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  • 「金融機関のITガバナンス等に関する調査結果レポート」及び「金融機関のシステム障害に関する分析レポート」(金融庁)/第2回厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会大麻規制検討小委員会(厚労省)/第89回新型コロナウ対策アドバイザリーボード(厚労省)/令和4年版通商白書(経産省)

危機管理トピックス

「金融機関のITガバナンス等に関する調査結果レポート」及び「金融機関のシステム障害に関する分析レポート」(金融庁)/第2回厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会大麻規制検討小委員会(厚労省)/第89回新型コロナウ対策アドバイザリーボード(厚労省)/令和4年版通商白書(経産省)

2022.07.04
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更新日:2022年7月4日 新着24記事

ビジネスマン 調査 分析 イメージ
【もくじ】―――――――――――――――――――――――――

金融庁
  • 金融仲介機能の発揮に向けたプログレスレポートについて
  • 企業アンケートの調査結果について
  • 「金融機関のITガバナンス等に関する調査結果レポート」及び「金融機関のシステム障害に関する分析レポート」の公表について
  • 「ESG評価・データ提供機関等に係る専門分科会」(第7回)議事次第
  • 「サステナブルファイナンス有識者会議」(第13回)議事次第
  • 監査法人の処分について
内閣府
  • 第38回 消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ
  • 公益通報ハンドブック(改正法準拠版)を公表しました。
国民生活センター
  • ウクライナ情勢を悪用した手口にご注意!(No.3)-送金依頼や書籍の強引な販売トラブル等-
  • 墓じまい 離檀料に関するトラブルに注意
厚生労働省
  • 2022年度 雇用政策研究会 「議論の整理」
  • これからの労働時間制度に関する検討会 第15回資料
  • 第175回労働政策審議会労働条件分科会(資料)
  • 「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します~民事上の個別労働紛争において、「いじめ・嫌がらせ」が引き続き最多、「解雇」は前年度より減少~
  • 「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」を策定しました
  • 第2回厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会大麻規制検討小委員会 資料
  • 第89回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年6月30日)
総務省
  • プラットフォームサービスに関する研究会(第38回)配付資料
  • プラットフォームサービスに係る利用者情報の取扱いに関するワーキンググループ(第17回)

~NEW~
内閣官房 第4回 孤独・孤立対策の重点計画に関する有識者会議 配布資料
▼資料1:孤独・孤立対策の取組状況
  • 孤独・孤立に悩む方々に各種支援策を届けるための体制強化等
    1. 地方版孤独・孤立対策官民連携プラットフォームの推進
      • 本年2月、国レベルの官民連携プラットフォームが始動。今後、必要な方々に、よりスムーズに各種の支援策が届くようにするためには、地方レベルでも行政やNPO等の連携を進めていく必要。
      • 長引くコロナ禍や物価高騰等により高まる支援ニーズに対応するため、実情の異なるいくつかの地域で国が地方プラットフォームの整備を後押しすることで、迅速に連携強化を実現していくと同時に、地域の実情に応じた効果的な連携の進め方のモデルを開発し、連携基盤の全国への波及を進めていく。
    2. 統一的な相談窓口体制の推進
      • 孤独・孤立に関する個人の悩みは複雑化・多様化しており、相談窓口も、分野(自殺対応、DV問題対応等)やエリアに応じた様々なものが存在している。
      • 長引くコロナ禍や物価高騰等により高まる相談ニーズへの迅速な対応に資するよう、関係団体が連携して統一的に24時間相談を受け付ける新たな窓口体制を緊急にモデルとして稼働させ、効果的な連携を推進していく。
    3. 孤独・孤立対策ホームページの充実・強化
      • 内閣官房孤独・孤立対策担当室のウェブサイトでは、チャットボット等を用い、支援を求める者の悩みの内容に応じて、様々な支援制度や相談先に係る情報の提供等を行っている。
      • 長引くコロナ禍や物価高騰等で相談ニーズが高まっていることを踏まえ、このウェブサイトを多言語化することで、国内に居住等している外国人についても、各種の支援を受けやすい環境を緊急に整備する。
  • 孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和3年)
    • 直接質問の結果、孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は5%、「時々ある」が14.5%、「たまにある」が17.4%であった。一方で孤独感が「ほとんどない」と回答した人は38.9%、「決してない」が23.7%であった
    • 間接質問の結果、合計スコアが「10~12点」の人が3%、「7~9点」の人が37.1%であった。一方で「4~6点」の人が37.4%、「3点」の人が18.5%であった
    • 孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人について年齢階級別の割合は「30歳代」が最も高く9%であった。一方、最も低いのは「70歳代」で1.8%であった。男女別にみても、孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は男女ともに「30歳代」が最も高く、男性が8.3%、女性が7.3%であった・その割合が最も低いのは男女ともに「70歳代」で男性が2.1%、女性が1.5%であった。
    • 孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は、未婚者が6%、既婚者が2.4%となっている※なお、この調査では配偶者には事実上、夫婦として生活しているが、婚姻届を提出していない場合も含めている
    • 男女別にみても、孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は、男女ともに未婚者が最も高い(男性8%、女性・孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は、同居人がいる人が3.7%、同居人がいない人が8.7%となっている
    • 孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は、仕事なし(失業中)の人が5%で最も高い。一方、その割合が最も低いのは、会社役員で2.8%となっている。
    • 孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は、公営住宅に住んでいる人が9%で最も高い(「その他・わからない」を除く)一方、その割合が最も低いのは、持ち家(戸建て)に住んでいる人で3.6%となっている。
    • 2020年の世帯年収(税・社会保険料込み)別にみると、孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は、年収100万円未満の人が3%で最も高い。一方、その割合が最も低いのは、年収1,000~1,499万円及び1500万円以上の人でどちらも2.7%となっている
    • 孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は、相談相手がいる人が9%、相談相手がいない人が23.6%となっている
    • 孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は、心身の健康状態がよくないという人が9%で最も高い。一方、その割合が最も低いのは、よいという人で1.4%となっている
    • 孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の4%が5年以上、その期間が継続していると回答
    • 孤独感が「しばしばある・常にある」、「時々ある」、「たまにある」と回答した人がその状況に至る前に経験した出来事としては、「一人暮らし」、「転校・転職・離職・退職(失業を除く)」、「家族との死別」、「心身の重大なトラブル(病気・怪我等)」、「人間関係による重大なトラブル(いじめ・ハラスメント等を含む)」を選択した人の割合が高かった
    • 同居していない家族や友人たちと直接会って話すことが全くない人の割合が2%、月1回未満の人の割合が15.2%。これらの人については、孤独感が「しばしばある・常にある」という割合が高い
    • 現在の社会活動(人と交流する活動のみ)への参加状況では、特に参加はしていない人の割合が2%で最も高い。参加している人については「スポーツ・趣味・娯楽・教養・自己啓発などの活動(部活動等含む)」への参加を選択する割合が最も高く、29.6%であった
    • 孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は、社会活動に参加している人が2%、特に参加はしていない人が5.7%となっている。
    • 社会的サポート(行政機関やNPO等からの支援)について、支援を受けていない人の割合が2%であった。80歳以上で支援を受けている人の割合が高くなっている(男性8.4%、女性12.2%)
    • 孤独を感じる頻度が高くなるほど、「支援が必要であるが、我慢できる程度であるため」、「支援の受け方がわからないため」、「支援を受けるための手続が面倒であるため」などの理由を選択する人の割合が高い
    • 孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人のうち、2%の人が現在、行政機関やNPO等から困りごとに対する支援(対価を直接支払うものを除く。)を受けている
    • 手助けをしている人は、全体では9%で、男女ともに16歳から19歳でその割合が最も高く、男性で55.7%、女性で63.1%となっている
    • 孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は、手助けをしていない(自分にはできない)という人が5%で最も高い。一方、その割合が最も低いのは、手助けをしている人で3.2%となっている
    • 本調査では、新型コロナウイルス感染拡大により、人とのコミュニケーションにどのような変化があったか、また、日常生活にどのような変化があったかを把握。人と直接会ってコミュニケーションをとることが減ったと回答した人の割合は、6%であった
    • 日常生活の変化について、生活全体では5%の人が変わらないと回答。生活全体が「悪くなった」との回答が10.1%、「やや悪くなった」が29.8%であった
    • 孤独感がある人の年齢層や性別などのほか、現在の孤独感に至る前に経験した出来事、社会的孤立の状態などの全体的な傾向が、政府統計として初めて明らかになった。令和4年度も引き続き、孤独・孤立の実態把握に関する全国調査を実施。継続的に孤独・孤立の実態把握に努める予定

~NEW~
首相官邸 G7エルマウ・サミット出席についての内外記者会見
  • 始めに、ドイツの皆さんの心温まる歓迎に心から感謝を申し上げます。そして、今回のエルマウ・サミットの議長を務めたショルツ首相のリーダーシップに敬意を表します。
  • 今回のサミットは、ロシアがウクライナ侵略を開始して4か月、今なおキーウにミサイルが撃ち込まれ、そして、ロシアによる暴挙によって国際的にエネルギーや食料の価格が高騰するという、危機的状況の中で開催されました。
  • 私は、自由、民主主義、人権、法の支配、人類にとってかけがえのない普遍的価値を守り抜くため、また、ロシアの暴挙によってもたらされた世界的なエネルギーや食料の価格高騰に対応するため、アジアにおける唯一のG7国である日本の総理大臣として、議論に参加・貢献することで、G7として結束した、力強いメッセージを発信することができました。
  • 世界の平和秩序を踏みにじるロシアによるウクライナ侵略を、一日も早く終わらせるため、G7として、ロシアに対し更なる追加的制裁措置を採ること、そして、最前線で戦うウクライナを引き続き強力に支援していくことで一致いたしました。
  • 私からは、G7との協調の中で、ロシアへの新たな追加制裁として次の4本柱からなる措置、すなわち、第1に信託や会計等のロシア向けの一部サービスの提供禁止、第2に金の輸入禁止、第3にロシアの個人・団体への資産凍結措置の更なる拡大、第4に軍事関連団体への輸出禁止措置の更なる拡大、これらを行うことを表明いたしました。
  • また、ウクライナ及び周辺国の人道・復旧支援として新たに1億ドルの支援を行うことを表明いたしました。
  • さらに、ウクライナ侵略が長期化する中、国際社会が結束して対応するため、各国に丁寧に働き掛けていくことが重要です。アジア唯一のG7メンバーとして、私自ら、これまでに、インドや、東南アジア諸国の首脳との間で対話を重ね、国際社会の原則を守ることの重要性で一致してきました。これからも、8月のTICAD(アフリカ開発会議)の機会を捉えた働き掛けなど、我が国にしかできない取組を全力で進めていきます。
  • ゼレンスキー大統領を含む各国首脳からは、追加制裁措置、ウクライナ支援、アジア各国への働き掛けなど、日本の対応について、心から感謝する旨の発言が寄せられました。
  • 今回のエルマウ・サミットでは、エネルギー、食料を始めとする世界的な物価高騰も大きなテーマでした。G7として、その原因は、ロシアのウクライナ侵略にあるとの認識で一致いたしました。
  • 私は、日本の総理大臣として、強い決意で、有事の価格高騰から、国民の暮らしを守ってまいります。その思いで、私から、G7はウクライナをロシアの侵略から守るための「支援や制裁での結束」のみならず、各国の国民生活を物価高騰から守るための「結束」も強めていかなければならないことを申し上げ、G7として確認することができました。
  • 今回の物価高は単なる経済の問題ではなく、世界の平和秩序の枠組みに突きつけられた挑戦です。各国が経済状況に応じた機動的な対策を採りながら、平和を守る対応を続け、国際社会と連携して、この困難を乗り越えていく決意を共有しました。
  • G7では、高騰する世界の石油市場・食料市場とウクライナ支援、食料支援の双方をにらんだ活発な議論が行われました。
  • 石油市場については、市場の安定を確保しつつ、ロシアから一定の上限価格以上の石油は買わない、買わせない、いわゆるプライスキャップを今後検討していくこととなりました。ロシアの石油販売による収入を減らす一方で、高騰している国際石油市場の下押し圧力となる効果を持つ取組です。エネルギーの安定供給を確保するとの我が国の国益を守りつつ、プライスキャップについて各国と緊密に連携してまいります。
  • また、ウクライナからの穀物などの輸出再開に向け、各国が様々な対策を実行しつつあることが表明されました。ロシアのウクライナ侵略に伴う食料価格の国際的高騰に対応するため、G7として国際社会と共に結束して対応していくことで一致し、我が国も秋の収穫期が迫っているウクライナにおける穀物の貯蔵能力の拡大支援を行います。また、食料価格の高騰に苦しむ国々に対し、G7として、実質的な支援を提供していくことで一致し、我が国として、アフリカ・中東向けの食料支援を新たに実施いたします。
  • こうした国際社会の動きは、例えば、小麦の先物価格がウクライナ侵略後のピーク時より2割以上下落するなど、国際商品市場に好影響をもたらしつつあります。
  • G7が結束して物価高に対応する中で、私から、日本では、ガソリンや電気料金などのエネルギーと、小麦や乳製品などを始めとした食品に対し、きめ細かな物価高対策を行っていることを説明いたしました。
  • すなわち、1兆円の地方創生臨時交付金により、生活困窮者への給付金、中小企業への原材料費支援、運輸・観光事業者への助成金など、地域の実情に応じた支援を実行します。地域における効果的な対応については、他の地域にも横展開し、必要になれば、地方創生臨時交付金を更に増額します。
  • エネルギーについては、ガソリンについて、リッター40円程度の引下げ効果のある激変緩和措置を継続します。
  • 電力については、まずは供給力の確保が重要です。ここ数日、東京電力エリアにおいて、需給ひっ迫注意報が出ましたが、政府として、今後、2つの火力発電所の再稼働を確保するなど、この夏の供給力の確保に万全を期してまいります。熱中症も懸念されるこの夏は、無理な節電をせず、クーラーを上手に使って乗り越えていただきたいと思います。
  • こうした供給力確保に向けた努力を継続しつつ、電力需給ひっ迫と電気料金高騰の両方に効果のある新たな枠組みを構築し、電気代負担を軽減していきます。
  • 食料品については、小麦、飼料の価格抑制策に加え、農産品全般の生産コスト1割削減を目指して、肥料のコスト増の7割を補填する、新たな支援金の仕組みを創設し、実施いたします。
  • こうした品目ごと、業種ごと、地域ごとのきめ細かな取組とともに、重要なのが賃上げです。春闘で2.09パーセントと過去20年間で2番目に高い賃上げ、夏のボーナスも平均で6万円増加する見込みです。新しい資本主義の一丁目一番地である人への投の下、継続的な賃上げに向けて更に努力いたします。
  • 引き続き、物価・賃金・生活総合対策本部を中心に緊張感を持って対応し、5.5兆円の予備費の機動的な活用など、物価・景気の状況に応じた迅速かつ総合的な対策に取り組んでまいります。
  • 国際社会における民主主義、法の支配といった普遍的価値を守り抜く戦いを勝ち抜くとともに、その戦いがもたらす負担から断固として国民生活を守り抜く決意です。国民の皆様の御協力をお願い申し上げます。
  • 新しい資本主義についても、私から説明いたしました。権威主義的体制からの挑戦に対峙(たいじ)しつつ、持続可能な経済成長を実現していくためには、格差の拡大や気候変動問題などの課題を、経済成長のエンジンに転換していくことにより、資本主義をバージョンアップしていく必要があることを訴えました。
  • また、権威主義的体制や国家資本主義の拡大に対抗するため、新しい資本主義はもちろんのこと、「人が中心の資本主義」や「課題に立ち向かう資本主義」といった分かりやすい旗印を掲げ、国際社会における潮流を作っていくことの重要性を指摘いたしました。こうした私の考えに対し、各国首脳から支持と共感を頂きました。世界経済を主導するG7で協力して、共に経済政策の国際的潮流を作るべく、広島サミットに向け議論を深めていきます。
  • 新しい資本主義の実現に向け、試金石となる分野こそ、気候変動・エネルギーです。私が掲げるアジア・ゼロエミッション共同体構想の下、各国のエネルギー事情を直視しつつ、持続的な経済成長を実現しながら、アジアの脱炭素化・強靱(きょうじん)化に取り組んでいくことを伝えました。
  • 世界の関心がウクライナ情勢に集中する中、私から、「現在のウクライナは将来のアジアかもしれない」との強い危機感の下、インド太平洋情勢についてもしっかり議論するべき旨を強調し、G7として、法の支配に基づく「自由で開かれたインド太平洋」を維持・強化することの重要性について一致いたしました。
  • 中国による尖閣(せんかく)諸島周辺の我が国領海への侵入が継続していることや、東シナ海において、一方的なガス田開発が行われていることを含め、東シナ海、そして南シナ海における深刻な状況を説明し、こうした力による一方的な現状変更の試みは認められないとの原則を改めて確認しました。また、G7として、台湾海峡の平和及び安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促すことで一致いたしました。
  • 引き続き、日本の平和、アジアの平和、そして国際社会の平和に向けて、毅然(きぜん)と対応してまいります。
  • 北朝鮮による核・ミサイル活動については、G7として、全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全、検証可能、かつ不可逆的な廃棄の実現を追求していくことの重要性を確認しました。
  • 拉致問題についても、私から、即時解決に向けた理解と協力を呼び掛け、G7首脳の賛同を得ました。
  • ロシアによる核兵器使用の脅かしに直面する中、国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石としてのNPT(核兵器不拡散条約)の維持・強化の重要性が、一層高まっています。私自らも出席する予定の8月のNPT運用検討会議において意義ある成果を収めるべく、G7で連携して取り組んでいくことを確認しました。
  • その上で、今回、G7の首脳級としては初めて「核兵器のない世界」という究極の目的に向けたコミットメントを確認することができました。来年の広島サミットに向け、「核兵器のない世界」を目指した、現実的な取組について、議論を深めてまいります。
  • このほか、安保理を含む国連全体の改革・機能強化に向けた我が国の取組、国際保健分野での貢献、さらに本年12月3日に第6回国際女性会議、WAW!を日本で開催することなどについても、説明し、御理解頂きました。
  • また、G7サミットの合間を縫って、米国、ドイツ、フランス、カナダ、英国、インドネシア、セネガル、南アフリカ、アルゼンチンの各国首脳に加え、EU(欧州連合)のミシェル議長、フォン・デア・ライエン委員長ともバイ会談を行い、緊密な連携を確認いたしました。
  • ジョンソン首相とのバイ会談では、就任以来、私が、各国首脳に対し、度々訴えてきた福島産食品などの輸入規制の撤廃について、英国は日本産食品の輸入規制を明日撤廃するとの素晴らしい知らせを頂きました。引き続き、他国にも、粘り強く働き掛けを行い、東北の復興を後押ししてまいります。
  • こうしたエルマウ・サミットの成果を踏まえつつ、来年、5月19日から21日にG7広島サミットを開催いたします。
  • 先般広島を訪問したミシェル議長からは、ウクライナ危機の中、広島を訪問し、強い感銘を受けた、との話を伺いました。ポスト冷戦の30年が終わり、新しい時代が幕を開けようとする中、G7首脳が、広島の地から、核兵器の惨禍を二度と起こさない、武力侵略は断固として拒否する、との力強いコミットメントを世界に示したいと思います。また、普遍的価値と国際ルールに基づく、新たな時代の秩序作りをG7が主導していく意思を歴史の重みをもって示す。そうしたサミットにしたいと考えています。
  • この後は、マドリードに赴き、日本の総理としては初めてNATO(北大西洋条約機構)首脳会合に出席いたします。欧州とインド太平洋の安全保障は不可分であり、力による一方的な現状変更はいかなる場所でも許さないとの認識を確認し、NATOとの連携を強化する機会にしたいと思っています。そして、欧州とインド太平洋を結ぶ「自由と民主主義のための連帯パートナーシップ」を築いていきます。
  • 理想の旗を高く掲げつつ、普遍的価値を大事にしながら、徹底的な現実主義を貫く。こうした新時代リアリズム外交を、私自身が先頭に立って展開し、来年のG7議長国として、世界の平和と安定のための新たな秩序を作り上げるため、全力で取り組んでまいります。

