暴排トピックス

【もくじ】―――――――――――――――――――――――――

1.排除実務の基本(その2)

1)弁護士相談

2)一次判断

2.最近のトピックス

1)暴力団排除に関する国民の意識調査

2)AML(アンチ・マネー・ローンダリング)/CTF(テロ資金供与対策)

3)暴力団等に関する最近の判例から

4)暴力団・組織的犯罪に関する最近の動向

3.最近の暴排条例による勧告事例ほか

1)兵庫県の公表事例

2)大阪府の勧告事例

3)福井県の勧告事例

4)暴対法に基づく逮捕事例

1.排除実務の基本(その2)

 前回から、既存取引先に関して、反社チェックや社内外からの情報提供を通じて疑わしい端緒を把握した場合の、「取引可否の判断」「具体的な排除に向けた取組み」などについての解説を試みております。

 前回は、端緒を把握した際の最初のステップである「実態把握」と「リスク評価」について取り上げましたが、今回は、警察相談に至る前段のステップとしての「弁護士相談」と「一次判断」について取り上げます。

1)弁護士相談

 ここで言う「弁護士相談」とは、前回取り上げた「リスク評価」を法的な側面から専門家のアドバイスをふまえて補強することが目的であり、時系列的には、自社のリスク評価を行う時点で同時並行的に弁護士に相談することが現実的な対応となります。

 また、この「弁護士相談」を「リスク評価」の一部として取り込むことにより、その判断の客観性・公正性といった部分を補強することにもつながります。

①事案の共有

 この段階で弁護士に相談する主旨としては、まずは、排除実務自体に潜む主に法的なリスクを客観的に提示してもらうことになりますが、それに止まらず、「実態把握」に基づく「リスク評価」(=この場合は特に「会社の姿勢・方向性」)を早い段階で共有するところに大きな意味があります。

 明確な確証があるとは限らない状況において、法的リスク、訴訟リスクと「会社の姿勢」(例えば、「怪しさが拭えないためとにかく早く関係を切った方が良いのではないか」など)を貫徹することとの間で「落とし処」を探り、排除に向けた論理構成や訴訟戦略を見据えて、その後のアクションの方向性を双方ですり合わせていく作業が不可欠となります。

②確認しておくべき事項

 事案を共有するだけに止まらず、その後の方向性を検討するための「リスク評価」の一環として、以下のような事項についてあらかじめ意見を頂いておくことは極めて有用です。

    • 同一性の精査

事件性のある事案などについては、「弁護士会照会制度」等を活用することによって、より精致な精査が行えることが期待できるなど、早い段階で同一性に関する見極めができる可能性があります。

    • 暴排条項/契約解除事由の適用の可能性

その後の追加情報の収集・分析の状況にもよりますが、手元にある情報をふまえて、暴排条項が適用できるかどうかの可能性、あるいは、その他の契約解除事由を適用した契約解除の可能性など、排除戦略の根幹となる対応方針を法的観点からアドバイスを頂くことは極めて重要です。

現時点で法的に契約解除できるにはリスクが高いといった場合には、その他の条項の適用に向けた情報収集が必要となりますし、そもそも法的対応が難しいと思われる場合には、他の方法での対応を検討する(実質的に取引を縮小するなど)といった方向性での活路を見出すためにも有用です。

    • 訴訟リスク/相手方からの反撃リスクの見積り

前回もお話しましたが、「訴訟リスク」への対応とは必ずしも「訴訟を避ける」こと(リスクヘッジ)だけではなく、「訴訟により自社の立場・主張を公にする」(リスクテイク)という対応も考えられます。

