専門家の集まるBCPカフェ

企業が新社会人に教えたい・伝えたい防災知識(後編)

2026.06.22
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本稿は全2回の連載記事です。
このコラムは第4回「企業が新社会人に教えたい・伝えたい防災知識(前編)」の続きになります。

エス・ピー・ネットワークのBCP担当者たちが、最近起きた事象をテーマに座談会形式でざっくばらんに語り合う「BCPカフェ」。個人の防災から職場のBCPまで、様々なテーマについて、企業のBCPご担当者のヒントになるよう、わかりやすく話し合います。

災害への日頃の備えに防災グッズ
本日の参加者
大越 記者、広報担当、企業の危機管理専門誌編集長等の経験を経て現在はBCP策定コンサルタント。災害のみならず感染症、海外危機管理、危機管理広報などの様々な分野を担当する。
永橋 損保会社等にて、防災・リスクマネジメント・危機管理等の実務経験を経て現職。災害のみならずERM(全社的リスクマネジメント)や情報セキュリティ等の幅広い知見を持つ。
小田 BCP担当歴6年目の中堅担当者。BCP策定支援や演習支援、研修などを実施。防災士。
植野 BCP担当歴1年目の若手担当者。前職では保育士として防災教育を実施。現在はBCPについて勉強中。防災士。
田中 BCP担当歴1年目の若手担当者。BCPに加え、災害後のケアにも関心があり目下勉強中。臨床心理士/公認心理師。
笹嶋 BCP担当歴3年目の若手担当者。前職は防災関係の研究機関で広報対応に従事。現在はBCP策定や訓練・演習の支援を実施。座談会の進行を担当します。防災士。

会社からの安否確認を回答する理由

小田: 新社会人に限った話ではないのですが「安否確認を回答しても危ない時に会社は助けに来ないじゃないか。意味があるのか」というご意見を持つ方と話す機会がありまして。安否確認の意味や趣旨を、正確に社員に伝えておいた方が良いのかなと思いました。何か良い言い方はありますでしょうか。
大越: 難しいところですけど、狭義のBCPで言うなら本来、全社員ではなくて本当に必要な人の安否確認だけすればそれで良いんです。海外の企業等では全社員の安否確認をとらないところもあります。だけど日本の場合は、まず全社員の安否確認をしたいというのが主流になっています。という言い方を私はしています。
確かにその時は何も出来ないかもしれないけれど、もしかしたら被災したであるとか、ご家族にケガされた人がいるであるとか、そういった回答があれば会社の方で何かできる事があるかもしれないので、そういう事を含めて安否確認をしています。という言い方をしていますね。永橋さんはどうですか。
永橋: 企業規模で変わる、という事実はあるんですが、とっさに企業に何か出来るかと言われれば何も出来ません。ただ、ケガをしている、避難所に行っている、そうした回答を受けた時に会社が従業員に対して様々な支援をしたい状況が実際にあるんです。その時に確実に支援が出来るような体制をとるためにも安否確認が必要なんですよ、という説明はそれなりの規模の会社にはしています。
小田: ありがとうございます。回答者側も、それを聞いて回答したくなるような理由で個人的にはしっくりきました。

【ポイント】

  • 企業が社員の安否確認をすることによって、ご本人やご家族にケガ人がいる方に対して、何らかの支援をする体制を整えることができます。
  • 安否確認に回答したからといって、その場ですぐに会社が助けに行くことができるわけではありませんが、会社も社員のことを考え、支援したいと考えています。
  • 「回答して何になるんだ」と思わず、安否確認システム等には、自身の安全を確保後、忘れずに回答するようにしましょう。