~NEW~
消費者庁 「オンラインゲームに関する消費生活相談対応マニュアル」を公表しました
▼「オンラインゲームに関する消費生活相談対応マニュアル」(概要)
  • オンラインゲームに関する消費生活相談の傾向と対応のポイント
    • 20歳未満が契約当事者である相談の件数が増加しており、契約当事者全体の過半数を占める。
    • 20歳未満の契約当事者の契約購入金額の割合の最多は10万円~50万円未満であり、高額の相談が多い状況。
    • 未成年者のオンラインゲーム課金に関する消費生活相談のうち、相談員のあっせんを受けたもの及び相談員の助言を受けて相談者が自主交渉したものは計1,385件。このうち事業者から一部でも返金を受けることができた相談は1,207件で全体の87%。
    • ゲームへののめり込みについて相談者から申告があった相談は11件で全体の8%。
    • 相談対応においては、課金の返金等に係る事実関係の聞き取りと事業者への依頼に係る法的ポイントを捉えた助言・あっせんのノウハウの習得が課題
  • 相談対応別の基本的な対応のポイント
    1. 課金の返金、支払いに関する相談
      1. 相談者からの聞き取り
        1. 未成年者取消により課金を取り消すと主張できるか(民法第5条第2項)
          • 法定代理人の同意を得ていない課金であるか(民法第5条第1項)
          • 未成年者に処分を許された財産による課金であるか(民法第5条第3項)
          • 未成年者が課金の申込みにおいて詐術を用いていないか(民法第21条)
        2. 幼年者等の意思無能力者による契約であり課金は無効であると主張できるか(民法第3条の2)
      2. 相談者への助言、あっせん対応
        • 事業者に対し、返金を依頼
        • 消費生活センターがあっせんを行う場合、論拠となる事実情報が確認できる経緯書、課金の取消し又は無効による返金依頼書(通知書)を作成し、事業者に送付することが多い。
        • 相談者に対しては、課金の取消し又は課金の無効の主張により事業者が返金に応じた場合、ゲームで購入したアイテムやゲームで付与されたポイント等を現存利益の範囲で返還する義務を負うことを説明(民法第121条の2第1項・同条第3項)。
      3. 課金トラブルの再発防止に向けた助言
        • クレジットカードの管理、カードの利用明細の定期的な確認、カード番号の登録された端末を子どもに不用意に使わせないことなど、トラブルの再発防止につながる具体的な行動を助言する。
    2. ゲームへののめり込み等に関する相談
      • 課金の返金に関する相談への対応を十分に行った上で、関係する相談機関や専門機関を紹介する。相談者の悩みを放置しないことが必要。
      • 高額課金の支払や多重債務の問題に関する相談である場合、法律上課金の返金交渉の余地がないか、債務の返済や債務整理の必要があるかについて事実関係を確認し、返済プランの策定や債務整理に向けた助言、民事法律扶助の紹介を行う
    3. その他ゲームのプレイに関する相談
      • ゲームのプレイに本旨がある相談の場合は、基本的に事業者に問い合わせるよう助言。
      • クレジットカードの不正利用が疑われる場合にはクレジットカード事業者・銀行や警察、詐欺等犯罪が疑われる場合には警察に連絡するよう助言。
  • 未成年者による課金トラブルへの対応<主な事例と相談対応の留意点>
    • 【事例1】法定追認
      • 相談者が事業者に対し、子どもが無断で行った課金の返金を求めた。事業者からは、「メールで課金が行われたことの通知をしているため課金に気がつかないはずがない」、「相談者が課金に気が付いた後にも課金が続けられていることから親が追認したものと考える」と言われ、課金の取消しには応じられなかった。
      • 事業者から法定追認(民法第125条)が行われたと主張されたものと考えられる。
      • 課金の取消を主張できるかどうかは個々の事案の態様によるが、事業者に対して未成年者取消しを主張し課金の取消しを求める場合には、返金が行われるまでの間は子どもが課金を継続しないよう、相談者に注意を促すことが必要。
    • 【事例2】未成年者による詐術
      • 子どもがオンラインゲームで親の承諾なく高額の課金を行っていた。事業者からは、ゲーム画面に年齢確認と親の承諾の有無を問う表示を行っており、未成年者による使用であることを証明するものがない以上返金は一切行っていないとの回答があり、課金の取消しには応じられなかった。
      • 事業者から未成年者による詐術(民法第21条)があったと主張されたものと考えられる。
      • 詐術があったかの判断においては、未成年者が虚偽の生年月日等を入力したという事実だけでなく、更に未成年者の意図的な虚偽の入力が「人を欺くに足る」行為といえるのかについて他の事情も含めた総合判断を要する。
      • 相談者から詳細に聞き取りを行い、詐術の有無について交渉を行うこと、ゲームの画面表示において子どもが理解し得る文言で説明がされているか※2等を確認し、詐術に当たらないことの主張を検討する必要。
    • 【事例3】処分を許された財産の取扱い
      • 3歳の子どもが勝手に親のスマートフォンを操作して、毎月、オンラインゲームで月額500円の課金が発生していたことに気付いた。相談者は、事業者に3歳の子どもが誤って操作したものだと伝え未成年者取消による課金の返金を求めたが、500円という低額の課金であり小遣いの範囲内であり取り消せないと言われた。
      • 課金額が低額であることから、事業者から、目的を定めないで未成年者に処分を許された財産(民法第5条第3項)による課金であると主張されたと考えられる。
      • しかし、金額が低額であるという点のみをもって「処分を許した財産」であると判断することはできない。
      • 相談対応に当たっては、これを踏まえた上で、事実に即して事業者に説明し、返金交渉に当たることが必要。
      • <注>3歳という幼い年齢の子どもである場合、意思無能力者による法律行為の無効(民法第3条の2)を主張することも考えられる。
    • 【事例4】取消に当たり条件を付けられた場合
      • プラットフォーム事業者に対し未成年者取消しによる課金の取消を申し出たところ、課金取消しの条件として、未成年者取消しを二度と申し出ないとの誓約書の提出が求められた。
      • 子どもが行ったオンラインゲームの課金について未成年者取消しの申出を行ったがプラットフォーム事業者から却下された。プラットフォーム事業者からは、その子どもの兄が以前に行った課金について1回限りの条件で未成年者取消しに応じたことがあるところ、今回は弟が行った課金であるが当社は家族単位で判断しているため今回の課金の取消しは認めないとの回答があり、返金には応じられなかった。
      • 法定代理人の同意を得ず未成年者が行った課金について、民法に照らし、未成年者による詐術が行われているとはいえない場合には、基本的に未成年者取消しによる課金の取消しが可能。
      • 未成年者取消権を行使できると考えられる事案において未成年者取消を二度と申し出ないと誓約させる条件を付け、この条件を受け入れる場合に限り未成年者取消しによる課金の取消しに応じるとする主張は、未成年者保護の立法趣旨に反する。
      • 未成年者取消権を行使できる場合には、事業者が求める誓約書を提出することなく、未成年者取消しによる課金の取消しを主張することができること、併せて再発防止策を講じるよう助言する必要。
    • 【事例5】保護者の監督不十分を理由に取消を拒まれた場合
      • ゲーム運営事業者に対し未成年者取消しによる課金の取消しを求めたところ、事業者から、ペアレンタルコントロール機能が備わっているにも関わらずその制限機能を外して使用していたということは親の管理責任に問題があると考えるため返金には応じないと回答された。
      • 法定代理人の子に対する監督が十分行われているかどうかは未成年者取消しの要件とされていない。
      • 事業者の主張の法的根拠を丁寧に確認し、あくまで法的要件を満たしているかを基礎として交渉を進めることが必要。
  • 課金トラブルの再発防止策
    1. 主な助言の例
      • プラットフォームに登録したID情報からクレジットカード情報を削除する。
      • クレジットカード情報が登録された端末を子どもに不用意に使わせない。
      • 親は自身のクレジットカードを適切に管理し、暗証番号も推測されにくいものに設定する。カードの利用明細は定期的に確認する。
      • 成年の家族のアカウントが登録された端末で子どもに不用意にゲームをさせない。
      • 課金に係る決済通知メールが来ていないか定期的に確認する。
      • キャリア決済の上限額を設定する。
      • 子どもがどのようなゲームで遊んでいるかを知り、プレイにおいて何をすればお金がかかるのか、お金をかけてプレイしたいときには親の承諾が必要であること等について、家族で話し合う。
      • ペアレンタルコントロールの設定を行う。
    2. 家族の間での話合いだけでは再発防止が困難な場合
      • 相談の中には、親のクレジットカードを親の知らぬ間に財布から抜き、端末を使用してカード番号を入力しゲーム課金を行い、トラブルを繰り返しているというような事例も存在する。
      • 家族による話合いだけではトラブルの再発防止が難しい場合には、最寄りの関係機関に相談することを助言することも検討する。<連携先>子ども・若者総合相談センター、法務少年支援センター
  • その他ゲームへののめり込み等に関する相談への対応
    • 【事例6】ゲームへののめり込みに関する相談
      • 子どもが親に無断でオンラインゲームの高額課金を繰り返しているとの相談があった。最近学校に登校できなくなり、家ではゲームばかりしていて、家族関係も悪化していると言う。課金請求への対応とともに、子どもの精神状態や不登校のこと、ゲームにのめり込んでいる状態が病気なのではないかと心配している。
      • <2>子どもが家族のクレジットカードを使用してオンラインゲームの課金やネットショッピングを行い、高額の請求が来たとの相談があった。子どもには発達障害がある。子どもは家でゲームばかりしており、関わろうとすると身の危険を感じるほど怒る。
      • ゲームへののめり込みの要因が何であるかについては消費生活相談の場では判断を行うことができない。相談者の悩みの主訴を捉えて専門機関を紹介する。<連携先>精神保健福祉センター、子ども・若者総合相談センター、法務少年支援センター
      • 相談者の同意が得られれば消費生活センターから紹介先の専門機関に相談内容を伝え、相談者の相談への対応を依頼する。最寄りの専門機関と相互に連携する体制を構築しておく。
      • 更なる課金を防ごうと本人からゲームを取り上げて課金させないようにするといった助言を行うことは適切ではない。
      • 家族だけでも専門機関に相談を行い、事態の改善につなげるように支援することが望ましい。
      • 相談者が既に支援を受けている機関があれば、相談者から当該機関にも情報共有し、支援・見守りに繋げることが望ましい。
    • 【事例7】高額課金の支払、多重債務に関する相談
      • 子どもが無断で高額の課金を行っていたが生活が苦しく支払えないとの相談があった。相談者から話を聞くと、借金がありライフラインを止められることがあるとのこと。事業者に対して未成年者取消しによる返金を依頼するとともに、自治体の生活困窮者支援の窓口を紹介した。
      • 支払の目途を立てるための聞き取り、助言、あっせんを行うことが必要。多重債務に関する問題を抱えている場合は債務整理等に向けた助言を行う。
      • <連携先>地方自治体の生活困窮者自立支援相談窓口、財務局の多重債務相談窓口、法テラス
      • 具体的方策
        • 地方自治体の生活困窮者自立支援相談窓口を紹介し、福祉制度の利用等の相談につなげる。
        • 借金の返済や取り立てに苦慮している場合、最寄りの財務局の多重債務相談窓口に連絡を取り、相談の予約を取る。
        • 債務整理等に係る弁護士費用を支払えない等、法律相談の費用についても不安をお持ちの場合、法テラスを紹介し、無料法律相談や民事法律扶助の利用の相談につなげる

~NEW~
経済産業省 「令和4年版通商白書」を取りまとめました
▼通商白書の概要
  1. 第1部.地政学的不確実性のもたらす経済リスクと世界経済の動向
    1. 第1章.世界経済に対する地政学的不確実性の高まりと経済リスク
      1. 第1節.ロシアのウクライナ侵略による世界経済への影響
        • ロシアのウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす行為であり、我が国として、断じて許容できない。
        • G7を中心とする先進国は、エネルギー分野を含め、前例の無い大規模な経済制裁を迅速に導入・実施し、ロシアとの経済・政治関係の見直しを急速に進めてきた。これを契機に、冷戦後かつてないほどに経済的分断への懸念が高まっており、自国中心主義や経済安全保障の重視により多極化が進行する国際経済の構造変化を加速させ、国際経済秩序の歴史的な転換点となる可能性がある。他方、新興国・途上国の多くは、経済制裁などの踏み込んだ行為を控え、ロシアとの経済・政治関係に関して、ロシアに配慮した中立的な姿勢を示している。
        • ロシアとウクライナは、世界経済に占める経済規模は大きくないものの、エネルギー、食料、及び重要鉱物等、特定産品において世界有数の産出国・輸出国であり、それらの産品を両国からの輸入に依存する諸国では、供給の途絶リスクが懸念される。更に、ウクライナ情勢の短期的な収束が期待しづらい中、食料・エネルギー等の国際商品市況が高騰しており、特に輸入依存度の高い諸国では、国民生活への影響も懸念される。
        • 我が国では、ウクライナ情勢のみならず、中長期的な観点と、国民の生活や安全保障の観点から、重要物資の安全供給に関わるリスクの分析・対応を検討するため、経済産業大臣を本部長とする「戦略物資・エネルギーサプライチェーン対策本部」を設置し、対策の方向性を示している。
      2. 第2節.世界的な供給制約の高まり
        • コロナ禍での世界経済の非対称な回復や急激な財政措置による需給バランスの歪みに加え、中国におけるロックダウンやロシアのウクライナ侵略の影響によりサプライチェーンが混乱している。海上輸送におけるコンテナ需給のひっ迫、陸上輸送における労働者不足、航空輸送における旅客便の減少を受けた航空貨物スペースのひっ迫、燃料価格の上昇等により、物流コストが高騰している。原油価格は、コロナ禍における世界的な経済回復による石油需要回復への期待や、天然ガス・石炭価格の高騰を受けた代替資源としての需要の高まりから高騰しているものの、ロシアのウクライナ侵略を受けた世界的な供給減への懸念から価格が更に急騰した。
        • エネルギーの海外依存度が高い我が国は、通貨安もあいまって交易条件が悪化している。こうした中、異常気象による食料の不作、脱炭素に向けた資源・エネルギー需要の急激なシフトなどによって肥料や食料も含めたコモディティ価格が上昇しており、エネルギー安全保障や食料安全保障にも影響を及ぼしている。
      3. 第3節.先進国の金融政策正常化に伴う新興国経済への影響
        • 米国を始め多くの国において、2021年秋頃から資産買入ペースの減速や政策金利の引上げなど、金融政策正常化への取組が開始された。新興国と先進国との金利差が縮小すると、相対的に金利が上昇した先進国への資金移動が促され、新興国から資金が流出することで通貨安となる懸念がある。新興国の通貨安は、新興国発行の外貨建て債務の返済負担増や、輸入価格の上昇を通じたインフレ加速に繋がり、新興国経済に悪影響を及ぼすおそれがある。新興国の中央銀行は、需給のひっ迫、資源高、通貨安等により高進するインフレ対策と通貨防衛のため、政策金利を引上げており、景気への影響が懸念材料となっている。過去の金融危機等の経験を踏まえ、多くの新興国では、外貨準備の積み増し等を実施してきており、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)が改善していることで、大規模な資金流出圧力は抑制され、現段階では影響は限定的なものに留まっている。他方、ロシアのウクライナ侵略による食料・エネルギー価格高騰やそれを契機とした経済社会の不安定化や政情不安の懸念もあり、不確実性が増加している。
      4. 第4節.世界における政府・民間債務の急増
        • 世界の債務残高は、金融危機後、景気変動と連動しつつ長期金利の持続的な低下傾向を背景に増加しており、コロナ禍において更に増加した。政府債務は、コロナ禍における大規模な経済対策等の政策要因により、顕著に増加しており、企業債務は、コロナ禍の資金繰り対応等から増加している。家計債務は、コロナ禍の経済的苦境に加え、住宅ローン要因で増加している。今後、各国中央銀行の金融政策正常化がインフレ抑制のために急速に進んでいけば、債務負担が増大する可能性があり、インフレや金利の動向に注視する必要がある。
    2. 第2章.世界経済の動向と中長期的な経済成長に向けた取組
      1. 第1節.コロナ禍からの正常化を見据えた世界経済の動向
        • 世界経済は、ウクライナ情勢に伴う供給制約や資源価格高騰によるインフレ高進等の下方リスクがあり、先行き不透明感が残るものの、コロナ禍からの正常化の進展が見込まれる。正常化過程における注目点として、コロナ禍でのオンラインビジネスの急速な拡大と根強い対面需要、偶発債務を含めた政府債務の動向、製薬業等のクロスボーダーM&A件数の増加といったビジネス機会を捉えた国際投資の動向、地域間の経済回復ペースの差異による貿易偏在の影響、テレワーク浸透などの働き方の多様化の進展が不動産市場の住宅・オフィス需要に与える影響、デジタルデバイドがもたらす人的資本の格差、高スキルと中・低スキルの労働者間にある雇用格差、経済のグリーン化が資源調達に与える影響、ビジネスダイナミズムの重要性が挙げられる。
      2. 第2節.米国経済の動向
        • 米国では、巨額の財政措置により消費が喚起され、コロナ禍からの経済回復が進行している。経済活動再開に伴って、失業率が改善しており、コロナ不況後の急激な求人増を受けて、労働条件を見直す動きから自主退職者が増加する「大交渉時代」となっている。また、無店舗小売業を中心に起業申請数がコロナ前より高水準で推移するなど、労働市場の構造変化を示唆する動きも見られる。さらに、歴史的水準でインフレが進行しており、FRBはインフレ抑制を最優先課題としている。インフレ高止まりの中、人手不足や物価上昇を映じて名目賃金は上昇するも、実質賃金はマイナスで推移しており、今後の経済成長を下押しする可能性がうかがえる。
      3. 第3節.欧州経済の動向
        • 欧州経済は、大規模な財政措置にも支えられ回復基調にあるものの、ロシアのウクライナ侵略により、エネルギーを中心に大幅なインフレに直面しており、先行きは不確実性が高い。
        • EUは、欧州経済の復興のため、グリーンとデジタルを中心的な柱とし、産業競争力の強化と域外国への依存度の低減を目指し、戦略的自律を強調した産業政策を展開している。同時に、気候変動・人権等の共通価値に関するルールメイキングで先行し、新たなグローバルスタンダード構築にも注力している。
      4. 第4節.中国経済の動向
        • 2021年の中国経済は、年初に高い成長率を実現したが、年央から洪水、感染再拡大、電力不足、半導体不足、不動産規制、資源高等の様々な要因から3四半期連続で減速が続いた。2022年も、ゼロコロナ政策に伴う感染再拡大や不動産規制に伴う不動産市場の低迷のほか、上海等の大都市の厳しい防疫措置、ロシアのウクライナ侵略に伴う資源価格の高騰やサプライチェーンの混乱等から、減速が続いていくことが懸念されている。
        • 中国が中長期的に成長を継続する上で、多くの課題がある。人口動態は、2020年の人口センサスの合計特殊出生率3が国連の低位推計(同1.45)を下回っており、事態の深刻さを示唆している。国有企業には、効率性が低いにも関わらず大きな資源が投入されているとの指摘がある。政府補助金は、中国製造2025の10分野を中心に、国有企業に限らず、民営企業を含め幅広い企業に支給されており、赤字の補填や研究開発、設備投資に利用されている可能性もある。金融リスクも懸念材料で、非金融企業債務が高水準で、家計債務も急拡大しており、地方政府財政は不動産関連収入に大きく依存している。不動産は規制もあり2021年後半から冷え込み、関連融資などのリスクも指摘されている。所得格差も依然として残り、「共同富裕」の方針が掲げられているものの、こうした課題に対して効果が期待される不動産税の実現には長い年月がかかると見られる。
        • このような中で、2022年3月の全国人民代表大会は、秋の共産党大会を意識し、経済の安定を最優先する方針を掲げた。2022年の経済成長率目標を5%前後として、その実現のため「積極的な財政政策」と「穏健な金融政策」を挙げているが、目標達成のためのハードルは高い。
      5. 第5節.インド・東南アジア経済の動向
        • 各国で「ゼロコロナ」から「ウィズ・コロナ」へとシフトする動きが見られる。海外からの入国制限の緩和も徐々に進み、これまで低迷を余儀なくされてきた観光関連業種の回復やビジネス人材の往来の本格再開により、貿易・投資活動の活発化等が期待される。今後は、ウクライナ情勢等によるインフレ圧力の高まり、米国の金融政策正常化の影響、中国における感染再拡大とそれに伴う経済活動の制限措置の影響等のリスク要因に注意が必要である。コロナ禍への対応に加え、コロナ後の成長を見据えた取組も重要であり、デジタル経済、デジタル技術を通じた第四次産業革命の推進、投資促進といった経済の高付加価値化・産業高度化、気候変動問題への対応などサステナビリティの実現を大きな軸として、中長期的課題への取組の進展が期待される。我が国もアジアのパートナーとして、アジアと一体となって持続的成長を実現していくことが期待される。
    3. 第3章.世界経済の長期的展望
      1. 第1節.長期の人口動態と経済成長
        • 国の産業構造や経済発展の動向には様々な要因が影響しており、天然資源は人為的に変えることができない要因である一方、人口は、出産・育児に関する給付金や移民政策等の政策対応によって一定の影響が与えられる重要な要因の一つである。世界人口は、国連中位推計では増加が長期的に継続するが、2065年にピークという他機関での試算もあり、出生率のすう勢的な低下に左右される。コロナ禍は、現時点で近年の出生率減少傾向に拍車を掛けているわけではないが、出会いの機会や雇用・所得の減少を通じて、家族計画に影響する可能性もある。
        • 人口構成においては二つの主要な指標があり、それらは労働力人口比率と高齢化率である。労働力人口比率の上昇で、限界消費性向が比較的高い年齢層の人口比率が高まることにより、耐久財需要の増加が見込まれる。また、高齢化率の上昇は、潤沢な金融資産を保有する購買力の高い年齢層の人口比率が増えることにより、高齢層の消費市場(シルバーマーケット)形成が注目される。当面の人口増加により、中国やインドを中心とした発展途上国ではメガシティが増加し、メガシティ未満の大都市も大部分が発展途上国から出現する。
        • そうした大規模都市の持続的な発展を支えるためのインフラ整備は、2020-30年に 38兆ドルの需要が推計されており、資金供給のために特に民間資金の活用が不可欠である。
      2. 第2節.グローバルで加速するトレンド
        • コロナショックを契機に、デジタル変革、地政学リスクの増大、共通価値の重視、政府の産業政策シフトという4つのトレンドがグローバルで加速している。これらは、今後の国際関係や世界経済の動向を左右し、企業経営に大きな不確実性を生み出すと共に、企業の付加価値の源泉に変化をもたらしている。
        • 特に、地政学リスクや共通価値に関しては、各国政府の国際ルール形成や政策ポジションの違いによってルールのブロック化が発生しており、それを受けた市場のブロック化も進行している。さらに、政府の産業政策強化の動きにより、米国、欧州など主要国・地域の特定セクター(航空宇宙、半導体、グリーン関連等)において大規模な市場が形成されており、立地国の政策ポジションによって企業の市場獲得の機会に違いが発生する可能性がある。
        • このような状況において、企業にとって、従来のコスト削減・低価格製品提供の重視から、差別化・高付加価値化や効率的なオペレーションに取り組むビジネスモデル・産業構造への変革を積極的に促し、企業の稼ぐ力を引き上げることが重要である。その上で、さらに、コロナ禍で加速した4つのトレンドを踏まえて、デジタル化による企業変革、政府が創出する需要の取り込み、経済安全保障・社会的インパクト・共通価値を中核事業における付加価値に転換するビジネスモデルへの変革まで促し、新しい資本主義における付加価値創造型のビジネスモデル・産業構造を実現させていくことが必要であろう。
  2. 第2部.経済構造・技術・地政学・価値観の変化に対応した通商の在り方:課題と機会
    1. 第1章.共通価値を反映したレジリエントなグローバルバリューチェーン
      1. 第1節.グローバルバリューチェーンの実態と課題
        • 世界では、経済連携協定を通じた関税引下げの動きとあいまって、輸送コストの小さい近隣地域内での中間財貿易を中心にグローバルバリューチェーンの展開が進んでおり、アジア域内では複雑な国際生産分業体制が構築されている。その中で日本は、中間財を供給する前方参加とともに、海外から中間財を受け取る後方参加も拡大させてきた。中国の対米輸出の中に日本の付加価値も含まれるが、部品サプライヤーの現地進出や現地地場企業の技術向上等を背景にシェアは低下している一方、日本の対米輸出における中国の付加価値シェアは急速に上昇している。近年、前方参加と後方参加の両面にわたって、地政学リスクやパンデミック、自然災害等による供給制約等など課題が顕在化している。このような課題に対して、日本の企業サイドでは、米中対立を見据えた生産拠点及び供給元の見直しや、中間財供給元が一部の国のシェアが大きいことから、供給元の多様化や現地化の動きなど、強靱なサプライチェーン構築への取組が見られる。
      2. 第2節.経済安全保障とサプライチェーンの強靱化
        • 米中間の技術覇権争いや、ロシアのウクライナ侵略といった地政学リスクの高まりのほか、新型コロナウイルス感染拡大もあって、世界で不確実性が増大する中、安全保障の対象範囲が経済・技術分野に急速に拡大している。こうした中、輸入依存度が高く、サプライチェーン途絶リスクの大きい重要品目等について、国内生産拠点の整備と海外生産拠点の多元化の両輪で、サプライチェーンの強靱化が進められている。機微技術や新興技術については、進展の著しさや保有主体の多様化により流出形態が多様化・複雑化しており、各国で輸出管理・投資規制の強化が進められているなど、経済安全保障要請が高まっている。
      3. 第3節.共通価値の可視化とサステナブルなグローバルバリューチェーンの構築に向けて
        • 近年、脱炭素・人権等のサステナビリティや包摂性に関する「共通価値」への関心が高まっており、関連情報の把握・開示がサプライチェーンマネジメントの課題として要請されている。サプライチェーン全体の可視化、問題発生の予防、問題が発生した場合における適時・適切な対応が企業にとって重要な課題となっている。デジタル技術の活用はそのために有効であり、欧州で先行するデータ連携を参考に、日本とアジアが一体となった高度なサプライチェーンマネジメントの仕組みを構築し、アジア大のデータ共有基盤構築による価値創造につなげていくことが期待される。
    2. 第2章.イノベーションによって変化する世界の貿易構造と経済成長の道筋
      1. 第1節.テクノロジーと貿易
        • 様々な財・サービスの急速なデジタル化はデータを含めたデジタル貿易を拡大させており、アジアを中心に越境データフローが急増している。国内外でデータ収集を行う企業の生産性が高いことが確認されているが、一部の国ではデジタル保護主義の動きが強まっており、デジタル関連規制の動向を把握する重要性が増している。ロボットや AI等の新興技術は、効率化や価値創出を可能にする一方で、複雑化するルールや高度化する技術リテラシーへの対応が課題となっている。世界で国家間以上に国内の格差が高まる中、労働代替を目的とした新興技術の活用は、労働市場の二極化やスキル間格差の一因となり得るため、今後は人的資本投資や労働補完技術への研究開発投資のほか、時流の変化を見据えた雇用・教育体系の見直しも重要となる。
      2. 第2節.アジア大のスタートアップによる新しい経済機会の創出
        • スタートアップは、その急激な成長によってマクロ経済の成長をけん引し、将来の雇用、所得、財政を支える新たな駆動力となり得る。米国・中国のほか、インドや東南アジア等のアジア新興国においてもスタートアップが大規模な資金調達を行ない、急速に成長している。特にアジア新興国のスタートアップ、プラットフォームビジネスは、規模の優位性のみならず、デジタル技術による社会課題解決や、対象市場の地域・顧客特性に合わせたテーラーメイドの多様な事業戦略を展開し、市場を獲得している。アジアのデジタル経済が大幅に拡大する中、アジアの成長ポテンシャルを取り込むべく、日本も DX支援等を通じたアジアのスタートアップとの協業やデータ連携の取組など、アジアとの共創による新しい経済機会の創出を図っていくことが求められる。DDFTの確保のほか、日本がアジアの共創パートナーとして選ばれるよう、日本国内のグローバル化、デジタル化、スタートアップをめぐる諸課題にも取り組んでいく必要がある。
      3. 第3節.無形資産と経済成長
        • IoTやロボット等の先端技術産業市場は、今後の急拡大が見込まれている。高い技術力が求められる市場で企業が活躍していくためには、機械設備等への投資のような有形資産投資だけではなく、従業員の能力を高めていくための人的資本投資や研究開発(R&D)等を含む無形資産への投資の重要性が高まってくる。主要先進国の無形資産投資の動向を比較すると、我が国の特徴としては、R&Dが無形資産に占める割合が高い一方で、人的資本及び組織改革投資の割合が低位であることが挙げられる。R&Dへの無形資産投資比率の高さは、我が国の製造業の多様性の維持に寄与していると見られるものの、労働生産性を高めていくためには、人的資本を含めた他の無形資産への戦略的な投資が重要となる

