万引きによるロスの原因と食品ロスへの取り組み(2019.6)

2019/06/18 / 総合研究部 上級研究員/部長代理 伊藤 岳洋 プリント

万引きによるロスの原因と食品ロスへの取り組み

 皆さま、こんにちは。

本コラムは、消費者向けビジネス、とりわけ小売や飲食を中心とした業種にフォーカスした経営リスクに注目して隔月でお届けしております。


 ロスの原因として、以前は本コラムで従業員の不正を取り上げましたが、今回は万引きについて考えてみたいと思います。


 万引きは、ロスの原因のうち多くを占めるなかなか根絶できない犯罪です。万引きは大きくは2つに分類できます。ひとつは、換金目的のプロフェッショナル(プロ)です。従来は個人的・刹那的な犯行が中心でしたが、昨今は組織的・計画的な犯行に移行してきています。店舗からの万引きによって収入のすべて、もしくは多くの部分を得ている個人は少数でしょう。しかしながら、プロとアマチュア(アマ)の万引き被害の比率など実態は統計的に証明されているわけではありません。とはいえ、売りやすく換金しやすい商品、たとえばスポーツウェアやシューズ、化粧品、たばこ、電動工具などを扱う店舗でなおかつ、防犯対策が脆弱な店舗、または、非常に返品ポリシーが甘い店舗などは、プロにとって魅力的でしょう。プロはそのような見方で、万引きをする店舗を選んでいるといえます。


 このようなプロは、盗品をリユースショップやネット空間において個人間で売買できるフリマアプリ、もしくはリアルのフリーマーケットを通じて換金しているものと思われます。また、社会経済のグローバル化やIT技術の発達に伴い、盗品の海外処分のルートが容易に形成されるようにもなりました。そのようなルートが確認された3年ほど前からは、とりわけ外国人による集団窃盗(万引き)が目立つ状況です。


 外国人による集団窃盗の一部には、強引な手口の犯行も目立ちます。ただ、多くのプロは、万引きの準備や手口が用意周到です。それらは一般客とほぼ同じ服装と行動をします。また、店舗の保安員や従業員の様子をうかがうため、数人のチームで活動する傾向があります。防犯タグの電波を遮断するために、アルミホイルで裏打ちされた大きな買い物バックや盗んだ商品を隠すために伸びるストッキングや靴下を活用することもあります。


 また、プロは換金可能な商品に詳しいといえます。盗品処分のいわゆる闇ルートでは、しばしば商品のブランド、サイズ、色といったものを指定して、盗んでくることを依頼することもあります。日本で爆買いの対象となっているような化粧品などは特に注意が必要です。さらに、そのようなプロは、さまざまな種類の犯罪から収入を得ている可能性があります。たとえば、薬物の売買や強盗、車両の盗難などにも手を染め、その犯罪歴も多いことが考えられます。したがって、先に述べたチームで万引きを行う場合に、逃走用の車両も盗難車や盗難ナンバーを付けた車両を利用することがあります。この種の犯行に、ナイフなどの武器を携行したり、暴力を振るったりすることも考えられるので、保安員なども身の安全に細心の注意を払う必要があります。


 プロの万引き犯の重要なもうひとつの側面は、進化した連絡情報網を整備していることです。店内の保安員を見つける技術や、簡単に万引きができる店舗、あらたな万引きの手口などは、驚くほどのスピードで独自のコミュニティに浸透すると考えるべきです。組織的な万引き犯同士の情報共有は、小売業者間の情報共有よりも優れているといわざるを得ません。ドラッグストアなど協会がイニシアチブを取って、同業者間における万引きなどの犯罪情報の共有を進めている例はありますが、多くの小売業者ではそのような取り組みは行われていないのが現状です。


 もうひとつの種類がアマによる万引きです。プロが職業的に万引きを行うことに対して、アマは自己消費や衝動的な理由で万引きを行います。プロの犯行と比べれば、1件あたりの被害額は小額です。ただし、店舗としてはこのような犯行が積み重なり、棚卸し時には無視できないロスのボリュームとなります。このタイプの万引き犯は、家計の予算がない、つまり買う余裕がない商品を盗む傾向がその多くを占めます。お金がないため、自己消費する商品、食料品や生活雑貨、化粧品や宝飾品などは狙われる商品の典型といえます。一方で、お金があるにもかかわらず万引きに手を染める人も少なくはありません。その極端な例は、クレプトマニア(窃盗症)です。必要でない物を盗んだり、明らかにサイズが違う衣料品を盗んだり、それらを売るつもりもなく、誰かのために使うわけでもなく、盗むこと自体を目的(脳が要求し、盗むことで脳に報酬が支払われる)にしており、自分でもその衝動を抑えることができず窃盗を繰り返すものです。元日本代表のマラソン選手が、万引きの罪の執行猶予中に、再度万引きで捕まり裁かれた例は記憶に新しいところです。


