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危機管理トピックス

特殊詐欺認知・検挙状況等(警察庁)/コロナ危機:日本経済変革のラストチャンス(内閣府)/「ポストコロナ」時代におけるデジタル活用(総務省)

2020.11.09
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更新日:2020年11月9日 新着17記事

タイトルイメージ図

【新着トピックス】

~NEW~
金融庁 「記述情報の開示の好事例集2020」の公表(新型コロナウイルス感染症、ESGに関する開示)
▼記述情報の開示の好事例集2020
  • セガサミーホールディングス株式会社:新型コロナウイルス感染症拡大に伴う影響について、セグメントよりさらに詳細な単位(サブセグメント)の要素ごとに具体的に記載
    • 遊技機事業
      • 旧規則機の撤去期限が1年延長されたことに伴い、開発スケジュールの全体的な見直しを行っている。開発協力会社側での開発遅延の影響等により、開発期間長期化の懸念がある
      • 現時点の発表済みタイトルは部材確保済み。一方で、今後については慎重な見極めが必要
      • パチンコホールの休業に伴い、全体的な販売スケジュールを後ろ倒し。4月~5月分をキャンセルし、7月の販売に向けて営業活動を再開している
      • 5/14に国家公安委員会より「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則及び遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則の一部を改正する規則の一部を改正する規則」による経過措置期間の1年延長が決定。保通協における試験受付枠の一時的減少が見られたものの、試験実施状況等は通常ベースに戻りつつある。パチンコホールは行政からの休業要請に応じ休業していたが、現在は概ね営業を再開している。ただし、稼働水準の回復には時間を要すると思われるため購買意欲低下の懸念がある
    • エンタテインメントコンテンツ事業
      • デジタルゲーム分野:在宅勤務者への開発環境の整備を進めたが、外部協力会社を含めた開発効率の低下により、一部の開発スケジュールが遅延運営。開発遅延に伴いイベントやアップデートの配信遅延が一部発生
      • パッケージゲーム分野:在宅勤務者への開発環境の整備を進めたが、外部協力会社を含めた開発効率の低下により、一部の開発スケジュールが遅延。各種キャンペーン販売と外出自粛等による巣ごもり消費の相乗効果により、足元では海外ダウンロード販売を中心に伸びが見られる。新作タイトル等の販売スケジュール遅延の可能性がある
      • AM機器分野:在宅勤務者への開発環境の整備を進めたが、筐体に依存した開発等が行えないことにより、開発スケジュールの遅延が発生し始めている。一部の生産スケジュールが遅延。施設休業や顧客の購買意欲低下等による影響に伴い、販売スケジュールを見直す可能性がある。今後の施設稼働低下に伴い、課金収入の減少が懸念される
      • AM施設分野:3/3~3/24キッズ向け9店舗とVRコーナーの営業休止。4/8より外出自粛対象地域の店舗を営業休止。4/17~5/7全国の店舗を営業休止(195店舗)。5/8より休業要請のある地域以外の店舗を順次、営業再開―5/8時点29店舗で営業再開―5/18時点89店舗で営業再開―6/1時点163店舗で営業再開(東京都以外)。6/12より全国の店舗で営業再開・営業休止や集客力低下に伴う稼働の落ち込みが懸念される
      • 映像:在宅勤務に伴う制作業務の効率低下や発注側のスケジュール変更等の影響により、一部の映像制作や企画、開発スケジュールが遅延。映画の公開、TVシリーズの放送延期に伴い、配分収入を翌連結会計年度で計上するなど計上時期の遅延等が発生
      • 玩具:一部の開発スケジュールが遅延。一部の生産スケジュールが遅延。販売店の休業や商談会中止等の影響により、一部の販売スケジュールが遅延
  • 株式会社熊谷組:新型コロナウイルス感染症の影響について、マイナス影響とプラス影響のそれぞれについて具体的に記載。新型コロナウイルス感染症への対応策について、管理体制を含め具体的に記載
    • マイナス影響
      • 景気後退に伴う民間企業の設備投資の減少
      • インバウンド需要縮小に伴う宿泊施設等の新設減少
      • 官庁工事における公告・入札の延期
      • 追加設計変更交渉等の難航
      • 海外工事減少に伴う国内競争の激化
      • 工事中断に伴う工程遅延・部材の納入遅れによる工程遅延
      • 発注者、施工協力業者の倒産リスクの増加
      • 感染症対策に伴うコストの増加等
    • プラス影響
      • 景気下支え策としての公共工事の増加
      • デフレーションによる工事コストの低下
      • 医療、倉庫・流通施設の増設、移転
      • 海外における生産拠点の日本回帰や再編に伴う工場等の増設、移転
      • 生活・社会インフラの整備
      • テレワーク増加に伴う通信インフラの整備
      • 行動様式の変容に合わせたリニューアル工事の増加
      • 集約型から分散型オフィスへのシフト
      • M&Aの進展
      • 再開発事業に係る不動産購入コストの低下 等
    • 受注環境
      • 価格競争が厳しさを増していくと予想されるなか、新型コロナウイルス感染症の業績への影響について、2008年のリーマンショック時と同程度に民間工事の受注高が落ち込むことを想定しており、連結売上高・連結営業利益に影響を与えることを見込んでいる。
    • 対応策について
      • 2020年2月22日に危機管理委員会を事務局とした新型コロナウイルス対策本部を発足させ、全ての事業所で朝夕の検温、マスク着用、手洗いの徹底、時差出勤及び在宅勤務の実施、不要不急の出張の制限、不特定多数の人が集まるイベントの開催・参加の延期・中止の検討といった予防措置をとった。
      • 政府から緊急事態宣言が発令された2020年4月7日にはより迅速な対応を可能とするため社長を対策本部の長とする体制へ移行したうえ、対象地域の内勤者に対して在宅勤務を原則とする交代勤務制を推奨するなど感染リスクの最小化に努めた。
      • 2020年4月17日に緊急事態宣言の対象区域が全都道府県に拡大されたことを受けて、当社グループの社員及び協力会社などの関係者の生命・身体の安全を最優先する方針のもと、お客様と協議のうえ、施工中の一部工事を一時中断する措置をとり、全国の内勤者について当初の対象地域の対応と同様の措置をとった。
      • 2020年5月7日にお客様から工事中断の要請がある工事を除いて感染防止策を強化・徹底する事を前提に工事を再開し、2020年5月25日の緊急事態宣言の解除後は中断していた全ての工事を再開させた。また、緊急事態宣言解除後も感染拡大防止に向けた対策を継続している。
  • ソニー株式会社:各セグメントにおいて、新型コロナウイルス感染症拡大による事業への影響に関する現状認識について具体的に記載
    • 新型コロナウイルス感染拡大による事業への影響に関する現状認識
        • 全世界の映画館において、徐々に閉鎖解除の動きは出始めているものの、未だその多くが閉鎖又は閉鎖解除後も観客動員に制限を受けている状況にあり、映画興行ビジネス全体に影響が出ています。そのため、ソニーにおいても、既に製作が完了している作品について劇場でのリリースが基本的にできない状況にあります。
        • 人の移動が制限されていることにより、米国をはじめ世界各国において、ソニーの新作映画の製作やテレビ番組作品の制作スケジュールに大幅な遅れが発生しています。このため、映画製作においては、劇場興行収入や、それに続くホームエンタテインメントやテレビ向けライセンスなどの収入の減少が見込まれる一方で、新型コロナウイルス感染拡大前にソニーが劇場公開した一部の作品のデジタルのビデオレンタルやビデオ販売などの収入は好調に推移しています。テレビ番組制作においては、テレビ局や動画配信事業者への番組の納入が遅れることにより、売上への影響が出はじめています。
        • メディアネットワークにおいては、世界的な広告の減少により、インドなどでソニーの広告収入が大幅に減少しています。
  • 味の素株式会社 「ESG」に関する開示例
    • ESGに関連する指標を定量的に記載
    • ESGの課題について、その解決策や目標を経営戦略と関連づけて記載
    • 社会に関する非財務目標について、事業に関連する会社独自の指標を設定し記載
    • 重要な経営リスクについて、機会の観点も含めて記載
    • 重要な経営リスクとSDGsとの関連性について記載するとともに、経営戦略に与える影響を記載し、その影響の程度、発生すると想定している時期、前年度からの重要度の変化についても記載
    • 新中期経営計画で掲げた非財務目標(従業員エンゲージメント、ESG目標)を、中期業績連動型株式報酬の評価指標に関連づけて記載
  • 三井物産株式会社 「ESG」に関する開示例
    • 経営理念と中長期的視点で事業戦略上重要な課題(マテリアリティ)の関連性について記載するとともに、「サステナビリティ経営/ESGの進化」を経営戦略の中に位置づけて記載
    • 財務戦略について、エネルギーソリューションなど新たな収益の柱となる事業と既存事業への資金配分について図示しながら平易に記載
    • 人材戦略を経営戦略の一つと位置づけた上で、事業経営力強化と持続的な競争力維持を実現するための具体的な施策を記載
    • 気候変動への対応について、具体的な目標を図示しながら平易に記載
  • 東急株式会社 「ESG」に関する開示例
    • ダイバーシティマネジメントと経営理念や経営戦略とを関連づけて記載
    • 女性管理職や男性育児休業取得率の目標値を示すとともに、これらの現在の実績値も記載
      • 当社および連結子会社は、中期3か年経営計画の重点施策に「ワークスタイル・イノベーションの進化」を掲げ、「2023年度までに女性管理職10%以上、男性育児休業取得率100%(いずれも当社※)」「健康経営の定着による従業員が健康に就業できる会社」を目標とし、「制度」「風土」「マインド」の観点からダイバーシティマネジメント・健康経営を推進しております。
      • 経営トップからは、2017年度に実施した、役員及び全管理職マネジメントセミナーにおいて「東急株式会社(連結)ダイバーシティマネジメント宣言」を発表し、ダイバーシティマネジメント推進の姿勢を明確にしました。これに基づき、働く「時間」「場所」の柔軟化(時間休、サテライトオフィス等)、事業所内保育所の増設、短時間短日数勤務職責の新設、東急グループ女性管理職フォーラム、全管理職に対するアセスメント(部下と同僚による180度診断)、メンター制度、多様性受容研修、全社員(主に本社勤務員)キャリアディベロップ面談等を実施しております。
      • また、新卒女性総合職採用比率40%、女性取締役の継続的就任も目標としており、健康経営の推進状況を含めた進捗については、人材戦略に関するアドバイザリー・ボードや取締役会等において適宜報告し、次代の人材戦略へと反映させております。今後も、多様な人材がその能力を最大限に発揮することで新たな価値を創造し、より信頼され愛される企業体を目指してまいります。
      • ※ 女性管理職比率:7.7%(2020年3月31日現在)、男性育児休業取得率:71.5%(2019年度)
  • 旭化成株式会社 「ESG」に関する開示例
    • SDGsについて、自社の経営環境を踏まえ、経営戦略と関連づけて記載
    • 各セグメントのサステナビリティにおけるテーマを記載
      • 価値提供注力分野に関する事業のポジショニング分析・評価方法について具体的に記載
      • 全社戦略として、デジタルトランスフォーメーションの推進や従業員が活躍できる基盤づくり等の対策を記載
      • 全社戦略に加え、セグメントごとに経営環境を踏まえた経営課題を記載し、これに対するサステナビリティの観点を踏まえた経営方針及び経営戦略を具体的に記載
  • J.フロントリテイリング株式会社 「ESG」に関する開示例
    • 環境課題に対する組織体制について図示しながら、各会議体の検討事項や開催頻度も含めて具体的に記載
    • リスク管理方法について、図示しながら平易に記載
    • 最重要マテリアリティである「低炭素社会への貢献」については、リスクと機会を1.5~2℃未満シナリオと3℃シナリオに分けて、参照した既存シナリオを含め具体的に記載とともに、それぞれのリスクが財務に与える影響の程度についても記載
    • シナリオ分析から把握した重要なパラメーター(炭素税や再エネ由来の電気料金)について、1.5~2℃未満シナリオと3℃シナリオのそれぞれの財務影響を定量的に記載
    • 財務影響を算定するにあたり用いた前提条件を具体的に記載
    • 財務的影響を踏まえ、今後の取組みについて、取組みの目標達成年度と内容を具体的に記載

