暴排トピックス

テロリスクに備える~バングラテロを教訓に

アバター 取締役副社長 主席研究員 芳賀恒人

2016.07.13
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【もくじ】―――――――――――――――――――――――――

1.テロリスクに備える~バングラテロを教訓に

2.最近のトピックス

1) 暴力団組織の動向

2) ATM不正引き出し事件と特殊詐欺の動向

3) テロリスクの動向

4) タックスヘイブン(租税回避地)を巡る動向

5) 捜査手法の高度化の動向

6) 薬物問題

7) 犯罪インフラを巡る動向

・カード(セキュリティ対策の遅れ)

・加盟店(管理の脆弱性)

・入国審査

・IP携帯

・エフェメラル系SNS

・中継サーバー

・コンビニエンスストア

8) その他のトピックス

・総会屋の状況

・協力雇用主の状況と暴力団離脱者支援

・米国務省の人身売買に関する2016年版報告書

3.最近の暴排条例による勧告事例ほか

1) 三重県の勧告事例

2) 岡山県の勧告事例

3) 暴対法に基づく中止命令の事例(奈良県)

1. テロリスクに備える~バングラテロを教訓に

 バングラデシュの首都ダッカで7月1日夜に起きた飲食店襲撃テロ事件(以下「バングラテロ事件」「本テロ事件」とも表記)では、国際協力機構(JICA)が業務を委託したコンサルタント会社の日本人7人が犠牲となりました。バングラデシュ政府は、2021年までに全国民が中所得国レベルの生活を享受できる社会を実現するため、「経済成長の加速と貧困削減」を目標に掲げています。成長著しい同国のインフラ開発を先導し、経済活動の活性化や貧困からの脱却を後押ししようと、多大な貢献をしてきた彼らでしたが、その志半ばで凶弾に倒れることとなり言葉もありません。心よりご冥福をお祈りしたいと思います。

 さて、このバングラテロ事件については、事件発生に至るまでに様々な兆候があったことが続々と明らかになっています。それだけに、彼らがテロに巻き込まれたことは関係者にとっては正に痛恨の極みと言えるでしょう。今回のテロを今後の教訓とするためにも、「不幸にも」の一言で片付けることなく、テロ発生の予兆をどのように見極め、回避行動はどうあるべきか、具体的にどう対処するべきか等について考えてみたいと思います。

 まず、テロ発生の予兆の見極めについて、今回のテロに関して筆者が情報収集した範囲だけでも、具体的に以下のような情報があります。これらを見る限り、(個別の事情は別として)当時、回避行動に向けた判断に関する十分な分析が可能な状況にあったのではないかとも推測されます。

  • 有志連合による空爆もあり、IS(イスラム過激派組織「イスラム国」を指す)は、支配地域の縮小を余儀なくされており、6月にはイラク軍の攻勢で中部の要衝ファルージャを失うなど、中東での軍事的な劣勢に焦りを募らせている状況にあります。その結果、支配地域外でのテロ攻撃に力点を移し、大規模テロで力を誇示する戦略に転換したように見えます。そして、それに呼応して、ISと直接結びつきがないような支持者がテロを起こす恐れが高まっている状況にあります。
  • 【筆者注】

    ISの攻撃の分散化は、ISの直接の指示の有無に関係ないテロの頻発(本テロ事件もISの直接の関与を示すものは今のところありません)をもたらしており、逆にISを攻撃する側も、ターゲットが分散化・多極化することで決定的な打撃を与えることが困難になりつつあります。したがって、対IS作戦についても、過激主義の根本原因への対処といったソフト・ハード両面からの修正が迫られていると言えるでしょう。

  • バングラデシュでは昨年以降、イスラム原理主義を批判する活動家や外国人が相次いで殺害されており、ISが犯行を認めていたものの、同国政府は、国際的イメージの低下を恐れてか、「国内にISは存在しない」と頑なに主張し続け、対策を怠っていたと言われており、それが今回の同国政府の対応の遅れを招いたのはないかとの指摘が根強くあります。
  • バングラデシュ首相の政治顧問の話として、ネット上のテロ情報を監視するバングラ警察の担当者が、事件発生前に、ツイッター上に「襲撃がある」との警告情報が複数回投稿されたのに気づいていたものの、同国では類似事件の前例がなかったこともあって、監視担当者が事の重大さに気づかず、初動が遅れた可能性があるとのことです。さらに、襲撃犯が狙うなら大使館か主要ホテル・レストランとの思い込みから、今回事件が起きた欧風レストランが狙われるとは全く想定できなかった可能性も指摘されています。
  • JICAは、昨年10月、治安が悪化していると判断し、現地に派遣されていた青年海外協力隊員ら48人のボランティアスタッフを急きょ帰国させていたということです。一方で、事業を継続させる必要があるとして、(今回犠牲となった方々を含む)プロジェクト参加者は帰国させず、「移動する際には必ず車両を利用し、不要な夜間の外出を控えるように」といった要請がなされていたようです。
  • 報道(平成28年7月4日付産経新聞)によれば、最近まで現地にいた商社マンの話として、わずかだがISに影響を受ける人が増え始めており、昨年12月頃から治安悪化の質が変化したと感じていたということです。
  • JICA理事長が、記者会見において、「今年6月がIS設立2周年に当たり、さらにラマダン(断食月)明けは危険ということもあって、注意喚起はしていた」と述べており、当時、特にこの時期が危険な状況であることは関係者の間で認識されていた可能性があります。
  • 同国では、大学生や高校生など20代前後の若者をターゲットに過激派組織が勧誘活動を活発化させており、既に150人以上の若者が行方不明になっていました(中東などで過激派組織に加わっているのではないかとの見方もあります)。そのような状況下の先月、同国政府が、過激派や反体制派の取り締まりを強化し、11,000人以上を逮捕した事件があり、こうした強硬姿勢が反発を生み、今回のテロの引き金となったとの指摘もあります。
  • 【筆者注】

    本テロ事件の実行犯は裕福な20代の若者であり、その過激化の背景には、ホームグロウン・テロリスト同様、社会からの疎外感、閉塞感なども背景になっている可能性があります。それらを未然に防止するためには、ISの戦略変更等も考慮すれば、より幅広いテロ対策が必要となると言えます。例えば、学生がそのような思想に感化されやすいのであれば、「教育」の果たす役割もまた大きいはずであり、以前も指摘した通り、「寛容」や「異文化・異宗教間の対話や理解」「多元的共存」などをキーワードとした、異質なものへの理解を深める教育のあり方などを模索する必要があると考えます。

  • ISは5月下旬、ラマダン中の欧米へのテロを信奉者らに呼び掛ける音声声明を公開しています。多くの国でラマダンが始まった6月6日に米オーランドでの銃乱射テロが発生、以後、約1カ月のラマダン期間中、ISの呼び掛けに呼応するように、世界各地でテロが続発しました。
  • ISは、既に日本人も標的とする旨、機関誌「ダービク」を通じて少なくとも計3回メッセージを発しています。また、これとは別に、海外の情報筋からは、旧植民地のリビアで特殊部隊を展開中とされるイタリアが標的とされたのではないかとの分析もなされています。ISがリビアから地中海経由でイタリアにテロ実行犯を送る代わりに、ダッカ駐在のイタリア人を狙ったとの見方で、同じ標的である日本人はそれに巻き込まれたとするものです。実際、ISのバングラデシュ支部は事件直後の2日に、「イタリア人を含む(対IS有志国連合の)十字軍兵士を殺害した」との声明を発表しています。
  • 報道(平成28年7月4日付毎日新聞)によれば、襲撃された飲食店は、湖に面して高い壁で囲まれており、人質を取って立てこもれば治安部隊は簡単には入れない造りになっていて、武装集団は、外国人が集まり、立てこもりに適したこの場所を選んだ可能性があること、さらには、「恐らく外国人を狙って入念に下見していたはずだ」という捜査関係者の指摘があります。また、襲撃された飲食店の従業員が関与していた(内通者を送り込むという用意周到なテロであった)といった衝撃的な事実も明らかになりつつあります。
  • 最近のISによるテロはソフトターゲットを狙うケースが増えており、世間の注目を集めることが目的だと言われています。一方で、いくら警備を強化しても、テロリストはより手薄な別の場所を狙うのではって、ソフトターゲット対策に有効な決め手がない現実があります。

 ざっと挙げただけでも、以上のような兆候やISを取り巻く緊迫した情勢・背景事情があり、このようなテロを事前に察知することは不可能ではなかったのではないかとさえ思えます。ISがテロを活発化させているラマダン期間中に、ISに敵視されている外国人が集まるレストラン(ソフトターゲット)で夕食を取ることがいかに危険な行為であるかは、今、現地から遠く離れた日本で冷静に状況を分析すれば明らかですが、当事者にとっては、ある程度注意していたこと(例えば、車で移動していたなど)もあって、それ以上の危険はないだろうと盲信するなど、感覚が麻痺していたのかもしれません(あるいは、注意情報等が十分伝わっていなかった可能性も考えられるところであり、万が一、そうであれば、JICAや外務省などの危機管理体制の抜本的な見直しが急務となります)。

 さて、これらの分析を通して、危機管理(テロリスクへの対応)の第一歩は、情報収集とその的確な分析が重要であることを痛感させられます。さらに、本テロ事件で言えば、どうしてもその飲食店で会食する必要があったのか、必要があったのなら夜ではなく昼にする、といった対処をするだけでもリスクを大きくヘッジできた可能性があり、情報収集・分析に加え、適切なテロリスク対策・対処法を事前に知っておくことも極めて重要であると認識させられます。

