暴排トピックス

平成30年における組織犯罪の情勢

2019.04.09
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取締役副社長 首席研究員 芳賀恒人

見守る警察官のイメージ画像

1.平成30年における組織犯罪の情勢

信金大手の西武信用金庫が指定暴力団の関連企業に融資していた疑惑が浮上しています。直近の報道(平成31年4月7日付毎日新聞)によれば、同信金幹部が暴力団構成員らに飲食の接待を繰り返していたといい、組織ぐるみで反社会的勢力に便宜を供与していた疑いがあるとのことです。一連の融資と接待は、常勤の理事が主導し、支店長などの幹部クラスが東京都心の繁華街で、指定暴力団や、在日中国人らによる準暴力団の構成員らに飲食を伴う接待を繰り返していたといいます。さらに、審査部門は内部のデータベース照合などで「反社会的勢力に該当する」、「不適切な融資である」と認識していたにもかかわらず、理事の働きかけで審査を通していた疑いがあるとも報じられており、事実であれば、金融機関としての信頼を根底から覆す不祥事であり、金融庁には徹底的に事実関係を洗い出していただきたいところです。なお、同信金は、昨年、海外送金を巡ってAML/CFTの不備も発覚しています。当時、送金を依頼した企業と受取先企業の双方に営業実体が無く、送金先には北朝鮮と関係する可能性がある企業もあったとしてその実務に重大な不備があったと指摘されましたが、今回の事案もペーパーカンパニーが使われていた点が共通しています。本事案の詳細は、今後の報道や金融庁の検査結果を待ちたいと思いますが、AML/CFT/反社リスク管理のいずれにおいても、ペーパーカンパニーを絡めることで「組織的に」何かを「逸脱」「隠ぺい」させようとする意図があったのではないかとの懸念があり、「3線管理」や「内部統制システム」を上層部の不適切な関与によって無効化したという内部管理態勢の重大な不備もまた明らかであり、組織的かつ意図的という点では相当悪質な事案である可能性が否定できません。

さて、警察庁から「平成30年における組織犯罪の情勢」が公表されていますので、以下、概観してきたいと思います。

▼警察庁 平成30年における組織犯罪の情勢

まずは、暴力団構成員等の数が昨年末現在で30,500人(前年同期34,500人、前年同期比▲11.6%)と統計が残る昭和33年以降で最少人数を更新したことが重要なトピックです。さらに、特殊詐欺の主犯(首謀者等)の検挙人員に占める暴力団構成員等の割合は45.3%、出し子・受け子・見張の指示役の検挙人員に占める割合は47.9%と、特殊詐欺の総検挙人員に占める割合と比較しても、暴力団構成員等が主犯又は指示役となる割合が高く、特殊詐欺が暴力団の有力な資金源の一つであることが数字からも明らかとなった点も重要なトピックスです。なお、本文中には、特殊詐欺の抑止には、「事件の背後にいるとみられる暴力団、準暴力団等を弱体化することが不可欠」であり、そのためには「特殊詐欺そのものによる検挙のみならず、暴行・傷害、窃盗、薬物犯罪等、あらゆる法令を適用して検挙することが重要」との指摘がありますが、一方でそれは、もはや暴力団という「属性」のみに着目するだけでは暴力団自体を取り締まることすら難しくなっており、その周辺者まで範囲を拡大することが不可欠であること、さらには、その「属性」というより「行為」に着目して取り締まっていくことなくして、暴力団の資金源を断つことが難しくなってきている実態を表しており、言い換えれば、暴力団の取り締まり・暴力団資金源対策でありながら、(1)それ自体に暴力団対策法の限界が示されていること、(2)暴力団を含む周辺者(反社会的勢力)の対策へとスコープを拡大せざるを得ない状況があること、したがって、(3)暴力団に限られない組織犯罪対策における新たな枠組みが急務であることを示すものでもあることにあらためて着目する必要があります。

さて、暴力団情勢について、もう少し詳しくみると、暴力団構成員及び準構成員等(以下、「暴力団構成員等」という)の数は、平成17年以降減少し、平成30年末現在で30,500人と、統計が残る昭和33年以降、最少人数を更新しています。そのうち暴力団構成員の数は、15,600人(16,800人、▲7.1%)、準構成員等(暴力団に所属しないものの、その統制下で外部から活動に関わっていると警察が認めた者)の数は、14,900人(17,700人、▲15.8%)と、平成29年末の減少割合とほぼ同水準での減少割合となりました。特に暴力団構成員については、ピークだった1963年の6分の1程度の水準にまで減少しており、報道によれば、警察庁では、(本報告書で指摘されてはいませんが)離脱した組員の一部や若い世代が、繁華街などで暴力行為や違法行為を繰り返す「準暴力団」や「半グレ」に流れている可能性があるとみているということです。また、総会屋及び会社ゴロ等(会社ゴロ及び新聞ゴロをいう)の数は、平成30年末現在、1,030人と近年減少傾向にあること、社会運動等標ぼうゴロ(社会運動標ぼうゴロ及び政治活動標ぼうゴロをいう)の数は、平成30年末現在、5,560人と近年減少傾向にあることなど、これらについては、最近の動向の延長線上にあります。また、(暴力団構成員等の数の減少に伴って)近年、暴力団構成員等の検挙人員は減少傾向にあり、平成30年においては、16,881人(17,737人、▲4.8%)となり、暴力団構成員等の減少割合より小さいことから、暴力団構成員等の検挙率が上昇傾向にあることが推測されます(言い換えれば、「貧困暴力団」という言葉に代表されるように、資金獲得活動が困難になる中、特殊詐欺をはじめ、これまで以上に犯罪に手を出している、リスクの高い犯罪に手を染めているとの推測も成り立ちます)。なお、主な罪種別では、傷害が2,042人(2,095人、▲2.5%)、窃盗が1,627人(1,874人、▲13.2%)、詐欺が1,749人(1,813人、▲3.5%)、恐喝が772人(803人、▲3.9%)、覚せい剤取締法違反(麻薬特例法違反は含まない)が4,569人(4,693人、▲2.0%)で、いずれも前年に比べ減少しているほか、窃盗以外は暴力団構成員等の減少割合より小さくなっている点が注目されます(言い換えれば、覚せい剤取締法違反や傷害、詐欺、恐喝に手を染める者の割合が増えているのではないかと推測されます)。これらの数字をふまえれば、覚せい剤取締法違反、恐喝、賭博及びノミ行為等(以下「伝統的資金獲得犯罪」という)は、依然として、暴力団等の有力な資金源になっていることがうかがえ、これらのうち、暴力団構成員等の伝統的資金獲得犯罪の検挙人員に占める覚せい剤取締法違反の割合は近年、約8割で推移しているところ、平成30年中においても同様の結果となっています。その他、金融業、建設業、労働者派遣事業、風俗営業等に関連する資金獲得犯罪が敢行されており、依然として多種多様な資金獲得活動を行っていることがうかがえる結果となっています。また、平成30年における暴力団構成員等に係る組織的犯罪処罰法のマネー・ローンダリング関係の規定の適用状況については、犯罪収益等隠匿について規定した第10条違反事件数が36件であり、犯罪収益等収受について規定した第11条違反事件数が26件、また、第23条に規定する起訴前没収保全命令の適用事件数は27件となっています。なお、近年、暴力団は資金を獲得する手段の一つとして、暴力団の威力を必ずしも必要としない詐欺、特に組織的に行われる特殊詐欺を敢行している実態がうかがわれますが、この点については後述したいと思います。一方、平成23年10月までに全ての都道府県において暴力団排除条例(暴排条例)が施行されましたが、市町村における条例については、平成30年末までに44都道府県内の全市町村で制定されています。また、各都道府県においては、本コラムでも紹介しているとおり、暴排条例に基づく勧告等を実施していますが、平成30年における実施件数は、勧告43件、指導4件、中止命令14件、再発防止命令9件、検挙13件となっています。なお、平成30年中、警察及び都道府県センターが援助の措置等を行うことにより暴力団から離脱することができた暴力団員の数については、約640人であり、平成28年末、平成29年末と3年連続して同数となっています。

さて、今年の報告書においては、冒頭に「特殊詐欺に絡む犯罪組織等の現状」と題する特集が組まれています。それによると、特殊詐欺事件の背景とついて、「暴力団や準暴力団が深く介在しているとみられ、特殊詐欺を有力な資金源としつつ、得られた資金を元に新たな犯罪に関与している可能性もある。また、外国人に関しては、受け子としての検挙が増加しているほか、外国人犯罪組織により違法に取得された預貯金口座が後に特殊詐欺の振込先として使用されるなど、特殊詐欺を助長する犯罪への関与もみられる」と指摘しています。さらに、平成30年中の特殊詐欺に係る暴力団構成員等の検挙人員は630人で、平成27年以降は減少傾向にあるものの、特殊詐欺全体の検挙人員2,747人中の22.9%を占めており、刑法犯・特別法犯総検挙人員において暴力団構成員等の検挙人員が占める割合が6.3%であることと比較して、依然として高い割合となっていることが示されています。以前は、特殊詐欺に直接関与しない傾向がみられていた記憶がありますが、最近では直接的に特殊詐欺事案に関与していることが明らかとなっています。さらに、特殊詐欺の主犯(首謀者・グループリーダー・張本人等)の検挙人員に占める暴力団構成員等の割合は45.3%、出し子・受け子・見張の指示役の検挙人員に占める暴力団構成員等の割合は47.9%であり、特殊詐欺の総検挙人員に占める暴力団構成員等の割合と比較しても、暴力団構成員等が主犯又は指示役となる割合が高いものとなっており、これらの状況からも、暴力団が特殊詐欺事件を主導する場合が多いものとみられ、特殊詐欺が暴力団の有力な資金源の一つになっている状況がうかがわれると指摘されている点は大変興味深いといえます。また、近年、暴走族の元構成員や非行集団に属する者等が、繁華街・歓楽街等において、集団的、常習的に暴行、傷害等の暴力的不法行為等を敢行したり、特殊詐欺、組織窃盗、ヤミ金融、賭博、みかじめ料の徴収等の不法な資金獲得活動を行っている例がみられること、準暴力団には、暴力団との関係を持つ実態も認められ、不法な資金獲得活動によって蓄えた潤沢な資金の一部を暴力団に上納する一方、自らは風俗営業等の事業資金に充てるほか、他の不法な資金獲得活動の原資となっていることがうかがわれる事例もみられること、現役の暴力団構成員が準暴力団と共謀して犯罪を行っている事例もあり、暴力団と準暴力団との結節点が存在するとみられることなども指摘されており、準暴力団の形態の多様性、暴力団との結節点のあり方の多様性にも言及されている点も興味深いといえます。一方、平成30年中の特殊詐欺に係る外国人の検挙人員は、118人で、平成25年以降増加傾向にあり、特殊詐欺全体の検挙人員2,747人中の4.3%を占めていること、外国人検挙人員を役割別にみると、受け子が53.4%と半数以上を占めていることなども示されています(なお、外国人による特殊詐欺の検挙状況では、平成28年が52人/2.2%、平成29年が62人/2.5%であることを鑑みれば、平成30年に急激に検挙人数も割合も増えていることが分かります。改正出入国管理法の影響も含め、今後、注意が必要な状況だといえます)。そのうえで、報告書では、「特殊詐欺の抑止につなげるためには、引き続き暴力団を始めとする犯罪組織等の実態解明を進めるとともに、取締りを推進することが必要である。その際、個々の特殊詐欺事件の実行犯を検挙することに加え、事件の背後にいるとみられる暴力団、準暴力団等を弱体化することが不可欠であり、そのためには、特殊詐欺そのものによる検挙のみならず、暴行・傷害、窃盗、薬物犯罪等、あらゆる法令を適用して検挙することが重要」だと指摘していますが、その本質的な意味は既に指摘したとおりです。

なお、特殊詐欺と暴力団、外国人の3つが重なった事例として、最近、タイに振り込め詐欺の拠点を構えていた15人が逮捕されるというものがありました。このグループは債権回収担当者を装い、偽の請求書を電子メールなどで送付するといった手口で、日本人を標的に2月だけで1億3,000万円超、3月も少なくとも8,900万円超をだまし取ったとみられています。報道によれば、15人は観光ビザでタイに入国しており、逮捕容疑は不法就労で、拠点の住宅からは、IP電話機52台とノートパソコン19台、日本語で書かれた詐欺のマニュアルなどが見つかっており、壁には「絶対に稼ぐ!」「責任感を持つ!」などと書いた紙が貼ってあったといいます。15人はこの住宅に住み込んでおり、部屋に多くの電話があることなどを不審に思ったタイ人の大家が警察に通報したことから摘発につながったということです。なお、タイでは中国と台湾のグループなどによる振り込め詐欺の拠点が摘発されているようですが、日本人は今回が初めてだといいます。一方、逆に、警視庁組織犯罪対策2課が、台湾人の男女9人を入管難民法違反(虚偽申請)容疑で逮捕していますが、この9人は甲府市の一戸建て住宅を拠点に、中国人を狙って中国に特殊詐欺の電話をかける「かけ子」をしていたといいます。メンバーらは集団生活をしながら電話をかけていたとみられ、中国語の詐欺マニュアルや携帯電話などが押収されていますが、なぜ日本を拠点にしたかは分かっていないということです。

さて、本レポートは暴力団情勢だけでなく、薬物・銃器情勢、来日外国人犯罪情勢もあわせて収録されています。

まず、薬物事犯の状況ですが、薬物事犯検挙人員は近年横ばいが続く中、13,862人と前年からわずかに増加しています。このうち、覚せい剤事犯検挙人員は、近年わずかな減少が続く中、平成30年においても9,868人と引き続きわずかに減少し、1万人を下回る結果となりました。一方で、大麻事犯検挙人員は3,578人と若年層を中心に平成26年以降増加が続き、過去最多となった前年を大幅に更新、大麻事犯検挙人員の増加が薬物事犯検挙人員全体を押し上げる形となりました。さらに、大麻栽培事犯の検挙件数は近年増加傾向にありましたが、平成30年は175件と3年ぶりに減少し、大麻草押収量(本数)は4,456本と2年連続1万本を超えた平成28年、平成29年から大幅に減少する結果となりました。また、薬物事犯(覚せい剤事犯、大麻事犯、麻薬及び向精神薬事犯及びあへん事犯をいう)の検挙人員は、近年横ばいで推移しているところ、13,862人と前年からわずかに増加しています。このうち暴力団構成員等の検挙人員は5,457人で、薬物事犯の検挙人員の39.4%を占めているものの、検挙人員・薬物事犯に占める割合とも減少傾向にあります。また、外国人の検挙人員は近年増加傾向にあったところ、1,018人と前年からわずかに減少したものの1,000人を超えるほぼ前年並みを維持しており、薬物事犯の検挙人員の7.3%を占めています。また、覚せい剤事犯の検挙人員は、薬物事犯の検挙人員の71.2%を占めており、依然として覚せい剤が我が国の薬物対策における最重要課題となっています。そして、その主な特徴としては、暴力団構成員等が検挙人員の約半数を占めていることや、30歳代及び40歳代の人口10万人当たりの検挙人員がそれぞれ他の年齢層に比べて多いことが挙げられます。また、再犯者率が他の薬物に比べて高いことから、覚せい剤がとりわけ強い依存性を有しており、一旦乱用が開始されてしまうと継続的な乱用に陥る傾向があることがうかがわれます。それに対し、大麻事犯の初犯者率は76.6%と、近年の横ばい傾向が継続しているほか、10~30代が85.3%を占めるなど若年層の摘発が目立っています。年代別では、20代が1,521人(前年比+347人)で最も多く、30代は1,101人(+63人)、10代は429人(+132人)で、平成26年の80人から5倍以上に増えています。なお、驚くべきことに、高校生が74人、中学生が7人含まれており、若年層への蔓延の実態をふまえた適切な教育の重要性を痛感させられます(なお、直近でも大麻や合成麻薬「MDMA」を所持していたとして、京都市内の市立中3年の女子生徒(15)が大麻取締法違反と麻薬取締法違反(いずれも所持)の疑いで逮捕される事例がありました。報道によれば、生徒は容疑を認めており、「インターネットで知り合った人から買った」と供述しているといいます。生徒が自宅内で暴れ、母親が119番通報して救急搬送されたということです)。また、大麻栽培の目的については、「自己使用」が67.2%、「営利目的」が31.7%であり、「自己使用」が半数以上を占めているが、平成21年調査と比較すると、「営利目的」が12.5ポイント増加している点が特徴的だといえます。また、大麻栽培の場所は、屋内栽培が87.0%、屋外栽培は13.0%と屋内栽培が圧倒的に多く、「一戸建て住宅」、「アパート」、「マンション」が全体の75.0%を占め、住居を利用した大麻栽培が圧倒的に多いこと、屋内栽培の中には、建物内全てを栽培場所とする大規模な栽培も含まれていることなどが興味深いといえます。さらに、薬物の密売関連事犯(営利犯のうち所持、譲渡及び譲受をいう)の検挙人員は539人であり、このうち、暴力団構成員等は316人(構成比率58.6%)、外国人は47人(同8.7%)となっています。

銃器発砲事件数については、8件と前年から減少し、過去最少となった平成27年と同数となっています。拳銃押収丁数は、長期的に減少傾向にあるところ、平成30年は315丁で過去最少であり、このうち暴力団からの押収丁数は73丁で、前年から減少しています。外国人犯罪については、近年は、SNSで注文を受け付け、海外から偽造在留カードを密輸入して販売する入管法違反等事犯や短期滞在の在留資格により来日し、偽造クレジットカードを使用して高級ブランド品等をだまし取り、犯行後は本国に逃げ帰るいわゆるヒット・アンド・アウェイ型の犯罪がみられるほか、指示役の指示により、化粧品等を大量に万引きした実行犯グループが、指定された配送先に盗品を発送するといった組織窃盗事犯も依然多数みられること、強盗及び窃盗はベトナム及び中国が高い割合を占めていること、窃盗を手口別にみると、侵入窃盗はベトナム、韓国及びペルー、自動車盗はブラジル及びロシア、万引きはベトナム及び中国が高い割合を占めていること、知能犯を罪種別にみると、詐欺及び支払用カード偽造は中国とマレーシアが高い割合を占めていることなどが特徴として挙げられます。

