暴排トピックス

暴力団等の最近の動向(最新の統計資料から)

アバター 取締役副社長 主席研究員 芳賀恒人

2013.03.14
印刷

【もくじ】―――――――――――――――――――――――――

1.暴力団等の最近の動向(最新の統計資料から)

1)犯罪統計資料(平成24年確定値)

2)特殊詐欺の認知・検挙状況(平成24年暫定値)

3)JAFIC年次報告書(平成24年暫定版)

2.最近のトピックス

1.暴力団と反社会的勢力

2.改正暴力団対策法と暴力団対策

3.薬物犯罪の動向

4.生活保護制度を巡る動向

5.その他暴力団犯罪を巡る動向

3.最近の暴排条例による勧告事例ほか

1.東京都の勧告事例

2.静岡県の勧告事例

3.大阪府の勧告事例ほか

4.山形県の勧告事例(注意書の交付)

5.宮城県内自治体における暴力団排除条例施行状況

1.暴力団等の最近の動向(最新の統計資料から)

 平成24年の暴力団の活動状況について、警察庁から発表された最新の各種統計資料から読み解いていきたいと思います。

1)犯罪統計資料(平成24年確定値)

▼警察庁「犯罪統計資料(平成24年1月~12月)」(確定値)

①刑法犯罪種別状況認知件数

 刑法犯「全体」の状況については、以下のような傾向が読み取れます。

      • 刑法犯の認知件数の総数については、前年対比▲6.7%(▲98,639件)と大きく減少している。
      • とりわけ刑法犯全体の75%を占める「窃盗犯」が前年対比▲8.2%と大きく減少している点が大きな特徴であり、同じく全体の3%を占める「知能犯」も▲1.5%と減少している。
      • 一方で、全体の5%弱を占める「粗暴犯」は前年対比+8.9%と増加しており、中でも「脅迫」が前年対比+40.2%と激増している点は注目される。
      • また、減少した「知能犯」では、「通貨偽造」等の「偽造」が前年対比▲18.1%となったものの、「知能犯」の86%を占める「詐欺」は+0.2%の増加と相変わらず高水準にある。
      • 「風俗犯」も+9.3%と増加しているが、「賭博」が前年対比+71.8%と激増している点は特に注目される。

 全体的には「窃盗」の減少傾向が顕著ですが、「脅迫」「詐欺」「賭博」といった暴力団の関与する典型的な罪種については、全体的に増加傾向にあることが確認できます。

②暴力団犯罪(刑法犯)罪種別検挙件数

 暴力団の関係する犯罪の状況については、上述の刑法犯全体の傾向もふまえ、以下のような傾向が読み取れます。

      • 暴力団の関係する刑法犯の検挙件数は35,353件と全体(437,612件)の8.1%、検挙人員でも14,506人と全体(287,021人)の5.1%を占める。
      • 2013年2月1日現在の日本の人口は約1億2740万人(推計)、うち20歳以上は約1億490万人(推計)である。一方、公表されている2011年12月末の暴力団員(構成員と準構成員の合計)は70,300人であり、暴力団員の人口構成比はおよそ0.07%となる。したがって、検挙人員における暴力団員の構成比の5.1%という高い数値(およそ73倍)は、暴力団が相変わらず犯罪と高い親和性を持ち、「犯罪組織」として「社会悪」であることを示す証拠であると言える。

 【注】暴力団対策法における暴力団の定義が、「その団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む。)が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体」であり、「指定」についても、(例えば)「当該暴力団の全暴力団員の人数のうちに占める犯罪経歴保有者の人数の比率が、暴力団以外の集団一般におけるその集団の人数のうちに占める犯罪経歴保有者の人数の比率を超えることが確実であるもの」とされていることから、「犯罪を助長するおそれが高く、明らかに犯罪経歴保有者の割合が一般の集団より高い」のは、これらの統計数字からも明らかである。

