ロスマイニング・トピックス

コンプライアンスやリスク管理に関するその時々のホットなテーマを、現場を知る
危機管理専門会社ならではの時流を先取りする鋭い視点から切り込み、提言するコラムです。

本部や拠点事務所におけるリスクをロスマイニングの視座から考える(2017.2)

 皆さま、こんにちは。

 本コラムは、消費者向けビジネス、とりわけ小売や飲食を中心とした業種にフォーカスした経営リスクに注目して隔月でお届けしております。
 今回は、本部や拠点事務所におけるリスクに注目してロスマイニングの視座から考えてみたいと思います。

本部や拠点事務所におけるリスク

 前号でおさらいしたとおり、店舗におけるロスの多くは、実地棚卸における実在庫と理論値である帳簿在庫との差で直接的には示されます。しかしながら、それ以外にも直接的に損益計算上に表れないロスがあります。具体的には、非効率なオペレーションによるロスや労務管理上のロス、従業員のモチベーション維持・向上や意欲など組織を動かす上での教育・訓練にかかわるロスなどを挙げることができます。

 一方で、チェーン展開する企業である場合、店舗を支える本部機能の存在も無視できません。そのような本部機能のなかには、本部と店舗をつなぐスーパーバイザーとその統括をするマネージャー、さらに、店舗を開発するリクルーターの活動があります。その活動拠点として、本部以外にも地区事務所のような拠点が存在することが多いと思います。拠点を管理する責任者としてのあるべき姿、または、過去に行なった監査からリスク分野ごとに現場に潜むリスク・ロスの事例を抽出してみたいと思います。また、リスクによっては拠点の管理というよりも本部サイドで解決すべきものがあるはずですので、分けて考えていきます。また、ここで抽出するリスクは、一般のオフィスの運営にも該当することが多いと考えています。

(1) 防火・防災リスク

1) 拠点責任者がマネジメントすべきこと

避難訓練

 防火・防災上のリスクを考えた場合、まずは火災や震災への準備として法定の防火管理者の設置や避難場所の社員への周知をする必要があります。また、緊急事態発生時の連絡網の整備や社員の役割分担の整備も必要です。もはや、これらのレベルは危機管理上の義務といえます。しかし、そのような体制を整備していたとしても実際の火災や震災が発生したときに、社員一人ひとりが適切な行動を取れなければ、被害が拡大してしまいます。そうした事態を避けるためには、火災・震災を想定した避難訓練により、その実効性を高めることが、最低限必要です。万一、火災等で人命に関わる事態が発生した場合は、被害者への賠償・補償の対応、その他の種々の対応や風評等で、企業経営上も大きな影響が出てくることを認識しなければなりません。そのため、定期的な避難訓練や災害対応訓練等を実施・徹底しておくことが組織としての安全配慮義務の観点から重要となります。また、店舗においては、お客様の避難誘導等も加わり、安全配慮の重要性はさらに高まります。逆説的にいえば、事務所の防火・防災体制は軽視される傾向があるように思われますので、拠点事務所等の管理者に対して常に厳しく認識ければなりません。させていくべきです。

避難動線の確保

 非常口の前に備品のストックや什器などが存置され、緊急事態発生時の避難の障害となっているケースが実地の監査で散見されます。背景には、事務所スペースの問題や使い勝手の良さからルールを逸脱した運用が常態化していることが考えられます。これらは、非常口としての機能を損なう行為であり、人命にかかわる事項であり、消防法違反というコンプライアンスの問題でもあります。ローカルな運用は非常時のリスクを著しく高めてしまいますから、この点についても、、拠点事務所等の管理者に対して常に厳しく認識させていくべきだと言えます。なお、非常口の表示の視認性にも注意を払うことが必要です。

震災時の備蓄

 飲料水や食品など震災時の備蓄を拠点事務所にも備えておくべきです。特に、飲料水の備蓄の必要性は高いといえます。熊本地震では、水道、ガスなどの生活インフラがダメージを受けて復旧までには長い時間を要しました。また、給水車による配給には時間的にも地域的にも限界がありますので、飲料水の確保は自助努力による備えが重要です。

