暴排トピックス

【もくじ】―――――――――――――――――――――――――

1.海外コンプライアンスと暴力団排除

1)マネー・ローンダリング

2)米国外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)

3)海外腐敗行為防止法(FCPA)

4)米金融規制改革法(ドッド・フランク法)第1502条紛争鉱物条項

5)海外コンプライアンスと取引先管理の厳格化

2.最近のトピックス

1)警察対反社会的勢力

2)暴力団排除と行政

3)暴力団排除と企業

3.生活保護と暴力団

1)暴力団排除条例の認知状況に関する調査(奈良県)

2)福岡県暴排条例の改定

3)山梨県で初の勧告事例

4)神奈川県の勧告事例

5)佐賀県の勧告事例

6)長崎県の指名停止事例

1.海外コンプライアンスと暴力団排除

 今年、企業実務において大きくクローズアップされるであろうリスクのひとつに「海外コンプライアンス」があると考えられます。

 これまで、コンプライアンスは、主に「国内法に照らして問題がないか」と言う観点から語られてきたのですが、マネー・ローンダリングやテロ資金供与の問題をはじめ、最近ではサイバーテロや贈収賄など、本来想定されていたリスクがますます巧妙化・グローバル化して、国内法を順守するだけでは十分でない状況が知らず知らずのうちに進行しています。

 暴力団排除についても同様のリスク認識が必要であり、国内の活動実態の不透明化・巧妙化だけでなく、グローバル化の視点も必要な状況です。

 例えば、米国が暴力団を「国際犯罪組織」と認定している点が代表的ですが、その背景には、覚せい剤等の薬物や武器の売買、人身売買や臓器売買といった違法な国際取引、犯罪収益資金のマネー・ローンダリング、暴力団自体の海外進出(東南アジアなど)による現地マフィアとの提携や伝統的資金獲得犯罪(薬物、売春、賭博など)の海外市場開拓と展開(現地化)、現地高官との癒着による大規模な利権獲得など、その活動を暴力団対策法や暴力団排除条例、犯罪収益移転防止法など国内の活動にフォーカスした規制だけではもはや不十分な状況にあり、海外の法規制やリスクに適合するための「海外コンプライアンス」の視点が求められていると言えます。

 このような「海外コンプライアンス」の取組みにおいて最も認識しておくべきことは、これらのリスクについて、巧妙化・グローバル化する国内外の犯罪組織に自社の関与する商品・サービスやスキームが利用されるなどして犯罪組織との接点を持ってしまう、すなわち「知らず知らずのうちに巻き込まれるリスク」という点です。

 例え、自社が全く悪意も不作為もなかったとしても、国際的な説明責任が果たせない限りは、国内外の金融機関をはじめ、他の取引企業から見れば、「リスクの高い先」として厳格なリスク管理が適用される(場合によっては取引が縮小・拒絶される)など現実的な影響も考えられるのです。

 以下、今年クローズアップされるであろう代表的なリスクについてご紹介しておきますので、「海外コンプラアンス」の視点の重要性をご認識頂きたいと思います。

1)マネー・ローンダリング

 前回の本コラムでも取り上げたバチカンによるマネー・ローンダリングに関するイタリア銀行(中央銀行)による制裁措置では、市民生活や企業活動に思いもよらない形で広く影響が及ぶことが実感されましたし、三菱東京UFJ銀行の例(OFAC規制対象国への送金)については、取組みの進んでいるメガバンクにおいてすら「海外反社」対応の質が問われていて、今年4月の犯罪収益移転防止法(以下「犯収法」)の改正施行とあわせ、金融機関における取組みが加速するだろうと予測させるに十分なものと言えます。

 また、昨年来、英国系の大手銀行がマネー・ローンダリングやテロ資金供与により巨額の罰金の支払いが科される事例が相次いでいることもあり、金融機関も一般事業者に対する監視を強化する流れとなっています。

 したがって、(自社がそのようなスキームに利用されていることを認識していない一般事業者も含め)国際犯罪スキームに加担しているとの嫌疑をかけられかねないという、対岸の火事とは言えない状況にあり、一般事業者においても、例えば、取引先にそのような怪しい先があった場合に自社にもその影響が及ぶ(資金が凍結される・当局の監視対象下になる・許認可が取り消される等)可能性が大きくなることが予想されます。