      • 暴力団犯罪(刑法犯)全体の検挙件数は前年対比▲10.8%と刑法犯全体の検挙件数の前年対比▲5.4%と比較して大きく減少している。暴力団員の減少傾向とあわせ、取締りの強化(検挙活動の活発化)が反映された数値となっている可能性もある。
      • 犯罪種別で見ると、検挙件数が増加したものとしては「賭博」(+125.0%)「傷害」(+1.2%)「脅迫」(+6.8%)、減少しているものとして「窃盗」(▲9.3%)「詐欺」(▲34.0%)が代表的である。
      • 暴力団犯罪の64%を占める「窃盗」が大きく減少傾向にあることが暴力団犯罪全体の総数の減少につながっていると思われるが、やはり「賭博」の伸びが特徴的である。

 伝統的・典型的な暴力団犯罪である「賭博」「傷害」「脅迫」の検挙件数が増加している点は、伝統的な犯罪収益に依存する(古いタイプの)暴力団が、社会全体の暴排の取組みの進展に伴い、資金源を断たれてきていることに対する反動であるとも見てとれます。

 一方、「詐欺」の検挙件数の減少は、犯行主体がもはや暴力団員ではないこと(例えば、振り込め詐欺で言えば、「半グレ」集団、あるいは、それらに利用される大学生など一般人が多いとされる)の表れであり、暴力団の潜在化の状況を端的に示すものとも言えると思います。

 また、「詐欺」については、検挙件数は大きく減少したものの、逆に検挙人員は前年対比+5.4%と増えており、「脅迫」は、検挙件数・検挙人員ともに増えていますが、この背景には、警察の取締りの強化や脅迫を受けた市民や事業者が泣き寝入りすることなく警察に相談することが増えているといったことが考えられます。

2)特殊詐欺の認知・検挙状況(平成24年暫定値)

▼警察庁「特殊詐欺の認知・検挙状況等について(平成24年12月・暫定値)」

 振り込め詐欺犯罪の検挙件数(2,319件)は詐欺全体(20,264件)の11.4%を占めています。振り込め詐欺や金融商品等取引名目など平成24年の特殊詐欺の被害総額は約363億5000万円と過去最悪の被害となっており、金融商品の購入名目などによる被害額が約2.6倍、還付金詐欺による被害額が約4.4倍に急増しているのが注目されます。

 また、振り込め詐欺で摘発されたうち暴力団関係者が3割以上となるなど暴力団の資金源となっている実態も判明しています。

 一方で、愛知県警が平成24年に把握した振り込め詐欺の件数が前年から半減、件数と被害総額はともに、統計を始めた平成18年以降で最少となったとの報道もあり、警察が推進している振り込め詐欺対策が効果をあげてきていることが示唆されています。なお、警察の振り込め詐欺対策については、本コラム「暴排トピックス11月号」をご参照頂ければと思います。

▼暴排トピックス11月号「2.振り込め詐欺への対応」

3)JAFIC年次報告書(平成24年暫定版)

 日本におけるマネー・ローンダリング対策を所管する「警察庁刑事局組織犯罪対策部犯罪収益移転防止管理官(JAFIC)」は、毎年報告書で取組み状況を公表しています。

▼警察庁「犯罪収益移転防止管理官(JAFIC)年次報告書(平成24年)」【暫定版】

①平成24年における「疑わしい取引」の届出状況

 平成4年の麻薬特例法施行により開始された本制度による届出件数は、施行当時は年間わずか12件だったのに対し、平成24年には364,366件(前年対比+8%)と大きく件数を伸ばし続けています。

 届出件数の増加の背景として、JAFICでは、「社会全体のコンプライアンス意識の向上に伴い、金融機関等が反社会的勢力や不正な資金の移動に対する監視姿勢を強化していること」「金融機関等を対象とする研修会において、疑わしい取引の参考事例等を周知してきた効果が出ていること」等があると指摘しています。

 また、金融機関等は、ハード、ソフトの両面から様々な対策を講じており、特に、多数届出する金融機関は、マネー・ローンダリング対策担当者の増強や不正検知システムの導入によって、疑わしい取引を発見する態勢の強化を行うことで、業務内容に応じて疑わしい顧客や取引等を検出・監視・分析するとともに、職員に対してハンドブック等の資料を基にマネー・ローンダリング対策等に関する教育を徹底し、個々の職員の能力向上を図っているとされています。

 なお、業態別の具体的な届出状況については、以下の通りとなっています。

      •  特定事業者における業態別の届出状況としては、「銀行」が全体の91.6%を占めるなど圧倒的に取組みが進んでいる状況にある。ただし、経年で見た場合、その比率が徐々に低下しつつあり、他の業態での取組みも活発化していることが窺える。