 手持ちのお金がないわけでもないのに、万引きをするということでは、高齢者の万引きが挙げられます。高齢者の万引きは、近年の社会問題として認識されています。東京都がまとめた「高齢者による万引きに関する報告書」によると都内の万引きの実態については、認知件数が14,574件と刑法犯認知件数全体の約1割を占めています。報告書では、万引きで検挙・補導された人員は、少年(6~19歳)1,725人、成人(20~64歳)4,905人、高齢者(65歳以上)2,760人であり、万引きの全件届出が徹底された平成22年以降は減少傾向にあります。しかしながら、その割合をみると、少年が減少している一方で、高齢者の割合が増加しています。さらに、万引きの再犯に目を移すと、高齢者の再犯率は58.7%と他の年齢層に比べてもっとも高くなっています。万引き再犯者における初犯の罪種が万引きという者が76%を占めていることとあわせて考えれば、万引きを防止していくには、そもそも手を染めさせないという点も重要ですが、再犯防止の取り組みが不可欠であることがわかります。


 高齢者による万引き取り組み強化や再犯防止の取り組みには、高齢者による万引きの要因を把握しておく必要があります。要因としては、経済的要因、身体的要因、周囲との関係性の3つが挙げられています。


 経済的要因の背景として、高齢期は定年退職や世帯構成の変化により、世帯月収が減少する傾向がありますが、統計上も所得に占める公的年金や恩給の割合が高く、その世帯所得は、現役世代の世帯所得と比較して低くなります。長寿化に伴い、退職後の期間が長くなり、将来の生活設計に不安を抱く高齢者も少なくありません。万引きの動機として「お金を払いたくないから」、「生活困窮」がそれぞれ3割を占めています。一方で、実際の生活保護受給者は2割程度であることから、真に「生活困窮」状態にあるものは少ないと思われます。つまり、購入するお金がないから万引きをするというより、将来的な不安から万引きに走るケースが少なくないと推測されます。


 身体的要因として加齢による心身の機能低下がある一方で、判断力や理解力など過去に習得した知識や経験をもとに日常生活に対処する能力は高齢期になっても衰えることがないと指摘しています。加齢による変化として、聴覚や視覚などの感覚機能や記憶の低下など認知機能の変化や障害、さらにそれが進行すると軽度認知障害など日常生活への影響や問題行動を引き起こす可能性も指摘しています。このような加齢による身体的な変化が万引きに及ぼす影響は、ごく一部を除いて、要因としてはあまり説得力を持つものではないと思います。


 3つ目の周囲との関係性についてですが、万引き被疑者のうち、「独居」は56.4%、「交友関係いない」が46.5%を占めています。周囲に家族や友人だけでなく、サポートしてくれる人がいない状況から社会関係性の欠如による孤独や不満、ストレスが問題行動へと発展するという指摘は、日本社会の抱える問題としても捉えるべきでしょう。高齢社会問題と万引き問題は、同源の問題であり、犯罪者本人を罰するだけではその効果は限定的であり、根本的な解決に至らないというところに、この問題の本質があります。


 「自分の意思ではやめられない」というセルフコントロールが効かない常習者に対しては、治療が有効です。これは、薬物常習者への対応と共通しています。しかしながら、常習者は自ら進んで治療を受けないことも共通であるため、複数回逮捕されたときの治療的なプログラムを整備しておくようなフォーマルな対策は有効と考えられます。また、別の視点では、被疑者の人たちは生活で「家族や親しい友人と交流すること」の必要性を挙げていることから、万引きからの脱却はインフォーマルな支援が重要な手がかりとなり得ることを示しています。


 実は詳細までみていくと、万引き犯を明確に分類することは難しい一方で、万引きの動機や手口、盗まれる商品を把握することによって、万引きを抑止し管理することは可能です。また、時代によって万引きの実態も変化し続けています。自社、自店で起こっている万引きの典型を理解することは、ロス問題の診断において重要です。ロス問題の診断が詳細に行われれば、費用対効果や優先順位を考え合わせた防犯体制の構築につながります。