~NEW~
国土交通省 新型コロナ感染症の影響下における生活行動調査(第二弾)~テレワークや自宅周辺の活動が定着してきていることを確認~
  • 国土交通省では、新型コロナ危機を踏まえた今後のまちづくりを検討するため、前回調査(令和2年8月)に続き、感染者数が比較的落ち着いた時期及びオミクロン株が流行している時期の2時点で、市民の日常的な行動や意識がどのように変化してきているのか、全国の大都市を中心としたアンケート調査を実施しました(サンプル数約13,000)。
  • 調査の結果、新型コロナ感染者数の増減に関わらず「テレワークや自宅周辺の活動が定着」してきていることや、人々の求める都市施策として、「ゆとりある屋外空間の充実」や「自転車や徒歩で回遊できる空間の充実」へのニーズが引き続き高いことが確認されました。
  • 調査対象時期について
    1. 流行前:新型コロナ感染症流行前
    2. 令和2年4月:第1回緊急事態宣言発令中
    3. 令和2年8月:第1回緊急事態宣言解除後
    4. 令和3年12月:感染者数が比較的落ち着いた時
    5. 令和4年3月:オミクロン株流行時
  • 調査結果
    1. テレワーク実施層の割合が安定傾向に
      • 週1日以上テレワークを実施する層については、最初の緊急事態宣言中に大きく割合が増加、緊急事態宣言解除後に減少するものの、新型コロナ流行前と比較して増加し定着
      • 週1日以上テレワークを実施する層は、デメリットを感じる人の割合が低下
    2. 自宅周辺での活動も定着傾向に
      • 日常の活動別に最も頻繁に訪れた場所については、「外食」や「趣味娯楽」、「軽い運動、休養、育児」では自宅周辺での活動が
        • 新型コロナ感染症流行前と比較して増加し定着
        • 「食料品・日用品の買い物」や「食料品・日用品以外の買い物」では、高頻度でテレワークを実施する層以外は活動場所に変化は見られない
    3. 都市に求める取り組みとして、屋外空間や回遊空間へ高いニーズ
      1. 「公園、広場、テラスなどゆとりある屋外空間の充実」「自転車や徒歩で回遊できる空間の充実」への要望は、前回調査(令和2年8月)から引き続き高い割合
  • 詳しい調査結果の公表について
    • 今回の調査の詳細な結果については、▼HPをご参照ください。

~NEW~
金融庁 金融仲介機能の発揮に向けたプログレスレポートについて
▼「金融仲介機能の発揮に向けたプログレスレポート(主なポイント)」
  1. 事業者支援態勢構築プロジェクト
    • 地域の関係者の連携・協働による事業者の経営改善・事業再生・事業転換支援等の取組みを、一体的かつ包括的に推進する観点から、財務局が経済産業局と連携し、都道府県ごとの事業者の支援にあたっての課題と対応策を関係者間で共有する「事業者支援態勢構築プロジェクト」を推進。
    • 各地の金融機関や支援機関の実務担当者が、これまで以上に「顔の見える関係」を構築し、そのネットワークを通じて、事業者支援の実効性を高めていけるよう、事業者支援に関する悩みや手法等について意見交換を行うワークショップ型の懇談会を開催。
    • 金融機関から事業承継・引継ぎ支援センターに持ち込まれる案件数が伸び悩んでいるという課題を踏まえ、金融機関に対して当該支援センターの事業内容や具体的な取組事例を紹介。結果、当該支援センターにおける支援案件数が2020年度の2倍以上に増加。
  2. 地域金融機関の事業者支援を後押しする取組み
    • 地域の事業者支援の実効性を高めるため、地域金融機関等の現場職員の間で、地域・業態・組織を超えて事業者支援のノウハウを共有する取組みを支援し、地域金融機関等の現場職員の事業者支援能力の向上を後押し。
    • AI等を活用し、早期に経営改善支援に着手すべき先を把握する仕組みの構築や、事業者に対する適切な初動対応に向けた事業者との対話を行うための手引書の作成の検討を進めることで、効果的・効率的な経営改善支援を後押
      1. 各地域内におけるノウハウ共有の取組み
        • 各地域では、財務局や信用保証協会等が中心となり、地域の実情に合わせた事業者支援に関する勉強会や意見交換会が開催されており、金融庁でもこうした取組みを後押し。
      2. 事業者との対話を行うための手引書の作成
        • 地域金融機関等の現場職員が、事業者に対する適切な初動対応に向けた事業者との対話を行うため、事業者支援のニーズが予想される業種を中心に有識者の意見や知見を踏まえつつ、地域金融機関等の現場職員が支援にあたる「手引書」を取りまとめる。
      3. AI等を活用した経営改善支援策の検討
        • 地域金融機関が早期に経営改善支援に着手すべき先を把握する仕組みの構築を促し、効果的・効率的な事業者支援の取組みを推進するため、AI等を活用した経営改善支援の効率化に向けた調査・研究を開始。
      4. 事業者支援ノウハウ共有サイトの取組み
        • 2021年1月に開設し、同年4月より本格運用。
        • 2022年4月、参加者同士のつながりを強化するため、ソーシャルネットワーキング機能を強化した新サイトへ移行。
        • 政府系金融機関を含む260機関(2022年5月末時点)が参加しており、新サイトの機能を活用して、参加者同士の様々なネットワークが生まれている
  3. 検査マニュアル廃止後の引当方法と引当開示
    • 2019年12月、「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」を公表。いくつかの地域銀行では、より的確な信用リスクの見積りに向けた取組みが見られることから、継続して実態を把握。
    • 引当方法が多様化する中、銀行の引当開示のあり方について、関係者と議論する勉強会を開催し、2022年3月1日、「銀行の引当開示の充実に向けて」を公表。
  4. 事業成長担保権の早期制度化に向けて
    • 企業・経済の持続的な成長に向け、金融機関が金融仲介機能の発揮を通じて顧客の多様なニーズに応えられることが重要。
    • 金融庁では、金融機関と事業者の緊密な関係構築のもと、不動産担保や経営者保証によらない、事業性評価に基づく融資を制度的に後押しするため、事業成長担保権の早期制度化に向け、検討。
      • 米国の融資・再生実務の特徴
        • 第1の返済原資である事業キャッシュフローの有無が最も重要な判断基準。
        • モニタリングを通じて、早期の問題検知や支援が可能となり、借り手の経営状況の悪化には、担保権実行に至る前に対応。
      • 米国銀行の体制の特徴
        • 融資担当者は、融資営業のプロフェッショナルとして育成(商品別チームとの連携等)。
        • 融資担当者1名当たりの担当社数は、企業規模により異なるが、例えば、顧客がミドルマーケット企業の場合で10社から20社程度。
        • コミュニティバンクの融資担当者の平均勤続年数は15年以上で、完済まで契約時の融資担当者が担当することが一般的。
  5. 地域金融機関による取引先へのデジタル化支援
    • 中小企業において、金融機関による業務のIT化・デジタル化に関する支援サービスのニーズが一定程度認められる(P3参照)ことから、地域金融機関やシステム会社・テック企業、ICTコンサルティングサービスを利用した中小企業等、約30社に対し、サンプルヒアリングを実施。
    • ヒアリングを通じ考えられた地域金融機関の取組類型
      1. ビジネスマッチング型
        • 企業のニーズ・課題に応じて協業先を紹介。
        • 金融機関の収益性が低い。
        • 企業のニーズが不明確な場合、最適なサービスの紹介が困難。
        • 中小企業のDXの入口となり得る導入コストの低いサービスを展開。
      2. ICTコンサルティング型
        • 業務ヒアリングを実施し、最適なICTツールのプランニング及び導入を実施。
        • 現状工数に比して手数料が低廉なため、単独では収益化が難しく、顧客の状況に合わせて協業先の紹介に留めるなどの工夫も必要。
        • 金融機関における専門人材の育成にハードルがある。
        • IT顧問といった契約で定常支援を実施。
        • IT企業との連携及び研修プログラムへの参加等により、ノウハウの蓄積と体制の充実を図る。
      3. 総合コンサルティング型
        • ICTコンサルティングサービスに留まらず、幅広いコンサルティングメニューを提供。
        • 企業のデジタル化支援においては、顧客の状況に合わせて協業先の紹介に留めるなどの工夫も必要。
        • ICT以外も含めた専門人材の育成にハードルがあり、コンサルティングメニューを幅広く揃えるコストが大きく、質の確保も容易でない。
        • 企業の経営戦略立案を中心としながら、各種コンサルティングメニューにつなげている。
  6. 経営人材マッチング支援の促進
    • 2021年10月から、大企業人材と地域企業をつなぐ人材プラットフォーム「REVICareer(レビキャリ)」が本格稼働。
    • 多様な形態での人材マッチングを後押しするため、2022年2月から、地域企業への給付の対象を従来の転籍型でのマッチングに加え、兼業・副業、出向も対象とするよう制度を拡充。
  7. 自己評価による取組み高度化の後押し
    • 金融機関が自身の経営理念や事業戦略等を実際の業務に反映し実現させていくためには、組織における取組みや得られた成果を、客観的に評価・点検し、見直すべき点に対して、必要かつ効果的な改善を図っていく組織的運営が重要。
    • このため、当局との金融仲介業務に係る対話では、個々の施策や成果の良し悪しに終始するのではなく、全体を俯瞰し、経営の目標や施策の背景・趣旨等を互いに共有したうえで、金融機関がどのような金融仲介機能を発揮しているかを対話することが有効ではないかとの金融機関の声を踏まえ、当局と金融機関との間で、様々な取組みと期待する効果の相互の関係性等を構造的に整理し共有するイメージ・考え方を示したフレームワークを試作。

~NEW~
金融庁 企業アンケートの調査結果について
  • 前回調査した2020年2月から2021年2月の状況に比べ、今回の2021年3月から2022年2月では、「安定していた」と認識している企業が全体として8割程度の水準で推移しているものの、2021年11月以降、やや低下傾向。業種ごとにみると、「医療・福祉業」、「観光業」においては、変動が大きく、特に2022年1月以降の落込みが顕著。※「医療・福祉業」、「観光業」のn数には留意
  • 資金繰りが悪化した理由は、全体で「売上の減少」が3%、次いで「追加設備投資の発生」が10.6%、「融資据置分の返済開始」が1%であった。
  • 2021年3月から2022年2月までの間に、資金繰りが不安定な時期があったと回答した企業のうち、全体で1%の企業が金融機関からサービスを受けており、業種別に見ても概ね7割前後の企業が同様の回答であった。なお、サービスを受けなかった企業の74.2%は、「必要なかった」ことを理由としていた。
  • 金融機関から受けたサービスの内容は、「融資」5%、「条件変更」17.7%、「資金繰り表の作成支援」6.3%と、資金繰り関連が中心であったことが窺われる。サービスを受けた結果、現在の資金繰りの認識について、「安定している」と回答した先が全体としては72.2%である中、「医療・福祉業」は45.5%、「観光業」は42.9%となった。
  • 今後の事業継続の方針に関し、「事業継続する」と回答した先は90%超、「未定」と回答した先を含めると、ほぼ全ての企業がこの先も事業を続けていくことに明確な意思、もしくは可能性を有していることが窺われる。また、業種ごとに見ても、この点に大きなバラツキは見られない。
  • 今後、金融機関から受けたいサービスは、「取引先・販売先の紹介」や「各種支援制度の紹介や申請の支援」といった売上や利益改善に直結するサービスが高い割合を占めるほか、「経営人材の紹介」、「業務効率化(IT化・デジタル化)に関する支援」が上位にあり、「資金」面に留まらない、様々な支援といった、企業ニーズの拡がりが窺われる。さらに、金融機関から受けたいサービスについて、手数料を支払ってもよいと回答した割合を確認すると、「経営人材の紹介」が3%と最も高く、次いで、「業務効率化(IT化・デジタル化)に関する支援」36.4%となり、金融機関に高い付加価値の提供を期待していることが窺われる。
  • 企業の経営上の課題や悩みを「よく聞いてくれる」又は「ある程度聞いてくれる」とする企業の割合は全体で3%であった。前回の調査と比べると、傾向・水準に大きな差は見受けられなかった。2021年3月時点と比べて、「以前より聞いてくれるようになった」との受け止めは、前回の調査と同様、債務者区分が下位の層ほど割合が高く、顧客に対する幅広い実態把握を継続的に努めていることが窺われる。
  • 企業の経営上の課題に関する分析結果や評価を「よく伝えてくれる」又は「ある程度伝えてくれる」とする企業の割合は全体で5%であった。前回の調査と比べると、2.0%ポイントほど上昇している。2021年3月時点との変化について、「以前より伝えてくれるようになった」との受け止めは、債務者区分が下位の層ほど割合が高く、経営上の課題や分析結果の共有の取組みに広がりが出ていることが窺われる。
  • メインバンクから伝えられた経営上の課題の分析結果や評価に対する納得感について、「とても納得感がある」又は「ある程度は納得感がある」とする企業の割合は全体で9%であった。前回の調査と比べると、7.4%ポイント上昇した。2021年3月時点と比べ、「納得感が減った」と回答した企業の割合はわずかであった。
  • 「経営上の課題や悩みを把握してくれる」、「経営上の課題に関する分析結果を伝えてくれる」、「伝えられた経営課題や評価に対する納得感がある」の3つの着眼点が伴っている先は、事業者と金融機関との間で共通理解の醸成が図られており、事業性評価の前提が得られているものと考えられる。こうした「課題共有先」の割合は、全体の0%となり、前回調査(50.0%)と大きな変化は見られなかった。
  • 2021年3月以前と比較してメインバンクに変更があったか否かについて、「メインバンクを変更していない」と回答した企業の割合は、「課題共有先」で7%、「その他の先」で97.8%と、大きな差は見られなかった。ただし、その理由に着目すると、「課題共有先」では、「融資等サービスの提供を受けたタイミングや対応のスピードが適切だから」、「提供を受けた融資等サービスの内容がよいから」、「自社の事業の理解が深いから」といった前向きな付加価値をあげる回答がおよそ8割を占める一方、「その他の先」では、「取引関係が長く、変更するのが手間だから」といった、消極的な回答が、およそ半数を占めた。
  • IT化やデジタル化の実施状況や関心度合いとして、全体では、「全社的」もしくは「部署単位」でIT化やデジタル化を実施・推進していると回答した企業は6%となっており、半数以上の企業がIT化・デジタル化を実施・推進していることが窺われた。一方、「現状、IT化やデジタル化を実施・推進しておらず、関心もない」と回答している企業は12.5%となった。※ここでいうIT化・デジタル化:生産管理、経理、人事領域におけるITツール・システムの導入、自社HPやECサイトの構築、業務自動化、リモートワーク環境の整備、情報セキュリティ対策などを指す。
  • デジタル化の実施の相談相手として、「ITメーカー・ITベンダー・販売会社」が5%で最も割合が高く、次いで「公認会計士・税理士・社労士等の士業」が30.7%と高い。「金融機関(メインバンクとメインバンク以外の合計)」については、16.2%となっている。
  • 全体として7%、小規模企業においても87.1%が法人インターネットバンキング(以下、「法人IB」という。)契約を締結しているとの回答であった。
  • 法人IB利用層の法人IBの主な利用目的は、「残高照会、入出金明細照会」と「総合振込、給与・賞与振込」それぞれ7%、「振込振替」が79.7%と大半を占めている。法人IB利用層の主な振込手段について、全体の91.5%、小規模企業であっても89.8%が実際に法人IBを利用していると回答。
  • 法人IBの契約金融機関について、「メインバンク・非メインバンクの両方」とする先が0%となる中、「メインバンクのみ」とする先も34.3%となっている。法人IB契約を「メインバンクのみ」としている理由について、「利用用途をメインバンクに一元化しているため」が81.8%で最も割合が高い。
  • 全体として、法人IBを利用しない理由は、「窓口等でのサービスで満足しており、必要性を感じない」が5%で最多、次いで「セキュリティが不安(31.6%)」、「使い方を覚えるのが面倒、難しそう(14.6%)」、「手数料負担が増加する(8.4%)」となっている。
  • 全体ではおよそ7割の企業が「借入金の金利が上がったとしても経営者保証を解除したい」と回答しており、仮に経営者保証の解除ができるのであれば、借入金の金利が上昇してもよいと考える企業が相応に存在することが窺われる。全体の1割弱の企業が5%以上金利が上がっても経営者保証を解除したいとしている。債務者区分に基づく集計では、大きな差異は見られなかった。
  • 事業承継先について、「子や親族に承継したい」と回答した企業が4割弱を占めており、次いで「将来のことなので、わからない」、「社内の役員や従業員に承継したい」と回答した企業がそれぞれ2割程度となっている。「自分の代限りとし、承継はしない」と考えている企業の割合は、債務者区分が下位ほど高くなる。
  • 事業承継について相談したい内容については、「法人・個人の資産分離、財務情報等の整理」、「相続税等の税務」が高く、次いで、「事業承継候補の選出」が8%、「事業の立て直しのアイデア・方法」が18.4%、「事業承継候補との交渉の仲介」が10.9%となっている。相談内容について、希望する相談先を確認すると、金融機関には、特に、「事業承継候補の選出」、「事業承継候補との交渉の仲介」、「事業の立て直しのアイデア・方法」に期待が寄せられていることが窺われる。
  • 新たに経営人材を採用する場合における
    • 求める役割では、「営業・販売力の強化」が0%で最も割合が高く、次いで「経営者の右腕人材・相談役」が54.7%となっており、前回調査に引続き、販路拡大や、経営者とともに企業を支えることのできる人材ニーズが高い。
    • 求める職歴・経験では、「特に求める職歴・経験はない」が2%で最も割合が高いものの、次いで「中小企業勤務経験がある」が32.9%、「銀行、信用金庫、信用組合の経験がある」が14.7%、「大企業経験がある」が14.0%と続く。
    • 採用形態は、「フルタイム、フルタイム以外どちらでも構わない」が4%となっている。