      •  銀行以外では、「信金・信組」(3.7%)、「金融商品取引業者」(1.6%)「クレジット事業者」(1.0%)「保険会社」「両替業者」(ともに0.5%)と続き、とりわけ、「保険会社」や「貸金業者」が前年から3倍近い伸びを示していることが注目される。

②平成24年における「疑わしい取引」の提供・活用状況

 JAFICでは、特定事業者から寄せられた「疑わしい取引」に関する情報を集約・分析し、都道府県警察、検察庁、税関、証券取引等監視委員会等に提供していますが、それが犯罪の端緒として検挙に結びつくケースも増えています(平成24年には、前年より46,639件、19.9%増えています)。

      • 詐欺関連事犯(詐欺及び電子計算機使用詐欺並びに犯罪収益移転防止法、金融商品取引法及び携帯電話不正利用防止法違反)は計714件と全体の80.6%を占めて最も多く、預貯金通帳等の詐欺又は譲受・譲渡、インターネットオークションを利用した詐欺、暴力団員による生活保護不正受給詐欺、未公開株等の購入を名目とした詐欺事件等を検挙している。
      • それ以外には、不法滞在関連事犯(入管法違反)、薬物事犯(覚せい剤取締法違反)、ヤミ金融事犯(貸金業法及び出資法違反)、建設関連事犯(労働者派遣法及び建設業法違反)、知的財産権侵害事犯(商標法、著作権法及び不正競争防止法違反)、会社関連事犯(会社法違反、強制執行妨害及び背任)などが続く。
      • 暴力団員による債権取り立て名目の恐喝事件、暴力団による組織的な賭博事件等の検挙実績もある。

③暴力団構成員等が関与するマネー・ローンダリング事犯

      • 平成24年中に組織的犯罪処罰法に係るマネー・ローンダリング事犯で検挙されたもののうち、暴力団構成員等が関与したものは、犯罪収益等隠匿事件で27件及び犯罪収益等収受事件で28件の合計55件で、全体の23.1%を占める。先の暴力団員の構成比からみると、この分野において暴力団がいかに高く関与しているかがご理解頂けるものと思う。
      • 暴力団構成員等が関与したマネー・ローンダリング事犯を前提犯罪別に見ると、詐欺が17件、窃盗が10件、ヤミ金融事犯が7件、売春事犯が6件等となっており、暴力団構成員等が多様な犯罪に関与し、マネー・ローンダリング事犯を敢行している実態がうかがわれる。
      • 具体的な事例として、「六代目山口組傘下組織構成員の男らは、薬局の開設や医薬品の販売の許可を受けずに代金引換郵便を利用して医薬品を販売し、複数の客から、郵便局員を介して販売金約2,000万円を他人名義の口座に振込入金させていたことから、組織的犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)で検挙」といったものが紹介されている。

 本データはあくまで「暴力団構成員等」が敢行した犯罪の集計となりますが、彼らが直接的に関与する事例の方が少ないであろうことからみても、マネー・ローダリングが様々な形で結構身近なところで行われていることや、暴力団によるマネー・ローンダリング事犯への関与が極めて高いといった認識が必要だと思われます。

2.最近のトピックス

1.暴力団と反社会的勢力
1)平成24年末現在の暴力団員数

▼警察庁「平成24年の暴力団情勢」

 平成24年末現在の暴力団員(暴力団構成員および準構成員)は前年比で約7,100人減の約6万3,200人だったことが分かり、統計の残る昭和33年以降最少となり、6万人台になるのは初となります。平成23年10月の暴排条例の全国施行や昨年の暴対法の改正など、これまでの暴力団対策に一定の効果が出てきている表れであると言えます。

 ただし、前年比1割以上の急激な減少が続いているというこの数値を捉えるにあたっては、暴排条例等における元暴力団員の「5年卒業基準」をはじめ、暴力団員として活動することがますます難しくなっている現状から、「偽装離脱の増加」といった意味合いも考慮する必要があります。暴対法や全国の暴排条例が直接規制している暴力団員が減少したからといって、企業が排除すべき反社会的勢力は必ずしも減少しているわけではありません。むしろ、暴力団という枠にこだわらない「反社会的勢力」の捉え方を明確にする必要に迫られており、企業実務における反社チェックや排除実務の難易度がますます上がっているとの認識が必要です。

