HRリスクマネジメントトピックス

コンプライアンスやリスク管理に関するその時々のホットなテーマを、現場を知る
危機管理専門会社ならではの時流を先取りする鋭い視点から切り込み、提言するコラムです。

三匹(?)が語る!HRリスクマネジメント相談室(17)「社会情勢への不安とストレス」(2020.3)

職場におけるトラブルは複合的。社内の様々な関係者の協力を得て、複数の視点で捉えなければ、解決が難しい問題も多々あります。でもやっぱり最後は「人」!HRリスクマネジメントが重要です。

職場における様々なトラブルを解決すべく、今、エス・ピー・ネットワークに生息する動物たちが立ち上がりました!初動対応や法的な責任、再発防止など、三匹それぞれの観点から熱く語ります。

【今月の三匹・プロフィール】

ネコさんのイラスト

ネコさん:当相談室の留守番ネコ。猫なで声と鋭い爪をあわせ持ち、企業内での人事実務経験が豊富。社会保険労務士で、産業カウンセラー、実はキャリアコンサルタントでもある。薄暗いところで丸くなっていると落ち着くニャー。


フェネックさんのイラスト

フェネックさん:大きな耳はリスクを察知するアンテナ。情報セキュリティの専門家で、産業カウンセラーという一面も。でもなぜか方向音痴。私のリラックス法は料理です。最近はもつ鍋をよく作ります。


チャウチャウさんのイラスト

チャウチャウさん:大きなモコモコボディにつぶらな瞳。怖そうに思われがちですが、怖くないワン。クレーム対応に防災・BCPなどなど、企業危機管理全般について、一晩中でも熱く語るワン。ストレスの解消にはアルコール消毒がよいワン。

今月のご相談は、こちら。

うちの関連会社であるX社から、新型ウイルスの感染・発症者が出たんです。本人には、すぐに会社を休んでしっかり休養をとってもらい、職場の消毒なども速やかに行いました。今は本人も元気に復帰しており、特に感染の拡大もなかったのですが、どうやら「不安」だけが、うちの職場にまで伝染してきてしまったようです。

X社とは、電話とメールでのやりとりがほとんどで、人や物の行き来はめったにありません。それにも関わらず、X社とのやり取りを担当していたAさんが、「これ以上、X社の担当をするのは耐えられない」と、泣きながら訴えてきました。Aさんの話では、X社の担当をしているというだけで、同僚たちが、まるでAさんをウイルスのように扱うとのことでした。

Aさんの同僚には、高齢者と同居している人や小さな子どものいる人も多く、大量の日用品を買い占めてくるような、ちょっと「過剰反応しているな」、という人も見受けられます。昼休みに休憩室からすさまじい怒鳴り声が聞こえてきたので、何かと思って見に行くと、ドラッグストアにマスクの入荷を問いただしている人の声でした。私はこの事業所の責任者なのですが、「マスクを会社で備蓄しているなら、今すぐ社員に配れ!」と、詰め寄られたこともあります。「備蓄はない」と言ったら、これまたものすごい剣幕で、「会社は社員を大事にしていない!」と罵られ、参ってしまいました。

皆がピリピリしており、花粉症の人がくしゃみを1度しただけでも、一斉に「犯罪者を見るような目」で睨まれます。狭い会議室に入りたくないという人もいるため、しばらくは部内の定例会議も見合わせています。互いの会話も減り、情報共有に支障が出ているものの…正直、これ以上波風を立てたくないので、そっとしてあります。

こんな状態がいつまで続くのでしょう。収束するまで、じっと我慢するしかないのでしょうか…?

【ネコさん】
ネコさんのイラスト

新型コロナウイルスの騒動で、どこもかしこも落ち着かないニャー。「ウイルスそのもの」よりも、「ウイルスに関連した不安やストレス」にやられてしまっている感じです。ネコも落ち着かないニャー。

〈コロハラ!?〉

世間では、「コロハラ」(コロナハラスメント!)などという言葉が使われるようになっているようです。X社の担当をしているだけで「ウイルス扱い」されてしまったAさんも、コロハラを受けているということでしょうね。コンピューターウイルスじゃあるまいし、電話やメールでのやり取りならば、Aさんから感染が広がることなどありえません。Aさんの気持ちを想像したら…それは辛いでしょう。ハラスメントの裏側には「不安」があることが多いものです。まさに、新型ウイルスに対する「不安」が、ハラスメントを生み出したのだと思います。

