小売業における食品ロス (2019.2)

2019/02/19 / 総合研究部 上級研究員/部長補佐 伊藤 岳洋 プリント

食品ロス

 皆さま、こんにちは。
 本コラムは、消費者向けビジネス、とりわけ小売や飲食を中心とした業種にフォーカスした経営リスクに注目して隔月でお届けしております。


 今回は食品ロスについて考察してみたいと思います。最近、恵方まきの廃棄に代表される食品ロスに関する報道を度々見かけるようになり、一般消費者の関心もある程度高まっているようにも感じます。ただし、その論点は「もったいない」という感情的な精神論が中心であり、構造的な問題まで踏み込んだ内容は少ないのではないでしょうか。関係省庁が連携して食品ロスの削減に取り組んでいますが、その資料をみても「もったいない」と国民に訴えかけることが効果的であると考えていることが推察されます。農林水産省の食料産業局が発信する「食品ロスの削減に向けて ~食べものに、もったいないを、もういちど。~」では、食品ロス削減国民運動シンボルマークとして「ろすのん」を平成25年に掲げています。
 シンボルマークの解説として「外見:真ん中の赤丸は『お皿』をイメージ。下の二本線は『お箸』をイメージ。右目の涙は『もったいない』感情を表現」とあります。また、「食品ロス削減に向けた動き」として次のように紹介しています。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を「環境や人権への配慮等、持続可能性を大会のレガシーとして位置づけ」、「『もったいない精神』を世界に広めるチャンス」としています。わかりやすいスローガンで関心を引くことには効果が見込めますが、それだけでは食品ロスは解決しないでしょう。食品ロスが解決していない現状に鑑みて明らかなように、感情に訴えるだけでは劇的な効果は出ていません。感情的なアプローチで響く人は、すでに響いています。それ以外の人に響かせるには、食品ロスが発生する構造にも注目する必要があります。
 食品ロス=モラルの問題と捉えがちですが、それだけではなくビジネス上の競争やコスト、商習慣などの要因が絡み合っています。前述したとおり、最近では恵方まきの廃棄が大きく報道されています。恵方まきの習慣は、もともと近畿地方が発祥(諸説あります)といわれ、セブンイレブンを中心としたコンビニエンス・ストア(コンビニ)が2000年代に全国に広げたという経緯があります。コンビニは、イベントを利用した商品を仕掛けることを得意としてきました。クリスマスのケーキやバレンタインデーのチョコレートなど、それまでは専門店やデパートで購入することが普通であった商材を、スケールメリットを利用して商品の品質を向上させることで手軽に購入できることを武器に浸透させてきました。手軽ということは、実際には、消費者が物流コストを負担することで住まいや職場の近くで時間や労力を掛けずに購入できるということです。最近では、トレンドをコンビニが作ったということでは、ハロウィーンもそうかも知れません。このようなイベントを仕掛けて、通常の売上にプラスオンする売上を作るという目的は、本来合理的なものでした。しかしながら、イベントという手段が目的化してしまうと、販売数量を追求するあまり利益を考えない無理な発注によって大量の廃棄を出すことになってしまいます。恵方まきの販売に力を入れているスーパーマーケット(スーパー)に比べて廃棄を生み出しやすい構造があります。
 そのひとつは、チェーン本部によるコンビニ加盟店オーナーへの指導的提案とも無関係ではありません。加盟店オーナーへ本部の提案を伝達するのは、スーパーバイザーと呼ばれる経営指導員です。フランチャイズ契約の建前は、フランチャイザーであるチェーン本部と加盟店オーナーは対等です。商品についてもチェーン本部は、「推奨」という形で加盟店オーナーに提案し、その導入の決定権は加盟店オーナーにあります。しかしながら、表面的には独立の経営者としての権利を尊重する建て付けを担保しながら、本質的には有形無形の圧力が存在し、チェーン本部のほうが支配的立場というのが実態でしょう。各加盟店オーナーからロイヤリティを収集して、資源配分に関する裁量はチェーン本部側が握っていることからも、それは明らかです。たとえば、多額の投資を伴う改装の判断もチェーン本部が握っています。チェーン本部が提案する各種イベントの取り組みに消極的であれば、本部側から淘汰されかねないとう心理は否定できません。積極的な取り組みという旗印の下、無理をした結果、無駄な廃棄を出してしまう店舗もあります。