~NEW~
金融庁 事業者を支える融資・再生実務のあり方に関する研究会(第1回)議事次第
▼事務局資料
  • 金融を巡る環境が大きく変化する中、現代の金融機関には、ビジネスモデルの多様性の発揮が求められている。特に、事業者・金融機関の緊密な関係構築を促し、価値ある事業の継続につなげていくことも必要とされている
  • 借り手(事業者)にとって、貸し手との望ましい関係のあり方は様々であり、多様な選択肢が用意されるべき。他方、我が国においては、事業の理解を重視する貸し手が、不足しがちではないか
  • コロナ禍・コロナ後の課題解決に資する融資を進める上で、新たな制度整備のニーズが高まるのではないか
  • 求められる制度整備
    • 既存の担保・保証とは別の新たな制度整備の必要性
      • 事業再生の局面でも必要となる運転資金等の融資がなされやすくするための方策はないか(DIPファイナンス等)
      • 危機の中、事業の抜本改善に必要となる中長期の資金の融資がなされやすくするための方策はないか
      • 事業承継(第二創業)を進める際に、新経営者の個人保証によらず、融資がなされやすくする方策はないか
    • 時代の変化に応じた新たな制度整備の必要性
      • 有形資産を用いないビジネスが拡大する中、成長資金の供給のため、無形資産も含め事業の理解を促す動機付けが考えられないか
      • 地域で生まれた創業の芽を地域金融機関が援けられるよう、事業性の理解を促す動機付けが考えられないか
  • 借り手が必要な融資を受け、貸し手と緊密な関係を構築しやすくなるよう、貸し手が事業を理解して融資する(ファーストペンギンとなる)適切な動機付けをもたらす選択肢(包括的な担保権)を新たに用意できないか。新たな選択肢が適切に活用されるよう、制度設計上あるいは実務上、留意すべき点はないか
  • 新たな選択肢
    • 事業全体に対する包括的な担保権も選択肢に
      • 包括的な担保権の対象は無形資産も含む事業全体(ノウハウ、顧客基盤等の無形資産も含まれ、事業の将来性と一致)
      • 事業価値の維持・向上に資する者を最優先(商取引先・労働者やDIPファイナンスを十分に保護)
    • 事業の立ち上げ・承継を支える
      • 無形資産を含む事業の将来性・事業価値に着目した資金供給の可能性を広げ、創業・第二創業等を容易に
    • 事業の成長(生産性向上)を支える
      • 事業の成長が借り手・貸し手の共通の利益になるため、事業の実態に即した融資・支援や、経営悪化時の早期支援が進む
    • 事業の再生を支える
      • 事業を理解し、事業を再生することが借り手・貸し手の共通の利益になるため、再生計画の合意形成等が容易に
      • 商取引先やDIPファイナンスが保護され、事業の継続も可能に
    • 権利関係の透明性を高め、新規参入・競争を促進
      • 登記制度を整備し、透明性・予測可能性を高め、事業を的確に理解する貸し手の参入・競争を促進
  • 不動産等の価値ある個別資産をもつ事業者にとっては、これまでの担保法制は、低いコストで、(不動産等による信用補完の範囲内で)安定的に資金を調達できることから、現在でも効率的。他方、不動産等の価値ある個別資産をもたない事業者にとっては、例えば、下記のような改善の余地がないか
    • ベンチャー企業が、海外のように、ワラントやコベナンツ等を組み合わせたデット性資金など、創意工夫を発揮した多様な融資を受けられるようにならないか
    • 貸し手が、グループ全体の信用力と切り離して、事業ベースで評価を受けやすくなることで、成長途上の事業が、成長資金を確保しやすくならないか
    • 貸し手が、事業CFに強い利害をもてることで、価値ある事業の承継を考える新経営者が、事業CFに基づくノンリコースの融資を受けやすくならないか
    • 貸し手がゴーイングコンサーンとしての事業の継続価値に強い利害をもてることで、危機に直面した事業者が、価値ある事業の継続のための融資を受けやすくならないか
  • 現在の担保法制は、個別資産の換価価値による貸倒リスクの低減策を用意し、事業を見ない融資をも保護する一方、事業の将来CFによる貸倒リスクの低減策を用意しないために、事業を理解した融資を難しくしていないか
  • 再生実務においても、現在の担保法制等の影響により、事業を見ない多様な利害をもつ貸し手が併存し、事業継続に向けた調整コストが高まることで、価値ある事業の継続が難しくなっていないか
  • 包括的な担保権の全体像(案)
    • 貸し手の関心を事業の価値・将来CFに向け、事業の実態や将来性を見た融資を動機付けるため、事業の価値・将来CFから優先弁済を受ける地位を与える契約に、対世効を認める(包括的な担保権)
    • 更に、全体として事業価値の向上に資するよう、貸し手の規律付けを図りつつ、商取引先や労働者等を優先的に保護するなど、担保権者や債権者等との利害を調整する(設定・公示・実行・優先関係の各局面で複層的に調整)
  • 事業に関わる商取引先や労働者、事業を見る貸し手の保護のバランスの確保が重要。様々なトレードオフの関係を踏まえつつ、全体として事業価値を向上させる観点から、ご議論いただけないか
    • 適切に活用されるための措置
    • 他の担保権等との優先関係
    • 後続の金融債権者等との優先関係
    • 商取引債権者・労働債権者等との優先関係
    • 簡便な登記制度等に基づく優先関係
    • 包括的な担保権の権利行使手続
  • 包括的な担保権を通じ、借り手に対する不合理な影響力の行使を防ぎ、担保権が借り手の事業価値向上のために適切に活用されるよう、一定の措置が必要ではないか
    • 論点1 包括的な担保権者の融資責任
    • 論点2 リファイナンスによる競争の促進
    • 論点3 経営者保証の禁止
  • 包括的な担保権と、他の既存の個別資産の担保権等との関係について、調整が必要となる
    • 論点4 動産・債権等の担保権との関係
    • 論点5 不動産担保権との関係
    • 論点6 預金口座・債権との関係
    • 論点7株主への情報開示等
  • DIPファイナンスの貸し手やリース業者などの金融債権者等について、一定の条件の下、優先的に保護する(先行する既存の担保権に優先させる)ことが、事業価値の向上につながる。他方、条件を緩めすぎる場合は、事業者の資金調達コストが増すことで、かえって事業価値が損なわれうる
    • 論点8 再生局面における新規融資(DIPファイナンス)の優先
    • 論点9 リース債権者の優先(特に包括的な担保権との関係)
  • 商取引先や労働者等の協力なしに、事業は成り立たない。商取引先や労働者等については、事業価値の向上に資する者として、優先的に保護する(包括的な担保権に優先させる)ことで、事業価値の向上につながる。他方、商取引先や労働者等を優先しすぎると、事業者の資金調達コストが増すことで、事業価値が損なわれうる
    • 論点10 売り手(財・サービス提供者)の優先
    • 論点11 買い手の保護
    • 論点12 労働者の保護
    • 論点13 その他一般債権者との調整
  • 登記を通じて優先関係が透明になれば、貸し手の新規参入・競争が促される。事業者にとって、資金調達コストが低下することで、事業価値の向上につながる。他方、登記を求める範囲を過度に拡大する場合、取引コストが増すことで、事業価値が損なわれうる
    • 論点14 登記優先ルールの採用
    • 論点15 一元的・警告型の登記の採用
    • 論点16 登記申請・承認の2段階手続の採用
  • 事業活動を営むための社会的基盤として、財産権や適正な手続の保障は必要不可欠。これらの権利が保障されることで、当事者の予測可能性が確保され、事業価値の向上につながる。他方、財産権や手続保障を過度に重視・絶対視する場合、手続・調整コストが嵩むことで事業価値が損なわれうる
    • 論点17 担保権を実行する権限・手続
    • 論点18 譲受人を決定するプロセス
    • 論点19 譲受人を決定した後の契約手続等

~NEW~
金融庁 障がい者等に配慮した取組みに関するアンケート調査の結果について
  1. 視覚障がい者対応ATMの設置率について ※(設置率)=(視覚障がい者対応ATM設置台数)/(全ATM設置台数)
    • 全ATMのうち、ハンドセット方式等の視覚障がい者が自ら操作できる機能がある視覚障がい者対応ATMの割合は、全金融機関で約92%です。
    • 業態ごとの内訳
      • 主要行等 94.6%(うち都市銀行等 98.9%)
      • 信託銀行 100%、
      • 地方銀行等 88.5%
      • 第二地方銀行 82.5%
      • 信用金庫 93.1%
      • 信用組合 92.7%
      • 労働金庫 96.3%
      • 農漁協等 87.0%
  2. 目が不自由な方への代読に関する内部規定の整備状況について
    • 目が不自由な方への代読に関する内部規定を「策定済み」と回答のあった金融機関の業態ごとの割合は、次のとおりです。
      • 主要行等 90.0%(うち都市銀行等 100%)
      • 信託銀行 100%、
      • その他の銀行 37.5%
      • 地方銀行等 98.5%
      • 第二地方銀行 100%
      • 信用金庫 96.5%
      • 信用組合 94.5%
      • 労働金庫 100%
      • 農漁協等 99.6%
  3. 預金取引に係る自筆困難者への代筆に関する内部規定の整備状況について
    • 預金取引に係る代筆に関する内部規定を「策定済み」と回答のあった金融機関の業態ごとの割合は、次のとおりです。
      • 主要行等 100%(90.0%)(うち都市銀行等100%(100%))
      • 信託銀行 100%(100%)
      • その他の銀行 37.5%(66.7%)
      • 地方銀行等 100%(100%)
      • 第二地方銀行 100%(100%)
      • 信用金庫 100%(99.6%)
      • 信用組合 100%(99.3%)
      • 労働金庫 100%(100%)
      • 農漁協等 100%(100%)

~NEW~
警察庁 令和2年9月の特殊詐欺認知・検挙状況等について
  • 令和2年1月~9月の特殊詐欺全体の認知件数は10,172件(前年同期12,380件、前年同期比▲17.8%)、被害総額は195.7憶円(231.9憶円、▲15.6%)、検挙件数は5,157件(4,429件、+16.4%)、検挙人員は1,821人(1,915人、▲4.9%)
  • オレオレ詐欺の認知件数は1,570件(5,126件、▲69.4%)、被害総額は43.2憶円(51.0憶円、▲15.3%)、検挙件数は1,426件(2,283件、▲37.5%)、検挙人員は459人(1,145人、▲59.9%)
  • キャッシュカード詐欺盗の認知件数は2,323件(2,455件、▲5.4%)、被害総額は32.1憶円(38.5憶円、▲16.6%)、検挙件数は1,833件(921件、+99.0%)、検挙人員は517人(263人、+96.6%)
  • 預貯金詐欺の認知件数は3,163件、被害総額は0.2憶円、検挙件数は1,002件、検挙人員は592人
  • 架空料金請求詐欺の認知件数は1,474件(2,637件、▲44.1%)、被害総額は50.8憶円(66.1憶円、▲23.1%)、検挙件数は396件(919件、▲56.9%)、検挙人員は110人(436人、▲74.8%)
  • 還付金詐欺の認知件数は1,229件(1,876件、▲34.5%)、被害総額は17.2憶円(24.1憶円、▲28.6%)、検挙件数は295件(192件、+53.6%)、検挙人員は41人(15人、+173.3%)
  • 融資保証金詐欺の認知件数は241件(222件、+8.6%)、被害総額は3.0憶円(3.4憶円、▲11.8%)、検挙件数は122件(66件、+84.8%)、検挙人員は41人(15人、+173.3%)
  • 金融商品詐欺の認知件数は45件(22件、+104.5%)、被害総額は2.9憶円(1.6憶円、+81.3%)、検挙件数は21件(20件、+5.0%)、検挙人員は22人(18人、+22.2%)
  • ギャンブル詐欺の認知件数は83件(29件、+186.2%)、被害総額は1.9憶円(2.4憶円、▲20.8%)、検挙件数は34件(9件、+277.8%)、検挙人員は10人(10人、±0%)
  • 口座詐欺等の検挙件数は466件(669件、▲30.3%)、検挙人員は307人(388人、▲20.9%)、盗品譲受けの検挙件数は2件(5件、▲60.0%)、検挙人員は1人(3人、▲66.7%)、犯罪収益移転防止法違反の検挙件数は1,845件(1,732件、+6.5%)、検挙人員は1,516人(1,423人、+6.5%)、携帯電話不正利用防止法違反の検挙件数は25件(35件、▲28.6%)、検挙人員は22人(24人、▲8.3%)、組織犯罪処罰法違反の検挙件数は67件、検挙人員は16人
  • 被害者の年齢・性別構成について、特殊詐欺全体では60歳以上89.5%、70歳以上79.3%、男性:女性=26.4%:73.6%、オレオレ詐欺では60歳以上95.7%、70歳以上92.8%、男性:女性=18.9%:81.1%、融資保証金詐欺では60歳以上28.1%、70歳以上11.5%、男性:女性=67.7%:32.3%
  • 特殊詐欺被害者全体に占める高齢(65歳以上)被害者の割合について、特殊詐欺全体では85.5%(男性23.1%、女性76.9%)、オレオレ詐欺95.3%(19.4%、80.6%)、預貯金詐欺98.4%(16.3%、83.7%)、架空料金請求詐欺44.8%(45.4%、54.6%)、還付金詐欺85.4%(35.3%、64.7%)、融資保証金詐欺21.2%(84.8%、15.2%)、金融商品詐欺77.8%(28.6%、71.4%)、ギャンブル詐欺22.9%(63.2%、36.8%)、交際あっせん詐欺17.6%(100.0%、0.0%)、その他の特殊詐欺40.0%(20.0%、80.0%)、キャッシュカード詐欺盗96.6%(20.9%、79.1%)

