暴排トピックス

暴力団等の最近の動向(最新の統計資料から)

アバター 取締役副社長 首席研究員 芳賀恒人

2013.04.10
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1.暴力団等の最近の動向(最新の統計資料から)

(1)平成24年の暴力団情勢

▼警察庁「平成24年の暴力団情勢」

1)平成24年末現在の暴力団員数など

前回も取り上げましたが、平成24年末現在の暴力団員(暴力団構成員および準構成員)は前年比で約7,100人減の約6万3,200人だったことが分かりました。統計の残る昭和33年以降最少であり、6万人台になるのは初となります。また、内訳では、暴力団構成員は28,800人(▲3,900人)、準構成員は34,400人(▲3,200人)となり、準構成員の比率が年々高くなる傾向が鮮明になりました。

その他、反社会的勢力の属性として政府指針(平成19年)が例示しているものについては、以下の通りの結果となっています。

  • 総会屋・会社ゴロ等

平成24年末時点で、総会屋は280人、会社ゴロ等は970人とされており、あわせて前年から50人減ではあるものの、ここ数年は横ばいの数値となっています。

ちなみに、「総会屋・会社ゴロ等」とは、以下の通り定義されています。

    • 総会屋
      単位株を保有し、株主総会で質問、議決等を行うなど株主として活動する一方、コンサルタント料、新聞、雑誌等の購読料、賛助金等の名目で株主権の行使に関して企業から不当に利益の供与を受け又は受けようとしている者
    • 新聞ゴロ
      総会屋以外で、新聞、雑誌等の報道機関の公共性を利用し、企業等の経営内容、役員の不正等に付け込み、広告料、雑誌購読料等の名目で金品を喝取するなど暴力的不法行為を常習とし又は常習とするおそれのある者
    • 会社ゴロ
      総会屋、新聞ゴロ以外で、企業等を対象として、経営内容、役員の不正等に付け込み、賛助会等の名目で金品を喝取するなど暴力的不法行為を常習とし又は常習とするおそれのある者
    • 社会運動等標ぼうゴロ(社会運動標ぼうゴロ及び政治活動標ぼうゴロ)
  • 平成24年末時点で、社会運動標ぼうゴロは620人、政治活動標ぼうゴロは5,700人とされており、あわせて前年から700人減少しているなど、減少傾向にあります。
2)暴力団による資金獲得犯罪状況

同じ資料に記載されている暴力団による資金獲得犯罪状況については、詐欺が若干増加しているものの、窃盗が大きく減少しています。もっとも、平成24年中、窃盗で検挙された暴力団員の数は、暴力団員の総検挙人員の約12%を占めており、暴力団が詐欺や窃盗を資金獲得の手段としている傾向はいまだに続いていると言えます。

一方、覚せい剤取締法違反、恐喝、賭博及びノミ行為等(以下「伝統的資金獲得犯罪」)の全体の検挙人員に占める暴力団員の数は、50%で推移しています。参考までに、刑法犯・特別法犯の総検挙人員に占める暴力団員の数が6%台であることから、伝統的資金獲得犯罪は正に暴力団の関与の割合が相当高いと言えます。さらに、平成24年の伝統的資金獲得犯罪に係る暴力団員の検挙人数は8,209人(前年比471人減)で、暴力団員の総検挙人員の34.0%を占めています。

3)暴力団排除条例(暴排条例)の施行状況等

さらに同じ資料に記載されている市長村における暴排条例の施行状況については、平成23年末では9県(福岡、三重、滋賀、和歌山、山口、愛媛、高知、大分及び宮崎)内の全市町村で制定されていましたが、平成24年においては、青森、秋田、山形、茨城、群馬、千葉、神奈川、富山、石川、福井、岐阜、愛知、奈良、岡山、広島、佐賀、長崎、熊本及び沖縄の19県(あわせて28県)内の全市町村で制定されたということです。