喫煙・灰皿の管理

 オフィスにおける禁煙化や分煙化が定着し、煙草に関する火災のリスクや受動喫煙による健康被害の問題に対する意識や取り組みは低下しているようにみえます(既に対策済みとの認識が企業側にあるように思われます)。しかしながら、本部などから目が届き難い拠点事務所では、禁煙や分煙のルールがあったとしてもそれを逸脱した実態がみられます。禁煙にもかかわらず灰皿を設置したり、または、持ち込んだりするケースが実際にありました。特にフリースタンディングの建物の場合、ビル管理の制約もないことからその傾向が高まります。拠点の責任者自身が逸脱した行為を行なったり、黙認したりすれば、受動喫煙による健康被害、職場環境の悪化や吸い殻の不始末による火災のリスクを負うことになります。しかも、その問題は組織上のラインによる解決が機能しにくい点に注意が必要です。

落下物の危険

 頭上に配置されている時計やキャビネット上に直置きしたダンボール荷物などは震災時に落下して人身傷害が懸念されます。また、脚立や台車なども大きな横揺れによって凶器となり得ます。そこで、固定できるものは固定する、もしくは、設置や保管の方法に注意を払うことで被害のリスクは低減できます。食器棚がある場合は固定しないと転倒し、ガラスが通路に散乱して避難の際に怪我をする恐れがあります。

2) 本部サイドがマネジメントすること

OA機器・什器(キャビネット)の固定

 震災対策としてOA機器やキャビネット、ロッカー、机などの重量物は固定するなどの対応が拠点事務所にも必要です。大型のキャビネットなどが転倒した場合、人身への被害や避難経路を塞ぐなどの影響が考えられます。また、オフィスが高層階である場合、長周期振動などの影響から大きな揺れが増幅してOA機器やキャビネットが窓ガラスを突き破る可能性が指摘されており、非常に危険です。本部などのオフィスであってもOA機器などの固定は未だに対策が不十分な場合が多いので、拠点事務所はさらに未対策な状態であると懸念されます。

電源タップ、配線

 PC用の電源を床埋め込み式のコンセントから配線せずに、床上に這わせて確保しているケースは、とりわけ古いオフィスで散見されます。コードやタップが歩行に支障をきたさないような処理が必要ですので、本部サイドは計画的に設備の更新をしていくことが求められます。また、OA機器やサーバーなどへの電源確保のためにタコ足配線をしているケースも非常に多くみられ、火災リスクの観点から改善が必要です。さらにタップに埃が溜まっている状況もよく見られますが、火災のリスクはさらに高いと指摘できます(トラッキング火災)。

防犯カメラの設置

 建物外周やオフィス内には防犯カメラの設置がない場合は、万一の事態の抑止や検証に支障をきたすと考えられます。昨今はオフィス内に防犯カメラを設置している企業がスタンダードになりつつあります。個人情報の漏洩への対応の一環(予防的・事後的セキュリティの観点)としてや本社など遠隔地からオフィスの様子を確認すること、不正対策、セクハラ・パワハラの対策を目的として導入しているケースがあります。いずれも抑止と万一の事態が発生した場合の証拠や記録という効果があります。個人情報を取り扱う企業として防犯カメラがオフィスに未設置ということは、時代の要請に対して不十分との評価となってしまう可能性があるといえますので、本部としての設備投資の判断が求められます。また、防犯カメラの撮影範囲は死角をなくす、撮影する対象を逃さないなどの危機管理の視点からの専門家によるアドバイスが有効です。

