HRリスクマネジメントトピックス

コンプライアンスやリスク管理に関するその時々のホットなテーマを、現場を知る
危機管理専門会社ならではの時流を先取りする鋭い視点から切り込み、提言するコラムです。

三匹(?)が語る!HRリスクマネジメント相談室(12)「うまくいかないメンター制度」(2019.10)

 職場におけるトラブルは複合的。社内の様々な関係者の協力を得て、複数の視点で捉えなければ、解決が難しい問題も多々あります。でもやっぱり最後は「人」!HRリスクマネジメントが重要です。

 職場における様々なトラブルを解決すべく、今、エス・ピー・ネットワークに生息する動物たちが立ち上がりました!初動対応や法的な責任、再発防止など、三匹それぞれの観点から熱く語ります。

【今月の三匹・プロフィール】

ワオキツネザルのイラスト

ワオキツネザルさん:
半年前に九州から上京し、SPNの森の仲間になりました。「新入社員」という肩書きが次の4月にはなくなるのかと思うと震えが止まりません。長~いしましましっぽでバランスを…とることの難しさを痛感中です。

モモンガのイラスト

モモンガさん:
小さな皮膜で滑空する夜行性。社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー、運転免許など、、すべてペーパーですが、そこそこ長い会社員経験をおなかの袋から取り出しながら実務の間を飛び回ります。

ネコさんのイラスト

ネコさん:
猫なで声と鋭い爪をあわせ持ち、企業内での人事実務経験が豊富。社会保険労務士で、産業カウンセラー、実はキャリアコンサルタントでもある。食欲の秋と戦うニャー!

今月のご相談は、こちら。

 中堅メーカーの人事担当です。昨年からメンター制度を導入しました。昨年は、新卒で入社した社員に対し、入社3~4年目くらいの若手先輩社員がつき、仕事を教えたり、相談相手になってもらったりといい感じだったのですが、今年はどうもうまくいっていません。特に、営業部のメンターAさんとメンティBさんの間がどうもギクシャクしている様子。

 メンターのAさんは、昨年入社した2年目社員で、メンティのBさんは今年の4月入社です。配属直後は、Aさんが付きっ切りで仕事を教えたり、一緒にお昼にも行ったりと、うまくいっているように見えたのですが…最近は、Aさんはいつもイライラ、Bさんはそれを察してビクビクするようになってしまいました。

 それとなく二人から話を聞いてみたところ、こんなことを言っています。


■メンターAさん:

 「Bさんは物覚えが悪く、何度も何度も同じことを聞いてくるんです。2回まではいいとしても、3回以上はあり得ない!申し訳なさそうに聞いてくるところをみると、「何度も聞いている」という自覚はあるようですが、都度メモもとっているはずなのに、まだ聞いてくるんです。わかりやすく教えるために、手順書も作ったし、「これからやること」だけをシンプルに伝えるようにしました。一番早くできるやり方を教えているのに、余計なところをいじったり、関係ないところにこだわったり、私には意味がわかりません!きっと、この仕事に向いていないんだと思います。教えても無駄だし、自分でやった方が早いし正確。はっきり言って、足手まといです!」

■メンティBさん:

 「すみません、仕事をなかなか覚えられなくて…。Aさんを怒らせてばかりで、足手まといですよね。「これからやること」は、その場ではわかるんです。でも、それが結局、何のためにやっているのかとか、何と関連しているのかがわからなくて、自分の中で整理ができません。Aさんに聞いて、「この間教えたでしょ?」と言われてはじめて「この間やった作業のことだ!」と気付くような感じで…Aさんに迷惑をかけてばかりで、本当に申し訳ないです…。」


 どちらの言うこともわかるような気がするのですが、何かすれ違いがあるようです。メンターとメンティの相性が悪かったということでしょうか。これからどうしたものでしょう。Bさんのメンタルも心配です。

【ワオキツネザルさん】
ワオキツネザルのイラスト

Bさんと自分が重なってしょうがないのですが、Bさんに共感してしまう方は多いのではないでしょうか。全体の流れとしては、(1)Aさん(メンター)とBさん(メンティ)との間にあるすれ違い(2)AさんとBさんの相性は…(3)これからどうしたらよいか、について述べてまいります。