また、暴排条例に基づいた勧告等の実施状況については、平成24年における実施件数は、勧告が68件、指導が3件、中止命令が6件、検挙が5件となっています(平成23年中は勧告が62件、指導が5件、中止命令が2件、検挙が3件)。なお、これまでご紹介できていない勧告の事例としては、以下のようなものがあります。

  • 会社の役員が、トラブル等を解決してもらうため、共政会傘下組織組員に用心棒料を供与していたことから、同役員と同組員に対し、勧告を実施した事例(広島、1月)
  • 産業廃棄物処理会社の経営者が、暴力団の活動に協力することを目的として、稲川会傘下組織組長に普通乗用自動車を無償で貸与していたことから、同経営者と同組長に対し、勧告を実施した事例(岐阜、2月)
  • 土木造園会社の経営者が、暴力団事務所と知りながら松葉会傘下組織事務所の水道料金を肩代わりしていたことから、同経営者と同事務所を管理する組長に対し、勧告を実施した事例(茨城、4月)
4)暴力団相談の受理状況

警察及び暴追センターにおける暴力団相談の受理件数については、平成15年以降減少傾向にありましたが、平成20年から増加傾向に転じ、平成24年においては、46,351件(前年比5,380件増)まで増加しています。このうち、警察の受理が22,369件(同2,897件増)、暴追センターの受理が23,982件(同2,483件増)となっています。市民や事業者が、暴力団に対して泣き寝入りすることなく、毅然とした対応のために、警察等への相談を行うようになってきたものと考えられます。

また、代表的な事例として、以下のようなものが紹介されています。

  • 暴追センターが、元暴力団員から「刑務所を出所したが、行くところもなく野宿している状態である。助けて欲しい。」旨の相談を受理し、緊急宿泊施設を紹介した上、他県の暴追センターと連携して就労支援を行った事例(京都、6月)
  • 暴追センターが「暴力団員から仕事上の不正事実に関して因縁をつけられている。」旨の相談を受理し、速やかに警察へ引き継ぎ、警察において強要未遂で極東会傘下組織組員を検挙した事例(新潟、9月)
(2)金融検査結果事例集(反社会的勢力への対応態勢)

▼金融庁「金融検査結果事例集(平成24検査事務年度前期版)」

年に2回、金融庁から公表されている同事例集から、反社会的勢力への対応態勢についての指摘があったものをいくつかご紹介いたします。これらの事例を見る限り、回を追うごとに、金融機関に対する要求レベルが高くなっていることが実感されます。したがって、一般の事業者においても、このレベルまでを見据えた制度設計や運用が求められるものと認識することが重要となります。

1)地域銀行(大中規模)

新規口座開設における反社チェックの事前実施が必須であること、および暴力団関係者と判明した場合に取引解消に向けて取組むことが必須であると指摘している点が注目されます。

<指摘内容>

  • 取締役会は、普通預金等の口座開設に当たり、暴力団員等と取引を防止するための事前審査を営業店に行わせていない。このため、普通預金等の口座開設時には、口座開設者が暴力団員等であるかを把握することができず、口座凍結等に向けた迅速な対応を行う態勢は整備されていない。
  • 取締役会は、総務部門に対して、取引解消に向けた個別具体的な対応方針を策定するよう指示していない。このため、営業店において、口座の開設後に暴力団員と判明しているにもかかわらず、取引解消に向けた対応を行わないまま、新たな口座開設に応じている事例が認められる。
2)地域銀行(中小規模)

暴力団関係者については、その同居家族等に対しても十分な注意を払わなければならないとして、より一層踏み込んだ実態の把握が必要と指摘している点が注目されます。

<指摘内容>

  • コンプライアンス統括部門は、「コンプライアンス・マニュアル」を策定し、暴力団関係者及びその同居家族等について、新聞等による情報収集を行った上で、その属性に応じて区分し、反社会的勢力リストに登録することとしている。しかしながら、同部門は、同リストに登録されている先について、同居家族等の有無を確認していないほか、属性に応じた具体的な取組方針等も定めていない。こうした中、「暴力団関係(構成員)」として区分されている預金取引先について、住所及び名字が同一で同居家族である疑いのある顧客が存在するにもかかわらず、同リストへの登録が検討されていない事例が認められる。
3)地域銀行(大中規模)