(2) 情報管理リスク

1) 拠点責任者がマネジメントすべきこと

個人情報・書類の管理

 個人情報を含む書類の管理にはリスクが潜みます。紙の媒体は、一旦プリントアウトされるとシステム上のデータと比べて管理が非常に困難です。仮に盗難や紛失が発生しても、それ自体に気がつかず情報が流出した状態が放置される懸念があります。
個人情報を含む重要書類はキャビネットなどに収納して施錠するのが基本ですが、それを閲覧した際に机上に広げたまま、長時間にわたり離席するケースがあります。また、個人情報を含む書類のプリントアウトについてもプリンターに滞留したままのケースもあります。そもそもプリントアウトをしない運用が望ましく、情報管理はこの点をスタートして検討をすべきではないかと考えます。さらに、事務所内においても重要書類については、紛失や誤廃棄(過失または悪意によるもの)などのリスクを軽減する運用も必要です。したがって、個人情報が記載された書類のプリントアウトや持ち出しについてのルールについて明確にする必要があります。

オフィスの5S

 書類については、壁面への貼付けや机上の山積みなどに注意をする必要があります。重要書類が意図せずに放置されたり、廃棄されたり、持ち出されたりするリスクがあります。オフィスにおいても、5Sと呼ばれる整理・整頓・清掃・清潔・躾が情報の安全性や効率、維持管理の容易性につながります。

錠の管理

 書類やPCなどを保管する机の引き出しは施錠による管理が基本です。そこで問題となるのは鍵の管理です。開錠後に鍵が差しっぱなしにしてある個人用の袖机やキャビネットをみることがあります。また、オフィス共有のキャビネットの鍵も見えるところにフックでぶら下げてあり、管理に問題があるケースがあります。鍵自体の管理ルールや運用の改善についても検討する必要があります。

ロッカー(個人別)の施錠

 過去に監査した事例ではダイヤル式の施錠に問題があるケースがありました。ダイヤルが同一のナンバーで揃っている状態であったり、施錠の際に4桁のうち一桁だけを同一方向に1~3目盛り回してロックをする方、中にはダイヤルを回さずにつまみの「OPEN」「CLOSE」 操作のみで開閉する方もいました。施錠するというルールの本質的な意味から逸脱した運用は、セキュリティという観点では脆弱です。

2) 本部サイドがマネジメントすること

書類の廃棄

 個人情報などが記載された重要書類をシュレッダーではなく、溶解による廃棄をルール化していたケースでは、個々人が使用した重要書類を集積・保管する際に個人情報が読み取れる状態で箱に入れられて、そのまま置かれていました。この状態であれば、廃棄するために箱に入れていますので、それ以降に持ち出されても分かりません。持ち出しや閲覧ができないように施錠できる専用の廃棄BOXを使用することで、持ち出しや閲覧、撮影などを防ぐことを検討すべきと考えます。

 また、溶解処理を業者に委託している場合は、廃棄したエビデンスの提出を求め確認することも委託者の責任の範疇です。可能であれば、委託先の業者の業務執行を監査することも視野に入れる必要があります。委託先業者の廃棄書類の保管や溶解などの業務プロセスに潜むリスクまで把握に努めることは、リスクをコントロールすることにつながります。

スクリーンセイバー

 PCについては、離席する際にスクリーンセイバーの設定がされていないケースもあります。重要な情報や個人情報が不用意にPC画面から閲覧、撮影されないように、数分単位でスクリーンセイバーが作動するよう設定のセキュリティを施すことは、今や当たり前の取り組みだと言えます。

ファックス送信ルール

 FAX送信時、宛先の確認を複数ではなく送信者のみで実施している場合は、誤送信を水際で防止できません。誤送信による個人情報流出の恐れがあるため、複数人で送信時の宛先を確認するなどのルール化が望まれます。

(3) 労務管理リスク

1) 拠点責任者がマネジメントすべきこと

不審者対応

 建物入り口ドアに番号式暗証ロックなどのセキュリティが設置されている場合、番号式暗証ロックの入力を社員が入室の際に番号を読み取られないようにしなければなりません。入力の際に周囲の状況によっては隠して入力するか、あるいは、カバーなどを設置するなど不審者侵入への対策にも注意が必要です。また、敷地内や周辺で明らかに不審な人物を見かけた場合は、社員が積極的に声を掛けるなどすることで一定の抑止につながります。