 もうひとつは、恵方まきの製造場所に関係しますが、生産段階の廃棄が発生することです。サプライチェーンマネジメント(SCM)に延期の原理、投機の原理という考え方があります。端的にいえば、「消費の瞬間に生産の意思決定を近づける(遅らせる)ほうがよい」という考え方が延期の原理です。「生産の意思決定を早めるほうがよい」という考え方が投機の原理です。典型的な投機型の生産システムは、大手メーカーの工場生産です。需要を予測して大量かつ集中的に生産して生産コストを圧縮し、卸売りと小売りを経て消費者に供給するものです。生産を流通のいわゆる川上に近づける方法です。コンビニの恵方まきを含めた米飯、惣菜、調理パンなどの生産方法は、延期の原理をもとに発展してきました。専用の工場を地域単位で建設し、配送エリアの店舗に製造場所を近づけることで発注から納品までのリードタイムを短くして需要予想の精度を高めてきました。さらに、物流の頻度を1日3回と多くすることで需要予想を実需に近づける高度な物流システムを築いてきました。ただし、このような延期的な生産システムであっても、リードタイムがある限り生産段階での廃棄が発生します。それは、完全な受注生産ではないからです。米飯工場は、これまでの実績や諸条件をもとに店舗からの発注を予測して見込みで生産を開始します。発注の締め時間を経て、商品別の数量が確定します。そうなるとどうしても、見込み生産による廃棄は発生します。
 それに対して、スーパーでの恵方まきは、販売する地点=店舗で生産します。需要地点で生産の意思決定をするということでは、究極の延期的生産手法といえます。大量販売するためには、生産リードタイムはゼロではありませんが、少なくとも生産段階での廃棄は避けられます。あとは、販売段階での売れ残りが廃棄になるという問題は残ります。通常は、実需の変化を観察しながらそれに合わせて生産を追加したり、取りやめたりする伸縮的生産が可能です。伸縮的生産においては、生産段階は勿論、販売段階の廃棄も減らすことができます。一方で、このように生産に伸縮性のある店内調理においては、非常に手間ひまが掛かることや品質、でき映えの点において均一性を担保することに難点があります。
 販売段階の売れ残りをなくすには、販売数量における予約販売の割合を増やすことが考えられます。実際にコンビニやスーパーでは、早いところでは年明けから予約を開始しています。理論上は予約の割合を100%にすれば、受注生産ということになり、廃棄はゼロに限りなく近づきます。ところが現実には販売における予約の割合は高くはなく、筆者の経験や感覚では1割程度ではないでしょうか。それでは、小売店の誰かが「当店は予約販売のみ」と他店に先駆けて販売スタイルを変えることは可能でしょうか。小売の伝統的な陳列の考え方に、「お客様が選べるアイテムの幅とボリューム感」を理想とすることがあり、実際に売れ残りを増やす圧力となっています。そのような環境のなかで、単純に予約販売にスイッチしても販売実績を大きく損なうことになります。ボリューム感のある品揃え幅の広い他店にお客様を奪われることになるからです。恵方まきを取り扱う業態間の競争や店舗数の過剰による店舗間の激しい競争がその原因のひとつです。どこに行ってもきまぐれに購入を決められる環境です。どの小売店も自ら競争から降りられないのです。
 ただ、冷静に恵方まきの利益率(またはそのカテゴリーの利益率)を観察すれば、売上の山は作っているものの、粗利益の結果は薄利であることも往々にしてあります。さらに人件費などの経費を勘案すると営業利益としてはマイナスもあり得ます。このような薄利多売の競争環境下で予約販売にシフトしていくには、商品の差別化や何かしらの付加価値による差別化が必要です。「もったいない」を訴えかける廃棄との決別宣言をアピールして予約販売に傾注することは、先に述べたように一定程度の消費者には響くでしょう。それが、大きな流れとして社会に定着するには、それなりの時間と成熟した議論が必要かもしれません。ただし、クリスマスケーキが昔は陳列販売があたりまえの時代から、商品価値の高まりを前提とした予約販売があたりまえの現状に変化したことからも望みはあるのではないでしょうか。
 食品ロスの問題では、環境面への影響は当然のことながら食品価格への影響もあります。食品メーカー、コンビニやスーパーなどのチェーン店では毎日販売力以上の食品が製造・流通し、残った分は捨てられています。捨てられている食品の製造・廃棄コストも実は販売価格に織り込まれています。消費者は自分たちが食べるものだけでなく、廃棄コストも支払っていることになります。セブンイレブンがコンビニという形態で「欲しいものを欲しいときに欲しい分だけ」購入できる商品提供スタイルによってもたらされた消費者の利便には、見えにくいコストも含まれています。
 また、消費者の段階での食品ロスを出す原因は、いわゆる食べ残しや買い過ぎによる劣化です。消費者段階での食品ロスの削減は、農水省や消費者庁などが行っている「もったいない」意識を醸成する啓蒙活動で問題はありません。食品には、素材の生産、加工、物流、小売のサプライチェーの各段階でも食品ロスが発生します。これらの食品ロスの発生は、「もったない」では解決しません。なぜならば、発生の原因がコストにあるからです。捨てないという選択をするよりも捨てるほうが損をしない、または、利益が大きいということがあります。小売チェーン店では売れ残りの多い店舗から売れる店舗へ店舗間の商品移動を行い、売り切る努力を行う場合があります。これには人海戦術によって発生する人件費や物流費が掛かります。物流コストを誰が負担するのかということも食品ロスの問題です。また、生産段階では農産物の廃棄の問題があります。せっかく作った農産物を畑に捨てている光景を報道などで目にします。なぜ捨ててしまうのでしょうか。そこには農業の特徴が関係しています。農業のように生産にかかる費用も利益も安い薄利多売のビジネスモデルの場合、作った分全てを出荷して市場価格を下げてしまうよりも多少廃棄をしてでも市場価格を維持するほうが利益の最大化につながるからです。ビジネスモデルの違いがよくわかる対比例としては、畜産があります。畜産のように生産コストが高い場合には、捨てずに市場に出荷したほうが利益貢献するので、コストを理由とした食品ロスは発生しにくいのです。これらの生産段階での商品ロスは推計が難しく、他の流通段階に比べて対策が遅れているという印象です。