帰宅困難者対策について

植野: 帰宅困難者対策について私が教わった時には、災害発生時72時間が人命救助に大切な「命のゴールデンタイム」ということもわかったのですが、帰宅しようすると群衆雪崩に巻き込まれてそこで亡くなる可能性があると知って、自分の身を守るために帰らないことが大事なのだなとすごく思いました。以前、韓国の梨泰院で起きた群衆雪崩を思い出します
大越: そうですね。余震と群衆雪崩は本当に注意が必要です。日本で発生した群衆雪崩で有名なのは2001年に発生した明石花火大会歩道橋事故ですね。この事故で11人がお亡くなりになりました。現在ではその教訓からイベントなどでは対策がしっかりなされるようになりましたが、大地震の時には適切に警備員などをつけることができません。大勢の人が停電で信号機も役に立たない状況の中で路上に出てしまったら、同じような事故が発生しかねないでしょう。
小田: 帰宅困難者対策について、分かりやすいので私は時々愛知県の資料(「帰宅困難者対策について」(愛知県))を用いています。二次災害の余震でケガをするという話と、群衆雪崩でケガをするという話と、緊急車両の通行を妨げないという話が含まれています。特に阪神淡路大震災では発災3日後では生存率が劇的に下がりました(「阪神・淡路大震災教訓情報資料集【02】人的被害」(内閣府)によると、救出時の生存率は初日には約75%であったが、3日目には15%程度まで落ちています)。そこがまさに「命のゴールデンタイム」なので3日間は、緊急車両の移動を妨げないためにむやみに移動を開始しない、という話をしています。
ただ、そこを強調して話すと道路が混雑しない地方の都市だと、響かなくなるので、マンホールが液状化で浮き上がっている画像などをお見せしています。車通勤の方については、たとえ人で混雑していなくても災害後の道路は物理的に危ない状態となるため、災害後すぐに帰宅することが困難な点は変わりません。社内にとどまり無理に帰らないようにしましょう、という話をしています。
笹嶋: そうした情報を事前に知っているということは自分の身を守ることにつながると思います。私は地方の出身ですが東日本大震災の時に被災して、実家まで車で帰りました。後で知りましたが地元は震度6強だったので走っている道路にはひびが入っていたり、余震がきたり、大きな道路では時々渋滞が起きていたので一本外れた脇道を走ったりしながら帰りました。
今思えば、内陸なので津波の心配はありませんでしたが、帰宅しているタイミングで大きな余震があってブロック塀が倒れてきたり、道路のひびがひどくなったりして陥没するなど、自分の身が危なくなっていた可能性はあったと思います。知識があれば帰宅しないという選択肢もとれたと思いますが、知識がなかった当時はひとまず「実家に帰る」一択でした。
帰宅困難者対策というのは人のためというのもありますが、自分のためにもなるので、学生でも社会人でも関係なく知っておくのが良いと思っています。
田中: 話を聞いていて思ったのですが、例えば出張先などで上司が近くにいない時があるかもしれません。一人で移動している時に地震が来た場合は、もちろん連絡などはするようにしますが、会社が近くなら会社に戻れば良いのか、駅に向えば良いのか。近くの避難所へ行けば良いのか。わからないと判断に悩んでしまうな、と。参考にすべき情報はありますか。
小田: 例えば、福岡県の帰宅困難者対策ガイドライン(「事業所における帰宅困難者対策ガイドライン」(福岡県)ですと、出退勤時間帯に大規模地震が発生したら、自宅か会社の距離が近い方に身を寄せてくださいという感じですね。2018年に発生した大阪府北部地震などはまさに出勤時間帯に発生しました。
大越: 東京都の外出時の行動マニュアル(地震発生時)ですと、駅などの交通公共機関ではそこの職員の指示に従うというのが大前提です。落下物から身を守るとか自分でやってもらうところはありますけども、JRや地下鉄の職員の指示に従いましょう。JRや地下鉄のBCPで言うと、一度大きな地震が起きると乗客は駅からすべて出して、まずは路線の安全を確認する、という事になっていますのでお客さんについては最寄りの避難所に誘導されると思います。
あとは、地下街だと地震に強いので地下鉄の方が早く復旧すると言われています。ですので地下で地震が起きた時は落ち着いて行動してください。こういう色々なところで地震が発生した場合をBCPに入れるケースも多いのでぜひ覚えておいてください。
田中: ありがとうございます。やはり、身近でないと想像が及ばないところがありますね。