2)米国外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)

 FATCAは今年1月から実行されている米国の法律で、外国金融機関(FFI)およびその他金融仲介業者を対象とし、米国市民や米国居住者によるオフショア口座を利用した米国の租税回避を防ぐ事を目的としたものです。

 FATCAは米国を拠点とする企業および米国に資産や顧客を持つ外国企業まで幅広く影響し、簡単に言えば、FFIが米国の内国歳入庁(IRS)と契約を結び、FFIに開設されている米国口座等について報告を行うことを要求しているもので、そうでない場合は、米国法人により支払われる配当や利息は30%の源泉税の対象となります。

 一義的には脱税防止の観点から米国に関連する口座のスクリーニング(口座保有者やその動向のチェック)が強化されたということであり、国内の犯収法の改正や国際的なアンチ・マネー・ローンダリングの厳格化という口座スクリーニング・チェックの深化とあわせて、口座ホルダーに関する金融機関の監視の目が厳しくなるということを意味しています。

3)海外腐敗行為防止法(FCPA)

 フィリピンでカジノリゾート開発を目指している日本の大手遊技機メーカーの子会社からフィリピンの規制当局の顧問側に対して計4千万ドル(約37億2千万円)の巨額送金が同社の首脳に報告されていたことが判明し、一部は不適切な会計処理だった可能性が高いとして、近く過去の決算を修正するとのことであり、証券取引等監視委員会も関心を寄せているようです。

 さらには、カジノ免許の許認可権を持つ同国政府高官らに対しマカオやラスベガスのホテルで接待を繰り返し、接待費は2011年までの3年間で約11万ドル(約946万円)に上り、フィリピン国会は公聴会を断続的に開いて同社関係者や公社幹部、会長を公聴会に呼び追及する事態になっているとの報道もなされています。

 なお、このような贈収賄を巡る事案については、2011年4月、東証一部の日揮が、ナイジェリアでのプラントプロジェクトの受注に関し、同国の政府関係者へ贈賄を行ったとして、米国の海外腐敗行為防止法(FCPA)違反の疑いで2億1880万ドル(約187億円)の和解金を米国司法省に支払うことに合意した事例、あるいは2012年には丸紅が5460万ドル、ブリヂストンが2800万ドルの罰金を支払うことで和解した事例が記憶に新しいところです。

 国際的な贈収賄防止の取組みにおいては、日本は2011年12月のOECDによる審査で「重大な懸念」があるとして、5項目の改善事項が提示されており、今後、法制化等が検討されている状況にあり、アンチ・マネー・ローンダリングやテロ資金供与対策について国際的な要請が厳格化された最近の状況にも似ています。

 さらに、米国FCPAや英国贈収賄防止法(英国BriberyAct)の適用地域が第三国にも拡がっている状況、例えば、米国企業との間で共謀や幇助等の共犯関係がある場合や米国の銀行を経由して賄賂を送金した場合なども対象とされること等を鑑みれば、中国をはじめとするアジア地域における商慣行行為にすら、それらの法令が適用され巨額の罰金を支払うこととなる可能性がある点を認識する必要があります。

 現地のエージェントやコンサルタントに情報収集や現地公務員との交渉を依頼することは通常よく行われていますが、例えば、米国FCPAにおいては、そのエージェントに報酬を支払い、その一部が公務員に贈賄された場合、当該企業が、エージェントが贈賄することを「知って」支払っていた場合、さらには高い可能性を示唆する状況について意識的に無視したり、見て見ぬふりをしたような場合には、処罰の対象となります。

 また、罰金額等の決定の際の考慮要素として、エージェントの適正性を担保するための実効性あるコンプライアンス体制(デューデリジェンスや内部監査、社内教育、内部通報制度等)の整備といったことも重要とされている点にも注意が必要です。

4)米金融規制改革法(ドッド・フランク法)第1502条紛争鉱物条項

 同法は、米証券取引委員会(SEC)に登録している米国上場企業に紛争鉱物の使用状況を調べて開示することを義務付けています。

 昨年8月に詳細が公表され、スズ、タンタル、タングステン、金の4種類を産出国にかかわらず紛争鉱物と定義し、製品に含まれているものがコンゴ民主共和国または隣接国産だった場合、武装勢力への資金源になっているかどうかを調査し「紛争鉱物報告書」を提出、実施方法が妥当だったかどうかなどについて第三者機関の監査を受ける必要があることとなりました。