「不安」って、人を「望ましくない言動」に走らせがちですよね。パワハラの裏側にも「不安」はつきものです。

例えば、いつも厳しいノルマを課されて「できなければ降格・減給」をちらつかされ、「自分の立場を守れるか」「家族の生活を守れるか」といつもいつも「不安」な上司は、部下の「ちょっとした失敗」にも敏感になりがちです。部下がミスをしてお客様を怒らせ、失注などしようものなら、それがそのまま自分の処遇に反映されてしまうわけですから……つい「指導」がヒートアップして、大声で怒鳴ったり、人格を否定するような発言をしたりしてしまう気持ちは、(もちろんダメなものはダメですが、)わからなくもありませんよね。この場合、その上司にいくら「パワハラをするな」と指導しても、それでパワハラがなくなるとは思えません。パワハラをする上司の「個人の問題」ではなく、上司を過剰に不安にさせる、「組織の問題」として考えなければ、なかなか根本的なパワハラ防止対策にはならないのです。

コロハラの場合、「コロハラをするな!」と言っても「不安」はなくなりませんので、やはり根本的な解決にはなりません。これ以上感染を広げないように、適切な検査や治療をできるようにと、多くの人が頑張っていますが、いつ収束するかはわからず、「不安」を完全に消し去ることもできません。ではどうしようもないかというと……いえいえ、「不安と上手に向き合うこと」「不安を認め、冷静な対応を心がけること」くらいはできるはずです。

〈「ギスギスした職場」を放っておいてはダメ!〉

この職場、ネコが最も残念に思うのは、この相談者さんが「何もしていない」ことです。

Aさんが泣きながら訴えてくるまで、コロハラの発生に気付かなかったのですか?少なくとも、メンバーの日用品の買い占めや、ドラッグストア店員に対するカスタマーハラスメントには気付いていたはずですよね。直接業務と関連していなければ、お咎めなしですか?昼休み中の出来事とは言え、怒鳴り声が響くような職場が、働きやすい職場だとは思えません。

2020年1月15日に告示された「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」では、事業主の責務として、パワハラをしてはならないこと、その他職場におけるパワハラに起因する問題について、自社で雇用する労働者の関心や理解を深めること、「他の労働者」に対する言動に注意を払うよう、研修の実施等をすることなどに、「努めなければならない」とされていますが、この「他の労働者」には、「他の事業主が雇用する労働者および求職者」も含まれています。

今求められているコンプライアンスは、「法令や就業規則に違反さえしていなければOK」というものではなく、「社会の要請への適切な対応」です。「努力義務なら、やらなくても罰則はないだろう」とか「職場外での個人的な問題だから知らない」で済ませていては、「社会の要請への適切な対応」をしているとはいえないでしょう。

マスク等の入荷がなく、「売りたくても売れない」ドラッグストアの店員さんを、電話で怒鳴りつけることは、カスタマーハラスメントともなり得ます。気付いているなら、「そういうことはよくないよ」とか「やめなさい」等、少なくとも注意・指導は必要です。

できれば、「ピリピリする気持ちはわかるけれど、落ち着いて、冷静な対応をしよう。みんなで協力して乗り切れるように、手を洗うとか、咳エチケットを守るとか、できることをしていこう」などと呼び掛けてもらえるとよいと思います。こういう時の「声掛け」って大事です。たとえマスクが配られなくたって、「自分たちは大事にされている」ということを認識してもらうことに意味があります。Bestではなくても、Betterを積み重ねていきましょう。

〈買い占めしたくなる気持ちもわかるけれど…〉

日用品の買い占めも問題になっていますね。確かに不安なんです。「いつでも買えるはず」のトイレットペーパーまでもが、急に店頭から消えたのですから、「買えるときに買っておかなければ、いつ買えるかわからない!」と、過剰に反応してしまう気持ちもわかります。在庫は十分にあるといわれても、なかなか店頭には並ばず、「今日も買えなかった」が毎日のように続いていれば、やはり不安に駆られるでしょう。

でもね、いくら自分が「不安」だからといって、それが「他人を傷つけてよい理由」にはなりません。誰かを責めたところで、事態は変わりません。

保健所や医療機関、医薬品の会社の人、マスク等のメーカーさん、物流を担う方々など、直接的に「どうにかしよう」と頑張れる分野の人が頑張っていても、どうにもならないのが現況ならば、直接的にどうにかする術や機会のない人は、自分たちにできること・すべきことをするしかないのです。自分の「不安」や「ストレス」は、自分で対処しましょう。誰かれかまわず文句を言って、自分のストレスを相手に押し付けたり、「頑張っている人」の時間や気力を奪ったりしてはいけませんよね。