2)半グレを「準暴力団」として対策強化へ

 暴走族「関東連合」のOBグループなど「半グレ」と呼ばれる集団による悪質な事件が相次いでいることや、「締め付けが厳しくなった暴力団に代わり台頭してくる危険性もある」などの理由から、警察庁が、こうした集団を「準暴力団」と位置づけ、実態解明や取り締まりを強化するということが報道されています。

 報道によれば、警察庁の内部通達で「暴力団のような明確な組織性はないが、集団的または常習的に暴力的不法行為等を行っている」と定義し、法的根拠はないものの、取締り強化の対象となるということです。

 企業の実務からみれば、この「準暴力団」を反社会的勢力に位置付け、排除対象として捉えていくことになりますが、「関係を持つべきでない相手」としてこれまで通り扱うことで問題はないと思われます。

2.改正暴力団対策法と暴力団対策
1)改正暴力団対策法による暴力団事務所使用差し止め代理訴訟「適格団体」の認定

 前回もお話した通り、代理訴訟を行うことができる「適格団体」の認定を受けるためには、国家公安委員会が、十分な組織力、専門スタッフの有無、安定した財政基盤の3点を審査するとされており、高額な訴訟費用の負担などの点で、そもそも認定される暴追センター自体も少数にとどまる可能性があるとの懸念があります。

 そのような中、公益財団法人「暴力団追放運動推進都民センター」(東京都)が、「適格団体」としての認定を国家公安委員会から受けています。また、同時に、埼玉県、徳島県、佐賀県、大分県の各暴追センターについても認定を受けたということです。

2)改正暴力団対策法による「特定」指定2か月

 改正暴力団対策法に基づき、工藤会が「特定危険指定暴力団」に、道仁会と九州誠道会が「特定抗争指定暴力団」に指定されて2か月が経過しましたが、組員の集合や組事務所への立ち入りが禁止された九州の特定抗争の警戒区域では、街中から組員の姿が減り、市民から安堵の声も聞かれるなど、一定の効果は出てきているということです。

 一方で、山口、福岡両県公安委員会から「特定危険指定暴力団」に指定された工藤会は、「法の下の平等に反して違憲」などとして、両県の指定処分取り消しを求める行政訴訟を山口、福岡両地裁に起こしています。

 「暴力団構成員という地位は、暴力団を脱退すればなくなるものであって社会的身分とはいえず、暴力団のもたらす社会的害悪を考慮すると、暴力団構成員であることに基づいて不利益に取扱うことは許されるべきであるというべきであるから、合理的な差別であって、憲法14条に違反するとはいえない」(広島高裁平成21年5月)とする判例もあり、その後の暴排を巡る社会的な風潮や同団体らが行ってきた行為等を鑑みれば、どちらに理があるかは自ずと明らかだと思われます。

 暴力団対策法や福岡県暴力団排除条例の相次ぐ改正により、その行為に様々な規制がかけられ、自由度と資金源を奪われて対応に窮している状況が窺えますが、事業者に対する揺さぶりは今後も激しさを増すことが予想され、官民を挙げての取組みの強化がますます求められていると言えます。

3)福岡県警が「保護対策室」を新設

 福岡県警は、暴力団による一般市民への銃撃や抗争事件が後を絶たないことから、市民保護のための専門部署「保護対策室」を新設する予定です。約110人態勢という市民の身辺警護のための大規模な部署は全国初だということであり、保護対策室の新設で市民の安全を確保するとともに、暴力団に関する市民からの通報を促す狙いがあるとされています。

 前項でもお話した通り、事業者に対する揺さぶりは今後も激しさを増すことが予想されます。条例の改正に続く、このような取組みの強化は、事業者にとっても心強いものでもあり、不当要求等に対する事業者の毅然とした対応を可能にするための拠り所(後ろ盾)として機能していくことが期待されます。