食品ロス削減へ、本格化する取り組み

 まだ食べられるのに捨てられてしまう食品ロスの問題は、深刻化しています。農林水産省食品産業局が公表(更新)した「食品廃棄物等の発生量(2016年度推計)」によると食品由来の廃棄物等のうち可食部分と考えられる量、いわゆる「食品ロス」は、事業系廃棄物と家庭系廃棄物を合わせて643万トンにのぼります。これは国際機関による途上国への食糧支援量の約2倍に相当します。関係省庁が連携して食品ロス削減の取り組みをしていますが、前年度に比べて「食品ロス」は、3万トンしか減っておらず、削減率はわずか0.5%です。家庭系の食べ残しや廃棄などの「食品ロス」に至っては、2万トン増加しています。このような状況を改善するためか、食品ロスを減らすための基本政策を盛り込んだ「食品ロス削減推進法案」が今国会で成立しました。政府には食品ロス削減に関する施策を実施する責務があると明記し、基本方針づくりを促し、都道府県と市町村には推進計画作成を求める内容です。


 恵方巻きの廃棄など「食品ロス」のやり玉に挙げられているコンビニエンス・ストア(コンビニ)では、逆に対策が進みつつあります。ローソンは、売れ残った弁当やサンドイッチ、揚げ物や惣菜などを売り切るために20時以降に値引き販売を推奨し、本部としては積極的な取り組みを展開してきました。従来、コンビニは定価販売を原則としており、スーパーマーケット(スーパー)のような値引きによる売り切り策を導入していませんでした。むしろ、ブランドを毀損するとして値引き販売を制限してきた歴史があります。その方針を大きく転換したのがセブンイレブンです。セブンイレブンは、弁当など消費期限の近づいた食品の購入者にポイントを提供する還元策を今秋から全店で開始すると発表しました。実質的な値引きによりなるべく売り切り、廃棄される食品を減らすことが狙いといいます。前述の「食品ロス削減推進法案」が今国会で成立したことも方針転換と無関係ではないかも知れません。これまで同社は、値引き政策には積極的ではありませんでした。過去に見切り販売制限訴訟に本部が敗訴し、苦肉の策で廃棄商品原価の15%を支援する制度を導入した経緯もあります。廃棄を前提とした圧倒的な品揃えを競争優位の源泉として成長した成功体験は強固です。ただ、値引きシール添付による現金値引きではなく、消費期限が4~5時間に迫った弁当、おにぎり、生麺などを購入すると、本部負担のポイントを還元するといいます。購入者に付与するのは電子マネー「nanaco(ナナコ)」のポイントで、現状の5倍(100円で5ポイント)程度を還元することなどを検討しています。購入者から見れば事実上の値引きに当たりますが、同社は「あくまでも、値引きではない」と説明しています。


 さらに、対策は製造段階や容器・包装の工夫により消費期限を伸ばす取り組みに発展してきています。ファミリーマートは、惣菜などのパックに窒素ガスを充填したトップシール商品を拡充しています。窒素ガスで酸化を抑え、消費期限を従来よりも3日間長い5日間としました。また、セブンイレブンはサラダの野菜を入荷から製造まで一貫して4℃以下に管理することで販売期限を1日伸ばし、廃棄を2%減らしたといいます。


 また、経済産業省はIoTを活用した「スマートサプライチェーン実証実験」を2019年2月に行っています。コンビニやドラッグストアなどの一部の商品にICタグを付けて、消費期限が近い商品程、LINEポイント還元を多くするポイント還元型のダイナミックプライシング実証実験をしています(LINEアカウント通知を利用した現金値引き型の実験も平行実施)。


 コンビニ大手は、廃棄の原価という経費は加盟店負担という会計の枠組みを変えることなく、ポイントを活用しマーケティングを強化しながら食品ロスを削減するという本部にとっては一石二鳥の策を打ち出しているといえるでしょう。ただ、ポイント還元額が、購入者にとっての経済的メリットは限定的との見方もあり、効果の検証が必要と思われます。