少しでもストレスを減らそうと思うなら、人に当たるより、冷静に正しい行動をすることです。無茶を言っても、できないことはできないわけですから、事態は少しも良くならず、かえってストレスを増やすばかりです。それよりも、感謝の気持ちや相手をいたわる気持ちを、そっと相手に伝えましょう。そうすれば、自分の「不安」な気持ちも相手に伝わり、いたわってもらえるかもしれません。笑顔で接客してほしければ、自分も笑顔で接すること!これ、気持ち良いサービスを受けるための基本です。

〈でも、本当に買えなくて困っている人もいるよね…〉

特にトイレットペーパーは、「本当にもうない!」となると…もう、仕事どころではありませんよね。「開店と同時に行けば買えるよ」なんて気軽に言われても、仕事中の人は行けません。お昼休みになったと同時に走っても、売切れだったときのショックは大きいでしょう。「日頃からストックしておかないからだ」なんて責められたって、今さらどうにもなりません。

昔、ネコが働いていた職場でのお話です。一緒に働いていた若い女性社員が、当時大人気だった電子端末が台数限定で近所の家電量販店に入荷すると広告で見て、「欲しい!」「お昼になったらダッシュする!…けど、きっともう売り切れだろうなぁ」と、朝から仕事が手につかない状態になっていたときのこと。その様子を見た当時のネコの上司は、「今行けば買えるんだろ?どうせ仕事が手につかないなら、すぐ行って買って来い!」と送り出したんです。ネコも「行っておいで」と見送りました。無事にお目当ての品を手に入れた彼女は、上司にもネコにも感謝の意を示し、その日はほんの10分くらいの中抜け分の、何倍もの仕事を頑張ってくれました。

ネコは、この上司を尊敬しましたし、この職場は良い職場だなぁと思いました。おそらく彼女もそう思ったでしょう。職場の満足度やエンゲージメントを高めるには、とても効果的な10分だったと思います。

たまたま10分くらい中抜けしたところで、大して問題のない職場だったから許されたことで、全ての職場で同じようにするのは難しいとは思います。でも「今日使う紙がない!」と悲鳴を上げている人に、「職務に専念しろ!」なんて怒鳴ったって無理な話ですし、切羽詰まって会社のトイレットペーパーを「盗む」行為に走らせてしまうかもしれません。

せめてお昼休みを分割して一部を早めに取らせる(休憩時間一斉付与の適用除外のための労使協定があることが前提ですが)とか、状況に応じて、何かできる範囲で融通できないかは、考えていただきたいものです。もちろん、職場のみなさんの協力も必要です。日頃から「快く協力しあえる」職場づくりが大切ですね。

【フェネックさん】
フェネックさんのイラスト

こんにちは。好きな言葉は「駅直結」です。でも巨大な駅・ターミナルは油断なりません。まさに大迷宮ですね。

〈コロナブルー〉

確実な治療剤やワクチンがまだない状況で、Aさんの職場のみならず、多くの人が不安を感じるのは極めて自然な反応なのかもしれません。目に見えない感染に対し、エレベーターや玄関ですれ違う隣人や地下鉄、バスで通り過ぎる人々の中に感染者がいるのではないかと思うと仕事や日常の中で恐怖を感じます。

このような心配は、感染で健康を損なうかも知れないということに止まりません。新型コロナウイルスに感染すれば、同僚や他人に被害を与えるかもしれず、非難を受けることもあるという恐怖心が増します。「自分が感染すれば、共に時間を過ごした家族や友人が不安な気持ちで検査結果を待ち、自宅隔離されることになるかもしれない」、「勤務先の職場や、よく利用するレストランやスーパーマーケットが閉鎖されるかもしれない」、「感染が明らかになれば、自分や家族が周囲から冷たい目で見られ、非難を受けるかもしれない」。

先月22日、日本災害医学会が、ダイヤモンド・プリンセス号で感染防止にあたっていた医療従事者が、職場で「バイ菌」扱いされるなどのいじめ行為を受けたり、子どもの保育園・幼稚園から登園自粛を求められたりするなど不当な批判を受けているとして、「人権問題」だという声明を発表しました。

