専門家の集まるBCPカフェ

多発するゲリラ豪雨・線状降水帯~企業と個人が備えるべき事は

2026.10.27
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エス・ピー・ネットワークのBCP担当者たちが、最近起きた事象や気になったテーマを座談会形式でざっくばらんに語り合う「BCPカフェ」。個人の防災から職場のBCPまで、様々なテーマについて、企業のBCPご担当者のヒントになるよう、わかりやすく話し合います。

本日の参加者
大越 記者、広報担当、企業の危機管理専門誌編集長等の経験を経て現在はBCP策定コンサルタント。災害のみならず感染症、海外危機管理、危機管理広報などの様々な分野を担当する。
永橋 損保会社等にて、防災・リスクマネジメント・危機管理等の実務経験を経て現職。災害のみならずERM(全社的リスクマネジメント)や情報セキュリティ等の幅広い知見を持つ。
安藤 元国家公務員。医療系の独立行政法人や中央官庁に勤務し、当社に転職。HRリスクマネジメント、内部通報・公益通報、情報セキュリティ、コンプライアンス等を冠した業務に従事し、ついに今春、BCPの業務にも参画。社会保険労務士。
植野 前職では保育士として防災教育を実施。現在はBCPについて勉強中。防災士。
田中 災害後のケアにも関心があり目下勉強中。臨床心理士/公認心理師。
奈須 HRリスクマネジメント、広報担当。BCPの業務に参画したばかりで、BCPカフェも今回が初参加。
笹嶋 前職では防災関係の研究機関で広報対応に従事し、現在は広報の他BCP策定・見直しや訓練・演習の支援を実施。今回の座談会の進行を担当します。防災士。

【1分でわかる今回のポイント(まとめ)】

  • 土と混じった水は多くの細菌が存在し安全ではありません。雨などで冠水している場合はなるべく水に近寄らないようにしましょう。
  • 膝の下あたりまでの高さの長靴を準備しておくと避難に有効。膝丈の長靴でも防げないようなくらい冠水していたら外に出ないようにしましょう。
  • 最近の大雨は急激に降ってくる場合があります。天気が悪いと事前にわかっている時には線状降水帯情報や、気象庁、自治体などの気象に関する情報収集を欠かさないようにしましょう。
  • 事前に自治体にある土砂災害に関するハザードマップで土砂災害区域を確認しておきましょう。近くにある場合は、会社や家族で大雨時の話し合いをしておき万が一の土砂災害に備えましょう。
  • 会社や自宅に関する水害のハザードマップを確認して、状況判断が行えるよう家族などとも話し合っておきましょう。
  • 電車が運休になるなどいざとなったら会社に残るのも選択肢です。その場合は地震の際にも使用する備蓄品を配るなどして対応しましょう。

冠水した水は「ただの雨水」ではない?