~NEW~
警察庁 犯罪収益移転防止対策室(JAFIC)
▼犯罪収益移転危険度調査書(令和2年)
▼犯罪収益移転危険度調査書(令和2年)概要版
  • マネー・ローンダリングを行う主体は様々であるが、主なものとして、「暴力団」、「特殊詐欺の犯行グループ」、「来日外国人犯罪グループ」がある。それぞれの調査・分析結果についての概要は以下のとおり。
    • 暴力団
      • 暴力団は、経済的利得を獲得するために職業的に犯罪を敢行し、その利得を巧妙にマネー・ローンダリングするなど、我が国におけるマネー・ローンダリングの大きな脅威となっている。
      • 前提犯罪ごとにマネー・ローンダリング事犯における過去3年間の暴力団構成員等の関与状況を見ると、検挙件数では詐欺や窃盗が多いが、一方で、罪種別の検挙件数に占める暴力団構成員等の比率を見ると、賭博事犯、恐喝事犯、薬物事犯、売春事犯等が高い。
    • 特殊詐欺の犯行グループ
      • 近年、我が国においては、特殊詐欺が多発している。令和元年中の被害(認知件数 16,851件、被害総額 約316億円)は大都市圏に集中し、東京・大阪・神奈川・埼玉・千葉の5都府県で、認知件数全体の67.0%を占めている。
      • 特殊詐欺の犯行グループは、首謀者を中心に、だまし役、詐取金引出役、犯行ツール調達役等にそれぞれ役割分担した上で、預貯金口座、携帯電話、電話転送サービス等の各種ツールを巧妙に悪用し、組織的に詐欺を敢行するとともに、詐取金の振込先として架空・他人名義の口座を利用するなどし、マネー・ローンダリングを敢行している。また、犯行拠点が、賃貸マンション、賃貸オフィス、ホテルに加え、車両等にも広がっているほか、外国犯行拠点の存在が表面化するなどしている。
      • 自己名義の口座や架空・他人名義の口座を遊興費や生活費欲しさから安易に譲り渡す者等がおり、マネー・ローンダリングの敢行をより一層容易にしている。
    • 来日外国人犯罪グループ
      • 外国人が関与する犯罪は、その収益の追跡が困難となるほか、その人的ネットワークや犯行態様等が一国内のみで完結せず、国境を越えて役割が分担されることで、犯罪がより巧妙化・潜在化する傾向を有する。来日外国人による組織的な犯罪の実態として、中国人グループによるインターネットバンキングに係る不正送金事犯、ベトナム人グループによる万引き事犯、ナイジェリア人グループによる国際的な詐欺事犯等に関連したマネー・ローンダリング事犯等の事例がみられる。
      • 過去3年間の預貯金通帳・キャッシュカード等の不正譲渡等に関する犯罪収益移転防止法違反事件の国籍等別の検挙件数では、ベトナム及び中国で全体の8割以上を占めている。
      • 犯罪インフラ事犯の検挙状況を見ると、旅券・在留カード等偽造は、平成28年以降、増加傾向で推移している。
  • マネー・ローンダリングの前提犯罪の種類によって、生み出される収益の規模、マネー・ローンダリング事犯等との関連性、悪用される取引の状況、組織的な犯罪を助長する危険性、健全な経済活動に与える影響等は異なる。主たる前提犯罪の犯行形態とマネー・ローンダリングの手口についての調査・分析結果の概要は以下のとおり。
    • 窃盗
      • 犯行形態:窃盗の犯行形態は多様であり、被害額が比較的少額なものもあるが、暴力団や来日外国人犯罪グループ等の犯罪組織によって職業的・反復的に実行され、多額の犯罪収益を生み出す事例がみられる。令和元年中における窃盗の被害総額は約633億円となっている。
      • 手口:ヤードに持ち込まれた自動車が盗難品であることを知りながら買い取り、保管するもののほか、侵入窃盗で得た多額の硬貨を他人名義の口座に入金して払い出し、事実上の両替を行うもの、盗んだ高額な金塊を会社経営の知人に依頼して、金買取業者に法人名義で売却させるもの、中国人グループ等が不正に入手したクレジットカード情報を使って、インターネット上で商品を購入し、配送先に架空人や実際の居住地とは異なる住所地を指定するなどして受領するもの等がある。
    • 詐欺
      • 犯行形態:特殊詐欺をはじめとする詐欺の犯行形態としては、国内外の犯行グループ等によって職業的・反復的に実行されており、令和元年中における詐欺の被害額は約469億円となっている。
      • 手口:特殊詐欺の被害金を架空又は他人の名義の口座に振り込ませるものが多く、振込先として使用する口座に振り込まれた被害金は、被害発覚後の金融機関等による口座凍結の措置等を回避するため、入金直後に払い戻されたり、他口座へ送金されたり、複数の借名口座を経由して移転されたりするなどの傾向も認められる。隠匿先となる口座の名義は、個人名義、法人名義、屋号付きの個人名義等、詐欺の犯行形態によって様々である。また、取引時確認等の義務の履行が徹底されていない郵便物受取サービスや電話転送サービスを取り扱う事業者が、特殊詐欺等を敢行する犯罪組織の実態等を不透明にするための手段として悪用されている事例がみられる。
    • 電子計算機使用詐欺
      • 犯行形態:電子計算機使用詐欺罪が適用される犯罪として、特殊詐欺やインターネットバンキングに係る不正送金等の事犯がある。特殊詐欺の形態は、キャッシュカード手交型とキャッシュカード窃盗型で特殊詐欺全体の半数以上を占めている。インターネットバンキングに係る不正送金事犯の形態としては、他人のID、パスワード等を使って金融機関が管理する業務システムに対して不正アクセスを行い、他人の口座から犯人が管理する口座に不正送金するものがある。令和元年中の被害は、発生件数1,872件、被害額約25億円と、発生件数は過去最多であった平成26年に次ぐ件数となり、被害額も前年と比べて大幅に増加した。特殊詐欺については、暴力団の関与が認められるほか、インターネットバンキングに係る不正送金事犯については、国際犯罪組織の関与が認められ、犯罪組織が多額の犯罪収益を獲得するために、組織的にそれらの犯行を行っている実態が認められる。
      • 手口:特殊詐欺でだまし取ったキャッシュカードを使用してATMを操作し、被害者名義の口座から犯人が管理する他人名義の口座に送金上限額を不正に振り込むもの、中国に存在する犯罪組織が日本の金融機関に不正アクセスを行い、他人名義口座に不正送金させて中国人犯罪グループによって引き出すもの、暗号資産ウォレットサービスのサーバへの不正行為により得た暗号資産を、犯人が管理する分散型暗号資産取引所の匿名アカウントに移転するもの等がある。
    • 薬物事犯
      • 犯行形態:全薬物事犯の6割以上を占める覚醒剤事犯については、令和元年中の押収量が2,293.1キログラムと過去最多となるとともに、平成28年から令和元年まで4年連続で1,000キログラムを超えており、覚醒剤の密輸・密売が多額の犯罪収益を生み出していることがうかがわれる。令和元年中の覚醒剤事犯の検挙人員の4割以上を暴力団構成員等が占めており、覚醒剤の密輸・密売に暴力団が深く関与している状況が続いている。近年では、暴力団が海外の薬物犯罪組織と結託するなどしながら、覚醒剤の流通過程にも関与を深めていることが強くうかがわれ、覚醒剤密輸入事犯の洋上取引においては、令和元年、約587キログラムを押収した事件で、暴力団構成員等や台湾人らを検挙している。
      • 手口:代金を他人名義の口座に入金させて隠匿するものが多くみられる。暴力団員の親族名義の口座に係る不審な資金移動を端緒として捜査した結果、同暴力団員らを覚醒剤の密輸等で検挙した事例もある。過去の麻薬特例法に基づく起訴前の没収保全命令の対象としては、自動車、土地、建物等もあり、現金等で得た薬物犯罪収益等が、その形態を変えている実態が認められる。
  • 特定事業者においては、犯罪収益移転防止法等を踏まえた適切な取組を実施し、取り扱う商品・サービスがマネー・ローンダリングに悪用されることを効果的に防止することが求められる。特定事業者が取り扱う商品・サービスごとの危険度の評価、「第5 危険度の高い取引」で取り上げる取引のほかに危険度が高まる取引及び危険度を低減させるために執られている事業者・専門家の措置の概要はそれぞれ以下のとおり。
    1. 預金取扱金融機関が取り扱う商品・サービス
      • 危険度の評価
        • 預金取扱金融機関は、口座をはじめ、預金取引、為替取引、貸金庫、手形・小切手等、様々な商品・サービスを提供している。一方で、これらの商品・サービスは、その特性から、マネー・ローンダリング等の有効な手段となり得るものであり、これらの悪用により、犯罪による収益の収受又は隠匿がなされた事例があること等から、これらの商品・サービスは、マネー・ローンダリング等に悪用される危険性があると認められる。また、国際金融市場としての我が国の地位や役割、金融取引量の大きさ、悪用された取引等の統計等も踏まえると、悪用される危険度は、他の業態よりも相対的に高いと認められる。
        • 令和元年中の犯罪収益等隠匿事件は、他人名義の口座への振込入金の手口を用いるものが多くを占めており、口座を提供する事業者は、口座譲渡を防ぐこと及び事後的に検知する措置を行うことについて継続的な対応が求められる。
      • 危険度が高まる取引
        • 匿名又は架空名義・借名・偽名(その疑いがあるものを含む。)による取引
        • 通常は資金の動きがない口座にもかかわらず、突発的な多額の入出金が行われる取引
        • 取引目的や職業又は事業の内容等に照らし、不自然な態様・頻度で行われる送金や入出金等の取引
      • 事業者の措置
        • 過去に疑わしい取引を届け出た顧客について、システム上での情報共有体制を構築の上、当該顧客との取引に当たっては、書面やヒアリングによる詳細な確認を行うとともに、上級管理者の承認を受けることとしているもの
        • 口座開設時において注意すべき顧客区分を設定しており、該当する場合には追加的な質問等を行うことにより口座開設の合理性を確認した上で、合理性の判断が困難な場合には、上級管理者の確認を経た上で口座開設の可否を判断しているもの
        • 非対面取引において、なりすましの可能性を勘案し、IPアドレス、ブラウザ言語等のアクセス情報に着目した取引モニタリングを実施しているもの 等
    2. 資金移動業者が取り扱う資金移動サービス
      • 危険度の評価
        • 資金移動サービスは、為替取引を業として行うという業務の特性、海外の多数の国へ送金が可能なサービスを提供する資金移動業者の存在等を踏まえれば、マネー・ローンダリング等の有効な手段となり得る。
        • 実際、前提犯罪と無関係の第三者を利用したり、他人の身分証明書を利用して同人になりすましたりするなどして海外に犯罪による収益を移転していた事例があること等から、資金移動サービスは、マネー・ローンダリング等に悪用される危険性があると認められる。
        • 資金移動業における年間送金件数・取扱金額が共に増加していること、在留外国人の増加等による利用の拡大が予想されること等を踏まえると、資金移動サービスがマネー・ローンダリング等に悪用される危険度は、他業態と比べても相対的に高まっているといえる。
      • 危険度が高まる取引
        • 匿名又は架空名義・借名・偽名(その疑いがあるものを含む。)による取引
        • 取引目的や職業又は事業の内容等に照らして不自然な態様・頻度の取引
        • 多数の者からの頻繁な取引
      • 事業者の措置
        • 顧客の属性や取引状況を勘案し、顧客ごとのリスク評価を行い、評価に応じた措置を行っているもの
        • 前払式支払手段発行者を兼業している場合において、同発行者として提供しているサービスについても、リスクの特定・評価を行っているもの
        • 商品・サービス、取引形態、国・地域及び顧客属性によって取引金額の上限を設定し、それを上回る場合は厳格な取引時確認を行っているもの(例えば、「永住者」、「技能実習生」、「留学生」等の在留資格に応じて、取引金額の上限を変更)
      • 外国人との取引に際して、本人確認資料として在留カードの提示を受け、在留期間を確認した上で、システムによって管理しているもの 等
    3. 暗号資産交換業者が取り扱う暗号資産
      • 危険度の評価
        • 暗号資産は、利用者の匿名性が高いという性質や、その移転が国際的な広がりを持ち、迅速に行われるという性質を有するほか、暗号資産に対する規制が各国において異なること等から、犯罪に悪用された場合には、当該犯罪による収益の追跡が困難となる。
        • 実際、その匿名性を悪用し、不正に取得した暗号資産を暗号資産交換業者を介して換金し、他人名義の口座に振り込ませていた事例等があることも踏まえれば、暗号資産は、マネー・ローンダリング等に悪用される危険性があると認められる。
        • さらに、暗号資産取引が世界規模で拡大し、それを取り巻く環境も急激に変化していることも考慮に入れると、暗号資産がマネー・ローンダリング等に悪用される危険度は、他業態よりも相対的に高いと認められる。加えて、預金取扱金融機関がマネー・ローンダリング等対策を強化していることを背景として、マネー・ローンダリング等を行おうとする者が、預金取扱金融機関が取り扱う商品・サービスのほかに、暗号資産取引を用いる事例も認められ、こうした事情も暗号資産の危険度を高めることとなる。
        • 暗号資産取引を取り巻く環境の急激な変化に対して、適時適切な危険度の低減措置を行っていくことは容易ではなく、それらの取組が不十分な場合は適切な低減措置が図れず、危険度はなお高いままとなる。
      • 危険度が高まる取引
        • 匿名又は架空名義・借名・偽名(その疑いがあるものを含む。)による取引
      • 事業者の措置
        • 特殊詐欺利用のリスク等について、取引時確認において発見した、顧客の本人確認書類の写真や顧客属性等の特徴の不自然な一致に係る調査・分析結果を、特定事業者作成書面に反映するとともに、取引時確認の強化を行ったもの
        • 他国における金融犯罪関連の送金に関する起訴事例や悪質な報道事例、他国当局によるリスク分析や腐敗認識指数(CPI)に着目し、高リスクと判断した国との取引及び同国籍顧客について、モニタリングを強化しているもの
        • 帰国時における口座売却等のリスクについて、外国人の留学生や就労者等の顧客の在留期間を確認した上で、システム等によって在留期間を管理しているもの 等
    4. 宅地建物取引業者が取り扱う不動産 項目 調査・分析結果
      • 危険度の評価
        • 不動産は、財産的価値が高く、多額の現金との交換を行うことができるほか、通常の価格に金額を上乗せして対価を支払うなどの方法により容易に犯罪による収益を移転することができることから、マネー・ローンダリング等の有効な手段となり得る。
        • 実際、売春や詐欺により得た収益が不動産の購入費用に充当されていた事例等が把握されていること等から、不動産は、マネー・ローンダリング等に悪用される危険性があると認められる。
      • 危険度が高まる取引
        • 匿名又は架空名義・借名・偽名(その疑いがあるものを含む。)による取引
      • 事業者の措置
        • 過去において取引を中止する又は何らかの理由によって取引が成立しなかった顧客との取引についての情報をデータベース化して全社的に共有し、当該顧客に関して、以後の取引が生じた場合は、顧客管理を強化する又は取引を謝絶するなどの措置を講じているもの 等
    5. 郵便物受取サービス業者が取り扱う郵便物受取サービス
      • 危険度の評価
        • 郵便物受取サービスは、詐欺、違法物品の販売を伴う犯罪等において、犯罪による収益の送付先として悪用されている実態がある。本人特定事項を偽り当該サービスの役務提供契約を締結することにより、マネー・ローンダリング等の主体や犯罪による収益の帰属先を不透明にすることが可能となるため、郵便物受取サービスはマネー・ローンダリング等の有効な手段となり得る。
        • 実際、架空名義で契約した郵便物受取サービス業者宛てに犯罪による収益を送付させ、これを隠匿した事例があること等から、郵便物受取サービスは、マネー・ローンダリング等に悪用される危険性があると認められる。
      • 危険度が高まる取引
        • 匿名又は架空名義・借名・偽名(その疑いがあるものを含む。)による取引
        • 会社等の実態を仮装する意図でサービスを利用するおそれがある顧客との取引 等
      • 事業者の措置
        • 過去において何らかの理由により取引を中止した又は取引が成立しなかった顧客との取引について、同業他社との間で情報を共有することにより、顧客管理の強化を行っているもの 等
    6. 電話受付代行業者が取り扱う電話受付代行 項目 調査・分析結果
      • 危険度の評価
        • 近年、電話受付代行が悪用されたマネー・ローンダリング事犯の検挙事例は認められないものの、電話受付代行は、顧客が事業に関して架空の外観を作出してマネー・ローンダリング等の主体や犯罪による収益の帰属先を不透明にすることを可能とするなどの特性から、マネー・ローンダリング等に悪用される危険性があると認められる。
    7. 電話転送サービス事業者が取り扱う電話転送サービス
      • 危険度の評価
        • 電話転送サービスは、顧客が事業に関して架空の外観を作出してマネー・ローンダリング等の主体や犯罪による収益の帰属先を不透明にすることを可能とするなど、マネー・ローンダリング等に悪用される危険性があると認められる。
      • 危険度が高まる取引
        • 匿名又は架空名義・借名・偽名(その疑いがあるものを含む。)による取引
  • FATFガイダンス、犯罪収益移転防止法上の措置、マネー・ローンダリング事犯の検挙事例等を参考に、「取引形態」、「国・地域」及び「顧客」の観点から、危険度の高い取引を特定し、分析・評価を行っている。上記の各観点ごとの危険度の評価及び事業者の措置の概要は以下のとおり。
    1. 非対面取引
      • 危険度の評価
        • 非対面取引においては、取引の相手方や本人確認書類を直接観察することができないことから、本人確認の精度が低下することとなり、対面取引に比べて匿名性が高く、本人確認書類の偽変造等により本人特定事項を偽り、又は架空の人物や他人になりすますことを容易にする。
        • 実際、非対面取引において他人になりすますなどして開設された口座がマネー・ローンダリングに悪用されていた事例があること等から、非対面取引は危険度が高いと認められる。
      • 事業者の措置
        • 疑わしい取引を判断するに際して、IPアドレスやログイン所在地を踏まえて取引をモニタリングするなど、リスク低減措置を図っているもの
    2. 現金取引
      • 危険度の評価
        • 現金取引は、流動性及び匿名性が高く、現金を取り扱う事業者において、取引内容に関する記録が正確に作成されない限り、犯罪による収益の流れの解明が困難となる。
        • 実際、他人になりすますなどした上で、現金取引を通じてマネー・ローンダリングを行った事例が多数存在すること等から、現金取引は危険度が高いと認められる。
      • 事業者の措置
        • 一定基準を超える現金の入出金については、店頭においてヒアリングシートを起票し、必要に応じて疑わしい取引の届け出をするもの 等
    3. 外国との取引
      • 危険度の評価
        • 外国との取引は、法制度や取引システムの相違等から、国内取引に比べてマネー・ローンダリング等の追跡を困難にする。
        • 実際、外国との取引を通じてマネー・ローンダリングを行った事例が存在することから、外国との取引はマネー・ローンダリング等に悪用される危険性があると認められる。
      • 事業者の措置
        • FATF声明で加盟国等に対して対抗措置等が要請された国・地域に近接するエリア向けの海外送金取引について、取引時確認を強化するもの
        • 外国からの送金について、送金目的と受取人の実際の資金の使用状況との乖離に着目し、疑わしい取引の届出を行うもの 等
    4. 国・地域と危険度
      • 危険度の評価
        • FATF声明を踏まえれば、イラン及び北朝鮮との取引は、マネー・ローンダリング等に悪用される危険度が特に高いと認められる。
        • FATFは、マネー・ローンダリング等への対策に重大な欠陥を有し、かつ、それに対処するためのアクションプランを策定した国・地域について、国際的なマネー・ローンダリング等対策の遵守の改善を継続して実施している国・地域として公表した上で、当該国・地域に対し、迅速かつ提案された期間内におけるアクションプランの履行を要請していることから、当該国・地域との取引であって、FATFが指摘する欠陥が是正されるまでの間になされるものは、危険性があると認められる。
    5. 反社会的勢力(暴力団等)
      • 危険度の評価
        • 暴力団をはじめとする反社会的勢力は、財産的利益の獲得を目的に、様々な犯罪を敢行しているほか、企業活動を仮装・悪用した資金獲得活動を行っている。このような犯罪行為又は資金獲得活動により得た資金の出所を不透明にするマネー・ローンダリングは、反社会的勢力にとって不可欠といえることから、反社会的勢力との取引は危険度が高いと認められる。
      • 事業者の措置
        • 取引開始時及び取引開始後も定期的に国内外のデータベース等を用いて、自社の顧客のスクリーニングを行い、暴力団・準暴力団をはじめとする反社会的勢力に該当する場合、疑わしい取引の届出を行っているもの
    6. 国際テロリスト
      • 国際連合安全保障理事会決議を受けて資産凍結等の措置の対象とされた者の中に、日本人や我が国に居住している者の把握はなく、また、現在まで、日本国内において、国際連合安全保障理事会が指定するテロリスト等によるテロ行為は確認されていない。
      • しかしながら、FATFは、令和元年に公表したレポートにおいて、国内でテロやテロ資金供与の事例がない場合であっても、それをもってテロ資金供与リスクが低いと直ちに結論付けることはできず、国内で資金が収集され、又は海外に送金される可能性を排除すべきではないと指摘している。
      • また、我が国においても、事業者が提供する商品・サービスが、事業者の監視を回避する方法で悪用され得ること等の懸念があることを認識すべきであり、特にイスラム過激派等と考えられる者との取引は、テロ資金供与の危険度が高いと認められる。
    7. 非居住者
      • 非居住者との取引は、居住者との取引に比べて、事業者による継続的な顧客管理の手段が制限されてしまう。さらに、非対面取引が行われる場合は、匿名性も高まり、マネー・ローンダリング等が行われた際に資金の追跡が一層困難であることから、非居住者との取引は危険度が高いと認められる。
    8. 外国の重要な公的地位を有する者
      • 外国の重要な公的地位を有する者が、マネー・ローンダリング等に悪用し得る地位や影響力を有することのほか、その本人特定事項等の十分な把握が制限されること、腐敗対策に関する国ごとの取組の差異等から、外国の重要な公的地位を有する者との取引は危険度が高いと認められる。
    9. 実質的支配者が不透明な法人
      • 法人は、所有する財産を複雑な権利・支配関係の下に置くことにより、その帰属を複雑にし、財産を実質的に支配する自然人を容易に隠蔽することができる。このような法人の特性により、実質的支配者が不透明な法人は、その有する資金の追跡を困難にする。
      • 実際、詐欺等の犯罪による収益の隠匿手段として、実質的支配者が不透明な法人の名義で開設された口座が悪用されていた事例があること等から、実質的支配者が不透明な法人との取引は危険度が高いと認められる。