次に、最近の暴力団情勢を巡る報道から、いくつか紹介します。

  • 大阪・ミナミで恐喝を繰り返したとして50人以上のメンバーが摘発され、解散した半グレ集団「アビス」の元幹部が再びグループを組織しようとしている疑いがあり、別のグループ名で同様の恐喝行為を繰り返す可能性があるとされています。アビスは元リーダーの男(20=暴行罪などで公判中)を頂点に幹部12人がガールズバーを経営しており、売り上げの一部は任侠山口組系の団体に渡っていました。ただ、そもそも「半グレ」自体がこのようなアメーバ的な組織形態であって、次から次へと様々なグループが派生的に発生するものと捉えるべきであり、これまでの暴力団対策の発想とは異なる枠組みで規制や取り締まりのあり方を考えていく必要があると思われます。一方で、暴力団もそのあり方を変質させており、最近では、構成員を組に出入りさせず、行事にも参加させないことで、組とのつながりを消した存在(構成員でありながら構成員にしない)として育成、暴力団対策法や暴排条例の対象外である、いわゆる「半グレ」として一般人に紛れ、暴力団の仕事を続けていくあり方も登場しているようです。このようなあり方もまた、暴力団対策法の限界を示しており、もっと言えば、もはや暴力団の再定義が必要な状況かもしれません。なお、一方で、高齢の暴力団員は、時代や社会の変化に適応できず、他に何かをすることも出来ず、ただ仕方なく、暴力団を続けているという実態もあるといい、この点からも近い将来、暴力団の姿が組織の内外から変質していくことも十分予想できるところです。暴力団の再定義の議論は、むしろ急務といえるかもしれません。
  • 兵庫県公安委員会は、六代目山口組について、期限が切れる今年6月23日までに、暴力団対策法に基づく10回目の指定を行う運びです。指定暴力団の指定手続きは3年に1回行われ、指定されると、構成員がみかじめ料を要求するなどの不当行為に及んだ場合、公安委員会が中止命令を出すといったことができるようになります。また、旭琉会についても、沖縄県公安委員会が6月にも再指定を行う運びです。
  • 京都府立医科大学の医師が、平成28年1~2月、実刑判決が確定していた六代目山口組淡海一家の高山組長の病状について、「心室性不整脈の重篤化が安易に予測できる」などとする虚偽の診断書を作成し、大阪高検に提出したとされる裁判で、京都地裁が、この男性医師を無罪とする判決を言い渡しています。この問題は、この診断書に基づいて大阪高検が平成28年2月、組長の刑の執行を停止したものの、平成29年2月に診断内容は虚偽だったとして刑務所に収容しています。公判では、幅広い裁量が認められる医師の診断を巡り、その内容の妥当性が争われ、弁護側は「適切に診断したもので虚偽ではない」と無罪を主張、京都地裁は、腎移植前の検査結果を引用して回答書を書いても、医学的に真実に反することにはならないと判断、「回答書が虚偽だと判断するには合理的な疑いが残る」としています(本判決を不服として、京都地検は大阪高裁に控訴しています)。
  • 特定危険指定暴力団工藤会の本部事務所の撤去を巡り、公益財団法人「福岡県暴力追放運動推進センター」が、事務所を買収できるよう内部規定を変更しました。これまで暴力団事務所の使用差し止め請求の代理訴訟は可能だったものの、事務所買い取りに必要な事業認定を得ていなかったためで、暴力団事務所の撤去支援に関する事業認定を2月に福岡県に申請し、3月に承認されました。さらに、本年度の事業計画にも「暴力団事務所撤去支援事業」を明記しています。福岡市は同暴追センターと連携して買収する案を検討中で、本部事務所撤去に向け前進することとなります。なお、全国では、岐阜県、山形県の両県で暴追センターが直接暴力団事務所を購入したケースがあるものの、本部機能がある事務所の例はないということです。また、関連して、工藤会を巡る一連の市民襲撃事件で、計4事件に関与したとして殺人などの罪に問われた同会トップで総裁の野村悟被告(72)らの審理に際し、福岡地裁が、担当する第3刑事部の裁判官を1人増員し、6人体制とするということです。3人の裁判官で審理する合議体を二つ構成し、異なる被告の審理を分担することも可能になるといい、工藤会裁判の迅速化を目指し、異例の構えで臨むことになります。
  • 絶滅危惧種に指定されているニホンウナギの稚魚(シラスウナギ)を、暴力団関係者らが組織的に密漁し大量に売買する事件があり、高知県警が昨年、過去3年分の不法収益として約6億2,000万円を国税当局に課税通報(警察の得た情報から不法収益とみなされたものを税務当局へ通報する制度)を行っています。シラスウナギの密漁や不正流通をめぐっては高額の利益の割に罰則が軽く暴力団の介入が取り沙汰されていましたが、当局は、高額の課税通報を活用することで犯行の抑止を狙う構えだということです。

さて、暴力団離脱者支援について、興味深いコラムがありましたので以下抜粋して紹介します(平成31年3月15付現代ビジネス 廣末登「暴力団離脱者はいま、就職先でこんな「イジメ」に遭っている」)。

社会復帰という点をみると、2010年~2017年度に警察の支援で離脱した4,170人のうち、把握されている就労者は2.6%ほど。2015年に離脱した元組員1,265人のうち、その後の2年間に事件を起こし検挙されたのは325人。1000人当たり1年間に128.5人で、全刑法犯の検挙率2.3人と比べると50倍以上になり、元暴のアウトロー化が危惧される。暴力団構成員はともかく、離脱者までをも社会的排除することが、安心・安全を標榜する現代社会と整合性がとれるものなのか、筆者は疑問を禁じ得ない。東京三弁護士会では、離脱した元組員の社会復帰を支援すべく、2018年4月から、元組員を受け入れる「協賛企業」で一定期間働いていることを条件に、暴力追放運動推進センターに証明書を発行してもらい、弁護士が金融機関に口座開設を働き掛ける仕組みを作った。福岡県暴力追放運動推進センターでは、まじめに働いている組員については、金融機関に口座開設を働きかける仕組みを作っているという

本コラムでは、暴排が結局は社会不安の解消に役立っておらず、むしろ離脱者の更生を妨げ、犯罪を再生産しているのではないかといった問題意識を持ち続けています。廣末氏が指摘するとおり、もっと地に足の着いた具体的な支援策、公的な保証、社会全体による社会的包摂のあり方の模索が求められているといえると思います。

なお、関連して、法務省が「協力雇用主に対するアンケート調査の結果」を公表していますので、以下、箇条書きにて紹介します。

▼法務省 協力雇用主に対するアンケート調査の結果について
▼協力雇用主に対するアンケート調査結果サマリー(概要)
  • 協力雇用主になったきっかけとして最も多かったのは、「犯罪や非行少年の立ち直りに貢献したかったから」であることから、今後、幅広く協力雇用主を拡大していくためには、協力雇用主の社会的意義を強調することが効果的といえる
  • ほとんどの協力雇用主が雇用する意思があることから、実際に雇用する協力雇用主を増やすためには、更生を促せるよう対象者と協力雇用主のマッチングを図りつつ、保護観察所が積極的に雇用を依頼することが必要である。また、協力雇用主からの経済的支援のニーズは高く、実際に奨励金を活用した協力雇用主の9割弱が奨励金制度は有効と評価していることから、実雇用の拡大に当たっては、奨励金を効果的に活用していくことも重要である
  • 雇用した対象者のおよそ5割が、無断欠勤、意欲の乏しさ、人間関係のトラブルといった就労上の問題を抱えており、実際、雇用してもおよそ5割が半年以内に辞めていることから、就労を継続させていくためには、対象者及び協力雇用主双方に対する継続的な訪問・指導等のフォローアップが必要である
  • 協力雇用主のおよそ5割が対象者のために住居を準備したことがあり、住居を確保できない者を雇用しようとする協力雇用主に対する支援の充実も必要である
  • 協力雇用主のプロフィールとして、業種の内訳は、建設業が最も高く(56.9%)、次いで、サービス業(9.8%)、製造業(8.8%)の順に高かった。また、従業員数は49人以下が82.4%を占めていた。協力雇用主になってから3年未満が43.3%を占めていた
  • 協力雇用主になったきっかけは、「犯罪者や非行少年の立ち直りに貢献したかったから」(40.1%)、「保護司から誘われて」(27.9%)、「人手が必要だったから」(23.1%)などが高かった
  • 犯罪や非行をした人を雇用した経験のある協力雇用主は62.5%だった
  • 雇用経験はあるものの、直近1年間雇用していない理由として最も高かったのは、「保護観察所から連絡がない」(51.2%)だった。一方で、そうした協力雇用主のほぼ全てが今後雇用する意思があると回答していた
  • 雇用することに抵抗感が強い罪名は、「殺人」(55.9%)、「性犯罪」(43.0%)、「覚せい剤取締法違反」(37.1%)の順に高かった
  • 犯罪や非行をした人を雇用しやすくするために保護観察所等に実施してほしいことは、「保護観察所からの積極的な雇用依頼」(42.3%)、「前科等を明らかにした上で就労することについて本人に指導・助言」(37.5%)、「本人に対する生活指導の強化」、「社会常識・ビジネスマナーの付与」(ともに36.8%)、「雇用主に対する支援の充実」(34.5%)などが高かった
  • 協力雇用主に対する支援として望むものは、「経済的支援の充実」(61.5%)、「雇用後の保護観察官・保護司等による訪問機会の充実」(38.5%)などが高かった
  • 協力雇用主として犯罪や非行をした人を雇用しても、およそ5割が半年以内に辞めていた。また、犯罪や非行をした人を雇用した場合、およそ5割が就労上の問題があったと回答していた。問題の内容は、「無断欠勤等の勤務態度の問題」(53.4%)、「遅刻など時間にルーズ」、「意欲の乏しさ」(ともに34.9%)、「人間関係」(34.4%)、「社会常識等の不足」(29.6%)などが高かった
  • 犯罪や非行をした人の住居の確保に対する支援として望むこととしては、「入居後の見守りや生活支援」(50.9%)、「住居を提供する者に対する経済的支援」(44.8%)、「住居契約の際の身元保証人による補償」(41.1%)が高かった

2.最近のトピックス

(1)AML/CFTを巡る動向

今秋のFATF第4次対日相互審査対応を控え、金融機関等のAML/CFTへの取組みが本格化する中、新しい全国銀行協会長となった高島氏(三井住友銀行頭取)は、口座保有者への本人確認の継続実施を、業界を挙げて推進する方針を明らかにしています。口座開設時だけでなく一定の期間ごとに身元を確認していく、いわゆる「継続的な顧客管理」が現状最も課題の多いテーマの一つとされています。反社リスク対策においては「適切な事後検証(中間管理)」とされている部分ですが、実務の実効性や効率性を考えれば、AML/CFT/反社リスク対策を一元的に管理していくための工夫もまた求められているといえます。なお、大手行が6月から厳格化する手続きとしては、口座の開設時に運転免許証や法人の登記簿謄本の提出を求めることに加え、職業や事業の内容を詳しく尋ねることになるほか、北朝鮮など経済制裁の対象国と取引がある企業については、資産や収入の確認を定期的に続けることになります。なお、同協会長は、銀行以外でも100万円を超える送金ができるように政府が改正を検討している資金決済法にも言及し、利用者の利便性向上は歓迎しつつ、利用者保護の観点から「業者には銀行と共通する一定の規制が必要だ」と強調していますが、正にそのとおりであり、利便性の向上のために犯罪インフラ化することのないよう、利便性と規制のバランスを適切に保っていただきたいところです。

さて、最近の金融庁と金融機関の意見交換会の内容から関連する部分について紹介します。

▼金融庁 業界団体との意見交換会において金融庁が提起した主な論点
▼共通事項

「昨年12 月に出入国管理法の改正案が成立し、4月1日から、新たな在留資格による外国人材の受入れが始まる予定。昨年末には、外国人の受入れ・共生のための施策のパッケージとして、政府から「総合的対応策」が公表された。「総合的対応策」では、外国人の生活サービス環境の改善に向けた施策として、金融機関に対しても、円滑な口座開設や多言語対応の充実、手続きの明確化のためのガイドラインや規定の整備等が求められている」として、金融庁から各業界団体に対して要請文を発出したことに触れ、また、全銀協において、勤務形態の確認方法や多言語対応の取組みについて、アンケート調査を実施しており、結果が共有されていることをふまえ、当該事例等を参考に、各金融機関内で体制を整備するよう要請がなされています。さらに、「外国人口座の開設や期中・出口の管理については、現在、全銀協で留意すべき点や対応事例等を取りまとめ中である。このような全銀協の取組みも参考に、引き続き、リスクベース・アプローチに基づいて、マネロン・テロ資金対策に御留意いただくようお願いする」との要請もなされています。この点は、後で触れますが、外国人の利便性向上と、帰国等に伴う口座売買リスクの高さ、AML/CFT上の継続的顧客管理のあり方、就業実態等の把握の困難さ等の様々な要素が絡み合って、実務的にはハードルが高いものとなっており、本腰を入れた取り組みが求められているといえます。

それ以外では、信用情報機関の信用情報に関して、(1)貸金の債権情報の登録と比べて、銀行カードローンの債権情報の登録頻度が少ないことや、(2)各信用情報機関において登録情報が反映されるまでにタイムラグがあること、(3)信用情報機関間の信用情報の重複を排除する仕組みがないこと、(4)銀行及び保証会社の信用情報機関への加盟状況は区々であり、利用者の総債務額を一元的に把握することが困難な事例があること、といった課題が明らかとなったとしています。また、検査マニュアルの廃止にあたり、当庁がどのような考え方に基づき対話を進めていくかについて、「検査・監督の目線をお示しすることで、金融業界の予測可能性が確保されるよう努めているところ。具体的には、金融機関との対話のための材料となる文書、例えば、分野別の「考え方と進め方」(ディスカッション・ペーパー)等を順次公表することとしている」と示されています。

▼主要行

昨年2月に策定した「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」について、改訂を予定しており、その趣旨としては、当庁がこれまでモニタリングを行ってきた中で、金融機関から問い合わせが多かった点や、FATF での新しい議論等を踏まえ、金融機関に求められる対応を改訂により明確化することで、態勢の構築を進めていただきたいと考えていることが示されました。また、AML/CFTにおいて、「重要なことは、取引開始時の本人確認だけではなく、継続的な顧客管理である」との方向性が主要行に対して示された点も大変重要であり、「リスクに応じて定期的に実態把握を行うのみならず、顧客のマネロン・テロ資金供与リスクが高まったと想定される具体的な事象が発生した場合(例えば適時開示や報道等により不芳情報に接した場合)には、顧客情報や取引内容を確認・検証し、リスク評価の見直しや疑わしい取引の届出の検討をするなど、リスクベース・アプローチによる対応の実効性を高めていただきたい」とかなり具体的に実務のあり方を示している点は注目されます。なお、このようなあり方は、反社リスク対策においては既に導入されているフレームワークであり、定期・不定期のモニタリング実務はある程度浸透しつつあるところ、AML/CFT/反社リスク対策の一元的な管理のあり方についての検討が急がれるところです。

なお、「全銀協を騙って、改元に伴いキャッシュカードを変更する手続きが必要であるなどと記載した封書を顧客に送りつけ、キャッシュカードの返送や暗証番号等の記載を求める詐欺の手口が確認されている。全銀協や当庁においてもホームページ等で注意喚起をしているが、各行においても、顧客がこうした詐欺被害に巻き込まれないよう、適切な対応をお願いしたい」と改元を悪用した詐欺等への対応を強化するよう要請されています。

次に、金融庁のオンライン広報誌(アクセスFSA)の最新号からAML/CFTに関する情報を紹介します。

▼金融庁 アクセスFSA(金融庁オンライン広報誌)
▼第188号 2019年4月3日 発行 PDF版

同誌では、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」の一部改正(案)の公表について取り上げていますが、前回の本コラム(暴排トピックス2019年3月号)でも内容について紹介していますので、簡単に確認しておきます。

本ガイドラインは、AML/CFTに係る金融機関等のリスク管理の基本的考え方を明らかにしたものであり、金融庁は、昨年2月のガイドラインの公表後、各金融機関等のマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢の高度化に向け、各金融機関等に対し、(1)同対策の実施状況等についての報告、(2)送金取引に係る窓口業務及び管理態勢の緊急点検、(3)ガイドライン等とのギャップ分析及び当該ギャップを解消するための具体的な行動計画の策定・実施、求めた上で、各金融機関等の対応状況についてオン・オフ一体のモニタリングを実施してきたところです。今回の改正は、これらの取組み等を踏まえ、ガイドラインの趣旨を明確化することにより金融機関等による実効的な態勢整備を図るものであり、主な内容は以下のとおりとなります。

  • テロ資金供与対策及び大量破壊兵器の拡散に対する資金供与防止のための対応の重要性を追記
  • 各金融機関等がリスクを検証する際に、各業態が共通で参照すべき分析と、各業態それぞれの特徴に応じた業態別の分析の双方を十分に踏まえることの重要性を追記
  • 金融機関等において、全ての顧客のリスク評価をするとともに、顧客のリスク評価に応じた頻度で継続的に顧客情報の確認を実施し、新たに確認した顧客情報を踏まえて顧客のリスク評価を見直していくことが求められることを明確化
  • IT システムに用いるデータについて、網羅性・正確性が確保されていることの定期的な検証が求められることを追記

金融庁としては、今後も金融機関等のさらなる態勢整備に向けた取組みを進めていくとしているほか、金融機関等AML/CFTを円滑に実施していくために、金融機関等の利用者が、従来よりも厳格な本人確認を受けたり、従来とは異なる資料の提出や質問への回答を求められたりする場合があり、利用者の理解・協力が必要不可欠となるところ、金融庁として、Webサイト内に特設ページを開設するなどの広報活動を実施しているが、利用者にはAML/CFTの高度化に理解・協力をお願いしたい旨、言及がなされています。

さて、前述のとおり、金融庁は今年1月末、全国銀行協会などに対し、各金融機関のサービス向上を求める文書を発出しています。外国人の円滑な口座開設や多言語対応、積極的な周知とガイドライン・規定の整備を要請しているものですが、一方で、口座開設では、国際的な要請が増すAML/CFTも求められています。金融庁幹部は「外国人を受け入れて管理するのが世界標準だ」と強調しているという情報もあるところ、収益悪化の苦境に立たされている金融機関にとってはAML/CFTへの対応コストの負担感は相当なものがあり、かつ万が一の摘発リスクのインパクトの大きさなどから、既に海外送金から撤退する金融機関も増えているのが実態です。とりわけ地域金融機関にとっては、「世界標準」の実現はなかなか高いハードルだといえると思います(某地域金融機関では、「苦渋の決断だが、コスト面やマネロン・テロ資金供与で制裁金を科されるリスクと、得られる収益を総合的に勘案」して外為業務から撤退を決めたと報じられています)。実際のところ、近年では、技能実習生などが帰国前に不要となった口座を第三者に売り、不正送金の受け口座として金融犯罪に悪用される事案が多発しており、今後の外国人労働者の流入を前に対策強化は欠かせないのは間違いありません。しかしながら、強制解約ができれば犯罪利用のリスクは大幅に低減することは分かっていても、それが可能かの法的判断は専門家でも分かれているのが現状です。預金約款をどの程度改定できるのかは引き続きの課題ですが、そのハードルは低くないとの認識が一般的です(このあたりは、暴排条項導入前の預金契約に遡及適用できるかが争点となった過去の状況と似ています)。なお、報道(平成31年3月22日付ニッキン)によれば、九州地区でも外国人労働者が増えているところ、それに伴って外国人の口座開設も増え、帰国時には口座売却などトラブルも発生しているといいます。福岡県郡部のある地域銀支店長は、「帰国時に銀行口座を売却した人がいた。犯罪に使われることもあるので、外国人雇用先を訪問して解約手続きを説明している」と話しており、現場の実務の丁寧な対応が水際で犯罪を防いでいることを痛感させられます(今後、外国人労働者が増えれば、このような丁寧な対応が行き届かなくことも想定されるところです)。