笹嶋: 今回から、奈須さんが新たにBCPカフェに参加いただく事になりました。よろしくお願いします。
奈須: よろしくお願いします。
笹嶋: 8月は千葉豪雨や石川、富山、福井に、9月は愛知、岐阜などの東海地方に、台風に加えて集中豪雨による災害が多発しました。線状降水帯という言葉もよく聞くようになりました。6月には防災気象情報が新しくなるなど雨に関する話題が今年は多くあり、そうした事をテーマに今回は話していきたいと思います。
早速ですが、奈須さんのお住まいは大雨に対して安全ですか。
奈須: 今年の大雨でも特に影響はなかったので、安全だと思います。ただ数年前の大雨の時、側溝に段ボールが被さって道路が冠水気味になったことがありました。安心だと思っていても、ゴミ一つで状況が変わってしまうんだなと怖い思いをしました。
笹嶋: 冠水と言えば先日の豪雨の際、動画配信者の方が豪雨の際に冠水した水で頭を洗った結果、高熱と体調不良になり病院に行ったら細菌感染していたというネットニュースがありましたね。改めて、冠水した水は危険だと感じました。
大越: 土の中には破傷風菌とか多くの細菌がいるんですよ。だから冠水した泥水は決して安全ではありません。小さな傷からその配信者のように感染することもあります。
▼破傷風についてのお知らせ(厚生労働省)
笹嶋: よくニュースで、膝あたりまで冠水している中をどうにか歩いて移動しようとしている映像を見ますが、可能であれば、避けた方が良いですね。
大越: 「水害が発生したら長靴よりスニーカーを」という主張が時々ありますが、基本的に私は止めた方が良いと思っています。もしスニーカーで移動中に、少しでも傷がついてしまうとそこから細菌が入ってきてしまうので。昔から言っているのですが、土の中には危険な細菌がたくさんいるという事はみなさん覚えておいてほしいですね。
笹嶋: 「長靴よりスニーカーはおススメしない」という話ですが、もう少し詳しく教えてください。
大越: 皆さんが想像する、子供が良く使っているくるぶしくらいまでしか覆わない長靴は、もちろん水害時や津波の避難に使うことは良くないと思います。水が入って重くなるだけですから。ただ、よく防災仲間で取り上げられる「日本野鳥の会」の長靴など、丈が膝下くらいまであって、上が絞れるタイプなら十分水害時の避難に使えると思います。もし膝下以上に水が浸水している場合には外に出ない。というのが鉄則です。
奈須: レンコン農家さんがレンコンを取るときの長靴みたいですね。
大越: そうそう。田植え用長靴とかも優秀ですよ。何が良いかと言うと田植えに使う用だと泥にはまっても抜けやすい。これも上を縛れるものが良いです。あと、日本野鳥の会の長靴の良いところはコンパクトに折りたたんで持ち歩きができるので、野外のフェスやキャンプなどにも持っていったりします。
田中: 私も野外イベント用に長靴を探したことがあって、私は「KiU」というメーカーで、丸めて持ち運べるパッカブルレインブーツを使っています。上記に比べるとややお値段はしますがデザインが好みでした。機能性と見た目を見比べて選ばれるのも良いと思います。

【ポイント】

  • 土と混じった水は多くの細菌が存在し安全ではありません。雨などで冠水している場合はなるべく水に近寄らないようにしましょう。
  • 膝の下あたりまでの高さの長靴を準備しておくと避難に有効。膝丈の長靴でも防げないようなくらい冠水していたら外に出ないようにしましょう。

最近の豪雨から見る想定外

大越: 千葉豪雨で話題になりましたが、大雨警報から15分で冠水したというニュースには驚きました。これまでの警戒レベルは台風を想定して作られていたので予測が難しい世の中になってきていると思いますね。
植野: これが銚子地方気象台の千葉豪雨に関する資料なのですが、大越さんの言う通りで大雨注意報や大雨警報が出たのが本当に急なんですよね。
千葉県の市川市は大雨警報(レベル3)になったのが8月13日16時9分なんですが、20分もしない16時27分には避難が必要な大雨危険警報(レベル4)が出ているような状態だったんです。その後、19時30分に大雨特別警報(レベル5)になりました。
大越: 最近の水害の場合、警戒レベルが機能していないのがいかんともしがたい面はあるのですが、気象庁では線状降水帯の情報が出ていて、半日前予測、直前予測、発生情報と段階的に出るようになっています。長雨から急な豪雨に変化した時などはこちらを参考にしていくのが良いのかなと思います。
植野: 他には富山県での豪雨の時、富山地方気象台の資料を見ると、富山県高岡市の大雨は8月22日22時22分に大雨注意報(レベル2)、30分に大雨警報(レベル3)、47分にはもう大雨危険警報(レベル4)になっているんですよね。数分単位でどんどん変わっていくのが最近の大雨なのかなと思います。
笹嶋: その後は愛知などでも豪雨が続きました。
永橋: 名古屋で繁華街の栄近辺が冠水しましたね。報道だとかなりの深さになったようです。
笹嶋: あまりにも繁華街が冠水している映像が流れてきて私はAIで作られたのかと疑ってしまいました。それくらい街が冠水していた。
大越: 2000年の東海豪雨でも名古屋の地下鉄が被害を受けましたが、水害に弱いイメージがありますね。
安藤: その時に大変な事になったので、今の名古屋では排水機能を充実させていて、市内は冠水もしましたが、冠水が解消するのも早かったとニュースで見ました。当時から5倍以上に貯水能力が増えたそうです。今回は功を奏したと言えるのではないでしょうか。
大越: セミナーなどでも言うのですが「一時間あたり30~50ミリの雨」というのがひとつの大雨の目安だと考えると良いと思います。
植野: これまでBCPカフェでは触れられなかったので、この機会に雨量について紹介したいと思うのですが、まさに大越さんの言うように一時間あたり50ミリの雨というのは「バケツをひっくり返したように降る」ので注意が必要です。でもこの図で見るような50ミリの雨って最近多いですよね…。