〈メンターとメンティとの間のすれ違い〉

 メンターAさんとメンティBさんの間にあるすれ違いを言葉で表すのは難しいですね。ですが、あえていうなら「考え方(話の前提)の違い」かもしれません。

 ここで、Aさんの発言「やり方を教えたんだからできるでしょ」「『これからやること』だけをシンプルに伝えるようにしました」に着目してみましょう。これらの発言から、Aさんは「やり方がわかれば仕事ができる」という前提でBさんへ指導していることがわかります。

 では、Bさんはどうでしょうか。Bさんの「『これからやること』は、その場ではわかるんです。でも、それが結局、何のためにやっているのかとか、何と関連しているのかがわからなくて、自分の中で整理ができません」と言っています。「わからなくて、自分の中で整理ができません」ということは、きっとBさんは「やり方だけでなくその仕事の目的や、他の物事との関連を理解できないと仕事ができない」と思っている人なのでしょう。

 このように、2人の間には考え方(前提)にずれがあるといえそうですね。Aさんは「やり方がわかればできるでしょう」という前提で話を進めていますし、Bさんは「その仕事の目的や他のこととのつながりを知らないといけない」とい考えているために、どうも話がかみ合わないようです。

〈メンターとメンティの相性は…〉

 AさんとBさんの様子を見てみると、2人の相性は良くなさそうです。ただ、今回のようにギクシャクするようになってしまったのは、AさんとBさんの相性が原因というわけではないと感じました。2人がうまくいかない原因は、Bさんのメンターという仕事がAさんには荷が重すぎたのだと思います。この場合におけるメンターという仕事自体、入社2年目の社員が務めるにはまだ早い仕事であるうえに、Bさんの指導は、他の新入社員への指導よりも難しいものだったのではないでしょうか。

 気になるのは、相談者様の「昨年は、新卒で入社した社員に対し、入社3~4年目くらいの若手先輩社員がつき、仕事を教えたり、相談相手になってもらったりといい感じだったのですが、今年はどうもうまくいっていません」という点です。

 昨年は入社3~4年目の社員がメンターを担当していたのに、今年になってなぜ、入社2年目のAさんがメンターに任命されたのでしょうか?この会社さんが人手不足に陥っているのではないかと想像してしまいます。Aさんは、入社2年目にしては難しい仕事を任されたということがいえます。メンターの定義は会社ごとに違うため、「メンターを入社2年目の社員が務めるのは荷が重い」と主張したいわけではありません。ただ、「昨年は入社3~4年目の社員がした仕事と同じ仕事がAさんに任されている」ということは、今回のギクシャクの原因のひとつととらえてもよいでしょう。

 うまくいっていたころのAさんは「付きっ切りで仕事を教えたり、一緒にお昼にも行ったり」しています。このことから、Aさんは非常にやる気を持ってBさんのメンターをしていたことがうかがえます。しかし、ギクシャクしている時期のAさんの証言からは「私はこんなにがんばっているのにどうしてうまくいかないの」というメッセージがビシビシと伝わってきます。「一番早くできるやり方を教えている『のに』」という言葉からも、自分のやり方・指導の仕方がうまくいっていないことへの悲しさや不満がにじみでています。

 入社3~4年目の社員がするような荷が重い仕事を任され、最初は一生懸命取り組んでいたもののうまくいかず、余裕がなくなっていくAさんの様子が、相談内容からうかがえます。

 続いてBさんがどんな人か見てみます。Bさんの指導の難易度が高そうだと感じたのは、Bさんは自分の物覚えの悪さを自覚しており、ある意味開き直っているからです。Bさんは申し訳なさそうな様子はするものの実際人の話はあまり聞かないタイプではないでしょうか。

 Bさんの発言で気になったのは、「でも、それが結局、何のためにやっているのかとか、何と関連しているのかがわからなくて、自分の中で整理ができません」という部分です。この発言からは、Bさんの「それがわかればうまくできるはず」という気持ちがうかがえます。ですが、そうではない可能性が高いです。Bさんは、ミスの原因を、自身のメモ方法の悪さや物覚えの悪さや集中力の無さではなく、「それが結局何のためにやっているのかとか~(中略)~自分の中で整理ができ」ないことだと思い込んでいる可能性が高いでしょう。Bさんがミスをしてしまう本当の理由は、「頭の中が整理できないから」ではなく、「目の前のやるべきことに集中せず、それ以外のことを考えてしまうから」だと思います。