関連して、総務省も、外国人が携帯電話を使いやすいようにする取り組みを公表、短期の訪日客でも利用できる格安事業者を周知するほか、大手によるサービスの提供に向けてパスポートで本人確認できる手法の普及などをはかるとしています。さらに、携帯電話事業者や金融機関にも協力を呼びかけて官民一体で取り組むこととしており、契約に必要な国内の銀行口座の開設は電話番号なしでも柔軟に応じるよう全国銀行協会などに求めています。口座開設のみならず、携帯電話の利便性向上も求められている状況になりますが、特殊詐欺の三種の神器が「飛ばしの携帯」「他人名義の口座」「名簿(個人情報)」であることを考えれば、開設手続きや本人確認手続きの緩和の意味するものは、携帯電話や預金口座のさらなる「犯罪インフラ化」です。ましてや、外国人による口座売買の実態が改善されていない状況の中、利便性の視点からのみ実務を変えていくことは極めて憂慮すべき状況と思われます。

なお、総務省の取組み内容の概要は、以下のとおりです。

▼総務省 外国人の携帯電話契約・利用の円滑化に向けた取組の推進

ラグビーワールドカップ2019日本大会、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会、2025年大阪・関西万博といった世界的なイベントの開催、訪日外国人旅行者、在留外国人の増加や新たな外国人材の受入れを見据え、国際化時代にふさわしいICT利用環境の実現に向けた取組を推進することが必要であり、このため、総務省では、平成30年12月に総務副大臣の下にプロジェクトチームを設置し、(1)外国人の携帯電話契約・利用の円滑化、(2)多言語音声翻訳システムの一層の利用拡大、(3)デジタルサイネージを活用した外国人への災害情報等の提供の促進について検討を進めているといいます。そこで、国際化時代にふさわしいICT利用環境の実現に向けた取組の第一弾として、関係省庁とも連携し、外国人の携帯電話契約・利用の円滑化に向けた取組について取りまとめ公表するとともに、その取組の推進について関係団体へ要請を行うこととしたものです。概要については、以下のとおりです。

(1)「外国人の携帯電話契約・利用の円滑化に向けた取組」の公表

  • 社会・経済生活に必要不可欠である携帯電話について、訪日外国人や在留外国人が日本に来訪し、又は利用が必要となった際、直ちに契約・利用できる環境の実現を目指し、本日、本人確認手続等の円滑化、携帯電話契約窓口等における多言語対応の推進に向けた必要な取組事項を記載した「外国人の携帯電話契約・利用の円滑化に向けた取組」を取りまとめた
  • 優良事例
    • 全ての店舗で電話を通じた通訳サポート(5か国語)を提供
    • 約4割の店舗でテレビ電話を通じた通訳サポート(12 か国語)を提供
    • 外国人の来店が多い店舗における外国語対応スタッフの積極的配置(約2割の店舗に配置)
    • コールセンターにおける多言語対応(6か国語)
    • カタログの多言語化(6か国語)
    • 契約時の重要事項説明書(6か国語)等の多言語化
    • 契約に当たっての解説動画をWeb サイトに掲載(4か国語)
    • 店舗における翻訳機の利用

(2)関係団体への要請

  • 外国人の携帯電話契約・利用の円滑化に向けては、携帯電話事業者、関係団体を含む関係者による自主的な取組の一層の推進及び外国人や関係者への周知徹底が不可欠となるため、本日、佐藤ゆかり総務副大臣より、一般社団法人電気通信事業者協会、一般社団法人テレコムサービス協会、一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟及び一般社団法人全国携帯電話販売代理店協会に対し、協力の要請を行う

その他、最近のAML/CFTを巡る動向に関する報道から、いくつか紹介します。

  • スウェーデン大手銀行のスウェドバンクにマネー・ローンダリングに関与した疑惑が浮上し、地元当局が捜査を進めているということです。報道(平成31年3月28日付日本経済新聞)によれば、デンマーク最大手ダンスケ銀行による最大2,000億ユーロ(約25兆円)の不正な資金移転問題に関わった疑いがあり、米金融当局も調査に乗り出しているといいます(その端緒となったのは「パナマ文書」であり、その調査に絡み、米当局に対する報告内容が不十分だった点を問題視しているとのことです)。追及が深まるなかでスウェーデン大手銀行のスウェドバンクは、CEOを解任しています(同行は、ダンスケ銀行との間で2007~15年、少なくとも400億クローナ(約4,700億円)のマネー・ローンダリングが疑われる顧客資金の移動があったと現地紙に報じられていたほか、この報道の直前に一部の主要株主に情報を伝えていた疑惑も浮上していました)。デンマークのダンスケ銀行の問題は、スウェーデンのスウェドバンクに飛び火し、正に北欧の金融機関全体に市場の厳しい目が注がれる事態となっています。
  • 米国は、イラン革命防衛隊に巨額の資金を移したとして、同国やトルコ、アラブ首長国連邦(UAE)の25個人・組織に新たな制裁を科しました。対象には銀行などの金融機関が含まれ、イラン革命防衛隊や国防軍需省と関わりがあるとみているということです。米財務長官は声明で、イラン革命防衛隊や国防軍需省が引き続き制裁を回避しようとしていると指摘しています。
  • 日産自動車の前CEOのカルロス・ゴーン容疑者の会社法違反(特別背任)問題で、ゴーン容疑者側に還流した500万ドル(当時のレートで約5億6,300万円)は、代理店から複数の口座を経由し、同容疑者が保有する会社に流出していたということです。ゴーン容疑者は、流出先会社の株主名義人に知人の名を借りるなどした疑いももたれており、東京地検特捜部は、ゴーン容疑者が自身の関与を隠蔽する目的で複数の偽装工作を施し、日産を私物化したとみて捜査を進めているといいます。なお、マネー・ローンダリングの定義は、「犯罪によって得た収益を、その出所や真の所有者が分からないようにして、捜査機関による収益の発見や検挙を逃れようとする行為」(犯罪収益移転防止法に関する年次報告書より)とされています。したがって、本件における不正目的の資金の流れは、正にマネー・ローンダリングそのものだといえると思います。

(2)特殊詐欺を巡る動向

まずは、例月通り、平成31年1月~2月の特殊詐欺の認知・検挙状況等についての警察庁からの公表資料を確認します。

▼警察庁 平成31年2月の特殊詐欺認知・検挙状況等について

平成31年1月~2月の特殊詐欺全体の認知件数は2,155件(前年同期2,448件、前年同期比▲12.0%)、被害総額は30.4億円(39.0億円、▲22.1%)となり、認知件数・被害総額ともに減少傾向が継続しています(さらに減少幅が拡大しています)。なお、検挙件数は782件となり、前年同期(595件)を31.4%と大きく上回るペースで摘発が進んでいます(検挙人員については300人と前年同期比▲9.1%となりましたが、全体的には摘発の精度が高まっているといえます)。また、特殊詐欺のうち振り込め詐欺の認知件数は2,043件(2,318件、▲11.9%)、被害総額は29.4億円(37.2億円、▲21.0%)と、特殊詐欺全体の傾向に同じく、件数・被害額ともに減少傾向が継続しています。また、類型別の被害状況をみると、オレオレ詐欺の認知件数は1,299件(1,402件、▲7.3%)、被害総額は17.3億円(18.4億円、▲8.3%)とこれまでの増加傾向から減少に転じ、被害額も減少傾向が続いているものの減少幅は縮小しています。また、架空請求詐欺の認知件数は、499件(735件、▲32.1%)、被害総額は7.9億円(15.2億円、▲6.0%)と件数の大幅な減少が見られたうえに、被害額が増加傾向から減少に転じる大きな変化が起きています。さらに、融資保証金詐欺の認知件数は40件(46件、▲13.0%)、被害総額は0.4億円(0.6億円、▲33.3%)、還付金等詐欺については、認知件数は302件(224件、+34.8%)、被害総額は20.8億円(33.7億円、▲62.8%)と、件数が増加に転じた一方で、被害額が大きく減少しています。現状、特殊詐欺全体でみれば件数・被害額ともに減少傾向あるものの、依然として高水準を維持している点に注意が必要です。なお、それ以外の傾向としては、特殊詐欺全体の被害者については、全体では男性20.1%/女性79.9%、オレオレ詐欺では男性12.4%/女性87.6%、融資保証金詐欺では男性81.1%/女性18.9%、架空請求詐欺・還付金等詐欺では男性29.8%/女性70.2%などと類型別に大きく異なる割合となっている点は興味深いといえます。また、60歳以上は87.6%(70歳以上だけで74.7%)とこれまでより顕著な偏りをみせており、全体的にみれば、女性および高齢者のセグメントにおいて被害者が圧倒的に多い傾向がみてとれます(さらに、その傾向に少しずつではありますが拍車がかかっている点に注意が必要です)。また、犯罪インフラの検挙状況として、口座詐欺の検挙件数は131件(209件、▲37.3%)、盗品譲受けの検挙件数は1件(0件)、犯罪収益移転防止法違反の検挙件数は342件(378件、▲9.5%)、検挙人員は266人(309人、▲13.9%)、携帯電話端末詐欺の検挙件数は37件(40件、▲7.5%)、検挙人員は29人(28人、+3.6%)、携帯電話不正利用防止法違反の検挙件数は5件(2件、+150.0%)、検挙人員は4人(2人、+100.0%)などとなっています。

直近の動向では、「アポ電」の社会問題化、「改元」詐欺への警戒が重要なトピックスとしてあげられます。まず、アポ電については、警視庁によると、都内のアポ電などの不審電話に関する通報件数は、昨年は計34,658件で平成29年と比較して約3割増となっていたところ、今年に入って2月末時点で既に6,368件と増加傾向にあり、同庁は公式ツイッターで毎日、アポ電の通報のあった地域や内容を公開する取り組みを始めています。また、自衛策として、在宅中も留守番電話機能で対応したり、電話の内容を警察に相談したりすることを呼びかけています。直近でも、「改元アポ電詐欺」として全国6府県でキャッシュカードがだまし取られる被害が確認されており、大阪府内では3月、カードを詐取されて200万円を引き出された高齢女性もいるということです。さらに、埼玉県川口市の70代の女性が全国銀行協会職員をかたる男から「アポ電で、お金を置いているか確認して殺される事件があり、危ないので預かる」と電話を受け、現金110万円などをだまし取られた事件や、長野県佐久市の70代の女性が、警察官をかたる男から電話で、「アポ電」の詐欺の捜査に協力するため「だまされたふりをしてお金を渡して」と言われ、150万円を詐取される被害に遭った事件など、さらに「一捻り」が加えられた事件も発生しており、注意が必要な状況です。また、アポ電があった後、自宅を訪れた警察官や金融機関職員を装う人物に、銀行などのキャッシュカードをすり替えられる被害が急増しており、昨年1年間の全国の被害は1,348件、被害額は18億9,000万円にも上り、オレオレ詐欺の「振り込み型」(約3億8,000万円)の被害額を大きく上回りました。相手をだましてカードを持ち去るのではなく、気付かれずにすり替えているため、「詐欺」ではなく「窃盗」に該当するため、特殊詐欺統計には計上されていないものの、警察庁は、実質的には特殊詐欺の一種として昨年から集計を始めているということです。なお、アポ電については、国民生活センターが注意喚起を行っていますので、以下紹介します。

▼国民生活センター その電話、「アポ電」かも-知らない番号からの電話に出るのは慎重に-
▼その電話、「アポ電」かも-知らない番号からの電話に出るのは慎重に-

それによると、公的機関や実在する企業名、家族をかたり、家族構成や資産状況などを聞きだしたり、所在確認をしようとするいわゆる「アポ電」と思われる不審な電話に関する相談が全国の消費生活センター等に寄せられており、このような不審な電話は、振り込め詐欺や還付金詐欺といった財産的被害のきっかけとなるだけでなく、最近では、強盗事件に「アポ電」が関わっているという報道もなされていることから、国民生活センターではトラブルの未然防止のため、「アポ電」と思われる不審な電話に関する相談事例を紹介し、消費者に注意を呼び掛けるというもの。相談事例として以下が紹介されています。テレビの制作会社やテレビ局職員、市役所職員、消防署職員、息子を名乗るなど様々なバリエーションがあることが分かります。

【事例1】
先日テレビの制作会社を名乗る人から、「所得は500万より上ですか」などの質問があったが、「お金のことについては、答えることができない」と言って電話を切った。今日、警察の協力団体を名乗る者から、「一週間前にテレビ番組に関して電話がなかったか。捜査で押収した名簿に名前が登録されているが、一つだけの団体からは削除できない」というので、「親戚に警察官がいるので相談してみる」と言うと、態度が変わり電話も切れた。
(2019年2月受付 70歳代 女性)

【事例2】
先ほど市役所の職員を名乗る者から電話があり、「還付金がある。手続きをするので取引銀行と口座番号を知らせて欲しい。また、還付対象者になるかどうかの判断基準として口座残高が50万円以上かどうか確認したい」などと言われた。不審に思ったが取引銀行を伝えると「後ほど、銀行から案内の連絡があるので待つように」と言われ、電話が切れた。
(2019年1月受付 70歳代 女性)

【事例3】
昨日、消防署の職員と名乗る人の電話で、「一人暮らしか」と聞かれ、「はい」と答えてしまった。「何の用か」と聞くと、「災害時にすぐに救助できるように、一人暮らしか確認をしている」と言われたが、消防署がそのようなことをするとは聞いたことがなく不審な電話だった。
(2019年2月受付 年齢不明 女性)

【事例4】
テレビ局の職員を名乗る人から電話があり、「一人暮らしですか」と聞かれ、「家族と暮らしている」と答えると電話が切れた。不審な電話なので情報提供する。
(2019年1月受付 70歳代 女性)

【事例5】
昨夜、息子を名乗る電話が自宅にあり妻が出たところ、気管支炎で精密検査が必要になったなどと話ながら何度もせきこんでいたが、私に変わった途端電話は切れた。
(2019年2月受付 年齢不明 男性)

このような事例をふまえ、国民生活センターからは、(1)知らない電話番号からの電話に出るのは慎重に。着信番号通知や録音機能の活用を、(2)会話から個人情報が知られる。家族構成や資産状況を聞かれたらすぐに電話を切ること。また、家族を名乗る電話も一度切ってかけ直すことでトラブルを避けられる、(3)特に高齢者には日頃から家族や身近な人による見守りが大切、(4)警察(警察相談専用電話 #9110)や消費生活センター等(消費者ホットライン 局番なしの188)に電話するなど、周囲に相談を、といったアドバイスが掲載されています。

改元に便乗した詐欺としては、改元で「キャッシュカードが使えなくなる」と電話を受けた甲府市の80代女性がキャッシュカードと現金50万円をだまし取られた事例を含め、山梨県内では同様の手口の詐欺が2月下旬から7件発生しているという報道がありました。また、NTTドコモとソフトバンク、KDDI(au)の携帯大手3社は、新元号発表に絡めて、各社になりすました迷惑メールが利用者の携帯電話などに届く事例を確認したと明らかにしています。特典などをかたり、本文中に記した偽サイトのアドレスへのアクセスを促す内容で、3社は改元に便乗した詐欺などの疑いもあるとみて注意を呼び掛けています。これについても、国民生活センターから注意喚起がなされていますので、以下紹介します。

▼国民生活センター 新元号への改元に便乗した消費者トラブルにご注意ください!