乗員乗客のため、そして日本のため、自分の身を危険に晒してまで尽力した人たちに、こんな心ない対応をする人がいるなんて信じられないと驚く人も多いかもしれませんが、東日本大震災時の福島第一原発周辺の被災者や、瓦礫撤去作業をした人々もまったく同じ目に遭っています。放射性物質、新型コロナウイルスという違いはありますが、目に見えない恐怖を前にして、「自分と家族は助かりたい」とパニックになった人々が、安全を脅かしそうだと判断した人たちを差別・排斥するという構造は同じです。

明らかに自分は被害者なのに、誰かには加害者になり得ると考えると、深刻な不安と恐怖を覚えます。ある程度の心配は緊張と警戒心を持たせ、危機な状況にうまく対処できるようになりますが、自分で統制できないほどの深刻な不安、恐怖に発展すれば、極端な非合理的な行動につながる恐れもあります。Aさんに対する周囲のメンバーの過度な非難や嫌悪表現もこのような不安感から生まれているのではないでしょうか。ただ、否定的な感情と攻撃的な態度は、状況の解決に全く役立ちません。むしろ、職場の空気を悪化させるだけであり、そのことを周囲のメンバーにも伝えてあげてください。

個人はどのように対処すべきなのか。適切に自分の感情がどうか振り返り、職場内、家族、友人と話し合って感情と状況を共有することが感情的な安定に役立つのではないでしょうか。統制できない状況に無力感を覚えるよりも、「手をきれいに洗う」、「顔を手で触らない」といった個人が実践できる行動に集中し、状況をコントロールしているという感覚を回復させるのも良い方法です。また、人ごみを避け、外出の自粛を誠実に行っている仲間や、残念なことに新型コロナウイルスにすでに感染して治療を受けている人を温かい目で応援してほしいです。感染は地域社会に広がっており、誰もが危険にさらされています。励まし合い、支え合う社会的ムードなら、感染の恐怖におびえている職場内の仲間や治療を受けている感染者も不安が少しでも和らいでいくのではないでしょうか。行動制限がつづき、家庭でも仕事でも不安のつのる今こそ、互いにねぎらいあうこと、そして自分自身をも認めてねぎらうことがとても大事なことだと思います。

〈デマや詐欺に注意〉

新型コロナウイルスについては、特に興味をひきそうな情報、不確定情報、意見の割れている知識が、さまざまなメディアでとりあげられています。Aさんの職場のメンバーも同じ境遇にあるかもしれませんが、多方面に新しい情報を求め過ぎてこうした情報にふりまわされることは私自身も本当にストレスがたまります。

不安を解消したいと思うあまり、ほしい情報に行きつくまで情報を検索しつづけたりすることで知らないうちにこうした行動にかなりの時間をとられ、結果的に心理的な視野が狭くなるとデマや災害などに便乗する詐欺に騙されてしまいがちですので注意が必要です。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、「水道管のウイルス除去に数万円」と要求してきたり、厚労省検疫所や保健所職員を名乗る人物が家族構成や個人情報を聞いてきたりする不審な電話が各地で報告されています。また、ショートメッセージサービス(SMS)などで「マスクを無料で送る」などのメッセージが届くケースもあるようです。記載されたURLにアクセスすると偽サイトに誘導され、不正なアプリがインストールされたり、個人情報を盗まれたりするおそれがあります。不安な心理状態で何とかしたいと考えている人は詐欺行為に巻き込まれる可能性があります。安易な接触や不用意な信用は絶対に避けるとともに、情報の真偽をしっかりと見極め、悪質な二次被害に遭わないために注意が必要です。社会に不安が広がっているときこそ、詐欺の手口を知り、デマや不確かな情報に惑わされないよう、冷静な判断を心がけましょう。

また、新型コロナウイルスの感染拡大に乗じて、予防の効果を謳う健康食品や空間除菌剤などがインターネット上で販売されています。商品の大半はカプセルや錠剤などのいわゆる「健康食品」に区分され、「マヌカハニーサプリ、新型コロナ対策」「納豆に含まれるペプチドは肺炎の起因菌の膜を破壊します! 」などの表示があります。他にも「塩素成分で空間の除菌!」など身に付けるだけで空間のウイルスを除去できるとする除菌剤についても、予防できる確証は無く注意が必要です。ウイルスの性状特性は明らかではなく、また、事業者の民間施設では試験などを行うことが不可能な状態なのに予防効果を標榜するのは、客観性と合理性を欠くものであり、科学的な根拠は認められません。これらの商品に惑わされることなく、手洗いなどの正しい予防を心がけたいところです。

