欺、異性との交際あっせん名目の特殊詐欺及びその他の特殊詐欺を総称したもの
  • 「振り込め詐欺」とは、特殊詐欺のうち、オレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺及び還付金等詐欺を総称したもの
  • 「オレオレ詐欺」とは、親族、警察官、弁護士等を装って電話をかけ、会社の横領金の補てんや借金の返済等を名目に、現金を預貯金口座(以下「口座」)に振り込ませるなどの方法によりだまし取る詐欺(同種の手段・方法による恐喝を含む)事件のこと
  • 「架空請求詐欺」とは、郵便、インターネット、メール等を利用して、不特定の者に対して架空の事実を口実とした料金を請求する文書等を送付するなどして、現金を口座に振り込ませるなどの方法によりだまし取る詐欺(同種の手段・方法による恐喝を含む)事件のこと
  • 「融資保証金詐欺」とは、実際には融資しないにもかかわらず、融資を受けるための保証金等の名目により現金を口座に振り込ませるなどの方法によりだまし取る詐欺事件のこと
  • 「還付金等詐欺」とは、市町村の職員等を装い、税金の還付等に必要な手続を装って被害者に現金自動預払機(ATM)を操作させ、口座間送金により振り込ませる手口の電子計算機使用詐欺事件のこと

 また、平成30年1月における口座詐欺等の検挙件数は84件(95件、▲11.6%)、犯罪収益移転防止法(犯収法)違反の検挙件数は185件(126件、+46.8%)、携帯電話端末詐欺の検挙件数は14件(33件、▲57.5%)となっており、口座詐欺や携帯電話詐欺などの減少傾向が顕著となっており、これらだけが特殊詐欺における犯罪インフラの主役なのではなく、より多様化している実態がうかがえます。具体的には、例えば、口座に振り込ませるのではなく、現金の手交・郵送、電子マネーのID等の聞き取りなどに手法が多様化しているほか、携帯電話だけでなく郵便物やメール等によるアプローチが増加していることなどが挙げられます。この郵便物については、最近の報道では、名古屋地区において、身に覚えのない代金を請求される架空請求はがきに関する相談が、2017年度は残り2か月を残した段階にもかかわらず、2016年度一年間の実績に比べ、すでに40倍に上っているといったものがありました。手口としては、「総合消費料金に関する訴訟最終告知のお知らせ」などと表題が書かれ、文面として、指定された電話番号に連絡しないと、給料や不動産の差し押さえなどをすると不安をあおる内容が記載されているもので、古典的な手口ではありますが、電話やメールに慣れてしまった今だからこそ、強いインパクトを持つのではないかと推測されます。一方、金融機関の高齢者の振り込め制限が拡がった結果、例えば、山梨県内の昨年1年間の電話詐欺の被害額は1億148万円で、前年の2億313万円から半減、被害件数も79件から60件に減ったということです。ATMに誘導するのが特徴である「還付金等詐欺」が件数・被害額ともに減少傾向にあるのは、金融機関の取り組みの抑止力が効いている証左だと言えます。このように、特殊詐欺においては、過去の歴史を振り返っても、類型別手口の流行り廃りがあり、金融機関や事業者等が都度対策を講じてきている一方で、時代とともに新たなツール(SNSや電子マネーなど)が登場し、悪用されて新たな手口を生むという、正にいたちごっこにより一定の周期で変遷しているのだと推測されます。


 また、昨年1年間の犯行グループの壊滅に向けた検挙対策の状況については、架け子を一網打尽にする犯行拠点(アジト)の摘発を推進し、過去最多の箇所数を摘発(68箇所、+11箇所)していますが、最近の報道によれば、福岡県警が昨年10月に北九州市小倉北区の短期賃貸マンションがプリペイドカード式の電子マネーをだまし取る特殊詐欺グループの拠点との情報を入手し、摘発にこぎつけたものの、このグループは1カ月間滞在する契約を結びながら入居から10日で退去して東京などに移ったということであり、詐欺グループが1カ所に長くとどまらず、拠点を替えるサイクルが早くなっている傾向(拠点の短期滞在傾向)がうかがえます。警察としても、証拠を固めて拠点に立ち入る前に移転されないよう、さらなる捜査の迅速化が求められています。さらに、この事件では、北九州市の拠点2カ所を摘発していますが、特殊詐欺グループの拠点は首都圏に集中しているため九州での摘発は異例だということです。既に中国での「架け子」の拠点を設けている事例があるように、「拠点の拡散傾向」についても新たな傾向として注意が必要な状況です(なお、参考までに、本事件では、摘発された拠点の1カ所は被害者をだます電話をかける「架け子」の練習拠点にも使われていたということです)。

 その他、最近の報道から特殊詐欺に関わる動向について、紹介しておきます。

  • 警視庁は、東京地検の偽HPに誘導し、現金を振り込ませる詐欺被害が発生したと明らかにしています。報道(平成30年2月20日付時事通信)によれば、警察官や検察官をかたって携帯電話に直接連絡があり、「あなたの口座が詐欺に使われており、被害者が告訴したいと言っている」と説明し、事件内容を確認するため東京地検のHPを見るよう指示、指定のURLを打ち込むと、地検の本物のHP画面をコピーした偽ページが立ち上がり、事件の参考人として自分の名前が表示されるもので、その後、「無実になるまで協力して」「口座を凍結したくなければ、預金を一時的に別の口座に預けて」などと要求し、現金を振り込ませる手口だということです。1月下旬以降、都内で4件、計約390万円の被害が発生しているといい、同庁は新しい特殊詐欺の手口として、注意を呼び掛けています。
  • PHS端末を本人確認せず貸し出したとして、愛知県警が、携帯電話不正利用防止法違反容疑で六代目山口組系組幹部を逮捕しています。この幹部は、PHSなどを貸し出す会社を設立し、偽の身分証を用意して架空の人物と貸与契約を結んだように装い、実際にはPHSや無線ルーターなどを別の人物に貸し出していたというもので、貸した端末は振り込め詐欺に悪用されて、数年間で少なくとも約180件、計約2億3,000万円の被害が確認されているということです。
  • 警視庁亀有署は、70歳代の女性が現金約400万円をだまし取られるオレオレ詐欺被害に遭ったと発表しています。「母さん食事に行こう」と息子を装う男に食事に誘われてうれしくなり、金を無心する電話を信じてしまったというものです。同署は、「優しい言葉で高齢者を信じ込ませた上、金を無心する手口に気をつけてほしい」と呼びかけています。
  • 特殊詐欺グループから電話を受けた後、110番で通報した人が3割にとどまっていることが山梨県警のまとめでわかったということです。県警としては、110番で通報があれば、速やかに市町村や金融機関に警戒を求めることができることから、電話を受けたらすぐに110番するよう呼びかけています。さらに、詐欺グループからのアポ電だと見破って自分が被害を逃れることができても、犯行グループは同じようなアポ電が高齢者宅に次々とかけている実態があることから、他の人の被害を防ぐためにも、アポ電があったらすぐに110番するよう呼びかけています。
(4) テロリスクを巡る動向

 イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の弱体化が明らかとなった今、国際社会は急速に「IS後」へとシフトしていますが、テロとの戦いはまだ終わってはいません。例えばシリアにおいては、1月にトルコ軍が少数民族クルド人勢力のシリア北部の支配地アフリンに越境侵攻しましたが、シリア国境に近いトルコ側住民は「正当防衛」と主張しているのに対し、アフリン住民は「主権侵害」と主張し、互いを敵視している状況にあります。いわば、「IS」という「共通の敵」が弱体化したことで、シリア内戦では当事者だけでなく、関与する国や勢力が直接衝突するようになり、泥沼の内戦はさらに混迷を深めるばかりとなっており、「IS後」という新たな状況が新たな戦いを生んでいます。また、米国務省は、ISの系列下にある、フィリピンとバングラデシュ、西アフリカを拠点とする組織を含む7組織と2個人を「特定国際テロリスト」(SDGT)に指定しています。ISはシリアとイラクで支配地域の大半を失ったのを受け、アジアや西アフリカなどで新たに拠点構築を図っており、今回の措置はトランプ政権による世界規模のIS壊滅策、「IS後」のテロ対策の一環だと言えます。