 商流上で知らぬ間に人権侵害や環境破壊、テロ活動に加担していたとなれば、企業の信頼を損ねる恐れがあり、反社会的勢力排除やアンチ・マネー・ローンダリングといった取組みと同じく、このような分野・視点からも「商流」における取引先管理の厳格化が求められるようになっていると言えます。

5)海外コンプライアンスと取引先管理の厳格化

 これまでお話してきた通り、暴力団のグローバル展開の中で、マネー・ローンダリング・スキームにおける(意図しない)自社の関与(しかも実際の取引が国内・海外であるかを問わない)、現地エージェントやコンサルタントと暴力団の関係、あるいは、暴力団の提供する政府高官や現地有力者への贈収賄といったスキーム、暴力団が現地で運営に関与している飲食店や施設等を利用してしまうといったリスクなども今後考慮していく必要があります。

 アンチ・マネー・ローンダリングの取組みにおいては、「KYC(KnowYourCustomer顧客をよく知ること)」が重要だとよく言われていますが、今や、「KYCC(KnowYourCustomer’sCustomer顧客の関係者を知ること)」まで求められています。これは、銀行業務で言えば、「銀行間の取引」という表面的なやり取りを見る(監視する)だけでは十分ではなく、銀行口座保有者や「その背後」にいるそれぞれの取引関係者の異常な関係を如何に抽出するかが重要となってきているという意味であり、それが、一般事業者においても重要な視点となっているのです。

 すなわち、一般事業者にとっても、「海外コンプライアンス」を意識した、自社との直接の取引先、あるいはその上流・下流の取引先についても十分な注意を払う取組み、言い換えれば、反社会的勢力排除のための反社チェックにとどまらない「取引先管理の厳格化」が、今後、重要なキーワードになると思われます。

2.最近のトピックス

1)警察対反社会的勢力
①警察対「関東連合OBグループ」

 東京・六本木のクラブで飲食店経営者が殺害された事件に絡み、関東連合OBが相次いで逮捕されています。「半グレ」と呼ばれる暴力団に所属せずそれに類似した犯罪行為(代表的なものとして振り込め詐欺など)を行う個人や組織の存在がクローズアップされていますが、その代表格が「関東連合」OBグループであり、その背後には暴力団の影がちらついているとも言われています。

 警察の懸命な努力にも関わらず、実際に排除できるのは「暴力団」や「関東連合OB」という「枠」や「名称」であって、彼らがその「枠」から外れ「反社会的勢力」に潜在化していく限り、その完全な排除は難しいのが現実です。したがって、事業者や市民も、その取組みを地道に継続していくしかなく、しかも、その難易度は増していることを認識する必要があります。

 一方、大阪ミナミの「半グレ」と言われたマチュア格闘技団体「強者」については、一部の暴徒化した者達の影響で格闘技イベントが中止に追い込まれ、活動を中止したとのことです。自ら墓穴を掘った形となりますが、イベントを中止に追い込んだのが市民や事業者、行政等からの圧力であるならば、暴排活動と通底する「常識」や「コンプライアンス」が健全に機能した証左でもあり、今後に明るさが見出せるのではないかと思います。

 ただ、「枠」を失った彼らが、このまま半グレ化、反社会的勢力化しないよう監視する必要があり、それらを排除する風潮がさらに根付いていくことを期待したいと思います。

②「結社の自由侵害」特定危険指定の工藤会が提訴

 改正暴力団対策法に基づき「特定危険指定暴力団」に指定された工藤会(本部・北九州市)が、「指定は結社の自由を侵害しており違憲」などとして、福岡県を相手取り、指定処分の取り消しを求める訴訟を福岡地裁に起こしています。

 一方、ドイツでは、外国人排斥などを掲げる極右政党・国家民主党(NPD)の活動を「非合法化」する案を巡って揺れています。失敗した場合、逆に党の存在に「お墨付き」を与えてしまう懸念があり、非合法化に成功しても、活動を禁じられた党員が今度は地下に潜伏し、かえって社会不安が高まるとの見方や、「言論・思想の自由の封殺」として「欧州人権裁判所」への提訴を通じた存在感の定着なども考えられ、慎重な対応が求められているようです。