 ここまで生鮮品を中心に据えたサプライチェーンにおける食品ロスについてみてきました。加工食品を含めた食品全体に目を移すと、流通段階の食品ロス削減の対策として、いわゆる3分の1ルールの見直しの動きがあります。農水省は、加工食品の納品期限に関するルールの見直しや賞味期限の年月表示化を推進しています。小売店などが設定する加工食品の納品期限は、賞味期限を概ね3等分して商習慣として設定している(いわゆる3分の1ルール)場合が多く、食品ロス発生の要因のひとつとされてきました。2013年から特定の地域で飲料や菓子の一部品目において、納品期限を現行より緩和して、賞味期限の2分の1にする動きを推進しています。品目(即席めん等)と取り組み店舗(食品スーパー等)をさらに拡大した実証を進めています。賞味期限の年月表示化については、食品表示基準で賞味期限が3ヶ月を超える食品の年月表示が可能になりました。狙いとしては、食品ロス削減と同時に在庫管理に関する大幅な省力化です。ただし、年月表示にした場合、「日」が切り捨てとなり、最大で1ヶ月賞味期限が短縮されることから、納品期限の見直しや賞味期限の延長とセットで取り組む必要があります。また、賞味期限の延長については、容器包装の高機能化もその一翼を担っています。
 日本では、全体で2,800万トンの食品残さが発生しており、そのうち食品ロスが621万トン発生しています(2014年度)。国民1人が毎日おにぎり1個分の食品を捨てている計算になります。これは、国際機関による途上国への食料支援量の2倍にあたります。市場の大きい加工食品に年月表示や納品期限の見直し、賞味期限の延長などがセットで取り組みが広がれば食品ロス削減への効果が期待できます。また、飲食業者では、端材を極力出さないメニュー間の利用や食材種類ごとの歩留まりを把握するなどの食材管理をしていくことが求められます。食品ロスを過剰に出さない仕組みの整備と取り組みが一層求められます。
 さて、サプライチェーンのなかでコストを理由に発生する食品ロスがあることを前半でみてきました。このように廃棄された食品のなかには、再生利用(リサイクル)されるものもあります。そのなかに、廃棄された食品をエコフィード(eco-feed)という家畜用飼料にリサイクルしているものもあります。農水省によると食品廃棄物等の発生量は1,970万トン(平成28年度)で、そのうち食品製造業が1,617万トン(構成比82%)、外食産業が199万トン(同10%)、食品小売業が127万トン(同6%)、食品卸売業が27万トン(同1%)を占めています。そのうち、エコフィードなどへの食品リサイクルがなされているのは、1,398万トンで食品廃棄物の約71%が再生利用されています。ただし、そのうち1,309万トンを食品製造業が占め(再生利用に占める割合81%)、外食産業は食品廃棄物のうち、21%、食品小売業が同じく43%しか再生利用されていません。そもそも、食品リサイクル法による再生利用の目標は、食品製造業95%、食品卸売業70%、食品小売業55%、外食産業50%と、実績が目標と大きく乖離しています。現実には、多くの食品の残渣がリサイクルされずに焼却処分されています。その理由も、はやりコストと思われます。農水省によると、事業系一般廃棄物の運搬手数料は1キログラム当たり13.1円です(実際の費用は同50円程度でその差額は税金で賄われています)。リサイクルの場合、個別の条件で異なりますが、平均すると1キログラム当たり20円から25円程度と言われています。リサイクルするよりも捨てるほうが、コストが少ないのです。これだけ廃棄に掛かる事業者のコストが違うと、捨てることを選択する事業者が多いことも説明がつきます。廃棄に掛かるコストに税金を投入して、リサイクルを選びにくい現状を生み出していることは皮肉です。捨てるよりもリサイクルするほうが得になるような制度へ変えれば、リサイクルが進むでしょう。
 今回はサプライチェーン全体のなかで、どこでどのように食品ロスが発生するか、その原因をみてきました。そこには、ビジネスの競争、コストなどの要因があり、それぞれの場面で一見すると合理的なようで実は短絡的な判断をしてきた結果、社会的なロスが大きくなるという構造がありました。食品ロスは無駄であり、その分利益を薄くし、価格を消費者に転嫁しているという認識の下、サプライチェーンの各段階において有機的に作用するような取り組みが求められます。