【注】過去の訴訟では、平成21年1月、広島市内のホテルが、挙式契約の相手方が暴力団員であることに気付き、契約約款に暴力団排除条項が整備されていないものの、同契約の解約を通告した事案に関し、同暴力団員が一方的な解約は不当として提起した損害賠償請求訴訟について、平成22年4月、広島地方裁判所は、「当事者が暴力団員かどうかは、ホテル側にとって、挙式の契約をするかどうかを判断する上で重要な事項であり、これを知らなかったとすれば、単なる動機の錯誤に止まらず、要素の錯誤に該当する。そうすると、本件契約におけるホテル側の意思表示が無効となるから、本件契約も無効となる。」として請求を却下したといったものがあり、企業姿勢を貫徹する、自社の立場を明確に主張することの重要性を痛感させられます。

さて、弁護士が慎重な姿勢を示すのは当然であり、自社としては、自らの考え・企業姿勢を正確に伝え、それに基づく法的なリスク・訴訟戦略を検討頂くというスタンスが必要です。

逆説的ではありますが、最終的な「訴訟リスク」の評価は自社の姿勢によるところが大きく、あくまで「自立的・自律的なリスク評価」がその前提となります。

    • 警察相談に関する相談

最終的な同一性の確認や排除に向けた相談・協力要請のための「警察相談」については、企業側の事前の準備が相当程度必要です。そのためのアドバイスはもちろんのこと、警察相談には、弁護士と一緒に伺うことが望ましく、訪問スケジュールの確定や相談内容の確認といった打合せも必要になります。

③今後の対応方針の共有

 これまで述べた通り、弁護士と事案の共有や様々な確認事項のやりとりを通じて、自社の企業姿勢を伝えつつ、法的リスクや訴訟リスクの検討結果をふまえて、今後の対応方針(方向性)を相互に明確にし、共有していくことになります。

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    • 警察相談と排除実務に関するスケジュールの策定・共有

警察相談を見据えて、その後の排除に向けたおおよそのスケジュールを検討します(例えば、「契約解除通知文書の送達時期」およびそれをふまえた「社内体制の整備・周知期間」など)。また、民間同士の契約に関わることとはいえ、実際の排除実務においては、万が一を想定して、警察に保護対策を依頼することが一般的であり(実際に警備要員を拠出して頂けるケースもあります)、おおよそのスケジュール等を「警察相談」の段階で提示することも必要となります。

    • 訴訟リスクまで見据えた企業姿勢の共有

法的リスクや訴訟リスクを検討した結果、「リスクを取って」法的対応に踏み込むケースも考えられます(あくまで、最終的には「企業姿勢」次第となります)。

訴訟も辞さないという場合においては、おおまかな訴訟戦略についても、相互に緊密に共有していくことが必要です。

④注意点

 これまでの説明でご理解頂けたと思いますが、弁護士相談の際には、最低限、自社の考え・対応の方向性をある程度明確にしたうえで相談する必要があります。弁護士への相談を通して、冷静かつ客観的な状況を把握することはもちろん必要ですが、徒に企業姿勢や対応の方向性をトーンダウンさせるのではなく、むしろ、その貫徹のためにどう対応していくべきか「知恵を絞る」スタンスで望むことが求められると言えます。

2)一次判断
①対応方針の一次判断

 これまでの「実態把握」「リスク評価」「弁護士相談」の各ステップをふまえて、この段階でいったん対応の方向性や対応スケジュールに関する会社のスタンスを明確にしなければなりません(なお、ここでは、この明確化のステップを「一次判断」と表記することとします)。後述する「警察相談」を前に、「自社の企業姿勢」を明確にしておく必要があるからです。

 例えば、警察相談するのであれば、「同一性」等に関する「クロ」とする情報がそこで入手できた場合は、「関係を解消する」以外の選択肢がないことを十分認識する必要があります。逆に、そのような明確な企業姿勢がない場合、警察としては、グレーゾーンである「共生者」「暴力団員等と社会的に非難されるべき関係にある者」等に関する情報提供を行えないことが内部通達(平成23年12月改正「暴力団排除等のための部外の情報提供について(警察庁刑事局組織犯罪対策部長通達)」で示されています。