~NEW~
内閣府 令和2年度 年次経済財政報告―コロナ危機:日本経済変革のラストチャンス―
▼おわりに
  • 我が国は、感染症対策を講じつつ、経済活動の再開・拡大を進めているものの、国内外の感染症への懸念は未だ大きく、先行きも極めて不透明である。輸出は上向きになっているが、国際的な人の移動が制限されていることもあり、5兆円弱まで拡大したインバウンド需要も失われたままである。国内においても、消費全体は持ち直しているものの、飲食や宿泊を始めとする対個人向けサービスへの需要の戻りは遅れており、こうした事業に携わる者には厳しさが残っている。
  • 感染症由来の危機を乗り越えて、再び経済を成長軌道に乗せていくためには、医薬品開発といった直接的な問題解決を待つだけでなく、既に存在している様々なデジタル技術の社会実装を促すと同時に、必要となる社会制度の変革を迅速に進めることが必須である
  • 我が国経済は、感染症対策として要請した自粛等の影響により、個人消費を中心とした大幅な内需の減少と、より強制力のある感染症対策を実施した諸外国への輸出が大幅に減少したことにより、これまでにない厳しい状況に陥った。しかし、全体としては、4、5月を底として持ち直しの動きがみられており、経済活動を引き上げていく局面に入っている。政策支援の効果もあって、消費は大きく反転したが、感染者数の増加がマインドや行動抑制へとつながり、需要の下振れが顕在化するリスクは小さくない。同様のことは輸出にも当てはまり、諸外国における感染動向とそれに対する防疫措置が、我が国に与える影響には十分留意する必要がある。
  • 感染症拡大による需給の緩みは世界中で生じており、当面はデフレ圧力の顕在化に注意を払う必要がある。実際、企業の予想物価は下振れしており、今後、需要回復のテンポが鈍化すれば、物価への下押し圧力は高まる。また、需要の弱さは設備投資にも影響し、投資不足が長引けば、潜在成長力が低下することになる。潜在成長力の低下は、デフレリスクを緩和するものの、それは豊かさの喪失であり、中長期の成長経路が下振れにするというより深刻なリスクの顕在化を意味している。したがって、早急に、感染防止を図りながら需要の喚起、回復を図ることが極めて重要になっている
  • 当面、感染症の影響は残るものの、経済活動との両立を図ることが必要であり、外需の持ち直しに期待しつつも、内需を持ち上げていくことが自律的な循環を再び取り戻すためには必要である。特に、生産年齢人口の減少が続くことからも、ソフトウェアやIT投資、人的投資を促すことで生産性の高い供給体制を構築し、同時に、感染防止策を講じる下において需要を十分発現させることが出来れば、再び自律性の高い経済成長軌道へ復することは可能である。
  • 感染症の拡大は働き方にも大きな影響を与えた。過年度から、一億総活躍の下での女性や高齢者の就業を促進し、同時に働き方改革を進めてきており、残業時間の抑制や有給休暇取得を促してきた。今年の上半期は、感染症の影響による休業の広がりを反映し、総労働時間は大きく減少したが、その中にはこうした取組の成果も含まれている。ただし、長時間労働者は依然として一定割合で存在しており、是正に向けて、企業は柔軟な業務の調整ができる体制構築や社内慣行の見直しに取り組んでいく必要がある。
  • また、感染症の拡大によって東京を中心に時差通勤やテレワークが広く浸透した。テレワーク実施率は、緊急事態宣言の解除後も大きくは下がらず、実施者の多くが今後も日常業務で取り入れたいという意向を示している。アンケート調査結果を詳しく分析すると、同じ業種でもテレワーク経験者の方が未経験者よりも「テレワークができない職種である」との回答が少なく、実際やってみるとテレワークが導入できる部分があり、実施率はまだ高まる可能性がある。ワーク・ライフ・バランスや働き方改革の目指すところからも、後戻りさせることなく取り組んでいく必要がある。
  • 働き方改革の具体的な取組が雇用や生産性に与える影響を定量的に分析すると、効果の出方に違いがある。例えば、労働時間に関する取組では、「有休取得目標の設定」をした企業群では、設定しない企業群より有給休暇日数が増加し、総労働時間は減少した。また、「残業時間の公表」を実施した企業群は、実施しない企業群に比べて残業が抑制され、「残業時間の人事評価項目への追加」を実施した企業群では、実施しない企業群より離職率が低下した。同一労働同一賃金に関する分析でも、非正規雇用比率の低下や労働時間の減少に有効な取組(給与体系の見直し等)や離職率の低下につながる取組(業務内容の明確化)があった。テレワークの実施は、生産性に有意にプラスの効果があることが示されたが、これは、フレックスタイム制や事業場外みなし労働時間制といった時間管理方法の改善、あるいは、成果主義を踏まえた裁量労働制の導入といった雇用管理の見直しと相まって、生産性上昇に寄与することが期待される。
  • 相互に関連するが、働き方改革と並んで重要な政策課題は女性活躍の推進である。今回の景気拡張局面は、女性雇用者が大きく増加した点が特徴である。いわゆるM字の女性労働参加率は解消されつつあるが、欧米主要国と比べると水準が高まる余地はあり、特に、30歳代後半で欧州諸国と開きがある。こうした子育て世代と考えられる時期の女性就業率は、国内外ともに低下する傾向はみられるが、就業希望者にとって、これがキャリアの断絶にならず、休職・休業が一時的なものに出来るよう、継続就業への道を拡げる必要がある。しかし、男性の育児休業取得は未だ極めて少数であり、就業者の意識の変化や政策面での一層の後押しが求められる。
  • 我が国の出生率の低下要因は、特に未婚率の上昇による影響が大きいと考えられ、女性の就業が出生に悪影響を与えているとは言えない。独身者の9割がいずれは結婚を希望し、希望出生数も2近傍にあることから、婚姻率の回復を図ることが求められる。
  • 結婚・出産と女性の就業の関係では、かつては一般的であった結婚退職は減少しているが、第1子の出産前後で3割が退職している。特にパート・派遣といった雇用形態で働くグループでは、妊娠前後に離職を選択する者が多く、雇用形態が継続就業の確率に大きく影響している。さらに、共働き世帯が多くを占めるようになり、働き手の多様化も進んでいるが、男性の家事参加は低調である。
  • 感染症の拡大による生活様式の急激な変容は、夫婦の家事・育児分担にも影響を与えており、プラスの面もある。引き続き、働き方改革を進め、誰にとっても働きやすい環境を整備するとともに、子どもを産み育てやすい社会の形成が求められる。
  • 感染症を克服する「新たな日常」に向けて、消費面では既に大きな変化が生じている。EC(電子商取引)は感染症の拡大防止の観点から注目されているが、これまでも、消費者向けEC市場は年率約8%で成長してきた。EC消費支出はEC利用世帯の増加によって増えてきたが、若年世帯、共働き世帯の利用が多い。特に、緊急事態宣言以降、ECの利用は高齢世帯へと拡がっており、履歴効果も期待されることからすそ野広く定着していくと見込まれる。EC普及率は欧米よりも低いが、仮に感染症拡大の下で加速した今のテンポが続けば、1年程度で並ぶといった計算もできる。供給体制がボトルネックにならないように、通信や物流インフラの拡充、人手不足を解消するIT化と働き方の改革を急ぐべきである。
  • また、EC同様にインターネット上のプラットフォームを介して行うシェアリングといった新しい消費形態やサブスクリプション(定額制)といった新しい契約形態も拡がりをみせている。
  • こうした新たな消費生活を支えるためにはIT・ソフトウェア関連投資が不可欠となるが、我が国の従業者一人当たりソフトウェアストックは他の先進国に比べて見劣りしている。従業員一人当たりのソフトウェア装備率を高めることは労働生産性にプラスであり、また、省力化に向けたIT投資はバックオフィスの労働時間削減に効果があり、投資を加速する価値がある。
  • また、今回の感染症の拡がりにより、民間部門よりも公的部門のIT化の遅れが明らかになった。特に、教育や行政といった公的部門のIT化については、国際比較においても遅れが著しく、早々に改善・是正を図ることが求められる。
  • さらに、今後のデジタルイノベーションに必要なIT人材も不足していると懸念される。IT人材の総数不足だけでなく、欧米各国との比較からは、我が国のIT人材がIT関連産業に偏っていることが明らかになった。この点、米国では公的部門にもIT人材が1割以上所属しているのに対し、我が国は1%にも満たない。各産業に広くIT人材がいること、つまり、システムのユーザー側にある程度のIT人材が所属することは、ユーザーのニーズに合致した、合理的・効率的なIT投資やスムーズなIT運用が進む基礎となる。公的部門の改革に合わせて、IT技能を有する人材が広く産業に雇用されていくことで、「新たな日常」に向けた社会変革が実現できると期待される。

