暴排トピックス

コンプライアンスやリスク管理に関するその時々のホットなテーマを、現場を知る
危機管理専門会社ならではの時流を先取りする鋭い視点から切り込み、提言するコラムです。

2012年を振り返って~2013年の展望とあわせて(2012.12)

 既にご案内の通り、ご好評頂いている「Quickスクリーニング・システム」につきまして、新たに法人検索機能を追加したサービスをリリースいたしました。個人検索とあわせ、反社チェックツールの決定版と言える本サービスを是非ご活用頂ければ幸いです。

 また、当社では、今月中に「SPNレポート2012~企業における反社会的勢力排除への取組み編vol.2」をリリースする予定としております(なお、これまでのレポートについては、当社HP「SPNレポート」にてご覧頂けます)。

 詳細はあらためてご案内させて頂きますが、皆さまにご提供して参りました暴力団排除に関する情報について、この1年あまりの内容をあらためて再編集したもので、2012年の反社会的勢力や企業の取組みの動向をダイジェストで振り返ることができ、最新の企業実務に役立つものとなっております。

 今年1月に当社から出版させて頂いた「ミドルクライシスマネジメント~内部統制を活用した企業危機管理vol.1反社会的勢力からの隔絶」の追補版とも言える内容となっておりますので、是非ご一読頂ければと思います。

1.2012年を振り返って~2013年の展望とあわせて

 さて、2012年も残すところあとわずかとなりました。

 企業においては、昨年の暴力団排除条例の全面施行の前後から意識にも変化の兆しがみられ、暴力団排除、反社会的勢力排除の取組みが本格化してきたと言える1年間だったと思います。

 一方で、その裏返しとでも言うべき暴力団の企業や市民への威嚇が続き、不安感や動揺が広がる状況を作り出しています。また、その手口の巧妙化や潜在化の傾向も強めるなど、暴力団等の反社会的勢力による反応はさらに先鋭化している状況です。さらには、いわゆる「半グレ集団」と呼ばれる暴力団対策法の規制外にあって非合法ビジネス等を展開する勢力も(暴力団の潜在化とは対象的に)台頭してきた、といった点がこの1年の顕著な動向であったように思います。

 そして、危険水域に達したこれらの状況への対抗策として、異例のスピードで暴力団対策法が改定され、暴力団の活動に対する規制がさらに強化された点も、暴力団排除にとっては大きな動向だったと言えるでしょう。

 さて、これらの一連の動きは、「『暴力団』という組織を枠に嵌めて規制することの限界」という視点で説明できるように思われます。

 企業実務にとっては、排除すべき対象が「データベースに登録のある暴力団員等」だけではなく、「関係をもつべきでない相手」としての「反社会的勢力」であって、より総合的な視点からの判断が求められているということでもあります。そもそも、「反社会的勢力」とは、本質的に不透明な存在であり、その内容は時代とともに変質していくものでもあります。

 2013年は、企業実務にとっても、見極めのための「目利き」のさらなる深化が求められ、実際の関係解消が現実に起こりうる「排除実務」に直面する年になるのではないでしょうか。

 皆さまにおかれましても、現状に満足することなく、「一歩先を行く危機管理」を実践して頂ければと思います。

2.政府指針アンケート(平成24年度版)

 先日、警察庁や全国暴力追放運動推進センター、日弁連民事介入暴力対策委員会が定期的に行っている「『企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針』(政府指針)に関するアンケート」の平成24年度版が公表されました。

▼警察庁 平成24年度「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」に関するアンケート(平成24年11月15日)

 今回は、この政府指針アンケート(以下「24年アンケート」)結果について分析を加えることで、企業の反社会的勢力排除の取組みに関する「今」を考察したいと思います。

 なお、平成22年にも同様の調査が実施されておりますので、「22年アンケート」として、24年アンケートとの比較も試みたいと思います。

▼警察庁 平成22年度「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」に関するアンケート

1)不当要求への対応について

 24年アンケート結果によれば、暴力団など反社会的勢力から過去5年間に金品や契約を不当に要求された企業のうち18.4%が不当要求に応じており、22年アンケート(21.8%)からほとんど減っていないことが明らかになりました。また、不当な要求を迫られた企業は回答企業2,885社の12%にあたる337社あり、支払った金額は100万円未満が49社、100万円以上1000万円未満が7社、1000万円以上が3社という結果となっています。