事前審査にとどまらず、来店した顧客といった「即時性」まで反社チェックに求めていること(窓口対応時での反社チェックの実施)については特に注意が必要です。

<指摘内容>

  • コンプライアンス統括部門は、反社データベースを営業店に還元しておらず、営業店から反社データベースに関する照会を受けた場合に個別に対応することとしている。このため、営業店の窓口担当者は、来店した顧客が反社会的勢力に該当するかどうかについてのチェックを即時に行うことができず、一部の営業店においては、来店した顧客が反社会的勢力であったにもかかわらず、これを認識しないまま、保険商品を勧誘した事例などが発生している。
4)信用金庫及び信用組合(大規模)

反社会的勢力のデータベースについて、自助努力による整備を求め、その運用を厳格にするよう指摘している点が注目されます。

<指摘内容>

  • コンプライアンス統括部門は、「コンプライアンス・マニュアル」を策定し、営業店に反社会的勢力の情報を収集させた上で、反社会的勢力のリストを作成し、同リストを営業店に還元することとしている。しかしながら、同部門は、営業店に対して、事業地区内の反社会的勢力の情報を幅広く収集するよう指示を徹底していない。こうした中、営業店において、地域版の新聞情報に反社会的勢力の情報が掲載されているにもかかわらず、同部門に報告しておらず、同リストへの登録が漏れている事例が認められる。
(3)金融検査結果指摘事例集(本人確認・疑わしい取引)

同じ資料から、マネー・ローンダリング防止態勢に関する指摘を取り上げますが、反社排除と同様、地域銀行レベルに対しても、徐々に取組みを徹底するよう求めてきている点が特に注目されます。

「口座凍結名義人リスト」の確実な活用はもちろんのこと、不正利用口座検知システムの導入にとどまらない、事例分析に基づくチェック方法の不断の見直しといった「機能させる(見つけ出すための)運用」が求められていると言えます。

なお、ヤミ金被害については、昨年325件のヤミ金融事件が摘発され、被害額は約109億9,000万円にのぼったものの、被害額は統計開始の1999年以降で最少となったということであり、「口座凍結名義人リスト」の活用による成果が出ていると思われます。

1)地域銀行(大中規模)

疑わしい取引の届出をしているのに事案の分析・再発防止が不十分と指摘されています。

<指摘内容>

  • 市場部門は、被仕向国で入金が謝絶され、送金依頼人の申出により受取名義人を変更して送金を実行した後、疑わしい取引として届出を行った事例について、当該事例の発生後、同様の事例の発生を未然に防止するための改善策の検討や、営業店に対する周知を行っていない。
  • このため、その後も営業店において、取引内容等の詳細な確認や疑わしい取引に係る市場部門及び事務リスク管理部門への報告の検討が不十分なまま、同様の送金が行われた事例が発生している。
2)地域銀行(大中規模)

毎日150件~200件のチェックを兼業の2名で実施することでは十分でないと「実効性を確保する」ために具体的に指摘がなされている点が注目されます。

<指摘内容>

  • 事務リスク管理部門は、「不正利用口座検知システム」を活用した同取引の検証について、現状では十分な検証が困難であるにもかかわらず、検証体制の見直しを検討していない。
  • コンプライアンス統括部門も、事務リスク管理部門における同取引の検証状況をフォローしておらず、検証体制の見直しの必要性があることを把握していない。
  • こうした中、事務リスク管理部門が、同システムで抽出し、同取引に該当しないと判断した取引の中に、捜査当局等から凍結依頼のあった口座が相当数含まれている実態が認められる。