 この通達は、警察が提供する情報に基づき、会社として関係を遮断する姿勢を明確に示すことが「公益」につながり、警察からの情報提供が可能となるとされており、企業は「警察相談」に行く前に、すでにそのような判断(決意)を固めておく必要があるのです。

 ただし、新規取引開始時など、「警察相談」をする前の段階で、自社で「関係を持つべきではない」として「クロ判定」(取引しない、関係を持たないとの判断)を行い、「契約自由の原則」により契約しないといった対応も十分考えられます。その場合、必ずしも、相手が反社会的勢力に該当するとの確たる証拠が必要とされるわけではなく、反社会的勢力への該当性については「グレー判定」であっても、「総合的に判断して」やめておこうと判断すること(クロ判定)自体は全く問題ありません。

 【注】「契約自由の原則」とは、「契約締結するか否かを決定する自由」「誰と契約するか契約の相手方選択の自由」「契約方式の自由」から成ります。

 注意が必要なこととしては、例え、新規取引だからといって「契約自由の原則」が無制限に適用されるわけではなく、相手方に契約が成立するまでに、当事者の一方に帰責事由(過失)があり、これにより、相手方に損害を与えた場合に、損害賠償責任を負う可能性があるという点です。

 つまり、契約の成立を期待させ、具体的な経済的負担を生じさせてしまっている場面での一方的な契約不成立の申し出となるような場合は、極めて慎重な対応が必要となるのであり、このような状況に陥らないよう、早い段階で「一次判断」まで行っておくことが求められるのです。

②注意点

 「一次判断」とはいえ、組織的な方向性を決める重要なプロセスであることから、「経営判断の原則」を意識しながら、最低限、内部統制システム上明確に定められた判断プロセスをふまえた組織的な決定である必要があります。

 【注】前回も説明しましたが、「経営判断の原則」とは、大まかに言えば、「経営判断の前提となる事実認識の過程における不注意な誤りに起因する不合理がないか」「事実認識に基づく意思決定の推論過程および内容の著しい不合理がないか」に十分配慮した判断であれば、結果的に会社が損害を被ったとしても、取締役の忠実義務・善管注意義務が履行されているとみなされるとするもので、この排除実務においては、正に根幹を成すものです。

 具体的な例として、相手先の信憑性の高い「疑わしい風評」を入手しておきながら、(重要な取引先であることを理由に)本来必要な「警察相談」をせずに、「十分な実態確認」をすることなく、自社の簡便な調査結果(風評にすぎず「クロ」とするだけの確証がないとの結論)だけをふまえた判断により「シロ判定」としたと仮定します。

 その後、当該相手先の社長が(風評のあった)暴力団関係者とともに逮捕される事件が発生し、取引先等が一斉に手を引いた結果、同社は経営不振に陥り倒産、自社に多額の損失を発生させてしまったといった場合には、取締役の忠実義務・善管注意義務違反を問われかねないということになります。

 つまり、若干の懸念がある場合の「シロ判定」(グレーをシロにする)については、相当慎重な判断を行うことが求められているということであり、後日、問題が発生した場合の「説明責任」を念頭におく必要があるということになります。

 このように、排除実務の裏返しとして、「排除しない」とする組織的判断のあり方についても、十分な根拠・相当な注意が求められている点にも十分注意を払って頂きたいと思います。

2.最近のトピックス

1)暴力団排除に関する国民の意識調査

 最近の暴力団排除を巡る動向や事業者や市民の意識調査を丹念に行なった興味深いレポートが公表されていますので一部ご紹介しておきたいと思います。

▼公益財団法人日工組社会安全財団「暴力団排除に関する国民の意識調査(平成25年5月)」

 とりわけ、「第Ⅱ部暴力団排除条例制定後の事業者の意識調査」においては、全国の従業員10名以上の10,000社(上場企業3,546社、非上場企業6,454社/回収率38.4%)を対象としたアンケート調査結果がまとめられておりますが、今回は、その中から特に注意すべき点について、以下に抜粋しご紹介いたします(なお、今回はあくまで概略のみのご紹介となりますが、本レポートの主な内容やそれに対する筆者の分析については、別の機会にあらためて取り上げさせて頂く予定です)。