〈嘘やデマを拡散しないために〉

SNSでは新型コロナウイルスの影響でさまざまなデマや噂が飛び交っています。その影響は噂にとどまらず、本来なら十分な供給がある品物なはずのトイレットペーパーなどの紙類まで店頭から消えるという事態に発展しました。

歴史的に見ても、感染症の流行時はデマが広まりやすいことがわかっています。14世紀のペストの流行時には、「キリスト教徒の敵達が空気や水、食べ物、ワインに毒を混入した」というデマが流れ、人種差別的な騒動が起きました。日本でも1885年のコレラ流行時に、「人の生き肝を取って米国に渡すため殺人が行われている。警察があやしい」といったデマが流れたそうです。

また2003年のSARS流行のときには、「緑豆のスープを飲めば予防できる」「爆竹を鳴らせば予防できる」「北京市が封鎖され食料が入手できなくなる」といったようなデマが流れました。また「酢を煮立たせて消毒すれば予防になる」というデマで、酢の買い占めが起こっています。

「デマの拡散」というと、悪意ある人や愉快犯が意図的に行っている姿を想像しますが、相手を思いやる身近ないい人が間違った情報を拡散してしまうことでより混乱してしまうこともあります。

「同じ境遇の人や被害者の方の力になりたい」という善意の行動であったとしても、間違った情報を拡散してしまえば、デマまん延に加担することになります。情報によっては、被害者の不安を増長したり、地域・社会を混乱させ、本当に助けが必要な人の救助が遅れたりする可能性もあります。

新型コロナウイルスをめぐるフェイクニュース騒動で厄介だったのは、本来はフェイクニュースの拡散を抑えるべきニュースメディアや政治家、著名人までもが、きちんと情報の検証を行うことなく、その拡散に加担してしまっていることだと思います。悪意のあるチェーンメールはもってのほかですが、根拠を調べたりしないで何も考えず「自分が知った情報をシェアしてあげよう」という気持ちだけで行動してしまうと、かえって相手を混乱させてしまいかねません。混乱が続く時だからこそ、職場の仲間や社会を巻き込まないためにも、一呼吸おいてから発言・行動することも大切なことです。

SNSでフォロワー数が多い人や著名人は多くの人々から信頼されている人……という先入観から、彼らが言っている情報も正しいように思ってしまうというハロー効果というものがあります。ただ、著名人であろうとも一人の人間であり、だから正しい情報を発信しているわけではなく、著名人だから発言に普通の人よりも責任を持っているわけでもありません。あくまで情報を選択した自分に責任があることを忘れてはいけません。

今回のような疾病対策に限らず、デマが人々を惑わす機会は今後ますます増えていくことが懸念されています。地震、台風、豪雨などの自然災害や、選挙、国際紛争、資源や食糧の不足など、深刻度が増せば増すほどデマによる影響は大きくなります。今後はこれまで以上に、報道やSNSを通じてもたらされる膨大な情報の中から、正しい情報、自分に必要な情報を取捨選択する能力を個々人が磨いていくことが必要になります。

【チャウチャウさん】
チャウチャウさんのイラスト

皆さん、こんにちは。私の新型コロナウイルス対策はアルコール消毒。手はアルコールよりも手洗いしていますので、アルコール消毒は喉の方です。私は、一連の新型コロナウイルス感染症騒動には比較的醒めた目で見ていますので、警戒と予防はしつつ、たまにアルコール消毒しながら、冷え込んだ経済への貢献をしています。

そうそう、消毒用アルコールで手に入らないこともあり、世界的にお酒、特にウオッカが手に入りにくいそうです。確かに、最高度数96度のスピリタスとかは、ほとんどアルコールですが、火災のリスクが高く、素人が簡単に使いこなせる代物ではありませんので、ご注意を。

ネコさんとフェネックさんが、あらかた語りつくしてくれましたので、私からは簡単にしておきます。

〈パニックの根底にあるもの〉

フェネックさんも触れていましたが、いい機会ですので、パニックについて触れておきましょう。ご存じの方もいるかもしれませんが、災害時におけるパニックの研究は、実はかなり前から行われてきています。しかし、一方で、パニックは神話であり、災害時にはほとんどパニックは起きていないという研究もあります。

果たして、皆さんに実感としては、いかがでしょうか。今回は世界的にもトイレットペーパーの買い占め等がおきており、パンデミック・パニックが起きていると評価できるではないでしょか。