注目トピックス

ドラッグ店、デジタル化で改革

 ドラッグ・ストアの大手の3社が商品にICタグを付けた実験店舗の運営を始めると言います。無人レジの導入や需給に応じた価格変更の自動化などを計画しています。業界別の売上高をみると、ドラッグ・ストア業界は、売上高が6兆8,504億円(17年度)とコンビニエンス・ストア(コンビニ)の10兆9,646億円(18年度)に迫る存在感です。売上げの伸び率でみると、コンビニの対前年102.6%に対して、ドラッグ・ストア105.3%と2年連続5%以上の伸長をしている業界で19年度には8兆円を超えると見込まれています。売り上げの伸びの背景には、薬と一緒に広くまとめ買いができる利便性を武器に店舗を拡大していることがあります。生鮮の売り場を拡大させるなど企業間で取り組みの濃淡はあるものの、共通して高利益率の薬の販売による利益を原資に生鮮や食品を割安にしてスーパーマーケットなどの顧客を取り込んでいます。
 このように勢いのある業界ですが、コンビニに次ぐ生活インフラになるべくデジタル化を通じてあらたな店舗像を模索することに着手したものです。ICタグの取り組みということでは、以前の本コラム(2018年12月号)で紹介したとおり、コンビニ業界が先行しており、経済産業省とファミリーマートなどが連携して、お客様が自分で会計する無人レジの実証実験のなかでICタグを活用するということを始めています。


▼電子タグを用いたサプライチェーン情報共有システムの実験を行います
~サプライチェーンに内在する社会課題の解決に向けて~


 価格情報などを搭載したICタグを貼り付けた商品を陳列し、お客様が買物カゴに入れた商品を買物カゴごと機械にかざすだけで即時に会計を終えることができます。支払いは、電子マネーやクレジットカード、現金でも決済できるというものです。
 一方、ドラッグ・ストアのウェルシアHDは、新聞やたばこを除く商品の9割にタグを取り付ける方針です。タグには、売価などの商品概要や消費期限の情報、どこの場所に陳列しているかという位置情報もひもづけると言います。
 また、ツルハHDは販売状況や季節に応じ、価格を柔軟に変える「ダイナミックプライシング」を試すと言います。まずは、パンなどの賞味期限が迫った商品のポイント還元率を高めたり、対話アプリ「ライン」で値引き情報を配信したりします。さらに、電子プライスカードとの連動で、従業員の作業を軽減、また、商品の廃棄削減の効果を期待しています。
 デジタル化はさらに、店内で様々な情報を掲示するデジタルサイネージ(電子看板)とセンサーも活用し、来店客一人ひとりにあった販促を展開することも考えています。省力化ということでは、無人レジの導入やタブレット型の持ち運びできる端末に切り替える動きもあります。さらに、自動発注システムの導入を検討しています。自動発注システムはコンビニのローソンなどが導入しています。一般に取り扱うアイテム数がコンビニは3千前後に対して、ドラッグ・ストアの標準店舗は1万5千~2万と多く、その導入効果はコンビニを凌ぐものと思われます。
 販促や品揃えに活用するため、お客様一人ひとりに対応するアプリを導入しているドラッグ・ストアもあります。ココカラファインでは、各店舗に月に1万件届く「洗剤の品揃えが少ない」「飲料を増やして」などのお客様の個別の声を商品展開につなげる仕組みにも投資します。
 One to Oneマーケティングをシステムによって強化する動きは、コンビニにも見られます。ただし、このようにいわゆるビックデータの利活用には懸念点もあります。ビックデータの利活用は、事業者の自主性に任せることなく、一定のルール化が必要ではないでしょうか。少なくとも事業者は、ビックデータを利活用するリスクを認識した対策を講ずる必要があります。個人情報の漏えいやプライバシー権を侵害する恐れを認識して、データの高度化など匿名処理を施さなければなりません。データの組み合わせ次第では意図しない個人の特定というリスクがあり、位置情報や購買履歴の利活用に関しては、たとえ合法であったとしても企業倫理が問われます。法規制よりも幅広く(位置情報や購買履歴も含めて)個人情報リスクを認識すべきで、消費者の視点を忘れてはならないでしょう。合わせて法規制の改定動向を把握し、遅滞なく対応すべきことはいうまでもありません。