①暴力団排除条例の周知状況
    • 暴力団排除条例の名称を知っていても、その内容を多少とも知っている事業者は半数に過ぎない。
    • 暴力団排除条例の内容についての認識を地方(警察管区)別にみると、内容について「知っている」の回答率が最も高いのは警視庁で、次いで近畿管区であった。この他の管区の「知っている」の回答率は、いずれも50%以下で、なかでも東北管区と北海道は40%以下であった。
    • 業種別にみると、「知っている」の回答率が最も高いのは金融・保険業で、次いで不動産・物品賃貸業であった。金融業や不動産業は、業界団体からの指導等もあり、暴力団排除条例に対する認識度が高かったものと思われる。
    • 企業規模が大きいほど暴力団排除条例の内容に関する認識度が高い。
②暴力団等からの働きかけや取引の有無・内容
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    • 過去において暴力団との取引が「あった」と回答した企業は3,842社中149社(3.9%)であった。
    • 取引のあった企業は、必ずしも人口の多い都道府県に多いわけではない。
    • 取引があったと回答した企業を業種別にみると、金融・保険業が最も多く、次いで多いのが、宿泊・飲食サービス業、建設業の順であった。
    • 取引の内容別にみると、「物品の購入・販売」が最も多く、次いで多いのが「預金・融資取引」であった。
③暴力団等を排除するための対応・取組み
    • 契約書等に暴力団「暴力団排除条項」を「導入していない」の回答が64%と6割以上であった。
    • 企業が暴力団等の排除のために「何もしていない」が、46.9%であり、半数近い企業が暴力団等排除のための対応策を備えていなかった。また、「対策マニュアルを作成している」と回答した企業は、対象全体の約1割であった。
    • 新規取引開始時に取引先の相手が暴力団等であるか、情報・データベースで確認しているかの問いで「それだけが目的の確認はしていない」と回答した企業は、60.8%と半数を超え、約6割であった。
    • 暴力団排除条例の内容を「知っている」企業の方が、「知らない」企業よりも、暴力団等排除に関するさまざまな側面で「積極的」であることが統計処理上明確な傾向が示された。
2)AML(アンチ・マネー・ローンダリング)/CTF(テロ資金供与対策)
①三菱東京UFJ銀行がNY当局に和解金2億5,000万ドル(約245億円)

 ニューヨーク州当局によると、同行は2002年から2007年にかけて、イランやミャンマー、スーダンの政府機関や個人が第三国に持つ銀行口座へドル建てで、約28,000件、約1,000億ドル(約10兆円)分を不正に送金していたということです。

 なお、同行は2012年に、2006年から2007年に同様の送金があったとして、米国財務省外国資産管理局(OFAC)に860万ドルの和解金を支払っています。

 今回、異例の巨額和解金となった背景には、「長期間」にわたる「頻繁かつ多額(1件あたり平均した金額でも3.5億円以上)」の送金を防止できなかったという意味で、恒常的にテロ資金供与を行っていた(すなわち組織的に関与した)と疑われるほど悪質だとみなされたのではないかとも思われます。

②オリンパス粉飾事件に絡むマネー・ローンダリング事件

 オリンパスの粉飾決算を指南したとされる証券大手OBらが、マネー・ローンダリングを行っていたとして、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益の隠匿)で東京地裁に追起訴されています。

 オリンパスから支払われた報酬の約22億円を、当時タックスヘイブン(租税回避地)とされていた「リヒテンシュタイン」の銀行に開設したペーパーカンパニー名義の口座に入金、さらに、ファンド運営などの報酬を装って海外の複数の財団名義の口座に送金して隠したとされています。