~NEW~
金融庁 「金融機関のITガバナンス等に関する調査結果レポート」及び「金融機関のシステム障害に関する分析レポート」の公表について
▼「金融機関のITガバナンス等に関する調査結果レポート」概要
  • デジタルトランスフォーメーション(DX)の取組状況によって、金融機関の「世代」を仮定し、DXに着手した金融機関を第1世代と位置付けた。地銀先進行の中には、より全社的にDXに取り組んでいる第2世代が存在している。さらに、行内業務のデジタル化が進んだ地銀先進行及びメガバンクは、第3世代に到達しつつある。
  • 建設的対話において、着眼点とそれにひも付く項目を仮置きした。第2・第3世代では、中長期のDX戦略に基づいて戦略的投資を行うとともに、DXを実行するための組織改革等を図り、新ビジネスへの変革につなげている。ただし、現時点ではデジタル活用がマーケットの裾野を拡大させるには至らず、金融プラットフォーマー等の形態を模索している段階にある。
  • 2021事務年度に実施した地域銀行、信用金庫へのアンケートの結果、一部の項目において「はい」の回答割合が増えているものの、全体的な傾向は2020事務年度と同様となっている。
  • IT人材の確保・育成には長期的、継続的な取組みが必要であることを踏まえると、経営陣の関与や全社的な取組み等が重要と考えられる。
  • 一部の金融機関では、DX推進の中心となる「デジタル人材」についても確保・育成を進めており、今後のDXの進展を踏まえると、自社のデジタル戦略を明確にした上で、当該戦略に基づいたデジタル人材を確保・育成することが望まれる。
  • 地域銀行が加盟する共同センターの次期システム計画について確認した結果、オープン化によるコスト削減、スリム化等による複雑化・肥大化の解消を図っており、システムコスト効率の改善に向けて取り組んでいることがうかがえた。
  • システム関連経費の効率性は、2020事務年度と比較して、地域銀行ではシステム経費の伸び以上に預金量が増加した。また、信用金庫ではシステム経費が減少し預金量が増加した。その結果、「システム経費/預金量」は、両業態ともに01%低くなる結果となった。
  • ITガバナンスの発揮状況について、着眼点別の回答割合の全体平均は2020事務年度と類似の結果となった。質問項目単位では、地域銀行が全社員を対象としたIT・デジタルのリテラシー向上施策の有無に関する質問で約20%、信用金庫はデジタルビジネスの責任者の設置の有無に関する質問で約10%、それぞれ「はい」の回答割合が増加した。
  • 新たなIT・デジタル技術への取組みは、2020事務年度と同様に、地域銀行と信用金庫共にクラウドサービスとデータ活用の導入が進んでいる結果となった。その一方で、AI・RPAも着実に導入が進んでおり、特に、AIについては地域銀行、信用金庫ともに、2020事務年度と比較して5%以上増加している(地域銀行:+10.6%、信用金庫:+5.9%)。
  • 2021事務年度の調査結果を踏まえ、2022事務年度のアンケートにDXに関連する設問を追加した。経済社会の変革を進めるため、DX推進及びデジタル人材の確保・育成が求められていることから、2022事務年度も金融機関との対話を行い、より実効性のある取組みをモニタリングしていく。
  • 2022事務年度は、今回把握したDXに関する調査結果について、2019年6月に公表した「金融機関のITガバナンスに関する対話のための論点・プラクティスの整理」(以下、「ITガバナンスの論点」という。)にITガバナンスの考え方・着眼点として盛り込むことを検討する。また、対話を通じて得られた有益な情報を事例集に反映していく。
  • 今後の当局の取組み
    1. DXに関するITガバナンスの考え方・着眼点の検討
      • DXに関する取組状況の調査にあたり、「DX戦略」、「DX推進体制」、「DX投資」、「DX取組事例」といった着眼点をもとに、金融機関と建設的対話を実施したところ、メガバンク及び地域銀行の動向や取組みを成功させるためのポイントを的確に把握することができた。これらの調査結果について、「ITガバナンスの論点」にITガバナンスの考え方・着眼点として盛り込むことを検討する。
    2. 「金融機関システム・フロントランナー・サポートデスク」を通じた支援
      • 金融庁では、「基幹系システム・フロントランナー・サポートハブ」を刷新し※6、2021年11月から「金融機関システム・フロントランナー・サポートデスク」を開始した。金融機関の先進的な取組みに対して、引き続き、システム開発の早い段階より、ITガバナンスやITに関するリスク管理等のシステムモニタリングの観点から、双方向の議論を行うことで後押ししていく。
    3. 「事例集」の活用促進
      • 金融庁では、「ITガバナンスの論点」に示した考え方・着眼点に沿って参考事例を取りまとめた事例集を2019年から公表している。今後も、金融機関や有識者との対話等を通じて得られた有益な情報を同事例集に反映していくとともに、意見交換などを通じて広く理解を浸透させ、活用を促していく。
▼「金融機関のシステム障害に関する分析レポート」
  • これまでに公表した分析レポートでは、システム統合・更改に係るプロジェクトについては、大規模かつ専門性が高いものであることを踏まえ、プロジェクト特性に基づいたプロジェクト管理態勢の整備、旧システムの仕様に係る理解、テストケース不足に係る対応強化等を課題として取り上げている。
  • 昨今も、金融機関の合併に伴うシステム統合をはじめとして、新たな勘定系システムへの移行など、様々な大規模プロジェクトが進められている中、システム稼働時に振込に関する障害が発生し、顧客の決済に影響を及ぼすような事例が見られた。
  • また、レガシーシステムにおける機能追加において、テスト不足等に起因したプログラムの不具合により、勘定系システムが停止し、顧客に影響を及ぼすような事例が見られた。
  • これらの障害の原因は、旧システムの仕様に係る理解不足やテストケース不足等が挙げられ、この背景としてレガシーシステムに係る有識者の高齢化等による人材不足や経営陣における現場実態の把握不足があると考えられる。
  • このような背景を踏まえ、経営陣が開発現場の実態を十分に把握した上で開発を進めることや、有識者不足によるリスクを低減するため、システム仕様や作業手順書等のIT資産の整備のほか、IT人材の育成が引き続き課題となっている。
  • 本番環境のシステムにおける設定ミス等の管理面・人的側面に起因する障害が複数見られた。特に、製品導入時におけるシステム機器の仕様に係る確認不足や、設定変更箇所の洗い出しの漏れ等による設定ミスにより、ATM等での取引ができなくなる事例も見られており、いかに設定ミスを防止するかが課題となっている。
  • こうしたことから、あらかじめ定めていた作業目的や業務要件を正しく作業手順に反映していること等を確認するための態勢の整備や、本番環境の実態に即したテストの実施、人事異動等で担当者を変更した場合であっても作業の誤りが発生しない仕組みの整備等により、システムの設定作業の品質を向上させることが課題となっている。
  • これまでに公表した分析レポートでは、障害に備えた冗長構成が意図どおりに機能しない障害について取り上げたが、その後も同様の事例(ハードウェア障害が発生したにもかかわらず副系に切り替わらなかった事例等)が複数見られた。冗長構成は、特に、可用性が求められるシステムで用いるため、障害が発生した場合、顧客に大きな影響を及ぼすなど、重大な障害となるケースがある。しかしながら、十分な実効性の検証を行わず、冗長構成が意図どおりに機能しなかった結果、復旧に時間を要し、顧客に大きな影響を及ぼす事例が見られた。また、トラフィックの経年的な増加やハードウェアの経年的な劣化など、障害の予兆があるにもかかわらず、こうした予兆を把握できておらず、障害を未然に防ぐことができなかった事例も見られた。
  • こうしたことから、冗長構成が意図どおりに機能するように実効性を確保しているか、現状を過信することなく、障害の発生に備えあらかじめ検証することはもとより、障害の予兆を捉えた未然防止策を導入することが課題となっている。
  • システム障害の復旧時において、障害パターンの想定不足による復旧手順が未整備であった事例や、システム機器の操作ミス等により、復旧までに想定以上の時間を要し、当日取引のために必要な処理の時限に間に合わず、翌営業日の処理となった事例、取り扱うデータを誤ったことなどにより、決済サービス利用時に支払が二重となるなどの顧客に影響を及ぼす事例が見られた。
  • こうしたことから、障害パターンを十分に想定4し、障害の発生箇所に着目した上で、手動切替え等の対策5の整備や訓練といった対応を行うことはもとより、障害発生時の顧客影響の確認方法の整備6や、顧客目線に立った復旧対応の早期化に係る取組み7が課題となっている。
  • これまでに公表した分析レポートでは、複数の金融機関に影響を及ぼした障害事例を取り上げ、コンティンジェンシープラン(以下、「CP」という。)の整備や実効性の確保を課題としてきた。昨今においても、サードパーティの提供するサービスの障害によって、多くの金融機関に影響を及ぼす事例が複数見られており、引き続き、サードパーティの提供するサービスの障害を想定した代替手段の確保やサードパーティとの不断の情報連携等の取組みが必要である。
  • 金融機関やその海外現地法人等から、ランサムウェアの感染等が報告されている。金融庁では、昨今の情勢を踏まえ、本レポートの集計期間において、金融機関におけるサイバーセキュリティ対策の強化に関する注意喚起を合計3回発出しているが8、これらの注意喚起で求めているような基本的な対策の不備に起因する事例が見られる。連携サービスや外部委託の拡大等により、IT資産管理の範囲が拡大し、複雑化する中、基本的な対策を着実に実施するための態勢強化(いわゆるサイバーハイジーン)9が、引き続き課題となっている。一方、未然防止が困難なサイバー攻撃に対して、業務や顧客への影響を許容水準内に収めるよう、経営陣も含めた訓練・テスト等を通じて、業務やサービスのレジリエンスを高める取組みも引き続きの課題である。
  • 金融庁は、金融機関のシステムリスク管理態勢の整備等の取組みが円滑に進められるよう以下の取組みを実施する。金融機関においては、金融システムの安定や利用者保護の観点からシステムリスク管理態勢の整備や高度化に向けた創意・工夫を積み重ねることが期待される。
    1. システム障害の発生を踏まえたモニタリング
      • デジタライゼーションの進展や新型コロナウイルス感染症の影響によるITサービスを利用する顧客の増加等といった顧客の動向変化は、利便性の向上と引き換えに情報システムへの依存度を高めており、大規模なシステム障害が頻繁に発生すれば、金融機関に対する信頼が揺らぎかねない。そのため、金融機関におけるシステムリスク管理の重要性は高まっている。
      • 金融庁では、金融機関のシステムの安定稼働に向けて、重大な顧客被害や金融機関のシステムリスク管理態勢に問題が見られる場合は、検査を含め、重点的に検証するなど、実効的かつ効果的なモニタリングを進めてきたところである。
      • 昨今の状況を踏まえ、今後も、こうした取組みを継続するとともに、障害の未然防止にとどまらず、障害発生時の業務の早期復旧や顧客影響の軽減に向けた対応が行われるようモニタリングを実施していく。
    2. システム統合・更改等に関するモニタリング
      • 2022年度も、将来を見据えた大規模なシステム更改やクラウド環境への移行等のプロジェクトが金融機関において進められる予定である。
      • これまで、大規模プロジェクト等に関する経験が少ない金融機関のモニタリングにおいては、単に進捗状況の把握にとどまらず、過去の事例も踏まえて、問題となりやすい事項について詳細に検証・議論するなど、対話を通じて金融機関の自律的な改善を促すことに力点を置いてきた。
      • 今後も、こうした取組みを継続するとともに、リスクの高いプロジェクトには検査を含めた更に深度ある検証を行うなど、リスクに応じた効果的かつ効率的なモニタリングを進めていく。
    3. サードパーティの提供するサービス等の新たなリスクへの対応
      • デジタライゼーションへの対応については、適切なITマネジメントの下で、リスクを踏まえつつ、柔軟かつ迅速に取り組んでいくことが重要となる。
      • 特に、クラウド等のサードパーティが提供するサービスを利用する金融機関が増加する中、導入・運用時に適切にリスク管理ができるような態勢を整備することが必要となる。
      • サードパーティの提供するサービスに関するリスクへの対応は、以前より公益財団法人金融情報システムセンター(以下、「FISC」という。)等と連携し対応を進めてきたところであるが、今後も新たな事案が認められた場合には、金融機関の取組みの参考とするため、事例等の公表を行っていく。金融機関側でのコントロールが難しいリスクとその対策については、引き続き、FISC等と連携の上、調査検討を進めていく。

~NEW~
金融庁 「ESG評価・データ提供機関等に係る専門分科会」(第7回)議事次第
▼資料1 ESG評価・データ提供機関等に係る専門分科会報告書(案)
  • サステナブルファイナンスの急速な拡大を受けて、企業のESGに関する取組み状況やESG関連の債券・融資の適格性等について情報を収集・集約し、評価を行う「ESG評価・データ提供機関」の影響力が大きくなっている。
  • 生命保険会社等のアセットオーナーやアセットマネジメント会社等の資産運用機関では、投資方針の策定やポートフォリオの選定に当たって、いわゆるESGインテグレーション等、ESG要素を投資判断に織り込む動きが広く見られるようになっている。
  • アセットオーナーや資産運用機関等の機関投資家が、個別にESG評価・データ提供機関のESG評価・データを用いて投資判断を行うほか、評価機関等がESG評価・データに基づき企業の指数(ESG指数)を組成し、これに連動する形で投資が行われることも増えている。
  • また、ESG関連債等の発行に当たっても、国内外の各種基準への適合状況やESGに関する適格性の評価等を得ることが一般的となっている。例えば、グリーンボンドに係る国際的な基準として参照されることの多い、ICMA(国際資本市場協会)による「グリーンボンド原則」では、調達資金の使途や対象プロジェクトの選定方法等について、同原則への準拠状況を個別に評価機関が確認するよう、推奨している。
  • さらに、機関投資家等による株式や債券等の発行体との間での、ESG関連の取組みに関する目的をもった対話(エンゲージメント)が広まりつつある中で、ESG評価・データは、エンゲージメント対象の選定や、エンゲージメントの内容・方法等を検討するに当たって広く参照されている。
  • このように利用場面が多様化する中で、ESG評価・データの対象となる企業や事業分野も拡大している。例えば、専門分科会に参加したグローバルなESG評価・データ提供機関からは、世界1万社以上の企業に評価を行い、世界2万銘柄以上の債券・株式・指数について、評価を提供しているとの報告があった。
  • 一方、ESG評価・データの対象・利用が拡大する中で、サービスの提供のあり方については、いくつかの課題が指摘されている。例えば、有識者会議の昨年6月の報告書では、以下の4点を課題として掲げている。
    1. 各社で基準が異なる評価について透明性や公平性を確保すること
    2. 評価対象の企業に有償でコンサルティングサービスを提供する等の利益相反の懸念に対応すること
    3. 評価の質を確保するために人材を確保すること
    4. 多くの評価機関から評価内容の確認を求められる企業の負担に配慮すること
  • 前述のIOSCOの報告書では、ESGのパフォーマンスを評価する際にESG評価・データの需要が急増する中で、潜在的に、投資家保護、市場の透明性・効率性、適切な価格付け等に係るリスクが懸念され得るとしている。
  • その上で、ESG評価・データの利用者の視点からみて、サービスの信頼性の確保、評価手法に関する透明性の確保、利益相反への対応、企業とのコミュニケーションに、改善の余地があるとしている。
  • 議論では、サステナブルファイナンスが、経済活動に伴う正や負の外部性を投資判断の中に取り込むものとして重要性が高く、これを更に育てていくためにも、市場関係者の情報の媒介役となる評価機関等の役割は大きい旨の指摘があった。実際にこれまでも、評価機関等がESG投資における評価の着眼点を明らかにし、市場を切り拓いてきたことも指摘された。
  • 他方で、転々流通する評価やデータが誤認を招くものであった場合には、幅広い投資家が意図するところと異なる企業や事業に投資を行ってしまうおそれがあることが指摘された。
  • この点、評価結果が各社によって異なることそれ自体は必ずしも問題でなく、評価の品質の基本的な考え方が明らかにされることで、投資家や企業の納得感を高め、市場関係者全体としての企業側の取組改善・対話につなげていくことが重要、との指摘があった。また、様々な考え方の存在するESG評価は、評価の正誤を一律に定められるものではなく、評価の手法を明らかにし、これに応じて評価が実施されることを確保することで、品質確保を図っていくことが重要、との指摘があった。
  • ESG投資のすそ野が急拡大する中で、ESG評価・データ提供機関においては、ESGを巡る社会全体の動きを的確に理解しつつ、合理的な根拠と専門的・職業的な判断に基づき、適切に評価・データを提供することが期待される。
  • また、ESG評価・データ提供機関が、評価を受ける企業との間で建設的に対話を行うことは、評価等に対する企業の納得感を高めるとともに、ESGに関する取組みについての気づきを促し、企業と経済の成長・持続可能性の確保に寄与していくものと考えられる。評価について全ての当事者から完全な納得感を得ることは難しいにせよ、ESG評価・データ提供機関においては、自らのサービス提供や関係者との対話が市場全体の改善に寄与し得ることを理解し、自らの経営方針の下で、こうした取組みを行うことが期待される。
  • 評価を受ける企業は、一般に、経営戦略を不断に見直し、適切な業務執行を通じて、企業価値の向上と持続的な成長を図ることが求められているが、このためにも、ESG評価・データ提供機関等とのコミュニケーションを行うことが期待される。
  • 機関投資家においても、企業の戦略について自ら理解を深めつつ、ESG評価・データをその特性や限界も踏まえつつ活用することで、的確な投資戦略を実行し、企業との対話を深め、投資資産の持続的な発展につなげていくことが期待される。
  • 本報告書は、ESG評価・データが適切に利用されるための市場環境を整備することで、サステナブルファイナンスの促進を図り、わが国経済の成長・持続可能性に貢献していくよう、ESG評価・データ提供に係る市場関係者に期待される事項を提言として取りまとめたものである。
  • インベストメントチェーン全体にわたる建設的な取組み・対話を促す観点から、ESG評価・データ提供機関に係る提言のほか、投資家、企業に係る提言を含めて、包括的に取りまとめている。
  • また、ESG評価・データ提供機関についても、株式や企業単位で行われるESG評価(企業評価、ESGレーティング等)と、債券や融資等の単位で行われるESG評価(債券評価等)、及びこれらに係る定量・定性を含むデータ提供を包括的に取りまとめている。
  • なお、専門分科会では、ESG評価・データが的確に提供される前提として、企業による開示データの質の確保も重要な課題である旨の指摘もあった。これらについては、別途金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ等で議論が進められているが、本報告書においても、企業によるわかり易い開示の充実等を提言している。