 一方、「IS後」のテロリスク対策において、伊勢志摩サミットの成果に責任をもち、2020年東京五輪等の国際イベントを控えている日本の果たすべき役割は大きく、日本独自の国際社会への貢献のあり方を模索すべきだと言えます。日本は、既に、日本独自のテロ対策・復興支援として、武器の蔓延や不安定なエネルギー供給などが社会不安の要因だとして、武器回収や火力発電所の改修支援、教育など「武装解除・動員解除・社会復帰」事業を推進する方針を打ち出していますが、例えば、西・中央アフリカの国境地域でのテロ対策支援を強化する方向性を打ち出したのはその一つの例となります。約300万ドル(約3億2,000万円)を、世界税関機構(WCO)を通して現地の税関当局に最新の検査機器を供与し、爆発物の原材料となる化学物質や装置などの取り締まり強化を図るとし、その支援先としては、イスラム過激派「ボコ・ハラム」が国境をまたいで活動するナイジェリアやチャド、カメルーンなどが想定されています。この背景には、北朝鮮がアフリカを通じて禁輸対象の化学物質などを取引しているとみられていることから、制裁逃れを封じ込める狙いもあるということです。また、日本と米国が掲げる「自由で開かれたインド太平洋戦略」の一環として、国連薬物犯罪事務所(UNODC)と連携し、インド洋のイスラム過激派対策や海上安全強化に乗り出すことも打ち出しました。ISなどに参加する国民が200人以上で人口比で最も割合が高いインド洋の島しょ国・モルディブなど、十数カ国で警察に対する訓練を実施、海上から不法入国する戦闘員に対応するため、不審船の探知能力を強化するということです。観光でも名高いモルディブは警察が広範囲の島々をカバーできず、観光客が襲撃される可能性が指摘されているところです。さらには、南アジアから東アフリカの公海上の過激派や海賊を取り締まるため、スリランカ、ソマリアなど沿岸国の協力体制を構築することも目指しています。日本のUNODCへの拠出金は約2,839万ドル(約30億円)で、過去最高額になるということでもあり、積極的なテロ対策を海外でも展開していることは高く評価できるものと思います。このように、テロや北朝鮮リスクの拡散防止のため、正に、伊勢志摩サミットで示された「多元的共存」「寛容」「平等」の趣旨に則った日本独自のやり方で積極的に貢献していくことが求められていると言えます。


 また、前回の本コラム(暴排トピックス2018年2月号)では、警視庁が作成した「危機管理対策の心得」「中小企業におけるテロ対策マニュアル」を紹介しました。「不審」という「感覚」に頼りがちなものを具体的な事例でぐ「具現化」される工夫がなされており、テロ対策の観点から、役職員としてどのように対応すべきかが理解できると思いますので、是非、社内研修等に活用いただきたいと思います。同様に、今回は、社内研修等の一環として活用できそうな外務省の 「ゴルゴ13の中堅・中小企業向け海外安全対策マニュアル」の動画版が4月よりリリース予定だということです。既に、さいとう・たかをさんの人気漫画「ゴルゴ13」を使った単行本については以下に掲載されていますので紹介しておきます(全13話の内容は以下の通りであり、5分間の解説動画もあります)。

▼外務省 「ゴルゴ13の中堅・中小企業向け海外安全対策マニュアル」

第1話 【日本】 外務大臣からの依頼
第2話 【パキスタン】 「たびレジ」
第3話 【タイ】 外務省海外安全情報
第4話 【インドネシア】 中堅・中小企業海外安全対策ネットワーク
第5話 【ベルギー】 情報収集
第6話 【メキシコ】 海外渡航の基本的心得
第7話 【フィリピン】 安全のための三原則
第8話 【ドイツ】 オフィスの安全対策
第9話 【ケニア】 トップの意識
第10話 【トルコ】 平時の危機管理
第11話 【イラク】 有事への備え
第12話 【イラク】 有事への対応
第13話 【米国】 Gマニュアルの完成


 このうち、第1話では、「安全対策見直しの必要性」について、「世界情勢に目を向けると、イスラム過激派によるテロ、自然災害、感染症など、数多くのリスクが存在しています。日本人が海外で事件・事故などに遭遇する可能性は一層高まることが懸念されます。このような環境の中、企業組織として、従業員個人として、自分の身は自分で守るとの意識を持ち、それぞれが日本企業が日本人が置かれている状況を正しく理解して情報収集、安全対策を行うことが求められています」と指摘しています。また、第13話の「平時の危機管理」では、例えば、「現地側においても、日常的に関連情報の収集に努めるとともに、現地でしか得られない情報を積極的に収集することも必要」、「現地職員などから情報を得られるような関係づくりを行うとともに、スーパーの商品が極端に品不足になる、いつも重体している道路が空いている、街に警官が目立つようになるなど、日常的な観察を通して得られた変化を認識し必要であれば本社と情報を共有」、「危機管理では、本社と現地の意思疎通は大変重要な要素」、「治安不安の高い国には年1回程度現地を訪問するなど、お互いの顔が見える交流を実施することも意思疎通を促進するための方策の一つ」、「大切なことは、渡航者・赴任者に「自分の安全は自分で守る」という点をしっかり認識させることであり、安全対策への関心を高め、自ら情報収集・分析・対策の検討を行うよう促す」、「治安状況や治安機関の有無など拠点所在地・周辺エリアの安全性、建物自体の耐震性、自然災害の発生状況などは必ず確認すべき事項」、「入館者の確認は確実にされているか、警備体制は万全か、警備業者の信頼性は問題ないかなどについて確認」、「監視カメラ、侵入センサー、通信手段などについても緊急時に機能することを確認しておくことが必要」などの極めて示唆に富むポイントが満載となっています。

(5)犯罪インフラを巡る動向

1 株式会社

 法務省の研究会が、反社会的勢力の資金源根絶のため、株式会社を新設する際に、その会社の実質的支配者が暴力団員などの反社会的勢力ではないことの申告を義務付ける制度を設ける旨発表しています。

▼法務省 株式会社の不正使用防止のための公証人の活用に関する研究会
▼議論のとりまとめ概要

 背景には、「取引主体が株式会社であることにより取引相手等に対する信用が高まることが多いが、その信用が悪用され、消費者詐欺犯罪、詐欺的投資勧誘や資金洗浄等の犯行ツールとして、株式会社が本来の行為者の隠れ蓑として使用されることが少なくない」こと、「株式会社を使用した詐欺的な事例においては暴力団等反社会的勢力が法人の実質的支配者になっていることが多く、その資金源にもなっている」こと、「FATFが策定するAML/CFTの国際基準である勧告においては、法人の実質的支配者情報の把握及びその情報への権限ある当局によるアクセスの確保が勧告内容となっている(勧告24)」こと、さらに「2019年から2020年にかけて、FATF第4次対日相互審査が実施予定であり、積極的な取組が期待されている」ことをあげています。実際の事例でも、そもそも実体のない架空の会社や実態を偽装している会社などとの取引を行い、取り組み詐欺にあう事例などが代表的です。また、反社会的勢力の関与する事例においても、「実体」や「実態」が疑わしい企業に騙され損害を被るケースも多く見られます(筆者も、名刺交換した際に、その名刺に印字されている住所が架空のもので、国際電話の国番号がデタラメだったという経験があります)。また、AML/CFTおよび反社チェックの実務においては、反社会的勢力の不透明化や犯罪や手口の巧妙化が進む中、「実質的支配者」を見極め、究極的には誰の利益となるのかを突き詰めることが重要であり、いわば「実質的支配者からの暴排(AML/CFT)」、「株式会社の犯罪インフラ化の阻止」を目指す必要があることはご存知の通りです。
 今回、導入されるスキームは、具体的には、公証人が、定款認証手続において、嘱託人に対し、「会社の実質的支配者となる者の申告」、「当該実質的支配者が反社会的勢力(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する「暴力団員」等)に該当しないことの申告」を求め、その内容を認証文に記載するというものです。なお、公証人については、「法務大臣により任命され、中立的な立場から国の公務である公証事務に従事する実質的な意味での公務員」ですが、FATFも資金洗浄等防止のためのゲートキーパーとしての役割を期待しているところ、日本における公証人制度も同様の位置づけが可能かつ法務省の監督のもと適切な業務遂行が期待されています。さらに、本制度において、嘱託人が会社の実質的支配者等の申告を正当な理由なく拒んだ場合には、公証人は、定款認証の嘱託を拒否することができることなっており、実効性が担保されています。その他、以下のような制度上の工夫が施されています。

  • 定款認証の嘱託の内容が、一定のリスク指標(経験則上、類型的に実質的支配者の実在性や属性について虚偽の申告がされている可能性を窺わせるといえるような事情)に該当する場合には、公証人は、公証人法施行規則における規定に基づき、申告された実質的支配者の本人確認を行う(例えば、実質的支配者の住所がFATFのハイリスク国に指定されている外国である場合など
  • 申告された実質的支配者が反社会的勢力に属するか否かの裏付調査・申告された実質的支配者が反社会的勢力に該当しないことの申告に関して、第一次的に公証人が収集した情報に基づき該当するか否かの判断を行った上で、該当するとの判断がされた場合に、警察との連携が可能であれば、第二次的に警察に照会する仕組みを構築する
  • 電子定款認証について既に構築されている電子公証システムを利用して、公証人が、設立される会社の実質的支配者等の申告に関する情報をデータベース化し、刑事訴訟法第197条第2項に基づく捜査関係事項照会などの、警察等の公的機関による法令に基づく照会があった場合に、当該データを効率的に提供する