パニックの根底には、すでにネコさんやフェネックさんが取り上げた「不安(心理)」があります。その不安を生じさせるのが、「脅威」と「それに対する恐怖感」です。脅威は、生命や身体の安全、財産等が直接脅かされる切迫性があればあるほど、高まります。そして、この「脅威」を植え付けるのが、各種の情報や現実の姿です。そして、その脅威が現実になることの「恐怖感」により、不安がどんどん高まっていきます。

今回の新型コロナウイルスでいえば、「新型」という未知で得体のしれないウイルスがヒト・人感染を起こして、爆発的に感染者を増やしているという「脅威」があり、特効薬もなく、そのウイルスにより「死者」「重篤者」が多数出ているという「恐怖感」が、人々の「不安」を掻き立てています。

あるいは、マスクや消毒アルコールアルコールや「買いたくても買えない」脅威と、その状態がいつまでも続き本当に今後入手できないかもしれないという「恐怖感」であるかもしれません。

ちなみに、現在、新型コロナウイルスで発生している肺炎の重篤化や脳炎兆候、それらによる基礎疾患保有者や高齢者等の死亡等の事象は、インフルエンザでも毎年起きています。厚生労働省の人口動態調査によると、インフルエンザにより平成30年は3325人、平成29年は2569人が亡くなっています。肺炎では平成30年は94661人、平成29年は96859人もの方が亡くなっています。しかし、インフルエンザや肺炎で同様の事案がおきてもほとんどニュースにもなりませんし、皆さんの中にも、そこまで怖い病気という認識のない方もいるのではないでしょうか。これは、「未知」ではなく「得体のしれない」ものでもなく、治療薬もあり、治療方法もある程度確立していると皆さんが認識しているからではないでしょうか。したがって新型コロナウイルスと違って、それほどの「脅威」も「恐怖感」も生じず、そこまで「不安」になることがない方も少なくないのでしょうか(ちなみに、新型コロナウイルスは、3月24日12時現在、国内での感染者は1128人、死亡者数は42人)。

〈パニックへと加速させるもの〉

ただ「不安」というだけでは、「パニック」にはなりません。買い占めのようなパニックが起きるためには、さらに「自分で制御できない」ことが重要になります。

この「自分で制御できない」という要素としては、恐怖を感じる「脅威」を自分の力等でコントロールができないこと、そしてそれに対する無力感・絶望感と、一刻もその状況から脱しなければいけないという切迫感の二つがあります。

感染症はある程度の予防対策はできますが、それでも罹らない保証はありませんし、もともと脅威に対する恐怖感が根底にありますので、感染予防に関する無力感を感じる方のいるのではないでしょうか。Xさんの同僚のように、マスクが入荷されていないことで、ドラッグストアの店員等のカスハラを行っている方々の話題も目にしますが、予防効果が科学的に認められていない「マスク」が自身の感染症予防としてコントロールできるかもしれない唯一の心の安定剤なのであれば、何とかマスクを確保しようと躍起になりますから、カスハラという行き過ぎた行為に繋がってしまうのです。

他方、切迫感も、パニックには大きな影響を持っています。まさに、「今しないとやばい」、「今しておかないとやばい」と思うからこそ、端から見ると、奇妙にも映る行動を起こし、「我先に」という社会規範を外れた行動に発展してしまうのです。こうして、トイレットペーパーやティッシュ、消毒用アルコールの買い占めに走るわけです。政府が十分に「在庫がある」といったところで、現実に店舗になければ、それも近隣の店舗のどこにもない、しかもそれが何日も続く・・・ということになれば、「ある時に買っておかないと」「何とか手に入れないと」という心理になってしまいます。実は、転売屋が転売目的で買い占めているだけでも、その事情は分かりませんから、「皆買っている」と思ってしまうんですね。

私の家の近くのドラックストアでも、手指用のアルコール消毒液やハンドソープを買うために多くの人が来店したり、並んだりしていました。私は、その横で、普通に大量に在庫がある石鹸を買って帰りました。石鹸なら普通に在庫があるんですが、こういう奇妙なことが起こるのも、パニックに近い状況になっているからです。

パニックについては、対策をふくめてまだまだお話したいことはありますが、今回はこの辺で。

「HRリスク」とは、職場における、「人」に関連するリスク全般のこと。組織の健全な運営や成長を阻害する全ての要因をさします。

職場トラブル解決とHRリスクの低減に向けて、エス・ピー・ネットワークの動物たちは今日も行く!

※このコーナーで扱って欲しい「お悩み」を、随時募集しております。

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