 暴力団にしろNPDにしろ、組織が社会的に存在が認められているとはいえ、無制限な自由が保障されているわけはなく、社会のルールに従うのは当然のことです。日本の暴力団がもはや「社会悪」と認識されている現在、その活動がある程度の不利益を被ることも認められてしかるべきだと言えるでしょう。

③暴追センターによる訴訟支援

 全国の暴力追放運動推進センターが、地域住民に代わって暴力団組事務所の立ち退き訴訟を起こせる制度が1月からスタートしていますが、財政難から1回300万円はかかるとされる訴訟費用の捻出が難しい状況にあると報道されています。

 そもそも、制度開始時に訴訟を行うことができる「適格団体」の認定を受けるためには、国家公安委員会が、十分な組織力、専門スタッフの有無、安定した財政基盤の3点を審査するとされており、認定される暴追センター自体も少数にとどまる可能性があり、制度自体の実効性が問われる事態となっています。

▼警察庁「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う差止請求関係業務を行う都道府県暴力追放運動推進センターの認定の申請に対する審査基準」

④福岡県警の暴力団排除マンガ

 福岡県警のHPに暴力団排除のマンガが掲載されています(ダウンロードも可)。

 福岡県暴力団排除条例には第3章「青少年の健全な育成を図るための措置」が設けられており、「青少年に対する教育等のための措置」(第14条)には、暴力団に加入せず、及び暴力団員による犯罪の被害を受けないようにするための教育を推進することが盛り込まれています。

 福岡県では、既に、「暴排先生」の派遣など先駆的な取組みが進められていますが、今回のマンガによる教育もその一環であり、教育にはこのような地道な取組みの継続が必要です。近い将来、暴排の社会的風潮の定着や青少年から人材が供給されることのないよう実を結んで欲しいと思います。

▼福岡県警HP暴力団排除マンガ「こんなはずじゃなかった・・・」

2)暴力団排除と行政
①違法派遣への関与

 東日本大震災の復興事業に作業員を違法に派遣していたとして、暴力団組長が逮捕された事件で、工事を発注した元請け業者や自治体側は、複数の下請け会社に工事を発注しており、作業員が暴力団組織から派遣されていたといった実態を把握していなかったと報道されています。

 暴力団が、行政などのチェックが届きにくいことにつけ込み、作業員を下請けルートの末端に入り込ませ、違法に収益獲得を重ねていたものであり、そのような事例が数多く発覚していることから、行政のチェックの甘さという「構造的な脇の甘さ」に根本的な対策を施す必要があり、事業者もそのようなリスクが顕在化している以上、もはや「手間がかかるので」「末端まで把握は無理」という理由は説得力がないのであり、重層的な「関連契約」における管理手法の見直しが迫られていると言えます。

 また、これとは別に、指定暴力団住吉会系組長が無許可で発注元の福島県伊達市で除染作業に派遣従事させたとして、労働者派遣法違反容疑で逮捕されていますが、派遣を受けていた山形県の土木建設会社の男性幹部が、「(相手が)暴力団組長であることは警察に言われて知った。現場で暴力団関係者を見抜く方法はない」と新聞社の取材で訴えています。

 この業者が「見抜く」ための努力をどれだけされていたかは分かりませんが、組長側から持ちかけてきた話であること、除染作業という特殊な業務であることから、一般的には疑わしい、あるいは、念のため事前に警察等に確認するといったことはできたのではないかと思われます。

 100%「見抜く」ことは確かに難しいかもしれませんが、かすかに「気付く」ことはできるはずであり、適切な調査・相談により速やかに排除(関係解消)をすることが求められているのです。この事業者の発言の裏には、最初から無理(だから、実際に何もしていない)とする意識が透けて見えますが、暴排意識を周知徹底できない行政自身の取組みや意識の甘さが招いた発言だとも言えるのではないでしょうか。