③AML/CTF(テロ資金供与対策)の強化に向けた日本のアクションプラン

 警察庁が中心となり2014年末までに日本におけるテロなどのリスクを評価するとともに、捜査当局が法人の実質株主や事業の実態をより迅速に確認できるよう制度整備を検討するといった計画が政府から発表されています。

 また、不正売買されるなどした金融機関の口座が犯罪収益の受け皿とされるケースが増えているとして、警察庁が口座の実質的所有者を継続的に確認するよう金融機関に義務付ける検討も始まっています。

 AML/CTFの取組みの遅れが指摘されている日本ですが、ここにきてグローバル・スタンダードをキャッチアップする姿勢が明確になってきており、企業実務への影響も予想されるところです。

④スイス金融機関の守秘義務を巡る攻防

 前回も一部ご紹介しておりますが、スイス国民議会(下院)は、スイス国内の銀行に口座を持つ米国人顧客の情報を米国に提供することを定めた法案を否決しています。

 米当局から巨額の制裁金を課される可能性が高いことを知ってなお、銀行の厳格な守秘義務を守り、スイスの国際金融センターとしての地位が揺らぐことに議会が抵抗したもので、主要国が脱税対策に動く中での協力拒否に伴い、スイスと米国、EUなどとのの対立が深まる可能性もあります。

 とはいえ、もはやグローバル・スタンダードとなった「匿名から開示へ」の潮流に抗うことは難しいように思いますが、いかがでしょうか。

⑤バチカン銀行とマネー・ローンダリング

 バチカン銀行については、これまでも取り上げてきた通り、マネー・ローンダリングやマフィアなどの不正蓄財に利用されているとする疑惑がますます深まる様相を呈していますが、フランシスコ・ローマ法王が、バチカン銀行の活動を点検する調査委員会を設置し、自浄作用による解明に着手しています。

 しかしながら、そのような中、相次いで以下のような事件も報道されており、その闇の深さを実感させられます。

    • イタリア警察が、ローマ法王庁の高位聖職者や伊政府の諜報機関職員ら3人を汚職などの疑いで逮捕。具体的には、スイスから現金2,000万ユーロ(約25億5,000万円)をイタリアに不正に持ち込むため、諜報機関職員に40万ユーロ(約5,000万円)を支払い、自家用ジェット機を手配した疑い。
    • バチカン資産管理部門の高位聖職者がバチカン銀行に絡む汚職疑惑等で逮捕され、バチカン銀行幹部2名が事実上更迭される。2人は多額の銀行資金の移動について、逮捕された高位聖職者と定期的に連絡をとっていたことが通信傍受で判明したという。
⑥テロ資金供与対策(CTF)

 米政府は、北朝鮮の核・ミサイル開発の資金調達に関与しているとして、北朝鮮の大同信用銀行(DCB)と幹部行員ら2団体および2個人に対し制裁措置を発動しました。

 DCBは中国の大連などのフロント企業と2007年以降、国連安全保障理事会決議が禁じる核・ミサイル開発に携わる北朝鮮企業のため数百万ドルの送金業務を担ってきたとされています。

▼OFFICEOFFOREIGNASSETSCONTROLSpeciallyDesignatedNationalsandBlockedPersonsList(米国財務省外国資産管理局SDNリスト)

3)暴力団等に関する最近の判例から
①暴力団の口座開設拒否に初の「合憲」判断(大阪高裁)

 暴力団組員であることを隠して預金口座の開設を申し込むなどして通帳をだまし取ったとして詐欺罪に問われた暴力団組員の裁判で、金融機関が暴力団組員の預金口座開設などを拒絶する規定の是非が問われていましたが、「社会的責任と公共的使命を果たすため、正当で必要」との判断が大阪高裁でなされています。

