三匹(?)が語る!HRリスクマネジメント相談室(5)「新入社員の離職を防ぎたい!」(2019.2)

2019/02/27 / 総合研究部 プリント

 職場におけるトラブルは複合的。社内の様々な関係者の協力を得て、複数の視点で捉えなければ、解決が難しい問題も多々あります。でもやっぱり最後は「人」!HRリスクマネジメントが重要です。


 職場における様々なトラブルを解決すべく、今、エス・ピー・ネットワークに生息する動物たちが立ち上がりました!初動対応や法的な責任、再発防止など、三匹それぞれの観点から熱く語ります。


 

【今月の三匹・プロフィール】

リスちゃん:
お気に入りの木の実は秘密の場所に隠して、後でこっそり食べる。森の元気印としていつもニコニコしていますが、ふざけているわけではありませんよ。若手の視点を使い、木の上からパトロールしています。


イノシシさん:
森の音楽隊のトランペット吹き。3度のご飯よりとんこつラーメンが好き。リスクマネジメント関連の業界紙でたくさんの人や企業に取材した経験を元にHRリスクマネジメントについて考えていきたいと思います。プギッ。


ネコさん:
猫なで声と鋭い爪をあわせ持ち、企業内での人事実務経験が豊富。社会保険労務士で、産業カウンセラー、実はキャリアコンサルタントでもある。みんなが気分良く働ける職場がいいよね。



 

今月のご相談は、こちら。

 人事・採用の担当者です。新入社員の早期離職に悩んでいます。

 昨年の春に入社した新入社員が、既に1人減り、2人減り...と、1年以内の離職が続いています。実は1人目が半年で辞めており、それに引っ張られるように、3月末までの退職予定者を含めると、何と5人も!採用人数は毎年20名前後。それほど多いわけではありませんので、こうも立て続けに辞められてしまっては、たまりません!
 配属先はバラバラで、新入社員研修はOJTが中心。入社時の集合研修は2日くらいで、しかもほぼ座学です。それほど「同期の絆」が強くなるとは思えません。
 他の原因としては...先日定年退職した人が、全社員へ向けて「退職の挨拶」をメールで送ったのですが、1人目の離職者がそれを真似して、やはり全社員へメールを送ったのが災いしているのではないかと思っています。内容は、非常に前向きな決意表明と感謝の言葉でした。「新天地で、本当に自分がやりたいことに挑戦します!」「この会社には本当に感謝しています」というようなものでしたね。私には、「まぁ、浮かれたことを言って...」という感じでしたが、こんなのが若い人には影響を与えてしまうのでしょうかねぇ。以降、全社宛の退職の挨拶は禁止!と、各部の部門長には徹底していますので、それ以来、退職の挨拶メールは届いていませんが。


【リスちゃん】

 3月末までの退職予定者を合わせると、入社1年で新入社員の4分の1の方が退職ということになりますね。昨年の春に入社した新入社員の方は、新卒入社の方が多いのでしょうか。新卒入社の方を想定して、私は若手社員の立場から考えてみますね。


<新入社員のモチベーション>
 新入社員は、どのような気持ちで入社してくるのでしょう。自分が入社した頃を振り返ってみると、期待や不安、目標、やる気など様々な感情を思い出されるのではないでしょうか。いずれにしても、初めから「こんな会社、半年でやめてやろう」なんて考えて入社してくる人はいないと思います。新卒入社の社員は、初めて「社会人」となり、仕事を覚える以外にもビジネスマナーや生活習慣の変化、環境の変化など慣れないことばかりです。OJT研修とは、on the job trainingとその名の通り、実務を通して力を身に着けるものです。先輩や上司の仕事を見て、実践して、時には失敗して、学んでいきます。右も左もわからない状況の中、とにかく実践することが重要にもなります。1人目の退職者の方は、そのような段階で退職することになったため、直近で退職した方のやり方(退職時に全社員にメールを送信)を見よう見まねで行ったのではないでしょうか。退職理由はわかりませんが、送信されたメールの内容は前向きなものであったということですので、他の方の退職の直接の引き金になったとは考えにくいでしょう。