 また、Bさんは自分の考え方ややり方に固執してしまう傾向があるようです。Bさんは「一番早くできるやり方」を教わっても、「余計なところをいじったり、関係ないところにこだわったり」しています。Bさんのミスの原因は、物覚えが悪いということや集中力の無さの他に、自分流のやり方を貫いてしまう、悪く言えば人の話をきかないというところにもあるともいえます。

〈これからどうしたらよいか〉

 余裕のないAさんと失敗続きのBさんを見ていると、いっそのことこの組み合わせを解消したほうがいいのでは…とも思います。しかしここは、AさんとBさんに上司から一声かけ、2人が互いに歩み寄るような恰好とすることが望ましいのではないでしょうか。たしかにBさんのメンターという仕事はAさんには荷が重いかもしれませんが、ここがAさんの頑張りどころであるとも言えそうです。Bさんのメンターができたら、どんな新入社員もどんとこいという度胸がつくと前向きにとらえてもらいましょう。

 では、Aさんにはどのような声掛けをすることが望ましいでしょうか。AさんとBさんの組み合わせでメンター制度を継続することが決まれば、Aさんには「これから指示を出すときは、その作業の目的や他の業務との関連性も説明するとよい」ことと、そうすることによってAさん自身仕事への理解も深まるということを伝えてみるのはいかがでしょうか。他には、Bさんのメンターという難しい仕事をこなしていることへのねぎらいの言葉や、これからもBさんのメンターを継続してもらうのは「あなたに期待しているからだよ」、等という声掛けも考えられます。これはAさんの人柄を見て、言葉を選ぶのが望ましいでしょう。

 次に、Bさんへの声掛けについて検討してまいります。Bさんには、「まずは言われたことを言われた通りにやってみて、それがうまくいけば、もっと上位なことを考える余裕も生まれるだろう」ということを伝えてみてはいかがでしょうか。さらに、Bさんの「仕事の目的や他の物事との関連」を考えようとしているその姿勢を評価することも案としてはあります。こちらも、Bさんの人柄を見ながら言葉を選ぶとよいかもしれません。

 Bさんに声をかける上司からしてみたら、「仕事の目的や他の物事との関連を考えるのは良いけれど、その前にまず、言われたことをちゃんとやりなさいよ…」という言葉がのどまで出かかるかもしれません。その言葉をBさんに直接伝えた方がいいかどうか、伝えるとしたらどのように伝えたらよいかは本当に人によって異なります。「イマドキの若者はこう」と決めてかかることはできません。多少厳しい意見を言われたときに「伝えてもらえてありがたい。今度からそうしよう」と思うタイプなのか、「ああまた怒られてしまった…」と立ち直れなくなるタイプなのか、「別の人からは仕事の目的を考えなさいって言われたのに…」とまた(上司の指示を無視して)考え込むタイプなのかはわかりません。もしかしたら、「また言ってるよ…」と聞く耳を持たないタイプである可能性もあります。

 「イマドキの若者は何を考えているかわからない」とよく言いますが、人柄を見極めつつ適切な声掛けやそのフォローを丁寧に実施していくことが望ましいでしょう。

【モモンガさん】
モモンガのイラスト

 はじめまして。長年住んだ森を小さな皮膜を頼りに飛び出し、この秋からSPの森の住人になりましたモモンガです。相談者様のお悩み、よく分かります。教える人と教えられる人がうまくいかない…。「会社あるある」ですよね。私は、メンターAさん、メンティBさんの「考え方の違い」と、「メンター制度」の観点から考えたいと思います。

〈Aさん、Bさんの志向性の違いと、関係改善を考える〉

 Aさん、Bさん、それぞれの言い分から、Aさんは「結果・成果」を重視して考えるタイプ、Bさんは「プロセス」を重要と考えるタイプの方とお見受けしました。

確かに、AさんとBさんは学校やプライベートな場所では、違うお友達グループに入りそうですね。

 でも、ここは職場ですから、必ずしも性格や考え方が違うことが「相性が悪い関係」とは言えないと思います。職場では異なるタイプの人が協力することによって、より成果を上げたり、ミスを防いだりといった効果を期待できるからです。