ローソン消費期限改ざん、店内調理の弁当・調理パンで

 ローソンは2月6日、埼玉県三郷市の同一オーナーが経営する「ローソン三郷天神一丁目店」と「ローソン三郷彦糸店」の2店で、店内調理の一部の商品の消費期限の改ざんが判明し、両店を閉店したと発表しました。三郷天神一丁目店で賞味期限を改ざんされて販売された数量は最大で1万3,700個に上る可能性があり、三郷彦糸店での販売数量は不明とのことです。食品の安心安全を根底から裏切る行為であり、閉店という経営者だけでなくフランチャイザーである本部にも痛みを伴う厳しい判断がなされました。もっともフランチャイズ本部は、ほとぼりが冷めた頃、新しいオーナーを用意して一端閉店した店舗をリニューアルオープンするという「奥の手」を持っています。
 フランチャイジーが共同で利用する「看板」というブランドを損なう「行為」に対しては、「契約解除」などの契約条項が双方に権利として記されているのが一般です。恐らく今回は、「契約解除」による閉店ではないかと推察されます。また、本件はフランチャイズシステムのリスクが特徴的に表れた事例です。一部の問題がチェーン全体に波及するリスクがフランチャイズシステムには構造的にあります。本部であるフランチャイザーが、もっとも恐れるのは食中毒など食品の安全に関わる問題の発生です。特に製造段階や流通段階で食品劣化や毒性をもつ細菌の混入が発生すると、一度に多くの店舗で食中毒が広く発生しかねません。従って、製造工場の衛生管理や安全対策は厳格にルール化され、製造ルームや物流センターへの入室は除菌やエアシャワーなどの対策が徹底されています。米飯、調理パン、惣菜などの製造に関しては、通常は商品別に異なる工場で生産された商品が物流センターに集約され、店舗へ共同配送されます。これらを製造する食品メーカーで製造由来の品質問題が発生することは比較的稀です。また、流通過程や販売段階、消費者の段階で問題が発生すると製造中に抽出・保管してあるサンプルにて原因の追及ができる仕組みがあります。合わせて出荷段階での一定の抜き出し検査もしているでしょう。
 今回埼玉の店舗で問題となったのはこれとは別に、店内バックヤードで従業員が生産するのが店内調理です。店内調理はできたて感があり、生産と需要の地点が同一なのでリードタイムがほとんどなく、柔軟で伸縮的な生産により廃棄や機会損失が少ないという利点があります。一方で、食品メーカーのような製造プロセスの管理は手薄で、本部の商品部などの専門家の目が届きにくいという弱点があります。表示ラベルも事務所のプリンターや専用の簡易ラベルプリンターなどアナログ的に入力して印刷するケースが一般的です。そのような環境を逆手にとって消費期限ラベルを貼りかえる手口は外部にバレ難く、極めて悪質です。従業員が賞味期限の2時間前(販売期限の可能性が高い)に表示ラベルを張替え、7時間延長していたと言います。専用工場で生産された商品のように消費期限切れの商品をレジではじく、フェイルセーフも機能しません。悪意のある偽装をどう防ぐのか、フランチャイズ本部の信頼回復と再発防止に向けた危機管理能力が試されます。

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