 なお、バングラデシュ政府は、本テロ事件を受けて、過激派組織に関する動画や写真などをインターネット上に投稿する行為について、厳格に対処する方針を発表しています。違反が発覚すれば、情報通信技術法に基づき、罰せられるということであり、ISなどの過激派組織に関する情報の投稿に加え、FB上で「いいね」を押したり、ツイッターなどのSNSで共有、コメントしたりする行為も「犯罪」として罰則対象になるとされています。この辺りは、FBIとアップル社の間で議論となったスマホロック問題と同様の構図で、テロリスク対策(規制)と表現の自由・思想信条の自由との緊張関係を巡る問題が生じる可能性やIS等のさらなる攻撃を招く可能性があります。

 また、海外に進出している日本企業もまったなしの対応を迫られています。海外進出企業の多くは、現地での活動と安全確保の両立に苦労している実態があり、例えば、一般社団法人日本在外企業協会が2015年に行った調査では、危機管理マニュアルを持つ企業は71%にとどまっており、日本の多くの事業者の海外進出が危機管理対策の面ではまだまだ手探りの状況であることが伺えます。

日本在外企業協会 「海外安全対策に関するアンケート調査」結果(2015年)

 さらに、外務省等から情報提供面でのサポートがあるとはいえ、現時点で、現地従業員の安全確保は企業自身に委ねられているのが実情であり、治安状況によっては、現地の軍隊に警備などを依頼せざるを得ない可能性も否定できませんし、今回のテロで犠牲者を出したコンサルティング会社のように、中小規模の事業者が自助努力として莫大な警備費用等を支払える余裕があるとは考えにくく、安全コストは誰が負担すべきかが今後の大きな課題となりそうです。

 さて、次に、具体的なテロへの対処法について考えてみたいと思います。
 欧米では、「自分の身をどう守るか」という社会教育が進んでいますが、この点について、日本は遅れていると言わざるを得ません。例えば、「飲食店では、非常口を確認した上で入り口が見える奥の席に座り、不審者が侵入してきたらすぐに逃げる」「万が一、銃撃戦に巻き込まれた場合は、なるべく目立った動きはせず、静かに姿勢を低くする」「自爆する前に、『アラーアクバル(神は偉大なり)』と叫んで自爆することが多いため、叫んだ瞬間に伏せる」などのリアルな対処法に関する教育やマニュアルは日本にはほとんどありません。
 海外進出企業の問題だけに限らず、今後、2020年に向けて日本でもテロリスクが格段に高まることが確実な状況であることを鑑みれば、日本においても、全ての国民に向けて、「命を守る」教育やマニュアル等の社会的な理解や周知が必要な状況だと言えます。「日本ではテロは起こらない」「欧米のような銃社会ではないし、宗教的な対立も目立たないからそのような危険に遭遇することはない」といった日本人特有の甘い認識を打破すること、厳しい現実から目を背けるのではなく、近い将来起こり得るテロリスクに正面から向き合うことが、死に直結するテロリスクへの対処として重要なことだと強調しておきたいと思います。

 以下、具体的なテロへの対処法について簡潔にまとめられた資料から、いくつかポイントを紹介してみたいと思います。

1) 外務省 海外安全ホームページ

 まずは、外務省の海外安全ホームページですが、ご存知の通り、国・地域別のリアルタイムの危険情報等が掲載されていますので、常にウォッチしておく必要があります。また、本サイトには、それ以外にも、「海外安全パンフレット・資料」のページなど充実したコンテンツが揃っていますので、是非、参考にしていただきたいと思います。今回のテーマとの関連で言えば、「海外へ進出する日本人・企業のための爆弾テロ対策Q&A」は、コンパクトに爆弾テロへの対処法などがまとめられており、確認していただきたいと思います。

外務省 海外安全ホームページ

外務省 海外へ進出する日本人・企業のための爆弾テロ対策Q&A

 例えば、本資料には、「自爆テロに対してはどう対応したらよいですか?」という問いに対し、以下のようなアドバイスが掲載されています(以下、当該部分を引用)。

 自爆テロの方法は、実行犯がベルト等に巻いた爆発物を隠し持ち実行するもの、爆発物を積んだ自動車や航空機等の乗り物を使用して実行するものに大別できます。いずれの場合もその爆発自体を防ぐことは非常に困難となりますが、被害を最小限に抑えるため、少しでも早く不審人物の以下のような特徴を察知することが重要です。

 なお、乗り物を使用した自爆テロへの備えとしては、前記Q1(筆者注:爆弾テロ対策として、平素からどんなことに心がけておく必要がありますか?)に挙げた対策を徹底させることが最善の方法ですが、 コンクリート製の車止めを設置する等の大がかりな対策も必要となります。

  • 実行犯は腹部や大腿部に爆発物を固定した太いベルトを装着することから、ぎこちない動きをする。
  • 身体に装着した爆発物を隠すため、夏場でも不自然に厚着をしている。
  • 自爆を目前にして、緊張から振るまいが神経質で特異な印象を受けることが多い。また、実行犯は麻薬等薬物を服用している場合もあり、 表情や行動が異常な場合が少なくない。
  • 自爆時に爆発物を作動させる必要があるため、腹部や大腿部をまさぐる格好をとる(ただし、時限式、リモートコントロール式の爆発物の場合はこの限りではない)。

2) テロへの対応全般

(出典:「テロ・誘拐・脅迫 海外リスクの実態と対策」同文館出版)

基本姿勢

  • 事前情報の入手に努める(治安情報のみならず、政治、歴史的・宗教的・人種的背景や問題点など/外務省以外の情報入手ルートの確保など)
  • テロに対する警戒心を高めておく(周囲の不審人物などへの注意、周辺の異変への観察力を養う努力など)
  • 地元民への貢献(現地人の採用、現地物資の活用、現地の学校・子どもへの支援、インフラ向上等、現地の人々の生活・文化への寄与など)

場所・行動別注意点

  • ホテルでの注意点
    ロビーでの長居は避ける/ホテルの部屋は中層階で表通りに面していない場所を選ぶ/避難ルートを確認しておく/ロビーや廊下での不審人物、不審物に気を配る
  • 車で移動中の注意
    交差点などでの停車時には、車間距離をあけ、急な方向転換を可能にしておく/駐車時には車に爆弾を仕掛けられないよう、安全な場所に停める
  • 外出時の注意
    目立たぬ工夫(服装、行動様式など)/緊急時に駆け込める場所(警察、ホテルなど)の位置を熟知しておく/尾行や監視の気配を感じたら関係者と相談、国外退避を含めた対応を実施/無差別テロの対象になりやすい商業施設には長居しない
  • オフィスの選択
    テロのターゲットとなりやすい外国企業ないし政府関連の私設が入居していないことを確認する/念のため、オフィスの窓にはガラスの飛散防止フィルムを貼る

テロに遭遇した場合

  • ただちに現場から可能な限り遠ざかる(二次被害の回避)
  • 地面に伏せる、物陰に飛び込むなどの瞬間の判断と動作を心がける
  • 車で通行中の場合、必要に応じ車から降りて現場を離れる
  • 事務所等に安否の電話を入れる
  • 銃を向けられたり、拉致されたりした場合は、相手を刺激せず、安全第一の冷静な対応を心掛ける(ハイジャックも同様)

3) テロに遭遇した場合の具体的対処法(自爆テロへの対応)

一般社団法人日本防災教育訓練センター テロから命を守る方法!(一部抜粋)

両足をテロリストに向け身を伏せて頭を守る

  • もし、起爆寸前のテロリストに遭遇した場合、または、叫び声、爆音や銃撃を察知した場合、可能であれば、爆破寸前、または、爆発直後は、自爆テロリストに両足を向けた状態で、頭を守って床にうつ伏せになること。立ったまま逃げようとすると爆破によって飛散したものが体に接触する面積が大きくなり、被爆確率が高くなる。

犯人の前面90度に入るな

  • テロリストの前面90度(胸骨を中心として45度ずつ)の角度で爆風が起こり、ねじや釘などが銃弾のように飛散する事例から、犯人の前面90度以内に入るのは極めて危険である。

2次的な爆発に対する注意

  • 爆発後は、2次爆発がないかを予測し、しばらくは様子を見ること。過去の爆破テロの2次爆発の例では、ほぼ同時に近くで爆破するか、または、10分から20分後くらいに同じ施設内で起こっている。

爆破テロ時の避難方法について

  • 空港やショッピングモール、駅構内などでの爆破後は、誘導員の指示を聞きながら、手荷物はその場において、直近の出口から素早く外へ逃げる。まだ、爆発物を持ったテロリストが群衆の中にいるかもしれないため、爆弾を起爆させないように爆破荷物から離れる。

公共施設、大規模施設における爆発テロの予知と対応

  • Action Beat Reaction(行動が犯行を阻止する)。今までに起こった大規模なテロの場合、ほとんどの場合、テログループから事前に数回にわたって、テロの予告が行われていたが、具体的な場所や日時、規模までは予告されないため、守る側はすべての可能性を考慮し、先読みした対応を取っておく必要がある。

4) テロに遭遇した場合の具体的対処法(無差別乱射事件への対応)

リスク対策.com テロから命を守る方法 「RUN.HIDE.FIGHT(逃げる、隠れる、戦う~無差別乱射事件から生き残るためには~)」(一部抜粋)

 米ヒューストン市と米国土安全保障局が制作した資料から、主なポイントを以下に抜粋しています。

逃げる~あなたの周りで乱射事件が起きた時~

  • 脱出ルートがあれば避難
  • 他の人の同意が得られなくても逃げる
  • 持ち物はそのまま置いていく
  • 可能なら他の人の逃げるのを助ける
  • 危険な場所に他の人が入らないように注意する
  • 安全が確保された時点で警察に通報する