 一方で、逮捕された組長も、「除染作業は下請けが多く、自治体側のチェックが甘くなると思った」と供述しているとの報道もなされています。暴力団側から、行政の脇の甘さを狙っているとの具体的な供述が出ていることを行政は真摯に受け止めるべきであり、企業にとっても、反社会的勢力が自社の内部統制システムの脆弱性を突いて侵入してくるとの危機感・緊張感を常に持ちながら業務にあたる必要があるという意味で他山の石とすべきです。

②仙台市の公共工事への暴力団の関与

 仙台市が発注した東日本大震災の損壊建物の解体工事で多重下請けが横行した問題で、暴力団の関係業者や実態のないペーパー会社が一部工事の下請けに入り、解体工事費が不明になるトラブルがあったとのことです。この点に関連して、ある捜査関係者も「仙台市は暴力団に対する警戒感や排除意識が他の自治体より低い」と指摘しているとの報道がなされています。

 これも先の事例と同様、行政の脇の甘さに起因する内部統制システムの脆弱性を暴力団等に利用された形であるとともに、行政側の意識自体が懸念されることを示しており、税金が暴力団に還流してしまうといったことは公共事業の本質に関わる問題として厳格に対処をして頂きたいものです。

③大阪府の346の公益法人が「休眠状態」か

 大阪府の外部監査人が、「法人格の売買など悪用の恐れがある」として早期の実態把握を求めているとの報道がありました。現在調査中の医療法人(2203団体)の中にも事業報告書を提出していない法人が複数あるため、休眠状態の法人はもっと多い可能性が高いということです。

 これまでも、反社会的勢力がNPO法人などを隠れ蓑に犯罪を敢行していることをお伝えしておりますが、大阪府に限らず、全国の自治体においても早急に実態を把握して「犯罪のツール」に利用されないよう取組んで頂きたいとともに、一般事業者においても、思い込みだけで安易に実態を確認せずに関係を持ってしまうことのリスクもご認識頂きたいと思います。

④平成24年の特殊詐欺が過去最悪に

 振り込め詐欺や金融商品の購入を持ちかけるなど平成24年の特殊詐欺の被害総額は約363億5千万円に上り、過去最悪の被害であり、近年は金融商品の購入名目などでの被害が急増しているほか、振り込め詐欺で摘発されたうち暴力団関係者が3割以上となるなど暴力団の資金源となっている実態も判明しています。

▼警察庁「特殊詐欺の認知・検挙状況等について(平成24年12月・暫定値)」

 一方で、愛知県警が2012年に把握した振り込め詐欺の件数が前年から半減、件数と被害総額はともに、統計を始めた06年以降で最少となったとの報道もありました。警察が推進している振り込め詐欺対策が効果をあげてきていることが示唆されています。

▼国家公安委員会および警察庁「総合評価書振り込め詐欺対策の推進」(平成24年3月)

 *対策の概要については、「暴排トピックス2012年11月号」もご参照ください。

3)暴力団排除と企業
①富士通名誉毀損事件最高裁決定

 同社の元社長辞任に至った事情などの開示において「反社会的勢力との関係が深い」と記された法人およびその代表者が、自分たちは反社会的勢力でもなく、それらと深い関係もないのに、一方的に「関係がある」と指摘されたのは名誉毀損(人格権侵害)だとした裁判について、最高裁が原告からの上告を棄却し東京高裁の判決が確定しています。

 この裁判では、直接的に「反社会的勢力かどうか」ということではなく、「反社会的勢力と関係があるとの『うわさ』自体」の真実性、要は同社が「疑わしい」とした合理的な根拠があることを証明して認められたという点がポイントであり、この判決の持つ意味は、企業実務にとって極めて大きいと言えます。

 ただし、その主旨だけ安易に捉えるのは禁物であり、それを可能にするためには、反社会的勢力かどうかを見極めることの難しさを前提としながらも、平時から反社チェックや判断のプロセス(内部統制システム)を厳格かつ慎重に運用し、重大な覚悟と決断に耐えうる企業姿勢と役職員の意識まで含めた「民間企業として出来る最大限の努力」をしたことが説明できなければならないのです。

②スマホ決済事業と暴力団排除

 大手携帯電話会社が米国の決済サービス会社と提携して新たに提供開始されたスマホ決済サービスについては、厳格な加盟店審査とは言えない状況で、犯罪や反社会的勢力の関与、トラブル誘発の懸念も出ているということです。