 インターホン式のセキュリティを設置している場合は、(当たり前ですが)開錠する前に来訪者の確認をすることが重要です。来訪予定と相手を確認してから室内に招き入れるくらいの慎重さがあったほうがよいでしょう。
地方と都市部では事情が異なることもありますが、駐車場に門扉がある場合は、常に閉門しておくことが原則です。門扉は常時閉めておくことが不法駐車や不審者侵入を抑止することになります。

 営業系の社員が拠点事務所の主な所属、または、利用者である場合は多くの社員が終日オフィスに不在となることもめずらしくない現象です。日中、女性事務職員が1人きり(昼食時は無人)の状況があることから不審者対応などへの初動がうまくいかない懸念があります。従業員への安全配慮義務の観点からもリスクとしての認識が必要です。

レピュテーションリスク

(ア)LINEなどのメッセージアプリの使用

店長や営業社員への連絡手段としてPCによるメールやSNSアプリであるLINEなどの使用が考えられます。業務用PCメールは内部監査などでチェックが可能ですが、私用通信端末でのLINEなどによるやり取りは、事実上社員個人のモラルに委ねられている場合が多く、外部への流出や拡散などのトラブルも懸念される事項です。特に、店長などを統括する立場の方がエリア内の店長などへの連絡や営業上の指導をグループ化して活用しているケースがあります。売上やキャンペーンの目標対比を店舗別に共有して、いわゆるプレッシャービジネスを行なうとパワーハラスメント(パワハラ)を助長する要素にもなりかねません。また、パワハラを疑われる情報が外部に漏れる懸念もあります。
対面で行なわれる指導についてもエリア統括者のモラルに委ねられる点は変わりませんが、LINEなどには記録に残る点や拡散するという点に違いがあり、看過できない問題です。

(イ)公共の場での会話

社員同士が飲食店やコーヒーショップ、居酒屋など公共の場で業務(お客様情報を含む)や従業員に関する会話を行なうことにはリスクがあります。その他の場所では、喫煙所やエレベーター内なども同様に注意が必要です。会話内容を聞いた周囲の他のお客様などがSNSなどにその内容を書きこむことによるレピュテーションリスクも想定されます。店舗のお客様に関すること(クレームや有名人来店などの情報)は当然としても、社員や従業員に関する愚痴や悪口なども厳に慎むべきです。また、店舗開発のリクルーターは契約に関連した機微な情報を取り扱うため、第三者による投稿(いわゆる拡散)を十分意識した行動が求められます。

2) 本部サイドがマネジメントすること

ハラスメントリスク

 発生しやすいハラスメントとしては、セクシャル・ハラスメント(セクハラ)、マタニティー・ハラスメント(マタハラ)、パワーハラスメント(パワハラ)などが考えられます。基本を踏まえてそれぞれについて整理していきます。

(ア)セクハラ

セクハラ対策は会社としての義務であり、会社や上司は雇用管理上、職場における性的言動を自ら行わないことは当然として排除しなければならない立場です。最新の厚労省の指針も十分理解して周知に努めなければなりません。職務上の地位を利用して性的な関係を強要し、それを拒否した人に対して不利益を負わせる対価型と呼ばれるセクハラは、トラブルも深刻になりやすいので注意すべきです。また、職場内での性的な言動により、働くひとたちを不快にさせ、職場環境を損なう環境型とよばれるセクハラは、男女間双方だけでなく同性間(2014年指針に追加)、性的少数者に対する差別的言動(2017年1月指針に追加)も該当します。LGBTに代表される性的少数者に対する嫌悪、悪意のある意見を口にすることもセクハラとなる可能性があります。昨今の情勢から性的少数者に対する正しい理解を促進してくことも必要です。上司は社員同士のセクハラにも注意し、職場環境から不快な性的言動を排除する責任を負っています。

(イ)マタハラ

妊娠・出産・育児をきっかけに職場で精神的・肉体的な嫌がらせを受けたり、不利益を被ったりするなどの不当な取り扱いがマタハラに該当します。マタハラは問題が起きた後に被害者の能力や勤務態度などの悪評が噴出するケースが多いので、上司は平時から人事評価をきちんとするなどの対応を取っておくことが重要です。