主な手口としては、以下のようなものが紹介されています。

  • 「天皇陛下の退位を記念したアルバムを購入しないかと電話で勧誘された」などの電話勧誘販売
  • 「注文していないのに、皇室に関するアルバムが届いた」などの送り付け商法
  • 「改元で法律が変わるという通知が実在する団体名で届き、口座情報や個人情報を記入して返送してしまった」などの口座情報等やキャッシュカードをだまし取る手口

このような事例をふまえ、消費者に対して国民生活センターからは、(1)天皇陛下の御退位に便乗して、写真集やアルバム等の商品を「記念になる」、「今買わないのはおかしい」などと電話で執拗に勧誘されるケースがみられる。断る場合には、「いりません」、「購入しません」ときっぱり伝える、(2)特定商取引法の電話勧誘販売に該当する場合、法律で定められた書面を受け取ってから8日以内であれば、消費者はクーリング・オフができる、(3)注文していない商品が一方的に送り付けられた場合は、代金を支払わずに受け取り拒否を。受け取ってしまった場合でも、特定商取引法により、所定の期間(受け取った日から14日間、消費者が商品の引き取りを事業者に請求した場合は7日間)は商品を保管する必要があるが、その後は自由に処分してよいことになっている。また、その場合には、代金を支払う必要もない、(4)送り付け商法では代引きが多く利用されているが、支払い後に事業者と連絡が取れなくなる場合もある、(5)一般社団法人全国銀行協会等の事業者団体を装って「改元で法律が変わる」という書類を送り、口座情報や個人情報を書類に記載させ返送させたり、キャッシュカードや暗証番号を返送させたりする手口がみられる、(6)事業者団体や銀行等の金融機関が暗証番号を尋ねたり、キャッシュカードを送るように指示したりすることは一切ない。電話や訪問をされたり、書類が届いたりしても、絶対に口座情報や暗証番号等を教えたり、キャッシュカードや現金を渡したりしないこと、といったアドバイスが掲載されています。

その他、最近の特殊詐欺に関する報道から、いくつか紹介します。

  • 特殊詐欺の被害者のキャッシュカードを使って昨年8月、現金約1億円を引き出したとして、警視庁は当時19歳だった無職の女(20)を窃盗の疑いで逮捕しています。報道によれば、「指示役からカードを受け取り、引き出した。金は指示役に渡した」と容疑を認めているということです。不正に入手した七つの銀行のキャッシュカードを使い、銀行やコンビニエンスストアのATM21カ所で99回にわたり計約1億円を引き出し、盗んだというものであり、その被害金額の大きさ、回数の多さなどあまり類例のない「出し子」の事例と思われます。このような犯罪に気軽に手を染める(悪いこととの認識があるのであれば、なぜそれでもあえて手を染めるのか、その行動様式に関する深い理解が必要であり)若者への対策の重要性を痛感します。
  • 荷物の中身が特殊詐欺の被害金と知りながら運搬したとして、盗品等運搬罪に問われた裁判で熊本地裁は無罪を言い渡しています。報道によれば、被告が普段から衣料品店を手伝い、同店は遠方の客へも商品発送をしていたことから「(運搬を)衣料品店の用事と考えたとしても不思議はない」と指摘、その上で男性は荷物について説明を受けたことはなく、「中身を知っていたと強く推認できる証拠はない」と結論付けています。同様の事例について最高裁の判断も先日出ましたが、結論としてはこれとは逆になっています。以前の本コラム(暴排トピックス2019年1月号)で紹介しましたが、殊詐欺の被害者から送られてきた現金入りの荷物を受け取った「受け子」が、詐欺罪に問われた2件の刑事裁判で 最高裁は、詐欺罪の成立を認めて有罪としたものです。被告は、「中身を知らなかった」あるいは「荷物の中身は拳銃か違法薬物だと思っていた」と主張しましたが、判決では、「手口が広く知られているかどうかにかかわらず、被告は自己の行為が詐欺に当たる可能性を認識していたと強く推認させる」、「他人になりすまして繰り返し荷物を受け取って、報酬を得ており、故意が認められる」などと指摘しています。故意性の立証が困難であることをふまえ、犯行グループが「受け子」に対して「知らなった」と供述するよう教育していた実態があり、どうみても「知らなかった」とするには不自然な釈明がまかり通りかねない状況において、社会的害悪が増している特殊詐欺に対する最高裁のスタンスがより明確になったともいえます。ただ一方で、本当に事情を知らなかった人が詐欺罪に問われるケースは、海外で薬物の「運び屋」に知らないうちに仕立てられていたケースが散見されることからも十分考えられるところであり、捜査には慎重さが求められることは言うまでもありません。今回の熊本地裁の判決についても、結論的には真逆となりましたが、最高裁の指摘した事実関係と照らし合わせれば、さほど違和感もなく、今後、ケースバイケースで判断されていくことになるにせよ、「中身を知っていたかどうかを強く推認させる」だけの事実関係・証拠の積み重ねが求められます。
  • 自分の金融知識に対して自信のある高齢者ほど金融詐欺に遭いやすいという調査結果をフィデリティ投信がまとめています(平成31年3月29日付産経新聞)。高齢者を狙った投資詐欺や振り込め詐欺などの被害が頻発している中、金融教育や高齢者向けサービスの重要性が改めて問われているといえそうです。前述のとおり、特殊詐欺の被害は女性の高齢者が多いことは統計から明らかですが、それとこの「金融知識に自信のある高齢者」が騙されやすいという傾向に共通する背景要因は「確証バイアス」です。確証バイアスとは、「自身の仮説や信念を検証する際それを支持する情報ばかり集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向」ですが、「自分は騙されない自信がある」人ほど、特殊詐欺の電話に騙され、一度騙された人はさらに「騙されるわけがない」とより強く確証バイアスがかかってしまうことから再度騙されることとなるのが実態です(英の調査では、一度騙された人が1年以内に再度騙される確率は、通常の5倍以上にも上るとの報告があります)。最近の不祥事例においても、JR西日本の新幹線「のぞみ34号」の台車に亀裂が生じたまま運行させていた問題の有識者会議の報告書において、その背景要因として、「指令員に新大阪で床下点検をすることが伝わっただろうという車両保守担当社員の思い込み(確証バイアス)や、においや異音を正常の範囲内だと感じたという車掌の判断(正常性バイアス)などが、今回の事象を誘発した可能性が高い」と指摘されています。特殊詐欺の被害を防止・抑止していくためには、このような「心理的作用」に着目した取組みをもっと推進してく必要があると考えます。
  • 個人の資産状況などを聞き出す「アポ電」を前触れとする詐欺被害が全国的に相次ぐ中、これらをシャットアウトする「迷惑電話対策装置」が脚光を浴びています。東京都江東区の強盗殺人事件以降、購入費の一部を補助している自治体には問い合わせが急増しているといいます。
  • 企業のメールアドレスを乗っ取ってうその振り込みを指示して約1億1,000万円を詐取(いわゆる「ビジネスメール詐欺」)したとして、警視庁は会社役員の男2人を詐欺と組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)の疑いで逮捕しています。報道によれば、2人は何者かと共謀して2016年9月、西インド諸島にあるセントクリストファー・ネビスの会社代表のメールアドレスを乗っ取り、約1億1,000万円を振り込むよう指示する内容のメールを、同社の口座があるスイスの銀行あてに送付、容疑者の会社名義の足立区の信用金庫の口座に振り込ませて引き出し隠したということです。この事件の背後には、ナイジェリアの国際的犯罪組織「ブラックアックス」が浮上しており、警視庁は米連邦捜査局(FBI)と連携して捜査しているということです。

(3)暗号資産(仮想通貨)を巡る動向

前回の本コラム(暴排トピックス2019年3月号)では北朝鮮リスクの項で取り上げましたが、国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会に属する専門家パネル報告書が公表され、北朝鮮が2017年1月~18年9月の間、サイバー攻撃を用いて仮想通貨交換業者から少なくとも5回、5億7,100万ドル(約635億円)を窃取したと推計しています。この中には、2018年1月に起きた日本の仮想通貨交換業者「コインチェック」の巨額流出事件も含まれています(本報告書では、近年の北朝鮮による外国の金融機関などへのサイバー攻撃の事例を列挙しており、制裁で外貨収入が先細る北朝鮮がサイバー攻撃に注力している実態が浮かび上がり、今後、安保理が北朝鮮への追加経済制裁を検討する際にはサイバー攻撃の実態を考慮するよう勧告している点も注目されます)。

さて、今国会に仮想通貨(暗号資産)の規制強化に資する法改正案が提出されています。内容的にはすでに本コラムで継続的にウォッチしてきたものとなります。

▼金融庁 第198回国会における金融庁関連法律案
▼情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案(平成31年3月15日提出)概要
▼同本文
  • 暗号資産交換業者に対し、顧客の暗号資産は、原則として信頼性の高い方法(コールドウォレット等)で管理することを義務付け。それ以外の方法で管理する場合には、別途、見合いの弁済原資(同種・同量の暗号資産)を保持することを義務付け
  • 暗号資産交換業者に対し、広告・勧誘規制を整備
  • 暗号資産の管理のみを行う業者(カストディ業者)に対し、暗号資産交換業規制のうち暗号資産の管理に関する規制を適用
  • 暗号資産を用いた証拠金取引について、外国為替証拠金
  • 取引(FX取引)と同様に、販売・勧誘規制等を整備
  • 収益分配を受ける権利が付与されたICO(Initial CoinOffering)トークンについて、
    • 金融商品取引規制の対象となることを明確化
    • 株式等と同様に、投資家への情報開示の制度や販売・勧誘規制等を整備
  • 暗号資産の不当な価格操作等を禁止
  • 情報・データの利活用の社会的な進展を踏まえ、
    • 金融機関の業務に、顧客に関する情報をその同意を得て第三者に提供する業務等を追加
    • 保険会社の子会社対象会社に、保険業に関連するIT企業等を追加
  • 金融機関が行う店頭デリバティブ取引における証拠金の清算に関し、国際的に慣行となっている担保権の設定による方式に対応するための規定を整備

さて、先日、仮想通貨(暗号資産)が社会に注目されるきっかけとなったマウントゴックス事件について、東京地裁が、元CEOに執行猶予付き有罪判決を言い渡しました。この事件は、仮想通貨ビットコイン(BTC)の取引所「マウントゴックス」から巨額の資金が消失したとされるもので、データを改ざんして口座残高を水増ししたとする私電磁的記録不正作出・同供用などの罪に問われた運営会社の元CEOについて、懲役2年6カ月執行猶予4年(求刑・懲役10年)の判決を言い渡したものです。報道によれば、判決は、「改ざんは、被告が過去に行った架空のBTCの作成を隠蔽するために行われた」と指摘、「被告は自身に認められた権限を乱用し、虚偽の電磁的記録を作り出した」としています。一方、検察側が「顧客がBTC売買のために同社に預けた資金を投資に使ったり、生活費に充てたりした」と主張していた、顧客の預かり金3億4,000万円を着服したなどとする業務上横領や特別背任の罪については無罪とし、「現金は同社に帰属する」と指摘し、使い道は被告の裁量に委ねられていたとしています。なお、本件については、検察側は控訴を見送る方針だったものの、元CEO側はあくまで「利用者のリスクを削減しようと努めていただけだ」として無罪を主張、控訴しています。いずれにせよ、マウントゴックス事件で巨額の被害が発生したことをきっかけに仮想通貨(暗号資産)の規制の必要性が社会的に認知され、法整備が進むこととなりました。しかし、その後、コインチェック事件で再び被害が発生し、行政は業界の育成から規制に舵を切ったことは既にご存知のとおりです。そして、十分なセキュリティ態勢や利用者保護の仕組みを整備する必要性が認識され、取り組みが進められていた中で、再びZaif事件が発生、仮想通貨(暗号資産)は、その投機的な魅力だけでなく決済手段としての信頼性も大きく損なわれることとなりました。今国会で法整備が完了することで、早急に信頼回復を図り、世界に先駆けて仮想通貨(暗号資産)の規制を導入した日本が、今後、適度な規制と技術革新のバランスをとりながら世界をリードし、本来の目的であるブロックチェーン技術を実用化した決済手段としての利活用がさらに進むことを期待したいと思います。なお、平成31年3月25日付産経新聞で、「金融庁はコインチェックの事件後、業者への立ち入り検査を相次いで実施した。それでも昨秋には別の流出事件も起きた。ようやく改正案ができたとはいえ、成立、施行されるのはさらに先だ。その間に新たな不正が起きないか。監視を強めるべきはもちろん、不正を阻む規制のあり方を不断に検討し続けることが大切である」との指摘がありましたが、正に、技術革新のスピード感に規制がどれだけ対応できるかが問われる社会情勢となっており、それは何も仮想通貨(暗号資産)に限られない、今後のリスク管理における重要なテーマの一つだといえると思います。

さて、次に、先にも紹介した金融庁のオンライン広報誌(アクセスFSA)の最新号から仮想通貨(暗号資産)に関する情報を紹介します。

暗号資産(仮想通貨)交換業は、金融庁・財務局の登録を受けた業者でなければ、行ってはならないこととされているところ、2月15 日、金融庁は、無登録で仮想通貨交換業を行っていた以下の業者に対して、警告書を発出しています。

【金融庁が警告書を発出した業者】

  • 業社名:SB101 (代表者不明)
  • 所在地:ジブラルタル
  • 内容等:インターネットを通じて、日本居住者を相手方としてAtomic Coin(アトミックコイン)の売買の媒介等の仮想通貨交換業を行っていたもの(ただし、インターネットの情報に基づいて掲載しており、現時点のものではない可能性がある)
    また、改めて、暗号資産(仮想通貨)に関する注意喚起について、以下の通り周知する

    • 金融庁が暗号資産(仮想通貨)の価値を保証したり、推奨したりするものではないこと
    • 暗号資産(仮想通貨)は法定通貨ではないことや突然無価値になるリスクがあること
    • 暗号資産(仮想通貨)に関する取引を行う際は、金融庁・財務局の登録を受けた事業者かどうかを確認すること
    • 暗号資産(仮想通貨)の取引を行う場合、事業者から説明を受け、取引内容やリスク(価格変動リスク、サイバーセキュリティリスク等)をよく理解してから行うこと

また、ICO(Initial Coin Offering)に関する注意喚起も行われています。

一般に、ICOとは、企業等が電子的にトークン(証票)を発行して、公衆から資金調達を行う行為の総称。トークンセールと呼ばれることもあるところ、全世界でICOによる資金調達が急増、ICOにより発行されるトークンを購入する際には、次のような高いリスクがあります。

  • 価格下落の可能性
    トークンは、価格が急落したり、突然無価値になってしまう可能性がある
  • 詐欺の可能性
    一般に、ICOでは、ホワイトペーパー(注)が作成される。しかし、ホワイトペーパーに掲げられていたプロジェクトが実施されなかったり、約束されていた商品やサービスが実際には提供されないリスクがある。また、ICOに便乗した詐欺の事例も報道されている(注)ICOにより調達した資金の使い道(実施するプロジェクトの内容等)やトークンの販売方法などをまとめた文書をいう。トークンを購入するに当たっては、このようなリスクがあることや、プロジェクトの内容などをしっかり理解した上で、自己責任で取引を行う必要がある

その他、仮想通貨(暗号資産)を巡る最近の動向からいくつか紹介します。

  • 仮想通貨(暗号資産)の無断採掘を巡る裁判所の判断が出ている点も注目されます。ウェブサイトを閲覧する人のPCで仮想通貨を「マイニング(採掘)」するプログラムを、閲覧者に無断で自分のサイトに設置したとして、不正指令電磁的記録保管罪に問われた男性ウェブデザイナーについて、横浜地裁は、無罪(求刑・罰金10万円)を言い渡しています。プログラムがコンピューターウイルスに当たるかが争点となりましたが、判決はウイルスと認めなかったものです。報道によれば、判決では、当該プログラム(コインハイブ)を「人の意図に反する動作をさせるプログラムだ」と認定した一方、(1)マイニングはサイトの質の向上のための資金源となり、閲覧者にも利益となる側面がある、(2)消費電力の増加などの影響が生じるが、その程度は広告表示と大きく変わらない、(3)当時はコインハイブに対する賛否が分かれていたなどと指摘し、「捜査当局など公的機関の事前の注意喚起もないなか、いきなり刑事罰に値するとして責任を問うのは行き過ぎの感を免れない」とも述べ、ウイルスだと判断するには「合理的な疑いが残る」と結論づけたということです。
  • 仮想通貨(暗号資産)「モナコイン」の保管先をサイバー攻撃し、約1,500万円相当を不正に引き出したとして、警視庁は、栃木県の学校に通う宇都宮市の少年(18)を電子計算機使用詐欺と組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)の容疑で東京地検に書類送検しています。本事件では、少年は約8,200回の送金依頼をして保管サイトのシステムに誤作動を起こさせ(高い負荷がかかると誤作動を起こすサイトの脆弱性が突かれた形)、詐取した後、海外の仮想通貨業者を介して作った匿名性の高い口座に移したとされます。さらに、詐取したコインを海外の口座に送金する際、追跡を難しくする自作のプログラムを使用していたことも分かっています。なお、事件には発信者の特定を困難にする匿名化ソフト「Tor」が使われていましたが、被害に遭ったサーバーのアクセス記録を解析した結果、少年の関与が浮上したもので、仮想通貨(暗号資産)の流出事件での摘発は全国で初めてとなります。Torが捜査の「壁」となりましたが、サーバーと仮想通貨の取引履歴を記録するブロックチェーンの解析で少年を特定できたという点では捜査上の特筆すべき成果だといえると思います。ただ、これだけ仮想通貨(暗号資産)のセキュリティの強化が叫ばれ、「ホットウォレット」がサイバー攻撃を受けるおそれが高いと指摘され、仮想通貨(暗号資産)業界では、必要以上の仮想通貨を保管しないなどの対策が検討されていた中での事件でもあり、同業界の信頼回復はまだまだ道半ばであることを痛感させられます。
  • 埼玉県警は、駐車違反金の滞納を繰り返した東京都大田区の職業不詳の男性(33)から仮想通貨(暗号資産)など約64万円相当を差し押さえ、滞納金を徴収したと発表しています。駐車違反に関連して仮想通貨を差し押さえたのは昨年の兵庫県警に次いで2例目となります。2017年4月に改正資金決済法が施行され、仮想通貨(暗号資産)が法律上財産として認められたことを踏まえた措置となります。
  • 実際のビットコインの取引量は20分の1以下ではないかとする米仮想通貨交換業者がまとめた仮想通貨取引所の報告書が波紋を広げているといいます(平成31年4月3日付日本経済新聞)。報道によれば、世界81の交換所を対象に売買状況を分析し、3月下旬に米証券取引委員会(SEC)に提出した報告書では、仮想通貨交換所は取引が活発なように見せかけるため、取引業者が自社内のアカウントで売買を繰り返す「偽装」が目立っており、水増しされた取引が全体の95%超と分析しています。交換所の中には相互に相殺される買いと売りが一体となった注文が多く、昼夜で取引量が変わらないなどの不自然な点が多く見られたということです(なお、透明性の確保された世界10社が公表されていますが、そのうち2社は日本の事業者)。実体のない取引で、個人投資家のマネーを誘導していたとすれば、仮想通貨(暗号資産)業界の信頼が揺らぎかねず、事業者は説明責任を果たす義務があるものと思われます。

(4)テロリスクを巡る動向

本コラムでその推移を見守り続けてきたイスラム教スンニ派過激派組織「イスラム国」(IS)に対する米国などのシリア掃討作成については、既に米トランプ大統領が「100%解放した」との声明を発表しています(報道によれば、ISは「残虐な処刑、子ども兵士、女性や子どもに対する性的虐待や殺人」を是認しているとし「ネットでISの宣伝を信じる全ての若者に告げる。もし参加したら死ぬことになる。代わりに素晴らしい人生を送ることを考えなさい」と警告したほか、ISが完全に打倒されるまで、地球規模の対IS包囲網で警戒を続けるとしています)。米陣営の「シリア民主軍(SDF)」の報道官も、ISの最後の支配地、シリア東部バグズ村を奪還したと宣言したうえで、「逃げた戦闘員や、支持者は今も数万人いる。避難民に紛れ、キャンプなどに潜伏している」と、残存勢力は洞窟のような場所やユーフラテス川近くの塹壕に潜伏中で、降伏を求めているものの、なお衝突が続いている状態であることを認めています。今後は、逃亡した戦闘員の捜索を継続するものの、仮にISが制圧されても、戦闘員は他の地域で活動を続け攻撃を行う可能性もあり、なお脅威は続くとみるのが妥当と思われます。