<新入社員の心境の変化>
 今回のケースは、相談者の方のおっしゃる通り、「同期の絆」が強かったから一緒に退職したというわけではなさそうです。もちろん、同期入社ですので、お互いの状況を意識することは当然ですし、中には仲の良い同期もいたかもしれませんが、他にどのような要因が考えられるでしょうか。新入社員の心境の変化に注目して考えてみます。
 新入社員は、初めてのことをたくさん経験します。そして、経験を積むにつれ、自分に出来ることが増えて自信に繋がります。入社2年目を迎える頃には、入社当初と比べて出来ることが増えているはずです。そのような時期の若手社員には仕事に対するモチベーションや心境にも変化が出ます。最近は、社会人2年目頃の若手社員がかかる「社二病」という言葉があります。「社二病」とは、主にインターネット上で使われている言葉で、簡単に言うと「中二病(厨二病と表記されることが多い)」の社会人バージョンの言葉です。明確な定義はありませんが、主に以下のような特徴に当てはまる人に対して、皮肉や自嘲の意味を込めて使われることが多いようです。

  • 仕事が忙しいことのアピールをする
  • 仕事のため(忙しいため)寝ていないと自慢をする
  • 会社や仕事、上司への不満ばかりを言う
  • 後輩社員や学生に対して社会の厳しさについて語る
  • 業界用語・ビジネス用語を乱用する
  • 残業の多さをアピールする 等

 このような特徴を見ていくと、社会人2年目に限らず、当てはまる人が思い浮かびませんか?その中でも、当てはまる人が社会人2年目頃に多い理由としては、入社間もない頃と比べて出来るようになったこと、任されるようになったことなどの変化が著しいため、自分の成長を感じやすいことが挙げられます。社会人2年目にとっての入社間もない頃とは、社会人1年目です。社会人1年目では、学生から社会人になる人が多く、そのギャップも多く感じます。そのような状況から、研修や業務を通して様々なことを学びます。社会人としての生活に慣れることや仕事を任せてもらえた喜びから、自信がつくことで仕事への不満にばかり目がいったり、後輩に大きな態度をとってしまったりするのかもしれません。社会人2年目頃はモチベーションの変化が始まる時期なんですね。


<若手社員へのフォローアップ>
 それでは、若手社員は心境の変化とともに皆退職してしまうのでしょうか。もちろん、そんなことはありません。前段に「社二病」の例を挙げましたが、仕事を通して自信がつき、仕事や会社に対する慣れや不満が出るのは自然なことで、悪いことばかりではありません。ただ、その心境の変化から退職に繋がってしまうことがあるのも事実です。人事担当者としては、それは避けたいものですよね。今回のケースでは、入社時に2日程の集合研修をしているとのことでしたが、もしその後研修等を実施していないようでしたら、昨年の春に入社した新入社員を対象に、フォローアップ研修の機会を設けるのはいかがでしょうか。若手社員が現状を考えることで今後の目標やキャリアについて考え、同時に入社時を振り返ることで初心を思い出すきっかけにもなります。一旦立ち止まって考えたり、他の社員の意見を聞いたりすることで新しい気付きが生まれるかもしれません。入社時の研修を実施して終わりにするのではなく、継続的にフォローすることで、「会社が自分たちのことをきちんと考えてくれている」という安心感を与えることもできるかもしれませんね。

【ネコさん】

 若者の早期離職!せっかく苦労して採用した新人さんが早々に退職するのは、本当にショックですよねぇ。職業選択の自由はあるわけですし、今は転職も当り前な時代とはいえ、「仕方ない」では流せない問題だと思います。


<若者の早期離職は「組織の問題」と捉える!>
 現在、新卒者を採用しようとするならば、「青少年の雇用の促進等に関する法律(若者雇用促進法)」により、「青少年雇用情報」の提供を求められるようになっています。「過去3年間の新卒採用者数・離職者数」もその一つ。離職者が多ければ、はっきり数字で出てしまい、聞かれれば答えないわけにもいきません。早期離職が多ければ、それがそのまま数字で示されてしまうわけですから、なかなか怖い制度ですね。
 でもこの制度、採用担当以外の人も知っているのかしら?多くの現場が人手不足に喘ぐ中、離職者が出て、さらに入社志望者を減らすような「数字」が出てしまえば、現場の人手不足の解消は困難になるばかりです。若手を安易に離職させてしまうことが、組織全体にどのような影響を及ぼすのか、現場の、特に上司のみなさんにはきちんと知っておいていただきたいな、と思います。
 なかなか思うように育たない新人さんを疎ましがったり、「適性がない」と決め付けてすぐに辞めさせようとしたり、酷いケースでは「あいつはダメだから、追い出してやった!」などと辞めさせて威張っていたり...こんな上司いますよね、現実に。離職した若者本人ばかりを責めても仕方ありません。まずは組織として、真剣に、若者の早期離職防止に取り組む必要があると思うのです。もちろん、若者を脅して辞めさせないような、ブラックなことをするのもダメですよ