暴排にせよアンチ・マネロンにせよ、地銀、信金・信組などの地域金融機関レベルにとっては、形式にとどまらず「実効性を確保する」ことが求められるという、相当ハードルの高い要請レベルとなってきていることが実感されます。

2.最近のトピックス

(1)AML(アンチ・マネー・ローンダリング)/CTF(テロ資金供与対策)

①仮想通貨に対するAML

米国はマネー・ローンダリング規制を、いわゆる「仮想通貨」にも適用する方向だということです。以前より、インターネット上で取引される新しい形の貨幣が、違法行為の資金源になっているとの懸念はありましたが、これにより、普及しつつある仮想通貨を発行・交換する企業にも、従来型の送金サービス業者と同様の規制が適用されることになります。

そして、特に注意すべき点としては、同様の規制が日本でも行われるようになった場合、一般事業者が「特定事業者」として金融機関等と同等のレベルでAMLの取組みを行うことが求められる可能性があるということであり、今後の動向について、重大な関心をもって注視していく必要があると言えます。

②テロ資金提供処罰法改正案

先日、テロに結びつくことを知りながら資金提供する行為を罰するテロ資金提供処罰法の改正案が閣議決定されました。テロ組織のアジトに使用されるような不動産の提供などにも処罰対象を広げるといった内容です。

現行法はテロリストが武器を購入するために資金を集めたり、テロリストを援助する目的で資金を提供したりする行為を処罰対象としていますが、国際組織から対策が不十分だと指摘を受けており、アルジェリア人質事件も踏まえて改正を急いだ背景があるとされています。

CTFの強化はAMLと同様、国際的には日本の法制自体が脆弱だと指摘されてきた経緯があります。加えて、サイバーテロ、贈収賄など既に国内でも認知されているリスクは、現在進行形で急速にグローバル化している状況にあります。国内の企業にとっても、否応なく海外コンプライアンスの圧力に対応を迫られるのはもはや自明であり、国内の法改正の動向に先んじて、いち早く国際的な潮流を掴むことが重要となります。

③国連総会で武器貿易条約(ATT)が成立

通常兵器の国際取引を規制する初の包括ルールとなる武器貿易条約(ATT)が、国連総会で賛成多数により採択され、成立しています。安保理制裁決議の禁輸措置に違反したり、虐殺や戦争犯罪に使われたりするとわかっている場合、輸出入などを禁止するといった内容で、これまで「法の欠如」が指摘されてきたところではありますが、本条約の発効により、闇市場への流出防止や虐殺・テロ予防につながることが期待されます。

④イタリアマフィア関連企業家の1560億円の資産を押収

イタリア警察当局は、マフィアなど犯罪組織との結びつきが疑われる南部シチリア島在住の男性企業家の約13億ユーロ(約1,560億円)相当の資産を押収、当局による押収資産額としては、イタリア史上最高だということです。男性は太陽光や風力などの代替エネルギー分野における第一人者で、マフィアなどの犯罪組織の後ろ盾で商売を大きくしてきた疑いがあるとされています。

⑤タックスヘイブンの情報開示

英領バージン諸島、ケイマン諸島などに登記された12万を超える数の企業やファンドに関する情報の開示が始まっています。これらの地域は、タックスヘイブン(租税回避地)として知られ、節税やマネー・ローンダリング目的の巨額の資金が世界中から流れ込んでいますが、その実態を明らかにする秘密の電子ファイルについて、米国の非営利の報道機関「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)が入手し、解析が進んでいるとの報道がありました。

これまで、タックスヘイブンにおける匿名性の高い取引によって、脱税や粉飾決算、マネーローンダリングの温床となっているとの批判が根強くありました。また、一方で、スイスの匿名口座に関する情報の開示も進んでおり、匿名取引の排除による透明性が高まっています。それは同時に、借名・偽名・なりすまし等の疑わしい取引の排除の強化=顧客管理の強化が求められるということにあり、それが今回の犯罪収益移転防止法の改正の眼目だと言えます。
今や、アンチ・マネー・ローンダリングと反社排除・暴排は相互に密接な連携のもと取組むべき時期にきていると言えるでしょう。