 メンター制度におけるAさん、Bさんの関係は後述するとして、まずは「業務を指導する側のAさん」「指導される側のBさん」という視点で、二人の関係を改善する方法を考えたいと思います。

 Aさんは、Bさんに仕事を教えるために、様々な工夫をしています。責任感を持ってBさんを指導しようという意思が感じられます。しかしながら、そこにはBさんの視点が抜けているのかもしれません。

 Aさんは、手順書を作成したり、一番早くできるやり方をシンプルに教えたりしています。ただし、それは「Aさんの視点」で考えられたものです。Aさん視点で作成された手順書や説明が、Bさんにとっても分かるものであるか、まずはそこを見直す必要がありそうです。

 Bさんが「何が分からない」のか、「どこで躓いている」のか、Aさんはそれに耳を傾ける必要があるように思います。Bさんはメモを取っているようですので、Aさんはそのメモを一度見てあげてください。もしかすると、初めて社会に出たBさんには、メモの取り方自体を指導する必要があるのかもしれません。

 例えば、会議の議事録作成をAさんは以下のように教えたとします。

 「この会議の議事録は、フォーマットは過去のファイルを参考に作成します。内容として、会議のタイトル、日時、出席者、議事内容、結論、今後の課題が入っていれば大丈夫です。作成したらファイルを出席者とその上司に送ります。出席者がToで、その上司はCCです。手順書があるので見てください。」

 これに対して、Bさんのメモが「議事録送る。出席者、上司。」だったらどうでしょう…。このメモでBさんが会議事録作成をスムーズに行えるとは思えません。

 メモを取る目的は、仕事を完了させるための情報を漏らさずに記録することです。Bさんのメモでは、いざその仕事をするときに、ほとんど参考になりません。

 この場合、AさんはBさんに、「書き留めるべき内容」、「メモの目的」つまり、「実際に仕事をするときに見返して分かるように書くこと」をまず指導する必要があります。

 そして、最後はBさんの口から、Bさんが分かるやり方で、仕事の進め方を話してもらい、理解度を確認しましょう。その際、細かいやり方の違いやAさんが理解できないBさんの拘りには一旦目をつぶって、理解が間違っている部分のみ訂正をします。「業務が不備なく完了すること」に集中してアドバイスを行います。

 ちなみに、このメモ話はモモンガの実体験です。私は手順書を渡し、必要な情報はすべて言ったので、伝わっている「つもり」になっていました。そして、指導した後輩さんに対して、なぜ何回も同じことを聞くのだろう?なぜ覚えていないのだろう?なぜ手順書を見ないのだろう?と思っていました。そこで、後輩さんのメモを見せてもらったところ前述の内容だったのです。「なるほど、このメモでは後から見返しても分からないな…」と認識し、まず、どこが分からないのかをゆっくり聞いたところ、この仕事をするための手順書がどれで、どの説明かが分からなくなってしまった。いざ議事録を書くとなった時に初めて、議事録がそもそも何なのか分からない。という状況だと分かりました。つまり、私の「教えた」は、「つもり」でしかなく、後輩さんには伝わっていなかったのです。伝わっていなかったら、教えたことにはならない。とモモンガが気づいたエピソードです。

 Aさんには手順書や自身の教え方について、上司やご自身のメンターさんにアドバイスをもらうことをお勧めします。もしかすると、Aさんには当たり前のことが、Bさんには「分からない」ということもあるかもしれません。

 また、Aさん自身が2年目ですので、自分の仕事は分かっていても、組織や会社全体から見た時の全体像がまだ十分に把握できていない可能性もあり、指導する上で足りない部分があるかもしれません。2年目で後輩の指導をするというのは非常に負荷が大きいと思います。遠慮せずに、上司や先輩、周りの方を頼ってください。そして相談者様は人事担当者として、Aさんが周りを頼りやすいように環境を整えて頂きたいと思います。

 では、Bさんはどうすればよいでしょうか。Bさんは、「これからやること」は分かると言っていますので、仕事を「点」としては理解していると思われます。おそらく、今は「点」がいっぱいで、どの点と点をつなげればいいのか、「仕事」を一連の流れで理解することができず、混乱しているとお見受けします。