隠れる~逃げることができなければ隠れる場所を探す~

  • ドアをロックするか、バリケードをつくる
  • 携帯電話などの音を消す
  • 大きな物の後ろに隠れる
  • 静かにしている
  • 隠れている場所は、「犯人から見えない場所であること」「銃が撃たれても遮蔽できる物がある場所であること」「次の行動がとりやすい場所であること」

戦う~あなたの命が危険に晒された時の最後の手段~

  • 発砲者(犯人)を無力化することに全力を尽くす
  • すべての力を振り絞って行動する
  • 即席の武器を用意する
  • あなたの行動にすべがかかっていると信じる

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2. 最近のトピックス

1) 暴力団組織の動向

山口組分裂抗争を巡る動向

 岡山市の指定暴力団神戸山口組傘下の「池田組」ナンバー2の高木若頭が同市内で射殺された事件で、対立状態にある指定暴力団六代目山口組傘下の「高山組」組員が出頭し、逮捕されています。その後、岡山地検は、殺人と銃刀法違反の罪で同組員を岡山地裁に起訴しましたが、本事件後、懸念されていた大規模な抗争は表面化していない状況が続いています。双方が、「特定抗争指定」を避けるために自重している側面が強いと考えられる一方で、真偽は定かではないものの「和解説」が浮上しているとも言います(現在、高度な情報戦の最中にあり、それぞれ御用媒体を使って様々な情報をリークしています。和解の状況についても、それぞれの立場から情報が流されており、確定的な事実を見極めるのが困難となっています)。

 ただし、「特定抗争指定」されれば極度に活動が制限されるため、ただでさえ厳しいシノギが出来なくなること、たとえ抗争に勝利しても、(もともとは同じ組織同士であり)獲得できる実益はほとんどないこと、若手を中心に不満が限界に近付いていること、などを考えれば、(もちろん条件次第となるものの)和解に向かう可能性はあるのではないかとも思われます。とはいえ、和解の決裂、直接的な衝突だけでなく、引き抜き合戦や情報戦、糾合に向けた駆け引き等まで含めた抗争の激化も引き続き予想されることから、事業者にとってもあらゆる抗争に巻き込まれないよう十分な注意が必要な状況が続きます。

暴力団対策法上の使用者責任を巡る動向

 直近で、暴力団対策法上の使用者責任に関する話題が続きました。
 まず、指定暴力団住吉会系組員らが絡む特殊詐欺グループが、実態のない医療研究会社の社債販売名目などで全国の高齢者ら約170人から計約15億円を詐取したとされる事件で、現金をだまし取られた被害者7人が、住吉会トップの西口総裁らを相手取り、暴力団対策法が規定する使用者責任などに基づいて、総額約2億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こすことが報じられました。特殊詐欺を巡り、暴力団トップの使用者責任を問う訴訟はこれが初めてだということです。
 一方、名古屋市のキャバクラに平成22年、指定暴力団山口組系組員らが放火し店員が死亡した事件で、店があったビル所有会社などが六代目山口組の篠田組長ら3人に使用者責任があるとして、約5,700万円の損害賠償を求めた訴訟について、名古屋地裁で和解が成立しています。なお、この事件では、既に、死亡した男性の遺族に対して同組長らが和解金を支払い、遺族に謝罪することで和解が成立しています(暴排トピックス2015年8月号を参照ください)。

 暴力団組長に対する使用者責任は、平成15年に、最高裁で初めて五代目山口組組長に対し、使用者責任を認め損害賠償を支払うよう命じる判決が下されたのがきっかけで、平成16年に暴力団対策法の3回目の改正で、「指定暴力団の代表者は組員が抗争により他人の生命、身体または財産を侵害した時は、損害を賠償する責任がある」こととなりました。さらに、平成20年には、暴力団対策法の4回目の改正によって、「暴力団員がその暴力団の名称を示すなど威力を利用して資金獲得活動を行い、他人の生命、身体または財産を侵害した時は、その暴力団の代表者が損害を賠償する責任を負う」こととなった経緯があります。暴力団の資金面への直接的な打撃、弱体化の有力な手段として、また、一定の抑止効果も期待できることから、今後も積極的に活用していくべきだといえます。

工藤会を巡る動向

 さて、前回も取り上げましたが、特定危険指定暴力団工藤会系の組幹部が殺人未遂罪に問われた福岡地裁小倉支部の裁判員裁判で、同幹部の知人の男2人が裁判員に声かけをしたとして裁判員法違反(請託、威迫)容疑で逮捕された事件で、福岡地検小倉支部は、会社員と元工藤会系組員の両容疑者を地裁小倉支部に起訴しています。同法違反での起訴は2009年の同法施行後初めてだということです。
 この問題では、声をかけられた2人を含む裁判員4人と補充裁判員1人の計5人が辞任しており(さらに被告側代理人も辞任を申し出たとされています)、正に裁判員裁判制度の根幹を揺るがすような事態に発展しています。また、工藤会の構成員が裁判員を威迫する事態が想定されるとして、この公判を裁判員裁判の対象から除く決定もされています(なお、工藤会関係者が被告となった事件では、これまでも5件が裁判員裁判から除外する決定が出ています)。
 また、本事件を受けて、最高裁は、車の送迎などの方法で裁判員の安全を確保するよう求める事務連絡を全国の高裁・地裁に出しています。裁判員への接触禁止を開廷前に傍聴人に口頭で告知したり、法廷前に掲示したりすること、建物の入り口やトイレを裁判員と一般人で分けるといった対策を盛り込んでいるということです。さらに、報道(平成28年7月6日付毎日新聞)によれば、福岡地裁が開いた裁判員意見交換会では、「後で声をかけられないよう、裁判員の前にマジックミラーを置くなど、傍聴席から顔が分からないようにしてほしい」「接触がないようにしてほしい」「目立たないよう、裁判官と同じ法服を着てもいいのではないか」といった意見が相次いだということであり、明らかに裁判員の公正な判断を阻害する要因となっていることが浮き彫りになっています。司法の場における関係者の安全の確保とともに、その対応の不徹底などから暴力団を利することとならないよう、毅然とした対応を求めたいと思います。

 このほか、工藤会関連の話題では、市民への襲撃事件などで逮捕され、勾留中の最高幹部ら工藤会関係者約20人について、福岡地裁が、本や雑誌など書籍類の差し入れを禁じる決定をしたというものがありました。否認や黙秘を促すような書き込みなどが確認され、実際の供述にも影響が出ていたようです。そもそも組関係者らには接見禁止の措置が取られていますが、書籍類の受け取りまで禁じられるのは異例の措置となります。正に、「最も凶暴」(米財務省)と評される工藤会の恐怖と混乱を招く手法には驚かされますが、司法の場における暴排として、(前例のない脅しへの対応も予想される中)今後も適切かつ毅然とした対応を望みたいと思います。

指定暴力団の再指定

 東京都公安委員会は、暴力団対策法に基づき、住吉会と稲川会を指定暴力団に再指定し、官報に公示しています。指定の期間は6月23日から3年間で、1992年の初指定以来、9回目となります。昨年12月末時点の暴力団の構成員と準構成員の合計は住吉会が7,300人で、国内最大の六代目山口組に次いで2番目の規模となるほか、稲川会は4番目に多い5,800人の規模となります。
 また、同様に、広島県・京都府・山口県・鹿児島県の各公安委員会が、共政会、会津小鉄会、合田一家、小桜一家をそれぞれ指定暴力団として再指定することを確認、今後、官報に公示することになります。いずれも9回目の指定で、指定期間は7月27日から3年間となります。なお、今年4月時点の構成員数は、共政会約180人、会津小鉄会約130人、合田一家約100人、小桜一家約70人となっています。

2) ATM不正引き出し事件と特殊詐欺の動向

ATM不正引き出し事件の動向

 ICカード対応の遅れなどATMの脆弱性が突かれ、18億円以上が引き出された事件は、当初の見立て通り、背後に暴力団の影が見え隠れしています。被害に遭った福岡県内のコンビニ付近の防犯カメラに山口組系暴力団関係者の車が映っていたことが判明、「出し子」から現金を回収していたものと考えられます。そもそも、国内において、これだけの組織性と人の手配、(実績に裏打ちされた)遂行能力の高さを有している犯罪組織は、暴力団と特殊詐欺集団(半グレ等)しかないと言えますし、実際に、逮捕された容疑者の中に、特殊詐欺グループの一員も含まれていることが、その供述や押収したメモの存在などから明らかになっています。つまり、犯罪の実行段階において、暴力団と特殊詐欺集団が連携していたということになります。
 さらに、問題となったクレジットカード発行元である南アフリカのスタンダード銀行では、引き出しが始まる直前に、同行のシステムが不正アクセスを受け、プログラムが誤作動(現金の引き出しを承認した記録が確認されていない)ことも明らかとなりました。高度なハッキング技術を持つ海外の犯罪組織が、引き出しを承認させた後に痕跡を消したか、承認を経ずに引き出したと考えられています。このことからも、海外の犯罪組織のサイバー攻撃と日本の暴力団および特殊詐欺集団による一斉不正引き出しという、犯罪組織同士の緊密な連携のもとに行われた犯罪であると考えるのが自然だと思われます。

 なお、この事件の前触れとして、例えば、およそ3年前、日本を含む26か国でATMから総額約4,500万ドル(約46億円)が不正に引き出された事件がありました。その手口は、今回のATM不正事件と共通点が多く、先般、窃盗などの容疑で警視庁に国際手配されていたルーマニア国籍の男3人が同国当局に逮捕されたことから、その関連性に注目が集まっています。また、昨年末にも関東近郊で偽造クレジットカードを使った一斉不正引き出し事件が発生しています(被害金額は約1億円で、南米の金融機関の発行したクレジットカードだったということです)。結果論とはなりますが、これらの兆候(ミドルクライシス)を社会に広く認知させることで、IC対応化や引き出し限度額の引き下げ、不正検知システムの強化などの対応が前倒しで行われ(ミドルクライシス・マネジメント)ていれば、今回の事件の被害を阻止あるいは低減させることができたかもしれません。