実際のところ、過去、イラク政府は2017年12月、ISから全土を解放したと宣言していますが、最大拠点だった北部モスル周辺などでは、今でもIS戦闘員の活動が伝えられています。さらに、ISは、地方組織や戦闘員のネットワークを再構築していると国連報告書も警告しているように、ISは、軍事的に劣勢になり始めた後も、さまざまな国で発生した攻撃の犯行声明を出していますが、多くは同組織からの「指示」によって犯行に及んだわけではなく、その思想に共鳴して単独か少数で攻撃を行う「ローンウルフ(一匹オオカミ)」型の犯行です。組織的支援の下で訓練されたIS戦闘員・工作員が行う攻撃だけでなく、海外の支持者に対して攻撃を計画するよう数年前から呼びかけ、「リアルIS」から「思想型IS」への変質(転換)を図っており、だからこそISには回復力があるともいえます。このようなISの本質の捉え方については、報道(平成31年3月24日付産経新聞)が大変示唆に富んでおり、例えば、「イスラム過激派勢力は離合集散を繰り返しており、ISも元々は国際テロ組織アルカーイダから分裂した組織だ。個々の戦闘員も同様で、「戦闘員はISを含むテロ組織を次々と渡り歩いている。服装や戦法が変わるだけだ」という。英陸軍トップは、「イデオロギーや思考法に対する支持は今後も続く。おそらく次世代も同様だ」と述べ、ISを100%打ち負かしたと考えるのは誤りだという主張は正にそのとおりであり、ISの思想に共鳴する者がいまだに多いことから、ISの再活発化や「第2のIS」の出現が懸念されること、結局は「ISとの戦いはあらたな形で続くことになる」という点も本質を突いた見方だと思われます。なお、ISの支配地域の完全奪還を表明した米政権はシリア駐留米軍の撤収に着手する見通しですが、今後のシリア情勢は内戦に介入してきたロシア、イラン、トルコの動向がカギを握ることになります。3カ国は独自に和平協議の場を設けるなどして共同歩調を取ってきましたが、米の存在感低下を受けて勢力争いが本格化する可能性もあり、シリアのアサド政権の後ろ盾を自任するイランが米軍撤収を受けてシリアでの影響力を拡大すれば、シリアと国境を接するイスラエルへの重大な脅威となることから、米の早期の完全な徹底もまた考えにくいところです(中東最大の米同盟国であるイスラエルの生存権を確実に保障することは、トランプ政権の中東政策の至上命題の一つであるため)。実際のところ、報道によれば、米国務省のシリア担当代表は、「非常に限定された数」の駐留米軍がシリア北東部にとどまり、IS掃討作戦などに当たると説明、期間については「現時点で未定」と話しているということです。

なお、今後の大きな課題の一つは、IS戦闘員やその家族の帰還問題です。米トランプ大統領は欧州諸国に対し身柄を引き取って裁判にかけることを要請していますが、各国は及び腰状態となっています。例えば、仏外務省は声明でIS孤児の帰国を認め、「特に無防備な状況に置かれた極めて幼い子供たちの状況を鑑みて(帰国許可を)決定した」と説明する一方で、大人のIS戦闘員に関しては「罪を犯した国で裁かれなければならないというフランスの立場は不変だ」と強調し、帰国を認めない方針をあらためて表明しています。

ニュージーランド(NZ)で先月発生した銃乱射テロでは、50人が死亡、50人が負傷するという大惨事となりました。さらに、このテロの実行犯が銃撃の様子を、フェイスブック(FB)を通じて生中継しています(動画のリンクは実行犯によって「8Chan」と呼ばれる匿名で使えるネット掲示板に提示され、実行犯と直接の面識が無い人でも閲覧できる状態になっていたといいます)。テロ動画の拡散もまた人々の心を傷つけるテロの類型の一つであることが世界中に衝撃をもって伝わったものと思います。それに加えて、動画はその後ツイッターやユーチューブなどで拡散し、事件から数時間近くたっても閲覧可能となっていたことが問題視されています。SNS各社は近年、悪質コンテンツの排除に力を入れていますが、その限界が今回のテロでも露わとなったといえます。特に今回は、監視の目が追いつかない速さで拡散しており、報道によれば、FBは声明で、「事件発生後24時間で150万の動画を削除した。24時間態勢で作業する」と訴えてはいますが、それでも対応に限界があるのは明らかです。さらには、報道で総務省の担当者が、銃乱射事件のような動画は、「ネットにアップすること自体が法律違反ではなく、抑止は難しい」と話していますが、(その内容は正しいのかもしれませんが)倫理的に大変な違和感を覚えます。また、そもそも削除するか否かの判断はあくまでプロバイダーなどに委ねられている点も、本事件の後では何か釈然としない思いが残ります。それに対して、豪政府は、本事件を受けて、テロ攻撃や殺人、レイプなどの実行犯がつくって投稿された映像について、ソーシャルメディア企業がすぐに削除しなかった場合、企業の担当幹部に最長で3年の禁錮刑か、最高で年間の世界売上高の10%相当の罰金を科す内容の法案を今月(4月)議会に提案すると発表しています。豪メディアによると、対応が迅速で妥当だったかどうかは、裁判で陪審員らが判断することになるということです。関連して、平成31年3月16日付日本経済新聞で、専門家が、「現在の技術は悪質な生中継コンテンツを的確に捕捉し削除するようにはできていない」とコメントしており、「人が悪質かを判断し、AIはその再掲を防ぐ役割が主」であり限界は当然あると指摘していますが、だからこそ、プラットフォーマーにはより自分事として削除にあたる動機付けが必要ではないかと思われます。そもそも米国の法律ではSNSなどプラットフォーマーはコンテンツの内容に責任を負わないとされてきた経緯がありますが、あらためて「SNSの公益性」に関する議論を真剣に行う時期にきているのではないかと感じます。少なくともテロ動画等の拡散を放置することは、SNS等の事業者がテロを助長することに直結しているのであり、あわせて人々を傷つけるテロ行為そのものでもあって、SNSの「犯罪インフラ性」を放置することなく、その「公益性」を認めること、その意味では豪政府の示した方向性はひとつのテロリスク対策として評価できるものと思います(もはやテロリスクは対岸の火事ではない時期に差し掛かった日本においても、「違法でないから抑止できない」という思考停止レベルを打破する動きが速やかに出てくることを期待したいと思います)。

最後に、最近の日本におけるテロリスク対策を巡る報道からいくつか紹介します。

  • 2020年東京五輪・パラリンピックに向け、警視庁は、愛知、兵庫、福岡など14道県警から計85人の特別出向者を受け入れ、採用発令式を開いています。大阪府警からの追加の受け入れも予定し、最終的には100人規模になる見込みだといいます。大会は長期にわたる上、海外で相次ぐ車両突入テロへの対応や、比較的警備が手薄な駅や繁華街などの「ソフトターゲット」の警戒が必要で、警備人員の確保が課題となっていることへの対応として活躍を期待したいと思います。
  • JR東海は、大阪府警、大阪市消防局と合同で、新幹線の車内で爆弾が爆発し数十人がけがをした想定のテロ対策訓練を行っています。報道によれば、訓練は終電後の新大阪駅の新幹線車両で実施され、約110人が参加、爆破予告を受け駅員が乗客を誘導している最中に爆発が起きたとして、救急隊員が負傷者役のJR東海社員らを運び出し、治療の優先度を判定するトリアージをするなどが行われたようです。

(5)犯罪インフラを巡る動向

最近の報道から、「犯罪インフラ」となりかねない、犯罪や犯罪組織の活動を助長するようなスキームや脆弱性等について紹介します。

特殊詐欺の項でも紹介しましたが、アポ電強盗が社会問題化している中、特殊詐欺グループとの関連が濃厚といわれる犯行グループが、SNSで高額報酬の「闇バイト」の希望者に接触していたことが分かっています。「闇バイト」は違法性や危険性などを伴う高額報酬の仕事を指すとされ、報道によれば、容疑者が自身のSNSで、「闇バイト」など高額報酬の仕事を探している複数の人物と接触した形跡があったということです。お金に困った人などを詐欺や強盗のメンバーに仕立てるための「闇サイト」を可能にしているインターネットの「犯罪インフラ」性、実際に「闇サイト」に集客するためのSNSの「犯罪インフラ」性があらためてクローズアップされています。

一方、本コラムでもたびたび取り上げていますが、ネットの「犯罪インフラ」性をあらためて衝撃とともに実感させた事例として、未成年(19)の元大学生が殺傷能力の高い爆薬や拳銃、覚醒剤を製造したなどとして、爆発物取締罰則違反や武器等製造法違反、覚醒剤取締法違反などに問われた事件があげられます。本件については、先日、名古屋地裁は、懲役3年以上5年以下の不定期刑(求刑・懲役3年以上6年以下)とする判決を言い渡しました(双方が控訴せず確定しています)。報道によれば、裁判長は「いずれも反社会的で悪質性が高い」と述べていますが、本人の資質もさることながら、その興味(知的好奇心)を見たし、(社会規範を踏み出し)実行を可能したのが「ネットの犯罪インフラ性」だといえます。少年は爆発物などの化学反応に興味を抱き、ネットで材料や製造方法を調べ、SNSを通じて拳銃や覚醒剤の製造方法を知っています。(本コラムでもたびたび指摘してきましたが)判決でも言及されたように、今回の事件は、ネットを利用すれば格別の知識や設備、技能がなくても危険物を製造できることが実証された点は、テロリスク対策の観点からも大変衝撃的でした。報道(平成31年3月25日付毎日新聞)で専門家が指摘しているとおり、「サイバー空間の高度化が進む一方で利用者のモラル教育は追いついていない」実態が明らかであり、一方で、ネットの利便性や「表現の自由」とのバランスの中で「不正アクセスや違法な情報をどう規制するのか、社会全体で考える必要がある」時期に来ているのは間違いのないところです。

また、「ネットの犯罪インフラ性」としては、ネットオークションサイトの「ヤフオク!」に「ウラン99%」などとうたった物質が出品された事件もまた衝撃的でした。その後、警視庁が出品された物質を押収し、原子力機構に鑑定を依頼したところ、「ウラン」であることが確認されました。報道によれば、出品者の男性は任意の調べに入手先について「海外のサイトで購入した」と説明、原子炉等規制法では許可を受けた事業者以外が劣化ウランなどの核燃料物質の譲渡を禁止、警視庁はオークションサイトでの売買が譲渡にあたる可能性があるとみて捜査を進めているということですが、そもそも個人がネットを通じて「ウラン」が入手でき、それがネットで転売されることが可能になっていること自体、(犯罪組織の手に渡る危険性も含め)極めて問題が大きいといえ、ネットやオークションサイト、フリマサイトにおける違法な「物」のやりとりについてもどう規制していくべきか、社会全体で考える必要があると思われます。

さて、最近の報道では、クレジットカードが「犯罪インフラ化」している事例も散見されました。例えば、クレジットカードの仮登録サービスを使って不正にネット通販大手「アマゾン」で買い物をする権利を得たとして、埼玉県警が、20歳の男性を電子計算機使用詐欺容疑で逮捕しています。報道によれば、このカード(Amazonテンポラリーカード)は三井住友カードがアマゾンと提携して発行しており、ネット上で名前や住所、引き落とし口座などを入力すれば、即時審査でクレジットカードと同様に使えるカード番号などのカード情報が発行されるもので、実際のカードが届くまでの間、3万円までアマゾンで買い物できるといいます。本事件では、同カードを複数の架空名義で取得し、ノートパソコンなど計約50点(約100万円相当)を購入したものの、結果的に、男性自身の引き落とし口座が登録され、振替不能となったことから発覚しましたが、他人名義や架空名義の口座が登録できたとすれば、犯罪組織がより大規模に悪用する可能性も考えられるところであり、(行き過ぎた利便性が)正に「犯罪インフラ」となりかねない状況だったといえます。また、直近では、「クレジットマスター」を悪用する手口で2,400万円にものぼるカード不正利用をしたとして男ら2人が逮捕されるという事件がありました。昨年12月にも、スマホ決済サービスのPayPayでクレジットマスターを悪用した詐欺の被害が相次ぎましたが、「クレジットマスター」とは、カード番号に規則性があることを悪用する手口で、特別なプログラムなどで、実在するカード番号を基に別の番号を割り出すものです。報道によれば、容疑者は、約400件のカード情報を入手し、サイトで航空券などを購入して転売していたとみられています。請求を受けたカードの名義人がカード会社に相談し発覚したということです。そもそもクレジットカードの番号は14~16桁あるものの、その番号は完全にランダムな数字というわけではなく、発行会社や一定の規則などに従って決められているといいます。クレジットマスターはこうしたルールを逆手にとり、実在しそうなカード番号を大量に作成し、それを通販サイトなどで手あたり次第に利用することで、本当に使えるカードの番号を突き止め、さらにはカードの有効期限などについても、ランダムで作成したものを総当たりで試し、有効な数字を割り出すというものです。偶然の一致が犯罪に悪用されるという意味で予防が難しい犯罪といえますが、通販サイトや銀行などは、「クレジットカード番号を複数回間違えた場合は取引を停止する」、「クレジットカード番号とは別に、特定のパスワードや個人情報を追加で入力させる」、「利用ごとに使い捨てのパスワード(ワンタイムパスワード)などを使用する」といった方策によってこれを防ぐのが一般的となってはいるものの、(前述のpaypayの脆弱性もうそうでしたが)セキュリティチェックの甘い通販サイトが世界中に1つでもあれば、加害者側はそのサイトを使ってカードの不正利用ができてしまうことになります。また、クレジットカードが絡む犯罪インフラという点では、不正入手したクレジットカード情報を現金化する手段として、インターネットで寄付を募る「クラウドファンディング」(CF)サイトが悪用されているといった実態も指摘されています。これは、寄付を装い、流出したカード(カード情報)が悪用され勝手に決済されるというもので、ネット上で氏名や連絡先などの登録は必要とされてはいるものの、厳格な本人確認は求めないサイトもあり、そういった脆弱性が悪用されているといいます。このケースでは、「クレジットカード」「CFサイト」「本人確認の脆弱性」という3つの犯罪インフラ性が組み合わされた犯罪であるともいえ、一方で利用者や運営事業者のリスク管理のあり方も問われているといえると思います。これらの悪用事例から、あらためて、クレジットカードの利便性の裏に潜む犯罪インフラ性について注意喚起をしておきたいと思います。

スマホなどで使われる「生体認証」の安全性を脅かす報告が相次いでいるということです。報道(平成31年3月24日付日本経済新聞)によれば、顔や指紋の認証を突破した事例が見つかっており、パスワードを覚える必要がないなど手軽に個人を判別できる生体認証は利便性が高い一方で、生体データが流出した時などのリスクは高いといえます。そもそも生体認証の精度を高めれば高めるほど生体のもつ日々のちょっとした変化で認証されないリスクも高まることになり、現実は、ある程度の「寛容さ」を持たせているということであり、利便性を優先した結果、犯罪インフラ性を高めているのが実態です。さらに、犯罪者側からの誤認をさせるための技術の開発も進んでいるということです。それに対し、利用者側も、高解像度のカメラがスマホ等に搭載され、SNSに人物の写真をアップすることが格段に多くなっている現状において、本人が意図しない形で写真が公表され、顔認証や光彩認証、指紋認証等に悪用されるリスクが高まっている点にも注意が必要な状況です。正に、利便性と安全性のバランスをいかに高い次元で両立させるかが、生体認証技術の「犯罪インフラ」化防止のためのポイントとなっています。

さて、上記以外について、箇条書きとなりますが、最近の報道から犯罪インフラにかかる事例を紹介したいと思います。

  • 空き巣に不動産業界の「慣習」が悪用されていた事例が発覚しています。報道(平成31年3月11日付産経新聞)によれば、悪用されたのは「物件の内覧用の鍵」で、管理する不動産業者がガスや電気のメーターボックス内などに隠しておいたものだといいます。場所さえ知っていれば誰でも入手できる状態で、空き部屋から侵入して隣の部屋等で空き巣を行うというものです。さらには、南京錠についても、被告が「(ダイヤルを)1つだけを動かせば開くことが多い」と供述している点にも注意が必要です。いずれも不動産業界における利便性を追求した結果の悪しき「慣習」が犯罪インフラ化した事例だといえます。
  • 法務省は、2018年の難民認定申請数などを公表しています。それによると、申請数は前年比▲9,136人(▲47%)となる10,493人となり、8年ぶりに減少に転じたということです。さらに、難民認定されたのは前年比+22人の42人、認定されなかったものの人道的配慮で在留が認められたのは▲5人の40人となっています。難民認定制度は2010年の運用変更によって、申請から半年で一律に就労が可能になりました。審査が長期化した申請者に対する経済的な配慮だったものの、変更後に(就労目的の偽装)申請が急増し、大量の申請への対応が追いつかず、審査が長期化して真に救うべき人の迅速な救済に支障をきたす恐れが出ていたところ、難民保護の迅速化を図るため、昨年1月に開始した就労目的などの申請を抑制する運用が影響したものと考えられます。実際のところ、ドイツでは、難民受け入れの可否を判断する当局で、職員らが賄賂を受け取り、犯罪歴などで本来受け入れられない難民に滞在許可を与える不正が大規模に行われていたようであり、不正に認定を受けた疑いのある難民の中には、ISとのつながりが疑われ、認定後にシリアに出国したとみられる人物も含まれていたともいわれています。このような海外の犯罪者や犯罪予備軍等を偽装申請者という形で日本国内に流入させれば治安悪化につながりかねないとして、難民認定審査自体の犯罪インフラ化の懸念を以前の本コラム(暴排トピックス2018年6月号など)でも指摘していたところ、その傾向に歯止めがかかっているという点では今後の推移に注目していきたいと思います。
  • 本コラムでもたびたび指摘してきたタックスヘイブン(租税回避地)に設立されたペーパーカンパニーなどに関する秘密ファイル「パナマ文書」については、一連の報道をきっかけに各国政府が徴収した税金や罰金が総額12億ドル(約1,300億円)を超えることが、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)のまとめで分かったということです。報道によれば、英国2億5,000万ドル余、ドイツ1億8,000万ドル余、スペイン1億6,000万ドル、フランス1億4,000万ドル、オーストラリア9,288万ドル、コロンビア8,888万ドルなどとされ、日本の国税当局は徴収額を明らかにしていませんが、これまで個別の事例がいくつか報道されています。タックスヘイブンの問題については、本コラムでもたびたび指摘してきましたが、課税逃れの観点にとどまらないタックスヘイブンの問題の本質を考えるうえで、かつて、金融庁関係者から、BVI(英領バージン諸島)のファンド等を引受先にしているファイナンスは「不公正ファイナンス」である可能性が高い(さらには、「P.O BOX 957 Tortola BVI」とする私書箱を住所に使っている場合はよりその可能性が高い)との指摘がなされていた点は知っておきたいところです。このような不公正ファイナンスの引受け手である海外のファンドの「真の所有者(beneficial owner)」は、実際は日本にいて、反社会的勢力とつながっていることも多い(いわゆる「黒目の外人」と呼ばれている人たち)とも言われています。今後、CRS(OECDが公表した、非居住者に係る金融口座情報を税務当局間で自動的に交換するための国際基準「共通報告基準」)や、パナマ文書・パラダイス文書等の分析、その他新たなリーク等により、タックスヘイブンに設立された夥しい数のペーパーカンパニーの「真の所有者」や「複雑な送金経路と資金移動の実態」が解明されること、そして、そこに関わる怪しい人脈の解明がすすむこと(過去の事案・悪用の痕跡であったとしても、そこに登場した人物や団体・組織の関連を知ることは極めて有用な情報となります)が期待されるところです。
  • 愛知、滋賀、兵庫3県警は、偽の在留カードを提供しようとしたとして、入管難民法違反の疑いで、中国籍の容疑者を逮捕しています。報道によれば、容疑者は愛知県内でカードを製造していたとみられ、「約400枚作った」と供述しているということです。いわゆる「道具屋」と呼ばれる公的資料・証明書等の偽造を手掛ける犯罪インフラのひとつですが、以前、この容疑者に製造方法を教わった別の容疑者も逮捕された事件も発覚しており、組織性があったか否かも含めその拡がりに注意が必要だといえます。