 もう一つの可能性としては、Bさんが分かった「つもり」になっていて、本当は分かっていない。ということです。Bさんには、一度「Aさんに言われた通りにやってみる」を試して頂きたいと思います。言われた通りにできない、または、言われた通りにやったのに、違った結果になる。という場合には、分かった「つもり」になっているだけで、本当は「分かっていない」のかもしれません。その場合は、Aさんに教えられたことをひとつずつの「行為」や「タスク」に分解して、どこが理解できていないのかを見つける必要がありそうです。

 また、Bさんには、仕事を図で見える化することをお勧めしたいと思います。大きめの紙に、教えられたことを分解して書き、線や矢印などを使って、行為やタスク、関係者を結び、仕事の繋がりを確認します。最初は難しいと思いますが、パーツと全体像の繋がりが見えるようになることで、Bさんタイプの方は仕事が分かるようになる可能性が高いと考えます。また、その図をAさんや上司に見てもらうことにより、Bさんがどこで躓いているのかを発見しやすくなります。

 点だった仕事が線になり、面になり、多面体になり、仕事と仕事、人と人が繋がるようになると、仕事への理解がグッと深まるのではないかと思います。

 仕事をする上で、「この業務の目的は何か、関連事項は何か」を考えることはとても重要です。一方、仕事の中には、理屈ではなく素早く処理することが必要なものもあります。公的機関指定の申請書作成などは凡そその類ですよね。

 「なぜ、この項目が必要なんですか?」「これを作成する目的は何ですか?」と問われても、「まあ、それを入れないと承認が下りないんだよね」と答えざるを得ない、「とりあえずやるしかない業務」というのも、会社には存在します。仕事の一部(点)だけにフォーカスすると納得できないことも、一連の流れとして理解するとAさんの言う「余計なところや関係ない拘り」というものをBさん自身が腹落ちできるのではないかと思います。

〈メンター制度を考える〉

 次にメンター制度について考えていきたいと思います。

 相談者様の会社では、昨年からメンター制度を導入したとのことですが、会社がAさんに「Bさんのメンターをやってね」と言って、Bさんの育成全般をAさんに丸投げしてはいませんか?

 相談者様のお悩みからは、会社がメンター制度を成功させるための準備やメンター・メンティのケアについて見えてきませんでした。

 メンター制度は会社によって考え方、運用は様々です。メンターを公募し、管理職の登竜門的な位置づけとしている会社もあれば、中には新卒社員を大量採用し、1年後には2,3割程度が残れば良いとして、メンターをその振るい落とし要員のように位置づける、およそメンタリングの趣旨とは合わない運用をする会社もあるようです。

 メンター制度については、厚労省の「女性社員の活躍を推進するための「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」」などが参考になります。(女性活躍推進に主眼を置いた内容ですので、エッセンスとして参考になさってください。)

 そこでは、メンター制度について、「豊富な知識と職業経験を有した社内の先輩社員(メンター)が、後輩社員(メンティ)に対して行う個人的支援活動であり、キャリア形成上の課題解決を援助して、個人の成長を支えるとともに、職場内での悩みや問題解決をサポートする役割を果たす。メンター制度の趣旨から、直接仕事の利害関係があるような関係でないことが望ましい」とされています。また、新卒社員がメンティの場合では、社会人としての経験と新卒社員との年齢差から鑑み、3,4年目の若手社員が良いと考えられます。

 そうはいっても、現実的には、相談者様の会社のように、同じ部署で、新人に業務を教える先輩社員がメンターを担うという会社は多いと思います。

 仕事の指示・命令を行うような業務上の利害関係がある場合は、2者の関係に問題が生じやすくなるため、上司や人事部をはじめ、周囲のサポートがより必要になると考えられます。

 まずは、相談者様の会社でのメンター制度の位置づけと運用を明確にし、方針を立てることが重要です。また、メンター制度の意義を全社で共有し、「新卒社員は全員で育てる」という認識を社員にもってもらいましょう。

 会社が、新入社員をどのくらいの期間で、どの程度成長することを目標とするのか、その中でメンターは具体的にどのような役割を担うのか、また、メンターが業務指導も兼ねる場合は評価制度に反映させるなど、事前の準備・計画が重要です。

 メンター、メンティには、制度の目的、互いの役割や期待、行動やスケジュールなどの説明会を実施します。問題が起きた際や運用がうまくいかない場合に相談できる窓口もあらかじめ決めておき、安心して活動できる準備を整えることが必要です。