 政府指針の認知度(77.4%)や暴力団排除条例(暴排条例)の認知度(88.8%)の高さの割にこのような結果となったのは極めて残念であり、取組みの実効性という意味ではまだまだ十分ではありませんし、そのような脇の甘い企業の存在が反社会的勢力に活動の余地を与えてしまっていることの意味は大きいのではないでしょうか。

 また、「不当要求の相手方の属性について」「不当要求の相手方の自称について」の設問項目(複数回答)についても、22年アンケートでは圧倒的上位であった「えせ同和」「えせ右翼」「暴力団員」が大きくその割合を減少させ、「暴力団員でないが何らかの関係を有する者」からの要求(43.0%)、あるいは「貴社からサービスの提供を受けた者」「近隣住民」「善意の第三者」などと名乗って要求(合算で65.6%)が大きく増えていることが明らかになっています。言うまでもなく、暴力団等反社会的勢力の不透明化の進展の結果であり、自らの属性を隠しながら「グレー」な存在として企業にアプローチする手法に変えている実態が窺われます。

 さらに、「不当要求の態様について」(複数回答)をみると、「因縁を付けて金品や値引きを要求」(39.2%)「物品購入やリース契約を要求」(32.6%)「寄付金、賛助金、会費等を要求」(19.6%)が上位である点は22年アンケート結果と変わらないものの、その割合が大きく減少し、一方で「その他」が大きく増加していることが特徴であり、手口が様々に多様化している実態も窺われます。

 その他、「不当要求の手段について」(複数回答)をみると、「固定電話」(52.5%)の割合が大きく減少し、「反社会的勢力との直接の接触(面会等)」(51.0%)が代わって大きく増えている点が気にかかります。反社会的勢力かどうか判然としないまま相手方の要請に応じて直接的に接触してしまうケースが増えていることが窺え、反社チェックの実施のタイミングや対応要領の見直しと社内周知の徹底の重要性が増していると言えます。

 また、「不当要求への対応状況について」(複数回答)では、「代表取締役等のトップ以下、組織として対応した」(47.3%)「警察等の外部の専門機関と連携して対応した」(44.2%)「反社会的勢力対応部署が対応した」(34.7%)「不当要求対応マニュアルに沿って対応した」(31.2%)などの項目が22年アンケートに比べて大きく増えており、対して「担当者のみで対応した」(22.6%)が大きく減少していることからも、「組織的対応」が浸透しつつある状況が窺えます。

2)暴力団排除条項(暴排条項)

 政府指針や暴排条例施行に伴う取組みを行ったとする企業(61.5%)の取組み内容(複数回答)のトップにあげられていたのは「契約書等に暴力団排除条項を盛り込んでいる(または盛り込む予定である)」(79.8%)であり、他の項目と比較しても特に多くなっています。なお、暴排条項については、22年アンケートにおいても66.8%を占めており、取組みが進展している状況が窺え、もはや必須の取組みであるとは言え、全体に対する割合からいえばまだ49.1%に過ぎず、今後も重点的に取り組まれるべき課題だと言えます。

 そのうえで、暴排条項の導入時期について詳しく見ると、平成22年以前に導入した割合が47.8%、平成23年以降(予定も含む)が48.0%とほぼ同率となっており、意外に早い時期から導入している企業が多いという結果になっています。

 ただし、注意する必要がある点として、平成22年以前に導入した暴排条項については、「共生者」や「元暴力団員」を排除すべき対象として明記されていない可能性が高く、現時点における排除実務上、問題が少なくないということがあげられます。