~NEW~
消費者庁 インターネットにおける健康食品等の虚偽・誇大表示に 対する要請について(令和2年7月~9月)
  • 消費者庁は、インターネットにおける健康食品等の虚偽・誇大表示について、改善要請等を行いました。
  • 消費者庁では、令和2年7月から9月までの期間、インターネットにおける健康食品等の虚偽・誇大表示の監視を実施しました。
  • 検索方法
    • ロボット型全文検索システムを用いて、検索キーワードによる無作為検索の上、検索された商品のサイトを目視により確認。
  • 検索キーワー
    • 「コロナウイルス」、「熱中症」等の疾病の治療又は予防を目的とする効果があるかのような表現「免疫力」
    • 「不眠」、「デトックス」等の身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効果があるかのような表現
    • 「ダイエット」等の身体を美化し、魅力を増し、容ぼうを変える効果があるかのような表現 等
  • この結果、インターネットにおいて健康食品等を販売している112事業者による113商品の表示について、健康増進法第65条第1項の規定に違反するおそれのある文言等があったことから、これらの事業者に対し、表示の改善を要請するとともに、当該事業者がショッピングモールに出店している場合には、出店するショッピングモール運営事業者に対しても、表示の適正化について協力を要請しました。
  • 消費者庁では、引き続き、健康食品等の広告その他の表示に対する継続的な監視を実施し、法に基づく適切な措置を講じてまいります。

~NEW~
国民生活センター 訪日観光客消費者ホットラインに寄せられた新型コロナウイルス関連の相談まとめ
  • 現在、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により各国間の渡航が大きく制限され、わが国においても今年の4月以降の訪日外客数は昨年度比99%以上減少しています。その中で、国民生活センター「訪日観光客消費者ホットライン」では新型コロナウイルスの影響で日本への旅行中止を余儀なくされた外国人からホテルや航空券のキャンセル料に関するトラブルなどの相談が寄せられました。
  • 2020年10月から全ての国・地域からのビジネス関係者や長期滞在者等の入国が認められるなど、わが国のインバウンド事情も新たな段階に入ったことを踏まえ、これまでに当窓口に寄せられた訪日観光客からの新型コロナウイルス関連の相談の傾向と事例を紹介します。
  • 相談件数の概要
    • 訪日観光客から寄せられた新型コロナウイルス関連の相談件数は、2020年9月末受付分までで56件でした。最初に相談が寄せられたのは今年の1月で、最も多かったのは3月の21件です。
    • 言語別の件数を見ると、中国語による相談が最も多く27件と半分近く占めており、次いで英語による相談が16件と約3割を占めています。
    • 月別・言語別件数を見ると、1~2月は中国国内での感染が流行していたことからか、中国語による相談が多く、訪日旅行中のトラブル以外にも、国際電話を利用して訪日旅行キャンセルに伴うトラブルの相談が寄せられました。その後、世界的に感染が拡大するにつれ英語による相談の割合が増え、この頃になると各国においても渡航規制が設けられたことから、ほとんどが訪日旅行キャンセルに関する相談でした。
    • 商品・役務等別でみると、「宿泊施設」が29件と最も多く、「新型コロナウイルスの影響で訪日旅行をキャンセルしたが、ホテルからキャンセル料が100%かかると言われた」といった相談が多く寄せられました。「旅客運送サービス」は「宿泊施設」と同様に、主に航空券のキャンセル料に関するトラブルでした。「他の保健衛生品」はマスクに関する相談で、「購入したマスクに変色や汚れがあった」といった相談が寄せられました。なお、「他の行政サービス」は入出国規制に関する問い合わせでした。
  • 相談事例
    • 訪日旅行中の外国人からの相談
      • 【事例1】新型コロナウイルスに便乗して怪しい健康食品を買わされた
      • 【事例2】訪日中にインターネット通販サイトで購入したマスクが不良品だった
      • 【事例3】観光バス内で少し咳をしただけで、ガイドに罵倒され、いたたまれず途中で降りた
    • 訪日できなかった外国人からの相談
      • 【事例4】国際線の欠航で旅行中止になったが、国内線の航空券がキャンセルできない
      • 【事例5】自国の出国制限で旅行中止となったが、ホテルが返金対応してくれない
      • 【事例6】日本の入国制限で訪日できないにも関わらず、ホテルが交渉に一切応じない
      • 【事例7】中止となったコンサートのチケットの払戻しについて販売会社と連絡がとれない

~NEW~
国民生活センター セルフ式ガソリンスタンド 給油中の吹きこぼれに注意
  • 内容
    • 事例1:セルフ式ガソリンスタンドで給油した際に、ノズルを給油口に入れてレバーを引いたがガソリンが出なかったので、ノズルを少し引き上げたところ、ガソリンが急に吹き出し顔や服にかかり、目にも入ってしまった。(60歳代 男性)
    • 事例2:セルフ式ガソリンスタンドでガソリンを満タンに給油し、給油ノズルを収納しようとしたら、ガソリンがあふれ出し顔と衣服にかかってしまった。(60歳代 女性)
  • ひとこと助言
    • ガソリンは引火しやすいので、吹きこぼれてしまうと大変危険です。給油ノズルを給油口の奥まで確実に差し込み、レバーを止まるところまで確実に引き、しっかり握って給油しましょう。
    • 給油口からガソリンが吹きこぼれる危険があるので、自動的に給油が止まったらそれ以上の給油はやめましょう。
    • 給油方法がよく分からなかったり、不安があったりするときは、従業員に正しい給油方法について説明してもらってから給油しましょう。

~NEW~
厚生労働省 厚生労働省が発行したマスク等の注文書を利用した出資金などの勧誘にご注意ください
  • 新型コロナウィルス感染症に関連した、厚生労働省が発行したサージカルマスク・N95マスクの注文書や契約書などをみせて、マスクなどの個人用防護具の売り込みや出資金の勧誘をしている事業者があるとの情報が寄せられました。
  • 厚生労働省では、この勧誘には一切関与しておりませんので、十分に御注意ください。