さて、相談内容に戻ります。相談内容からは、昨年は3,4年目の社員がメンターを務めたのに、なぜ今年は2年目のAさんが任命されたのか、ということが見えておりませんので、前提を置いて考えたいと思います。

 まず、Aさんが大変優秀=仕事の成果を上げている、ということで任命された場合、AさんはBさんにも同様の「成果」を求めている可能性があります。目的は指導であるのに、成果を出すことを目的と誤認していたり、Bさんを戦力として期待し、その期待に応えられないことにイラ立ちを感じたりしている可能性があります。その場合、Aさんには会社が考えるBさんの育成計画、期待値を共有すること、その中でAさんに期待する役割を十分説明します。また、Aさんに対して会社の評価が高いことを伝え、Aさんがモチベーションを下げずにメンターとして積極的に参加することを促すことが望ましいと思われます。

 スポーツでも名選手が名監督になるとは限らないのと同様に、Aさんはプレーヤーとしては能力が高いものの、指導のスキルは教育の必要があると思われますので、指導に関する研修等の受講を促すなども改善策の一つではないでしょうか。

 Bさんには、育成計画を共有するとともに、そもそも、新卒社員は「仕事」という切り口では、足手まといなのは当然であり、Aさんは業務として、Bさんを教育しているので、自分から積極的に学ぶ努力は必要ではあるものの、「申し訳ない」と気に病む必要はないということを伝え、Bさんをフォローしていただきたいと思います。

 次に、Aさんの他に新入社員のメンターに適する年代の社員がいないなどの人員的要因の場合、Aさんが適任であったのか、つまりAさんにメンターを担う能力と意欲があったのか、という問題があります。その場合は、多少年齢が離れても新入社員教育ができる人材を任命する必要があったものと思われます。現状では、Aさん、Bさんの双方が余程担当変更を希望しない限りは、組み合わせを変えることは難しいと思われますので、人事担当者の立場では、先述のように上司や周囲の積極的なサポートを働きかけ、Aさん、Bさんへの制度の説明や個別面談、上司を含んでの面談、それぞれに必要な研修を受講させるなど、関係を改善するケアが必要なものと思われます。

 新卒社員の育成と定着はどの企業にとっても重要な課題です。相談者様の会社でも、この機会に改めてメンター制度を自社に合ったものになるよう見直し、メンター、メンティ、双方の成長につながるような制度にしてくださいね。

【ネコさん】
ネコさんのイラスト

 ニャー、モモンガさんは頼りになるニャー。ネコもうんうんと頷いてしまいます。ワオキツネザルさん、ぜひ「百戦錬磨の社会人(モモンガ)」からもいろいろ学んで、悩みを一つずつ解決していきましょうね。

 さて、話をAさんとBさんに戻しますが、ネコが気になるのは、「他責」と「自責」の違いです。

〈「他責」のAさん、「自責」のBさん〉

 何かうまくいかないときに、「相手が悪い」とするのが「他責」、「自分が悪い」と思うのが「自責」となるわけですが…メンターのAさんは「他責」、メンティのBさんは「自責」の傾向が強いようですね。

 ネコとしては、「自責」の傾向が強い方が、「成長する力」は大きいと思っています。だって、何でもかんでも「相手が悪い」「職場環境が悪い」「世の中が悪い」なんて言って、自分は何もしない人って…周囲には相当なストレスを与えますし、白い目で見られがちですもの。そういう意味では、メンターのAさんが少し心配です。Aさんだって、まだ入社2年目ですよね?きっとAさんだって、去年のメンターさんにはたくさんお世話になったはず。まだまだAさん自身もこれから成長していかなければいけないのに、自分のことは棚に上げて、「私はしっかりできているのに!」とBさんばかりを悪く言っていれば、Aさん自身が周囲から見放され、「成長の機会」を失ってしまうリスクが高まります。

 でも、Bさんの方も「自責」の傾向が強いからといって、成長しやすいというわけではなさそうですね。「自分が悪い」と自分を責め続ければ、メンタル不調に陥る可能性もありますし、本能的に自分のメンタルを守ろうとすれば、ワオキツネザルさんが言うように、「開き直る」ということも考えられるわけで…なるほどニャーと、ネコも改めて気付かされました。