 また、引き出された18億円を超える大量の現金が、国内外でどのように運ばれ、どのように洗浄されたのか、マネー・ローンダリング手法の速やかな分析も喫緊の課題となります。
 前回の本コラム(暴排トピックス2016年6月号)でも紹介した「プライベートジェット機を利用した金の密輸」と同様、本事件においても、現金を輸送してどこか海外の金融機関の口座に入れるというプロセスを経ることが予想されます。参考までに、マネー・ローンダリングには、一般的に「プレースメント」「レイヤリング」「インテグレーション」という3つの段階があります。「プレースメント」とは、犯罪によって得られた資金を既存の金融資金に取り込む段階のことで、汚れた資金を小口の銀行口座に振り分ける作業などが代表的ですが、本事件においても、持ち込んだ大量の現金(犯罪収益)を(海外の)金融機関に取り込むことがそれに該当し、「プレースメント」ができれば、後は様々なノウハウを駆使して、「レイヤリング」(資金の出所を判らなくする)、「インテグレーション」(再統合して合法的な資金であるかのように偽装する)というプロセスを経て、マネー・ローンダリングが完了することになります。

特殊詐欺の動向

 警察庁が発表した平成28年1月~5月の特殊詐欺全体の認知件数は5,264件(前年同期 5,833件 ▲9.8%)、被害総額は159.3億(前年同期 190.5億円 ▲16.4%)となり、昨年から続く減少傾向の延長線上にあります。オレオレ詐欺全体についても、認知件数は2,235件(同2,538件 ▲11.9%)、被害総額は62.2億円(同72.0億円 ▲13.6%)、架空請求詐欺の認知件数は1,349件(同1,616件 ▲16.5%)、被害総額は63.1億円(同68.1億円 ▲7.3%)など、全体的には同様の減少傾向を示しています。

警察庁 平成28年5月の特殊詐欺認知・検挙状況等について

 また、最近の手口としては、「有料サイトの未納料金を払え」などと突然電話し、支払い番号を伝えてコンビニの情報端末などで決済させる架空請求が広がっており、国民生活センターが注意を呼びかけています。

国民生活センター 速報!コンビニ払いを指示する架空請求にご注意!-詐欺業者から支払番号を伝えられていませんか?-

 それによると、架空請求全般に関する相談(今回のコンビニ収納代行に限らず、全ての支払手段を含む)は、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に2011年度以降、261,677件寄せられており、2014年度から急激に増加していることが分かります。これまでの架空請求の支払手段としては、クレジットカードや銀行振込のほか、消費者に購入させたプリペイドカードの番号を業者に伝えさせる事例(いわゆる「プリカ詐欺」)が主流でしたが、最近では、詐欺業者が消費者に「支払番号」を伝え、コンビニの店頭でその番号を使って料金を支払わせる(口座振り込みなどに比べて痕跡が残りにくい)というコンビニ払い(コンビニ収納代行)の仕組みが悪用され始めているというもので、今後、詐欺業者が同様の手口を使って被害が拡大することが懸念されています。

 さらに、このような新たな手口に注意が必要である一方で、そもそもの被害者の意識レベルにも問題があることが、山梨県警が実施したアンケート調査(平成28年1月~5月に電話詐欺の被害に遭った31人に対する調査)の結果から明らかになっています。

山梨県警察 電話詐欺被害に遭わないための対策!! 電話詐欺被害者アンケート結果

 本調査によれば、被害者のうち94%の人が電話詐欺を知っており、97%の人が、「私は被害に遭わない自信があった」と回答しているものの、犯人からの電話に、詐欺の可能性を考えた人は19%しかなく、81%の人は、詐欺の可能性に全く気がつかないまま被害に遭ったという、極めて憂慮すべき状況となっています。
 この調査結果を受けて、同県警は、以下のような注意喚起をしています。前述の警察庁の資料からも、特殊詐欺の被害者の6割以上が60歳以上の高齢者であり、事業者にとっては、従業員の家族(特に、両親や祖父母等)が巻き込まれる可能性が高い(その結果、従業員にも大きなダメージとなる)ということでもあり、あらためて社内で周知してもよいものと思われます。

  • アポ電(予兆電話)は、高齢者宅の自宅の固定電話にかかってくるものが多いという特徴があるが、最近では、電話詐欺の犯人グループが、電話番号を表示させない「非通知」でアポ電をかけてくるものが多く確認されている
  • また、詐欺グループがインターネット電話(IP電話)を使い「03」や「0120」などではじまる電話番号を表示させる方法で電話をかけてきたり、「070」「080」など携帯電話からかけてきている
  • 被害に遭わないためにも、以下の行動が重要
  • 電話に出る前に相手の電話番号を確認する
  • 知らない電話番号や不審な番号なら電話に出ない又は詐欺を疑いながら警戒心を持つ
  • お金の話が出たら詐欺を疑い、家族や警察に相談を
  • 不審な電話は、切ったその手で110番
3) テロリスクの動向

 報道(平成28年6月17日付ロイター通信)によれば、2014年以来、米司法省が起訴したIS関連の事件約90件を分析したところ、起訴された者の4分の3は、2人から10人以上の共犯者で構成される集団に属しており、直接顔を合わせて犯行計画を練っていたということです。さらに、直接の会合が行われていない事件でも、被告はほぼ必ず、ショートメッセージや電子メール、交流サイトなどを介して他のISシンパと接触していたということも判明しています。

 これらの結果から、完全な単独犯行は極めて少数派であるということになりますが、この事実は、ローンウルフ(一匹狼)型テロリストの概念を大きく覆すものではないでしょうか。同時に、ローンウルフ型だからといって、周囲からは全くその様子や犯行の端緒をうかがい知ることができないのではなく、何らかのリアルな交友関係が「見える」ことによって、その端緒を親やコミュニティなどが事前に掴める可能性があることを示してもいます。ただし、直接的な交流によって逆に過激主義的な傾向をさらに深める結果となったり、そもそもあまり関心のなかった人が引き込まれてしまう可能性を秘めている点にも注意が必要です。先にも指摘したように、バングラテロ事件の実行犯は裕福な20代の若者であり、その過激化の背景として、社会からの疎外感、閉塞感などが考えられますが、「学校」というコミュニティがその温床となっている点も、「孤独」と「交流」の観点から着目する必要があると思われます。

 さて、以前の本コラム(暴排トピックス2016年5月号)で「事業者とテロリスク」について考察した際に、テロリスクの多様性への注意と、犯罪収益移転防止法上の特定事業者だけでなく、全ての事業者にとってCTF(テロ資金供与対策)の観点からの取組みが重要であることを指摘しました。

 そのような中、報道(平成28年6月21日付時事通信)によれば、フランス紙ルモンドが、セメント世界最大手の仏ラファージュ社がシリアの工場を操業するため、ISと石油購入などの取引を行っていたと報じています。仲介者を通じてISが精製した石油を購入したほか、石油や従業員の通行に対する「税金」をISに支払っており、会社の上層部も認識していたとのことで、同社が支払った資金がISの活動を助長していたと見なされかねない状況となっています。マネー・ローンダリングやテロ資金供与の資金の流れにおいては、これまで、事業者が「知らない間に巻き込まれるリスク」を指摘してきましたが、報道内容が事実であれば、本事例は「組織ぐるみ」で自ら進んでテロを助長したものと見なされ、国際的な批判は免れることはできないと思われます。自らの事業の継続を優先するあまり、多くの人命や貴重な文化遺産等を危険に晒すことはあってはならず、日本の事業者にとっても、反社会的勢力への利益供与などとの類似性も念頭に置きながら、他山の石とすべき事例だと思われます。

 また、少し異色な形でテロリスクに事業者が巻き込まれた事例もありました。ISを名乗る組織が、4,000人以上の名前が書かれたリストを公開し、支持者らに対して殺害するよう呼びかけたという事案がありました。そのリストには、少なくとも69人の日本人とみられる名前があったのですが、後に、このリストが、1999年のLinkedIn 情報漏えい事案のリストとほぼ同一ということが判明しています。あくまで、ISの力を誇示することが狙いで、リストに載った人を本当に殺害する可能性は低いものと推察されますが、役員の名前がリストに掲載された事業者などは、情報の信ぴょう性をどう評価すべきか、どこまで警備を強化すべきかなど、対応に苦慮されたものと思われます。

4) タックスヘイブン(租税回避地)を巡る動向

 国際的な税制のルールを話し合うOECDの租税委員会は、パナマ文書ショックを契機として喫緊の課題となった、課税逃れ対策に非協力的な国・地域を特定するための基準を決め、ブラックリストを作成することや多国籍企業の租税回避防止ルールの策定に着手することになりました。今回の合意をふまえ、日本を含むOECD加盟国は、ブラックリスト入りした国・地域に経済制裁を行うことも検討、銀行口座などの情報を他国に開示しようとしないタックスヘイブンへ圧力を強めることとなります。
 ただ一方で、取組みの実効性を高めるには、枠組み自体に拘束力がない状況から、タックスヘイブン側の協力が不可欠であるところ、制裁を厳格に運用すれば、逆に十分な協力が得られない可能性もあり、骨抜きにされる可能性も残っています。さらに、タックスヘイブンによって一部の富裕層や多国籍企業(その本質は「無国籍企業」)がその恩恵を享受する一方で、本来納められるはずだった税金で福利厚生を受ける機会を失った層との「格差」が拡大し、それが現在の反グローバリスム等の社会不安の拡大の遠因となっているとの指摘も説得力があります。
 いずれにせよ、もともと現代の国際金融取引において、租税負担の軽減を目的として、多くの資金がタックスヘイブンを経由して動いている実態があり、もはや、タックスヘイブンは企業の競争力維持のために必要不可欠な存在と考えられている以上、過度な規制は経済的な活力を削ぐ方向に作用すること、「格差」の拡大が政治不安や経済不安をもたらす可能性があることなどにも配慮し、それらのバランスをどのように取っていくか、各国・地域が自らの置かれている立場を超え、租税回避行為の適性化に向けて、いよいよ本気度が試される段階になったと言えます。