~NEW~
経済産業省 IoTセキュリティ・セーフティ・フレームワーク(IoT-SSF)を策定しました
▼IoTセキュリティ・セーフティ・フレームワーク(IoT-SSF)Ver1.0
  • サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合した産業社会においては、製品・サービスという価値を生み出す工程(サプライチェーン)が従来の定型的・直線的なものから、多様なつながりによる非定型的なものへと変化している。このような新たな価値創造過程(バリュークリエイションプロセス)のセキュリティ上の課題とその対策を整理することによって、新たな産業社会のセキュリティを確保していく考え方をまとめたものが、サイバー・フィジカル・セキュリティ対策フレームワーク(CPSF)である。
  • CPSFでは、「バリュークリエイションプロセスのセキュリティ確保に当たっては、従来のサプライチェーンで想定されているマネジメントの信頼できる企業間のつながりによって付加価値が創造される領域を越えて、フィジカル空間の情報がIoTによってデジタル化され、データとしてサイバー空間に取り込まれ、そうしたデータがサイバー空間で自由に流通することで、多様なデータが新たなデータを生み出して付加価値を創出することや、新たに創出されたデータがIoTによってフィジカル空間にフィードバックされることで新たな製品やサービスを創出するという、新たな付加価値を創造するための一連の新たな活動を視野に入れる必要がある」とし、企業間のつながりに信頼性の基点を置く第1層、フィジカル空間とサイバー空間のつながりに信頼性の基点を置く第2層、サイバー空間におけるつながりに信頼性の基点を置く第3層という異なる3つの信頼性の基点を設定し、これらの基点を中心に経済社会全体のセキュリティ上の課題の洗い出しとその対策をまとめている。
    • 第2層におけるセキュリティ上の課題は一様ではない。CPSFにおいても、以下のように複数の事例が示されている。
    • センサの機能に対するサイバー攻撃の結果、フィジカル空間のデータが正しく転写できずに誤ったデータがサイバー空間へ提供され、データを利活用して実施されるオペレーションに対する信頼を喪失
    • サイバー空間からの間違った指示やIoT機器への攻撃により、フィジカル空間において機器の制御が誤った形で実施され、従業員等への物理的な危害、機器の損壊等による安全上の問題が発生
    • サイバー攻撃等によってIoT機器・システムの機能が停止
  • サイバー空間とフィジカル空間をつなぐIoT機器・システムの管理における課題についても以下のように触れている。
    • 組織等において、IoT機器の担う役割の重要性に応じて、設置区域管理やモニタリングの実施等の多層的な対策の検討が必要。
    • 個人によって家庭などに設置されるIoT機器には、組織等による管理が行き届きにくいものが存在するため、盗難、紛失等のリスクを考慮した対策の実施が必要。
  • サイバー空間とフィジカル空間をつなぐ新たな仕組みには様々な形態及びそれに伴うセキュリティ上の課題があり、更に、実際にインシデントが発生した場合の被害の態様も極めて多様である。そのような仕組みを構成する機器・システムに対して一律のセキュリティ要求を設定した場合、仮にその要求が満たされていても、それでは多様なセキュリティ上の課題に十分に対応することはできない。すなわち、利用者等が適切に守られる状況であるとはいえない。第2層のセキュリティ対策を検討する際のポイントは、この多様性に対してどのようにアプローチするのか、ということである。
  • 本フレームワークでは、サイバー空間とフィジカル空間をつなぐ新たな仕組み・サービスの“多様性”という論点にアプローチするための手段として、この仕組みを構成する機器・システム(これ以降「フィジカル・サイバー間をつなげる機器・システム」という。)について、リスクの捉え方とその対応に係る基本的な考え方を集約した3つの軸を活用し、カテゴライズするとともに、適切な対策の内容を整理して比較・検討できるようにすることを提案している
  • 第1軸はインシデントの影響の回復の困難性からリスクを捉えるものである。回復の困難性については、まず、何よりも人命/身体に関する影響から考えることが必要である。言うまでもないが、人命が失われればそれが回復されることはない。また、インシデントの発生の結果、重度の身体障害が発生した場合、完全に回復できるとはいえないケースが少なくない。回復ができるものであったとしても、早期に回復できるケースもあれば、回復に時間を要するケースもある。こうした、インシデントによる影響が回復できるものか否か、また、回復ができるものについては早期の回復ができるか否か、という判断軸を第1軸として設定した
  • 第2軸は、インシデントによる影響の回復の可能性・困難性という観点を除き、インシデントによる影響の大きさを金銭的価値に換算した場合の大きさ・度合いを基準としたものである
  • 例えば、第1軸では、回復困難性の観点から、限定的なダメージ(回復が容易)、重大なダメージ(回復が容易ではない)、致命的なダメージ(回復が困難)という形で整理し、第2軸では、経済的影響の観点から、限定的な経済的影響、重大な経済的影響、壊滅的な経済的影響という形で整理を行うことで、リスクに応じて9つの象限(カテゴリ)にカテゴライズすることが可能となる
  • これだけでは、新たな仕組み・サービスを社会として受容するための具体的な方策を検討することは難しい。そのため本フレームワークでは、フィジカル・サイバー間をつなぐ機器・システムのセキュリティ対策を包括的に整理するために、求められるセキュリティ・セーフティ要求の観点という第3軸を設定する
    • 第1の観点:運用前(設計・製造段階等)におけるフィジカル・サイバー間をつなぐ機器・システムの確認要求
      • フィジカル・サイバー間をつなぐ機器・システムが製造され、実際に利用に供される前の段階で、機器・システムそのものが必要なセキュリティ・セーフティ対策を講じられていること、又は当該機器・システム等の生産者や供給者、検査者、場合によっては生産設備・工場等が必要な能力条件等を満たしていることなどを確認することを求めるものである
    • 第2の観点:運用中のフィジカル・サイバー間をつなぐ機器・システムの確認要求
      • 機器・システムの運用前にセキュリティ・セーフティ対策の実施状況を確認しても、運用中に発生する故障や、実施されるソフトウェアのアップデートやメンテナンスなどによって、想定外の問題が発生する可能性がある。そのような問題が発生していないかを確認するために、運用開始後に、ライフサイクルやサービス期間も考慮しながら機器・システムを確認することを求めるものである
    • 第3の観点:機器・システムの運用・管理を行う者の能力に関する確認要求
      • 機器・システムの誤使用・誤操作などによって発生するインシデントの影響が、セキュリティ・セーフティ対策だけでは許容できる水準ではない場合には、機器・システムの運用・管理を行う者が当該機器・システムを適切に運用・管理するために必要な能力を持っていることを確認することを要求することになる
    • 第4の観点:その他、社会的なサポート等の仕組みの要求
      • インシデントが発生した場合の影響が非常に大きく、当該仕組み等の所有者が個々に賠償等の対処を実施することが容易ではないケースの場合には、あらかじめ保険加入を義務付けるなどの社会的なセーフティネットを講じることを求めるものである
  • サイバー空間とフィジカル空間をつなぐことで生み出される新たな仕組み・サービスは今後様々な形で創出されていくことが予想される。サービスを実現しようとする主体が本フレームワークを活用することにより、フィジカル・サイバー間をつなぐ機器・システムに潜むリスクを踏まえて、機器・システムのカテゴライズを行い、カテゴリ毎に求められるセキュリティ・セーフティ要求の観点を把握し、カテゴリ間で比較することが可能となる。これにより、別々のプロセスで検討した場合であっても、新たな仕組み・サービスに対応したそれぞれの機器・システムに求めるセキュリティ・セーフティ対策の観点・内容の整合性を一定程度確保していくことが可能となる
  • その際に注意をしなければならないのは、IoT機器・システムの用途により、インシデントが発生した場合の影響の内容や大きさが異なるということである
  • 本フレームワークを有効に活用していくためには、ユースケースの整理を進めていき、第1軸と第2軸によるカテゴライズの手法を洗練させていくとともに、ユースケースの蓄積によって第3軸によるセキュリティ・セーフティ要求の観点・内容を比較できる環境を整備していくことが求められる。したがって、今後、本フレームワークに基づいて、具体的な仕組み・サービスをユースケースとして整理していくことで、IoTが広く活用されるサイバー空間とフィジカル空間が高度に融合した社会におけるセキュリティ・セーフティ対策を適切に実施していく制度的対応の整備を進めていくための基礎的条件を整えて行く必要がある

~NEW~
経済産業省 建築物、内装の意匠が初めて意匠登録されました
  • イノベーションの促進とブランド構築に資する優れた意匠を保護可能とすべく意匠法が抜本的に改正され、令和2年4月1日から、建築物、内装、画像の意匠が新たに保護対象となりました。この度、建築物、内装の意匠が初めて意匠登録されましたので、お知らせします。※以下の各登録意匠の図面は一部を抜粋したものです。
    1. 背景
      • 昨今、企業が店舗の外観や内装に特徴的な工夫を凝らしてブランド価値を創出し、サービスの提供や製品の販売を行う事例が増えています。また、近年、オフィス家具・関連機器を扱う企業が、自社の製品を用いつつ、特徴的なオフィスデザインを設計し、顧客に提供する事例も生じています。
      • そこで、令和元年、意匠法が抜本的に改正され、令和2年4月から、建築物の外観デザインが意匠権で保護できるようになりました。また、机やいす等の複数の物品等の組み合せや配置、壁や床等の装飾により構成される内装デザインも、全体として統一的な美感を起こさせるようなときは、一つの意匠として意匠権で保護することができるようになりました。
    2. 国内で初めて登録された建築物、内装の意匠
      • この度、国内で初めて以下の建築物、内装の意匠が意匠登録されました。
        • 建築物の意匠
          • 意匠登録第1671773号「商業用建築物」(株式会社ファーストリテイリング)※新規性喪失の例外規定の適用申請あり
          • 意匠登録第1671774号「駅舎」(東日本旅客鉄道株式会社)※新規性喪失の例外規定の適用申請あり
      • 内装の意匠
        • 意匠登録第1671152号「書店の内装」(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社)※新規性喪失の例外規定の適用申請あり
        • 意匠登録第1671153号「回転寿司店の内装」(くら寿司株式会社)※新規性喪失の例外規定の適用申請あり

~NEW~
経済産業省 第21回 産業構造審議会 産業技術環境分科会 研究開発・イノベーション小委員会
▼資料2 イノベーション創出のためのリカレント教育
  • 御議論いただきたいこと
    • 背景
      • Society5.0の実現に向けた、デジタル化の進展、データ駆動型社会への移行
      • AI/IoT人材の獲得競争の世界的な激化
      • 研究開発やイノベーション創出のスピードの加速化、社会や産業構造の急速な変化
    • 方向性
      • 人材の獲得競争の激化等により、外部からの人材獲得が容易でない中、企業においてイノベーションを創出するために必要な人材を確保するための手段の一つとして、事業部の壁を越える知識を身に付け、新たな事業領域の開拓も見据えた「リカレント教育」によって、以下の人材を育成することが重要。
      • AI/IoT等の実践的スキルを持った「イノベーションを支える人材」
      • 急速な社会変化に対応できる、課題解決能力や複数の専門性を持った「イノベーションを起こす人材」
    • 論点(御議論いただきたいこと)
      • 「現状くすぶっている人材」を「イノベーションを支える人材」に転換し、企業におけるイノベーションを加速するため、企業主体で、戦略的なリカレント教育をどう進めるべきか(リカレント教育の対象社員の選定方法、実施規模、実施期間、リカレント教育の実施方法等)。また、その課題は何か。
      • 企業主体のリカレント教育を推進するためには、社員へのリカレントのための資金や時間の提供、その間の代替人員の確保、講座の供給の確保等が必要と考えられるが、国・企業・社員がそれぞれどのように負担すべきか。
      • 「イノベーションを起こす人材」としての活躍が期待される、「更に高いレベルを目指す人材」が、複数の専門性の獲得(技術、知財、マーケティング、語学等)を目指して自律的に学び直しを行う際には、国や企業は、どのように支援するべきか。(資金、時間、代替人員確保、講座の供給等)
      • 大学等は、社会人の学び直しの受け皿として、「イノベーションを支える人材」のリカレント教育に係る講座等を、オンラインも含めて積極的に提供すべきではないか。
  • リカレント教育の現状
    • 60歳まで転職経験が無い人の割合は、男性では32%、女性では6.5%。大企業に勤めている従業員は全体の約3割。企業規模が小さいほど、中途採用比率が高い。(中小企業では5,000人以上の大企業の約2倍)
    • アジアの諸外国と比較して、日本では、社会に出て以降、継続的な学習や自己研鑽に対して消極的
    • 自己啓発における問題点の内訳を見ると、「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」が最も高く、次いで「費用がかかりすぎる」、「どのようなコースが自分の目指すキャリアに適切なのかわからない」となっている
    • 日本企業は、従業員に対する「学び直しへの支援」や「兼業・副業の経験」に対して消極的
    • 労働市場のニーズをリカレント教育(再教育)にどれだけ反映できているかに関する国際比較の結果、日本はOECD加盟国で最下位
    • 企業向け研修サービスの市場規模は、伸長率は鈍化傾向が続いているが、プラス成長を確保。研修内容別では就労人口の減少により、若年層を中心とした人材採用難が続くなかで、企業の社員教育・人材育成に対する投資意欲は高まる傾向にあり、若手・中堅社員向け、次世代リーダー層向け、中間管理職向け、経営幹部候補向けといった各階層別の研修も好調に推移。加えて、最近はデジタル技術を活用した企業経営を推進する動きが活発化しており、デジタル経営を推進するDX(デジタルトランスフォーメーション)推進人材の育成機運も高まりをみせている
    • 経団連の調査によれば、現状では、7割強の企業において企業主導のキャリア形成が行われている。⇒「イノベーションを支える人材」への喫緊の対応は、現状の企業主導のキャリア形成の枠組みを活かして行うのが効果的・効率的ではないか。一方、今後の方針としては、「社員本人の自律性を重視したキャリア形成を基本とし、特定層に対して会社が積極的に関与する」との回答が5割超と最も多く、社員の自律性を重視する回答が6割強。⇒将来については、不確定性も加味し、個人の自律的な学び直しを積極的に支援・評価する仕組みを作っていくことが必要だが、引き続き企業としても積極的な関与・支援が重要ではないか。
    • 自律的なキャリア形成に向け、企業が今後支援の強化が最も必要と考えている対象者層は20~30代の若年・中堅社員。⇒企業は、今後長期間の活躍が見込まれる若手の育成支援を強化の予定。他方で人生100年時代を見据えれば、40~50代のミドル・シニア層にいかに再度躍進を果たしてもらう仕組みを作るかも重要な論点ではないか
  • 「イノベーションを支える人材」のリカレント教育
    • AI等のテクノロジーが促してきた、人間が担う職業やタスクの新陳代謝は、感染症拡大の影響により、更に加速する可能性がある。
    • 第四次産業革命の進展により、世界的にAI/IT人材の獲得競争が激化。日本はAI/IT人材が不足しており、人材育成・獲得が急務。理数系の知見を有する人材やAI/ITやロボットの社会実装を進める人材も必要。
    • 従業員のスキル不足・欠如を懸念するCEOは年々増加しており、直近では8割に上る。
    • スキルギャップを埋めるために最も重要な取組として、従業員の再教育・スキル向上を挙げるCEOが5割。
    • 経団連の調査によれば、自社の人材育成施策が環境変化に「対応できていない部分がある」との回答は9割弱にのぼる。また、一般社員を対象とするデジタルスキル・リテラシーに関する研修プログラムを提供しているのは35.5%、「特に検討していない」との回答は4割超となっている
  • 「イノベーションを起こす人材」のリカレント
    • OECDによると、製造業やサービス業において新製品や新サービスを投入した企業の割合は、先進国で日本が最も低い。我が国において継続的にイノベーションを創出し、新製品や新サービスを生み出すためには、最先端の「知」を理解し、展開できる博士人材をはじめとしたイノベーション創出に貢献する人材が産業界で活躍できる環境整備が必要
    • 理工系分野の博士号取得者数とGDPには、正の相関関係がみられる。主要国の中では日本のみ博士号取得者数の減少傾向が続いている
    • 日本企業は、従業員に占める研究者の割合が高い一方で、研究者に占める博士号保持者の割合は低い。企業の研究者に占める博士号取得者の割合についても、他国に比べると低い状況。
    • 米国では多くの大学院修了者が管理職として活躍しているのに対し、日本の企業役員のうち大学院卒はわずか6.3%という状況
    • 博士は企業に入った直後から高い発明生産性を示し、その高い生産性は長期にわたり上昇する傾向にあることから、博士は研究者として企業に大きく貢献しているといえる