 結局は、「自責」ばかりでも「他責」ばかりでも、成長を阻害してしまうということなのかな、と思います。メンターのAさんには、自分とBさんの考え方の違いを認識し、自分の指導の仕方を見直す必要があります。一方でメンティのBさんも、黙って困ったままでいないで、「どう説明してもらえば、自分が理解できるのか」を自分なりに分析し、Aさんに「こうしてほしい」とリクエストすることも必要です。「自分に責があると認識し、改めようと自分が何か行動することによって、事態が好転する」という成功体験をBさんに得てもらえたら、成長が格段に進む気がするのですけれど。

 「相手が悪い」「自分が悪い」と断定し、「仕方ない」と諦めてしまう前に、まだまだAさんもBさんもできることがありますよ。あと、ワオキツネザルさんもね。

〈Aさんのメンターはどこに行った?〉

 それからもう一点、この職場で気になるのは、「Aさんのメンター」さんの「今」です。

 メンティが誰であれ、メンターの負担はとても大きいと思います。メンティのサポートもしつつ、自分の業務もこなしていかなければなりません。特にAさんとBさんのように、お互いの志向性が異なっていれば尚更に、メンティのために割く時間も多くなりがちです。

 入社2年目で、自分にも余裕がなく、メンティの対応についイライラしがちなAさん。ではそんなAさんをサポートしてくれるはずの、「Aさんのメンター」さんはどこに行ってしまったのでしょう?

 もし、「メンターは1年間限定」のような認識でメンター制度が運用されているならば、少し残念な気がします。キャリアは長いのです。1年目ほど手をかける必要はないにしても、同じ道を通った先輩として、メンティが困っていたら自然とメンターが手を差し伸べる、逆に、メンティが困ったときは自然とメンターを頼るような関係性ができていれば、理想的だと思います。

 もしかしたらAさんのメンターさんが退職していたり、別の部署等へ異動してしまったりしているのかもしれませんが…それならば、後任のメンターがAさんにも欲しいところです。せめて上司は、メンターを改めて任命しないまでも、Aさんをサポートすべきです。

 もし、「他責」の傾向の強いAさんが、既に自分のメンターや上司に見放されているのであれば、Bさんのメンターにもなっていないでしょう。考えられるのは、「あなたの成長のために、メンターをやってみなさい!」という上司やメンターの強い思惑です。自分のやり方がベストと信じ、他の人にも同じ考えややり方を押し付けてしまうAさんには、Bさんと接し、悩んで、「相手に合わせる力」を開発してもらいたいと思っているのかもしれません。

 でもそれならば、やっぱりサポートをきちんとしてほしいなぁ、と思います。部下を育成していく上では、時には「自分で考えなさい!」と突き放すことも必要かもしれませんが、「他責」の傾向を強めてBさんばかりを責め、それによってBさんがどんどん開き直ってしまうならば、これは放っておき過ぎです。そろそろAさんをきちんと指導してください。

 もちろん、Aさんのメンターや上司が、「メンターなんて面倒だから、Aさんに任せておけばいいや」と考えて、Aさんに任せっぱなしにしているのであれば、それは大問題です。メンター制度の根幹を揺るがすことにつながりますので、シャーッ!ってしますよ。

 それから、そもそも入社2年目のAさんにメンターをさせるべきか?という点にも、いろいろご意見があるかと思います。実は先日、ネコはある企業のメンターさん向け研修を実施しに行ってきました。そこでもっとも熱心に話を聴き、真剣にメモを取っていたのは、入社2年目の方だったのが印象的でした。メンターを任せるのは、もう少し実務経験を積んだ方の方が無難だとは思いますよ。でも、自分の「メンター」としての役割をきちんと認識し、自分も一緒に成長しようとして頑張っている姿を見ると、「2年目ではダメ」ということは決してないな、と思います。メンターにもメンターがいて、上司ともきちんと連携できているならば、思い切って2年目の若手に任せてしまうのも、悪くないのかもしれません。

「HRリスク」とは、職場における、「人」に関連するリスク全般のこと。組織の健全な運営や成長を阻害する全ての要因をさします。

職場トラブル解決とHRリスクの低減に向けて、エス・ピー・ネットワークの動物たちは今日も行く!

※このコーナーで扱って欲しい「お悩み」を、随時募集しております。

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