OECD東京センター BEPSに対処するための新たな包摂的枠組の第一回会合とともに、国際課税の協力は新たな時代を迎えた

 参考までに、本リリース文には、以下のような方向性が示されています。

  • BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトにより、各国政府は、企業の利益を消失させ、または人為的に企業の経済活動がほぼ、あるいは全く存在しない低・無課税地域へと移動させることを可能にする既存の国際ルールの隙間を埋めるための解決策を得ることとなる。
  • BEPSによる各国の逸失歳入は保守的に見積もっても毎年1,000−2,400億米ドル、あるいは世界全体の法人税収の4−10%に上り、途上国が法人税収に大きく頼っていることに鑑みれば、BEPSがこれらの国々に与える悪影響は特に大きい。
  • 36の新たな国・地域がBEPS包摂的枠組みに正式に参加し、BEPSパッケージを実施することにコミット。最終的には100カ国を超える国・地域が、BEPS包摂的枠組みに参加する可能性が高い。
  • BEPSの技術的事項に関する基準策定作業に着手した。参加国は、BEPSパッケージへのコミットメントの一貫したグローバルな実施を支援するための実践的ガイダンスの策定を始めた。包摂的枠組みは特に、BEPSプロジェクトの4つのミニマムスタンダードである「有害税制」「租税条約の濫用」「国別報告書」「紛争解決メカニズム」の実施確保に焦点を当てる。

 なお、このOECD・G20会合が開かれているタイミングで、スペインの捜査当局が、大規模な租税回避で批判を浴びている米グーグル社のマドリード支社を脱税の疑いで家宅捜索しています。グーグル社は、スペイン国内での収益の一部を当局に申告していなかった疑いが持たれているということです。さらに、直近では、米フェイスブック社が、オンライン上で事業を展開するために必要な無形資産を2010年にアイルランドの現地法人に移転した際、納税額を少なくするためにアイルランドに移した資産を過小評価した疑いで、IRS(米内国歳入庁)が調査していることが判明しています。

 また、パナマ文書ショックとの直接的な関係は不明ですが、米連邦準備理事会(FRB)議長が、下院金融委員会で行なった証言で、ニューヨーク連銀が国際銀行間金融通信協会(SWIFT)の監視強化を検討する可能性があることを明らかにしています。SWIFTは加盟金融機関同士の通信を仲介する組織で、日本と海外の銀行間送金をはじめ国際取引のほとんどがSWIFTシステムを使用していますが、実は、このSWIFTのデータベースには、その機能上、世界中の金融取引が記録されていることから、租税回避をはじめ、マネー・ローンダリングやテロ資金、脱税、贈収賄、麻薬取引といった様々な犯罪が記録されていると考えられます。現に、これまでも様々な事件の解明に役立ったとされ、山口組五菱会事件のマネー・ローンダリング事件においても、スイスの銀行にその犯罪収益が流れ込んでいることがSWIFTのデータから判明したと言われています。FRBが監視を強化することは、いわば、世界中の国際犯罪を監視することにもつながる重要な取組みであるとも言えますが、当該事実を巡る報道が極めて小さな取扱いであることとあわせ、米の真意がどこにあるのか等、見極めていく必要があるものと思います。

 そして、繰り返しになりますが、タックスヘイブンを巡る問題の本質は、あくまでマネー・ローンダリングやテロ資金供与をはじめとする犯罪収益の隠匿や犯罪を助長している点にあります。本来明らかにされるべきリスト(情報)は、こうした不透明かつ問題ある資金の流れであり、それが明るみに出ることによって、ISなどのテロリストや国際安全保障の脅威となる北朝鮮等、日本の暴力団等の反社会的勢力などの資金を断つことにつながる(犯罪を抑止できる可能性がある)という点からもっと取組みが強化されるべきだと言えます。

5) 捜査手法の高度化の動向

 前回の本コラム(暴排トピックス2016年6月号)でも紹介した通り、「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」が成立し、取り調べの可視化や司法取引の導入、通信傍受の適用範囲拡大などの捜査手法の高度化が大きく進むこととなりました。

 その一方で、裁判所の令状なしに捜査対象者の車に衛星利用測位システム(GPS)を取り付けた捜査の違法性が問われた窃盗事件の控訴審判決が名古屋高裁であり、令状を取らなかった愛知県警の捜査を違法と判断しています。GPS捜査の違法性を明確に指摘したのは高裁では初となります(大阪高裁の今年3月の判決および1月の大阪地裁の判決も違法性を否定していますが、3月の別の大阪地裁判決では違法性を認めたほか、水戸地裁や名古屋地裁でも違法性を認める判決が出ており、判断がかなり割れた状況となっています)。なお、報道によれば、裁判長が「GPSを利用した捜査全般に新たな立法的措置も検討されるべきだ」と指摘したということであり、今後の流れを注視したいと思います。

 さて、関連して、前回の本コラムでも紹介した「刑法等の一部を改正する法律」の施行により、刑の「一部執行猶予制度」が6月にスタートしたことに伴い、暴力団員に対する取扱いについての通達が出ています。

警察庁(組織犯罪対策企画課) 刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部改正について

 ポイントだけご紹介すれば、暴力団対策法第8章(罰則)に規定する罪に当たる違法な行為を行った者であることを前提に、犯罪経歴保有者に当たる者の類型のうち、「禁錮以上の刑の執行猶予の言渡しを受け、当該執行猶予の期間を経過した者」「当該言渡しに係る罪について大赦又は特赦を受けた者」について、(同制度が施行されたにも関わらず)暴力団対策法は、暴力団が総体として犯罪者集団であることを客観的に疎明するものとして犯罪経歴保有者に係る要件を設け、さらに、過去に犯した犯罪から一定の期間犯罪を犯していないことをもって更生したとみなし得るとの前提に立ち犯罪経歴保有期間を設定していることから、上記の者であっても過去に犯罪を犯したという事実が存する以上、犯罪経歴保有者に含めること、刑の一部の執行猶予の言渡しを受けた者については、「禁錮以上の刑に処せられた者」の対象となること(つまり、刑の「一部執行猶予」を受けた者であっても、指定暴力団の要件等に必要な犯罪経歴保有者に含める運用となるということ)、という整理がなされています。

6) 薬物問題

 大阪大学の研究グループが、大麻(マリファナ)や危険ドラッグの有効成分が脳内の神経回路の正常な発達を妨げることを、マウスを使った実験で突き止めたとの報道がありました。マリファナは、(主に医療用としての利用や犯罪組織の資金源に打撃を与える目的で)一部の国で合法とされていますが、幼少期の脳に悪影響を及ぼすことが実証されたことで、その目的や合法化の是非が問われる状況になっています。
 ただし、一方では、多くの研究によって、マリファナの毒性はタバコよりも少なく、依存性はアルコールよりも低いことが判明している状況でもあり、多くの国々で医療用としての活用や取り締まりの対象外とするなどの対応も取られているのも事実です。また、米マイクロソフト社は米ITベンチャーのカインド・ファイナンシャル社と共同で、嗜好用や医療用のマリファナの合法的な取引を支援する事業に乗り出すことを発表しています。米ではマリファナの使用を解禁する動きが広がっているとはいえ、マリファナの評価が定まらない段階で、大企業が取引に協力するのは珍しいと言えます。

 このあたりは、日米のマリファナに対する評価の違いが顕著に表れているように思われますが、マリファナと似たような立ち位置のもののひとつに、医療用麻薬である「オキシドコン」があります。トヨタ自動車初の女性常務役員に抜擢された米国人女性が、この薬を「密輸」したとして麻薬取締法違反で逮捕された事件は記憶に新しいところです。日本では登録された医師によるかなり厳格な管理下に置かれる薬物である一方で、米国では医療用麻薬として比較的気軽に使われているものですが、一方で、米国内ではヘロインなどのように乱用されている現実もあり、過剰摂取や乱用、依存症が深刻な社会問題として認識されています。

 ただ、日本では、現時点では、マリファナは(薬物依存症問題や暴力団の資金源化の懸念などを背景に)覚せい剤などにつながる「ゲートウェイドラッグ」としての位置付けがなされた違法薬物となっていますし、オキシドコンもまた一般的に処方されることが少ない、制限された薬物であることに変わりはありません。しかし、米国が痛みに苦しむ人々のために法制度や医療制度の面から、あるいは犯罪抑止の観点から挑戦し続けていると評価するならば、日本でも今後どのように対応していくべきかを真摯に検討していくべき状況なのかもしれません。

 なお、薬物問題について、国連薬物犯罪事務所(UNDOC)が、2016年版の世界薬物報告書を公表していますので、概略を紹介しておきます。

UNODC ; 2016 World Drug Report

 報告書によれば、2014年に世界の15~64歳のうち、約2億4,700万人が麻薬を使用したと推測されています。そして、麻薬使用者のうち、2,900万人以上が麻薬を原因とする疾患に悩まされているほか、同年の麻薬関連死は約207,400人と推定されるということです。また、北米や中欧、西欧の数カ国ではヘロイン使用と過剰摂取による死亡が過去2年で急増しており、同年には、米国で12歳以上の約914,000人がヘロインを使用している実態があり、関連死も2000年の5倍に達したというショッキングな内容となっています。