~NEW~
総務省 「ポストコロナ」時代におけるデジタル活用に関する懇談会ワーキンググループ(第1回)
▼資料2 総務省提出資料
  • 地域間の整備率は若干の格差が生じているものの、FTTH(光ファイバ)の世帯カバー率は非常に高い水準となっている
  • 日本の情報通信利用環境の整備状況のうち、固定系ブロードバンドに占める光ファイバの割合は諸外国に比べ高い水準となっている
  • モバイル端末全体の普及率は非常に高く、中でもスマートフォンの普及率が最も高い。
  • 日本のデジタル化については、世界のデジタル競争力や電子政府ランキングなど様々な指標がある
  • 日本のICT投資は90年代半ば頃から米国に比べ低い水準となっている
  • 日本企業のICT投資の目的は、現行ビジネスの維持・運営のための予算が大半を占めており、ビジネスの新しい施策展開のための比率が小さい
  • 日本のICT人材は諸外国に比べICT企業に偏在している
  • コロナ禍において、eコマース、オンライン会議ツールや有料動画配信サービス等のデジタルサービスの利用者が増加している
  • 対面・接触を伴う宿泊、飲食、映画等の業種では9割以上の企業の売上が減少している。他方、デジタルサービス関連業においては、売上が減少した企業が上記企業より少なく、売上が増加した企業も相対的に多い
  • コロナ禍において、消費者によるデジタル活用の意向は拡大している。具体的には、決済手段(キャッシュレス)、健康管理、テレワーク等の分野におけるデジタル活用のニーズが高い
  • コロナ禍において、キャッシュレス決済の利用者は増加している。その主な理由としては、「支払いを素早く済ませ、接触時間を短縮させるため」や、「現金に触れることによる感染を減らすため」が挙げられており、コロナ禍におけるキャッシュレス決済のニーズは高まっている
  • 健康管理におけるデジタル活用のニーズが高まった理由としては、接触回避のための外出自粛に伴う運動不足を原因とする自身の健康状態の管理にあると考えられる
  • コロナ禍において、テレワークを導入した企業は増加しており、テレワークのニーズは高まっている。テレワーク導入の理由としては、新型コロナウイルス対策のために導入したとするものが最も多く、コロナ対策としてのテレワークのニーズは高い
  • 65歳以上のインターネット利用者の割合が相対的に低く、デジタル活用の障壁となっている。65歳以上のインターネット利用者については、約半数※において、利用頻度が非常に低く、インターネットを使いこなせていない。(※回答者推計2545万人のうち、1247万人)
  • テレワークの実施率は、都道府県別に見ると、大きな格差が見られ、地域格差も課題の一つとなっている
  • デジタル技術の利用意向が拡大する中、特定の分野において、セキュリティ上の不安等が挙げられている。例えば、テレワークではセキュリティ確保が課題との回答が多く、キャッシュレスでは個人情報流出のおそれが多く挙げられている
  • 検討をお願いしたい事項
    • 全体テーマ
      • 我が国のデジタル活用に関し、諸外国に比して現状をどう評価するか。
      • 個々の利用者・企業や経済全体にとって、デジタル活用の目的をどう考えるか。
      • 過去のデジタル活用の取組において、どのような部分が成功したか。また、どのような部分が不十分であったか。(どのような具体的事例があるか)
      • 更なるデジタル活用に向けて、政府にどのような役割を期待するか。また、目標年次や政策の達成度合いを、どのように設定すべきか。
    • 個別テーマ
      • 全ての国民が、デジタル利用を円滑に実現するための環境として、具体的に何が必要か。また、その方策として、何が望まれるか。
      • 経済再生・地域活性化の実現に資するデータ活用として、既存の具体例にはどのようなものがあるか。また、今後、どのようなデータ活用事例が想定され、それを実現・推進するためには、どのような方法があり得るか。
      • 「新たな日常」を確立するには、どのような情報通信基盤が必要とされ、その実現にはどのような推進方策が望まれるか。
      • その他、中長期的な経済成長に不可欠な最先端技術の研究開発や、グローバルなデジタル活用の連携のため、どのような方策が望まれるか。
  • デジタル技術の活用支援
    • 新型コロナウイルス感染症により、「人と接触を避ける」オンラインでのサービスの利用拡大が求められている。しかし、高齢者はデジタル技術を使いこなす能力に不安がある方が多く、また、「電子申請ができること自体を知らない」等の理由によりオンラインによる行政手続等の利用が進んでいない。
    • このため、民間の携帯事業者等と連携し、デジタル技術を使いこなす能力に不安がある高齢者等の解消に向けて、オンラインによる行政手続やサービスの利用方法等に対する説明・相談等を実施する。
  • テレワークの推進
    • テレワークは、働き方改革のみならず、新型コロナウイルス感染症対策の観点からも重要。
    • 新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐためテレワークを実施した企業は56.4%(大企業:83%、中小企業:51.2%)。緊急事態宣言解除後には、テレワークをとりやめた企業が相当数あり、特に中小企業では、テレワーク実施企業のうち半数がとりやめている。
    • 総務省においては、専門家による無料相談等、中小企業等を対象としたテレワーク導入支援の取組を実施
  • 情報銀行の社会実装に向けた取組
    • 「情報銀行」は、個人の関与の下でパーソナルデータの流通・活用を効果的に進める仕組であり、その普及により、新規サービスの創出や国民生活の利便性の向上などが期待される。
    • 平成29年7月、情報通信審議会において、一定の要件を満たした者を社会的に認知するため、民間の団体等による任意の認定の仕組が望ましいとの提言。認定の仕組を有効に機能させるため、同年11月より総務省・経産省で合同の検討会を立ち上げ、「情報信託機能の認定に係る指針Ver1.0」をとりまとめ(平成30年6月公表)
    • 令和元年6月26日、情報銀行の認定第一弾として、2社の認定を決定し、令和元年度に5社の認定を決定。引き続き、認定審査を進めている。
    • 平成31年1月から検討会を再開し、実証事業などを踏まえた指針の見直しについて議論。同年10月にとりまとめ及び指針Ver2.0を公表。
  • スマートシティの推進
    • 地域が抱える様々な課題の解決のため、内閣府(地方創生・科技)・国交省・経産省と連携して、分野横断的な連携を可能とする相互運用性・拡張性、セキュリティが確保された都市OS(データ連携基盤)の導入を進め、スマートシティを推進。
    • 具体的には、ICTを活用した分野横断的なスマートシティ型の街づくりに取り組む地方公共団体等の初期投資等にかかる経費(機器購入、データ連携基盤構築費等)の一部を補助する
  • Society5.0を支える「ICTインフラ地域展開マスタープラン2.0」(令和2年7月3日)
    • 「ICTインフラ地域展開マスタープラン(令和元年6月策定)」に基づく施策に加え、新たな取組など※を実施することにより、5Gや光ファイバの全国展開を大幅に前倒しすることを目指し、本マスタープランを改定。
    • マスタープランを着実に実行することにより、ICTインフラの全国展開を早急に推進。
  • 第5世代移動通信システム(5G)の整備
    • 5Gは地域の発展に不可欠な次世代インフラであり、全国への速やかな展開が必要。
    • 平成31年4月に各携帯電話事業者に対して周波数割当てを実施。本年3月より一部地域から順次商用サービス開始
  • ローカル5Gの普及展開
    • ローカル5Gは、地域や産業の個別のニーズに応じて地域の企業や自治体等の様々な主体が、自らの建物内や敷地内でスポット的に柔軟に構築できる5Gシステム。
    • 携帯事業者の5Gサービスと異なり、使用用途に応じて必要となる性能を柔軟に設定することが可能。他の場所の通信障害や災害などに対する耐性が高い。
    • Wi-Fiと比較して、無線局免許に基づく安定的な利用が可能。
    • 総務省においては、本年2月から無線局免許を交付するとともに、ローカル5Gを普及展開するための開発や実証を民間事業者等と連携して実施
  • Beyond 5G時代における新たなICT技術戦略(令和2年8月5日)
    • Society5.0の実現やグローバル展開に向けたICT技術戦略を推進するため、次期科学技術基本計画(R3年度~)や国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)次期中長期計画(R3年度~)等を見据え、ICT分野で我が国が重点的に取り組む研究開発や推進方策等の戦略をとりまとめ
  • 海外展開行動計画2020(令和2年4月30日)
    • 海外展開は、政府内の重要政策であり、SDGs達成や国際競争力強化に資するとの認識の下、全省的に取り組む
  • 信頼性のある自由なデータ流通の推進について
    • 昨年のG20大阪サミットにおいて合意した、「信頼性のある自由なデータ流通(Data Free Flow with Trust) 」のコンセプトについて、本年のG20デジタル経済大臣会合においてもG20としてその重要性を再確認した。G20やG7を始めとした国際場裡において、引き続き各国とData Free Flow with Trustの重要性について共有を進める。
    • また、「大阪トラック」の下、OECDなどの国際機関や産業界等の多様なステークホルダーを交え、様々な場面において、データ流通等、デジタル経済に関するルール作りに向けた議論を加速させていく