(ウ)パワハラ

エリア統括者は店長を束ねるリーダーシップが求められます。強力なリーダーシップはともすると、パワハラに陥りかねません。「業務上の適正な範囲を超えない」ことがポイントであり、その範囲内で指導やリーダーシップが発揮されるべきです。厚労省が公表するパワハラの類型「精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)」や類型「人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)」が最も注意すべきパワハラです。

反社リスク

 反社会的勢力(反社)の排除が社会の要請となり、暴力団の資金獲得活動は民間の経済取引=「表の経済活動」に主戦場が変化しています。したがって、フロント企業とよばれる反社と関係が深い企業であっても、役員や取引先など分かりやすい形で反社と確認し難くなっています。そのような企業からの「アプローチ」に対応するのは現場の社員であり、現場の社員が「接点」となります。制度面の強化はもちろんですが、「接点」「アプローチ」に対する警戒レベルを上げる必要があります。往々にして現場の職員は若干顕在化したリスク(ミドルクライシスR)を見つけやすい立場にいます。つまり、責任者をはじめとする現場の社員のリスクセンスや問題意識、リテラシーをいかに高めるかがリスク管理にとっては重要なのです。時代の要請によって変化するリスク、それを認知できるリスクセンスは定期・不定期に磨きを掛けていく必要があります。

薬物依存リスク

 組織の中には、「常識」が異なる異分子が一定程度存在するリスクがあります。上司はリスク管理上、異分子の存在を無視してはなりません。意識や認識、常識のレベルは画一ではないと認識すべきです。今や薬物は身近にあり、手に入れることはさほど困難ではありません。営業成績や対人関係など精神的な不安を解消するために、薬物に手を出す可能性があることをリスクとして認識すべきです。薬物に関する教育・研修や啓蒙にも取り組み、人材の流動化を踏まえれば、繰り返し教育・研修していくことが重要です。それが不十分であれば「抜き打ち検査」等も有効と考えられます。

注目トピックス

万引き犯の「画像」公開

 コンビニエンス・ストア大手のファミリーマートの千葉県内の店舗が、店内で不審な動きをしていたとして防犯カメラに映った人物の画像に「万引き犯です」と書き加えて、店舗の入り口付近に掲示していました。外部からの指摘を受けたファミリーマート本部は、「不適切」として、この画像を撤去させたということです(出典:NHK NEWS WEB)。
 また、東京都台東区のメガネ販売店「めがねお~御徒町店」でメガネフレームが万引きされ、店舗側が犯人とされる男性の映像をホームページ上で公開していることがわかりました。警視庁によると、メガネフレーム7点、計26万4600円分が盗まれたとして、店舗からの被害届けを受けて窃盗事件として捜査しているということです。店側は「3月1日までに返却、弁償をしなければモザイクなしの顔写真を公開する」としています(出典:日テレNEWS24)。

 このような万引きの疑いがある人物を小売店が「公開」すること自体にニュース性があり、また、このような行為により小売店が法的なリスクを負うことになります。
 万引きが真実か否かを問わず、名誉権の侵害の問題になります。「公開」した店舗側の法的責任うんぬん以前に、「公開」というやり方に違和感を覚える消費者が多いのではないでしょうか。一般の善意の消費者にとっては、価格も含めて快適に買い物ができるかどうかが最大の関心事であって、意識しているかを問わず店舗の「雰囲気」も店選びの重要な要素です。万引き犯として「公開」することによって、一般のお客様が店舗に対して嫌悪や恐怖を感じた結果、ストアロイヤリティが冷めたることがあります。

 防犯対策は強化すればするほど、フレンドリーな雰囲気を損なうことにつながる、いわばトレードオフの関係にあることを十分に認識して、防犯対策とフレンドリーサービスとのバランスをどうとるかが悩ましい課題だと言えるでしょう。防犯対策を強化した極端な例では、フックに陳列した商品の手前に横一直線のレールを差して施錠する対策を目にしたことがあります。お客様が商品を購入するためには、いちいちスタッフを呼んで開錠してやっと商品を手にすることができます。もはや、小売業として本末転倒としか言いようがありません。店舗側の万引きに対する過剰な反応を露骨に見せずに心地よい雰囲気を維持することと、防犯対策の強化は常に最新の法的な解釈は勿論、社会の許容するレベルの変化を感じ取ったものに基づいて均衡を図るべきです。その意味では、顔認証システムを防犯に活用することにも注意が必要です。