<成長の実感がポイント?>
 今回は、まさに「若手社員」のリスちゃんに初登場してもらいました。若者が、自社で働き続けようというモチベーションを保つには、何が重要なのでしょう。リスちゃんの意見には、たくさんのヒントがあるように思います。
 ネコは、「成長の実感」がポイントではないかと思うのですが、いかがでしょう?入社して1~2年くらいは、自分の成長が実感できるからこそ、ちょっと大人ぶって仕事や会社のことをぶつぶつ言ってしまったりもしますが、逆に、急に成長してしまったことで、「次の成長」が見えづらくなってしまう、微妙な時期でもありそうです。このままここにいても、「これ以上の成長はないのではないか」などと、不安や焦りがよぎりがちな時期とも考えられます。特に、周りの上司や先輩が、毎日毎日つまらなさそうに「同じこと」を繰り返していたり、日々トラブルに振り回されるばかりで、何の解決策もないように見えたりすれば...!自分が先輩と同じレベルの仕事ができるようになってしまえば、「成長の見えない先輩」「成す術のない上司」は、まさに自分の未来の姿。「ここにいたら、こうなってしまう?自分の未来をもっと充実させるには、転職しかない!」などと思い、転職サイトに登録、そして次々と届くスカウトにのせられ、もう一度「充実した一年目」を求めて会社を去る...。ニャーン!想像しただけでぞっとするわー。「一年目」ばかりをあちこちで経験しても、将来的に自分のコアとなるようなキャリアは磨けません。何とかして、自社の中で「次の成長のステップ」を示し、「まだまだここで学べるぞ!」「現状を変える余地があるぞ!」と思ってもらうことが、早期離職を食い止めることになるのではないかしら。上司や先輩の責任は重大だ、ということです。...リスちゃん、ネコの隣の席なのよね。リスちゃんに「次の成長のステップ」を示せるように、ネコも「さらなる成長」に向けて頑張らないとね。(さらなる成長って、巨ネコ化することじゃないわよ!)
 会社としては、若手社員の早期離職を防ぐためだからといって、若手にばかり目を向けていてはダメだということになります。上司や先輩が、きちんと時代の流れに乗り、少しずつでも「成長」を続けられるよう、やりがいや学びの場の提供を考えていくべきではないでしょうか。


<早期育成の重要性>
 もう一つ、現場で取り組むべきだと思うのは、「早期育成」のための工夫です。早期離職の原因は、モチベーションの低下だけではありません。きつ過ぎる労働環境、能力に対して重すぎる責任、「失敗体験」の積み重ね...それらが若者を精神的にも、身体的にも疲弊させてしまえば、やはり早期離職につながります。若い人から、「身体を壊して辞めた」という話はよく聞きますよ。
 そうならないためには、「できない」ことで苦しむ時間を、少しでも減らすことが重要だと思います。つまり、早く「できる」ようにする、ということです。
 昔と比べて、現代は変化のスピードが速くなっているような気がします。また、企業としての成長のために、事業領域を拡大すれば、個々の社員もそれだけ取扱うモノやサービスが増え、覚えなければならないことも増えてくるはずです。昔は上司の側について、「見よう見まね」で徐々にできるようになれば十分だったかもしれませんが、今は人手不足も相まって、「もっと多く」を「もっと早く」、できるだけ「自力」で「できる」ようになることを求められます。既に「できる」ようになっている上司・先輩のみなさんが「当り前」だと思っていることは、本当に入社間もない若者たちにとっても「当り前」でしょうか。育った時代も環境も、求められることもスピードも、自分たちの時とは異なるはずです。自身の成長の過程を思い出してみてください。自分も一朝一夕ではできなかったことを、「今すぐできるのが当り前だ!」などと、若者たちに無茶を押し付けていませんか?
 早く戦力化したいならば、「できないとはけしからん!」と叱りつけるばかりでは不十分です。「どうしたらできるようになるか?」を常に問い続け、仕事の説明の仕方やマニュアルの作り方、できたこと・できていなかったことのフィードバックの方法など、とにかくあらゆる工夫を結集して、若手の「育成」に励むべきだと思います。
 若手を早期に戦力化できれば、自分の「成長」のために当てられる時間も増えるはずです。「育成」して、次の「成長のステップ」を見せ続けることが、若者の早期離職を防ぐために、上司や先輩たちがすべきことだと思います。