(2)企業トップの不適切な対応

高知市の土佐電気鉄道の社長が昨年5月、同社会長(高知県議)同席のもと、同社で面談した株主の男性に、元暴力団組長(故人)の名前とともに「弘道会が後ろについている。うるさいやつがいたら、名刺と写真を見せろと言われている」と発言したと記者会見で公表しています。また、当該株主への対応は「総会屋対策」だったという報道もあります。

高知県は同社に関連する予算(補助金も含め19億2,000万円のうち、県民生活に影響の出ない範囲での)執行の凍結を決議、高知県暴力団排除条例に抵触するかどうか調査する方針ということであり、同社長は即刻辞任届を出しています。

昨今の社会情勢においても、経営トップが、暴力団関係者と「社会的に非難されるべき関係」を維持し、その結果、予算凍結措置や暴排条例違反に抵触するといったダメージの大きさまで認識できていなかったということについては、その意識の低さ、脇の甘さに驚きを禁じえません。

(3)福岡県警に「保護対策室」発足

福岡県内で暴力団の関与が疑われる事件が相次いだことを受け、暴力団犯罪から市民を守る福岡県警の専従組織「保護対策室」が発足しました。全国でも最大規模となり、身辺警戒のほか、捜査を通して、暴力団による襲撃事件を未然に防ぐことを目指すということです。

福岡県暴力団排除条例においても、第7条(警察による保護措置)において、「警察本部長は、暴力団の排除のための活動に取り組んだこと等により暴力団から危害を加えられるおそれがあると認められる者に対し、警察官に警戒をさせるなど、当該者の保護のために必要な措置を講ずるものとする。」と定められていますので、福岡県警はその体制の強化をしていくことが求められています。

なお、暴力団の抗争としては、福岡県だけでなく、山梨県においても、昨年11月以降、山梨一家から山梨侠友会が分裂したことに伴う暴力団抗争が続いており、住宅や乗用車への拳銃の発砲が相次いでいます。

(4)原発と暴力団排除

①原発作業員の身元調査義務化へ

原子力発電所においては、定期検査時には数千人の作業員が出入りするといいますが、現状では、これまで運転免許証などによる本人確認にとどまり、犯歴や薬物依存の有無まで事前に調べる欧米に比べ、テロ対策の甘さが指摘されていました。

国際原子力機関(IAEA)は、昨年2月に改定した「核物質防護に関する勧告」で、原発作業員の身元調査の強化を求めており、今後、具体的な手法等が確定していくことになります。

②除染現場に無許可派遣元暴力団幹部に猶予付き判決

以前の暴排トピックスでもご紹介した除染現場に無許可で派遣した元暴力団員に対する労働者派遣法違反に関する裁判で、元指定暴力団住吉会系幹部組員に懲役8カ月執行猶予3年(求刑懲役8カ月)の判決が出ています。

この事件では、従業員1人当たりの日当12,000円ないし17,000円のうち、2,000円ないし6,000円を抜いて従業員に支払われ、当該元暴力団幹部は総額計480万円以上の利益を得たとされています。

(5)生活保護を巡る動向

①生活保護不正受給件数が過去最悪

厚生労働省によると、不正受給件数は、全国で35,568件(前年度比10,213件増)、金額は173億1,299万円(同44億3,874万円増)に上り、過去最悪を更新したということです。

▼厚生労働省「被保護者調査(月別概要:平成24年12月分概数)

内容は、収入があるのに申告していないケースが45.1%と最も多く、年金を申告しないケースが24.8%で続いています。同省では、不正受給の罰金引き上げや、資産調査の徹底など対策を強化する方針だということです。