~NEW~
総務省 プラットフォームサービスに関する研究会(第21回)配布資料
▼資料2 利用者情報の適切な取扱いの確保に向けた検討課題
  • 利用者情報の適切な取扱いの確保に向けて 検討課題案
    • 利用者の利便性と通信の秘密やプライバシー保護とのバランスを、どのように確保していくか。プラットフォーム機能が十分に発揮されるようにするためにも、プラットフォーム事業者がサービスの魅力を高め、利用者が安心してサービスが利用できるよう、利用者情報の適切な取扱いをどのように確保していくか。
    • スマートフォンやタブレットなどの通信端末の位置情報や、ウェブ上の行動履歴、利用者の端末から発せられ、または、利用者の端末情報に蓄積される端末IDやクッキーなどの端末を識別する情報等の実態はどのようになっているか。
    • 当該実態を踏まえ、スマートフォンやタブレットなどの通信端末の位置情報や、ウェブ上の行動履歴、利用者の端末から発せられ、または、利用者の端末情報に蓄積される端末IDやクッキーなどの端末を識別する情報等については、通信の秘密やプライバシー保護の関係で、その適切な取扱いの確保のために、どのように規律すべきか。
    • 今後のAIの活用やIoT化の進展に伴い、データ流通環境等が大きく変化することが想定される中で、これまで総務省において策定してきた電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン、位置情報プライバシーレポート、スマートフォン・プライバシー・イニシアティブ等の指針等については、どのように見直していくことが適切であるか。
    • 国内外のプラットフォーム事業者、電気通信事業者など関係者による継続的な対話を通じた自主的な取組を促し、その履行状況をモニタリングするという共同規制的なアプローチを適切に機能させるために、どのようなアプローチをとり具体化させていくことが適切か。
▼資料4 EU・eプライバシー規則(案)に関する議論の状況
  • ePrivacy規則(案)の検討状況(5)2020年3月ドラフト
    • 2020年3月の改訂版では、電子通信メタデータの処理や、クッキー及びその類似技術を配置できる根拠として「正当な利益(legitimate interest)」の導入を提案したが、異論も多く、さらなる議論が必要な状況。
    • 法的根拠としての「正当な利益」の導入
      1. 電子通信メタデータの処理
      2. クッキー及び類似技術の配置
    • を行うことができる根拠として「正当な利益(legitimate interest)」の導入を提案(「正当な利益」以外の根拠を排除するため、第6b条の修正、第6c条の削除、第8条の修正、関連するリサイタルの修正を実施)
  • 条件及び保護措置:「正当な利益」を根拠とする場合の条件及び保護措置は以下のとおり
    • データ保護影響評価(DPIA)を実施し、必要に応じて関連する監督当局に相談すること。
    • 適切なセキュリティ対策を実施すること。
    • 実施しているデータ処理活動に関する情報をエンドユーザーに提供すること。
    • データ処理に対する異議申立の権利をエンドユーザーに提供すること。
    • メタデータやクッキーまたは類似の技術を使用して収集した情報について、事前に匿名化されている場合を除き、第三者と共有しないこと。
  • 「正当な利益」を根拠とできる事例:「正当な利益」を根拠としてクッキー等を用いることができる状況の例を例示(→リサイタルの修正案)
    • エンドユーザーがサービス提供者と既存の顧客関係にあり、情報社会サービスのセキュリティ確保、不正行為の防止、技術的欠陥の検出、セキュリティ脆弱性やその他のセキュリティバグの修正を目的して、(一定の条件の下で)使用する場合
  • 直接的な金銭の支払いがなくてもアクセス可能な、主として広告を財源として提供されるウェブサイトのコンテンツやサービス(オンライン新聞やその他の出版物、視聴覚メディアサービスなど)を提供する場合
  • 加盟国の主な意見
    • メタデータやクッキー等を通じて収集された情報が、エンドユーザーの性質や特徴を把握したり、個々のプロファイルを作成するために使用されたり、GDPRにおけるセンシティブな個人情報を含む場合や、エンドユーザーが子供である場合には、事業者の利益よりもエンドユーザの利益が優先されてしまう(※必要以上に、という主張と考えられる)
    • 「正当な利益」以外の根拠を復活させるべき・「情報社会サービス」の範囲のさらなる明確化が必要等
  • クッキー使用における欧州司法裁判所の見解
    • 2019年10月1日、欧州司法裁判所(CJEU)は、オンラインのウェブ閲覧行動を追跡するクッキーを保存する企業に対し、インターネットユーザからの能動的な同意を取得しなければならないとの裁定を下した。
    • 背景・経緯
      • オンラインの宝くじ会社Planet49は、プロモーション抽選の中で、(1)ユーザがサードパーティの広告を受信すること(2)Planet49がクッキーを設定してユーザをオンラインで追跡できるようにすること、の2つのチェックボックスを提示していたが、(2)のチェックボックスには事前にチェックが入っていた。
      • これに対して、ドイツの消費者団体が、「パートナーが提供する製品のターゲット広告に役立つような情報(クッキーによるオンラインでの追跡情報)を収集していたことに関する明示的な同意プロセスが存在しなかった」として法的措置を講じた2013年の事案が契機となっている。
    • 裁定結果・理由
      1. 裁定結果:「クッキーを保存するために事前にチェックした同意ボックスは法的に有効ではない。必須でないクッキー(ターゲット広告用のクッキーの追跡など)を保存またはアクセスする前に、明示的な同意を得る必要がある。」
      2. 裁定理由等
        • ユーザの機器に保存またはアクセスされる情報が個人データであるかどうかは関係ない。
        • 私生活への干渉からユーザを保護することを目的としており、隠された識別子や他の同様のデバイスがユーザの端末機器に知らずに侵入するリスクから保護するために、明示的な同意が必要。
        • 一方で、「ウェブサイトのユーザが個人データの処理に実際に同意したか否か」を客観的に判断することは、事実上不可能であると認識
        • 以下の情報は、ユーザに提供されるべき明確かつ包括的な情報の一部であるため、サービスプロバイダはこれらをユーザに提供しなければならない。
          • クッキーの作動期間
          • サードパーティーの当該クッキーへのアクセス可否
  • ePrivacy指令に関する欧州司法裁判所の決定
    • 欧州司法裁判所(CJEU)は、2020年10月6日、英国の安全保障・情報機関による大量の通信データ(トラフィックデータ、位置データ)の取得と利用が違法であるか否かについて、これらの活動はePrivacy指令の規制対象となり(例外には該当せず)、これを認める国内法は排除される、との決定を下した
    • 欧州司法裁判所(CJEU)は以下の決定を行った。
      • ePrivacy指令の第1条(3)、第3条及び第15条(1)は、欧州連合基本条約の第4条(2)に照らして読まれるが、国家安全保障を保護する目的で、国家機関が、トラフィックデータ及び位置データを安全情報機関に転送することを通信サービスの提供者に要求することを可能にする国内法令が、同指令の範囲内にあることを意味するものと解釈しなければならない。
      • ePrivacy指令の第15条(1)は、欧州連合基本条約の第4条(2)、欧州連合基本権憲章の第7条、第8条、第11条及び第52条(1)に照らして解釈されるが、国家安全保障を保護する目的で、国家機関が、電子通信サービスの提供者に対し、トラフィックデータ及び位置データを安全情報機関に一般的かつ無差別に送信することを要求することを可能にする国内法令を排除するものと解釈されなければならない。

~NEW~
総務省 第13回 日・ASEANサイバーセキュリティ政策会議の結果
  • 政策会議は、サイバーセキュリティ分野における我が国とASEAN諸国との国際的な連携・取組を強化することを目的として、平成21(2009)年以降、およそ一年に一度開催されているものです。第13回の開催となる今年の政策会議では、この一年間の各国のサイバーセキュリティ政策及び特に新型コロナウイルス感染症拡大状況下における各国の取組について意見交換を行ったほか、共同サイバー演習、共同意識啓発、能力構築及びインシデントの相互通知などの協力活動の確認・評価を行いました。本政策会議において、日・ASEANの各種の協力活動の進展が確認されたとともに、今後、ASEAN地域におけるサイバーセキュリティ向上のために産官学連携を推進する新たな協力活動を行うことについて合意しました。
  • 昨年10月にタイ・バンコクで開催された第12回会合において協力することが合意された9つの協力活動(サイバー演習、重要インフラ防護、意識啓発、能力構築、インシデント相互通知、オンラインコミュニティ、リファレンス(便覧)、サイバーセキュリティメトリクス、ワーキンググループ運営)について実施状況を確認するとともに、今後の日・ASEANの連携・協力についての検討を行いました。主な内容は以下の通りです。
    1. 情報共有体制及びサイバーインシデント発生時の対処体制の強化
      • 日・ASEANにおけるサイバーセキュリティ脅威情報共有体制の維持及びインシデント発生時の国際連携手順の確認を目的とした、情報連絡演習及び机上演習について、今年度の成果が報告されました。特に、情報連絡演習(オンラインで実施)について、本年6月にASEAN各国及び我が国から過去最大の参加者を得て実施され、各国において当該演習に対する重要性の認識が着実に高まっていることが確認されました。
      • さらに、他国におけるインシデントを検知した際に相互通知を行い、各国において対処する取組について、今年度の成果が報告され、来年度以降も引き続き実施することが承認されました。また、サイバー空間の健全性評価指標に基づいて各国のサイバーセキュリティの向上を図る取組について、今年度の成果が報告されました。
    2. 能力構築及び意識啓発における協力の推進
      • 我が国が実施しているサイバー分野の能力構築(人材育成)事業の実施状況が報告されるとともに、意識啓発活動の実施状況が報告されました。その一環として、日ASEANサイバーセキュリティ能力構築センター(AJCCBC)を通じて行われる研修プログラムのオンライン化が進められつつあるとともに、新たに構築されたオンライン上のコミュニケーション基盤を活用した情報共有等を推進していくことが確認されました。また、産業制御システム(ICS: Industrial Control System)に関するハンズオントレーニングやWSをインド太平洋地域向けに行う「日米ICSサイバーウィーク」をオンラインで開催すべく準備を進めていることが報告されました。
    3. 産官学連携の推進
      • ASEAN地域全体のサイバーセキュリティ向上を目指すうえで、産官学連携が不可欠であるとの認識の下、各国における産官学連携の具体事例を共有すること及びより効果的な国際協力を検討することを目的として、新たな協力活動を開始することが合意されました。

~NEW~
国土交通省 令和2年度第2回自転車の活用推進に向けた有識者会議 配布資料
▼資料3 自転車を巡る現状等
  • 都市環境
    • 家庭から排出されるCO2の約3割が自動車から排出されており、地球温暖化や渋滞対策として短中距離の自動車利用から自転車利用への転換が必要。
    • 歩行者と自転車が分離された自転車本来の通行空間の整備は断片的であるため、歩道を通行する自転車も多く、自転車対歩行者の事故への対応が課題。
    • コンパクト・プラス・ネットワークの取組を進める上で、環境にやさしく、身近でアクセシビリティの高い交通手段である自転車の利用促進が重要な役割。
    • 地域公共交通サービスをめぐる環境が厳しさを増す一方で、高齢者の運転免許返納者数が年々増加する現状に対して、人生100年時代で高齢者が健康で生きがいに満ちた生活を送るためにも、地域の移動手段として自転車の役割が拡大する可能性。
    • 情報通信技術の飛躍的発展に伴い、交通分野でもデジタル化がさらに進展する可能性。
    • 新たな低速小型モビリティの登場により、今後、自転車通行空間にも影響がある可能性。
  • 国民の健康増進
    • 糖尿病が強く疑われる人や高齢者の要介護者等数は年々増加。生活習慣病や高齢者の寝たきりを予防するために、サイクリング等による効果的な運動が重要。
    • 子どもの体力・運動能力の向上にとって、手軽に運動できる自転車を活かし、身近でスポーツの楽しさや喜びを味わうことができる環境づくりを進めることが重要。
    • 自転車による運動効果としてメンタルヘルスの改善も期待されており、健康経営の観点から自転車通勤が労働生産性の向上に寄与する可能性。
    • タンデム自転車やハンドサイクル等を活用した障害者スポーツは、障害者の生きがいやQOLの向上、健康長寿社会や共生社会の構築にも貢献。
  • 観光地域づくり
    • インバウンドの需要回復を見据え、その効果を全国へ波及させるために、自転車を活用した観光地域づくりは有望であるものの、サイクリングの受入環境や走行環境は十分とは言えない状況。
    • サイクルツーリズムが地域経済に与える効果として、日帰りであった場合の現地における消費額は小さいため、宿泊を伴う滞在に導く必要
  • 安全・安心
    • 自転車関連の事故をみると、自転車側に法令違反が認められる割合が高水準であるとともに、自転車以外側にも何らかの法令違反が認められることや、通勤・配達目的での自転車利用者も増加していることなどから、自転車利用者はじめ道路利用者全体の安全意識の醸成が課題。
    • 自転車乗用中の死傷事故のうち、65歳以上の高齢者が占める割合は20%程度である一方、自転車乗用中の死亡事故に占める同割合は約70%。
    • 消費者が安全性の高い自転車製品を購入することや、購入後に定期的な点検整備を行うことも重要。
    • 東日本大震災や近年の大規模災害において、ガソリン不足や交通渋滞の状況下等、災害時における移動手段として自転車が活躍。
    • 自転車関連事故件数のうち自転車対歩行者の事故が増加傾向の中、高額賠償事故も発生。
  • その他
    • 国民のライフスタイルや交通行動への新型コロナウイルス感染症対策の影響による変化が認められる

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