3.薬物犯罪の動向
1)覚醒剤:密輸ルート、アフリカ急増中国抜き3年連続最多

 昨年1年間に税関が摘発したアフリカからの覚醒剤密輸件数は31件(81キロ)で、地域別では3年連続で最多だったということです。政情不安に伴い出入国管理がずさんになっていることが背景にあるとされ、マリなど紛争を多く抱える西アフリカが製造拠点になっているとの指摘もあります。また、横行していた「欧州人」又は「若年層」の運び屋による密輸入事犯が激減し、メキシコを中心とする「中南米仕出し」の運び屋が増加するなど運び屋による密輸入事犯のトレンドが変化している状況にもあるようです。

 覚せい剤が暴力団の資金源となっている状況は今でも変わらず、手口の多様化・巧妙化、あるいはグローバル化を通じて、安定的に収益を稼ぎ出す組織力には驚かされます。

2)覚醒剤の押収量、12年20%増

 前項とも関連しますが、財務省は、2012年に全国の税関が空港や港湾などで押収した覚醒剤の量が約482キログラムだったと発表しています。覚醒剤の押収量は、過去10年で最高となりましたが、密輸の摘発件数自体は減少しており、大口の密輸が増えているとの実態が明らかになりました。

▼財務省「平成24年の全国の税関における関税法違反事件の取締り状況」

3)静岡地検覚せい剤の還付公告

 事件の捜査で見つかった持ち主不明の押収物として、「覚せい剤」と「大麻」の還付公告が静岡地検に掲載されているようです。

 法律上、押収物の返還は捜査当局の義務とされ、今回の地検の対応に問題はないのでしょうが、今回の措置は、違法薬物が対象であり、(申し出る人がいないであろうことが予想されますから)この対応には疑問を感じざるを得ません。

4.生活保護制度を巡る動向
1)宮崎市の生活保護申請却下巡る訴訟で男性の敗訴確定

 暴力団組員であることを理由に宮崎市から生活保護の受給申請を却下された同市の男性が、「脱退して組員ではない」として却下処分の取り消しを求めた訴訟で、最高裁が男性の上告不受理を決定したということです。

 この事案では、1審の宮崎地裁の判決では、警察情報に基づき生活保護申請を却下したことを違法とし、「警察情報に頼ることなく、関係者等への確認調査を行うべき」とされた点が注目されましたが、控訴審判決では、組事務所に男性のネームプレートが保管されていたことや、男性が高利貸しによる返済金を受け取っていたことなどから暴力団組織や関係者と強く結びついており、最低限の生活は維持できていたとして、宮崎市の対応が適法とされたものです。

 暴力団員の認定については、最終的には警察に照会することが実務上重要となりますが、それ以外にも様々な情報を収集したうえで、このようなリスクも考慮しながら、十分な説明責任が果たせるよう(訴訟にも耐えられるよう)手を尽くすことが求められると言えます。

2)埼玉県議会、宿泊所「貧困ビジネス」規制条例案を提出

 生活困窮者らを受け入れる「無料/低額宿泊所」の運営業者の中には、受給者から保護費全額を受け取って一部のみ小遣いとして渡したり、劣悪な住宅に入居させたりする業者がいるため、適正な運営を求める条例が成立しそうです。いわゆる「貧困ビジネス」の代表的な形態であり、背後で暴力団が組織化しているとも言われており、このような規制が強化されることは大変望ましいことだと言えます(なお、暴力団の関与する「貧困ビジネス」については、当社コラム「SPNの眼2013年2月号」をご参照頂ければと思います。

▼SPNの眼2013年2月号

3)大阪・あいりん地区薬物摘発者の37%が生活保護受給

 大阪市西成区のあいりん地区で、昨年1年間に覚醒剤や大麻の売買で摘発された購入者らのうち、少なくとも37%にあたる155人が生活保護受給者だったことが大阪府警薬物対策課への取材で分かり、生活保護費が薬物の購入に充てられている実態が浮き彫りになっています。さらに言えば、生活保護費が暴力団の資金源になっているということでもあり、徹底的な取り締まりや厳罰化、不支給措置を講じるといった対応も必要なのではないでしょうか。

5.その他暴力団犯罪を巡る動向
1)風俗店無料案内所に対する規制

 静岡市にある風俗店の「無料案内所」で、違法に派遣型風俗店(デリバリーヘルス)の受け付けを行ったとして、静岡県警が、案内所やデリヘル店の経営会社役員や社員の男女3人を風営法違反(営業禁止地域での受付所営業)の疑いで逮捕しています。さらには、月額250万円ほどが暴力団に上納されていたとの疑いがあるということです。