 警察庁の「暴力団等排除のための部外への情報提供について」(内部通達)が平成23年12月に改正され、「共生者」「元暴力団員」「社会的に非難されるべき関係にある者」等についての情報を事業者に提供することも可能になりましたが、実際の契約書面においてそれらを排除できる状態になっていること(暴排条項にそれらが排除対象として盛り込まれていること)が実務上その要件のひとつとなっており、政府指針ベースの暴排条項では警察から十分な情報を提供されないことも考えられます。

 この点は、いち早く暴排条項を導入した企業ほど陥りやすい盲点であり、変化する社会の要請を見誤ることなく、その変化に柔軟に対応していく必要があると言えます。

 その他、「不当要求の手段について」(複数回答)をみると、「固定電話」(52.5%)の割合が大きく減少し、「反社会的勢力との直接の接触(面会等)」(51.0%)が代わって大きく増えている点が気にかかります。反社会的勢力かどうか判然としないまま相手方の要請に応じて直接的に接触してしまうケースが増えていることが窺え、反社チェックの実施のタイミングや対応要領の見直しと社内周知の徹底の重要性が増していると言えます。

 また、「不当要求への対応状況について」(複数回答)では、「代表取締役等のトップ以下、組織として対応した」(47.3%)「警察等の外部の専門機関と連携して対応した」(44.2%)「反社会的勢力対応部署が対応した」(34.7%)「不当要求対応マニュアルに沿って対応した」(31.2%)などの項目が22年アンケートに比べて大きく増えており、対して「担当者のみで対応した」(22.6%)が大きく減少していることからも、「組織的対応」が浸透しつつある状況が窺えます。

3)反社チェックおよび反社データベース

 暴排条項の取組み以外では、政府指針や暴排条例施行に伴う取組みを行ったとする企業(61.5%)の取組み内容(複数回答)のうち、「取引相手等が反社会的勢力かの審査を実施」(32.6%)「ネット等を利用して相手が反社会的勢力か確認」(18.6%)「反社会的勢力情報を集約したデータベースを構築している」(21.0%)「反社会的勢力のデータベースを業界等と共有」(12.1%)といった項目の数値がかなり低い点も気になります。しかも、22年アンケートの結果と比較しても、横ばいがむしろ低下している結果となっています。

 一方、24年アンケート回答企業の内訳(業種)を見ると、「銀行」「保険・証券」「その他金融業」の合計が15.2%であり、これらが反社チェックを組織的に実施しているのは当然のことであることをふまえれば、それ以外の業界においては反社チェックの実施率(普及率)は相当低いのではないかという懸念があります。ただし、ほとんどの企業が、取引先等について何らかの形で与信管理やネット等で基本情報を収集していると思われますので、その取組みを少しだけ工夫することで反社チェックにも応用できることを考えれば、むしろ反社チェックの「視点」(反社チェックのあり方・考え方)そのものへの理解がまだまだ不足しているのが実態だと言えるのでないでしょうか。

 また、「反社会的勢力情報を集約したデータベースを構築している」と答えた企業373社について、情報の蓄積件数をみると、「10万件以上」が24.9%(93社)と4分の1を占める結果となっていますが、「100件未満」にとどまる企業も17.7%(66社)と多く、回答企業における金融機関のウエイトを考慮すれば、その数値の意味するところは異なってくると思われます。

 このように、24年アンケート結果を見る限り、反社チェックを巡る取組み実態については、金融機関の取組み状況を考慮した場合、数値が示している以上に深刻だと捉える必要があるのです。

4)その他

 政府指針や暴排条例施行に伴う取組みを行ったとする企業の取組み内容のうち、「関係遮断について社の内規に明文規程を設定」(35.9%)の結果については、22年アンケートから10%ほど減少しています。アンケート実施対象が異なるため単純な比較はできませんが、少なくとも、明文化された企業姿勢やルールを備え、内部統制システムに明確に位置づけて取り組んでいる企業がまだまだ少ない状況が窺えます。

 さらに、警察の暴力団情報提供制度について知っていた割合が6割弱であるという結果や、実際に暴排条項に基づいて排除を行った企業が暴排条項導入企業の約1割(全体の4.6%)であったとされている点については、金融機関を中心に排除実務が淡々と進められていることを窺わせるものであり、今後ますますの浸透や実務の深化を期待したい部分です。