 しかしながら、企業の実務においても、実質的支配者を特定し、背後に潜む反社会的勢力を見抜くことは極めて困難です。ましてや、公証人という立場でその見極めの実効性がどれほどのものとなるのかは大きな疑問が残ります。まず、公証人への申告の真実性の確保や虚偽の申告等を行った場合の罰則など、制度の実効性担保の方法が現時点では明確になっていません(全員が真実を申告するとの前提で成り立っている制度は犯罪に対して極めて大きな脆弱性を有することになります)。また、それ以上の問題としては、本制度の導入により、反社会的勢力をはじめとする犯罪組織は、(警察照会で判明してしまうような)あからさまな関係者を役員や株主等にするはずもなく、(今回も援用される犯罪収益移転防止法上の)実質的支配者の認定をすり抜けさせて、犯罪組織との関係を不透明化する手口をとってくることが明らかだという点です。もっといえば、最も憂慮すべきは、公証人を活用した「信用」の創造が、より深刻な「犯罪インフラ」化を助長する危険性を孕む点です。そもそも株式会社の犯罪インフラ化を阻止する目的で導入される本制度ですが、それを逆手にとって(その見極めの脆弱性を突いて)株式会社が新設さえしてしまえば、本制度が逆に「ホワイト企業」とのお墨付きを与えてしまうことになりかねません。つまりは、本制度自体が、反社会的勢力やマネー・ローンダリング、テロ資金供与といった組織犯罪の資金獲得活動を助長する「犯罪インフラ」化してしまうことになります。公証人のリスクセンスに依存した制度、表面的な警察照会では、犯罪組織の巧妙な手口に対抗するのは難しいことを指摘しておきたいと思います。


 なお、株式会社を取り巻く制度の改定に関連して、登記面でも以下のような動きがありますので、紹介しておきます。

▼法務省 平成30年3月12日から、会社の設立登記のファストトラック化を開始します

 本件は、「世界最先端IT国家創造宣言」(平成25年6月14日閣議決定、平成28年5月20日改定)を踏まえて定められた「登記・法人設立等関係手続の簡素化・迅速化に向けたアクションプラン」(平成28年10月31日各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)において、平成29年度中に、会社の設立登記を優先的に処理(ファストトラック化)するようにし、次期登記情報システムの機能を活用した事件処理の効率化の取組等と併せて、原則として申請から3日以内(申請の受付日の翌日(オンライン申請において別送書類がある場合には書面の全部が登記所に到達した日の翌日)から起算して3執務日目までに完了。なお、登記申請件数の多い時期等を除く)に完了できるようにする取り組みを行うとされたことを受けて、導入されるものです。これを受けて、平成30年3月12日から、株式会社及び合同会社の設立登記について、ファストトラック化が開始されています。

▼法務省 商業・法人登記申請書に法人名のフリガナ欄を追加します(平成30年3月12日から)

 また、「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(平成29年5月30日閣議決定)において、「法人が活動しやすい環境を実現するべく、法人名のフリガナ表記については、(略)登記手続の申請の際にフリガナの記載を求めるとともに、法人番号公表サイトにおけるフリガナ情報の提供を開始」することとされたことを受けて、前項同様、平成30年3月12日以降、商業・法人登記の申請を行う場合には、申請書に法人名のフリガナを記載することとなりました(商業・法人登記申請の機会がない場合には、フリガナに関する申出書を管轄の法務局に提出して、フリガナを登録することもできる)。この取り組みは、多様な読み方がある漢字ではなく、フリガナで個人を特定することにより、オンライン手続きの普及を加速させ、行政サービスを向上させる狙いがあるということです。法律上、戸籍や台帳に記載することは義務付けられておらず、現在は、自治体職員が便宜的に、出生届や転入届に記載されたフリガナを住基台帳のシステムに入力しているものの、必ずしも正確でないケースもあるようです。なお、今後考えられることとしては、漢字は同一でもフリガナ(読み方)が異なることをもって、別人であると主張するケースです。登記に正確なものとして登録しておいて、日常生活では別の読み仮名をあてることで「別人を装う」手法として悪用されないかが懸念されます。実際、登記された漢字と日常生活において使用している漢字を別のものとして、データベースやネット検索への該当を逃れる手口は既にあることから、「耳から入ってきた呼び方」と「目で見た漢字・フリガナ」の相違を機械的に判断することがないよう、今から注意が必要かもしれません。


2 本人確認手続き(地面師事件を例に)

 以前の本コラム(暴排トピックス2017年11月号)でも取り上げましたが、東証一部上場の大手住宅メーカーの積水ハウス社が、「当社が分譲マンション用地として購入した東京都内の不動産について、購入代金を支払ったにもかかわらず、所有権移転登記を受けることができない事態が発生」したとのリリースを公表しました。戦後の混乱期やバブル期に暗躍した、所有者になりすまして不動産を売り飛ばして巨額の現金をだまし取る「地面師」と呼ばれる詐欺グループが最近またその活動し始めている点にあらためて注意が必要です。今般、同社から本件に関する報告書(ただし概要)が公表されましたので、紹介しておきます(本件に関して、前会長解任劇の説明責任の問題のほか、詐欺事件で被った損害約56億円全額の賠償を、事件当時の社長に求めて提訴するよう、一般の個人株主から同社監査役に請求があったという株主代表訴訟の問題などもありますが、今回は、地面師への対応の難しさに焦点を絞りたいと思います)。

▼積水ハウス 分譲マンション用地の取引事故に関する経緯概要等のご報告

 本リリースによれば、本件について、「売買契約締結後、本件不動産の取引に関連した複数のリスク情報が、当社の複数の部署に、訪問、電話、文書通知等の形で届くようになりましたが、当社の関係部署は、これらのリスク情報を取引妨害の嫌がらせの類であると判断していました。そのため、本件不動産の所有権移転登記を完全に履行することによって、これらが鎮静化することもあるだろうと考え、6月1日に残代金支払いを実施し、所有権移転登記申請手続を進めましたが、6月9日に、登記申請却下の通知が届き、A氏の詐称が判明」したということです。そして、その原因として、「担当部署は、直ちに購入に動き出しましたが、A氏のパスポートや公正証書等による書面での本人確認を過度に信頼し切って、調査が不十分な状況で契約を進めて」しまったこと、「マンション事業本部が一線を画し、リスク感覚を発揮すべきところ、その役割が果たされませんでした。さらに、本社のリスク管理部門においても、ほとんど牽制機能が果たせなかった」ことなどが挙げられています。なお、「本社から地面師詐欺を意識した特別な対応を要求することは非常に困難です」という指摘は興味深く(巧妙な手口を見抜くことは確かに難しいと言えます)、とはいえ、「本件不動産の取引内容を勘案すれば、,u>審査期間の確保とリスクの洗い出しを指摘すべき」という部分は、管理部門としての防衛線のあるべき姿であり、他の事業者においてもこのようなチェック態勢が構築できるかがポイントになるものと思います。さらに、複数寄せられたリスク情報(端緒)への対応についても厳しく自省しており、「これらのリスク情報を取引妨害の類と判断し、十分な情報共有も行われませんでした。その結果、本社からの牽制機能が働かず、現場は契約の履行に邁進することとなりました。個々のリスク情報を一歩引いた目線で分析すれば、本人確認に対する考え方も違っていた可能性は高く、リスク情報の分析と共有を現場と本社関係部署が一体となって実施する必要があったのではないかと考えます」という部分は大変示唆に富むものと考えます。この点については、前日した金融庁のAML/CFTに関するガイドラインでも言及されていた「3線管理」(現場部門・管理部門・内部監査部門のそれぞれで防衛線を講じること)と同様のフレームワークで説明できると思いますが、とりわけ第2の防衛線である「管理部門」が現場部門に引きずられることなく、「冷めた冷静な目」で案件に向かうことが極めて重要であることに気付かされます。
 なお、「本件を防げなかった直接の原因は、管轄部署が本件不動産の所有者に関して書面での本人確認に頼ったことにあります。ただ、司法書士も本物と信じたという偽造パスポートや公正証書等の真正な書類が含まれていたという地面師側の巧妙さもあり、また、売買契約締結時には所有権移転請求権の仮登記も実現しているといった事情もあって、初期段階で地面師詐欺を見破ることには、困難な点もありました」という調査委員会のコメントからも、地面師の巧妙さが分かりますが、やはり、最も重要なポイントは、「いい話だから早く手続きを進めたい」という点にあるのではないかと思われます。そもそも「地面師」の問題は、登記上の手続きにおいて偽造書類等を使って土地が勝手に転売される詐欺犯罪という意味で、登記手続きの脆弱性、あるいは、司法書士や弁護士などがその専門性(肩書き)を悪用する(される)「専門家リスク」などがその根底にあります。また、「いい土地を早く押さえたい」と考える買い手側の弱みを上手く突いてくる手口の巧妙さが犯罪の成功率を高めているという側面もあります。ただ、様々な地面師の案件の手口を追っていくと、やはりどこかに怪しさがあるとのことです(所有者本人になかなか会えない、代理人が登場する、手続き等に通常と異なる部分があるなど)。とはいえ、それらは騙された後に気付くことが多く、未然にリスクを察知するのが困難なほど用意周到に準備されており、プロでも騙されてしまうというのが実情です。すべてを巧妙に偽造してくる地面師相手では、現時点では、取引においては、相手の言うことを鵜呑みにせず、慎重に裏取りをしながら、また偽造でないことを確認しながら、進めるくらいしか防止する手立てがないようです(例えば、不動産の権利証は印鑑証明書のような透かしに偽造防止技術が施されていることはなく、一見して明らかなものを除いて偽造を見抜くのはまず無理だと言われています。また、登記識別情報であっても、パスワードさえわかればよいため盗品であることを見抜くことは不可能ということになります)。