出展:気象庁

奈須: 安藤さんが地下の貯水の話をしていたのでお話すると、東京で大雨になるたびに話題になる「首都圏外郭放水路」について調べたところ、毎年平均7回くらいは開放されているようです。
永橋: 年平均7回は多いですね。
奈須: 多くて年12回稼働していたようです。結構知らないうちに動いていますね。団体・個人でも防災地下神殿の見学ができるようです。
田中: 話題になったのは2019年の台風だったかと思うのですが、あそこで一気に知名度が上がった印象がありますね。

【ポイント】

  • 最近の大雨は急激に降ってくる場合があります。天気が悪いと事前にわかっている時には線状降水帯情報や、気象庁、自治体などの気象に関する情報収集を欠かさないようにしましょう。

雨とともに注意が必要な土砂災害

大越: あまりメジャーではないかもしれませんが、大雨の場合、土砂災害にも気を付ける必要があります。「土砂災害の前ぶれを知る」というのがありまして、例えば『川の中でゴロゴロという音がしたり、火花が見えたりする。』ってどういうことかわかりますか。
▼土砂災害の前触れを知る(特定非営利活動法人 土砂災害防止広報センター)
安藤: 石と石が当たるからですか。
大越: そうなんです、川の石が転がって来て、石同士で当たることで、川で火花が見えることがあるそうです。
安藤: 火打石みたいな感じですね。
大越: 後は前触れとして『異常なにおい』がするというのもあげられます。これは土の中のガスなどが漏れ出てくるそうです。なので異臭が出るのは土砂災害の前ぶれとは言われてますね。
笹嶋: 私もこうした前触れの現象を耳にした記憶はありますが、これを聞いて思うのは、おそらく雨が降っているので部屋を閉め切っていると思うんです。異臭がするとか、音がする、小石が落ちてくるとかというのは正直家にいると中々わからないと思っていて。大雨で、嵐が過ぎるのを家で待っていたら土砂災害にあってしまう、というのが起きますよね。
大越: なりますね。調べてみてほしいのですが、日本全国で土砂災害警戒区域は約72万か所あると言われています。
永橋: 自治体も場所は把握していますよね。
大越: 把握していますが、ハザードマップで場所を示して注意喚起をするくらいで対処できないんですよね。我々も自分たちの関係する場所のハザードマップを日頃から見て、土砂災害危険区域の近くなら自分の身は自分で守らないといけないなとは思っています。
笹嶋: 土砂災害はいざ自分の生活圏内の近くに山などがないと、中々関心を持てないかもしれませんが、このコラムを見ている方は都市部にいる方だけではありませんし、生産拠点の敷地が山の近くにある、という企業様もあると思います。
ただ、拠点の近くが土砂災害危険区域だった、とわかってもどうしたら良いんでしょう。最終的には住まないようにしよう、移転しようみたいな話になってしまうんでしょうか。
大越: これは答えがないですね。その場合はまず一回、会社の偉い人たちがシミュレーションしてみるというのが大事です。それでどうしようかと考える機会を作ること自体が大事なんだと思います。

【ポイント】

  • 事前に自治体にある土砂災害に関するハザードマップで土砂災害警戒区域を確認しておきましょう。近くにある場合は、会社や家族で大雨時の話し合いをしておき万が一の土砂災害に備えましょう。