 カメラで撮影した顔の画像から抽出した「顔認証データ」を個人情報と定義することを盛り込んだ改正個人情報保護法が2017年5月30日に全面施行されます。本改正により、「個人情報識別符号が含まれるもの」が個人情報の定義に加えられます。これまで「顔認証データ」が個人情報に当たるかは曖昧でしたが、改正法は氏名や生年月日などと同じ個人情報と位置づけられることになります。個人情報を取り扱う事業者は、利用目的を事前に公表したり、本人に通知したりする必要が生じます。したがって、防犯カメラを通じて収集したデータの利用目的を店頭に告知するなどの対応が必要であると考えられています。このようなデータの収集はお客様の不安も大きいと予想されます。AI技術の進化により大量のビッグデータを効率よく防犯に活用できるシステムですが、お客様の不安心理と向き合いどのようにその不安を解消していくかが課題といえますし、社会的な許容の度合いもしっかりとモニタリングを継続する必要があるでしょう。

賞味期限、年月表示シフト

 食品大手が賞味期限の「年月」表示に動き出しています。味の素が2017年2月出荷から従来の「年月日」表示を段階的に切り替え、2019年には賞味期限が1年以上の全商品に原則導入する方針です(日本経済新聞、1月25日付朝刊)。その他の大手も追随する可能性が大きいと予想されます。

 その背景には、食品業界全体で取り組めばまだ食べられるのに廃棄する「食品ロス」を減らそうとする動きがあります。「食品ロス」の削減には食品流通における「3分の1ルール」という独特は商習慣を見直しが始まっています。そもそも、「3分の1ルール」とは、製造から納入までの期限と納入した後の販売する期限、販売期限から賞味期限までの期間をそれぞれ賞味期限全体の期間の3分の1ずつに定めているものです。見直しの動きは、これを製造から納入までの納入期限と納入期限から賞味期限まで、それぞれ2分の1にするというものです。販売期限は各小売が設定します。各流通段階で返品や廃棄される商品を減らす効果を見込んでいます。

 今回の「年月」表示への切り替えは、たとえば、従来の表示1月20日が賞味期限である場合、20日以降が期限切れとなるので「12月」と表示する必要があるものを年月表示にすることで日別で管理していたロスを削減できます。同時に製造方法やパッケージングの見直しで賞味期限そのものを伸ばすことにも取り組む方針です。

 通常、賞味期限は「年月日」で表示しなければなりませんが、製造日から賞味期限までの期間が3ヶ月を超えるものについては、「年月」で表示することが政府の定める食品表示制度で認められています。

 「食品ロス」の削減に大手製造業も着手し始めていることを示していますが、卸や小売を含めたサプライチェーン全体での取り組みが本格化しないとその効果は限定的です。その意味では、3分の1ルールの見直しがサプライチェーン全体で徹底される必要がありますが、その進捗は現段階では十分ではありません。大手コンビニエンス・ストアや大手のスーパーマーケットが率先して見直しに取り組み、社会全体の見直しを加速させていくことが望まれます。

3.ロスマイニング®・サービスについて

 当社では店舗にかかわるロスに関して、その要因を抽出して明確化するサービスを提供しております。ロスの発生要因を見える化し、効果的な対策を打つことで店舗の収益構造の改善につなげるものです。

 ロス対策のノウハウを有する危機管理専門会社が店舗の実態を第三者の目で客観的に分析して総合的なソリューションを提案いたします。店舗のロスに悩まされてお困りの際には是非ご相談ください。

【お問い合わせ】

株式会社エス・ピー・ネットワーク 総合研究室

Mail:souken@sp-network.co.jp

TEL:03-6891-5556


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