 なお、直近では、以下のような地面師に関する逮捕報道がありましたので、紹介しておきます。

  • 横浜市青葉区の土地をめぐり、偽造の印鑑登録証明書などを使い移転登記をしようとしたとして、警視庁捜査2課は、電磁的公正証書原本不実記録未遂や偽造有印公文書行使などの疑いで、札幌市の容疑者(75)ら男3人を逮捕しています。容疑者らは、土地の所有者になりすますなどして勝手に売却し、現金をだまし取る「地面師」グループの一員とみられるということです。
  • 医療法人の理事長に成り済まし、東京都内の不動産関連会社から額面約3億5,700万円の小切手をだまし取ったとして、警視庁捜査2課は、詐欺などの疑いで会社役員と無職の男ら計4人を再逮捕しています。会社役員は偽造された運転免許証で理事長に成り済まし、他の4人は他人の土地の所有者に成り済まし、無断で売買して利益を得る「地面師」グループとみられています。
  • 土地所有者に成り済まし、不動産関連会社から小切手など計1億1,300万円をだまし取ったとして、警視庁捜査2課は、詐欺などの疑いで会社役員ら3容疑者を再逮捕しています。捜査2課は3人とも土地を無断売買する「地面師」グループの一員とみており、土地の所有者の80代男性に成り済まし、偽造の運転免許証などを用いて、売却代金の一部として現金と小切手計1億1300万円をだまし取ったということです。

3 民泊

 本コラムではたびたび民泊の犯罪インフラ化に警鐘を鳴らしてきました。先日発生した大阪市西成区の宿泊施設で女性の頭部が発見された事件では、この施設が旅館業法の許可などを得ていない「ヤミ民泊」だったことが分かっています。さらに、監禁現場とされる同市東成区のマンションもヤミ民泊だったようであり、身元確認が不十分などの問題があるヤミ民泊は犯罪の温床になりかねないとの懸念が現実のものとなりました。報道(平成30年2月27日付産経新聞)によれば、海外からの宿泊客は「手続きは全部インターネット。特にパスポート(旅券)のコピーの提出は求められなかった」と話し、関係者も「ヤミ民泊は宿泊者名簿を作成せず、パスポートの確認もしない。こうしたヤミ民泊は犯罪の温床になりかねない」と話すなど、本来義務付けられているはずの本人確認手続きや宿泊者名簿の作成義務が果たされていない実態が明らかになっています。さらに、「野放しにされれば、犯罪の巣窟になったり、テロリストが利用する恐れもある」、「(利用者の中に)伝染病にかかった人がいた場合、同宿の人を追跡できないリスクも考えられる」と専門家が指摘しています。自治体や警察の監視が目が行き届かず、市民の目に依存するだけの「犯罪インフラ」の放置は問題であり、今、リソースを充分に割いて対応すべき危機的状況だと思われます。
 また、民泊の犯罪インフラ化とともに、民泊仲介サイトやSNSの犯罪インフラ性にも注意する必要があります。本事件の男性の容疑者は、「Airbnb」を通じて民泊を予約していますが、氏名は本名だったものの、サイトの写真欄には欧米系とみられる外国人風の女性の顔写真を登録していたということです。また、容疑者は、スマホの「マッチングアプリ」と言われる交流アプリで複数の女性と知り合ったとされています。このようなアプリは有料のものも含めて国内外に多数あり、報道によれば、氏名や職業、居住地、年齢などを登録し、顔写真と共にアプリ上に表示し、共通点のある人や関心のある人とアプリ内でチャットやメールを通して連絡を取ることができ、趣味などの共通点や顔写真、年齢層から利用者を検索できるものや、GPSを利用し現在地からの距離が近い利用者を探すサービスがあるものなどもなり、気が合えば直接会うことも可能だと言うことです。そして、これら複数の犯罪インフラ性の高いツールが組み合わされることにより、今回のような事件が発生してしまったと言えると思います。


 そのような危うい現状の中、今年6月には新法「住宅宿泊事業法」が施行され、民泊が合法化されることになります。「Airbnb」など世界の民泊事業者をはじめ、国内事業者の参入や事業連携も相次いでおり、民泊市場への期待は膨らむ一方です。しかし、本事件に限らず、そこに潜むリスクは小さくないということをあらためて認識する必要があります。例えば、2015年のパリ同時多発テロの犯人は民泊施設に潜伏し、凶行に及んだことが分かっています。また、本事件の舞台となった大阪市ではヤミ民泊の乱立が確認されており、他の大都市圏でも同様の実態が懸念され、監視の目が行き届かない危険性が放置されています。これまで指摘してきた通り、ヤミ民泊の問題では、内外の犯罪集団やテロリストといった「利用者のリスク」だけでなく、宿泊者名簿取得や衛生管理・安全管理を徹底しない「不良事業者のリスク」への対応も求められます。同法が掲げる「文化交流・休眠地活用」という理念はその通りであり、2020年の東京五輪を前にしたホテル不足もまた喫緊の課題ではあるものの、いよいよ「民泊」が構造的に有している「犯罪親和性」の問題が大きくクローズアップされてきている今、国や自治体は、違法営業などの実態把握や摘発の強化とともに、民泊事業者や仲介事業者の健全性の確認、犯罪インフラ化の防止のための本人確認手続きの厳格化といった各種手続きや規制の強化を検討すべき状況にあると言えます。


4 その他の犯罪インフラを巡る動向

 以下、最近の報道から、犯罪インフラ化が懸念される状況について、いくつか提示しておきます。


 米国のグーグルやフェイスブック、中国のアリババ、バイドゥなど、世界のITやネット通販の大手企業21社と、世界自然保護基金(WWF)などの環境NGOが、野生生物の違法なネット取引を撲滅するための連合を立ち上げ、2020年までに違法取引を8割減らす目標を掲げたとの報道がありました(平成30年3月8日付朝日新聞)。野生生物の取引については、英政府の報告書では、人身売買や違法薬物と並ぶ犯罪組織の収入源と指摘されているほか、米国際開発庁も「世界で最も巨大なブラックマーケットの一つ」と指摘されているということです。さらに、最近では、ネットでの違法な広告や売買も広がり、被害の拡大が懸念されています。コーヒーのフェアトレードや化粧品メーカー等の動物実験の禁止、象牙取引の禁止などの世界的な潮流と軌を一にした取り組みでもある一方で、野生生物の違法取引が犯罪組織の資金源となっている点から、犯罪インフラ化阻止の視点からも、今後、徹底した取り組みがなされるべきだと考えます。とりわけ、ITやネット通販事業者がインターネットやSNSの犯罪インフラ性を自覚し、主体的に取り組もうとする姿勢は好ましく、日本の事業者や市民においても根付いて欲しいものだと思います(なお、日本では象牙取引の禁止ですら最近になってのことであり、グローバル・スタンダードから見て事業者の倫理観の鈍さが問われていると言えます)。


 本コラムでもたびたび取り上げている偽のC型肝炎治療薬「ハーボニー」が見つかった事件の背景には、「現金問屋」と呼ばれる個人や病院などから余った薬を定価より安く買い取って転売する業者の存在があり、その商売慣行である"秘密厳守"をうたい、薬の売却に訪れた顧客の身元を確認せず、記録もずさんという実態が放置されてきたことがあります。また、この事件の前には、生活保護制度を悪用して無料で別のC型肝炎治療薬「ソバルディ」の処方を受けたとして男女3人が逮捕された事件もありました。こちらの事件では、患者が処方を受けた薬が別の男を介して元暴力団幹部の男に渡り、幹部が薬を転売することで利益は暴力団の資金源になっていたとみられています。さらに、報道によれば、薬物使用者は注射針の針の使い回しによって肝炎に感染し、治療薬を服用するケースも多いことから、薬物利用者間でこうした販売ルートについての情報共有が行われていた可能性もあり、いわば、暴力団が、薬物の売買による収益だけでなく、肝炎感染のリスクを高めたうえでその治療薬の転売でも利益を得るという構図になっていることが分かります。このように、医薬品業界の犯罪インフラ性が暴力団に悪用された背景には、「現金問屋」という商売慣行、生活保護(貧困ビジネス)、医師による処方のあり方(倫理観の低さ)、薬物中毒者の存在などがあり、これら複数の犯罪インフラ性が関連し負のスパイラルを形成することで、暴力団の資金源となってしまったことは極めて残念です。