 一方、日本においても、警察当局による近年の押収量は平成25年の831.9キロ(末端価格約582億円)をピークに減少傾向(平成27年は429.7キロ)にあるものの、グラムあたりの末端価格は数年にわたり約7万円と変化がない状況(情報によっては、3~5万円であるとも言われています)が続いており、国内の覚せい剤の流通量が供給過多になり買い手市場になっていると推測されます。芸能人やスポーツ選手の薬物問題の報道が相次ぐ中、一般人も簡単に入手できる状況になっていること、その結果、近い将来、薬物問題の低年齢化や依存症や関連死の急増といった、UNDOC報告書にある米の現状に近付いていくことも予想され、極めて憂慮すべき状況だと言えます。

7) 犯罪インフラを巡る動向

カード(セキュリティ対策の遅れ)

 日本クレジット協会が、最新のクレジットカード不正使用被害状況を公表しています。

日本クレジット協会 クレジットカード不正使用被害の集計結果について

 同集計結果によれば、平成28年第1四半期(1月~3月分)の不正使用被害額は37億円となり、前期比で39.6%も増加したことが分かりました。被害額については、2014年に約114億円と100億円を突破したのに続き、15年には120億円と急激に増加しており、その傾向が続いている状況です。不正使用被害額に占める偽造被害額は、9億円で前年比80.0%の増加、番号盗用被害額は、22.6億円で51.7%の増加となっている点特も特徴的です。メールなどで偽サイトに誘導し、カード番号や暗証番号を入力させて情報を盗み取る「フィッシング」の被害にあい、インターネット経由で不正利用されたり、偽造カードを使われたりする被害が増えていると言います。

 同様の傾向については、金融庁の集計結果からもうかがえ、2015年度の偽造キャッシュカードによる被害件数は339件で前年度比13%増加し、3年ぶりに増加に転じたほか、インターネットバンキング経由の預金不正引き出し被害も7%増の1,509件となり、ともに増加しています。

金融庁 偽造キャッシュカード等による被害発生等の状況について

 クレジットカードのIC化が遅れている一方、金融機関はキャッシュカードのIC化を進めて被害件数は減少傾向にあったものの、前述のATM事件のように、カードの脆弱性などが突かれた事例や、インターネットにおける個人や事業主のID/PW管理をはじめとするセキュリティ対策全般の脆弱性を犯罪組織が突破することによって、被害の広域化・大規模化を招いている実態があります。
 なお、最近のカード不正利用の例として、中国にいる指示役のもと、不正に入手した日本人名義のクレジットカード情報を悪用し、インターネットの店舗から商品をだまし取り、自宅に届いた800点以上の商品を中国に送り、手数料を稼いでいたとして中国籍の女3人が逮捕された事例がありました。この犯行の背後には、犯罪組織が、複数のサービスの会員情報約140万件分についてID/PWを入手し、それを基に、某サイトに対して140万回の不正アクセスを試みる「リスト型攻撃」(この攻撃が有効である理由として、同一人物が複数のサイトで同じID/PWを使い回している実態があります)によって、某サイトでの会員情報4万件の入手に成功していたという事情があり、それがこのような事案につながったということです。サイト上の脆弱性、個人や事業者のID/PW使い回しの実態が、このような犯罪を可能にしており、それが単発ではなく、広域かつ大規模に実行されている点に注意が必要です。

加盟店(管理の脆弱性)

 楽天が、ネット通販モール「楽天市場」への優良出店者を優遇する措置を導入すると報道されています。注文を受けた後でキャンセルする回数が少ない、顧客とのトラブルが少ないなどを評価とする一方、悪質出店者への厳格な対応も打ち出しています。違反点数制度を適用し、「連絡がつかない」など軽微な違反、「消費期限切れ食品の販売」など深刻な違反、「麻薬・覚醒剤の販売」など重大な違反など5段階に分類、最大300万円の罰金や契約解除などの制裁を課す内容ということです。この背景には、加盟店によるトラブルが後を絶たないほか、一部の加盟店が犯罪に悪用されている(犯罪インフラ化している)実態があります。

 一方で、クレジット業界における悪質加盟店対策も本格化しています。悪質なカード加盟店の問題については、本コラムでも過去(暴排トピックス2013年10月号を参照ください)、犯罪を助長する危険性があるとして、以下の通り指摘しています。

  • (みずほ問題に絡み信販会社における審査の甘さが犯罪を助長しているだけなく、)クレジットカードを利用した詐欺的手法を許してしまっている「加盟店」あるいは「決済代行会社(包括加盟店)」の健全性をどう担保していくかが大きな問題。
  • 例えば、クレジットカード会社は出会い系サイト等との加盟店契約を締結しないルールになっているが、現実にはカードが利用可能。この背景には、「海外の決済代行会社」が、緩い加盟店管理のもと、それらと加盟店契約を締結、カードの利用を認めている現実があり、さらにクレジットカード会社がそれを黙認している状況があり、それらの脆弱性を「犯罪インフラ」として反社会的勢力が利用している現実がある。

 現状、クレジット業界では、業界共通の反社データベースを活用したカードホルダーのチェックはかなり徹底されている状況にありますが、経済産業省に対する内閣府消費者委員会からの建疑「クレジットカード取引に関する消費者問題についての建議」(平成26年8月)をふまえ、加盟店の健全性にかかる審査の厳格化については、これから本格化する段階にあります。最近の状況としては、産業構造審議会の割賦販売小委員会の報告書「クレジットカード取引システムの健全な発展を通じた消費者利益の向上に向けて(追補版)」で方向性が取り上げられています。

割賦販売小委員会 報告書~クレジットカード取引システムの健全な発展を通じた消費者利益の向上に向けて~<追補版>

産業構造審議会割賦販売小委員会の 報告書(追補版)について

 決済代行業者の中には、「営業」優先で「加盟店管理」が不十分な者も現われており、その上、ボーダーレス化も進む中、悪質加盟店が審査の甘い海外の加盟店契約会社に流れる傾向にあります。こうした状況に対処するため、昨年7月に、加盟店契約会社の登録制や加盟店管理の義務付け等を提言する報告書が公表されましたが、本資料では、割賦販売法改正に向けた今後の方向性(案)が示されており、その骨格は以下の通りです。

(1) 事業者の登録

  • 「加盟店契約会社」の登録制を導入(外国事業者の場合は、国内拠点の設置を要件化)
  • 「決済代行会社」は任意登録制(加盟店契約会社と同様、加盟店調査ができる体制整備を登録要件に)
  • 登録を受けた「決済代行会社」は、「加盟店契約会社」に代わり、法律に基づく加盟店管理を代行することを可能とする

(2) 事業者に対する行為規制

  • 「加盟店契約会社」及び「登録を受けた決済代行会社」に対し、加盟店調査を義務づけ
  • 加盟店契約時における基礎的事項の確認(代表者、商材、販売方法等)
  • 契約締結後における、悪質加盟店排除のためのモニタリング
  • 加盟店調査の結果に応じた適切な対応(不正を行う加盟店への是正指導や契約の解消)
  • 加盟店等に対し、セキュリティ対策を義務づけ(リスクベース、性能規定)
  • 加盟店や決済代行会社等、カード情報を保有する全ての事業者に情報漏えい対策を義務付け
  • 加盟店に対し、不正使用対策(対面は偽造カード、非対面はなりすまし防止)を義務付け

(3) 行政による監督、処分等

  • 報告徴収、立入検査(セキュリティ対策については勧告や公表制度も検討)
  • 行為規制に違反した者に対する、改善命令や登録の取消し
  • 改善命令に従わない者に対する罰則

 これを見ると、反社チェックにおける「入口・中間管理・出口」の3つのプロセスに、加盟店調査における「加盟店契約時の確認」「契約締結後のモニタリング」「調査結果に応じた適切な対応」の3つの項目がきちんと呼応している点が注目されます。さらには、加盟店等に対するセキュリティ対策においては、リスクベース・アプローチが採用されている点にも注目していただきたいと思います(報告書においては、リスクベース・アプローチについて、「特定の調査項目を法令上列挙してこれについての調査のみを求めるという考え方よりは、各アクワイアラー等が自社の営業実態やノウハウに応じ、初期審査と途上審査を柔軟に組み合わせた調査体制を整備できるよう、双方を総合して一定水準を確保することを許容する」との表現がなされています)。

 加盟店の健全性については、加盟店契約時に実施される入口の審査においては問題がないとされても、その後、業種や取扱商品、実質的な支配者などが大きく変わったり、不審な売上や(本来は認められていない)公序良俗に反する商品の取扱いを始めるといったことが問題となっています。それはまた、反社会的勢力が、加盟店審査の甘さを「犯罪インフラ」として悪用していることにもつながっており、楽天の新たな試みや上記報告書が求めているように、健全性に関する事後チェック・モニタリングなどの一刻も早い導入・制度化とその徹底が求められます。

入国審査

 本コラムでは、たびたびテロリストや犯罪者の入国を水際で阻止すべき入国審査の脆弱性について指摘してきました(例えば、「偽装難民」が押し寄せて審査業務がパンクしているとの状況や、偽造旅券を見抜けなかった事例など)。最近は、特に欧米で、海外で養成されたテロリストが帰国して、その後実行犯となるケースが相次ぎ、入国審査の精度をいかに高めるかが喫緊の課題となっている中、米国土安全保障省は、外国からの旅行者が「ビザ免除プログラム」を申請する際、SNSの情報について今後申告を求める方針であるとの報道がありました。ISらがSNSを有効に活用して発信力を高めているのに対抗し、悪質な活動と関係がないか確認するためのものと思われますが、書き込み内容などが審査される可能性もあり、スマホロック解除問題と同様、テロリスク対策としての規制強化と表現の自由との緊張関係を生じかねず、(当面は任意であるものの)今後の曲折も予想されます。