~NEW~
金融庁 「サステナブルファイナンス有識者会議」(第13回)議事次第
▼資料3-2 金融庁サステナブルファイナンス有識者会議第二次報告書(案)概要
  • アセットオーナーに係る課題共有
    • 今後、機関投資家が持続可能性向上に向けた取組みに着目し、受託資産の価値向上を図っていくための課題を把握・共有
  • ESG投資に係る環境整備
    • 日本取引所グループ(JPX)において、7月を目途にESG投資情報を集約した「情報プラットフォーム」を立ち上げ。今後は、データの拡充など更なる機能拡充を検討
    • ソーシャルボンドの社会的効果を測定する「指標集」(案)を5月に公表。今夏以降速やかに最終化
  • 企業開示の充実
    • 気候変動対応等に関するサステナビリティ開示の充実に向けた方策を6月に公表。早急に制度整備を行う
    • 今後は、IFRS財団における国際的な基準策定の動きに対し、わが国の意見を集約・発信していく
  • ESG評価機関・投資信託
    • ESG評価機関の行動規範(案)を公表。夏頃までに最終化し、遅くとも年度末までに、受入れ状況を取りまとめ・公表
    • ESG投信に係るモニタリング結果を5月に公表。年度末を目途に監督指針を改正
  • 横断的取組み
    • 専門人材の育成にむけた方策(民間事業者等による資格試験の導入への支援等)を検討
    • 脱炭素に関する中小企業・スタートアップの推進策を関係省庁と連携
    • 関係省庁と連携し、全体像やロードマップを適時に更新しつつ、一体的に発信
  • 金融機関と企業の対話促進
    • 7月初旬までに金融機関向けの気候変動ガイダンスを公表
    • 今後、GXリーグ(※)とも連携し、ネットゼロに向けた産業・企業の排出削減に係る経路の見える化を促進。また、取引所における実証実験等を通じたクレジット取引のあり方に係る検討につき、関係省庁と連携
      (※)GXリーグ:脱炭素に挑戦する企業が、カーボンクレジット市場の整備も視野に官・学・金と協働する場として、経産省が設立予定。3月末まで賛同企業を募集し、440社が賛同。
    • また、地域金融機関等に対し、各地で、中小企業が取り組みやすい脱炭素の対応につき、関係省庁と連携して浸透を図り、課題を収集する
  • 開示の充実
    • 東証プライム市場上場企業に対して、TCFD又はそれと同等の国際的枠組みに基づく開示の質と量の充実
    • 有価証券報告書におけるサステナビリティ開示の充実について、金融審議会ディスクロージャーWGにおいて取りまとめ(6月公表)取りまとめを踏まえ早急に制度整備
    • 国際会計基準(IFRS)財団におけるサステナビリティ開示の基準策定の動きに、SSBJを中心として、国内の意見集約・国際的な意見発信を行う
  • 市場機能の発揮
    1. アセットオーナー
      • 機関投資家が企業の持続可能性の向上に向けた取組みに着目し、受託資産の価値向上を図っていくための課題を把握・共有
    2. ESG投信
      • ESG投信の実態調査を実施
      • 資産運用会社への期待を公表(5月)
      • 資産運用会社に適切な態勢構築や開示の充実等を一層求めていくため、本年度中の監督指針改正を検討
    3. ESG評価機関
      • 有識者会議専門分科会で、評価機関等の行動規範案と、企業・投資家への提言を取りまとめ
      • ESG評価機等の行動規範を夏頃までに最終化し、賛同を呼びかけ
      • 遅くとも年度末までに受入れ状況を取りまとめ・公表
    4. 情報プラットフォーム
      • JPX検討会で中間報告を公表(1月)
      • ESG債券等に関する情報プラットフォームを構築し、サービス提供を開始(7月立ち上げ)
      • 今後の機能拡充などについて検討(企業のESGデータ集約、プラットフォームの利便性向上、対象金融商品の拡大等)
    5. ソーシャルボンド
      • ソーシャルプロジェクトの社会的な効果を測定する指標集について、5月に案を公表
      • 指標集を速やかに最終化
      • 指標集やソーシャルボンドガイドラインについて、融資での活用も視野に周知
  • 金融機関の機能発揮
    • シナリオ分析のパイロットエクササイズの実施・公表
    • エクササイズで特定された課題について、金融機関と議論し、シナリオ分析の手法・枠組みの継続的な改善
    • 金融機関向けの気候変動ガイダンスについて、4月に案を公表、7月初旬までに最終化
    • 金融機関との対話を通じ、気候変動対応の取組状況や課題を把握
    • 金融機関等による産業・企業との対話を支援
    • 地域金融機関等に、地域で取り組みやすい脱炭素の施策を浸透、併せて、課題を収集
  • 横断的施策
    1. トランジション
      • 分野別ロードマップ
      • ロードマップの対象分野の拡大、ロードマップの排出経路を定量化した計量モデルの策定等
      • カーボンクレジット検討会
      • GXリーグ構想の実現に向けた検討
    2. インパクト
      • フェーズⅠ(基本的手法等)
      • インパクト投資検討会の「フェーズII」として、資産種別に応じた投資手法のあり方について議論
    3. 中小・テック
      • 脱炭素に関する中小企業・スタートアップの推進策を検討
    4. データ
      • 地域の金融機関・企業等にも有用なデータの活用方法等を検討
    5. 専門人材
      • 専門人材の育成に向けた方策(民間事業者等への支援等)を検討
    6. その他
      • 自然資本・生物多様性について国際的議論も踏まえ検討

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金融庁 監査法人の処分について
  • 金融庁は、令和4年4月1日、公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という。)から、UHY東京監査法人(法人番号9010405001708)に対して行った検査の結果、当監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、当監査法人に対する行政処分その他の措置を講ずるよう勧告を受けました。
  • 同勧告を踏まえ、金融庁は本日、下記のとおり、当監査法人に対して公認会計士法(昭和23年法律第103号)(以下「法」という。)第34条21第2項に基づき、以下の処分を行いました。
    1. 処分の概要
      1. 処分の対象
        • UHY東京監査法人(法人番号9010405001708)(所在地:東京都品川区)
      2. 処分の内容
        • 業務改善命令(業務管理体制の改善。詳細は下記3.参照。)
    2. 処分の理由
      • 当監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、令和4年4月1日、金融庁は審査会から行政処分勧告を受け、調査を行った結果、下記ア.からウ.までに記載する事実が認められ、当該事実は法第34条の21第2項第3号に規定する「運営が著しく不当なものと認められるとき」に該当する。
        • (ア)業務管理態勢
          • 当監査法人は、法人が果たすべき役割として、「質の高いサービスにこだわり、監査の社会的責任を遂行すること」を掲げている。また、法人代表者は、被監査会社において不正による重要な虚偽表示が生じることを絶対に許さないという意識の下、被監査会社の経営者との深度あるコミュニケーションを実施することが重要であると考えている。
          • しかしながら、法人代表者は、法人運営について、法人代表者と審査担当責任者の代表社員2名及び品質管理責任者で重要な審議事項等を検討すれば、他の社員との間で明示的に当該審議事項等の情報を共有する必要はないと考えており、各社員が協働して監査品質の維持・向上を図るという組織風土の醸成に努めておらず、組織的監査が実施できる態勢を構築していない。
          • また、法人代表者は、業容が急速に拡大する中、業務執行社員における十分な監査業務時間の確保が困難になっている状況や、監査補助者全体のスキルの底上げが必要となっている状況において、監査事務所に求められる品質管理の水準を十分に理解していないほか、品質管理態勢を迅速に改善する必要性を認識していない。その結果、品質管理責任者に対して、十分かつ適切な監査業務を実施するための環境整備を具体的に指示していない。
          • こうしたことから、下記イ.に記載するとおり、品質管理レビュー等での指摘事項に係る改善状況が不十分で同種の不備が繰り返されていること、監査業務に係る審査が適切に実施されていないことなど、品質管理態勢において、重要な不備を含めて広範かつ多数の不備が認められている。
          • また、下記ウ.に記載するとおり、今回審査会検査で検証対象とした全ての個別監査業務において、業務執行社員及び監査補助者に監査の基準に対する理解が不足している状況及び職業的懐疑心が不足している状況が確認され、それらに起因する重要な不備を含めて広範かつ多数の不備が認められている。
        • (イ)品質管理態勢
          • (品質管理レビュー等での指摘事項の改善状況)
            • 当監査法人は、品質管理レビュー等での指摘事項に対し、根本原因分析を行い、これを踏まえた改善措置の策定を行ったとしている。
            • しかしながら、今回審査会検査では、個別監査業務において、当該品質管理レビュー等で指摘された企業及び企業環境の理解、会計上の見積りの監査等に係る事項と同種の不備が複数検出されるなど、当監査法人における当該品質管理レビュー等での指摘事項に対する改善は、不十分なものとなっている。
          • (監査業務に係る審査)
            • 当監査法人は、「審査委員会規程」において、当監査法人の審査業務は、審査対象業務についての十分な知識と経験を有し、かつ、当該対象業務に直接関与しない社員によって実施することを定めている。
            • しかしながら、審査の担当者は、監査チームが実施した、企業及び企業環境の理解、会計上の見積りに係る監査、継続企業の前提の検討に係る監査手続に関し、監査チームとの討議や関連する監査調書の査閲を十分に実施することなく、監査チームによる重要な判断及びその結論に問題がないものとして審査を完了させている。このため、審査の担当者は、今回審査会検査が検証対象とした個別監査業務において認められた重要な不備を含む多数の不備を指摘できていない。
            • このほか、「内部規程の整備及び運用」、「法令等遵守態勢」、「職業倫理」、「監査補助者に対する指示・監督及び監査調書の査閲」、「品質管理のシステムの監視」などに不備が認められる。
            • このように、当監査法人の品質管理態勢については、品質管理レビュー等での指摘事項の改善状況、及び監査業務に係る審査において重要な不備が認められるほか、広範かつ多数の不備が認められており、著しく不適切かつ不十分である。
        • (ウ)個別監査業務
          • 業務執行社員及び監査補助者は、被監査会社及び被監査会社を取り巻く環境に関する変化が生じているにもかかわらず、リスク評価やリスク対応手続を毎期見直すという意識が不足している。
          • また、業務執行社員及び監査補助者は、不正リスクの評価・対応、会計上の見積りの監査、継続企業の前提の検討等について、現行の監査の基準が求める手続の水準を理解していないほか、職業的懐疑心が不足している。
          • くわえて、業務執行社員は、法人全体の監査業務を少人数で分担しており、各々が担当する個別監査業務に割ける時間が限定的であることから、監査補助者が実施した監査手続が適切かどうかを十分に検討できていないなど、監査補助者の実施する監査手続に対する十分かつ適切な指示・監督及び監査調書の深度ある査閲を行う意識が不足している。
          • これらのことから、重要な構成単位の企業環境の理解が不十分、固定資産の減損、関係会社株式の評価及び関係会社貸付金の評価に係る会計上の見積りに関する監査手続きが不適切かつ不十分、継続企業の前提の検討が不十分といった重要な不備が認められる。
          • 上記のほか、重要性の基準値の検討、収益認識における不正リスクへの対応の検討、仕訳テストの検討、債権の評価に係る会計上の見積りに関する検討、企業作成情報の信頼性の検討、注記の検討、内部統制の評価範囲の検討、グループ監査における監査証拠の十分性及び適切性の検討、関連当事者取引の検討、初年度監査における期首残高の検討及び監査上の主要な検討事項の監査報告書への記載の検討が不十分、さらに、売上高等に係る実証手続、内部統制の運用評価手続、内部統制の不備の評価、情報システムに係る全般統制の評価及び未修正の虚偽表示の評価が不十分など、広範かつ多数の不備が認められる。
          • このように、検証した個別監査業務において、重要な不備を含めて広範かつ多数の不備が認められており、当監査法人の個別監査業務の実施は著しく不適切かつ不十分なものとなっている。
    3. 業務改善命令の内容
      1. 法人代表者は、組織的に監査の品質を確保する必要性を十分に認識し、各社員が協働して監査品質の維持・向上を図るという組織風土を醸成し、組織的監査が実施できる態勢を構築すること。併せて、業容が急速に拡大する中、業務執行社員における十分な監査業務時間の確保が困難になっているなど、品質管理態勢を迅速に改善する必要がある状況を認識し、十分かつ適切な監査業務を実施するための環境整備に向け、当監査法人の業務管理体制の改善に取り組むこと。
      2. 法人代表者は、公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という。)の検査及び日本公認会計士協会の品質管理レビューにおいて指摘された不備の根本原因を十分に分析したうえで改善策を策定及び実施するとともに、改善状況の適切な検証ができる態勢を整備すること。併せて、監査チームが行った監査上の重要な判断及び監査意見を客観的に評価するための審査の態勢を整備し、当監査法人の品質管理態勢の整備に責任を持って取り組むこと。
      3. 現行の監査の基準に準拠した監査手続を実施するための態勢を強化すること(重要な構成単位の企業環境の理解、固定資産の減損、関係会社株式の評価及び関係会社貸付金の評価に係る会計上の見積りに関する監査手続き、並びに継続企業の前提の検討など、審査会の検査において指摘された事項の改善を含む。)。
      4. 上記(1)から(3)に関する業務の改善計画について、令和4年8月1日までに提出し、直ちに実行すること。
      5. 上記(4)の報告後、当該計画の実施完了までの間、令和4年12月末日を第1回目とし、以後、6箇月ごとに計画の進捗・実施及び改善状況を取りまとめ、翌月15日までに報告すること。

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内閣府 第38回 消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ
▼【資料1】 会社法上の解散命令について(法務省提出資料)
  • 会社法第824条第1項
    • 裁判所は、次に掲げる場合において、公益を確保するため会社の存立を許すことができないと認めるときは、法務大臣又は株主、社員、債権者その他の利害関係人の申立てにより、会社の解散を命ずることができる。
      • 一 会社の設立が不法な目的に基づいてされたとき。
      • 二 会社が正当な理由がないのにその成立の日から一年以内にその事業を開始せず、又は引き続き一年以上その事業を休止したとき。
      • 三 業務執行取締役、執行役又は業務を執行する社員が、法令若しくは定款で定める会社の権限を逸脱し若しくは濫用する行為又は刑罰法令に触れる行為をした場合において、法務大臣から書面による警告を受けたにもかかわらず、なお継続的に又は反覆して当該行為をしたとき。
  • 会社法第826条
    • 裁判所その他の官庁、検察官又は吏員は、その職務上第824条第1項の申立て又は同項第3号の警告をすべき事由があることを知ったときは、法務大臣にその旨を通知しなければならない
  • 解散命令制度
    • 会社制度が濫用され、会社の存在・行動が公益を害し、法によって法人格が付与された実質的な根拠を有しない場合に、強制的に法人格を剥奪するもの
    • 会社の設立に関して法が準則主義を採用することに伴う不当な結果を調節し、その弊害の是正を図ることが目的
  • 解散命令の要件
    • 第824条第1項第1号~第3号のいずれか+公益を確保するため会社の存立を許すことができないと認めるとき
    • 法人格を剥奪する以外の方法(注)によって公益を確保し得るような場合には、一般的に、この要件を満たさないとされている。(注)取締役の解任、損害賠償、刑罰、営業停止、免許取消し等
  • 第826条の趣旨
    • 法務大臣は解散命令の申立て又は警告をすべき事由があることを必ずしも知る立場にないため(注1)、官庁等がこれらの情報を知ったときは法務大臣への通知をしなければならないものとした(注2)。
    • (注1)法務大臣には調査権限はないと解されている(大阪地判平成5年10月6日参照)。
    • (注2)法務大臣に通知する者は、事実認定に足りる証拠を添えて通知すべきであると解されている。
  • 解散命令制度の運用状況(平成27年~令和3年)
    1. 解散命令の申立ての状況
      • 平成27年:2件、平成28年:0件、平成29年:1件、平成30年:2件、平成31年:1件、令和2年:3件、令和3年:0件
      • うち、解散命令決定1件、却下決定1件
    2. 第826条に基づく他の官庁等から法務大臣に対する通知
      • 少なくとも平成27年以降はなし

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内閣府 公益通報ハンドブック(改正法準拠版)を公表しました。
▼公益通報ハンドブック(改正法準拠版)
  • 令和2年改正のポイントはどのようなものですか。
    • 令和2年改正においては、事業者が自浄作用を発揮し、法令違反を早期に是正する観点から、新たに、常時使用する労働者の数が300人を超える全ての事業者に対し、内部公益通報対応体制の整備義務を課しています。
    • さらに、より安心して通報できるよう、事業者に対し、内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関して公益通報対応業務を行う者であり、かつ、当該業務に関して公益通報者を特定させる事項を伝達される者を公益通報対応業務従事者(従事者)に指定する義務を課し、従事者に指定された者には刑事罰付きの守秘義務を課すこととしました。
    • この他、より多くの通報者を保護する観点から、保護される公益通報者の範囲について、従前の労働者に加え、新たに役員と退職後1年以内の退職者も含めることとしました。また、保護される公益通報の対象となる法令違反行為について、従前の犯罪行為に加え、新たに過料対象行為を含めました。さらに、行政機関への通報を行いやすくする観点から、行政機関への通報が公益通報として保護される場合として、従前の信ずるに足りる相当の理由がある場合に加えて、新たに氏名等を記載した書面を提出する場合を規定しました。
  • 令和2年改正により事業者に義務付けられた体制整備とはどのようなものですか。
    • 常時使用する労働者の数が300人を超える事業者は、本法第11条により、内部公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制(内部公益通報対応体制)の整備その他の必要な措置をとることが義務付けられました。常時使用する労働者の数が300人以下の事業者には義務は課されていないものの努力義務は課されています。
    • 内部公益通報対応体制の整備その他の必要な措置の具体的な内容は、「公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針」(指針)において規定されています。
    • 消費者庁では、「指針を遵守するために参考となる考え方や指針が求める措置に関する具体的な取組例」や「指針を遵守するための取組を超えて、事業者が自主的に取り組むことが期待される推奨事項に関する考え方や具体例」等を記載した「公益通報者保護法に基づく指針(令和3年内閣府告示第118号)の解説」(指針の解説)を消費者庁ウェブサイト上で公表しています。
    • 常時使用する労働者の数が300人を超える事業者は、内部公益通報対応体制の整備その他の必要な措置をとるに当たって指針を遵守する必要があり、指針の解説も踏まえて対応することが求められます。
    • なお、指針の規定により、各事業者は体制整備の内容を内部規程として定める必要がありますが、民間事業者向けの内部規程例を消費者庁ウェブサイト上で公表していますので、内部規程の作成に当たって御参照ください。
    • また、行政機関については、行政機関向けのガイドラインや地方公共団体向けの内部規程例を消費者庁ウェブサイト上で公表しています。
    • 常時使用する労働者の数が300人以下の地方公共団体に対しては、体制整備の義務は課されていないのですか。
    • 常時使用する労働者の数が300人以下の事業者(地方公共団体を含む。)に対しては、内部公益通報対応体制の整備については努力義務にとどまります。
    • 他方、外部の労働者等からの通報(2号通報)については、令和2年改正において本法第13条第2項が新設されたことにより、通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有する行政機関(法律上独立に権限を行使することを認められた検察官、海上保安官等の職員を除く。)は、その職員数の多寡にかかわらず、地方公共団体を含む全ての行政機関に対し、2号通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他必要な措置をとる義務が新たに課されています。

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国民生活センター ウクライナ情勢を悪用した手口にご注意!(No.3)-送金依頼や書籍の強引な販売トラブル等-
  • ウクライナ情勢を悪用した詐欺トラブルが引き続き生じていますので、注意してください。
  • 相談事例
    1. SNSでウクライナにいる日本人から暗号資産を送金してほしいと言われた
      • SNSを通じて、ウクライナで医者をしているという日本人の男性と知り合った。相手から「ウクライナの危険な場所に行かないといけないので、日本に荷物と一緒に現金を送りたいが、受取人がいない。受取人になってほしいが、荷物を送る際に保険として200万円が必要だ」と言われた。暗号資産で送金してほしいと言われたが、どうしたらよいか。(2022年4月受付 50歳代 女性)
    2. 自分の卒業した大学の関係者を名乗り「ウクライナに募金を送る」と訪問してきた
      • 自分の卒業した大学の関係者を名乗る女性が「ウクライナに募金を送る」と言って自宅に訪問してきた。不審に思い後日、母校に問い合わせると、「そのような募金は行っていない」と言われた。情報提供する。(2022年4月受付 70歳代 女性)
    3. ウクライナの手助けのためにと電話で書籍の購入を勧められ、断ったら代引きで送ると言われた
      • 男性から電話があり、優しい口調で「ウクライナの戦争大変ですよね。それについてどう思われますか。手助けのために書籍を2冊買ってほしい」と言われた。しかし、2冊合わせて約7,000円と高額だったので断ったところ、急に口調が荒くなり暴言を吐かれた。その後も断り続けたら、「代引きで商品を送る」と言って電話を切られた。送り付けられたらどうしたらよいか。(2022年4月受付 70歳代 男性)
  • 消費者へのアドバイス
    • 上記のような手口のほかにも、今後、ウクライナ情勢に関連した様々なパターンのトラブルが生じる可能性がありますので、十分に注意してください。
    • 少しでもおかしいと思ったら、お住まいの自治体の消費生活センター等にご相談ください。