 案内所については、東京都や千葉県、愛知県、京都府、大阪府、広島県、直近では福岡県(昨年10月施行)などの条例で出店の際に経営者の届け出義務などがありますが、静岡県では特段の規制がされていません。そのため、暴力団と関係のある人物による出店を見抜くなどして制限することが困難であり、暴力団排除条例施行などで資金集めが苦しくなった暴力団の資金源となっていると言われています。

2)会社分割制度を悪用した犯罪

 会社分割制度を悪用して多数の架空会社が設立され、そのうち、少なくとも22社が、社債や未公開株など金融商品を巡る詐欺、競馬やパチンコの必勝法詐欺、架空請求、出会い系サイトの悪用、ヤミ金融などの犯罪に使われるなど犯罪の温床となっていたということです。広島県警によると、分割設立された200~900の会社の多くが20万~30万円で犯罪グループに売却されており、中には150万円の高額で売られた会社もあったといいます。

 反社チェックの重要な手法のひとつである商業登記情報のチェックにおいては、過去の履歴を確認するため、「履歴事項全部証明書」や「閉鎖事項証明書」などを取り付け、会社分割などの事実が見られる場合は十分注意する必要があります。その背景には、本事例のように簡単に売買されたり、実態のないペーパーカンパニーとして利用されたり、偽装するためのハコとされるなどして犯罪に悪用されることが多いという実態があるからです。

3)振り込め詐欺の手口の巧妙化

 私大生を「受け子」に使った振り込め詐欺を行ったとして、山口組系組幹部らが逮捕されましたが、警視庁では、10億円以上が詐取され、詐取金が暴力団に流れていたとみているということです。また、直近では、中学生が「受け子」となった事件も複数報道されています。

 振り込め詐欺については、暴力団が直接手を染めるというより、半グレ集団のような連中を組織化することによって犯罪を敢行している実態が知られていますが、それにとどまらず、普通の青少年が、正に「アルバイト」感覚で、「受け子」役を担っていたという事実に驚きを禁じえません。手口の巧妙化、組織の狡猾さはもちろんですが、これだけ社会問題化している犯罪に軽い気持ちで手を染めてしまうという青少年のモラルの低下もまた重要な問題です。もともと青少年はアウトロー的なものに感化されやすい性向がありますし、「遊びたい」「楽しみたい」「遊ぶ金が欲しい」という欲望が道徳心を抑えられない傾向が強まっているように思われます。

 脱法ドラッグから覚せい剤などの薬物犯罪に高い確率でエスカレートするという現実、さらには、アルバイト感覚での行為が最終的には罪の意識を麻痺させてしまい犯罪者を生むという「負の連鎖」を早い段階で断つ努力(青少年の健全な育成)が市民や事業者の責務としても求められていると言えます。

4)除染作業のコンプライアンス

 東京電力福島第一原発事故に伴う除染作業で、暴力団排除のため「下請けは1次まで」とする施行規則に反して、福島県の複数の自治体で2次以降の下請け(現実に4次下請けまでという事例も)が入っている実態が明らかになっています。行政の監視が形骸化している可能性があり、暴力団が受注に介在するなど違法な派遣を助長しかねない状況です。

 通常の取引においても、数次にわたる重層的な下請け構造における暴力団排除の取組みについて、実効性を担保することが大変難しいのは事実です。しかしながら、元請けが全ての下請け先を直接チェック・管理するという方法以外では、相手方自体が「関係のある取引先」(下請け先や配送業者、仕入先など)の健全性の確保、コンプライアンス順守を誓約させ、問題発覚時に適切な対応をしない場合には、契約解除を含む厳格な対応をするという「関連契約先管理におけるチェーン・マネジメント」を機能させることが最も現実的な手法であり、そこには、元請けとしての強い意思が重層的な構造の末端まで伝わることが前提となります。

 度々指摘している「東電や行政の脇の甘さ」が問題の原因なのでしょうが、脇の甘さを生んでいる「『背に腹は変えられない』『現実的にそこまで管理できない』とする一見もっともらしい理由による思考停止」「認識の甘さ」「覚悟のなさ」、もっと言えば「解決しようとする意思の薄弱さ」に原因が求められると思います。