(6) その他のトピックス

1. 薬物を巡る動向

ミュージシャンで俳優のピエール瀧容疑者が麻薬取締法違反の罪で起訴されました。所属事務所のソニー・ミュージックアーティスツは、同容疑者とのマネジメント契約を解除したと公式サイトで発表、「本件に関しましては、引き続き誠意をもって対応させていただく所存です」としています。また、直近でも、コカインを使用したとして、警視庁渋谷署が、麻薬取締法違反の疑いで、東京慈恵会医科大の解剖学の研究職ら男女3人を再逮捕しています。容疑者が大学で使用しているロッカーからは、乾燥大麻やコカイン、合成麻薬とみられるものが見つかったということです。これらの事件で注目された「コカイン」ですが、そもそも「コカイン」と「ヘロイン」、「覚せい剤」の違いについて、溝口敦著「薬物とセックス」より以下に引用します。

まず興奮作用を有するもの。次いで幻覚作用を持つもの。3番目に抑制作用を有するもの。だいたい脳に働くものはこの三つの機能を持っています。興奮作用の薬物としては覚醒剤、コカイン、MDMA、向精神薬のリタリンなど。押尾学が保護責任者遺棄致死罪で逮捕されたとき使っていたのがMDMAです。リタリンも一時期流行しました。使用者はリタラーと呼ばれていました。幻覚作用を持つものはLSD、マジックマッシュルーム(幻覚きのこ)、大麻、MDMAなど。MDMAは興奮作用と幻覚作用、両方を有しています。踊る方のクラブなどで乱用され、MDMAを摂取して踊る。麻薬の王と言われるヘロイン、あへん、向精神薬の睡眠薬などは抑制作用を有しています。危険ドラッグは指定薬物として法令で指定しているものだけでも2千種類以上あります。興奮・抑制・幻覚作用を全て網羅しています。危険ドラッグには麻薬や覚醒剤以上に危険なものもあり、ドラッグというより正体不明の猛毒と言った方が正解です。

前回の本コラム(暴排トピックス2019年3月号)では、財務省の発表した「平成30年の全国の税関における関税法違反事件の取締り状況」を紹介しましたが、その中でも、「ヘロインやコカイン、MDMAなどの麻薬事犯は、摘発件数は229件(前年比約1.4倍)、押収量は約165kg(前年比約2倍)と増加していますが、とりわけ、コカインの押収量が約152kg(前年比約15.5倍)、MDMAの押収量が約9kg(前年比約80.4倍)など急増(コカインの押収量は過去最高)している点が極めて特徴的であり、急激に蔓延している状況がうかがわれます」と指摘しました。さらに、冒頭紹介した「平成30年における組織犯罪の情勢」によれば、コカインの使用や所持、密売などで、全国の警察による平成30年の摘発者数は197人に上り、統計が残る昭和34年以降、最多になっており、平成25年は46人だったところ、その後増加の一途を辿っています。また、薬物事犯別検挙人員については、暴力団構成等の割合は覚せい剤が47・1%であるのに対し、コカインは18.3%であり、暴力団などによる組織的な密輸ルートはまだ確立していないことがうかがえます(逆に外国人の割合については、覚せい剤が6.4%であるのに対しコカインは42.1%を占める逆転現象が確認できます)。なお、コカインの押収量が激増したのは2013年で、その前年の押収量の10倍超にあたる118キロものコカインが神奈川県の海岸に漂着したあたりからだといわれています。数字を見れば、コカインがここ数年で大きく存在感を増していることが分かります。対する警察も、新開発したコカインの光学系鑑定機器を今年度中に導入する方針だといわれています。従来の鑑定キットは危険ドラッグとの見分けがつかず、誤認逮捕が相次いでお蔵入りとなっていたところ、新型は数分で鑑定できるということで、現行犯逮捕につながることが期待されます。

以下、最近の報道から、薬物事犯にかかる動向についていくつか紹介します。

  • 先日、興味深い判決が出ています。報道によれば、覚せい剤取締法違反の罪に問われた女性被告(37)の控訴審判決で、大阪高裁は、懲役刑の一部を実刑とした1審・大阪地裁判決を破棄し、懲役1年・保護観察付き執行猶予4年を言い渡したのですが、裁判長は、被告が多重人格として知られる解離性同一性障害(DID)であり、「数カ月前から『おっちゃん』という別人格に体を乗っ取られ、覚醒剤を買って使えとの指示にあらがえなかった」との精神科医の診断に基づき、心神耗弱状態だったと認定したというものです。DIDの影響で刑事責任能力を限定的とする判決は極めて異例となります。
  • 台東区駒形のホテル10階の部屋で、宿泊客の男性が死亡しているのを従業員が発見、所持品から60歳代の台湾籍の男とみられていますが、司法解剖の結果、体内から袋に入った覚醒剤とみられる粉末が約50袋見つかり、薬物による中毒死の可能性が高いということです。薬物を体内に取り込んで密輸する手口は以前からありましたが、袋が破けたりする危険性も高く本事件のように命がけの手口であるといえ、逆にいえば、それだけの価値があるということにもなります。
  • 東京税関と千葉県警は、覚せい剤約30キロ(末端価格18億円相当)をカナダから旅客機で成田空港に密輸したとして、覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)などの疑いで、カナダ国籍の鮮魚店従業員を2月に現行犯逮捕しています。旅客機の手荷物から日本の税関が押収した覚せい剤の量としては過去最多となるということです。報道によれば、容疑者は「カナダの空港で依頼人からスーツケースを渡され、報酬欲しさに持ってきた。中身は知らなかった」と供述しているようですが、荷物が不自然に多く、麻薬探知犬も反応、税関職員が覚せい剤を見つけたということです。本事案でも発揮された税関職員の「リスクセンス」の鋭敏さは見習うべきところが多いといえます。
  • 大麻の栽培事犯も後を絶ちません。北海道厚生局麻薬取締部は、札幌市内の一軒家で大麻を栽培したなどとして、大麻取締法違反の疑いで札幌市の男2人を逮捕し、乾燥大麻や大麻樹脂など計約16キロ(末端価格約9,765万円)と大麻草25株を押収しています。また、沖縄県浦添市の自宅マンションで大麻草46株を栽培したとして、九州厚生局沖縄麻薬取締支所は、沖縄県立大平特別支援学校(浦添市)小学部の教諭と夫の無職の男の両容疑者を大麻取締法違反の疑いで再逮捕したと発表しています。夫婦が大麻を栽培しているようだとの情報が寄せられ、麻取が沖縄県警と合同で捜査していたものです。なお、以前の本コラム(暴排トピックス2018年1月号)でも紹介しましたが、埼玉県警のHPでは、大麻栽培プラントに関する情報が掲載されています。
▼埼玉県警察 大麻の乱用が急増中!

本サイトによると、「大麻は、覚醒剤のような化学合成品とは異なり、高度な設備や専門知識がなくても生産することが可能なことから、私たちの身近な場所が、大麻栽培プラントとして利用され、違法薬物の供給源となっている可能性がある」、「大麻は「依存性がない」「安全・無害」「世界では合法」などという誤った情報を信じ、安易な気持ちで手を出すと大変危険」、「大麻は、脳神経のネットワークを切断し、やる気の低下、幻覚作用、記憶への影響、学習能力の低下などを引き起こすとともに、脳に障害を起こす可能性がある恐ろしいもの」などと警告しています。さらには、「こんな場所は要注意」として、「玄関の隙間や家屋の換気口から、大麻特有の青臭い・甘い匂いがする場合は要注意」、「光量の調節のためには、外の光をシャットアウトして暗闇を作る必要がある。大麻栽培プラントでは、雨戸や遮光カーテン等を閉め、さらに目張りをするなど、外の光の差込みや匂いの漏れなどを防いでいるケースが多い」、「人が生活している様子がないのに「電気メーターが常に早く回っている」、「常にエアコンの室外機が回っている」などの特徴がある」、さらには、「必要な作業のため、「連日深夜等に人が短時間立ち寄る」ほか、栽培に必要な「大量の土、肥料、電気設備、植木鉢、ダクトなどを運び込む」、あるいは、「収穫した大麻を、ダンボールやゴミ袋に詰め込み、人に見つからないように持ち出す」といった特徴がある」などといった専門的な情報まで掲載されており、大変参考になります。

  • タイで違法薬物のまん延が深刻化しているという報道がありました(平成31年3月23日付毎日新聞)。押収量は昨年、覚せい剤約18トン、低純度の錠剤型覚せい剤「ヤーバー」は約5億錠と、ともに過去最高を記録したということです。報道によれば、覚せい剤の多くは原料が中国からミャンマーの少数民族武装勢力の支配地域に運ばれ、密造され、そこからタイに持ち込まれ、世界各地へ密輸されているということです。一方、タイ国内ではどこでも覚せい剤が手に入るので、使用者が300万人もいるとも指摘されており、使用者の低年齢化も目立ち社会問題化している状況といい、タイ軍事政権も取り締まりや使用者の社会復帰に力を入れているものの、追いついていないのが実情のようです。そして、一部は日本など国外へ流れているということですので、日本も対岸の火事では済まされない状況であり、実際、昨年、韓国で過去最大となる覚せい剤90キロが押収された事件では、密輸に多国間の組織が関与、日本や台湾、韓国の6人が逮捕され、日本などの4人が国際手配されています。
  • 海外の大麻を巡る動向としては、平成31年4月5日付日本経済新聞の記事も大変興味深いものです。米国では、33州で医療用の大麻が合法化されており、うち10州では娯楽用も含まれますが、連邦レベルでは違法状態です。そのような中、リスクの高い大麻関連企業にいち早く投資を決めた上場企業が注目されているようです。さらに、金融規制を協議する下院の金融サービス委員会は今年3月末、大麻が合法化されている州で、金融機関が大麻を扱う事業者に貸し出しなどのサービスを提供することを許可する法案を承認し、5月にも下院が採決する見通しだといいます。報道によれば、合法化されている州でも連邦法違反を警戒し、大麻を扱う事業者との取引を避ける金融機関が多く、事業拡大のハードルとなっているとこと、この法律が成立すれば「業界に大きな影響を与える」と指摘する専門家の話を紹介しています。本コラムではたびたび大麻の危険性等について取り上げていますが、(1)医療用と娯楽用は違うこと、(2)大麻は依存性が高いこと、(3)若年層の蔓延は脳の健全な発達を阻害するものであり絶対に阻止すべきであること、(4)合法化の流れは大麻の安全性ではなく医療費等にかかる経済合理性の観点からの動きであって日本での合法化は避けるべきであることなどを指摘してきました。このような動きが日本での誤解を助長することを危惧するとともに、若年層への正確な知識の周知徹底、事業者における従業員教育の試み等の取組みが拡がることを期待したいと思います。

2. IR/カジノ/ギャンブル依存症を巡る動向

以前の本コラム(暴排トピックス2019年2月号)にて紹介した「特定複合施設区域整備法施行令(案)」のパブコメが締め切られ、結果が公表されていますので、簡単に、政府の見解のうち重要と思われる部分について紹介します。

▼e-Gov「特定複合観光施設区域整備法施行令(案)」に対する意見募集の結果について
▼意見の概要及びそれに対する特定複合観光施設区域整備推進本部事務局の考え方
  • 施行令第1条において国際会議場施設について最大国際会議室収容人員がおおむね千人以上であることを基準としていますが、施行令第2条においては、最大国際会議室収容人員の区分に応じ、主として展示会、見本市その他の催しの用に供する全ての室の床面積の合計の基準を定めており、例えば、最大国際会議室収容人員がおおむね千人以上3千人未満であれば、当該床面積の合計は12万平方メートル以上であることが必要となります。これによって、これまでにないスケールを有する我が国を代用することとなる規模のMICE施設となるものと考えております。
  • また、カジノ施設は国土交通大臣の認定を受けた区域整備計画に基づき整備される特定複合観光施設区域においてのみ設置・運営されることが可能となります。当該認定の数は3を超えないこととされており、また、一つの特定複合観光施設区域におけるカジノ施設は一つに限定されていることから、小規模なカジノ施設が乱立するというご指摘は当たらないものと理解しています。
  • IRの立地地域や規模が未確定である状況では、規模の上限を絶対値で定めることによりカジノ事業収益を活用して整備されるIR施設規模が制限される可能性もあり、法の目的である国際競争力の高い魅力ある滞在型観光を実現するという目的の制約要因となりかねないため、施行令第6条においては、絶対値による規制ではなく、割合による規制とすることが適切であると考えております。
  • なお、ご指摘の「カジノへののめり込みを防止するとの観点」については、カジノ施設の規模や数の制限のほか、「日本人等を対象とした一律の入場回数制限や入場料の賦課」、「依存防止規程に基づく本人・家族の申出等による利用制限措置や相談窓口の設置といった、利用者の個別の事情に応じた対応」、「日本人等に対する貸付業務や、広告・勧誘等の誘客時における規制」といった銃想定・多段階的な取組みを制度的に整備しているところです。
  • 施行令第7条等で規定する欠格事由としての罰金前科は、カジノ免許等に審査基準の1つとして、禁固刑に至らない罰金刑であっても、カジノ事業の特性に応じて特に一律に排斥されるべき犯罪類型を対象としており、その内容は、金融関係の犯罪に限られるものではありません。
  • ご指摘の罪にかかる罰金前科については、審査基準の1つである「社会的信用」(法第41条第1項第1号~第4号等)の判断のための個別具体的な一事情として考慮することが適当と考えられます。
  • 設置運営事業者であるカジノ事業者には兼業禁止義務が課されており、海外でカジノを経営する事業者と「同じ事業者」であるということはあり得ません。その上で、カジノ事業免許等の申請者が国外で行った行為は、欠格事由として列挙した各罪に国外犯規定がある場合等には欠格事由となり得るほか、系列グループ会社による非違行為は、必要に応じて、カジノ事業者の「社会的信用」(法第41条第1項第1号~第4号)の判断のための個別具体的な一事情として考慮され得ます。
  • カジノ事業等に関するテレビ、ラジオ、インターネット、SNS等の広告についても、法の広告規制の対象となるため、虚偽・誇大な表示や説明等は禁止されます。加えて、カジノ事業等に関して広告・勧誘をするときは、20歳未満の者に対する影響やカジノ施設の利用とカジノ行為に対する依存との関係に配慮するとともに、広告・勧誘が過度にわたることのないよう努めなければならず、また、カジノ管理委員会は、この趣旨に照らして必要があるときは、広告・勧誘をする者が従うべき「広告勧誘指針」にいメスことができることとなっています。
  • 本施行令により犯罪収益移転防止法施行令を改正し、カジノ口座の開設や30万円超のチップの購入等を特定取引に位置づけることとしており、それらの取引を行う場合には、カジノ事業者は顧客について取引時確認等を行うことが義務付けられます。
  • 法第109条第1項に基づく取引の届出(CTR)はカジノ事業がマネー・ローンダリングに利用されるリスクが高く、また、米国やシンガポール等の諸外国のカジノでもCTRが導入されていること等をふまえ、上記の犯罪収益移転防止法の規制に上乗せして導入された制度であり、施行令第16条第2項に金額については。米国が1万ドル超、シンガポールが1万シンガポールドル以上とされていることを踏まえ、100万円超としたものです。
  • CTRの対象とされる取引については、犯罪収益移転防止法上の取引時確認により本人特定事項を確認する取引であって現金の受け払いが想定されている者を対象としていますが、犯罪収益移転防止法は「債権の譲受者」に取引時確認の義務を課しておらず、本人特定事項を確認する義務がないことから、CTRの対象とはしておりません。
  • 自ら持参した30万円の現金をチップに交換し、そのチップをカジノ行為を行うことなく、そのまま現金と再び交換することは、疑わしい取引として、カジノ事業者からカジノ管理委員会に届出がされることがあり得ます。

以上をふまえIR実施法施行令が閣議決定されました。主な内容は以前の本コラム(暴排トピックス2019年2月号)も参照いただきたいと思いますが、ホテルは客室の総床面積をおおむね10万平方メートル以上と規定、カジノの床面積はIR施設全体の3%を上限とし、カジノ事業者と顧客間の100万円を超える現金取引は新設するカジノ管理委員会への報告を義務付ける、ギャンブル依存症対策として、外国人の誘客に限ってカジノ広告を認めるといった内容となりますが、本コラムとの関係でいえば、「弊害防止対策」「依存症防止対策」については、以下のような骨格となっています。

まず、「弊害防止対策」(マネー・ローダンリング対策等)の基本的枠組みとしては、「環境面の対策(反社会的勢力の排除等)」として、「免許制度(FATF勧告で求められている対策)、「背面調査による事業者・従業者からの反社会的勢力の排除」、「入場者からの反社会的勢力の排除」、「施設の構造・設備基準」などが、「取引行為に着目した対策」として、「公正なゲーミングの実施」、「取引時確認等、疑わしい取引の届出(FATF勧告で求められている対策)」、「一定額以上の現金取引の届出」、「顧客の指示を受けて行う送金先を本人の口座に限定(日本独自の対策)」などが、「顧客の行動に着目した対策」としては、「チップの譲渡規制(日本独自の対策)」、「チップの持ち出し規制」、「施設内の警戒・監視」、「事業者の規制順守のための対策」、「内部管理体制の整備(FATF勧告で求められている対策)」、「自己評価と監査の結果をカジノ管理委員会に報告(日本独自の対策)」などが並んでいます。

また、依存防止対策としては、「カジノ事業者に対して、依存防止規程に従って、以下の依存防止措置を講じることを義務付け」、「本人・家族申告による利用制限、依存防止の観点から施設を利用させることが不適切であると認められる者の利用制限」、「相談窓口の設置等」、「依存防止措置に関する内部管理体制の整備(従業者の教育訓練、統括管理者・監査する者の選任、自己評価の実施等)」などが挙げられています。なお、依存防止規程については、免許申請時にカジノ管理委員会が審査(変更は認可が必要)となります。さらに、「日本人等の入場回数を連続する7日間で3回、連続する28日間で10回に制限」を設けることや、「日本人等の入場者に対し、入場料・認定都道府県等入場料として、それぞれ3千円/回(24時間単位)を賦課」することになります。その他としては、前述のとおり、「カジノ行為区画のうち専らカジノ行為の用に供される部分の面積を規制(上限については政令で3%)」、「カジノ行為の種類及び方法・カジノ関連機器等の規制」、「日本人等に対する貸付業務の規制」、「広告及び勧誘の規制」、「カジノ行為関連景品類の規制」なども列挙されています。