 一方で、各種の取組みを実施しない企業も一定数(24年アンケートで436社15.5%)存在していますが、その理由(複数回答)として「不当要求等の被害を実際に経験したことがない」(50.5%)「具体的に何をすればよいのか分からない」(40.4%)「取引相手が限定されている」(23.2%)「排除すると報復等が恐いため、導入できない」(2.1%)などの項目が上位にあげられ、かつ22年アンケートよりも増加している状況であり、その認識レベルには大きな懸念があります。

 アンケート結果が全てではありませんが、暴排条例の施行から1年以上経過しても劇的に取組みが進んだとは言えないものの、少しずつ浸透していることが窺える内容になっており、その点は評価できると思います。企業の取組みが個人の意識を変え、個人の意識の変化が企業の取組みの実効性を高めることにもつながり、個人や企業の意識や取組みが社会からの反社会的勢力排除の実現につながることをあらためて認識し、着実に取組みをすすめていくことが必要だと思います。

3.特殊詐欺被害の増加

 未公開株や外国通貨などの金融商品の購入名目で金をだまし取られる詐欺被害が10月末現在、全国で約164億円に上り、昨年同期の3倍を超え、振り込め詐欺の被害額も約123億円で昨年同期より16%増加しているとのことです。

▼警察庁「特殊詐欺の認知・検挙状況等について(平成24年10月)」

 振り込め詐欺については、年累計で比較した場合、認知件数や検挙件数では減少しているものの被害額や検挙人数は増加しているといった傾向があります。また、オレオレ詐欺の累計別では、「妊娠中絶費用等名目」「借金等の返済名目」「横領事件等示談金名目」の順となっているほか、架空請求詐欺では、「有料サイト利用料金等名目」によるものが最も多く、被害額は累計で前年同期比2.4倍以上に増加しています。さらに、還付金詐欺については、件数の累計で3.8倍、被害額で4.4倍以上に増加という結果になっています。

 男女別の傾向として女性が、年齢層では70歳以上が圧倒的に被害に遭っているものの、「融資保証金詐欺」のみ40代から60代にかけての男性が被害に遭っているという結果となっています。

 全体的な件数や被害額はピークの時に比べれば減少しているものの、手口の流行り廃りを上手くコントロールしながら、人々の注意を上手く逸らし続けている実態が窺えます。また、最近、30億円以上騙し取った振り込め詐欺グループの代表が逮捕されましたが、暴力団への資金などの流れの解明が待たれるところです。

4.改正犯収法(犯罪による収益の移転防止に関する法律)の金融実務への影響

 改正犯収法の全面施行をふまえた金融庁の監督指針に対するパブリックコメントの結果が公表されています。

▼金融庁「主要行等向けの総合的な監督指針」及び「金融検査マニュアル」等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等について

 アンチ・マネー・ローンダリング(AML)やテロ資金供与対策(CTF)においても、暴力団等の反社会的勢力の関与を疑いながら監視・排除していく視点の重要性が金融庁のコメントから読み取れます。また、金融機関側からも両者の関連についての質問が出ていることからも、関心の高いポイントであることも窺える内容となっています。

 なお、金融庁のコメントとしては、以下のようなものがあげられています。

  • 取引の相手方が暴力団員もしくは暴力団関係者である、もしくはその疑いがあることは、「顧客等又は代表者等になりすましている疑いがある場合」「関連取引時確認に係る事項を偽っていた疑いがある顧客等」に該当するかを判断する際の一つの要素として考慮すべき内容であると考えられます。
  • 金融機関が犯収法に基づく「取引時確認」及び「疑わしい取引の届出」を行うに際しては、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(平成19年6月19日犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)の趣旨を踏まえ、反社会的勢力との関係遮断を念頭に置いて、態勢を整備し、適正にこれらを実施する必要があると考えます。