 前回の本コラム(暴排トピックス2018年2月号)では、「ダークウェブ」の犯罪インフラ性について考察しました。対する「サーフェス(表層)ウェブ」であるインターネットあるいはSNSのもつ犯罪インフラ性についてもあらためて認識する必要があります。「時間、場所、職業、年齢―。あらゆる枠を超え、人と人を瞬時に結ぶインターネット。その圧倒的な「つなぐ力」は、悪事をたくらむ者たちにとっても便利なツールとなった。平成に入り、ネットは犯罪の新たなインフラとして社会に根を張っていく」とした報道(平成30年2月17日付日本経済新聞)は大変興味深いものでした。記事では、「被害者の顔が見えないため罪悪感を抱かない。匿名性が高いので「ばれない」と思い込む。ネットの普及は犯罪を行う敷居を低くした。一方で一般の人たちは会ったこともない相手を信用してしまう」、「やがて「悪意」と「悪意」も直接つながり始めた」、「ダークウェブとは対照的に、多くの人が手軽に利用する表の世界にも「闇」は広がっている。・・・(座間市の事件で)容疑者と被害者を結びつけたのは交流サイト(SNS)だ」、「サイバー空間の治安情勢は厳しく、先行きは不透明だ。有効な手が打てなければ、「犯罪の温床」「国家的な不法行為の場」、さらには「戦場」にだってなりかねない」といった指摘がなされていましたが、正に、インターネットやSNSのもつ犯罪インフラ性を時間の経過とあわせながらその問題の本質を突いた内容でした。
 また、SNSのひとつであるTwitterについては、座間市の事件を受けて、自殺対策を強化してきたところ、今回、「自殺や自傷行為の助長」の定義や、自殺を助長するツイート投稿者への措置を、ヘルプセンターに明記しています。「自殺や自傷行為の助長」については、「過食症、拒食症、接触行動に重大な混乱を引き起こす深刻な病気など、摂食障害を助長または推奨する」、「自殺の方法を教えたり、集団自殺や自殺ゲームに参加したりするなど、自らの命を絶つ行為を助長または推奨する」などと具体的に記載したほか、ポリシーに違反しているとみなされた場合、ツイートの削除が要請されるか、アカウントが一時的にロックされツイートできなくなることも記載、繰り返し違反したり、自殺や自傷行為の推奨のみを行っているアカウントは、凍結される可能性があるとされました。「つながる」ことの危険性を、その場を提供するSNS事業者が自覚して、自主的に規制強化に取り組もうとしている点は評価できると思いますが、それでも根本的な解決につながらないインターネットやSNSの持つ犯罪インフラ性の危険性については、あらためて認識する必要があります。


 なお、この「つながる」という言葉は、今後のリスク管理で最も重要なキーワードの一つと考えられます。「悪意」と「悪意」のつながりはもちろんこと、利便性と「悪意」のつながり、脆弱性と「悪意」のつながり、匿名性と「悪意」のつながり等、「悪意」と何かがつながることによって犯罪が引き起こされるのであり、インターネットやSNSに代表されるその「つながりの容易さ」が犯罪の敷居を下げている現実があります。一方で、AML/CFTや反社リスク対策、厳格な顧客管理の実務においては、サプライチェーン・マネジメントという「つながり」全体の健全性を問われる状況ともなっています。

(6)その他のトピックス

1 薬物を巡る動向

 財務省が平成29年の全国の税関における関税法違反事件の取締り状況を公表しています。不正薬物(覚せい剤、大麻、あへん、麻薬(ヘロイン、コカイン、MDMA等)、向精神薬及び指定薬物をいう)全体の摘発件数は784件(前年比▲12%)、押収量は約1,379キロ(前年比▲16%)といずれも減少したものの、深刻な状況が続いています。

▼財務省 平成29年の全国の税関における関税法違反事件の取締り状況

 このうち、覚せい剤事犯については、摘発件数は151件(前年比+45%)と大幅に増加し、押収量も約1,159キロ(前年比▲23%)と減少したとはいえ"2年連続1トン超え"を記録しています(なお、押収量は、薬物乱用者の通常使用量で約3,864万回分、末端価格にして約741億9,300万円に相当するということです)。特徴としては、大口事犯を複数検挙したこと、航空機旅客による密輸入の活発化が挙げられています。また、大麻事犯については、摘発件数は171件(前年比+45%)と大幅に増加し、3年連続100件超えとなったことに加え、押収量も約130キロ(前年比約14.9倍)と、減少傾向から一転して大幅に増加した点が特徴的だと言えます。また、その他の特徴としては、航空旅客による密輸や、国際郵便物を使った密輸の摘発件数が急増したことが注目されます。報道(平成30年3月7日付日本経済新聞)によれば、これまでコンテナなどの商業貨物への検査を強化してきた一方で、個人レベルの密輸への対応に迫られていること、コンテナなどの大量輸入に対しては、大型のX線検査装置を使って不正薬物の検知に取り組んできたものの、密輸が個人型に変化していることも踏まえ、2019年初めにも国際スピード郵便(EMS)への検査を強化するということです。組織的な大がかりは密輸だけでなく、個人の小口の郵便物にも監視の目を強化するとは言っても、その実効性を確保することは簡単なことではなく、大麻が合法化された米国やカナダなどから輸入が増え、国内の流通量が増え、社会に蔓延していく懸念が現実のものとなりつつあります(なお、大麻については、密輸だけでなく、国内栽培の摘発が相次いでいることにも注意が必要な状況です)。


 さらに、密輸取り締まりから見た薬物犯罪情勢とは別に、少年犯罪の摘発からも同様の傾向が見られます。

▼警察庁 平成29年における少年非行、児童虐待及び子供の性被害の状況について
▼平成29年における少年非行、児童虐待及び子供の性被害の状況

 平成29年の刑法犯少年の総数検挙人員は215,006人(前年比 ▲11,370人、▲5.0%)、うち刑法犯少年は26,797人(▲4,719人、▲15.0%)で少年の占める割合は12.5%(▲1.4%)、人口比は3.8%(▲0.7%)となったほか、特別法犯少年の法令別検挙人員について、特別法犯全体では5,041人(▲247人、▲4.7%)、軽犯罪法1,768人(▲343人、▲16.2%)、迷惑防止条例737人(+2人、+0.3%)、不正アクセス禁止法は74人(+31人、+72.1%)、大麻取締法は299人(+87人、+41.4%)、覚せい剤取締法は91人(▲45人、▲33.1%)などの結果となっています。これからも分かる通り、少年の大麻事犯への関与が昨年一気に伸びており(一方で、覚せい剤事犯は大きく減少)、統計を取り始めた1989年以降では、1994年に並んで過去最多となりました。また、直近4年連続で増加傾向を示しており、2013年の5倍を超える水準となっています。報道で、「危険ドラッグの規制が進み、大麻が増えた可能性がある。大麻をきっかけに他の薬物を始める若者も多く、警戒を強めたい」との警察庁のコメントがありましたが、社会全体も同様の傾向があることがうかがえ、危険ドラッグから大麻へ、そして今後、大麻から覚せい剤へとシフトしていく危険性が示されていると言えます(以前の本コラムでも紹介した通り、30歳代以上の大麻依存症患者の多くは、かなり昔から大麻に手を出していることが知られており、それが社会的に表面化していないだけという状況があります。それにここで明らかとなっている若年層への蔓延が加わり、潜在的な薬物依存症患者の増加が懸念されます)。


 そのような中、世界の違法薬物や組織犯罪を調査し、各国を支援する国連薬物犯罪事務所(UNODC)に対し、今年度の日本からの拠出が約2839万ドル(約30億円)と過去最高額になったということです。これまで最高だった昨年度から約25%増加しており、地域別では、ヘロインやアヘンの原料となるケシの生産が増えているアフガニスタンとその周辺国に向けた拠出が500万ドルと最多で、拠出金は、麻薬密輸の中継地である中央アジアの捜査官訓練にも使われているということです。テロリスク対策における日本の貢献のあり方同様、薬物がテロリストや犯罪組織の資金源となっていることや、日本へ薬物の流入阻止の観点から、薬物犯罪の阻止・検挙態勢の整備、代替産業の育成といった日本らしい支援のあり方を模索することが重要だと思います。
 一方、インドネシアでは、刑務所が覚せい剤や大麻など違法薬物密売の温床になっているという深刻な事態のようです。報道によれば、密売組織のリーダーが「塀の中」から携帯電話で密輸を指示する例やスマトラ島北部で約111キロの覚せい剤と合成麻薬1万8,000錠が押収された事件(今年1月)の首謀者が「死刑囚」だった例もあるということです。同国大統領の指揮のもとで密売人の逮捕に力を入れた結果、受刑者が急増し、管理がままならなくなるという皮肉な現実になっているとのことです。テロリスク対策においても、刑務所はISなどの過激思想が浸透しやすい犯罪インフラとなっていますが、薬物犯罪の犯罪インフラともなり得るという点で、このような国々における刑務所の犯罪インフラ化阻止は喫緊の課題であり、同国の社会問題解決に向けて、日本に何ができるかの検討もされてよいと思います。