 暴排条項に基づく口座開設拒否の憲法判断は初めてとなりますが、「電気代の支払いなどに使っていた」としても「暴力団に止まるのであれば、甘受せざるを得ない不利益だ」との見解は、暴排実務にとってとても心強いものと言えます。

 なお、同様の主旨のものとして、市営住宅に暴力団員を入居させない旨定めた広島市の条例について、「暴力団構成員という地位は、暴力団を脱退すればなくなるものであって社会的身分といえず、暴力団のもたらす社会的害悪を考慮すると、暴力団構成員であることに基づいて不利益に取り扱うことは許されるというべきであるから、合理的な差別であって、憲法14条に違反するとはいえない。」(2009年5月29日広島高裁判決)としたものがあり、最高裁でも支持され確定しています。

②「ゴルフ場詐欺」の積極適用

 これまでもご紹介してきた通り、暴力団関係者の利用や契約を禁じる約款を設けるゴルフ場や不動産会社が増えています。

 詐欺罪では「財産上の利益」をだまして得る行為も処罰対象としており、警察当局がゴルフのプレーやマンションの賃貸借契約などで「財産上の利益」を不当に得たと判断し、立件に踏み切るケースが増えています。

 以前は、詐欺罪の成立についても司法の判断が分かれていましたが、傾向として、詐欺罪を認めた有罪判決が増えてきているようにも感じます。

 なお、最近でも、暴力団の身分を隠してゴルフ場を利用したとして、警視庁が、指定暴力団道仁会会長、住吉会系組長ら計5人を詐欺の疑いで逮捕しています。彼らが利用したゴルフ場では、利用約款で暴力団員や暴力団関係者の利用を断っていたということです。

4)暴力団・組織的犯罪に関する最近の動向
①高利貸事務所から多重債務者名簿1万人分押収

 香川県警は、法定の15倍の高利で金を貸していたとして出資法違反で男4人を逮捕しましたが、彼らが拠点としていた福岡市内の事務所から、携帯電話約50台と通帳約70通、キャッシュカード約50枚、多重債務者など約1万人分の名簿を押収したと報道されています。

②震災補助事業悪用で逮捕

 暴力団関係者であることを隠し、東日本大震災で被災した企業向けの県の補助金をだまし取ろうとしたとして、福島県警が、詐欺未遂の疑いで暴力団組長を逮捕しています。

 被災企業を対象とした福島県の「中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業」を悪用し、暴力団関係者であることを隠して申請、補助金約1,100万円をだまし取ろうとしたもので、同事業の悪用による逮捕者は初めてだということです。

③暴対法による使用者賠償責任追求の和解事例(住吉会)

 指定暴力団住吉会系の組員らに拉致されるなどした男性が、同会トップの西口総裁ら3人を相手取り、慰謝料など約2,300万円の損害賠償を求めた訴訟で、同会側が責任を認め、男性側に1,450万円を支払う和解が成立しています。

 山口組に対する同様の訴訟事例は度々ご紹介していますが、今回は住吉会での事例ということになります。

 この使用者賠償責任追及の手法については、今後も、暴力団組織に対し直接的に経済的なダメージを与えうるものとして広く活用されることを期待したいと思います。

④道仁会旧本部事務所差し止め訴訟で和解が成立

 福岡県久留米市にある特定抗争指定暴力団道仁会の旧本部事務所を巡り、周辺住民が使用差し止めを求めた訴訟は、福岡地裁久留米支部で和解が成立しています。

 道仁会側が事務所のビルを取り壊して更地にし、久留米市が出資する公社が買い取る内容であり、適切な金額であれば暴排条例上の「利益供与」には当たらないものと考えられます。

⑤特定抗争指定暴力団の抗争終結は偽装か

 抗争状態が続いている特定抗争指定暴力団道仁会(本部・福岡県久留米市)と九州誠道会(本部・同県大牟田市)の幹部らが、九州誠道会を解散して抗争を終結するとの書面を福岡県警本部長宛てに提出しています。