実際に不正受給が組織的に行われたり、その背後に暴力団が関与した事例も多数発覚している状況でもあり、税金が暴力団の活動を助長することのないよう、受給資格審査の厳格化や十分な実態モニタリングを実現してもらいたいと思います。

②生活保護担当課に警官OBを採用(帯広市)

帯広市は、生活保護を所管する保護課に警察官OBの嘱託職員1人を初めて配置しています。原則受給が認められない暴力団員からの申請を却下したり、ケースワーカーに威圧的な態度を取る元暴力団組員への生活指導を円滑にしたりするのが狙いだということです。

③ギャンブルで浪費禁止=生活保護「適正化」の条例成立(兵庫県小野市)

生活保護費や児童扶養手当をパチンコなどのギャンブルで浪費することを禁止し、市民に情報提供を求める「福祉給付制度適正化条例」が4月1日より施行されています。既に、運用の在り方をめぐって議論が高まっていますが、不正受給の抑制や暴力団の活動を助長することのない制度設計においては、このような取組みもある程度必要なことと言えるかもしれません。

④貧困ビジネス規制条例成立(埼玉県)

生活保護受給者を劣悪な宿泊所に住まわせ、代金として保護費を不当徴収する「貧困ビジネス」を規制する埼玉県の条例が成立し、10月1日より施行されます。宿泊所の運営業者に、入居者と交わした契約内容を県に報告させたり、違反があった場合、県が是正勧告したり、勧告内容を公表したりできるといった内容となっています。

なお、貧困ビジネスについては、SPNの眼(平成25年2月号~暴排トピックス番外編)でも取り上げておりますので、あわせてご参照ください。

⑤生活保護不正見抜けず当時の市幹部に1億円賠償責任(北海道滝川市)

生活保護を受けていた夫婦が介護タクシー代約2億4千万円を不正受給した事件をめぐり、市に損害を与えたとして、市民169人が、当時の市長ら幹部5人に全額賠償させるよう滝川市(北海道)に求めた住民訴訟で、計9785万円の賠償を認める判決が出されました。生活保護の不正受給をめぐる民事訴訟で、行政の過失を認める判決は異例のことだということです。

「重大な過失があった」と認められたということですが、事案としてはこれだけの金額の不合理な内容ですから、当然、事実関係を詳細に調査し、金額については客観的に正当な根拠に基づいた支払いとならなければその責任を問われますし、一方で、きちんと調査したのであれば、その過程で元暴力団員であることも認識できていたものと推測されます(それが把握できない調査レベルだったということであれば、それ自体が問題となります)。また、それ以外にも、窓口担当課長等の現場の判断なのか、組織的な判断なのか(市長の責任は形式的な監督責任なのか、実質的な判断に関与したものなのか)といった点も重要となりますが、どのような経緯があったにせよ、市側として、説明責任を果たせるだけの職責を果たしていないように見えるのは、極めて残念です。

(6)脱法ドラッグを巡る動向

①脱法ハーブの包括規制と規制逃れ

脱法ハーブの材料として使われる可能性のある772種の化学物質を厚生労働省が「指定薬物」とし、製造や販売を禁止、その指定薬物を店頭に陳列したり、販売したりした経営者は5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金が科せられる初の包括規制が3月22日から始まっていますが、規制方針が打ち出された昨年11月末時点では大半が規制対象となる見通しだったにも関わらず、既に店頭には対象外の脱法ハーブが並ぶという状況に陥っています。

また、大阪府警によると、大阪府内の販売店数が1年前の半分以下に減る一方、宅配などを使った無店舗業者が増えているといいます。上記の厚生労働省令により店舗経営に行き詰まった業者が、人目に付かない方法で違法薬物を販売する手口に切り替えている実態が明らかになっています。