さて、前回の本コラム(暴排トピックス2019年3月号)では「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」のパブコメ結果について紹介しましたが、消費者庁から「ギャンブル等依存症でお困りの皆さまへ」とする注意喚起が出されていますので、以下に紹介します。

▼消費者庁 ギャンブル等依存症でお困りの皆様へ
▼啓発用資料のサンプル

ギャンブル等をしてみようと思っている人やギャンブル等をしている人が気を付けるべきポイントとして、「法令で定められた年齢に達していない人がギャンブル等をすることは認められていません」、「仕事がうまくいかないストレス、ビギナーズラックなど、誰にでもあるようなちょっとしたきっかけで、ギャンブル等依存症になってしまう可能性があります」、「ギャンブル等依存症になってしまうと、借金をするのは問題だと分かっていてもやめられなくなってしまいます」などとしています。さらに、周囲の方が気を付けるべきポイントとして、「借金の肩代わりは禁物です。ご本人が立ち直るきっかけを奪ってしまいます」、「ご本人の状況に振り回され、周囲の方も不健康な思考に陥ることのないようにしましょう」といった点をあげています。

▼関係府省庁からの注意喚起・普及啓発用資料

本資料では、「ギャンブル等依存症とは、ギャンブル等にのめり込んでコントロールができなくなる精神疾患の一つ。これにより、日常生活や社会生活に支障が生じることがある」として、例えば、「うつ病を発症するなどの健康問題や、ギャンブル等を原因とする多重債務や貧困といった経済的問題に加えて、家庭内の不和などの家庭問題、虐待、自殺、犯罪などの社会的問題を生じることもある」と警告しています。また、「ギャンブル等依存症は、適切な治療と支援により回復が十分に可能。しかし、本人自身が「自分は病気ではない」などとして現状を正しく認知できない場合もあり、放置しておくと症状が悪化するばかりか、借金の問題なども深刻になっていくことが懸念される」とも警告しています。また、こんな行動に心当たりのある方はギャンブル等依存症に注意!としており、以下、参考になると思われます。

  • 興奮を得るために、使用金額を増やしてギャンブル等をする
  • ギャンブル等をするのを中断したり、中止したりすると落ち着かなくなる、またはイライラする
  • ギャンブル等をすることを制限しよう、減らそう、またはやめようとしたが成功しなかったことがある
  • しばしばギャンブル等に心を奪われている
  • 苦痛の気分のときにギャンブル等をすることが多い
  • ギャンブル等の負けを取り戻そうとして別の日にギャンブル等をすることがある
  • ギャンブル等へののめり込みを隠すためにウソをつく
  • ギャンブル等によって大切な人間関係、仕事、教育、または職業上の機会を危険にさらしたり、失ってしまったりしたことがある
  • ギャンブル等によって引き起こした絶望的な経済状態から免れるために、他人にお金を出してくれるよう頼んだことがある

3. 各種統計資料から

警察庁等から平成30年における各種犯罪統計資料が公表されていますので、いくつか概要について紹介します。

▼警察庁 平成30年における少年非行、児童虐待及び子供の性被害の状況

まず、平成30年の刑法犯総検挙人員については206,094人(前年215,003人、前年との差異▲8,909人、前年比▲4.1%)、うち刑法犯少年は23,489人(26,797人、▲3,308人、▲12.3%)、人口比11.4%(12.5%、▲1.1P)となり、ここ数年同様、減少傾向が続いていることが分かります。さらに、刑法犯少年のうち窃盗犯は13,163人(15,575人、▲2,412人、▲15.3%)、人口比1.89(▲0.31P)と減少する一方で、知能犯1,155人(899人、+256人、+28.5%)、人口比0.17(+0.04P)と上昇していることが分かります。知能犯のうち詐欺については1,065人(803人、+262人、+32.6%)、うち振り込め詐欺は750人(475人、+275人、+57.9%)と大きく上昇しており、特殊詐欺への少年らの関与が深まっている点に大きな危惧を覚えます。なお、特殊詐欺よりも検挙人員数が圧倒的に多い万引きについては6,418人(7,520人、▲1,102人、▲14.7%)と、刑法犯少年全体よりも減少傾向が強まっていることが分かります。一方、刑法犯少年の再犯者数については、総数は23,489人(26,797人、▲3,308人、▲12.3%)、再犯者は8,335人(9,510人、▲1,175人、▲12.4%)、再犯率は35.5%(35.5%)と高止まり傾向にあることにも注意が必要です。なお、内訳をみると、検挙人員数の多い窃盗犯の再犯者は13,163人(15,575人、▲966人、▲18.3%)、再犯率は32.8%(33.9%)と大きく減少している一方で、知能犯の再犯者は1,155人(899人、+166人、+31.4%)、再犯率は60.1%(58.7%)と大きく増加しているなど対照的な結果となっています。また、特別法犯少年の検挙人員については、特別法犯全体としては4,354人(5,041人、▲687人、▲13.6%)であるものの、大麻取締法違反は429人(297人、+132人、+44.4%)、覚せい剤取締法違反は96人(91人、+5人、+5.5%)と薬物事犯が大きく増加、とりわけ大麻事犯の増加が顕著である点はこれまでも指摘してきたとおりであり、深く憂慮すべき状況だといえます。

それ以外では、社会問題化している児童虐待については、平成30年の通告人員は80,252人(65,431人、+22.7%)、保護児童数は4,571人(3.838人、+19.1%)、検挙件数は1,380件(1,138件、+242件、+21.3%)、同じく社会問題化している児童ポルノ事件の平成30年の検挙件数は3,097件(2,413件、+684件、+28.3%)、検挙人員は2,315人(1,703人、+612人、+35.9%)とともに大きく増加傾向にある点は注目されます(社会問題化することで摘発に至る情報提供が従来以上に増加していることが考えられます)。また、SNSに起因する平成30年の被害児童数は1,811人(1,813人、▲2人、▲0.1%)、うち児童買春・児童ポルノ法違反の被害児童数は944人(1,017人、▲73人、▲7.2%)などとなっており、高止まりしている点は引き続きの注意が必要だといえます。

なお、本報告書で紹介されている主な検挙事例としては、例えば以下のようなものがありました。

  • 平成28年12月から平成30年8月にかけて、男子大学生(19歳)は、自宅において爆発物である過酸化アセトン(通称TATP)や樹脂製の拳銃、覚せい剤を製造・所持するなどした。平成30年9月までに、少年を爆発物取締罰則違反等で検挙した
  • 平成30年1月、男子大学生2人(19歳)は、スポーツ用品店からダウンジャケット等(販売価格合計4万9,680円)を窃取し、フリーマーケットアプリを利用して被害品を出品・転売しようとしていた。同年3月、少年2人を窃盗罪で検挙した
  • 平成30年7月、無職少年(19歳)は、氏名不詳者らと共謀し、市役所職員や銀行員を装って男性(78歳)宅に電話をかけ、「払い過ぎた保険料の払い戻しがある。」「行員が向かうので、キャッシュカードを渡してください。」等と嘘を言い、被害者から、キャッシュカードを受け取った上、同キャッシュカードを使用して、現金約33万円を引き出した。同年11月、少年を詐欺、窃盗罪で検挙した
▼警察庁 平成30年中における人身取引事犯の検挙状況等について

平成30年の人身取引事犯の検挙状況について、検挙件数は36件(前年46件)、検挙人員は40人(30人)、被害者数25人(42人)となっています。被疑者について、国籍・地域別では、日本が37人と約9割を占めており、風俗店等関係者が7人、暴力団構成員等が3人といった状況です。被害者の状況については、国籍・地域別では、日本が18人で被害者の約7割を占めるほか、外国人はフィリピンが4人、タイが3人で、この2か国により、過去5年間の外国人被害者の約9割を占めている状況です。また、外国人の在留資格は、短期滞在が3人、興行が2人、日本人配偶者が2人で、過去5年間では短期滞在が7割強、日本人配偶者が2割弱となっています。さらに、過去5年間で、被害者のほとんどが女性で、年齢別では、日本人は20歳未満の者が約6割、外国人は20歳代の者が5割強を占めているということです。これらの状況をふまえ、主な施策として、民間企業・NGOとの連携強化の観点から、「警察庁主催のコンタクトポイント連絡会議(平成30年7月開催)に航空会社を招へい」、「管区局の研修においてNGO職員による講義を実施」、人身取引被害者の被害申告を促すための対策として、「人身取引被害リーフレットの改訂(QRコードの追加)」等があげられています。また、今後の対策として、「人身取引事犯の確実な認知」、「人身取引被害者の的確な保護・支援」、「関係機関との連携等による取締りの徹底」といった項目があげられています。

▼警察庁 平成30年におけるストーカー事案及び配偶者からの暴力事案等への対応状況について

まず、ストーカー事案への対応状況としては、相談等件数は、平成30年は21,556件(前年比▲1,523件)と減少したものの、平成24年以降依然として高水準で推移しています。被害者と加害者の関係は、交際相手及び配偶者が約半数であり、面識なし及び行為者不明が約15%となっています。また、ストーカー規制法に基づく警告は、平成24年以降増加していましたが、平成29年から減少に転じており、平成30年も2,451件(前年比▲814件)と減少している点が注目されます。このうち、禁止命令等は、緩やかな増加傾向にあったところ、平成29年から急増、平成30年も1,157件(前年比+495件)と急増しており、ストーカー規制法施行後最多となっており、警告数の減少とは別に、事案に対してはより踏み込んだ対応がなされているものと評価できると思います。さらに、ストーカー規制法違反の検挙は、平成24年以降増加していたところ、平成30年は870件(前年比▲56件)と減少に転じたほか、ストーカー事案に関連する刑法犯・特別法犯の検挙は、平成24年以降高水準で推移していたところ、平成29年から減少に転じ、平成30年も1,594件(前年比▲105件)と減少する結果となりました。全体的に、ここ数年でストーカー事案の増加傾向は止まったもののいまだ高止まりの状況にあることが分かります。

また、DVなど配偶者からの暴力事案等への対応状況については、相談等件数は、継続して増加し、平成30年は77,482件(前年比+5,027件)とDV防止法(配偶者暴力防止・被害者保護法)施行後最多となりました。うち、保護命令違反の検挙は、平成30年は71件(前年比▲9件)と平成27年以降減少している一方で、配偶者からの暴力事案等に関連する刑法犯・特別法犯の検挙は、平成30年は9,017件(前年比+675件)であり、継続して増加している点に注意が必要です。なお、DV被害者の79.4%が女性で、男性は20.6%となっており、想像以上に男性の割合が多い印象であり、男性被害者の数も15,964人と平成14年(5,971人)の2.7倍に上り、初めて20%を超えています。その背景としては、男性が被害を届け出るケースが増えていることが要因と考えられています。

復讐のために交際相手の裸の写真などを流出させるリベンジポルノ等の私事性的画像に係る事案への対応状況としては、相談等件数は、平成30年は1,347件(前年比+104件)と増加し、4年連続で1,000件を超えており、相談等の内容では、「画像を所持されている、撮影された」が平成30年は512件(前年比+150件)と大幅に増加している点が特徴です。また、私事性的画像被害防止法違反の検挙は、前年までほぼ横ばいで推移していたところ、平成30年は36件(前年比▲21件)と減少し、私事性的画像に係る事案に関連する刑法犯・特別法犯の検挙も217件(前年比▲9件)と減少する結果となりました。なお、被害者の93.3%が女性、年代別では20代が最多の515人(38.2%)、10代は352人(26.1%)と若年層の女性が被害者となっている傾向があり、一方の加害者は9割近くが男性となっています(ただし、女性も1割程度存在する点も注目されます)。

▼経済産業省 不正アクセス行為の発生状況及びアクセス制御機能に関する技術の研究開発の状況を取りまとめました
▼別紙1

平成30年における不正アクセス行為の認知件数は1,486件であり、平成26年と比較して約58.1%減少したものの、前年から284件増加しています。また、不正アクセス行為の認知件数について、不正アクセスを受けた特定電子計算機のアクセス管理者別に内訳を見ると、「一般企業」が最も多く1,314件、認知の端緒別に内訳を見ると、「利用権者からの届出によるもの」が最も多く(852件)、次いで「不正アクセスを受けた特定電子計算機のアクセス管理者からの届出によるもの」(345件)、「警察職員による特定電子計算機のアクセスログ解析等の警察活動によるもの」(269件)の順となっており、警察のパトロールにより認知されたものが意外に多いことが分かります。また、不正アクセス後に行われた行為別に内訳を見ると、「メールの盗み見等の情報の不正入手」が前年から約2.6倍に増加して最も多く(385件)、次いで「インターネットバンキングでの不正送金等」(330件)、「オンラインゲーム・コミュニティサイトの不正操作」(199件)の順となっています。「メールの盗み見」は、ビジネスメール詐欺等のベースともなっており、いかに早く不正アクセスを認知できるかが重要なポイントとなっています(その意味では、他人から可能性を指摘されるのではなく、事業者自らが認知できるよう取組みを強化する必要性を痛感します)。また、平成30年における不正アクセス禁止法違反の検挙件数は564件、検挙人員は173人であり、前年と比べ、検挙件数は84件、検挙人員は82人いずれも減少する結果となりました。検挙件数及び検挙人員について違反行為別に内訳を見ると、「不正アクセス行為」が520件、164人といずれも約9割を占めています。不正アクセス行為の検挙件数について手口別に内訳を見ると、「識別符号窃用型(他人のID・パスワードを無断で入力する不正ログイン)」」が502件と約96.5%を占め、検挙した不正アクセス禁止法違反に係る識別符号窃用型の不正アクセス行為の手口を見ると、「利用権者のパスワードの設定・管理の甘さにつけ込んだもの」が最も多く(278件)、次いで「識別符号を知り得る立場にあった元従業員や知人等によるもの」(131件)となっており、平成26年と比較するとそれぞれ約3.3倍、約2.8倍となっているということです。一方、検挙した不正アクセス禁止法違反に係る不正アクセス行為の動機を見ると、「顧客データの収集等情報を不正に入手するため」が最も多く(195件)、次いで「好奇心を満たすため」(103件)、「オンラインゲームやコミュニティサイトで不正操作を行うため」(101件)の順となっており、検挙した不正アクセス禁止法違反に係る識別符号窃用型の不正アクセス行為(502件)について、他人の識別符号を用いて不正に利用されたサービス別の内訳を見ると、「オンラインゲーム・コミュニティサイト」が最も多く(217件)、次いで「社員・会員用等の専用サイト」(200件)となっており、平成26年と比較してどちらも約3.1倍になっているといいます。

これらの状況から、PWの使い回しなどの問題は以前から指摘されているところ、他人に知られている、容易に推測されやすいといった安易な管理状況とあわせ、利用者側のリスク管理の脆弱性が突かれている実態が明らかになっているといえます。

▼警察庁 犯罪統計資料(平成31年1~2月分)

平成31年1~2月の刑法犯の認知件数総数は112,813件(前年同期120,193件、前年同期比▲6.1%)、検挙件数は45,416件(36,500件、▲2.3%)、検挙率は40.3%(38.7%、+1.6P)となり、平成30年の犯罪統計の傾向が継続しています。犯罪類型別では、刑法犯全体の7割以上を占める窃盗犯の認知件数は79,555件(85,701件、▲7.2%)、検挙件数は28,171件(29,200件、▲3.5%)、検挙率は35.4%(34.1%、+1.3P)と刑法犯全体を上回る減少傾向にあり、全体の傾向に大きな影響を与えています。このうち万引きの認知件数は15,829件(16,800件、▲5.8%)、検挙件数は10,828件(11,686件、▲7.3%)、検挙率は68.4%(69.6%、▲1.2P)と検挙率は他の類型よりは高いものの低下している点は気になるところです。また、知能犯の認知件数は6,010件(6,846件、▲12.2%)、検挙件数は2,931件(2,974件、▲1.4%)、検挙率は48.8%(43.3%、+5.4P)、うち詐欺の認知件数は5,448件(6,221件、▲12.4%)、検挙件数は2,437件(2,411件、+1.1%)、検挙率は44.7%(38.8%、+5.9P)となっています。詐欺の方が窃盗より検挙率が高くなっていますが、認知件数の減少と検挙件数の増加の傾向を一層高め、高い検挙率によって詐欺の実行を抑止するような構図になることを期待します。

平成31年1~2月の特別法犯の検挙件数総数については10,469件(10,011件、+4.6%)、検挙人員総数は8,864人(8,552人、+3.9%)となり、こちらも平成30年を上回る検挙状況となっています。このうち、麻薬等取締法違反の検挙件数118件(115件、+2.6%)、検挙人員は60人(64人、▲6.3%)、大麻取締法違反の検挙件数は657件(539件、+21.9%)、検挙人員は504人(402人、+25.4%)、覚せい剤取締法違反の検挙件数は1,467件(1,658件、▲11.5%)、検挙人員は1,018人(1,133人、▲10.2%)などから、大麻事犯の検挙が平成30年の傾向を大きく上回って増加している一方で、覚せい剤事犯の検挙が逆に大きく減少している点は今後も注視していきたいと思います(平成30年における覚せい剤取締法違反については、検挙件数は13,850件(14,065件、▲1.5%)、検挙件数は9,652人(9,900人、▲2.5%)でした)。また、来日外国人による重要犯罪の総数は63件(74件)、うち中国14人(15人)、フィリピン8人(2人)、ベトナム8人(8人)、ブラジル8人(6人)、韓国・朝鮮6人(14人)などとなっているのは平成30年の傾向に同じです。