急な豪雨、企業は社員を帰宅させるべきか

田中: 今年は水害に関するご相談が増えました。相談内容は大きく分けると二つあって、一つは「従業員を会社から帰宅させる場合、どのタイミングで帰す指示を出せば良いのか」。例えば線状降水帯が3時間前に予測できた場合その時点で帰すのか、警戒レベル3になったら帰すのか。
もう一つが「(雨がひどくなり)帰宅困難な状況になってしまった場合どうするべきか」。帰宅できる状況の時に指示を出せると望ましいですが、急激に雨量が増え、帰宅困難な状況になった場合、会社としてどうするべきか。この二つを考えていかないといけないなと思っています。
大越: 数十分であれだけ状況が変わってしまうとなると難しいですよね。例えば8時とか9時とかまで残ってていいよ、と会社にいてもらうというのが現実的な気もしますね。
田中: 内水氾濫についても知っておく必要があると思います。内水氾濫は厳密に言うと2つあるのですが、ここでは短時間の激しい大雨で生じる氾濫について話します。簡単に言うと、短時間の激しい大雨などによって下水道や排水路の排水能力が追い付かず、道路や低い土地に水が溢れてしまう状況です。近くに川がないのに浸水したケースが今回の豪雨でもありました。内水ハザードマップを洪水ハザードマップと一緒に掲載している場合もあれば、別に作成している場合もあるので、一度確認しておくと良いのではないでしょうか。
大越: そうですね。内水氾濫、外水氾濫、高潮など全部を把握している人は意外と少ないですから。
田中: 個人的に、内水氾濫のエリアだと知っていて被害を受けることと何も知らないで被害を受けることはやはり違うだろうと思います。できる備えもあるでしょうし、リスクを知っておけば、例えばそういった場所に会社がある企業は線状降水帯の予測が出たタイミングで従業員を帰宅させることができるかもしれません。判断の一助にはなるのかなと。
安藤: 難しいのは、東京とか交通が弱いじゃないですか。なので「危ないから帰れ」と言われても、すでにその時点で交通がマヒしていて帰れない人も出てくるような気もしています。
奈須: 東京の交通の弱さで言うと、先日の大雨の日の帰宅時に、バスの出発が30分以上遅れていました。そこまでザーザー降っていたわけでもなく朝のラッシュでもないのにすごく並んで、かなり待ちました…。
笹嶋: 近くに川が流れていたとかでは無いんですね。
奈須: 単純に渋滞で遅れたのかな?と思いますが不明です(笑)。
大越: 本当に難しいと思います。なので先程も言いましたが会社に残っても良いですよ、というアナウンスをしても良いんじゃないかと思います。そのまま会社に1日泊まっても、おそらく地震に備えて備蓄は用意しているはずなので。
それこそ今後、帰り際18時くらいに、線状降水帯でどこもかしこも大雨になっているという状況なら、帰りたい人は帰っていただいて大丈夫だけれども会社にそのまま残ってて良いという案内をするのは一つじゃないかと思います。

【ポイント】

  • 会社や自宅に関する水害のハザードマップを確認して、状況判断が行えるよう家族などとも話し合っておきましょう。
  • 電車が運休になるなどいざとなったら会社に残るのも選択肢です。その場合は地震の際にも使用する備蓄品を配るなどして対応しましょう。

まとめ

笹嶋: そろそろまとめたいと思います。線状降水帯から土砂災害から長靴まで色々テーマが出てきて、この回をどうやってまとめましょう。
永橋: 個人的には、外郭放水路の話もありましたが神田川の地下調節池など、都内や関東近郊の治水施設などを紹介していく事で意識を醸成していくのも良いのではないかと思います。
大越: まず、みんなで一度シミュレーションをしてみましょう、という話になるのではないでしょうか。この手の話は工場の立地や有無などで会社によって事情が違うので、一度きちんと集まって方針を話し合ってもらうのをおススメします。
田中: 最後に少しだけいいですか?個人で出来ることは何かと考えた時、個人的に雨の日にあってよかったと思ったのが、カバンが入るサイズのゴミ袋を1個持っていたことです。
以前、傘が役に立たないような大雨の中をどうしても移動しないといけない時があり、レインコートを着て、カバンをゴミ袋で包んで移動しました。屋内に入ったら、濡れたゴミ袋を裏返して、レインコートを入れたあと袋を結んでしまえば拭く作業もあまり必要がなく持ち運べたので便利でした。ゴミ袋のサイズが大きいと汎用性が効きますので20リットルくらいのが1個あっても良いと思います。
大越: 素晴らしいと思います。
笹嶋: ありがとうございます、最後のゴミ袋は日本全国どこでも役に立つと思いますのでぜひコラムに入れたいと思います。奈須さん、今回初参加ですがいかがでしたか。
奈須: さまざまな意見を伺えて、勉強になりました。
笹嶋: 今後もこうした座談会を通じて防災やBCPについて見識を深めていただければと思います。本日はお集まりいただきありがとうございました。

※「BCPカフェ」では、エス・ピー・ネットワークのBCP担当者たちに扱ってほしい防災・BCPに関するテーマを随時募集しています。

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