脱法ドラッグビジネスには、既に暴力団の関与した事例も発生しているところですが、暴力団の潜在化と同様、規制強化の裏返しとして、手口の巧妙化や潜在化が進行しており、ここでも終わりのない闘いが始まったと言えます。そして、脱法ドラッグが「ゲートウェイドラッグ」と言われ、その使用者が高い確率で覚せい剤等の違法薬物に手を出す現実がある以上、脱法ドラッグに対する規制を強化することが必要だと言えるのです。

②青少年の健全育成のために

国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の調査で、全国の中学生約55,000人のうち、約0.2%にあたる120が脱法ドラッグの使用経験があり、さらには、その約6割には大麻や覚醒剤の使用経験もあったとのことです。

そのような状況に対し、警視庁は、脱法ハーブを所持している少年や少女を補導するための具体的な手順を示した内部マニュアルを作成し、管内の警察署に通知しています。脱法ハーブの所持を補導対象として明文化するのは、全国の警察で初めてだということです。

社会からの暴排にとっても、青少年の健全育成の観点からの教育や社会環境の整備が重要であることはこれまでもお話してきましたが、事業者としても、一市民としての責務という意味にとどまらず、将来の従業員が違法薬物に手を出し暴力団と接点を持つことがないよう、従業員教育の延長線上と捉え、もっと主体的に関与すべきだと思われます。

(7)入れ墨を巡る訴訟の行方

以前の暴排トピックスで、入れ墨禁止と事業者の対応について取り上げましたが、その行方を注視していた裁判で、「入学契約上、学校が入れ墨を消すよう求める権利はなく違法」と判断され、入れ墨の禁止は学則などになく、学校側が除去手術をしながらの通学を拒否したのは指導の範囲を超えるとの判断が示されたということです。さらに、「反社会的集団のシンボルで、拒否する権利は社会規範として確立されている」との学校側の主張については「ファッションとして受け入れている人もいる」と退けたと報道されています。

本件については、詳細な事実関係が不明ですので、何とも言えない状況ですが、事業者としては、事前に契約・規約等で明確に表記しておくことが求められていると捉え、自社のスタンスを明確にしておく必要があることだけは言えるのではないでしょうか。

3.最近の暴排条例による勧告事例ほか

(1)栃木県の勧告事例

栃木県公安委員会は、製造業者が暴力団の活動や運営に協力する目的で購入することを知りながら、業者に仕入れ値の約2倍の3万円でしめ飾りを販売したとして、指定暴力団住吉会系組員に栃木県暴力団排除条例に基づく勧告(金品供与の禁止)を出しています。なお、当該業者については、口頭注意をしたということです。

(2)福岡県の勧告事例

福岡県警は、北九州市と福岡県遠賀郡内の建設会社や飲食業者などで作る指定暴力団工藤会系組幹部の支援組織「二十日会」を解体させ、福岡県暴力団排除条例に基づき、会に参加した建設業者5社を公共工事から排除するよう福岡県などに通報、社長ら11人に警告を出しています。

報道によれば、参加会員は1回の会合に会費5万円を徴収され、数の子(5000円程度)を組幹部から1万~5万円で購入、2011年には親睦会名目で数百人規模のパーティーも開かれたということです。

(3)岡山県の勧告事例

岡山県公安委員会は、2回にわたり、風俗営業者が用心棒料名目で暴力団組員に合計10万円を供与したとして、風俗営業者と暴力団組員それぞれに対し、岡山県暴力団排除条例に基づき、勧告を行っています。

(4)愛媛県の勧告事例

愛媛公安委員会は、暴力団組員に対しみかじめ料として1年間におよそ110万円を渡していた松山市市内の風俗業経営者と指定暴力団山口組系幹部組員に対し、愛媛県暴力団排除条例に基づく勧告を行っています。

(5)京都府の公共事業からの排除の事例

京都府は、府庁舎など府施設の清掃業務を委託していた清掃業者について、京都府警が暴力団員による詐欺事件の捜査を進める中で、暴力団員が同社の実質的な経営をしていることが判明したため、京都府暴力団排除条例に基づき、契約を解除したと発表しています。

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