<退職の挨拶メールについて>
 最後に一つ、退職の挨拶メールについてふれておきましょう。ネコとしては、「退職の挨拶メール禁止」は、かえってマイナスに作用することの方が多いと考えています。
 というのは、禁止されたり、隠されたりすればするほどに、「悪い想像」が広がりませんか?「いつの間にか同期がいなくなる」「ポジティブな挨拶さえもできずに去って行かざるをえなかった」となれば、会社に対する信頼感は下がるばかりです。
 退職の挨拶くらい、させてあげたらよいではありませんか。「自分も」と安易に引きずられる人が出るのが心配ならば、「笑顔で送り出すけど、本当は送り出したくないのよ」と泣きながら笑顔を作っている姿を見せたらいいんです。気持ちは、ちゃんと見せた方が伝わりますよ。
 「同期の絆」も、「連れ立って辞める」ばかりではなく、「励ましあって頑張れる」方に活かせる場合もあります。リスちゃんが言うように、丁寧なフォローアップによって、会社に対する安心感・信頼感をアップさせれば、同期のメンバー同士ばかりでなく、会社との「絆」も深めることができるのではないでしょうか。

【イノシシさん】

 さてさて、難しい話ですね...。企業としても苦労して新卒採用した20人のうち、1年で5人が退職、もしくは退職予定とのこと。人事の採用担当者としてはとても頭が痛い問題だと思います。どうしたらいいでしょうか。


<新入社員3割、4割退職は当たり前?>
 まず、1年間で20人中5人(25%)が退職してしまったのは、本当に人数として多いのでしょうか。「最近の若者だから」辞めてしまっているのでしょうか。こちらの厚生労働省の統計を見てみましょう。


▼新規大卒就職者の事業所規模別就職後3年以内の離職率の推移(厚生労働省)

 こちらの資料を見ると、従業員1000人以上の事業所では24.2%。500人~999人までの事業所では29.6%と、いわゆる「大企業」と呼ばれるような会社でも3割近くの大卒新入社員が入社3年以内に退職していることが分かります。社員が100人~499人の会社では31.9%、30人~99人の会社では実に39%と4割近くが、それより小さい会社だとおよそ半数が3年以内に退職していることが分かります(5~29人/49.3%、5人未満/57%)。さらにグラフによると、その傾向は2003年の統計開始当初からほぼ変わらず、昔のほうがかえって退職者が多いという年も多々あります。また、「従業員1000人以上の事業所」のような大企業の場合は新卒社員だけで数百人採用するような会社もあるでしょう。投稿者さんの会社の規模は分かりませんが、「これだから最近の若者は」と十把一絡げには言えないように思います。
 「会社四季報」で有名な東洋経済新報社の統計によると、2018年に最も多く大卒以上の新入社員を採用したのは三菱UFJ銀行で、その数はなんと1050人。これでも近年の経済冷え込みで少ないほうで、同じ統計の2016年版を見てみると1位はみずほフィナンシャルグループで1920人、2位は三井住友銀行で1800人、3位に三菱東京UFJ銀行が1300名との数字がありました。厚生労働省では「新規大卒就職社の産業分類別就職後3年以内の離職率の推移」も公表していましたので、こちらも一緒に参照すると「金融・保険業」の離職率は21.7%。単純計算でも300人~400人くらいの方が3年以内に辞めている計算になります。


▼新規大卒就職者の産業分類別就職後3年以内の離職率の推移(厚生労働省)

 次は上の書類から、業種別に離職率の多い順番で見てみましょう。「その他」(66%)を抜きにしてみると、最も離職率が高かったのは「宿泊・飲食サービス業」の49.7%、2位が「教育、学習支援業」で46.2%、以下「生活関連サービス業、娯楽業」が45%、「医療、福祉」が38.7%と続いていきます。そしてこの傾向も、先ほどの統計と同じくここ10数年ほどあまり変化はないようです。相談者さんの業種はどうなのでしょうか。今回の退職者数は、例年に比べとても多いものだったのでしょうか。それとも「久しぶりに大量に新卒を採用した」のに辞めてしまった状況なのでしょうか。もし後者だとしたら、変わらなければいけないのはもしかしたら会社の方なのかもしれません。