 当社としても、反社チェックの視点として、犯収法上の「疑わしい取引」の届出や本人確認手続きなど参考になる点が多いこと、実際に暴力団等の反社会的勢力がマネー・ローンダリングを敢行していること、反社チェックとAML/CTFにおけるチェックの類似性に着目しながら効率的な取引先管理を検討すべきであることなどを推奨して参りましたが、金融庁のコメントからは全く同一の姿勢が感じられると思います。

5.九州の暴力団に改正暴対法の適用

 改正暴対法では、対立抗争が収束せずに住民に危害を及ぼす恐れがある組織を「特定抗争指定暴力団」に指定し、縄張りに沿って「警戒区域」を設定し、区域内で事務所を新設したり、対立組織の組員に付きまとったりすることなどを禁じる規定が盛り込まれており、違反した場合は3年以下の懲役または500万円以下の罰金刑などが科される内容になっています。

 一方、暴力団との関係遮断を図った企業や個人に拳銃などで報復した暴力団を対象として、警戒区域内で市民らに不当要求をした組員を中止命令なしに逮捕することが可能になる「特定危険指定暴力団」に関する規定も盛り込まれています。

 福岡県警は、これら改正暴対法に基づき、暴力団工藤会(北九州市)を「特定危険指定暴力団」に、道仁会(福岡県久留米市)と九州誠道会(同県大牟田市)を「特定抗争指定暴力団」にそれぞれ指定するため、県公安委員会が各団体から意見聴取し、その後、年内にも3団体を指定する方向です。また、特定指定の効力は福岡県内にとどまるため、佐賀、長崎、熊本各県の公安委員会も、道仁会と九州誠道会から意見聴取すると発表しています。

6.最近の事例から

1)振り込め詐欺事件に実体のない会社を利用

 架空の社債購入話を持ちかけ、30億円以上をだまし取ったとみられる振り込め詐欺事件で、詐欺グループは、実体のない会社を10万円で購入し、金をだまし取る際に会社名を利用していたということです。

 実際に、休眠会社はインターネット上で簡単に売買されており、その中には、未公開株詐欺や今回の振り込め詐欺のように実態があるかのように仮装するなどして「ツール」として使われたりしています。反社チェックにおいては、インターネットで検索するだけでなく、企業の「実体」と「実態」をそれぞれ確認することも重要であり、可能な限り現地に赴き、稼働状況や郵便受けや看板等の状況を現認することをおすすめいたします。

2)生活保護の不正受給

 最近も、暴力団組長の身分を隠して生活保護費計460万円を不正に受給したとして、詐欺の容疑で、大阪府警が山口組系暴力団組長夫婦を逮捕した事例がありました。本件に限らず、暴力団員が生活保護の不正受給を働く事例は多く、未就労者を組織化して生活保護を受給させ(面接の対応マニュアルまで作成しているとか)、それをピンハネするような貧困ビジネスすら行っています。

 このような生活保護制度の悪用を防ぐ観点から、厚生労働省は、平成24年度かから「暴力団対策の強化」として保護申請時に暴力団員でないことの申告を求める仕組みを始め、暴力団員であることが判明した場合、暴力団員であることが明らかな時期に遡って費用徴収を行うことの徹底を図るとしています。

 また、平成18年の通達においても、「暴力団からの脱退届及び離脱を確認できる書類(絶縁状・破門状等)」「誓約書(二度と暴力団活動を行わない、暴力的言動を行わない等)」「自立更正計画書」の提出の要請するなどにより、暴力団から離脱させるなどの対応処置を行うよう求めています。

▼厚生労働省「暴力団員に対する生活保護の適用について」(平成18年3月30日)

 暴排条例が施行され、暴力団排除の機運が上昇しているとはいうものの、水際での対策は各自治体まかせ、窓口まかせであり、自治体側のマンパワーの不足による実態確認の甘さ(認定時やその後の継続的なチェックの甘さ)もあって、暴力団構成員やその関係者の把握もなかなか進まず、このような不正を食い止める有効な手立てがないのが現状です。