 脇の甘いところ、弱いところから侵入するという彼らの行動様式をふまえれば、当然想定すべきリスクであり、フロント企業(暴力団関係企業)との加盟店契約は暴力団排除条例上の「利益供与違反」にあたるリスクも考慮する必要があります。

③信用組合元理事長、違法風俗店から家賃得た疑い

 違法な営業をしていた風俗店に店舗を貸し、家賃収入を得たとして、警視庁は信用組合愛知商銀(名古屋市)の元理事長ら韓国籍の男女3人を組織犯罪処罰法違反(犯罪収益の収受)容疑で逮捕しています。

 同容疑者は在日韓国人信用組合協会の会長も努め、金融機関としての表の顔を隠れ蓑に、在日韓国人界の重鎮的存在であり、パチンコチェーン店の創業者、吉原最大のソープランド店グループの実質的支配者だったということです。

④米財務省が稲川会に金融制裁

 米財務省は、指定暴力団稲川会と清田次郎こと辛炳圭会長、ナンバー2の内堀和雄理事長に米国内の資産凍結や金融取引禁止の制裁を科しています。指定暴力団に対する制裁は、六代目山口組、住吉会に次ぎ3例目となります。

▼SpeciallyDesignatedNationalsList(SDN)

3.最近の暴排条例による勧告事例ほか

1)暴力団排除条例の認知状況に関する調査(奈良県)

 奈良県警が実施した「警察活動等に関する県民の意識調査」(昨年8月に免許更新で運転免許センターを訪れた1,700名を対象)で、同県暴排条例を「知っている」と回答した人は4割を下回り、逆に「知らない」は49.2%と約5割を占める結果となっています。

 同条例施行時は2割ほどの認知だったことから、1年間である程度周知が進んだとは言え、全体的には不十分であり、暴力団排除が社会全体の意識の高まりが大前提となることを考えれば、まだまだ緒に就いたばかりだと言えます。

2)福岡県暴排条例の改定

 福岡県警が今年2月にも提出する同県暴排条例の改正案を発表、暴力団組員が縄張りの設定・維持のために繁華街の飲食店や建設業者に立ち入ることなどを禁止し、違反すれば中止命令を出し、従わなければ逮捕できる全国初の内容となるほか、福岡県公安委員会発行の入店禁止の標章を掲示していなくても対象となるということです。

 言うまでもなく、暴力団が事業者に対してみかじめ料や用心棒代などの不当な要求を行うことを未然に防ぐ狙いがあり、これまでの同条例の施行と度々の改正、暴力団対策法の改正施行とあわせ、事業者からの資金の流れを断つための方策を矢継ぎ早に講じてきており、打撃を受けている暴力団側の事業者への脅しもさらに激しくなることも予想され、ここが正念場と思われます。

3)山梨県で初の勧告事例

 暴力団組員に無償で土地を貸し、暴力団が露店を出店して利益を得たとして、山形県警は、指定暴力団極東会系組幹部と甲府市内の不動産会社員に対し、山梨県暴排条例(利益供与禁止など)に違反したとして同様の行為を行わないよう勧告、同条例に基づく勧告は初めてと言うことです。

4)神奈川県の勧告事例

 暴力団に用心棒代として現金を供与したとして、神奈川県暴力団排除条例に基づき、横浜市内の雑貨店経営の男性に対し、暴力団に利益供与をしないよう勧告、指定暴力団稲川会系幹部にも供与を受けないよう勧告しています。男性は「脱法ハーブ」を販売し、開店にあたり、知人を介して同幹部に用心棒を依頼したということです。

5)佐賀県の勧告事例

 暴力団が組事務所の駐車場として使うことを知りながら、数台分の賃借契約をし、暴力団活動を助長したとして、佐賀県公安委員会が佐賀県暴排条例に基づき、駐車場を管理する事業者と暴力団組長に対し勧告しています。

6)長崎県の指名停止事例

 長崎県は、暴力団関係者との密接な交際が認められたとして、2社を長崎県建設工事暴力団対策要綱に基づき、2月1日から2ヶ月間の指名除外にすると発表しています。2社の元役員や社長が暴力団関係者の還暦祝いに出席したということです。

▼記者発表資料長崎県建設工事等入札参加資格者の指名停止一覧(平成24年度)

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