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【緊急レポート】2度目の緊急事態宣言。企業が今すぐとりかかるべき3つのポイント

2021.01.08
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総合研究部 専門研究員 大越 聡

緊急事態宣言のイメージ画像

都内で2447人という、1日あたりの最多感染者を3日連続で更新した1月7日夕刻、政府は新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく緊急事態宣言を東京、神奈川、埼玉、千葉の一都三県に発出した。期間は8日から2月7日。全国の感染者数のおよそ半分が首都圏に集中しているという事態を重く見た。政府の緊急事態宣言を受け、小池百合子東京都知事は「午後8時以降の不要不急の外出や県をまたぐ行動などを自粛するよう、強く、強くお願いします」と緊張感をにじませる。大阪や愛知も宣言要請へ動きを見せている。再度の緊急事態宣言を受け、企業が今すぐできるポイントを考えてみる。

今回の緊急事態宣言における主な感染予防対策は(1)午後8時以降の不要不急の外出自粛を住民に徹底。(2)飲食店、バー、カラオケなどの営業時間を午後8時までに短縮。酒類の提供は午前11時から午後7時とする。(3)出勤者の7割削減を目指し、在宅勤務や業務シフト、時差出勤などを推進する。(4)イベントにおいては5千人かつ収容率50%以下で開催。営業時間も午後8時までとする-の4つだ。様々な業種に影響を及ぼした前回の緊急事態宣言に比べ、制限を飲食店やイベントに絞り、外出自粛要請も「特に午後8時以降」を徹底させるなどポイントを絞ったことが特徴だ。昨年4月7日の緊急事態宣言では発出時の1日あたりの全国での感染者数は377人だったものが、解除時の5月25日には20人まで減少した。昨日の全国での感染者数は7571人。宣言によりどれだけ感染者数を減少させられるかが解除にむけてのカギとなる。

緊急事態宣言内容の前回との違い

前回の緊急事態宣言 今回の緊急事態宣言
対象地域 当初は7都道府県(東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪、兵庫、福岡)。のちに全国に拡大 1都3県(東京、神奈川、千葉、埼玉)
飲食店への制限 「飲食店」と明示はせず。(一部の生活に必要な業種を除き、広い業種を制限) 「飲食店」と明示。営業時間を午後8時までに短縮要請
イベント クラスター発生の恐れがある場合、開催自粛を要請
大規模イベントについては中止・延期を要請
大規模イベントは午後8時までの間で、500人以下、収容人数の50%を上限に開催可能
小・中・大学校 臨時休校を要請 臨時休校は要請しない
外出 時間を明示せず、外出の自粛を要請 不要不急の外出・移動自粛を要請する。特に午後8時以降を徹底。
従業員の出勤 時差出勤の推奨、在宅勤務や業務シフトなどにより70%~80%の出勤者数減 時差出勤の推奨、在宅勤務や業務シフトなどにより7割減。東京都では「テレワーク緊急強化月間」を実施。

企業が今すぐとりかかるべき3つのポイント

(1)マスク着用、手洗い、3密回避などの基本を徹底する

企業がまず今すべきことは、従業員の出社抑制に加えマスク着用や手洗い、消毒の徹底や3密回避などの基本の徹底だ。特に店舗のバックヤードや社員食堂、休憩室など、本部や管理職の目に届きにくい部分については徹底できていない場合が散見される。来客へのマスク着用や手指消毒の要請については現場任せにせずに、これまで以上に本部主導で館内アナウンスやポスターの掲示などを徹底していただきたい。また、冬場の事業所に関しては、労働衛生基準規則で(空気調和設備を設けている場合は)室温が17度以上28度以下、湿度が40パーセント以 上70パーセント以下になるようにする努力義務を定めている。特に湿度が40%以上になるとウイルスは不活性化傾向にあることが知られている。前回の緊急事態宣言時の対応に加え、冬場は「事業所環境の適正化」という基本も徹底したい。

現在は飲食店に対象が絞られているが、クラスターが発生した場合は大型ショッピングモールや百貨店など人の集まる場所などに対象を拡大する可能性も十分にある。これ以上、経済循環を止めないためにも、企業には「感染症対策の基本」の徹底した取り組みが求められる。

(2)期間や対象地域、業種は拡大することを想定する

感染拡大で最も恐れられているのが医療崩壊だ。現在の4都県の医療提供体制は最も深刻なステージ4(感染爆発段階)」の指標に達しているものも多い。政府は、「例えば東京都では、新規感染者数500人程度が解除の目安」としているが、年末の人出の状況を鑑みると最大で今後1~2週間程度は感染者の増大が予想され、専門家の間では「1カ月では効果が出るのは難しいのでは」と疑問視する声も出ている。前回の緊急事態宣言でも、政府は当初対象地域を7都道府県に抑えることを考えていたが、すぐに対象を全国に拡大した。加えて、これから2月にかけてはウイルスがまん延しやすい厳しい寒さも予想されている。企業は期間や対象地域、対象業種は拡大することを想定し、対策を施してほしい。

(3)「従業員が感染する」ことを前提とする

都内の爆発的な感染拡大を受け、どのような対策を施していたとしても従業員にPCR検査陽性者が出るという事態はもはや避けることはできないだろう。「従業員が感染する」ことを前提とした取り組みが企業には求められる。従業員が感染した場合の対処法については、これまでもコラムで書いているので参考にしてほしい。また、感染した従業員へのハラスメント防止やメンタルケア、社会が不安になるにつれて増加するカスタマーハラスメントにも十分に注意することが必要だ。

▼事業所における感染者および濃厚接触者の職場復帰の考え方について
▼職場に感染者や濃厚接触者が発生した。保健所の対応が遅れている場合はどうしたらいい?
▼【緊急レポート】新型コロナウイルス禍における顧客対応~カスタマーハラスメント対策も含めて

以上、緊急事態の再宣言を受け、企業が今すぐ取り組むべきポイントを挙げてみた。厳しい感染状況にあるドイツのメルケル首相は年頭演説で「ワクチン以外で最も効果的な方法は私たちの手中にある。一人ひとりがルールを守ることだ」と述べている。企業の担当者は基本を徹底しつつ、最悪の事態を想定し、この厳しい期間をともに乗り越えていただきたい。

(了)

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