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国民生活センター 墓じまい 離檀料に関するトラブルに注意
  • 内容
    • 事例1
      自宅から遠く、自分も入るつもりはないので、墓じまいを寺に申し出たところ、300万円ほどの高額な離檀料を要求され困惑している。払えないと言うとローンを組めると言われた。(80歳代 女性)
    • 事例2
      跡継ぎがいないのでお寺に離檀したいと相談したところ、過去帳に8人の名前が載っているので、700万円かかると言われた。不当に高いと思う。(70歳代 女性)
  • ひとこと助言
    • 今あるお墓を片付け、寺など墓地の管理者に返還する墓じまいの際に、高額なお布施(檀家をやめるときに寺へのお礼として慣習的に支払う、いわゆる「離檀料」等)を要求されたという相談が寄せられています。
    • 離檀料に明確な基準はなく、金額に納得がいかない場合は、基本的には寺などと話し合うことになります。
    • 墓じまいは勝手にはできず、寺などが発行する「埋葬証明書」などが必要です。家族や親族などを交えるなどして、よく話し合いましょう。
    • 分からないことがあれば、お住まいの自治体の消費生活センター等にご相談ください(消費者ホットライン188)。

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厚生労働省 2022年度 雇用政策研究会 「議論の整理」
▼2022年度 雇用政策研究会 議論の整理(概要版)
  • コロナ禍の経験を踏まえた労働市場を取り巻く変化と課題
    • 我が国の労働市場はコロナ前より、少子高齢化による労働供給制約がある中で、労働生産性の伸び悩みなどの構造的課題を抱えていた。コロナ禍の影響により、それらの構造的課題に加えて、雇用のミスマッチの悪化といった労働市場の問題や、テレワークの導入や不本意な非労働力化といった企業の取組や労働者の働き方等への影響など、新たな課題が健在化している。
      1. 課題1 労働供給制約とそれに伴う人手不足
        • 女性・高齢者の非労働力化が進行。今後、一層の人手不足も懸念されるため、非労働力化した方々の労働市場への復帰を促し、労働供給量を確保することが必要。賃金の上昇が望まれる中、必要な人材を確保する観点からも、企業には処遇改善への取組の加速が求められている。
        • 失業期間の長期化や求職者数の高止まりなど雇用のミスマッチの課題が顕在化。
      2. 課題2 働き方の多様化
        • 非正規雇用労働者を中心に多くの雇用が失われた一方、フリーランスやプラットフォームワーカーといった新しい働き方も注目。テレワーク等を活用し、柔軟に働き方を変えて仕事を継続できる労働者とできない労働者といった新たな働き方の差もみられている。
        • 働き方が多様化する中で、各企業・労働者が個々の状況に合わせて、ワーク・エンゲージメントを高める雇用管理の改善を図って行く必要。
      3. 課題3 デジタル化への対応と労働生産性の向上
        • テレワークの活用や企業のDXへの認識が高まるなど、デジタル化に向けた動きが加速しており、デジタル化への対応の差が労働生産性、賃金、そして柔軟な働き方といった格差につながるおそれ。
        • デジタル化の進展により企業の成長に求められるスキル・能力が高度化していることを踏まえ、労働生産性の向上に資するようなOJTやOFF-JTを含む人的資本投資の見直しが求められている。
      4. 課題4 豊かな人生を支える健康的な職業生活の実現
        • 休業経験やテレワークなどの柔軟な働き方がメンタルヘルスなど労働者のウェル・ビーイングにも影響を与えたことが指摘。
        • 生活時間と仕事の両立にも影響がみられており、テレワーク等の柔軟な働き方の下での家事、子育て、介護等も含む生活時間と仕事の両立の難しさや家庭内での男女間の格差が顕在化。
      5. 課題5 都市部と地方部における地域間格差
        • 感染拡大が都市部を中心に生じたこともあり、都市部への人口流入の緩和等の動き。一方、地方部においては地域に多様な産業がないことの脆弱性や良質な雇用機会・人材が不足しているといった構造的課題も指摘。
        • 都市部では緊急事態宣言等を契機に多くの企業でテレワーク制度の整備が進んだ。一方、地方部ではデジタル化に向けた動きに遅れ。
  • コロナ禍の経験を踏まえた不確実性に強い「しなやかな労働市場」の構築
    • コロナ禍の経験を踏まえ、我が国の構造的な課題を克服していくためには、これまでの内部労働市場の強み(企業内での安定した人材育成や多様な人材活用など)を更に強化するとともに、外部労働市場の機能(多様な教育訓練機会やマッチング機能など)も活用しながら、コロナ禍のような不測の事態やグローバル化の更なる進展、急速な技術進歩やデジタル化による産業構造の変化に柔軟に対応でき、かつ回復力を持つ、持続可能な労働市場(しなやかな労働市場)の構築に向け、I~IVの仕組みづくりを進めていくことが重要
      1. 人口減少下ではワーク・エンゲージメントを高めることを通じた労働生産性の向上についても取り組んでいくことが重要。企業内では労働者の多様性やワーク・エンゲージメントを意識し、労働者の意欲と能力を高め、引き出すことや、デジタル化への対応を始めとする新しい高度な技能を有する人材を育成していくこと。
      2. OFF-JTや他企業・他団体での経験など企業外の様々な人的資本蓄積の機会を活用する取組も含め、企業内部の人材育成を強化し、変化への対応力を高めることや、外部労働市場に内部労働市場の情報(賃金や必要なスキル)が伝わり、企業や労働者が必要とする教育訓練機会の充実やスキルの評価を通じて、適正な処遇の確保につなげ、必要な人材確保と処遇改善を両立していくこと。
      3. ウェルビーイングの観点から、職業生活の長期化や労働者の多様性に即し、ライフステージや就業ニーズに応じた教育訓練
      4. や働き方の選択肢を拡充することで、企業の人材確保や社会全体の労働供給の増加につなげること。
      5. 上記を支えるため労働市場の基盤強化を行い、多様性に即したセーフティネットを構築すること。

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厚生労働省 これからの労働時間制度に関する検討会 第15回資料
▼資料1これまでの議論の整理 骨子(案)
  • 労働時間制度に関するこれまでの経緯と経済社会の変化
    1. 労働時間制度に関するこれまでの経緯
      • 労働時間法制は、これまでも、時代の状況に合わせて累次の改正。
      • 裁量労働制については、平成25年度労働時間等総合実態調査の有意性・信頼性に係る問題が発生。働き方改革関連法の国会審議を踏まえ、実態を再調査した上で検討することとされた。統計調査が改めて実施され、令和3年6月に同調査結果の公表。
      • 同調査結果の労働政策審議会への報告を経て、裁量労働制を含めた労働時間法制の在り方を検討することを目的として、本検討会が開催。
    2. 経済社会の変化
      • 少子高齢化や産業構造の変化が進む中で、近年ではデジタル化の更なる加速や、新型コロナウイルス感染症の影響による生活・行動様式の変容が、労働者の意識や働き方、企業が求める人材像にも影響。
      • コロナ禍でのテレワークの経験等により、労働者の意識も変化。時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を求めるニーズが強まっていく。
      • デジタル化の進展に対応できるような、創造的思考等の能力を有する人材が一層求められていく。企業は、企業の求める能力を持った多様な人材が活躍できるような魅力ある人事労務制度を整備していく必要。
      • 本検討会では、労働時間制度に関するこれまでの経緯や経済社会の変化を踏まえ、裁量労働制とともに、労働時間制度の在り方全般について検討。
  • これからの労働時間制度に関する基本的な考え方
    • 労働時間法制は、労働者の健康確保のための最長労働時間規制から出発したが、労働から解放された時間の確保のための休憩や休日の規制、そして法定時間外労働や休日労働に経済的負荷を課して抑制するとともに、負担の重い労働に対する金銭的補償を行う割増賃金規制などが一般化した。
    • 労働者の多様化、企業を取り巻く状勢変化に伴って、働き方に対するニーズも多様化し、労働時間規制に対する社会的要請や担うべき政策目的も多様化。現在の労働時間法制が、新たに生じている労使のニーズや社会的要請に適切に対応し得ているのかは、労働者の健康確保という原初的使命を念頭に置きながら、常に検証を行っていく必要があるのではないか。
    • 労使のニーズに沿った働き方は、これまでに整備されてきた様々な制度の趣旨を正しく理解した上で制度を選択し、運用することで相当程度実現可能なのではないか。まずは各種労働時間制度の趣旨の理解を労使に浸透させる必要があるのではないか。
    • 他方、様々な変化が進む中で、働き方に対する労使のニーズもより一層多様化。労働時間法制がそのような変化に対応できていない場合には、必要な見直しが行われていくべきではないか。
    • これらを踏まえ、これからの労働時間制度は、次の視点に立って考えることを基本としていくことが求められるのではないか。
    • 第一に、どのような労働時間制度を採用するにしても、労働者の健康確保が確実に行われることを土台としていくことが必要ではないか。
    • 第二に、労使双方の多様なニーズに応じた働き方を実現できるようにすべきではないか。その際、可能な限り分かりやすい制度にしていくことが求められるのではないか。
    • 第三に、どのような労働時間制度を採用するかについては、労使当事者が、現場のニーズを踏まえ十分に協議した上で、その企業や職場、職務内容にふさわしいものを選択、運用できるようにするべきではないか。
  • 各労働時間制度の現状と課題
    • 働き方改革関連法により設けられた時間外・休日労働の上限規制等については、施行後5年経過時に検討することとされており、施行の状況や労働時間の動向等を十分に把握し、その効果を見極めた上で検討すべきではないか。
    • フレックスタイム制は、コアタイムのないフレックスタイム制を導入する企業もみられるなど、今後も制度の普及が期待されるのではないか。
    • 事業場外みなし労働時間制を適用してテレワークを行う場合には、一定の要件を満たす必要があり、情報通信技術の進展等も踏まえ、この制度の対象とすべき状況等について改めて検討が必要ではないか。
    • どのような者が管理監督者に該当するか各企業でより適切に判断できるようにする観点等からの検討が必要ではないか。
    • 働き方改革関連法により、年5日の確実な取得義務(使用者の時季指定義務)が設けられており、更なる取得率向上のため、より一層の取組が求められるのではないか。
    • 時間単位年休の取得については、年5日を超えて時間単位年休を取得したいという労働者のニーズに応えるような各企業独自の取組を促すことが必要ではないか。
    • 勤務間インターバル制度については、時間外・休日労働の上限規制と併せ、その施行の状況等を十分に把握した上で検討を進めていくことが求められ、当面は、引き続き、企業の実情に応じて導入を促進していくことが必要ではないか。
    • いわゆる「つながらない権利」を参考にして検討することが考えられるのではないか。
  • 裁量労働制について
    • 裁量労働制が、制度の趣旨に沿った適正な運用が行われれば、労使双方にとってメリットのある働き方が実現できる一方で、制度の趣旨に沿っていない運用は濫用・悪用といえる不適切なものであり、これを防止する必要があるのではないか。
    • 裁量労働制の見直しに当たっては、以下を軸として検討すべきではないか。
    • 労働者が理解・納得した上での制度の適用及び裁量の確保
  • 労働者の健康及び処遇の確保
    • 労使コミュニケーションの促進等を通じた適正な制度運用の確保
  • 対象業務
    • 対象業務の範囲については、労働者が自律的・主体的に働けるようにする選択肢を広げる観点からその拡大を求める声や、長時間労働による健康への懸念等から拡大を行わないよう求める声がある。裁量労働制の趣旨に沿った制度の活用が進むようにする観点から、対象業務についても検討すべきではないか。
    • 対象業務の範囲については経済社会の変化や、それに伴う働き方に対する労使のニーズの変化等も踏まえて見直される必要があるのではないか。
  • 本人同意・同意の撤回・適用解除
    • 裁量労働制の下で労働者が自らの知識・技術を活かし、創造的な能力を発揮するために、労働者が制度等について十分理解し、納得した上で制度が適用されるようにしていく必要があるのではないか。
    • 裁量労働制の下で働くことが適切でないと労働者本人が判断した場合には、制度の適用から外れることができるようにする必要があるのではないか。
    • 裁量労働制の適用を継続することは適当ではないと認められる場合の対応を検討すべきではないか。
  • 対象労働者の要件
    • 企画型での対象労働者を「対象業務を適切に遂行するために必要となる具体的な知識、経験等を有する労働者」とする要件の履行確保をより図るべきではないか。
    • 裁量労働制にふさわしい処遇が確保されるようにする必要があるのではないか。
  • 業務量のコントロール等を通じた裁量の確保
    • 裁量が事実上失われるような働かせ方とならないようにする必要があるのではないか。
    • 始業及び終業の時刻その他の時間配分の決定を労働者に委ねることを徹底すべきではないか。
  • 健康・福祉確保措置
    • 労働時間の状況の把握について、制度間の整合性をとるべきではないか。
    • 健康・福祉確保措置について、裁量労働制の対象労働者の健康確保を徹底するための対応を検討すべきではないか。
  • みなし労働時間の設定と処遇の確保
    • みなし労働時間は、対象業務の内容と、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度を考慮して適切な水準となるよう設定する必要があること等を徹底する必要があるのではないか。
    • 例えば所定労働時間をみなし労働時間とする場合の、裁量労働制にふさわしい相応の処遇を確保し、制度濫用を防止するために求められる対応を明確にすべきではないか。
    • 労使委員会の導入促進と労使協議の実効性向上
    • 労使協定又は労使委員会決議に際し、賃金・評価制度の運用実態等も参考にしながら、労使が協議を行うことを促進すべきではないか。
    • みなし労働時間の設定や処遇の確保について制度の趣旨に沿った運用になっていないと考えられる場合の対応を明確にすべきではないか。
    • 専門型の制度運用の適正化を図るため、労使委員会の活用を促すべきではないか。
    • 制度運用上の課題が生じた場合に、適時に労使委員会を通じた解決が図られるようにすることを検討する必要があるのではないか。
  • 苦情処理措置
    • 苦情処理措置の認知度や苦情申出の実績が低調である実態を踏まえて対応する必要があるのではないか。
  • 行政の関与・記録の保存等
    • 定期報告について、企画型が制度として定着してきたことを踏まえるとともに、健康・福祉確保措置の実効性確保の観点から対応する必要があるのではないか。
    • 企画型の労使委員会決議・専門型の労使協定について届出を簡素化する必要があるのではないか。
  • 今後の課題等
    • 働き方改革関連法施行5年後の検討規定に基づく検討や、将来を見据えた検討に当たっての課題を整理する必要があるのではないか

~NEW~
厚生労働省 第175回労働政策審議会労働条件分科会(資料)
▼資料No.1 無期転換ルールに関する論点について
  • 総論
    • 無期転換ルールの活用状況について、どう考えるか。
    • 無期転換ルールは、有期契約労働者の雇用の安定や企業の雇用管理にどのような効果・影響があったと考えられるか。
    • 無期転換ルールに関する見直しの方向性について、どう考えるか。
  • 無期転換を希望する労働者の転換申込機会の確保
    • 無期転換を希望する労働者の転換申込機会の確保について、どう考えるか。
    • 具体的には、検討会報告書で示された以下の対応策について、どう考えるか。
      • 無期転換ルールの労使双方に対する更なる周知について
      • 使用者から個々の労働者に対して、無期転換申込権に関する通知を行うことについて(通知の方法やタイミング、内容等含む)
  • 無期転換前の雇止め等
    • 無期転換前の雇止めやその他の無期転換回避策とみられるもののうち、無期転換ルールの趣旨、雇止め法理や裁判例等に照らし問題があると考えられるケースへの対応について、どう考えるか。
    • 更新上限設定に関する紛争の未然防止や解決促進のための方策について、どう考えるか。具体的には、検討会報告書で示された以下の対応策について、どう考えるか。
      • 使用者から個々の労働者に対して、労働条件の明示の際に、更新上限の有無及びその内容を明示することについて
      • 使用者から個々の労働者に対して、最初の契約締結より後に更新上限を新たに設ける場合には、労働者の求めに応じて上限設定の理由を説明することについて
    • 無期転換申込みを行ったこと等を理由とする不利益取扱いへの対応について、どう考えるか。
  • 通算契約期間及びクーリング期間
    • 通算契約期間及びクーリング期間について、どう考えるか。
▼資料No.4 副業・兼業の促進に関するガイドラインの改定案について(概要)
  • 副業・兼業の促進に関するガイドラインの改定案について(概要)
    1. 趣旨
      • 副業・兼業については、これまで厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン(平成30年1月策定)」(以下「ガイドライン」という。)において、労働者が安心して副業・兼業に取り組むことができるよう、副業・兼業の場合における労働時間管理や健康管理等の在り方について示してきたところ。
      • 今般、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画~人・技術・スタートアップへの投資の実現~(令和4年6月7日閣議決定)」及び「経済財政運営と改革の基本方針2022(令和4年6月7日閣議決定)」において、労働者の多様なキャリア形成を促進する観点等から、副業・兼業の拡大・促進に取り組んでいくことが決定されたところ。
      • 上記の決定を踏まえ、副業・兼業を希望する労働者が、適切な職業選択を通じ、多様なキャリア形成を図っていくことを促進するため、ガイドラインを改定し、企業に対して、副業・兼業への対応状況についての情報公開を推奨していく。
    2. 改定の概要
      • ガイドラインの「企業の対応」に新たな項目(「副業・兼業に関する情報の公表について」)を追加し、
        1. 副業・兼業を許容しているか否か、
        2. また条件付許容の場合はその条件について、
          • 自社のホームページ等において公表することが望ましいことを記載する。
          • (※)「その条件」とは、副業・兼業が許容される条件(自社の業務に支障が無い範囲で副業・兼業を認めるなど)を想定。
          • ガイドラインの「労働者の対応」に、適切な副業・兼業先を選択する観点から、上記の取組によって企業から公表される情報を参考にすることを記載する。
    3. 改定予定日
      • 令和4年7月上旬(予定)

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厚生労働省「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します~民事上の個別労働紛争において、「いじめ・嫌がらせ」が引き続き最多、「解雇」は前年度より減少~
  • 厚生労働省は、このたび「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」をまとめましたので、公表します。
  • 「個別労働紛争解決制度」は、個々の労働者と事業主との間の労働条件や職場環境などをめぐるトラブルを未然に防止し、迅速に解決を図るための制度で、「総合労働相談」、都道府県労働局長による「助言・指導」、紛争調整委員会による「あっせん」の3つの方法があります。
  • 今回の施行状況を受けて、厚生労働省は、総合労働相談コーナーに寄せられる労働相談への適切な対応に努めるとともに、助言・指導およびあっせんの運用を的確に行うなど、引き続き、個別労働紛争の未然防止と迅速な解決に向けて取り組んでいきます。
  • ポイント
    1. 総合労働相談件数、助言・指導の申出件数、あっせんの申請件数は前年度より減少
      • 総合労働相談件数は124万2,579件で、14年連続で100万件を超え、高止まり
    2. 民事上の個別労働紛争における相談件数、助言・指導の申出件数、あっせんの申請件数の全項目で、「いじめ・嫌がらせ」の件数が引き続き最多
      • 民事上の個別労働紛争の相談件数は、86,034件(前年度比6%増)で10年連続最多
      • 助言・指導の申出は、1,689件(同8%減)で9年連続最多
      • あっせんの申請は、1,172件(同1%減)で8年連続最多
    3. 民事上の個別労働紛争における相談件数、助言・指導の申出件数、あっせんの申請件数の全項目で、「解雇」の件数が前年度に比べ減少
      • 民事上の個別労働紛争の相談件数は、33,189件で、前年度比3%減少
      • 助言・指導の申出は、736件で、同5%減少
      • あっせんの申請は、743件で、同4%減少