 ただし、SNS上の本人と目の前の本人が同一かどうかの本人確認の精度がある程度信頼できるレベルにあることが大前提ではあるものの、入国審査の精度を上げるための一つの有効な対策であることも間違いないと思われます。

 重要なことは、このように「知恵を絞る」「出来る限りの対策を講じる」ということであり、犯罪者が自由に出入国できない物理的・精神的・手続き的な壁を、コツコツと高く積み上げていく地道な取組みを継続すべきだと指摘しておきたいと思います。

IP携帯

 インターネットに接続して通話する携帯電話「IPモバイル」を、本人確認をしないまま客に貸与したとして携帯電話不正利用防止法違反などの罪に問われたレンタル携帯電話会社の代表に執行猶予付きの有罪判決を言い渡しています。刑事裁判でIPモバイルを携帯電話不正利用防止法の規制対象とした判断は初めてだということです。報道によれば、判決では、「特殊詐欺は多発しており、携帯電話貸与時の本人不確認もこうした犯罪を助長している」と指摘、IPモバイルは同法が規制対象とする「無線での音声通信」に該当しないとして、「抜け穴」的に本人確認義務を行わないまま貸し出されるケースが相次ぎ、犯罪インフラ化している状況だっただけに、大変意義のある、また、タイミング的にも良い判決だったのではないかと思われます。今後の当局の取り締まりの強化を期待したいと思います。

エフェメラル系SNS

 スマホなどで受信した文章や画像が閲覧の数秒後に消える新たなSNSである「エフェメラル系SNS」が、密かに流行しているということです。代表的なサービスとしては「Snapchat」「Wickr Me」「Beetalk」「TonTon」の4つのメッセージアプリがあるとされ、例えば、「Snapchat」は、消えるまでの時間を最大で10秒までに設定でき、その時間が経過した後は、ユーザーの端末(Snapchatアプリ)はもちろん、サービスが稼働しているサーバーにも残りませんし、画面のキャプチャを取ろうとすると、その行為が相手に通知されるなど、徹底的に「記録を残さない」、もしくは「記録を取られたことを認識させる」という機能になっている点が大きな特徴となっています。
 スマホ所有者1,000人を対象としたジャストシステムの最新調査によると、「エフェメラル系SNS」を利用しているのは10.9%と約1割にものぼり、うち「Snapchat」が約7割に利用されていたとのことです。さらに、利用者の半数が他のSNSに比べて「エフェメラル系SNSは疲れない」と回答しているほか、エフェメラル系SNS利用後、4人に1人が他のSNS利用が「かなり減った」との回答があったということです。また、他にも情報が残らない点がビジネスにも向いているのではないかと思われ、今後さらに利用が拡がるものと推測されます。

ジャストシステム エフェメラル(消える)系SNS利用実態調査

 さて、この「エフェメラル系SNS」の持つ高い利便性がある一方で、当然、裏腹の関係にある「悪用リスク」も顕在化しつつあります。つまり、他人に知られたくない情報をやり取りしやすいという利便性は、犯罪組織にとっては、犯罪に関する情報のやり取りの痕跡を残さずに済むということであり、既に海外の過激派組織が連絡に使っているとの情報もあります。最近、米FBIとアップル社の間のスマホロック問題が大きな話題となりましたが、「エフェメラル系SNS」はそのような問題とも無縁なうえ、アクセス解析やログ解析等、フォレンジックがどこまで有効に機能しうるか(無効化されかねない事態)も懸念される深刻な問題を孕んでいます。日本においても、通信傍受の対象範囲の拡大や効率化等、捜査手法の高度化が進む一方で、もっぱらこのようなSNSが連絡手段に使われるようになれば、何ら手がかりを得ることは難しい・・・そのような状況が現実に起こっていることを厳しく受け止める必要があります。

中継サーバー

 中継サーバー(プロキシ)を通すことで「接続元IPアドレスを隠す(=身元を隠す)」「本来はアクセス出来ないエリアからアクセスさせる」といったことが可能になることから、中継サーバーがサイバー犯罪に悪用されていることは既によく知られています。

 本コラム(暴排トピックス2014年12月号)でも、「中華プロキシ問題」として、中国のユーザー向けに日本国内にアクセスできるとして中継サーバーを有料で提供していた業者2社が不正アクセス禁止法違反容疑で摘発された事例を紹介しました。この事例では、約4.5億円にものぼるネットバンキング不正送金事案をもたらしましたが、さらにその後、押収したサーバーから、インターネット通販サイトなどの利用者計約506万人分のIDやパスワードが見つかっており、うち約6万人分は実際にIDやパスワードを入力して、通販サイトに接続した痕跡もありました。また、このサーバーの利用者は、中国の代理店を通じて集められており、「サイバー攻撃用」などと宣伝し、ネットで募集した利用者にサーバーをレンタルしていたことも判明しています。

 最近も、中継サーバーを不正に設置したとして、日本人親子2人が電気通信事業法(届け出義務)違反の疑いで書類送検されるという事案がありました。2人は業者から借りたサーバーを中継用として中国向けにまた貸ししていたということで、中継サーバーのまた貸しを立件するのは全国初だということです。

 このようにサイバー犯罪は容易に国境を越えて犯罪インフラ化していますが、その捜査には国境の壁が立ちはだかっており、海外の犯罪者の摘発まで辿りつくのはかなり難しいものと思われます。また、いったん摘発されても、ネット接続環境さえあれば簡単に再開できるのが現実です。
 そして、その犯罪は、実は対面によって信頼関係を構築する必要など全くなく、組織的な犯罪とはいえ、その構成員同士には、相互の面識や強い連帯感といったものは全く不要であり、正に技術的・金銭的な利害関係だけで十分に「犯罪組織」として機能してしまう点に大きな特徴があり、ATM事件の「出し子」が様々なところからかき集められた「犯罪集団」であることと共通する、新しい犯罪組織のあり方を示すものかもしれません。

コンビニエンスストア(コンビニ)

 今や多くの利便性を備えた生活拠点となったコンビニですが、既に述べた通り、ATM不正引き出し事件の舞台となったほか、古くはプリペイド携帯電話、現在では前述の「コンビニ収納代行」を悪用され、特殊詐欺の犯罪ツールを提供してしまっている実態があります。コンビニ各社は警察と連携しながら、各種犯罪の防止・抑止に力を入れているところですが、一方で、そのビジネスがフランチャイズ方式が主流であることや従業者の多くがアルバイト店員であることなどから、本部の発信する施策等がなかなか徹底しない傾向もみられ、そこが「犯罪インフラ化」を招く脆弱性となっています。
 また、最近では、日本人と中国人のグループが偽造クレジットカードでたばこを大量購入していた事件がありましたが、この事件では、同じ系列のコンビニエンスストアが狙われており、報道によれば、事前に複数のコンビニでカードを試し、同一のチェーンに絞ることを決めたとされています。このコンビニのカードを承認するシステムに脆弱性があり、それが突かれた形となっています(なお、警察からの指導で脆弱性は既に解消されたということです)。

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8) その他のトピックス

総会屋の状況

 今年の6月も上場企業の株主総会が集中しましたが、議事進行を声高に妨害する旧来型の総会屋はほぼ姿を消し、大きな混乱もなく終了したようです。報道によれば、株主総会集中日となった6月29日に、全国の総会に出席した総会屋は昨年と同数の延べ8人、総会屋が出席した企業数は昨年より2社多い8社だったということです。

 1981年の商法改正によって総会屋への利益供与が禁止され、その活動は停滞したかに見えましたが、総会自体はヤジや怒号が飛び交い、長時間化するなど「荒れる総会」に持ち込まれるケースも増えるようになりました。その結果、機関誌購読などより巧妙に水面下での利益供与が行われていることが発覚したり、関係を解消した総務部長が(総会屋の依頼を受けた)暴力団によって刺殺されると言った事件が発生します。そして、1997年には、第一勧銀や四大証券利益供与事件が相次いで明るみに出たことで、2度目の商法改正が行われ、総会屋への利益供与はさらに厳罰化されることになりました(なお、この頃、国内最大の勢力を誇った論談同友会を率いた正木会長が、今月亡くなりました。ひとつの時代の終焉を感じさせます)。以後、企業のコンプライアンス徹底の潮流と相まって、コーポレート・ガバナンス重視や株主総会の健全運営の流れが確立され、総会屋の排除が進むこととなりました。なお、最近、新たな動きとして、「ある会社の総会で発言し、ライバル会社から利益を受ける例もある」との報道もあり、注意が必要な状況は続きます。

 さて、警察庁が公表している「平成27年の暴力団情勢」によれば、総会屋を「単元株を保有し、株主総会で質問、議決等を行うなど株主として活動する一方、コンサルタント料、新聞・雑誌等の購読料、賛助金等の名目で株主権の行使に関して企業から利益の供与を受け、又は受けるおそれがある者」と定義、平成27年末の総会屋の人数を240人としています。

警察庁 平成27年の暴力団情勢

 参考までに、同資料によれば、「会社ゴロ」(企業等を対象として、経営内容、役員の不正等に付け込み、賛助金等の名目で金品を喝取するなど暴力的不法行為等を常習とし、又は常習とするおそれがある者)等が10人、「社会運動標ぼうゴロ」(社会運動を仮装し、又は標ぼうして、不正な利益を求めて暴力的不法行為等を行うおそれがあり、市民生活の安全に脅威を与える者)は570人、「政治活動標ぼうゴロ」(政治活動を仮装し、又は標ぼうして、不正な利益を求めて暴力的不法行為等を行うおそれがあり、市民生活の安全に脅威を与える者)は5,700人といった状況となっています。