<Twitter炎上と同じ原理?精神論ではなく仕組みづくりを>
 少し話は変わりますが、今年に入ってから飲食店による不適切動画投稿が多発しています。1月に「すき家」のアルバイトが「くびかくご」とテロップをかけながら厨房で不適切な行為を録画したものをアップして炎上したのを初め、「くら寿司」、「ファミリーマート」「セブンイレブン」、「バーミヤン」のほか健康的な食事で女性からの評判もよかった「大戸屋」なども被害にあいました。いずれもアルバイトは特定されており、特にくら寿司を運営するくらコーポレーションは、アルバイトの高校生に対して民事・刑事で損害賠償を請求する姿勢を強めています。「高校生に対して損害賠償請求は重すぎるのでは」と言う批判もあるものの、食品業界の命ともいえる「食の品質」を損なうアルバイトの行為は決して許されるものではないでしょう。
 一方で、「なぜマクドナルドが炎上しないのか?」という分析もネット上でされています。日本に17万人のクルー(アルバイト)がいるというマクドナルドでは、これまでネット炎上騒ぎが少ないとのこと。「SNSガイドラインが完備している」「営業中には正社員が必ずいる」などの、ある意味当然の取り組みを実施したうえで、「そもそもマクドナルドのアルバイトの制服にはポケットがなく、スマートホンを職場に持ち込むことができない」という仕組みに言及していました。もともとはアルバイトがレジの小金を盗んでしまうことを防止するためにポケットをなくしたそうで、社員やマネージャーの制服にはポケットがあるそうです。「Twitterに不適切な画像を投稿してはいけない」と口をすっぱくして言うよりも、「職場にスマートホンを持ち込めないようにする」という仕組み作りのほうが、より実効性が高いと考えられますよね。実際にはこの原稿を書く数日前に、マクドナルドでも「配達」をしているアルバイトがバイクで配達中に明らかに道路交通法違反をする不適切動画を流して炎上してしまいました。それでも、「厨房における食材に対する不適切動画」という「食の安全」に対する裏切り行為に比べれば、いく分か内容はましと言えるでしょう。逆に「悪質なアルバイトがどんなにがんばってみても、その程度の動画しか取れない」という事例なのかもしれません。みなさんも、新入社員が辞めない仕組みづくりを本気で考えてみてはいかがでしょうか。


<「サイボウズ式」で離職率28%からホワイト企業へ>
  これまで取材した中で社員の離職率を減らす取り組みで最も印象的だったのは、グループウェア等で有名なサイボウズさんです。社長の青野慶久氏は経済産業省が提唱する「プレミアムフライデー」に物申す意見広告を出したり、「100人いれば100人の人事制度を」など提唱したりして「働き方改革」に積極的に取り組む方として知られていますが、一昔前は同社も普通のいちベンチャー企業だったと言います。創業して8年目の2005年には、全社員が83人になのに1年で23人が辞めてしまった(離職率28%)こともあるそうです。新入社員ではなく「全社員」の離職率が28%というのは、かなり高い数字といえるでしょう。私が取材した人事担当の方は「いつもどこかで送別会や歓迎会が開かれていて、それが当たり前だった」と当時のことを振り返ります。
 それから本気で「働き方改革」への取り組みを開始した同社では、試行錯誤の末に「チームワークあふれる会社を創る」という企業理念のもと、いくつかのルールをつくりました。そのなかでユニークなルールの1つが、「質問責任」と「説明責任」です。「質問責任」とは「何かもやもやしたことがあったら、必ずそれが分かりそうな人に聞かなければいけない」というものです。もちろん居酒屋等でのノミニケーションではなく、仕事中にです。そして「説明責任」とはそれに対してしかるべき人が、必ず会社の仕組みを納得できるように説明しなければいけないという約束です。そしてその人が説明できなければ、一緒にさらに上位の人に質問をしにいかなければいけません。それが2~3回繰り返されると必ず社長のところにたどり着きますので、最後は社長が回答しなければいけないというものだそうです。社員全員があらゆる人事制度や評価制度について納得できていれば、仕事に対するモチベーションも高まりますよね。もちろん同社が開発する最新のグループウェアの導入など、ハードとソフト両面で「働き方改革」に取り組んだ結果、同社は現在離職率4%前後という、日本屈指のホワイト企業として生まれ変わっています。
 もちろん、全ての会社がこのように取り組むことは難しいでしょう。それでも、離職を社員の「精神論」や「時代」のせいにせず、自分の会社でもできる新しい「仕組み」を模索していくことが大切なのではないでしょうか。今回の新卒社員の大量離職を真摯に受け止め、本気で社員が辞めないような仕組みづくりを実行すれば、しかすると何年か後にはあなたの会社が「日本屈指のホワイト企業」なんて呼ばれる日が来るかもしれませんね。

※)厚生労働省資料の数字は、特段の注意がない限り、全て2015(平成27)年入社社員の離職率を示しています。



 「HRリスク」とは、職場における、「人」に関連するリスク全般のこと。組織の健全な運営や成長を阻害する全ての要因をさします。
 職場トラブル解決とHRリスクの低減に向けて、エス・ピー・ネットワークの動物たちは今日も行く!


 ※このコーナーで扱って欲しい「お悩み」を、随時募集しております。

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