3)復興事業における不良建設業者排除へ立ち入り検査

 国土交通省は、震災の復旧・復興事業が本格化する中、工事能力がないなどの「不良建設業者」の排除や、請け業者から「元請けから代金が支払われない」などの相談、工事現場の労働災害の増加、暴力団関係者による違法行為の判明といった事態を改善していくため、被災3県(岩手、宮城、福島)に新設された建設業者の営業所を中心に建設業法に基づき立ち入り検査するということです。

 暴力団が被災地入りしたのは震災発生の翌日だと言われています。救援物資の手配や現金入り茶封筒の配布など早くから復旧・復興事業、現地経済への浸透を図るために活動してきた暴力団については以前から警戒する声が上がっていたにも関わらず、行政の対応は極めてスピード感に欠けるように思われます。

4)国民健康保険の悪用で住吉会副会長を逮捕

 海外の病院で支払った医療費の一部が支給される国民健康保険の海外療養費制度を悪用し、自治体から約200万円をだまし取ったとして、警視庁は指定暴力団住吉会副会長ら4人を詐欺容疑で逮捕しています。また、損害保険会社から海外旅行保険金をだまし取ろうとしたとして詐欺未遂容疑で同組幹部ら5人も逮捕されており、組織的に「旅行中に食中毒になった」などとうそを言い、自治体や損害保険会社から保険金などを不正に受け取り、資金源としていた可能性があるとみられています。

 このような事案では、実務的にはどうしても書面上のチェックに依存せざるを得ず、書面の偽造等による詐欺の実態を解明するのは容易ではないと思われます。通常のチェック以外にどのような端緒により損害保険会社が保険金の支払を未然に防ぐことが出来たのか興味があるところです。

5)暴排条項によるマンションからの事務所排除

 茨城県警は、3年前から暴力団組員が身分を隠して賃貸借契約し組事務所として使用していた県内のマンションの1室について事務所撤去を確認したと発表、暴排条項の導入後に事件と連動して組事務所撤去につなげたのは同県内初ということです。このような成功例が増えることで、マンションからの事務所排除の取組みが加速されることを期待したいと思います。

6)使用者責任追求の実効性

 建設会社との間で仕事上のトラブルを抱えた男性から仲裁交渉を委託された弁護士が、指定暴力団住吉会系の組長に交渉を妨害されたとして、住吉会トップの福田会長を相手取り1,000万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こし、福田会長側が300万円を支払うことで和解が成立したということです。

 本件は、2008年の暴力団対策法の改定により規定された、暴力団員に脅し取られるなどした金銭を、その暴力団の代表者に請求することができるなど被害を回復するための使用者責任の追及(本コラム「第32回暴力団の実態」も参照ください)をふまえて、早い段階で和解を選択したものと推測され、使用者責任の追及を活用することが暴力団を資金の面から追い込む有効な武器となりうることを示す好事例と言えます。

7.最近の暴排条例による勧告事例ほか

大阪府

 暴力団組員に駐車場を貸したとして、大阪府内の不動産会社と指定暴力団山口組直系組長に対し、大阪府暴排条例に基づく行政指導が行われています。

 この会社は、相手が暴力団関係者と知りながら13台分の駐車場の賃貸契約を月15万円で結んでおり、駐車場は組事務所から約30メートルに位置し、1台分のスペースにスーツ姿の組員が常駐して車の誘導などを行っていたとのことです。

東京都

 東京都住宅供給公社発注の住宅改修工事で、孫請けの建設会社が暴力団員を工事請負代金の未収金の取り立てに使ったとして、警視庁は、国土交通省や東京都など関係40団体に対し、建設会社の入札参加資格を取り消すように要請しています。

 なお、当該情報については、東京都のHPにおいても公表されています。

▼東京都「契約制度関係(暴力団等排除規程関係⇒排除措置中の業者で検索)」

神奈川県

 神奈川県暴排条例で事務所の開設が禁止された区域内(保育所から直線で約180メートルの距離)にある川崎市内の貸家に事務所を設け、10月下旬まで運営したとして、指定暴力団稲川会系組長が同条例違反(事務所の開設・運営)容疑で逮捕されています。なお、平成23年4月に同条例が施行されて以降、違反による逮捕は初ということです。

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