クレーム対応・カスタマーハラスメント対策トピックス

顧客との関係性を今一度考えなおす~「お客様は神様です」の真意~

2023.04.17
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総合研究部 総合研究課 上席研究員 森田 久雄

“お客様は神様です”の真意

クレーム対応を語る際、“お客様は神様です”というフレーズが出てきますが、実はこれを言ったご本人の意思に反して違う意味で独り歩きしている現状があります。

昭和の時代、国民的歌手と言われた男性歌手よりこの言葉が世に出ました。この方は既に他界されておりますが、生前にご本人は、「歌う時、神前で祈る時のように、雑念を払い澄み切った心でなければ、完璧な芸を見せることはできない」(※要約/出典:▼三波春夫オフィシャルサイト)と語っておられたそうで、そのようなことから、お客様の前で歌うことを神前と例えていたのであって、決して、お客様そのものを神様として崇め奉ったわけではありませんでした。

しかし、様々な人の口伝でいつしか“お客様を神様のように扱う”という具合に変化していき、令和の世まで言い伝えられてしまいました。これが真相であり、この言葉の真意でありました。

一つの考え方として、企業がお客様から一方的に施しを受けているのであれば、まさに神様のような存在といえるかもしれません。しかし、あくまで企業側よりサービスや商品を提供し、その対価として料金を頂いている以上、どちらにも貸し借りは存在しない、ある意味では対等な立場ともいえるのではないでしょうか。だからこそ、「契約自由の原則」も成立するものです。

ただし、お客様に自社の商品やサービスを選んで頂けるように、他社よりも安く、あるいは他社よりも良いサービスを提供しようと思うあまり、過剰なサービスに走りがちな状況にある場合も見受けられます。その気持ちは理解できるのですが、あまりに過剰なサービスは自らの首を絞めかねないものと認識するべきです。企業側のこのような過剰なサービスもやむを得ないという誤った認識により、「お客様の申し出は多少無理な内容でも応じなければならない」というような考えが生まれたり、お客様の方でも「私は客だぞ!誰のおかげで…」のような言葉が出たりするのかもしれません。

お客様をクレーマーにしてしまうのか?

至極、当たり前のことですが、どこの企業でも、お客様にサービスや商品を提供し、その対価として料金を頂き企業運営を行っています。したがって、お客様の獲得は収益上で重要なポイントとなる訳です。お客様を獲得するため、お客様を大切に思う気持ちは大変よくわかりますが、不当要求やカスハラを行うお客様も同様に大切なお客様と思うのは間違いです。カスハラ行為は不当・違法な行為に該当しますので、これを容認するかの如く申し入れを聞き入れるのは、企業としてマイナス効果しか生まないと理解すべきです。

確かにお客様は大切なステークホルダーとなり得ますが、前述の通り「お客様は神様」では決してありません。もちろん、お客様を大切に思う気持ちは否定しませんが、本当に大切なお客様であれば、過剰・不当な要求が出された場合は、そのお客様に対して“NO”と言うべきです(一時期「NOと言えない日本人」という書籍が流行りましたが)。人は一度得をすると、二度三度とこれを望むものです。したがって、一度不当要求に応じてしまうと、大事なお客様をクレーマーという存在に変えてしまう可能性があるということになります。

もちろん、このような不当・過剰な要求やカスハラ行為を繰り返すお客様自身にも問題はありますが、企業側の甘い対応が、それらを誘発している一面もあることを見逃してはいけません。もし、最初の段階でそのような行為を受け入れずに拒否していた場合、お客様は離れていく可能性もありますが、理性を取り戻しいつものお客様に戻って頂ける可能性もあります。もし、行為を止めて頂けないのであれば、致し方ないですが、企業として毅然とした対応を取るべきです。

お客様への対応は公平・平等が大原則

お客様への対応・扱いは平等性や公平性を意識する必要があります。もちろん、常連客や“プレミアム会員”などの特別待遇はありますが、それは特別に設けられた規則や利用頻度により特別な待遇を認められるものであり、このような制度は、お客様の意思があれば誰もがこれに該当する限り、公平・平等に扱われます。

クレーム・カスハラ対応において、長時間に亘り、威圧的に、無理難題を言われ、これ以上は疲弊する限界まで対応した場合、公平性・平等性の観点から、他のお客様にも同様の対応をしなければなりません。そうなると、企業として収益は確保していけるでしょうか?従業員は対処しきれるでしょうか?