 また、報道(平成30年2月25日付ロイター)によれば、米連邦法が依然としてあらゆる形態の大麻を禁止しているのに対し、カナダでは2001年に医療用大麻を合法化し、今年は嗜好用も合法化される見通しです。カナダ政府は、医療用大麻の完全合法化に必要な研究と臨床試験を歓迎しており、資金提供さえ行っているということです。現在、大麻を輸出しているのはカナダとオランダだけであり、カナダ企業は、医療用大麻が最近合法化された20カ国以上において即座に有利な状況にあるとも言われています。つまり、国を挙げて大麻を今後有望なビジネスとして捉えているということであり、社会への蔓延を何とか阻止しようとしている日本から見れば、難しい対応が迫られるところです。このような国際的な趨勢の中、今の日本に必要なことは、以前から指摘している通り、大麻の有害性(依存性の高さや脳への影響、再就労への影響など)や「医療用と吸煙用」の大麻の違い(無害性と有害性の違い)に対する正しい理解であり、大麻合法化・非処罰化の国などからの流入量の増加や大麻から覚せい剤へのシフトなどの危険な事態の定着化・深刻化が危惧される状況にあること、大麻の有害成分であるテトラヒドロカンナビノールが品種改良を経て強力になっていること(有害性が高まっていること)などから、これまで以上に大麻の違法性・有害性について国民がきちんと理解することが重要だと言えます。


2 カジノ/IRを巡る動向

 統合型リゾート(IR)実施法案の今国会での成立に向けて、政府・自民党において、制度・対策に関する検討PTの議論が大詰めを迎えています。これまでの議論を大まかに整理すると、概ね以下をベースに今後議論が進められることになりそうです。

  • カジノ施設規模については、人口500万人強のシンガポールにおいて合計3万㎡のゲーミング区域が設置されていること、日本の場合は立地地域や規模が未確定であることなどから、絶対値ではなく、3%の相対的割合のみの規制とすべき
  • 入場回数制限については、日本人及び居住者に対する一律の規制としては、多様な休暇の取り方に配慮し、ひと月(28日)単位の回数制限のみとすべき(現時点の案としては、7日間で3回+28日間で10回)
  • 本人確認方法については(顧客の同一性を効果的に確認するため不変の記号等が必須であり)、マイナンバーカードを活用すべき一方で、(顔認証や静脈認証等の)生体認証等の最新技術の活用により、利用者の利便性を向上させるべき(当初の政府案では日本人の入場者に個人番号カード(マイナンバーカード)の提示を義務付ける方針であったところ、普及率が10%程度にとどまっている現状を踏まえ、別の手段も必要との認識)
  • 入場料については、2,000円では安すぎるのではないかとの意見もある一方で、そもそも入場料は不要との意見も
  • 納付金率については、GGRの30%という水準は高すぎる、累進課税は不必要ではないか、との意見も
  • 中核施設の要件・基準については、立地地域の特性等に鑑みて、より柔軟な仕組みとすべき
  • IR区域認定数については、まずは2~3か所から始めるべきとの意見、地方の声に配慮した箇所数にすべきとの意見も
  • 開業かでのプロセスについては、事業者の負担にならないようにすべき
  • 見直しの時期については、第一段階のIRの認定から5年を目途にすべき(なお、法施行から10年後をめどに内容を再検討する「見直し条項」を付則に盛り込む方針を固めたとの報道もあります)

 政府・自民党の議論および報道内容等からは、それ以外にも、例えば、反社会的勢力排除のための「背面調査」について、警察庁職員らが出向して内閣府に設置される「カジノ管理委員会」が行う、カジノ事業者には調査を義務付け、事業免許取得の要件とする、調査の結果、開業が許可されない場合でも、事業者が費用を払う、といった内容になりそうです。とりわけ、調査費用の事業者負担は、調査を受けるために資金面や信用面でのリスクを伴うことから、報道によれば、「廉潔性によほど自信がある事業者しか参入を目指せなくなる」との狙いがあるということです。したがって、参入を目指す事業者は、カジノ管理委員会による背面調査の実施の前に、第三者の視点も入れながら自らとそれに関連するサプライチェーン全体を、厳格にチェックしておく必要があることになります。また、カジノ施設入場者のチェックという点では、本人特定事項(氏名・住所等、生年月日及び写真)、入場禁止対象者(20歳未満の者、暴力団員等)か否かの確認が求められますが、本人特定事項の「公的信頼性」と「最新性の確保」、顧客の利便性の観点から「入手の容易性」の要件があり、犯収法同様、写真付の公的証明書の活用が考えられます。ただし、「最新性の確保」や「偽造・なりすましの防止」にどれだけの実効性を確保できるかが今後の課題だと言えます(反社チェックの観点から言えば、暴力団員だけでなく反社会的勢力の範囲や認定の問題があり、カジノ事業者の主体的な判断による入場制限のための、反社チェックの精度や認定プロセス、スピードの向上が喫緊の課題となりそうです)。
 また、ギャンブル依存症対策については、ギャンブル依存症患者や家族から申告があった場合、入場禁止の措置を取る制度の導入の方向です。昨年12月の「ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議幹事会申合わせ」で整理された「家族申告によるアクセス制限」では、公営競技やぱちんこの競技試行者・事業者構築すべき家族申告によるアクセス制限についての基本的な考え方が示されています。

  • ギャンブル等依存症は、本人のみならず、その家族の生活に多大な支障を生じさせる精神疾患
  • ギャンブル等へののめり込みによる被害から家族を守ることもまた社会的な要請
  • 競技施行者・事業者は、「ギャンブル等依存症の診断を受けているような利用者」や「ギャンブル等へののめり込みによるその家族の生活に支障を生じさせるおそれがあるような利用者」に対しては、利用者本人の同意の有無に関わらず、サービス提供を拒否することが適切

 また、以前の本コラム(暴排トピックス2018年1月号でも紹介しましたが、ギャンブル等依存症対策として、JRA(日本中央競馬会)が、家族からの申告に基づき、インターネットでの競馬の投票券販売を停止する制度を既に運用開始しています(今年4月には競輪やオートレース、ボートレースへ対象が広がる予定だということです)。本件も、カジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)導入に備え対策強化を進める政府方針を踏まえたものとして注目されます。

▼JRA 家族申請によるネット投票の利用停止について(ギャンブル障害への対応)

 本制度を申請できる家族は、インターネット会員本人と同居している親族(6親等以内の血族・配偶者・3親等以内の姻族)とされ、本人対象となる会員としては、「医師からギャンブル障害の診断を受けている会員」、「医師の診断は受けていないが、外形的にギャンブル障害の状況にあるおそれがあると認められるものとして、ネット投票での勝馬投票券の購入金額が、家計の経済状況等に照らして、本人と家族の生活維持に重要な影響を及ぼしている蓋然性が高いと判断される会員等」と規定されています。さらに、ユニークな点としては、契約当事者である会員本人の意思にかかわらず、ネット投票の利用停止を実施するため、 【利用停止前】会員本人による「異議申立て」、 【利用停止後】会員本人による「解除申請」を可能とするものの、いずれも「ギャンブル障害」の回復証明等の要件を設定している点が挙げられます。さらに、直近の報道によれば、家族がJRAに申請すれば患者本人の意思に関係なく、競馬場や場外馬券場への入場を禁止できる措置を取ることを決めたということです。JRAは家族から提供された患者の顔写真情報を競馬場や場外馬券場に配り、職員が見つけた場合は声をかけて入場させないというもので、インターネット会員だけでなく施設への入場そのものを制限しようとするものであり、より一歩踏み込んだ対応として評価できると思います。 なお、ギャンブル等依存症と自宅からの距離に関する調査結果を慶応大学の研究グループがまとめています(平成30年2月27日付毎日新聞)。報道によれば、パチンコ店から半径3キロ以内に住む男性の場合、パチンコ店が1軒増えると依存症が疑われる確率が1.9%増え、1.5キロ以内では3%増える関係にあること、男性、独身、低所得の各グループの確率は高まったが、女性には影響がなかったこと、低所得者の場合はさらに高くなること、などが報告されています。調査を手掛けた研究者が、「ギャンブル施設が近くにあるほど依存症になる恐れが高まる。カジノも一緒で、3キロ以内に住宅がある場合や、ギャンブル経験の少ない若者には規制が必要だ」と指摘していますが、今後のIR実施の議論においても十分に配慮が必要だと思われます。