暴力団犯罪(刑法犯)の検挙件数は2,619件(2,814件、▲6.9%)、検挙人員は1,251人(1,213人、+3.1%)となっており、平成30年においては検挙件数が18,681件(20,277件、▲7.9%)、検挙人員が9,825人(10,393人、▲5.5%)でしたので、検挙人員の増加傾向が目につくところです。うち窃盗の検挙件数は1,512件(1,615件、▲6.4%)、検挙人員は205人(214人、▲4.2%)、詐欺の検挙件数は292件(284件、+2.8%)、検挙人員は188人(181人、+3.9%)など、平成30年の傾向同様、窃盗の検挙が減少する一方で詐欺の検挙が増加していることから、冒頭に紹介した「平成30年における組織犯罪の情勢」で指摘されている「近年、暴力団は資金を獲得する手段の一つとして、暴力団の威力を必ずしも必要としない詐欺、特に組織的に行われる特殊詐欺を敢行している実態がうかがえる」点を示す数字となっています。また、暴力団犯罪(特別法犯)の検挙件数は986件(1,125件、▲12.4%)、検挙人員724人(826人、▲12.3%)、うち暴力団排除条例違反の検挙検数は2件(3件、▲33.3%)、検挙人員は8人(11人、▲27.3%)、大麻取締法違反の検挙件数は148件(120件、+23.3%)、検挙人員は97人(72人、+34.7%)、覚せい剤取締法違反の検挙件数は617件(760件、▲18.8%)、検挙人員は424人(517人、▲18.0%)などとなっており、とりわけ薬物事犯において覚せい剤から大麻にシフトしている状況がより鮮明になっている点が注目されるところです(平成30年においては、大麻取締法違反について、検挙件数は1,151件(1,086件、+6.0%)、検挙人員は744人(738人、+0.8%)、覚せい剤取締法違反について、検挙件数は6,662件(6,844件、▲2.7%)、検挙人員は4,569人(4,693人、▲2.6%)でした)。

(7) 北朝鮮リスクを巡る動向

前回の本コラム(暴排トピックス2019年3月号)でも指摘したとおり、今年2月の米朝会談は物別れに終わりましたが、北朝鮮は対話を続ける姿勢を示す一方で、核・ミサイル開発の継続や制裁逃れなどを進めており、ここ最近のその「強かさ」を示す動きを見れば経済制裁の全面解除という安易な選択肢は取るべきではないとの意を強くしています。米トランプ大統領は3回目の会談を匂わす発言もしていますが、いずれにせよ、交渉が完全に断たれたわけではなく、引き続き今後の動向を注視していく必要があります。直近では、朝鮮日報が、「北朝鮮が最近、東部新浦の港で潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)用の3,000トン級の新型潜水艦建造に本格着手した」と報じています(平成31年4月5日付朝鮮日報)。報道によれば、建造に必要とみられる部品が多数持ち込まれたと韓国軍高官が明らかにしており、 「SLBM3、4発を搭載できる3,000トン級の潜水艦建造に成功すれば、北朝鮮の戦略的打撃能力は画期的に高まりかねない」と指摘しています。さらに、米国ミサイル防衛庁(MDA)長官も、連邦議会上院軍事委員会の聴聞会で「北朝鮮はSLBM開発を継続している」と証言しており、その動きの確かさがうかがえます。なお、北朝鮮のこうした動きは、非核化交渉が進んでいる最中も続いていたといい、これなども北朝鮮の「強かさ」を示すものとして注目されます。

一方、日本政府は、スイス・ジュネーブで開かれている国連人権理事会(47カ国)に対し、昨年まで11年間続けてきた対北朝鮮非難決議案の提出を見送っています。2008年以来、欧州連合(EU)と共同提出してきたところ、日本人拉致問題で解決の糸口を探るためには北朝鮮に一定の融和姿勢を見せ、交渉再開への環境整備を図る必要があるとの考えに傾いたようです。このあたりの駆け引きについては外交上の機微に属するものでもあり安易な言及は避けますが、北朝鮮の核・ミサイル開発継続による挑発をチラつかせる一方で、国際社会の経済制裁逃れに(不十分とはいえ)ある程度の成果を得ており、今ここで厳しい姿勢を崩せば北朝鮮側の「思うつぼ」となる可能性もあり、慎重な監視態勢を敷いていくことがマストかと思われます。なお、残念ながら、制裁逃れの実態は危険レベルにあるようです。例えば、先日公表された国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議の履行状況を監視する北朝鮮制裁委員会の専門家パネルがまとめた年次報告書によれば、北朝鮮が外貨を稼ぐため、中国の漁業者に漁業権を売却していた事例や、公海上で船同士が積み荷を移し替え、石油精製品を密輸入する「瀬取り」など制裁逃れが巧妙化していること、瀬取りを監視する日本と韓国、米国、英国などからパネルが得た情報から、2018年1月から8月中旬までに、北朝鮮は少なくとも計148回の瀬取りをしたこと(日本の外務省も先日、船籍不明の船舶が北朝鮮船籍のタンカーに横付けし、ホースを接続していた様子を確認したとして、11回目となる瀬取りを国連に報告しています)などが言及されています。さらに、直近では、あろうことか、韓国籍の船舶が「瀬取り」の疑いで、昨年10月から釜山港で留め置き状態になっていると韓国メディアが報じています。韓国籍の船が瀬取りの疑いで港に留め置かれたのは初めてであり、他国籍の船舶3隻も北朝鮮の石炭を運搬した疑いなどがあり、韓国の港に留め置かれているということです(韓国については、前述の専門家パネルの報告書の中で、韓国企業などが関与した可能性のある北朝鮮からの違法な石炭輸入などについても触れられており、北朝鮮の制裁逃れをほう助している一部実態も垣間見られます)。経済制裁は、「面」での対応であり、1か所でも「穴」があればその実効性が大きく減じられることになります。重要な当事者であり、日米韓の緊密な連携が求められている状況下、足元から「穴」を空けるような事態は避けなければいけないところです。また、「瀬取り」以外でも、専門家パネルの報告書では、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が昨年10月に平壌を訪問したポンペオ米国務長官との会談で、正恩氏が会場に乗り付けた高級車ロールスロイスは、同国へのぜいたく品の輸出を禁じた制裁決議に「明白に違反している」と断定した点も注目されるところです。同パネルは、韓国の文在寅大統領訪朝の際に登場した「レクサス」も決議違反とし、2017年1月にバングラデシュの税関で差し押さえられたロールスロイス1台や、金委員長が北京やシンガポールで利用したナンバープレートのない「ベンツ」についても調査対象になっており、同パネルも「北朝鮮の外交官が制裁回避の重要な役割を担っている」と繰り返し指摘しています。そもそも、国連安保理の経済制裁の目的は核・ミサイル開発や生産の資金を断ち、関連部品の流入を止めることにあります。ぜいたく品が対象となっているのは、核・ミサイル開発に携わる政権幹部や科学者へのほうびにもなるためであり、金委員長の高級車の存在は、核・ミサイル関連物資も北朝鮮に入っていることを示唆していると指摘する専門家もおり、そのとおりだと思います。

日本にとって北朝鮮が再び挑発に踏みきり、緊張が高まるのは不利益が大きいのは間違いありません。一方で、安易に経済制裁の包囲網を緩めることはまだまだ時期尚早です。今は、国際社会と連携して北朝鮮への監視を強める時であって、非核化と、拉致問題を巡る日朝交渉の進展に向け、米(韓)との連携強化も重要性が増しているといえると思います。

3.暴排条例等の状況

(1) 大阪府暴排条例による勧告事例

大阪府公安員会は、経営する焼き鳥店で暴力団組長らの親睦会を開かせたとして、大阪府暴排条例に基づき、大阪府内の40代の男性経営者に対し、利益供与をしないよう指導しています。さらに、親睦会を主催した任侠山口組直系の50代男性組長にも同条例に基づき指導しています。報道によれば、この経営者は昨年5月下旬、任侠山口組直系組長27人の親睦会と知りながら、料理やサービスを提供したということで、店側は代金として約10万円を受け取っていたということです。また、組長らは数年前から数回、同じ店で親睦会を開催しており、経営者は、暴力団関係者と気づいた店長から報告を受けていたものの、「店の売り上げにつながればよいと思った」などと話しているといいます。残念ながら、いまだにこのように暴力団と関係を持つことの重大性の認識が甘い事業者が存在し、だからこそ暴力団もどうにか生き延びることが出来ているのだということを痛感させられます。

▼大阪府警察 大阪府暴力団排除条例

本事例は、焼き鳥店の店長については、「暴力団の威力を利用する目的」がなく、また「相当の対償のない利益供与」でもないことから、第14条(利益の供与の禁止)第3項「事業者は、前二項に定めるもののほか、その事業に関し、暴力団員等又は暴力団員等が指定した者に対し、暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる利益の供与をしてはならない」に違反することになるものと思われます。また、暴力団員については、第16条(暴力団員等が利益の供与を受けることの禁止)第2項「暴力団員等は、事業者から当該事業者が第十四条第三項の規定に違反することとなる利益の供与を受け、又は事業者に当該事業者が同項の規定に違反することとなる当該暴力団員等が指定した者に対する利益の供与をさせてはならない」に該当するものと思われます。そして、勧告等については、本事例においては必要な指導だけでなく勧告まで行われたことから、第22条第4項「公安委員会は、第十四条第三項又は第十六条第二項の規定の違反があった場合において、当該違反が暴力団の排除に支障を及ぼし、又は及ぼすおそれがあると認めるときは、公安委員会規則で定めるところにより、当該違反をした者に対し、必要な指導をすることができる」にとどまらず、同条第5項「公安委員会は、前項の指導を受けた者が正当な理由がなく当該指導に従わなかったときは、公安委員会規則で定めるところにより、必要な勧告をすることができる」が適用されたものと思われます。

なお、関連して大阪府警察の暴排条例に関するFAQにおいて、Q4「暴力団密接関係者」と関係すると条例違反になるのですか」との問いに対する回答として、「条例違反になる場合が二つがあります。一つ目は、大阪府が発注する公共工事等において、暴力団密接関係者と知りながら、これを相手方として下請契約等の契約を締結した場合は、その元請負人も暴力団密接関係者となり、大阪府の公共工事等から排除され、事業者名等が公表されます(条例第3条、第10条、第11条)。二つ目は、大阪府の公共工事等の契約関係者(元請負人及び下請負人等)が、契約の履行にあたって暴力団密接関係者から不当介入を受けたにもかかわらず、相手方の威圧に負け介入を許し、報告を怠るなど正当な理由がなく、大阪府への報告をしなかった場合は条例違反となります。この場合は、当該違反者に「指導」、「勧告」が措置され、当該勧告を受けた者が故意に不当介入を容認し、かつ、当該勧告に従わなかったときは、その事実が大阪府広報等により「公表」されます(条例第12条、第22条、第23条)。 暴力団密接関係者と親戚や友人の関係だけでは条例違反にはなりませんが、条例第5条第2項に、事業者は、暴力団との一切の関係を持たないように努める義務が定められていることから、事業を行う上で、暴力団密接関係者との関係についても同様に努めるべきだと考えられます」とされている点はあらためて確認しておくべきことと思われます。なお、関連して、直近で、大阪府が、公共工事などから暴力団員や暴力団密接関係者を排除するための取り組みを強化するとして、今後、元請け業者などは、下請け(第二次以下の下請け契約含む)または再委託契約を行う前に、「下請負人(再委託)予定通知書」を発注所属に提出することを求める取組みを始めています。これは、正に、サプライチェーン・マネジメントの厳格化とでも言えるものであり、一方では、東京度暴排条例や福岡県暴排条例にのみ定めのある「関連契約からの暴排」の趣旨に通じるものでもあり、注目されます。

(2) 静岡県暴排条例による勧告事例

静岡県公安委員会は、六代目山口組系組幹部2人に「用心棒料」などとして現金や食料品を提供したなどとして、静岡県暴排条例に基づき、歯髄化県中部の派遣型風俗店(デリバリーヘルス)経営者に利益供与をやめるよう勧告しています。さらに、組幹部の2人には利益供与を受けないよう勧告しています。また、報道によれば、デリバリーヘルスで女性従業員を強制的に働かせていたとして静岡県警が摘発した労働基準法違反事件の関係先の捜索などから、風俗店経営者側と暴力団員とのつながりが明らかになったということです。

本事例についても、前述の大阪府暴排条例に同じく、事業者については、静岡県暴排条例第15条(利益の供与の禁止)第1項(3)「前2号に定めるもののほか、情を知って、暴力団の活動を助長し、又はその運営に資することとなる利益の供与(法令上の義務又は情を知らないでした契約に係る債務の履行としてする場合その他の正当な理由がある場合における利益の供与を除く。)をし、又はその申込み若しくは約束をすること」、暴力団員については、第18条(暴力団員等が利益の供与を受けること等の禁止)「暴力団員等は、情を知って、第15条第1項の規定に違反することとなる利益の供与若しくはその申込みを受け、若しくは同項の規定に違反することとなる利益の供与の要求若しくはその約束をし、又は事業者に同項の規定に違反することとなる当該暴力団員等が指定した者に対する利益の供与、その申込み若しくは約束をさせてはならない」にそれぞれ該当するものと考えられます。そのうえで、第24条「公安委員会は、第15条第1項、第18条、第19条第2項、第20条第2項、第21条第2項又は第22条第1項の規定に違反する行為があった場合において、当該行為が暴力団の排除に支障を及ぼし、又は及ぼすおそれがあると認めるときは、公安委員会規則で定めるところにより、当該行為をした者に対し、必要な勧告をすることができる」によって今回の勧告に至ったといえます。

なお、以前の本コラム(暴排トピックス2018年11月号)でも取り上げたように、静岡県暴排条例の改正施行が今年8月1日となっており、本事例のようなケースは、改正後に同様の違反があれば、新設の直罰規定を適用した強制的な取り締まりが可能になります。

▼静岡県警察 静岡県暴力団排除条例(一部改正パンフレット)

改正の具体的な内容として、まず暴力団の排除を特に強力に推進する地域として、(1)三島駅周辺繁華街、(2)富士駅周辺繁華街及び富士吉原地区繁華街、(3)静岡駅周辺繁華街、(4)浜松駅周辺繁華街を「暴力団排除特別強化地域」に指定しています。そのうえで「特定業を営む者の禁止行為」として、(1)特定営業を営む者が、特定営業の営業に関して、暴力団員から用心棒の役務(営業を営む者の営業に係る業務を円滑に行うことができるようにするため顧客、従業者その他の関係者との紛争の解決又は鎮圧を行う役務)の提供を受けることを禁止、(2)特定営業を営む者が、特定営業の営業に関して、暴力団員又はその指定した者に対し、用心棒料又はみかじめ料を支払うことを禁止しており、「暴力団員の禁止行為」についても、(1)暴力団員が、特定営業の営業に関して、用心棒の役務を提供することを禁止、(2)暴力団員が、特定営業の営業に関して、特定営業を営む者から用心棒料若しくはみかじめ料を受け取り、又はその指定した者にこれらを受け取らせることを禁止しています。さらに、罰則等についても、特定営業を営む者の禁止行為又は暴力団員の禁止行為をした場合は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されることになりますが、特定営業を営む者の禁止行為については、禁止行為をした者が自首したときは、その刑を軽減し、又は免除することができることとしているなど、他の暴排条例の改正動向と同様となっています。

(3) 愛知県暴排条例に基づく実刑判決事例

風俗店から用心棒代を受け取ったとして、六代目山口組弘道会系組長らが愛知県暴排条例違反に問われた事件で、名古屋地裁は、同組長に懲役10月(求刑・懲役1年)、同組幹部に懲役8月(同10月)の実刑判決を言い渡しています。本事例は、同条例の暴力団排除特別区域である錦三の風俗店の実質的経営者から、用心棒代として計200万円を受け取ったというもので、報道によれば、名古屋地裁は「暴力団の威力を背景に現金の供与を受けており悪質。事件は継続的な供与の一環で、常習性は明らかだ」と指摘しています。

なお、本事例についても、愛知県暴排条例第23条(特別区域における暴力団員の禁止行為)第2項「暴力団員は、特別区域における特定接客業の事業に関し、特定接客業者から、顧客その他の者との紛争が発生した場合に用心棒の役務の提供をすることの対償として利益の供与を受けてはならない」との定めに違反したとして、第29条「次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」の「三 第二十三条第一項又は第二項の規定に違反した者」に基づいて刑事罰が科されたものとなります。

(4) 東京都暴排条例の改正に関するパブコメ結果

以前の本コラム(暴排トピックス2019年2月号)でご紹介したとおり、東京都暴排条例の改正についてのパブコメが募集され、その結果が公表されています。なお、今回の改正の具体的な内容としては、(1)都内の主な繁華街を「暴力団排除特別強化地域」と指定し、同地域における「特定営業者」及び「客引き等を行う者」が暴力団員に対し用心棒料、みかじめ料の利益を供与する行為や、暴力団員がこれら利益の供与を受けること等を禁止するもの、(2)暴力団排除特別強化地域:風俗店、飲食店が集中し、暴力団が活発に活動していると認められる地域を指定、(3)特定営業者及び客引き等を行う者の禁止行為として、「暴力団員又は暴力団員が指定した者から用心棒の役務の提供を受けること」、「暴力団員又は暴力団員が指定した者に用心棒の役務を受けることの対償として利益を供与すること(いわゆる「用心棒料」)又は営業を営むことを容認する対償として利益を供与すること(いわゆる「みかじめ料」)」を明記、(4)「暴力団員の禁止行為」として、「特定営業者又は客引き等を行う者に用心棒の役務を提供すること」、「特定営業者又は客引き等から用心棒の役務の提供をすることの対償として利益の供与を受けること又は営業を営むことを容認する対償として利益の供与を受けること」、(5)罰則として、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金(特定営業者、客引き等を行う者は自首減免規定あり)」がそれぞれ定められたものとなります。

▼警視庁 「東京都暴力団排除条例」の一部改正に関する意見募集の結果について
▼意見募集の実施結果

今回のパブコメでは、意見提供者数 23名、ホームページ内意見募集ページへの総アクセス数 741件、賛成1件・反対0件・その他1件との結果となり、公表された意見の要旨は以下のようなものです。概ね改正内容について好意的であり、むしろさらに厳格な内容を望む声も見られる点は心強いものといえます。本コラムとしても、全国の暴排条例の改正動向からみても、暴力団事務所等の新設禁止規定の新設(地域の指定だけでなく、住居地域や商業地域等の禁止まで拡げる)や福岡県暴排条例に定められている「標章制度」の導入、「離脱者支援」のための具体的規定の盛り込み等がさらに検討されることを期待したいと思います。

  • 改正については、脅迫行為が立証できないようなケースでも、みかじめ行為により処罰することが可能になるため賛成
  • 暴力団排除の機運を盛り上げるためには、みかじめ料支払いに関する直罰規定だけでなく、一部の他県で既に導入されている標章制度も導入するべき
  • 暴力団排除特別強化地域内で、みかじめ料取得の拠点となっているのは、縄張りを維持するための活動拠点である暴力団事務所なので、同地域における暴力団事務所等の新設禁止規定を設けることは、同地域における暴力団の威力拡大の障害やみかじめ料取得の障害となることが期待できる
  • 一部の他県では、住居地域や商業地域等で新設を禁止しているところ、禁止区域については、東京の特殊性を踏まえて検討すべきだが、みかじめ料授受等の禁止区域に加えて、東京都の一定地域での暴力団事務所等の新設禁止を進めるべき
  • 自首については、処罰の裁量を持たせる方が適切な対応を取りやすいので、必要的減免ではなく、任意的減免が望ましい

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