~NEW~
厚生労働省「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」を策定しました
▼参考資料 職場における学び・学び直し促進ガイドライン(概要)
  • 意義
    • 「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」は、職場における人材開発(「人への投資」)の抜本的強化を図るため、企業労使が取り組むべき事項等を体系的に示したもの。
    • 企業の人的資本投資(人的資本経営)への関心が高まっている。「ガイドライン」は、「労使双方の代表」を含む公労使が参画する労働政策審議会(人材開発分科会)における検討・審議を経て、公的に初めて、その「具体的内容や実践論」の全体像を体系的に示すもの。
  • 内容面のポイント
    • 変化の時代における労働者の「自律的・主体的かつ継続的な学び・学び直し」の重要性と、学び・学び直しにおける「労使の協働」の必要性を強調。企業労使の実践に資するよう、「Ⅰ基本的な考え方」に続き、「Ⅱ労使が取り組むべき事項」、「Ⅲ公的な支援策」の3部で構成。
    • 「Ⅱ労使が取り組むべき事項」においては、「学びのプロセス」((1)能力・スキル等の明確化、学びの目標の共有→(2)効果的な教育訓練プログラムや教育訓練機会の確保→(3)学びを後押しする伴走的な支援策の展開→(4)持続的なキャリア形成につながる学びの実践・評価)に沿って、「取組の考え方・留意点」と「推奨される取組例」を具体的に提示。
    • 「労使の協働」を実効あるものにするため、(1)学びの基本認識共有のための「経営者」の役割、(2)学びの方向性・目標の擦り合わせやサポートを行う「現場のリーダー」の役割、(3)自律的・主体的な学び・学び直しの後押し・伴走を行う「キャリアコンサルタント」の役割を強調するほか、(4)「労働者相互」の学び合いの重要性も指摘。
    • 「Ⅲ公的な支援策」では、厚生労働省のものにとどまらず、広く公的な支援策を掲載。参考になる「企業事例」も紹介。
  • 普及・促進
    • 労使関係者の協力も得つつ、経営層から労働者個々人まで広く周知を図り、「人への投資施策パッケージ」で拡充されている「Ⅲ公的な支援策」の活用も促しつつ、「学び・学び直し」の促進に全力で取り組む。
      1. 基本的な考え方
        • 急速かつ広範な経済・社会環境の変化は、企業内における上司・先輩の経験や、能力・スキルの範囲を超えたものであり、企業・労働者双方の持続的成長を図るためには、企業主導型の教育訓練の強化を図るとともに、労働者の自律的・主体的かつ継続的な学び・学び直しを促進することが、一層重要となる。
        • 労働者の学び・学び直しを促進するためには、労使が「協働」して取り組むことが必要となる。特に、以下の(1)~(4)が重要である。
          1. 個々の労働者が自律的・主体的に取り組むことができるよう、経営者が学び・学び直しの基本認識を労働者に共有
          2. 管理職等の現場のリーダーによる、個々の労働者との学び・学び直しの方向性・目標の「擦り合わせ」や労働者のキャリア形成のサポート。併せて、企業による現場のリーダーへの支援・配慮
          3. キャリアコンサルタントによる学び直しの継続に向けた労働者に対する助言・精神的なサポートや、現場のリーダー支援
          4. 「労働者相互」の学び合い
        • 学び・学び直しにあたっては、雇用形態等にかかわらず、学び・学び直しの基本認識の共有や、職務に必要な能力・スキル等の明確化を踏まえた学び・学び直しの方向性・目標の擦り合わせ、学びの機会の提供、学び・学び直しを促進するための支援、学びの実践・評価という、「学びのプロセス」を踏まえることが望ましい。
        • 学び・学び直しが実践されることで、学びの気運や企業風土が醸成・形成され、キャリアの向上を実現し、より高いレベルの新たな学び・学び直しを呼び込むという「学びが学びを呼ぶ」状態、いわば、「学びの好循環」が実現されることが期待される。
      2. 労使が取り組むべき事項
        1. 経営者による経営戦略・ビジョンと人材開発の方向性の提示、共有
          • 企業が、事業目的やビジョン、重視する価値観を明らかにし、今後の経営戦略と人材開発の方向性を提示することは、学びの内発的動機付けにつながることから重要。
        2. 役割の明確化と合わせた職務に必要な能力・スキル等の明確化
          • 学び・学び直しの内容や習得レベル、目標等を設定しやすくするため、役割明確化と合わせ、職務に必要な能力・スキル等を明らかにすることが重要。
        3. 学ぶ意欲の向上に向けた節目ごとのキャリアの棚卸し
          • 労働者が、今後のキャリアの方向性や学ぶべき内容を考えるにあたって、節目ごとにキャリアの棚卸しを行うことが必要。
        4. 学び・学び直しの方向性・目標の擦り合わせ、共有
          • 学び・学び直しを効果的なものとする観点から、学ぶ内容や目標に関して、現場のリーダーが個々の労働者と擦り合わせを行うことが必要。
        5. 学び・学び直しの教育訓練プログラムや教育訓練機会の確保
          • 急速かつ広範な経済・社会環境の変化に対応した学び・学び直しができるよう、外部教育訓練機関の活用など、多様な形態で行うことが必要。
          • 自社で得ることのできない能力・スキルや経験の獲得・実践の場として、副業・兼業や在籍型出向を活用し、本業に活かすことが期待される。
        6. 労働者が相互に学び合う環境の整備
          • 労働者がお互いに学び、高め合う環境を確保することが重要。
        7. 学び・学び直しのための時間の確保
          • 時間の確保が必要であり、「自己啓発」のうち仕事や業務に資するものについては、時間的配慮を行うことが望ましい。
        8. 学び・学び直しのための費用の支援
          • OFF-JTとして学び・学び直しを行う場合に要する費用は、基本的に企業の負担となる。「自己啓発」のうち仕事や業務に資するものについては、経済的支援をすることが望ましい。
        9. 学びが継続できるような伴走支援
          • 定期的・継続的な助言や精神的なサポートを行う仕組みを設けることが望ましい。その際、キャリアコンサルタント等の活用を検討することが望ましい。
        10. 身に付けた能力・スキルを発揮することができる実践の場の提供
          • 学んだことを業務で実践することで、身に付けた能力・スキルが定着するという効果が期待されることから、企業は、実践の場を提供することが重要。
        11. 身に付けた能力・スキルについての適切な評価
          • 学び・学び直しやそれにより得られた能力・スキルについて適切に評価を行うことが必要。それにより、新たな目標が生まれ、更なる学び・学び直しにつながることが期待される。
        12. 学び・学び直しの場面における、現場のリーダーの役割と取組
          • 現場の課題を把握し、経営者と労働者との結節点となっている管理職等の現場のリーダーには、個々の労働者との学び・学び直しの方向性・目標の擦り合わせと、労働者の学び・学び直しを含めたキャリア形成のサポートが求められる。
        13. 現場のリーダーのマネジメント能力の向上・企業による支援
          • 企業は、現場のリーダーがマネジメント能力を向上して求められる役割を果たすことができるよう、また、現場のリーダーが孤立することが無いよう、十分な配慮や支援を行い、過度な業務負担となっている場合には、軽減する等の措置を講ずることが必要。

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厚生労働省 第2回厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会大麻規制検討小委員会 資料
▼資料1 大麻事犯の現状について
  • 大麻密輸事件の摘発状況
    • 令和3年の大麻密輸事件の摘発件数は199件(前年比2%減)と減少した一方、押収量は約153kg(同22%増)と増加した。
    • 大麻草の押収量は約22kg(同56%減)と減少したが、大麻樹脂等(大麻樹脂のほか、大麻リキッド・大麻菓子等の大麻製品を含む。)の押収量は約132kg(同72%増)と増加した。
    • 仕出地別の摘発件数では、アメリカが3%、カナダが3.5%であり、北米で約7割を占める。
  • 大麻密輸事件の特徴
    • 乾燥大麻が減少し、大麻リキッド(液体大麻)の密輸が増加している。
    • 大麻リキッド(液体大麻)の隠匿方法が巧妙化している。
    • 送付先を空室宛にしたり、事情の知らない第三者を受取人とするなど密輸手口が悪質。
    • ショットガン方式で密輸し、ある程度摘発されても密輸組織側のダメージが少ない。
    • 輸入された薬物を受領できない場合でも密輸組織側が薬物受領をあきらめるのが早い。
    • コントロールド・デリバリー捜査(CD捜査)を活用するも、事犯解明が困難な事件が多い。
  • 大麻濃縮物押収量等の増加
    • 大麻濃縮物とは、大麻の有害成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)を高濃度で含む大麻ワックスや大麻リキッド等の総称。
    • 米国司法省麻薬取締局(DEA)では、大麻濃縮物という概念はなく、大麻抽出物として、大麻草由来の1種又は複数種のカンナビノイドを含有する抽出物、但し大麻草から分離した樹脂(生成済みか否かを問わない)を除くと定義されている。
    • 大麻樹脂に係る送致件数・人員は横ばい状態であり、押収量は年によって上下している。一方、液体大麻に係る検挙人員・件数及び押収量が明らかに急増している。
  • 電子タバコで使用する
    • 大麻濃縮物の主要な押収形態はカートリッジ入りのリキッドである。これは電子タバコを使って使用する。
    • 電子タバコにはバッテリーが内蔵されており、リキッドを加熱してTHCを気化させて吸引する。
    • 電子タバコ用のリキッドは「e-リキッド」とも呼ばれており、大麻濃縮物をプロピレングリコール等と混合して作られる。
  • 巧妙化する薬物密売の流れ
    1. SNS(ソーシャルネットワークサービス)に薬物密売広告(概要)を掲載して購入客を募る
    2. 購入希望者について秘匿性の高いインスタントメッセンジャーへ誘導して商談(薬物種、量、金額等)
    3. 秘匿性の高い外国の暗号資産取引業者などを指示して、客に薬物代金決済を行わせる
    4. 発送者の特定が困難な配送手段で薬物を客の指定住所へ発送
  • 密売広告例
    1. 大麻の密売(手渡し)
    2. MDMA、乾燥大麻、大麻リキッドの密売(郵送)
    3. 様々な品種の乾燥大麻の密売→すべて秘匿性の高いインスタントメッセンジャーに誘導している。
  • 栽培事犯増加要因の分析
    • インターネットの普及⇒栽培方法・種子・栽培器具等の情報⇒栽培の容易化
    • 輸送連絡網の発達⇒SNS等で注文⇒全国各地へ配送⇒栽培事犯の広域化
    • 秘密裏に栽培可能⇒自己完結型栽培⇒犯罪の潜在化⇒栽培事犯の増加
  • 大麻の所持に関する証拠が不足している場合に、大麻取締法に使用罪の規定がないため、大麻の使用に関する証拠が充分であったとしても、当該者を所持罪でも使用罪でも検挙することができない
    1. パターン1
      • 不審者等に対する職務質問を実施したところ、車内から大麻の使用器具等を発見したが、大麻は発見されなかった。
      • 被疑者が大麻の使用を自認しており、任意採尿した尿から高濃度のTHCの代謝物が検出された。
      • 大麻の所持に関する証拠が不足しており、大麻使用の証拠が充分であるものの、検挙に至らない。
    2. パターン2
      • 被疑者A及びBが居住する部屋から大麻及び吸煙器具を発見した。
      • AとBの尿から高濃度のTHCの代謝物が検出された。
      • AとBは、所持していた大麻について、お互いに「相手のもので自分のものではない。」と主張する一方、両名とも「大麻を吸ったことがある。」と大麻の使用を自認した。
      • 捜査の結果、大麻の共同所持罪は成立しなかった。
      • 大麻の共同所持に関する証拠が不足しており、AとBに大麻使用の証拠が充分であるものの、検挙に至らない。
▼資料3 大麻由来製品の使用とTHCによる使用の立証について
  • 薬物事犯での薬物使用の立証は、過去の判例等に基づき、被疑者の尿を採取し、鑑定することにより行っている。このため、大麻使用事犯においても、大麻使用後の尿中の大麻成分の挙動を把握しておくことが重要である。
  • 大麻の尿中排泄の様態
    • THCは体内に摂取された後、代謝され、THC代謝物(THC-COOH-glu)として尿中に排泄されることが知られており、使用の立証には、THC代謝物のTHC-COOHを定量する。一般的にTHC摂取後1週間程度、検査可能な量が尿中に排泄されるが、常習者においては、3ヶ月を超えて検出される例があることが知られている。
  • 受動喫煙と能動喫煙の識別
    • これまでの知見から、喫煙者に比べて一般に受動喫煙では、尿中に現れるTHC代謝物の濃度は低く、測定時の濃度により、喫煙者と受動喫煙の区別は可能である。
  • CBDオイル等の食品からのTHCの摂取可能性
    • CBDの経口摂取により、生体内では胃液や肝臓の代謝により、THCには変換されないとされる。純粋なCBD製品の摂取では、尿中にTHC代謝物が検出されることは否定的な結果が得られているため、CBD製品の摂取でTHC代謝物が検出されるのは、THCが製品に混入する場合と考えられる。
    • 経口又は吸引で、THCがmg/日単位で摂取されると尿中には確実にTHC代謝物が検出される。
    • 一定期間連用しても確実に検出されないTHCの摂取量は、さらに低濃度の水準となる。
  • 経口摂取製品のTHC残留基準
    • EUでは、THCの摂取許容量として、THCの急性参照用量(acute reference dose, ARfD)1μg/kg体重を基準にして食品等のTHC残留基準を定めており、その安全性評価を参考にした製品のTHC残留基準を設定すべきではないか。※「ヒトがある物質を24時間またはそれより短い時間経口摂取した場合に健康に悪影響を示さないと推定される一日当たりの摂取量」
  • 有害性のないCBDが、使用時にTHCに変換されることはないか
    • CBDは、有害な精神作用を有しない大麻草由来物質として知られている。
    • CBDのみ摂取(経口、ベイプ吸煙)では、生体内代謝があっても、尿からTHCを明らかに使用したといえる水準の濃度では検出されていない。
    • CBDに対して、酸及び熱を加えると製造設備がなくてもTHCへの変換が可能と示唆された。
    • 一方、電子タバコのベポライザー加熱・吸煙条件では、CBDからTHCが生成する可能性は否定されており、また、人での吸煙試験では血液中でも検出できる程度にはTHC変換されず、尿中でTHCの摂取を確認するには至らないことが示されている。
    • CBDのみの摂取では、THCに変換されることはないといえるのではないか。
    • 一方、CBDに意図的に酸及び熱を加えると、一部がTHCに変換されること※も知られており、これに対して必要な対応をすべきではないか。※現行法でも無免許でTHC(麻薬)を製造する行為は麻薬製造罪違反となる。
    • THCに変換されるカンナビノイドに関する調査・研究を進めるべき。
  • 制度制定時に留意すべきこと
    1. 尿検体の取扱い
      • 尿検査は、大麻使用を立証する検査として利用可能であるが、現場でのスクリーニング法とGC/MS等の一定の感度をもった精密な検証試験など、実施可能な試験方法を導入するべきではないか。
      • 尿検査の実務においては、大麻の喫煙と受動喫煙によるTHCの摂取を尿中のTHC代謝物濃度で区別することができるのではないか。
    2. 製品のTHC残留基準
      • 米国での大麻草中のTHC残留基準3%は、人にTHCが作用を及ぼす濃度よりも高いため、保健衛生上の観点から、食品や嗜好品に対して定める残留限度値は、人に対する無影響量を根拠とするべきではないか。
      • 欧州での無影響量の設定を参考に、製品中のTHC残留限度値の水準を考えるべきではないか。
      • その際に、CBDなどの食品や嗜好品の吸煙などに不可避的に混入しうる微量のTHCの尿検査への影響も考慮するとともに、食品や嗜好品が使用罪の立証の根拠となる尿検査に影響を与えないような食品や嗜好品のTHC残留限度値を設定すべきではないか。
      • 製品中のTHC残留限度値は公表することとし、事業者の責任で基準適合性を自己担保するための試験方法も統一的に示す仕組みにする必要があるのではないか。(行政等による検査や鑑定で違法性が確認されれば、回収とするなど。)
    3. THC生成への対応
      • CBDは酸及び熱により、THCに一部が変化するという知見が得られている。CBDからTHCを得ること*に対して必要な対応をすべきではないか。*現行法でも無免許でTHC(麻薬)を製造する行為は麻薬製造罪違反となる。
      • 乾燥大麻からTHCの濃縮で得られるBHO(大麻濃縮物の1つ)も含めた大麻の所持に対しては適切に取締まる必要があるのではないか。
      • カンナビノイドには未解明の物質も多く、摂取に伴い、THCを生成する可能性がある物質についての調査・研究を進めるべきではないか。
▼資料6 大麻取締法等の改正に向けた論点について2
  1. 医療ニーズへの対応
    1. 大麻から製造された医薬品について、G7諸国における医薬品の承認状況、麻薬単一条約との整合性を図りつつ、その製造、施用等を可能とすることで、医療ニーズに適切に対応していく必要があるのではないか。
  2. 薬物乱用への対応
    1. 医療ニーズに応える一方、大麻使用罪を創設するなど、不適切な大麻利用・乱用に対し、他の麻薬等と同様に対応していく必要があるのではないか。
    2. 一方、薬物中毒者、措置入院を見直し、無用なスティグマ等の解消とともに、再乱用防止や薬物依存者の社会復帰等への支援を推進していく必要があるのではないか。
    3. また、規制すべきは有害な精神作用を示すTHCであることから、従来の部位規制に代わり、成分に着目した規制を導入する必要があるのではないか。
  3. 大麻の適切な利用の促進
    1. 成分規制の導入等により、神事を始め、伝統的な利用に加え、規制対象ではない成分であるCBDを利用した製品等、新たな産業利用を進め、健全な市場形成を図っていく基盤を構築していく必要があるのではないか。
    2. その際、こうした製品群について、THC含有量に係る濃度基準の設定を検討していく必要があるのではないか。
  4. 適切な栽培及び管理の徹底
    1. 現在の栽培を巡る厳しい環境、国内で栽培される大麻草のTHC含有量の実態等を踏まえ、上記1~3を念頭に、適切な栽培・流通管理方法を見直していく必要があるのではないか。
    2. 特に、現行法においては、低THC含有量の品種と高THC含有量の品種に関する規制が同一となっている点を見直す必要はないか。
  • 大麻の適切な利用の推進 現状・課題
    • 「エピデオレックス」のような医薬品以外にも、大麻草の規制部位以外から抽出されたとされるCBD等成分を含む製品が、海外から輸入され、食品やサプリメントの形態で国内で販売されている状況。
    • 大麻の規制が、THCを中心とした成分規制となる場合、花穂や葉から抽出したCBD等の成分が利用可能となるが、CBD等の製品中に残留する不純物のTHCの取扱い(製品中の残留限度値の設定など)を検討しなければならない。現状でも、国内で販売されているCBD製品から、THCが微量に検出され、市場で回収されている事例があり、安全な製品の流通・確保が課題となっている。
    • 大麻に使用罪がない現状で、大麻を使用しても、その所持が確認できない場合に立件できない状況が生じている。また、使用罪に関して、大麻使用の立証は、被疑者の尿中のTHC代謝物を検査することによることから、受動喫煙や製品から混入するおそれのあるTHCの尿中への代謝物としての排泄についても知見を深める必要がある。
    • CBDをはじめ、大麻草から、バイオプラスチックや建材などの製品が生産される海外の実例もあり、伝統的な繊維製品以外にも、国内で大麻草から生産される新たな用途や需要が増大する可能性がある。その際の大麻草の流通や製品製造時の流出防止や安全性確保も課題となる。
  • 大麻の適切な利用の推進 基本的な考え方・方向性
    • 大麻の部位規制から、大麻成分に基づく成分規制に変更することに際して、大麻由来製品の製品中のTHCの残留基準値は公表することとし、事業者の責任で基準適合性を自己担保するための試験方法も統一的に示す仕組みとしてはどうか。
    • 製品中のTHC残留限度値は、THCが毒性を発現する量よりも一層の安全性を見込んだ量、尿検査による大麻使用の立証に混乱を与えない量を勘案して適切に設定すべきではないか。また、THCに変換される物質に対する研究を深め、大麻使用の取締の実効性を確保できるよう、適切に規制すべきではないか。
    • 大麻栽培免許規制において、繊維、種子の採取といった利用目的以外にも、新たな需要に対応した産業目的にも利用を広げてはどうか。
    • 低THCの大麻草品種を扱い、THCを含まない製品を製造し、流通する場合でも、栽培で得られた花穂・葉等の取扱いや製品の製造過程について、大量の花穂や葉のダイバージョンが起こらないよう、栽培地から製造業者まで適切な物の流通管理(免許・許可)や当局による把握を行う必要があるのではないか。
  • 適切な栽培及び管理の徹底について 現状・課題
    1. 大麻栽培者数等の現状
      1. 大麻栽培者については、昭和29年の37,313名、栽培面積については、昭和27年の4,916haをピークに減少を続け、令和2年現在では30名、7haにまで激減。
      2. また、大麻草から採取される繊維等については、令和2年では繊維が約2,194kg、種子は約400kg、おがらは約11,780kgとなっており、国内需要を満たすには遠く至らず、多くは中国等からの輸入に頼っている状況となっている。
    2. 大麻にかかる栽培管理の現状
      • 大麻取締法においては、大麻栽培に当たっては大麻栽培者に限定しており、都道府県知事が免許を付与することとされている。大麻栽培者は「繊維若しくは種子を採取する目的」で栽培する者となっており、栽培目的が限定的になっている。
      • 栽培管理に関しては、法令上、栽培者に係る欠格事由を定めているほかは、特段の規定はなく、THC含有量に関する特段の基準はなく、また、含有量に応じた栽培管理の対応を求めていない。
    3. 国内において栽培されている大麻草の現状
      • 国内において栽培されている大麻草のTHC含有量については、総THC平均値で花穂071%、葉0.645%(総THC最大平均値では1.553%、1.036%、最小平均値では0.611%、0.293%)となっている。一方で、「とちぎしろ」に代表される、THC含有量が極めて少量の品種を栽培しているケースも多い。
    4. 海外における大麻草栽培の現状
      1. アメリカ
        1. アメリカにおいては、2018年に農業法において「乾燥重量でTHC濃度3%以下の大麻草、種子、抽出物等」をHempと定義(0.3%超をMarijuanaとして定義)、Hempに関しては、国内での生産を合法化。栽培者にはライセンスを必要とするほか、嗜好用途・医療用途のMarijuana栽培は不可としている。
        2. 栽培品種は公認の種子認証機関による品種認証を受け、公的基準に従って生産された品種のhemps種子を使用することを推奨(義務付けではない)、生産物の収穫前にTHC含有量に関する検査を義務付け(農場検査方式)、制限値を超える濃度が検出された場合は原則、処分を求めるほか、過失を繰り返すと免許剥奪の対象となる。
      2. 欧州
        • EUとしては、農業生産に対する助成対象の基準を定めており、THC濃度2%以下と設定し、Hemp栽培で許容されるTHC濃度等については各国において設定。ドイツ、フランスでは0.2%、オーストリア、チェコでは0.3%に設定。
        • イギリスにおいては、THC含有量が少ない産業用Hempの栽培を認めており、濃度基準は2%を超えないことと設定。栽培者はライセンスを必要とするほか、栽培用途に関しては、非管理部位(種子、繊維/成熟した茎)を用いた産業用の大麻繊維の生産、又は油を搾るための種子入手の目的に限定、CBDオイルの生産も含まれている。
        • 加えて、医薬品用途で使用される大麻草の栽培も認めており、ライセンスの申請に当たっては、栽培場所、事業内容・目的、供給者や供給される製品の詳細、事業所のセキュリティの詳細(監視カメラ、フェンス、セキュリティ違反への対応等)、記録保存等の届出を求めている。書類審査・現地視察のほか、定期的な監査を行うこととしている。
      3. カナダ
        • カナダの種子管理については、登録された品種の栽培に関しては、アメリカのような収穫前のサンプル検査を必要としない取扱いとなっている。
  • 適切な栽培及び管理の徹底について 基本的な考え方・方向性
    1. 主な論点について
      • 大麻草の栽培管理の現状等を踏まえ、今後、検討すべき主な論点は以下の通り。
        1. 栽培の目的・用途について
          • 現行法の繊維もしくは種子を採取する目的に加え、新たな産業利用やCBD製品に係る原材料の生産を念頭においた目的を追加すべきか。
          • また、現行法では認めていない「医薬品原料用途」の栽培についてどう考えるか。
        2. THC含有量に応じた栽培管理のあり方について
          • 現行用途及び新たな産業目的やCBD原材料などの用途の大麻草については、THC含有量が多い必要性はないと考えられる点に鑑みると、海外の事例も踏まえつつ、THC含有量に関する基準を設定すべきかどうか。その際、THC含有量が多い品種に係る取扱いについてどう考えるべきか。
        3. 栽培管理に関する基準の明確化について
          • 現行法では、栽培管理については、欠格事由以外、免許付与に係る基準を特段設けておらず、事務を担う都道府県にとっても判断材料に乏しい状況となっており、上記のTHC含有量に関する基準の検討とともに、栽培管理のあり方についても、現状等を踏まえつつ、一程度明確化していく必要がないか。
          • その際、用途に応じた対応について、上記①の検討とともに検討していく必要があるのではないか。
        4. THC含有量が少ない品種に関する栽培管理のあり方及びその担保を行う仕組みについて
          • 上記(3)と相まって、栽培管理のあり方について明確にしていく際、THC含有量が少ない品種に関しては、乱用防止を前提にしつつ、免許期間等を含め、より栽培しやすい環境を整備していく必要がないか。
          • 一方、医療用途を含め、THC含有量が多い品種の栽培に関しては、厳格な管理を求める必要がないか。
          • THC含有量に応じた栽培管理を行う場合、特にTHC含有量が低い品種に関して、その継続的な担保が必要になるのではないか。担保に当たっては、国内外の事例を踏まえると、種子に関する管理を徹底する方式と収穫前の検査を徹底する方式が考えられるが、これらの管理について、どう考えるか。
          • その際、品種登録等については、制度的・専門的な観点から、更なる知見を集積した上で、論点を整理する必要があるのではないか。(次回以降)
          • 栃木県やカナダの例:種苗事業者や農業試験場等の検査・研究機関等が、登録品種又はこれに準じた品種の種子(THC制限値を下回るもの)を増殖して大麻栽培者(農家)に配布し、同種子を利用して栽培する(その場合、収穫前のTHC検査は不要)。農家による種子の増殖、分譲は不可。
          • アメリカの例:自家採取の種子を栽培に利用、収穫前にサンプリング検査を実施、THCの制限値以下である旨を確認し、確認済みの生産物のみが流通する。農家による自家採取と分譲は可能。