不当要求者に対応を合わせるのではなく、他の通常のお客様に合わせた対応をするという考えが必要で、お客様がごねたとしても、それを理由として、他のお客様と著しく時間をかけるような不公平・不均衡な対応は正しくありません。尚、“言ったもの勝ち”は許さないという強い意識も持っていたいものです。

クレーム初期対応の重要性

クレームの初期対応については、私のセミナーの中でも毎回お伝えしていることなのですが、簡単なようで、実は非常に難しく大変な作業なのです。よく“最初が肝心”と言いますが、まさにこの言葉が当てはまると思います。初期対応次第で流れは如何様にも変化するといっても過言ではありません。決して侮れるものではないと、ご認識を改めて頂きたいと思います。

最初の対応者が上手く対応した場合、お客様はその対応にご納得頂き、不満や怒りを抑え対応を終了するケースが多くあります。しかし、この対応で失敗し粗雑な対応や誤った対応をした場合、怒りは激しさを増し厳しい対応になるのは必至で、場合によっては、昨今言われるカスハラにまで至ることもあり得ます。ただし、限度を越えればカスハラになるとしても、クレームの場合は、お客様が怒っていることも珍しくないので、お客様が怒ることに対してはある程度の許容範囲は設けておくべきです。前述した通り、明らかに企業側のミスやいい加減な対応をすれば、ただでさえ迷惑を掛けてしまい怒ったお客様が、さらに怒り出すのは当たり前なことです。その状況で、お客様が怒ったことを「カスハラ」と認定するのは、「カスハラの濫用」と言わざるを得ません。お客様との関係を悪化させることになりかねません。

したがって、そのような事にならないように、しっかりと初期対応の重要性を理解し、最善を目指す対応を心掛ける必要があるのです。

カスハラは新しい要求の形?

クレーム・不当要求・カスハラと分別される傾向にありますが、決してそうではありません。最近ではカスハラとされる行為は以前から存在しており、最近になって、「顧客からのハラスメント」(=カスタマーハラスメント)という位置付けがされたに過ぎません。

2020年新型コロナウイルス感染症が国内で確認された当時、マスクが市場より無くなった時期がありました。この時、お客様より過剰なクレームと言うべき言動、行為が問題視されたことがきっかけになり、このカスハラが広まりました。しかし、SPNでは創業以来25年以上に亘りこのカスハラに当たるような行為やそのベースにある不当要求対応を、契約企業に入り込んで、直接対応してきています。したがって、カスハラに当たる行為や不当要求は、何も今、始まったものでは決してないのです。

例えば、「殺〇てやる」「ただじゃおかない」「殴らせろ」etcから、「訴える」「マスコミを動かす」「組織を動かす」(どの組織?)など、脅し文句は、当社スタッフは企業のお客様対応の現場では、以前から頂戴しています(笑)しかし、その昔はカスハラという言葉はありませんでしたので、あくまで不当要求であり脅迫的言動や強要、恐喝として毅然とした対応をしてきました。

仮にカスタマーハラスメント(カスハラ)という新たな名称ができたとしても、企業の対応は何も変わらないですし、不当要求やカスハラに応じない姿勢は、何ら変化はありません。

ただ、カスハラを最前線で受けている従業員は堪りません。企業としては、頑張る従業員を、全面的にバックアップ・フォローしていく必要があります。不当要求やカスハラについては、それへの対応要領にばかり目が行きがちですが、企業内における対応・フォローアップ・研修等の体制の整備・強化を図る必要が出てきたということです。また、対応要領についても、内容は変わりませんが、その対応要領を具体化・明文化していくことが重要になってきます。このように体制整備や対応要領の具体化・明文化に取り組む企業姿勢こそが、従業員の安心に繋がっていくものであり、組織対応を行なう旨の意思表明にもなるのです。

クレーム対応のプロを目指せ?

当社では、25年以上に亘り「クレーム・不当要求への実践対応研修」を数多くご提供してまいりました。お客様相談室などの対応を専門とする部署を除き、殆どの方は対応ができないと悩んでおられますが、私はそれは「やむを得ない!」という感想を持っています。

考えてみて下さい。皆さんはクレーム・不当要求対応するために業務を行っていますか?本来の業務は、自社の扱う商品・サービスを最適な形で提供するために業務を行っていますよね。皆さんは、そちらのプロであって、クレームや不当要求対応のプロではないからです。

ただし、接客のプロであるならば、クレームは極力出させないことを目指すべきではないでしょうか。クレーム対応は発生してから行うものですので、クレームが発生した時点ですでにお客様に不快な思いをさせてしまっているという現実があります。接客のプロならば、お客様が不快な思いにならないように、クレームの発生を未然に防止することを目指すべきです。

したがって、クレーム対応のプロを目指すというよりも、クレームを出さないプロを目指して頂く事、ただそうは言っても、クレームが発生した場合の対応についても最低限の知識・対応技術を磨いておくことが望ましいと思います。接客のプロなら、仮にお客様に不快な思いをさせてしまった後でも、お客様からの信頼を取り戻すべく、やはりお客様からのクレームには上手な対応ができるようになりたいですよね。

上手な対応ができるようになるには、時間がかかるものです。矛盾していますが、繰り返しクレーム対応することで、要領や慣れが出てきますので、焦らずに一歩一歩邁進することです。クレームが発生しないことがもっとも望ましいのですが。

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