 ただ、利益供与を受ける点で決定的に問題があるにせよ、正に、株主と企業の真剣勝負の場である株主総会において、直接、企業体質の改善を突き付け厳しく糾弾したり、不祥事を暴き、問題ある経営陣の退陣を迫っていく姿勢は、海外の議決権行使助言会社の役割と近いところもあり、企業の経営に適切な緊張感をもたらすなど、今や不可欠なものだと言えます。

協力雇用主の状況と暴力団離脱者支援

 協力雇用主とは、犯罪・非行の前歴のために定職に就くことが容易でない刑務所出所者等を、その事情を理解した上で雇用し、改善・更生に協力する民間の事業主のことですが、昨年4月時点で14,000社が協力していたところ、今年4月には16,000社に増加したということです。

法務省 更生保護を支える人々「協力雇用主」

 その背景には、協力雇用主の7割が中小企業であることをふまえ、その裾野をさらに拡げるために、保護観察の対象となった人などを雇用し、就労継続に必要な生活指導や助言などを行う協力雇用主に対し、年間最大72万円の奨励金を支払う制度(具体的には、「就労・職場定着奨励金」(最大48万円)、「就労継続奨励金」(最大24万円)、「身元保証制度」(最大200万円)、「トライアル雇用制度」(最大12万円)などがあります)を始めたことがあげられますが、報道によれば、実際に雇用する企業がこの1年間で551社から788社になり4割以上増えるなど、本奨励金制度の導入をひとつの契機として、制度の定着化が進みつつあります。

法務省 協力雇用主に対する刑務所出所者等就労奨励金について

 この就労奨励金の仕組みは、正に福岡県暴排条例の改正によって、「暴力団からの離脱を促進するための措置」(第12条の2関係)が新設され、平成28年4月1日より福岡県暴追センターの新事業として始まった取組みと同様の構図となっています。本コラム(暴排トピックス2016年2月号を参照ください)でも、暴力団離脱者支援のあり方について考察していますが、刑務所出所者等を雇うことへの「心理的な抵抗感」がこのような支援制度によってある程度緩和されている現実があるということであれば、暴力団離脱者支援においても、今後、福岡県暴排条例改正のような動きが全国に拡がることを期待したいと思います。

 一方で、その「心理的な抵抗感」については、暴力団離脱者対策においては、「レピュテーション・リスク」「真の離脱か」に対する懸念が大きい点が、刑務所出所者等対策と大きく異なる部分だと思われます。したがって、経済的負担等以外の面で、現時点で事業者が暴力団離脱者対策の社会的コストを負担できるとすれば、少なくとも以下の4つの要件が社会的な合意事項として揃った場合に限られると、あらためて指摘しておきたいと思います。

  • 更生に対する本人の意思が固い事(離脱=更生=暴排=反社排除の構図が成立すること)
  • 本人と暴力団との関係が完全に断たれていること
  • 5年卒業基準の例外事由であると警察など公的機関が保証してくれること(公的な身分保証の仕組みがあり、それによって事業者がステークホルダに対する説明責任が果たせること)
  • 事業者の暴排の取組みの中に離脱者対策の視点が明確に位置付けられること(離脱者支援対策が社会的に認知され受容されていること)

 そのうえで、さらに踏み込んで、「協賛企業(協力雇用主)であること=警察との連携ができている反社リスクに強い企業」として認知されるような官民挙げた取組みや社会全体における位置付けの獲得などが、今後や重要になっていくものと考えます。

 さて、暴力団離脱者対策の一環として、福岡県暴追センターが新たに広報動画(40秒)を制作していますので、紹介します。暴力団からの離脱を考えながら決断できない暴力団員やその家族を後押しするとともに、暴力団からの離脱に関する相談先が分かる内容となっており、最後に「額に汗して働くのは楽ではない。しかし、そこに本当の自由がある」と語りかけるところなど、充実したものとなっています。

動画

米国務省の人身売買に関する2016年版報告書

 米国務省は、世界各国の人身売買の実態をまとめた2016年版年次報告書を公表しています。

U.S. Department of State ; 2016 Trafficking in Persons Report

 この報告書の中で、日本については、「人身売買の根絶に向けた最低限の水準を満たしていない」と指摘しているほか、中国や東南アジアからの外国人に対して賃金不払いや長時間労働を強いているとして日本の「外国人研修制度」を批判しています。さらに、最近継続して指摘されている、援助交際や女子高生とデートできるとうたった「JKお散歩」と呼ばれる接客サービスなどについても、「子供の売春の温床となっている」と明記され、関係者に対する罰則の厳格な適用などを求めています。
 なお、当該報告書で指摘された、いわゆる「JKビジネス」における犯罪防止対策のあり方について、警視庁から報告書が公表されていますので、参考までにご紹介いたします。

警視庁 いわゆるJKビジネスにおける犯罪防止対策の在り方に関する報告書について

いわゆるJKビジネスにおける犯罪防止対策の在り方に関する報告書

 この警視庁の報告書は、青少年の健全育成及び清浄な風俗環境の保持並びにJKビジネスに起因する犯罪防止のためには、「法的規制」「青少年を取り巻く社会環境の整備」の両面における対策が必要だと指摘したうえで、JKビジネスの店舗数は、平成27年6月末の時点で132店舗確認されていたところ、平成28年1月末では174店舗に増加している実態があること、平成24年1月以降平成27年末までに31店舗54名を検挙していること、また、平成25年4月以降平成27年末までに73名の女子高校生等を補導していること、などが報告されており、米国務省の報告書を裏付けるような実態が示されています(さらには、JKビジネスで働く女子高校生等の中には、被害に遭ったことを言い出せない状況にある者もいれば、被害を受けているとの認識に欠ける者もおり、被害実態の把握が困難な一面があるとも指摘されており、実態はもっと深刻だと考えられます)。

 さらに、都内女子高校に対して実施した調査では、JKビジネスで働くことについて、「お金に困ってのことだからしょうがない」とするものが23%も存在したほか、「客がいるのだから、こうした仕事をするのもしょうがない」が11%、「働いている子も客も喜んでいるのだから問題ない」が11%など、相当の割合で、「やむを得ない」とする認識を持っていることが判明しています。また、働く動機が「お金」であることや、「親などのほとんどの保護者が実態を認知していなかった」など、周辺の環境についても、大きな問題があることが浮き彫りになっています。

 一方で、「法的規制」「少年を取り巻く社会環境の整備」の両面における対策としては、「学校、図書館、病院等の施設の周辺や住居集合地域における営業を禁止するとともに、JKビジネス店舗に係る広告物の表示や広告文書等の配布についても禁止する必要がある」「従業員等が当該営業に関して違反行為をした場合に、営業者にも罰則を科すことのできる規定(両罰規定)を定める必要がある」などが提言されています。

 さて、風俗ビジネスはそもそも伝統的な暴力団の資金獲得活動のひとつであり、このようなJKビジネスもまた、正に「人身売買」として、暴力団の主要な資金源であることを厳しく認識し、サービスを提供する事業者の取り締まり、従事者の人材供給を断つための家庭・学校・社会教育の充実(背景にあると思われる子どもの貧困問題の解消)、サービスを利用する者に対する継続的な警告など、それぞれのレベルにおいて出来る限りの取組みが必要な状況にある(事業者としてできることもある)と言えます。

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3.最近の暴排条例による勧告事例ほか

1) 三重県の勧告事例

 暴力団員と知りながら飲食の場を提供したなどとして、三重県公安委員会は、同県暴排条例に基づき、飲食店経営者男性と暴力団幹部男性に勧告を行っています。指定暴力団六代目山口組系暴力団の会合と知りながら約30人が利用する会合の場所と飲食を提供し、組織の活動を助長するとともに運営に資する財産上の利益を提供、また、暴力団幹部男性は、飲食店経営者男性に会合の場所や飲食を提供するよう促し、財産上の利益を得たとしてのものとなります。
 なお、三重県暴排条例は、昨年、一部改正が行われ、第19条第2項の「事業者が、情を知って、暴力団の活動を助長し、又は運営に資することとなる利益供与」をした場合の禁止規定を、勧告の対象に引き上げたほか、利益供与を受ける側の暴力団についても、第22条第2項の「暴力団員等が、情を知って、事業者から、暴力団の活動を助長することとなる利益供与を受けること、又は指定した第三者に受けさせること」について、禁止規定から、勧告の対象に引き上げています。
 今回の勧告は、正に、事業活動における勧告対象行為を拡充した本改正内容に該当したものであり、改正後の勧告は、2例目になるということです。

三重県警察 三重県暴力団排除条例の改正について

2) 岡山県の勧告事例

 指定暴力団神戸山口組三代目熊本組組員が、飲食業を営む事業者から、岡山県内において、暴力団の活動を助長し、又は運営に資する目的で現金100万円の利益の供与を受けたとして、同県暴排条例に基づく勧告を行っています。

岡山県警察 岡山県暴力団排除条例に基づく勧告及び公表

3) 暴対法に基づく中止命令発出の事例

 奈良県内の塗装業の男性に暴力団に加入するよう強要したとして、暴力団対策法に基づき、指定暴力団神戸山口組系組長ら3人に、強要を禁じる中止命令が出されています。報道によれば、「事務所にすぐ顔出せ。外で仕事してウチを助けたってくれや」などと複数回電話し、暴力団への加入を強要したということです。ご存知の通り、暴力団対策法に基づく中止命令は、指定暴力団に対して発出でき、命令に従わない場合は中止命令違反で逮捕することができるもので、神戸山口組が4月に指定暴力団に指定されて以降、系列組長らに中止命令が出されたのは奈良県内では初めてだということです。

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