3 北朝鮮リスクを巡る動向

 平昌オリンピックが終了し、南北首脳会談や米朝首脳会談も現実味を帯びていますが、制裁解除に向けた演出との見方も根強くある以上、核・ミサイル開発の放棄につながるのか慎重に見定める必要があり、現時点では北朝鮮への制裁の手を緩めるわけにはいきません。日本としても、防衛省は、北朝鮮船籍とモルディブ船籍のタンカーが東シナ海の公海上で「瀬取り」を行っていたとみられる現場を海上自衛隊が撮影するなど、合計4回にわたって現場写真を公表し、北朝鮮の制裁逃れを許さないスタンスを堅持しています。瀬取りを北朝鮮が抜け穴とみているのは、公海上での瀬取りの実施が国連安全保障理事会によって禁止されているものの、取り締まりそのものは加盟国に義務付けられていないためだと言われています。だからこそ、日本の哨戒機による監視飛行は先駆的な取り組みだと言えます。ただ、北朝鮮船籍の密輸船が瀬取りを行える公海上の領域は広大で、自衛隊だけで監視網を構築するには限界があるのも事実であり、その実効性を高めるためには、あらゆる階層・チャネルの国際的な連携が必要となります。この瀬取りをはじめとする北朝鮮の制裁逃れの具体的な方法について、これから公表される国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会の専門家パネルの年次報告書に記載されているということであり、報道を総合すると、北朝鮮は違法な金融取引や化学兵器の関連資材などの輸出に関与しており、石炭の原産地をロシアや中国産と偽ってマレーシアや韓国、ロシア、ベトナムなどに輸出していること、この巧妙な制裁逃れによる外貨稼ぎも2017年1~9月で2億ドル(約210億円)に上ること、石炭密輸に関する手口としては、「ルートの迂回」「書類の偽造」「第三国を経由」「船舶位置情報の偽装」などがあり、複数の回避術を組み合わせるなどして、「実際の船の航行ルートを分かりにくくし、北朝鮮産の積み荷ではないという印象を持たせようとしている」と指摘しているということです。


 また、日本以外の制裁の状況については、米国は、2月下旬に、国連安全保障理事会の制裁決議で輸出に上限が設けられている石油精製品などの北朝鮮への海上密輸を阻止し、国際社会が強化する包囲網の抜け穴を塞ぐため、トランプ政権の北朝鮮に科す独自制裁としては過去最大規模となる制裁を課しています。その対象となったのは、北朝鮮や中国、シンガポール、アフリカや中南米などの海運会社や貿易会社など27団体、貨物船28隻、1個人で、公海上で積み荷を移し替える「瀬取り」などの密輸行為に関与したとされています。また、直近では、米国務省が、マレーシアの国際空港で昨年2月、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏が化学兵器に使われる神経剤VXで殺害された事件について、北朝鮮政府が実行したと断定、「公衆の面前で化学兵器使用」したとして、北朝鮮に対して緊急人道支援を除く援助の中断などの制裁を発動したと発表しています。さらに、欧州中央銀行(ECB)は、ラトビアのABLV銀行に対し、全ての支払いを停止させたと発表し、ラトビアの金融規制当局に停止措置を要請しています。米財務省が、ABLV銀行が北朝鮮の弾道ミサイルと関わりを持つ顧客の不正取引に関与、マネー・ローンダリングに関与していたと指摘しており、急速に資金繰りが悪化していたものです。


 このような中、一部雑誌において、日本の地銀とメガバンクを経由して北朝鮮に億単位の不正送金がなされた可能性があるとの記事が掲載されています。その記事から経緯の部分のみ引用(一部、筆者にて加工)すると、「某銀行の某支店に、巨額の現金を持ち込んだ人物がいる。同行の別の支店に口座を持つ会社経営者で、昨年5月26日の約1,000万円を皮切りに、6月27日までに計5回、総額5億5,000万円ほどを、香港にある恒生銀行の特定の口座に振り込んだ。某銀行は自ら恒生銀行に送金することができなかったため、先方と取引関係がある某メガバンクに為替取引を依頼。このメガバンクもまたこれをすんなり受け付けた。問題は、振込先となった恒生銀行の口座の主で、北朝鮮と関係の深い会社で、しかも役員の一人は国連安全保障理事会の制裁委員会が指定した北朝鮮制裁リストに名前がのる人物。さらにこの会社は、中朝国境に近い黒竜江省の商社と頻繁に取引があり、その商社は北朝鮮と密貿易をしていることで良く知られている"札付き"だという。さらに、送金を依頼した会社経営者の会社はすでにもぬけの殻。本人も消息を絶っている」というものです。
 北朝鮮への送金業務については、AML/CFTの観点だけでなく、外為法、国連制裁関連など様々な観点から厳格なチェックが行われるべきところ、本内容が事実であれば、地銀もメガバンクもこれを見抜けなかったということになります(正直なところ、もう少し突っ込んだチェックを行えば把握できたのではないかというレベル感だと思われます)。両行とも、今の情勢下で国連制裁リスト・スクリーニングを全く実施していないことは考えにくい一方で、送金先の口座の所有者である法人名は制裁リストに載っておらず、役員の一人についてのみ該当があったという点から、両行ともに口座所有者の法人の役員までは確認していなかった可能性が考えられます。また、この法人自体が北朝鮮との関係が噂される"札付き"の商社と頻繁に取引があったとの指摘から、法人の主要取引先の確認(とはいえ、企業情報DB等に記載されていなかった可能性はあります)や法人およびその主要取引先にかかる風評チェック等も実施していなかった可能性もまた考えられます。そして、送金元となった会社経営者とその会社についても、別の支店の既存顧客であったことから中間管理(モニタリング)が実効性を持って行われていたのか、送金手続き時のチェックが十分だったのかも懸念が残るところです。なお、反社チェックの実務においても、役員や主要取引先までチェック対象に含めることや、中間管理について実効性を持って実施することは、推奨されているとはいえ、そこまで実施できている事業者はそれほど多くないのが現状です(反社チェックに置き換えた場合、通常の事業者がこれを見抜くのは難しかったかもしれません)。しかしながら、本件においては、「取引支店ではない別の支店からの送金依頼であること」「短期間の間に分割された形で複数回の送金依頼であること(明らかに敷居値以下に分割された取引)」が分かっており、これだけで疑わしい取引として届け出を行うべきレベル感であり、慎重に判断されるべき取引であったと評価できます。そうであれば、通常より厳格なチェックを行うべきだったということにもなり、やはり、トータルでみれば「AML/CFT+反社リスク対策+北朝鮮対策」に位置づけられる「KYCチェック」としては不十分だったと言えると思います。そして、このように十分なリスク評価に基づくKYCチェックが行われていない実態は、この銀行だけでなく、日本全国のどこの金融機関でも起こり得ること(既に起こっていること)が容易に想像でき、官民連携のもと、真相解明と再発防止に全力を挙げていく必要があると考えます。


 さて、文科省は、北朝鮮が昨年日本上空を通過する弾道ミサイルを発射したことを踏まえ、学校ごとに教職員の対応などを定めた危機管理マニュアルの見直しに向けて手引を作成しています。児童生徒の在校時や、登下校時などのケース別に避難行動の留意点が例示されています。

▼「学校の危機管理マニュアル作成の手引」の作成について
▼学校の危機管理マニュアル作成の手引(分割版)(1)
▼学校の危機管理マニュアル作成の手引(分割版)(2)

 例えば、「学校における臨時休業や授業の開始時間の判断等について」は、「早朝等の始業前に弾道ミサイルが発射され、J アラートによる弾道ミサイル発射情報等が発信された後に日本の領土・領海に落下した場合は、落下情報に続いて、追加の情報が伝達されます。そのような場合を除き、上空通過の情報や、領海外の海域への落下情報が発信された場合は、避難解除を意味しますので、日常生活に戻って登校を開始することが可能です」、「交通機関の運行の状況等、地域によって状況が異なることから、平素から自治体が作成している国民保護計画を踏まえて、児童生徒等への連絡方法や連絡のタイミングなどについて学校の対応を検討しておくことが大切です」、「特に、臨時休業については、学校教育法施行規則第63条に基づき学校長の判断によることとなりますが、J アラート等を通じて緊急情報が発信された場合に臨時休業とするか否かや登校の判断等については、学校と学校の設置者との間で事前に協議の上、あらかじめ定めておくことが重要です」といったポイントが記載されています。また、その他にも、「例えば、グラウンド(運動場)にいる場合に、緊急地震速報が聞こえたら「落ちてこない・倒れてこない・移動してこない」場所に素早く身を寄せて安全確保するため、運動場の中央付近で姿勢を低くして頭を守ります。一方、弾道ミサイルの場合は、爆風や破片等の危険から身を守るための避難方法を判断し、屋内に避難するなど、同じ屋外にいた場合でも回避すべき危険(地震や弾道ミサイル等)によって避難の仕方が異なることを念頭におく必要があります」といった具体的な内容も盛り込まれており、参考になります。