 昨年の改正暴対法による特定抗争指定暴力団への指定により、両団体はますます活動がしにくくなっていることから、指定を逃れるために抗争終結を装った疑いがあるとみられており、実際に、福岡、佐賀、熊本、長崎の各県公安委員会は、終結が確認できず抗争継続の恐れがあると判断して、「特定抗争指定暴力団」の指定を6月末から3カ月延長することを決めています。

 なお、この抗争終結の偽装については、2008年3月に、九州誠道会が、武雄市で射殺された男性の遺族に対し「引退及び抗争終結宣言」と題した同会会長名の文書を渡したことがありましたが、その後、抗争が再燃したという事実があります。

3.最近の暴排条例による勧告事例ほか

1)兵庫県の公表事例

 兵庫県警(兵庫県公安委員会)は、県内の露天商約200人が加入する同県の認可法人「兵庫県神農商業協同組合」を、暴力団と密接な関係がある団体とみなし、公報やホームページに組合名を公表しています。

 組合に暴力団への利益供与をやめるよう勧告していたにもかかわらず、副理事長ら3人が、指定暴力団山口組系の暴力団幹部2人に用心棒代として、計350万円を支払っていたということです。

▼兵庫県公安委員会「暴力団排除条例に基づく公表」

 さらに、同組合を取材していた朝日新聞の男性記者を脅したとして、副理事長の下で露天商をしている元暴力団組員を逮捕したという事件まで発生しています。

2)大阪府の勧告事例

 大阪府警は、指定暴力団山口組系暴力団組員から門松を購入したとして、府内の建設会社役員の男性に対し、暴力団への利益供与を禁じた大阪府暴排条例に基づき勧告、また、組員に対しても、利益要求をやめるよう勧告しています。

 なお、報道によれば、組員が所属する暴力団の組長と男性が親戚関係だったといい、「暴力団と知っていたが、頼まれたので断れなかった」と話しているということです。

 なお、本事例を含む18の事例が、大阪府警のWEBサイトでまとめて記載されておりますので、あわせてご参照ください。

▼大阪府警察「大阪府暴力団排除条例適用事例」

3)福井県の勧告事例

 福井県公安委員会は、用心棒代として現金を受け取った暴力団組員と、供与した福井市内の飲食店経営者に、福井県暴力団排除条例に基づいて勧告しています。

 報道によれば、組員と経営者は用心棒代が禁止されていることを知っていたということであり、同県暴排条例に基づく同県内での勧告は、2011年にみかじめ料を受けた組員と支払った飲食店経営者に出して以来2度目となるということです。

4)暴対法に基づく逮捕事例
①改正暴対法違反での逮捕事例(三重県)

 三重県公安委員会は、指定暴力団山口組系組幹部が、風俗店を経営する男性に用心棒になる約束をさせたとして、改正暴対法に基づき、この組幹部に対し、用心棒に当たる行為を禁止する防止命令を出しています。

 用心棒をめぐる防止命令は今年3月に兵庫県公安委員会が出した命令に続き2例目となります。

②改正暴対法違反での逮捕事例(福岡県)

 北九州市の飲食店経営者にみかじめ料を要求したとして、福岡県警は、特定危険指定暴力団工藤会系組員を暴対法違反と恐喝未遂の疑いで逮捕しています。

 昨年10月改正施行の暴対法で、「特定危険」の組員が警戒区域で不当要求をした場合、中止命令を経ずに逮捕できるようになった「直罰規定」を全国で初適用したものとなります。

③改正暴対法違反での逮捕事例(福岡県)

 配下の組員にみかじめ料などの要求・徴収を指示したなどとして、福岡県公安委員会は、指定暴力団道仁会系組幹部に対し、暴対法に基づく再発防止命令を出しています。

 みかじめ料などの要求行為を巡り、指示役の組幹部に再発防止命令が出たのは福岡県で初めてとなります。

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