【ポイント】

  • 帰宅困難者対策は、自分の身を守るためにも趣旨を理解しておくのが大事。日頃から地域のホームページ等からガイドラインやマニュアルを確認しておきましょう。

「BCPカフェ」参加者の紹介するおすすめのサイト

笹嶋: 今回のコラムの最後は新社会人の方に、おすすめの防災や災害に関する動画やサイトがあったら紹介いただきたいのですが、何かありますでしょうか。
植野: 社会人生活スタートと共に新生活がスタートされる方もいらっしゃるかと思います。東京都の「東京備蓄ナビ」には自分の備蓄は何を用意したらよいのか具体的な物と数量を見ることのできるのでオススメです。
笹嶋: 早速今やってみたのですが、一人暮らしの一般成人男性が必要な7日間分の備蓄リストがすぐ出てきて印刷もできるので便利ですね。実際に備蓄が必要だとわかっていても、何がどれだけ必要なのかこうして可視化されると少しずつでも揃えよう、という意識が高まるのでありがたいです。東京都民じゃなくとも一度やってみてほしいですね。
大越: 結構前なんですが、当社のBCPコラムで「訓練に使える動画10選」というのを書きましたのでご参考までに。「自分が防災講演をするときに使えるもの」という基準で選んだものです。
笹嶋: ありがとうございます。今は災害や防災の様々な動画がネット上で見れるので、国や自治体など、きちんとした情報ソースの動画を見てほしいですよね。
田中: あとは「推し活防災」というものがあります。「推し活で用意する持ち物が、防災リュックの中身と似ている」「ペンライトが停電の時に役立つかも」といった、普段行っている推し活の延長線上に、実は防災があったという新しい防災の形です。
笹嶋: スポーツやライブで準備する時のリュックの中身が防災リュックとも似ているのでは、という発想は面白いですね。楽しみながら防災に関連するグッズを集められるというのも日常の延長線上で備えができるので素晴らしいと思います。

【ポイント】

  • 防災や災害に関する動画やサイトについては信頼性が様々です。安易に不安を煽るものを見るのではなく、国や自治体などの信頼できるサイトや動画を見ることで正しく恐れましょう。

まとめ

笹嶋: 今回は情報が盛りだくさんで前編・後編となりましたが、新社会人に限らず、一般の方でもタメになる話が多かったのではないでしょうか。田中さん、今回初めての参加でしたがいかがでしたか。
田中: ベテランの方が多くいるため、「何をしゃべったら…」と開始前はややドキドキしていましたが、フランクな雰囲気があり萎縮することがなく話しやすかったです。
笹嶋: それは良かったです、引き続きよろしくお願いします。

【まとめ(ポイントの再掲)】

  • 企業が社員の安否確認をすることによって、ご本人やご家族にケガがいる方に対して、何らかの支援をする体制を整えることができます。
  • 安否確認に回答したからといって、その場ですぐに会社が助けに行くことができるわけではありませんが、会社も社員のことを考え、支援したいと考えています。だからこそ、「回答して何になるんだ」と思わず、安否確認システム等には、自身の安全を確保後、忘れずに回答するようにしましょう。
  • 帰宅困難者対策は、自分の身を守るためにも趣旨を理解しておくのが大事。日頃から地域のホームページ等からガイドラインやマニュアルを確認しておきましょう。
  • 防災や災害に関する動画やサイトについては信頼性が様々です。安易に不安を煽るものを見るのではなく、国や自治体などの信頼できるサイトや動画を見ることで正しく恐れましょう。

※「BCPカフェ」では、エス・ピー・ネットワークのBCP担当者たちに扱ってほしい防災・BCPに関するテーマを随時募集しています。

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