「特定技能」、資格試験応募殺到で受験できない

 外国人のあらたな在留資格である「特定技能 (*1)」が4月より運用が始まっていますが、東京と大阪で実施したその資格試験は予想を上回る応募があり、希望しても全員が受験できない状態となりました。4月25日に実施された外食の資格試験では、当初定員を340名としていましたが、3月の募集開始の時点から応募が殺到し、1日足らずで枠が埋まってしまい、約千人が受験できるように追加枠を準備したといいます。それでも、まだ十分には足りないようです。今月の24日から28日に札幌、名古屋、福岡などの7都市で2千人規模の試験が実施される予定です。合否は7月下旬の発表です。


 4月の特定技能試験では、460人が受験し(キャンセルに経済的ペナルティがない制度から未受験者も多かった=本当に受験したい人が受験できなかった)、347人が合格、合格率は75.4%という結果でした。上位の国別ではベトナムがもっとも多く203人、次いで中国が37人、ネパールが30人となっています。合格者は、日本語技能に関する試験への合格と企業との雇用契約などの条件が整えば、在留資格を得ることができます。制度の特徴としては、国内に在留している外国人だけでなく、海外から採用するケースを想定していることも挙げられます。


 また、外国人労働者の受け入れ機関となるためには登録のための基準(1)(2)と支援機関の義務(3)(4)の4つの要件を満たす必要があります。

  • (1)報酬額が日本人と同等以上であるなど、外国人労働者と結ぶ雇用契約が適切であること。
  • (2)過去5年以内に入管法や労働法令への違反がなく、受け入れ機関自体が適切であること。
  • (3)外国人労働者が理解できる言語でなど、支援体制が整っていること。
  • (4)生活オリエンテーションなどを含む、外国人労働者を支援するための計画が適切であること。
  • (1)(2)を怠ると登録を取り消されることがあります。
▼法務省HP


 あらためて特定技能資格について確認してみましょう。これは、改正出入国管理法に基づくあらたな在留資格です。人手不足が深刻な14業種で、即戦力となる外国人に認められる在留資格です。日本語能力と技能の試験に合格すると最長5年間働けるビザを取得できるというものです。これまでは、飲食店やホテルが外国人を雇用しようとする場合、留学生を資格外活動として認められる週28時間の制限下でアルバイトとして採用するか、「技術・人文知識・国際業務」のビザを取得させるかしかありませんでした。ただ、このビザは高い専門性が要求され、取得要件が厳しく現実的ではありませんでした。

 先に述べたように、政府は海外での試験を増やす方針ですが、現時点で試験開催に必要な協力覚書を交わしている国は、フィリピンとネパール、ミャンマー、カンボジア、モンゴルの5カ国にとどまっています。人材供給元として期待しているベトナムとは交渉が想定どおりに進んでいません。モスフードサービスは試験を見込んで、子会社を通じてベトナム人受験生を20人強あらかじめ確保していましたが、そのような想定外の事態に見舞われ、受験生は日本語学校などに通ってもらっているといいます。


 労働集約的なサービス業ではすでに多くの外国人アルバイトなどが働いています。居酒屋などの外食では、厨房の担当者や店長など社員格の人手不足も深刻です。あらたな資格制度は、そのような産業にとって問題を解決するひとつの手段として、制度活用に真剣に取り組んでいる企業も少なくありません。また、受け入れ企業の体制整備は、制度活用の土台となるため、誠実な努力をしていく必要があります。技能実習法に基づく、技能実習制度では、受け入れ企業側の制度への理解不足から単に安い労働力として実習生を扱うなど社会問題にも発展しました。ただ、特定技能制度自体が認知されていないとの声も多く、学校や外国人への情報提供に注力し、制度の正しい理解を促進することが、行政に求められます。

ロスマイニング®・サービスについて

 当社では店舗にかかわるロスに関して、その要因を抽出して明確化するサービスを提供しております。ロスの発生要因を見える化し、効果的な対策を打つことで店舗の収益構造の改善につなげるものです。


 ロス対策のノウハウを有する危機管理専門会社が店舗の実態を第三者の目で客観的に分析して総合的なソリューションを提案いたします。店舗のロスに悩まされてお困りの際には是非ご相談ください。



【お問い合わせ】
株式会社エス・ピー・ネットワーク 総合研究部
Mail:souken@sp-network.co.jp
TEL:03-6891-5556


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(*1)特定技能1号:特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
特定技能2号:特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
特定産業分野:介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設・造船工業、航空、宿泊、漁業、飲食料品製造業、外食業 本文へ戻る

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