5)銀行の暴力団関係企業への不正融資事件

 某地方銀行の九条支店(大阪市)の不正融資事件で、会社法の特別背任罪に問われた元支店長と元暴力団組員の控訴審判決で、大阪高裁は、元支店長に懲役3年10月、元暴力団員に懲役3年2月を言い渡しています。

 暴力団が銀行を攻略しようとする際には、決裁権限のある立場の者(例えば支店長)がターゲットになりやすいこと、暴力団に篭絡されてしまう「個人の弱さ」が直接的な原因とはいえ、個人の意識を組織がコントロールすることは難しいということ、さらには、個人の背信的な行為について、社内ルールの逸脱や無力化を容易に実行させてしまうけん制機能の弱さ(内部統制システムの脆弱性)がその根本的な原因であるということなど、本事例から様々な教訓を得ることができます。

3.最近の暴排条例による勧告事例ほか

1.東京都の勧告事例

 東京都公安委員会は、競艇のノミ行為をする場所を提供するなど、指定暴力団山口組系組幹部に利益供与をしたとして、都内の飲食店経営の男性に対し、東京都暴力団排除条例に基づき利益供与を止めるよう勧告、この組幹部にも利益の受け取り中止を勧告しています。

2.静岡県の勧告事例

 静岡県公安委員会は、暴力団の組行事のために仕出し弁当76個など(10万4,500円分)を販売したとして、静岡県暴力団排除条例に基づき、食料品販売店の男性店長に利益供与をやめるよう勧告しています。男性店長は「付き合いがあって断れなかった」などと話しているとのことであり、依頼した組幹部に対しても、利益供与を受けないよう勧告がなされています。

3.大阪府の勧告事例ほか
1)暴力団組員からえとの置物購入

 大阪府公安委員会は、暴力団の威力を利用する目的でえとの置物を2万円で購入したとして、大阪府内の飲食店経営者と山口組系組員の2人に大阪府暴力団排除条例に基づく勧告書を出しています。

2)安値での中古車販売など

 大阪府公安委員会は、120万円相当の中古車を13万円で販売するなど安値で中古自動車の売買契約を結んだとして、指定暴力団酒梅組系組長と大阪府内の自動車販売業者の男性に対し、大阪府暴力団排除条例に基づき勧告しています。なお、同男性は、駐車違反金や保険料を肩代わりしていたとのことです。

3)「もうかる」「トラブルに心強い」など全員が違反認識

 大阪府警によると、暴排条例を適用された事業者らの全員が「条例に違反している」との認識を持ちながら、「付き合いを断ち切れない」などの理由で利益供与を続けていたとのことです。「もうかる」「トラブルのときに心強い」という(今となっては時代遅れと言える)認識・意識が背景にあると思われ、暴力団とのつながりを完全に断つための社会的な合意形成の徹底が求められています。

4.山形県の勧告事例(注意書の交付)

 山形県警村山署は、暴力団幹部が福島第1原発事故に伴う放射性物質の除染に無許可で作業員を派遣していた事件に関して、作業員を受け入れていた大江町の板金業者と南陽市の土木業者に対し、山形県暴力団排除条例に基づき、今後暴力団関係者と取引しないよう注意書を交付しています。板金業者は、暴力団関係者との認識はあったとみられる一方で、土木業者は面識がある程度と報道されており、いずれも震災復興作業に人手が足りなくなったため、作業員を受け入れていたとのことです。

5.宮城県内自治体における暴力団排除条例施行状況

 宮城県内の11市町が今年に入り新たに暴排条例を制定するなど(これまでに17市町、6月までに34市町村)、暴排の取組みが進展を見せています。一方で、宮城県内の暴力団員の約4割が居住し、東北最大の飲食店街、国分町を抱える仙台市では、(既に様々な規制を導入していることもあり)暴排条例の制定を予定していないとのことです。

 前回の事例でもご紹介しましたが、捜査関係者の「仙台市は暴力団に対する警戒感や排除意識が他の自治体より低い」との指摘を重く受け止め、復興事業からの暴力団排除の要として徹底した取組みを期待したいと思います。

Back to Top