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3.最近の暴排条例による勧告事例ほか

(1)埼玉県暴排条例の改正(平成30年4月施行)

 以前の本コラム(暴排トピックス2017年9月号)でも紹介いたしましたが、埼玉県暴排条例が改正され、この4月1日から施行されることとなりました。
 今回の改正は、「暴力団排除特別強化地域の新設」、「両罰規定の新設」、「青少年を暴力団事務所に立ち入らせた暴力団員に対する中止命令事務の迅速化」の3点が主眼となっています。暴力団排除特別強化地域(以下「特別強化地域」)とは、特定営業者(「特定営業(風俗・飲食店営業等)を営む者」をいう)と暴力団員の禁止行為を定め、違反をすると罰則が科せられる地域であり、罰則として、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が課されることになるほか、違反行為を行った特定営業者が自首したときは、刑の免除又は軽減が考慮されるというものです。

▼埼玉県警察 埼玉県暴力団排除条例が改正されました。(平成30年4月1日施行)

 具体的には、特定営業者について、第22条の3において、「特定営業者は、特別強化地域における特定営業の営業に関し、暴力団員から、用心棒の役務(営業を営む者の営業に係る業務を円滑に行うことができるようにするため顧客、従業者その他の関係者との紛争の解決又は鎮圧を行う役務をいう。次項及び次条第2号において同じ。)の提供を受けてはならない」(第2項)、「特定営業者は、特別強化地域における特定営業の営業に関し、暴力団員に対し、用心棒の役務の提供を受けることの対償として利益の供与をし、又はその営業を営むことを容認する対償として利益の供与をしてはならない」(第3項)といった規定が定められました。さらに、暴力団員についても、第22条の4において、特別強化地域における特定営業の営業に関し、「客に接する業務に従事すること」、「特定営業者に対し、用心棒の役務を提供すること」、「特定営業者から前条第3項に規定する利益の供与を受けること」が禁止されました。
 さらに、第30条第1項では、「公安委員会は、第17条(暴力団員は、正当な理由がある場合を除き、自??が活動の拠点とする暴力団事務所に青少年を立ち入らせてはならない)の規定に違反する行為をした暴力団員に対し、公安委員会規則で定めるところにより、当該行為を中止することを命ずることができる」とされていますが、今回の改正で第3項に「中止命令については、埼玉県行政手続条例(平成7年埼玉県条例第65号)第3章の規定は、適用しない」との規定が設けられ、中止命令事務の迅速化が図られることとなりました。
 また、罰則については、第32条で、(1) 第16条第1項の規定に違反して暴力団事務所を開設し、又は運営した者、(2) 相手方が暴力団員であることの情を知って、第22条の3の規定に違反した者、(3) 第22条の4の規定に違反した者、について、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」とされたほか、前項第2号の罪を犯した者が自首したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる」との規定も追加されました。なお、「暴力団事務所の開設又は運営の禁止違反」、「特別強化地域における禁止行為違反」については、行為者である人と事業主である法人等の両方を処罰する両罰規定が新設されています(行為者の場合は「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」、法人等の場合は「50万円以下の罰金」となります)。
 既に他の地域でも導入されているものもありますが、、とりわけ関東圏内では、東京都や神奈川県の暴排条例でいわゆる大繁華街を対象とした区域の指定が行われていないところ、関東圏の大繁華街のひとつである「大宮地区」を指定することは大きな意義があります。さらに、その制裁について、規制が強化されたことで、みかじめ料(用心棒代)による資金獲得活動を厳しく制限するものとして、その効果が期待されます。


 また、埼玉県暴排条例のQ&Aについては、以前もご紹介した通り、大変分かり易い内容となっており、社内研修等に活用いただけるかと思います。今回の改正で新たに追加されたものもありますので、一部、参考になるところを紹介しておきます。

▼埼玉県暴力団排除条例Q&A

 例えば、取引を行う場合に、取引の相手方が暴力団員であるか否かを確認する方法(いわゆる反社チェック)について、Q12で取り上げられており、以下を具体的に列記しています。

  • 相手方の風体、言動、取引の内容及び新聞、テレビ、インターネット等を通じて収集した情報等から判断する
  • 取引の契約内容に暴力団員を契約の相手方としないことを明記する
  • 取引の相手方から暴力団員でないことの誓約書を徴収する

 そのうえで、取引の相手方が暴力団員である疑いが払拭できず、このまま取引を行えば暴力団の活動を助けることとなるなどのおそれがある場合には、警察に相談することとしています。
 また、Q13 では、「暴力団員を客に接する業務に従事させないための対策はありますか。暴力団員だと知らずに接客業務をさせてしまった場合でも条例違反になりますか」といった設問があり、暴力団員だと知らずに接客業務をさせてしまった場合には、条例違反には当たらないと考えられること、途中で暴力団員であることが発覚したにも関わらず、当該従業者に接客業務をさせていた場合には、条例違反に抵触することが解説されています。なお、条例では、暴力団員を雇用することまでは禁止していないものの、暴力団員を客に接する業務に従事させることは今回の改正で禁止されていることから、それを避けるために、「就業規則等に暴排条項を盛り込むことや従業者から自身が暴力団員ではない旨(将来も含めて)の誓約書・確約書を徴求することなどの対策」が推奨されています。このあたりは、通常のビジネスにおいて、「入口」(新規のチェック)では見抜けなかったのであれば、「知らなかった」としてやむを得ないものの、「中間管理」(定期・不定期のチェック/モニタリング)において反社会的勢力であると判明した場合は、関係解消に向けて取り組むこととされていることと同様の考え方となります。
 さらに、Q14 では、「暴力団排除特別強化地域以外の場所で営業している風俗店や飲食店の事業者が、条例違反で刑事処罰を受けることはないのか」との問いがあり、「特別強化地域外でコンパニオン派遣業を営む者が、特別強化地域内に従業者を派遣した場合で、当該営業に関して、条例第22条の3に規定されている禁止行為をしたときは、条例違反として刑事処罰の対象となる可能性がある」との説明がなされています。これは、条例の適用に関わる考え方で、全国の暴排条例についても、本社の場所いかんを問わず、「行為が行われた場所」の暴排条例が適用されることになることと同様です。例えば、「関連契約からの暴排」(工事における事業に係る契約の相手方と下請負人との契約等当該事業に係る契約に関連する契約)は、東京都と福岡県の暴排条例にしか規定がありませんが、取引が両地域であれば、全国の事業者が対象になる点に注意が必要です。したがって、暴排条例への対応を考える際には、全国の暴排条例のうち、厳格な規定を定めている福岡県や東京都、神奈川県といった暴排条例の理解を深めておくことも必要だと言えます。

(2)埼玉県暴排条例Q&Aにおける勧告事例から

 前項でお話した通り、埼玉県暴排条例Q&Aは社内研修等でも活用できると思います。以下に、同Q&Aに記載のあった勧告事例の具体例を紹介しておきます。

  • 飲食店経営者が、暴力団員に対し、事前に用心棒料を支払う行為(今回の埼玉県暴排条例の改正により、暴力団排除特別強化地域の営業に関する特定営業者の行為は同県暴排条例第22条の3の違反として刑事処罰の対象となります)
  • 金融業者が、「債権の取立てに組(暴力団)の力を貸してほしい」と暴力団員に依頼し、金銭を支払う行為
  • 不動産業者が、マンション用地を取得するに際し、買収に応じない住民対策を暴力団員に依頼し、金銭を支払う行為
  • 建設業者が、下請け工事の参加に口添えをしてもらうことを期待して、暴力団組長を囲む親睦会を結成し、会費名目で資金を提供する行為
  • 飲食店業者が、暴力団員にいわゆるみかじめ料等を支払う行為
  • ガソリンスタンド経営者が、近接する暴力団事務所に集合する暴力団員に対し、敷地を駐車場所として無償で提供する行為
  • 不動産業者が、自己の管理するマンションにある暴力団事務所の光熱費を負担する行為
  • 事業者が、暴力団組長の襲名披露にご祝儀を贈る行為
  • 事業で得た収益の一部を実体のない業務委託費名目で暴力団員に支払う行為
  • 情を知って、暴力団の資金獲得のための活動を行う場所の提供その他の暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる「利益の供与」の具体例は以下の通り
    • 襲名披露式、組葬等を行う場所を提供すること
    • 出資又は融資をすること
    • その事業の全部若しくは一部を委託し、又は請け負わせること
  • 印刷業者が、代紋の入った暴力団員の名刺や暴力団組織の名称の入った挨拶状、破門状等の書状を印刷する行為
  • 自動車整備工場が、暴力団組長の専用車に防弾ガラスを取り付ける行為
  • 暴力団の会合に集合するために使用することを知りながら、レンタカーを貸し出す行為

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