~NEW~
厚生労働省 第89回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年6月30日)
▼資料1 直近の感染状況等の分析と評価
  • 感染状況について
    • 全国の新規感染者数(報告日別)は、直近の1週間では10万人あたり約92人となり、今週先週比は17と増加に転じている。また、年代別の新規感染者数は、概ね全ての年代で微増となっている。
    • 新規感染者数の増加に伴い、療養者数及び重症者数は緩やかな増加に転じている。病床使用率は総じて低水準にあり、死亡者数は減少傾向にある。
    • 実効再生産数:全国的には、直近(6/12)で98と1を下回る水準となっており、首都圏では1.02、関西圏では0.97となっている。
  • 地域の動向 ※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値。
    1. 北海道 新規感染者数は今週先週比が85と1を下回り、約77(札幌市約85)。30代以下が中心。70代で横ばいとなる一方、その他の年代で微減又は減少。病床使用率は1割弱。
    2. 北関東 茨城の新規感染者数は今週先週比が01と1を上回り、約52。20代以下が中心。10-20代で増加、40-50代で微増となる一方、その他の年代では微減又は減少。病床使用率は1割弱。栃木、群馬では今週先週比がそれぞれ0.85、0.72と1を下回り、新規感染者数はそれぞれ約30、34。病床使用率について、群馬では1割弱、栃木では1割未満。
    3. 首都圏(1都3県) 東京の新規感染者数は今週先週比が37と1を上回り、約118。30代以下が中心。全ての年代で微増又は増加。病床使用率は1割強、重症病床使用率は1割強。埼玉、千葉、神奈川でも今週先週比がそれぞれ1.13、1.27、1.25と1を上回り、新規感染者数はそれぞれ約65、63、77。病床使用率について、埼玉では約1割、千葉、神奈川では1割弱。
    4. 中京・東海 愛知の新規感染者数は今週先週比が21と1を上回り、約88。20代以下が中心。全ての年代で微増又は増加。病床使用率は1割弱。岐阜、静岡、三重でも今週先週比がそれぞれ1.21、1.29、1.29と1を上回り、新規感染者数はそれぞれ約75、54、75。病床使用率について、岐阜では1割弱、静岡では1割未満、三重では1割強。
    5. 関西圏 大阪の新規感染者数は今週先週比が33と1を上回り、約117。20代以下が中心。80代以上で横ばいとなる一方、その他の年代で微増又は増加。病床使用率は1割強、重症病床使用率は1割弱。京都、兵庫、和歌山では今週先週比がそれぞれ1.04、1.21、1.53と1を上回り、新規感染者数はそれぞれ約82、86、77。滋賀、奈良では今週先週比が0.98、0.97と1を下回り、新規感染者数は約75、54。病床使用率について、京都では1割強、和歌山では約1割、滋賀、兵庫では1割弱、奈良では1割未満。
    6. 九州 福岡の新規感染者数は今週先週比が20と1を上回り、約110。30代以下が中心。全年代で微増又は増加。病床使用率は約1割。佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎でも今週先週比がそれぞれ1.42、1.16、1.39、1.34、1.53と1を上回り、新規感染者数はそれぞれ約187、137、227、84、147。鹿児島では今週先週比が0.99と1を下回り、新規感染者数は約148。病床使用率について、佐賀では1割強、長崎では約1割、熊本では2割強、大分、宮崎では1割未満、鹿児島では2割強。
    7. 沖縄 新規感染者数は今週先週比が15と1を上回り、650と全国で最も高い。30代以下が中心。60代で横ばいとなっている一方、その他の年代では増加。特に10代以下で増加が顕著。病床使用率は約4割、重症病床使用率は2割弱。
    8. 上記以外 青森、島根、広島、山口、愛媛、高知の新規感染者数はそれぞれ約129、195、82、80、107、111。病床使用率について、青森では2割強、島根、広島、山口、愛媛、高知では1割強。
  • 今後の見通しと必要な対策
    1. 感染状況について
      • 新規感染者数について、全国的に上昇傾向に転じた(今週先週比で1を上回るのが29都府県)。地域別に見ると、まだ減少を続けている地域もあるが(18道府県で減少)、大都市では概ね上昇傾向となった。また、地方では増加速度の速い地域も見られる。沖縄県は他の地域よりも感染レベルが高く、上昇傾向となっており、今後の感染状況の動向について特に注視が必要。
      • 年代別の新規感染者数では、全国的には概ね全ての年代で微増となっている。また、東京都では20代の増加幅が大きい。また、沖縄県では全年代で増加しているが、高齢者でも増加が続いていることから、感染状況を注視していく必要がある。
      • 新規感染者の感染場所について、学校等における割合が引き続き減少傾向にあるものの、依然として高い割合で推移している。また、自宅における割合が減少傾向にある。
      • 今後の感染状況について、大都市における短期的な予測では今後、新規感染者数の増加が見込まれ、(1)ワクチンの3回目接種と感染により獲得された免疫には徐々に減衰していくこと、(2)7月以降は梅雨明け、3連休や夏休みの影響もあり、接触の増加等が予想されること、(3)オミクロン株の新たな系統への置き換わりの可能性もあること等から、今後は感染者数の増加も懸念されるところであり、医療提供体制への影響も含めて注視していく必要がある。
    2. 感染の増加要因と抑制要因について
      • 感染状況には、以下のような感染の増加要因と抑制要因の変化が影響するものと考えられる。
        1. 接触パターンについて
          • 夜間滞留人口について、大都市中心に多くの地域で増加傾向がみられる。これらの中には、昨年末のピークに迫る地域や超える地域もあるため、今後の感染状況への影響に注意が必要。
        2. 流行株について
          • BA.1系統から、BA.2系統へ置き換わったが、新たな系統として、BA.2.12.1系統、BA.4系統及びBA.5系統が国内でも検出されており、特に、BA.5系統においては、今後、国内の主流系統となり、感染者数の増加要因となる可能性がある。
        3. ワクチン接種等について
          • 3回目接種が進んでいるが、3回目接種から一定の期間が経過することに伴い、感染予防効果は、より早く接種を受けた人から今後減弱していくことが予想され、留意が必要。また、これまでの感染により獲得した免疫についても、今後徐々に減弱することが予想される。
        4. 気候要因について
          • 気温の上昇により屋内での活動が増える時期であるが、冷房を優先するため換気がされにくい場合もある。
    3. 医療提供体制について
      • 全国的には、病床使用率は総じて低水準にあるが、新規感染者数が上昇傾向に転じたことに伴い、大都市で下げ止まりの傾向となった。一方、沖縄県では、入院者数や病床使用率が横ばいから微増の状況にあり、重症病床使用率も増加している。
      • 救急搬送困難事案については、非コロナ疑い事案、コロナ疑い事案ともに、直近では全国的に増加傾向となった。また、今後熱中症による救急搬送が増えることも予想され、十分な注意が必要である。
    4. オミクロン株による感染拡大を踏まえた取組
      1. サーベイランス等
        • 発生動向把握のため、実効性ある適切なサーベイランスの検討が必要。また、変異株について、ゲノムサーベイランスで動向の監視を継続することが必要。さらに、重症例やクラスター事例等では、変異株PCR検査や全ゲノム解析による確認が求められる。
      2. 自治体における取組
        • 全国的に新規感染者数が上昇傾向に転じており、自治体では、診療・検査体制や保健所体制の点検が必要である。
        • 地域の感染状況に基づき、必要な医療提供体制の構築に改めて取り組むことが必要。
        • 高齢者施設等に対する医療支援体制の強化・徹底にあたっては、医療関係部局と介護関係部局が連携し、地域の関係者とも協議しつつ進めていくことが重要。
        • 健康観察等の重点化や患者発生届の処理の効率化など事務連絡に基づき、効率的に保健所業務を実施するとともに、地域に必要な保健所機能を維持するため、外部委託や本庁での一元化による体制を確保することが重要。
        • 先般、効果的かつ負担の少ない医療・介護場面における感染対策が示されたところであり、感染リスクや感染対策に関する知見が蓄積される中で、各施設の実情に合わせた無理のない感染対策を考えていくことが重要。
      3. ワクチン未接種者、3回目及び4回目接種者への情報提供等
        • 自治体では、ワクチン接種に関する情報提供を進めることが重要。未接種者へのワクチン接種とともに、3回目及び4回目接種を着実に実施していくことも必要。3回目接種の主な目的は発症予防・重症化予防である。3回目接種率について、6月29日公表時点で65歳以上高齢者では約90%、全体では約62%となった。対象者への3回目の接種を今後も着実に実施し、希望する方にはできるだけ多く接種していただくことが求められている。4回目接種については、重症化予防を目的として、60歳以上の者と、重症化リスクの高い基礎疾患を有する者、その他重症化リスクが高いと医師が認める方を対象として開始された。また、新たなワクチンを1~3回目接種用として接種開始できるようになった。このワクチンは、従来の新型コロナワクチンとは異なる種類であり、ワクチンの多様性を確保できるとともに、国内で製造が行われることからワクチン供給の安定性の確保につながるものである。
        • 5歳から11歳までの子どもへのワクチン接種については、特例臨時接種として実施されているが、その際、努力義務の規定はこれらの小児について適用しないことを踏まえ、接種を進めていくことが必要。また、小児への感染予防を期待して、保護者や周囲の大人がワクチンの3回目接種を行うことも重要。
      4. 水際対策
        • 海外及び国内の現在の流行状況なども踏まえて水際対策の段階的な見直しを検証していく必要がある。また、出国前検査は継続して求めつつ流入リスクに応じた対応を行うとともに、入国時検査での陽性者は、海外における流行株監視のため、全ゲノム解析を継続させることが必要。
    5. オミクロン株の特徴を踏まえた感染防止策の強化・徹底
      • 感染が広がっている場面・場所において、オミクロン株の特徴を踏まえた感染防止策の強化・徹底が求められる。
        • 学校・幼稚園・保育所等においては、児童・生徒の感染リスクが高まる場面を職員や子ども・保護者等と共有しつつ、子どもの感染対策はもとより、教職員や保育士などに対する積極的なワクチンの接種促進も含め感染対策を徹底する。その上で、できるだけ教育活動や社会機能などの継続に取り組むことが必要。子どもや職員が少しでも体調が悪い場合は、休暇を取得できる環境を確保することが重要。あわせて、家庭内での感染対策の徹底も求められる。また、2歳未満の児童についてはマスク着用は推奨しないこと、2歳以上の就学前児については、熱中症のリスクや表情が見えにくくなることによる影響も懸念されることから、マスク着用を一律には求めず、無理に着用させないことについて、保育所等に対し周知・徹底することが必要。学校においては、体育の授業・運動部活動や登下校の際にはマスク着用が必要ないことを学校現場に周知・徹底することが必要。
        • 高齢者の感染を抑制するため、介護福祉施設における対策の徹底が必要。このため、従業者等へは積極的な検査を実施する。また、重症化予防のため、入所者に対するワクチンの4回目接種を進める。さらに、施設等における感染管理や医療に関して外部からの支援体制を確保し、施設で感染が確認された際には早期に迅速な介入が重要。
        • 職場においては、社会機能維持のため、業務継続計画の活用に加え、テレワークの活用や休暇取得の促進等の取組が求められる。また、従業員の体調管理を徹底し、少しでも体調が悪い場合には休暇を取得できる環境を確保することが必要。さらに、職域におけるワクチンの3回目接種を積極的に進めるべきである。
    6. 現在の感染状況を市民や事業者の皆様と広く共有して、感染拡大防止に協力していただくことが不可欠
      • 全国的には、新規感染者数が上昇傾向に転じた。これから3連休や夏休みなどを迎え、接触の増加等が予想される。このため、感染者数の増加をできるだけ抑制するために、基本的な感染対策と日頃の体調管理を徹底し、感染リスクの低減に向けた取組にご協力いただくことが必要。
        1. ワクチン接種について
          • 感染拡大に備えて、高齢者および重症化リスクのある対象者はワクチンの4回目接種が推奨される。また、3回目接種も、その種類に関わらず、受けていただくことが重要。新型コロナウイルス感染症に罹患すると、若年者でも重症化することがあり、また、遷延症状が見られる場合もあることから、高齢者はもとより、若年者も自らの健康を守るために接種していただくことが求められる。これまで1・2回目接種できていない方々にも改めて接種を検討していただくことが重要。
        2. 感染対策の徹底
          • 基本的な感染対策として、不織布マスクの正しい着用、手指衛生、換気などの徹底を継続することが必要。また、三つの密(密集、密閉、密接)が重なるところは最も感染リスクが高いが、一つの密であってもできるだけ避けることが必要。
        3. 外出等に際して
          • 混雑した場所や換気が悪く大人数・大声を出すような感染リスクの高い場面・場所を避けることが必要。行動はいつも会う人と少人数で。飲食はできるだけ少人数で黙食を基本とし、飲食時以外はマスク着用の徹底が必要。一方で、屋外については、近距離で会話する場合を除き、マスク着用は必要ない。特に、夏場については、熱中症予防の観点から屋外ではマスクを外すことを推奨する。
        4. 体調管理について
          • 軽度の発熱、倦怠感など少しでも体調が悪ければ外出を控えるとともに、自治体等の方針に従って受診や検査をすることが必要。特に、高齢者をはじめ、重症化リスクの高い方と会う機会がある場合には注意が必要。
    7. 参考:オミクロン株の特徴に関する知見
      1. 感染性・伝播性
        • オミクロン株はデルタ株に比べ、世代時間が約2日(デルタ株は約5日)に短縮、倍加時間と潜伏期間も短縮し、感染後の再感染リスクや二次感染リスクが高く、感染拡大の速度も非常に速いことが確認されている。なお、報告されているデータによれば、これまでの株と同様に発症前の伝播は一定程度起きていると考えられる。
      2. 感染の場・感染経路
        • 国内では、多くの感染がこれまでと同様の機会(換気が不十分な屋内や飲食の機会等)で起きており、感染経路もこれまでと同様、飛沫が粘膜に付着することやエアロゾルの吸入、接触感染等を介していると考えられている。
      3. 重症度
        • オミクロン株による感染はデルタ株に比べて相対的に入院のリスク、重症化のリスクが低いことが示されているが、現時点で分析されたオミクロン株による感染の致命率は、季節性インフルエンザの致命率よりも高いと考えられる。また、肺炎の発症率についても季節性インフルエンザよりも高いことが示唆されているが、限られたデータであること等を踏まえると、今後もさまざまな分析による検討が必要。今回の感染拡大における死亡者は、昨年夏の感染拡大と比べ、80歳以上の占める割合が高くなっている。例えば、感染する前から高齢者施設に入所している利用者が感染し、基礎疾患の悪化等の影響で死亡するなど、新型コロナウイルス感染症が直接の死因でない事例も少なくないことが報告されている。高齢の感染者や基礎疾患を有する感染者の基礎疾患の増悪や、心不全や誤嚥性肺炎等の発症にも注意が必要。
      4. ウイルスの排出期間
        • オミクロン株感染症例におけるウイルスの排出は、時間の経過とともに減少する。有症状者では、発症日から10日目以降において、排出する可能性が低くなることが示された。なお、無症状者では、診断日から8日目以降において排出していないことが示された。
      5. ワクチン効果
        • 初回免疫によるオミクロン株感染に対する感染予防効果や発症予防効果は著しく低下する。入院予防効果については、半年間は一定程度保たれているものの、その後50%以下に低下することが報告されている。一方で、3回目接種によりオミクロン株感染に対する感染予防効果、発症予防効果や入院予防効果が回復することや、3回目接種後のワクチン効果の減衰についても海外から報告されている。
      6. オミクロン株の亜系統
        • 現在、日本では引き続きBA.2系統が主流である。世界におけるBA.4系統及びBA.5系統の占める割合が増加しており、これらの系統はBA.2系統と比較して感染者増加の優位性が示唆されている。世界的には、BA.4系統及びBA.5系統へ置き換わりつつある中で、陽性者数が増加傾向となっている。なお、BA.4系統及びBA.5系統の感染力に関する明確な知見は示されていない。WHOレポートでは、複数の国から集積した知見によると、BA.4系統及びBA.5系統に関して、既存のオミクロン株と比較した重症度の上昇は見られないとしている。BA.4系統及びBA.5系統は全て国内及び検疫で検出されている。ゲノムサーベイランスによると、引き続き国内ではBA.2系統が主流であるが、BA.4系統及びBA.5系統については今後、検出割合が増加する可能性もある。ウイルスの特性について、引き続き、諸外国の状況や知見を収集・分析するとともに、ゲノムサーベイランスによる監視を続けていくことが必要としている。

~NEW~
総務省 プラットフォームサービスに関する研究会(第38回)配付資料
▼資料1 プラットフォームサービスに関する研究会 第二次とりまとめ(案)
  • 昨今、特定の個人に対して多くの誹謗中傷の書き込みが行われるいわゆる「炎上」事案や、震災や新型コロナウイルス感染症などの社会不安に起因する誹謗中傷が行われるなど、特にSNS上での誹謗中傷等の深刻化が問題となっていることを踏まえ、本研究会において、2020年7月にプラットフォーム事業者から誹謗中傷への対策状況についてヒアリングを行い、2020年8月に「緊急提言」を公表した。その後、「緊急提言」を受けて、総務省において2020年9月に「政策パッケージ」を策定・公表し、産学官民による連携のもとで、取組を進めてきた。
  • また、インターネット上の誹謗中傷への対策について、プラットフォーム事業者の取組が十分か、また、その透明性・アカウンタビリティが十分果たされているかを検証するために、2021年に本研究会において、日本国内でサービスを展開するプラットフォーム事業者に対してモニタリングを実施した。その結果を踏まえ、2021年9月に「中間とりまとめ」を公表し、個別の投稿の削除を義務づけることには極めて慎重であるべきとする一方、我が国における透明性・アカウンタビリティ確保が実質的に図られない場合には、透明性・アカウンタビリティの確保方策に関する行動規範の策定及び遵守の求めや法的枠組みの導入等の行政からの一定の関与について、具体的に検討を行うことが必要ととりまとめた。
  • インターネット上の誹謗中傷対策を進めていく前提として、我が国におけるインターネット上の誹謗中傷の実態を適切に把握することが必要である。
  • 総務省が運営を委託している違法・有害情報相談センターで受け付けている相談件数は高止まり傾向にあり、令和3年度の相談件数は、受付を開始した平成22年度の相談件数の約5倍に増加している。令和3年度の相談件数は例年より増加し、6,000件を上回った。令和3年度において相談件数が多い事業者/サービス上位5者は、Twitter、Google、Meta、5ちゃんねる、LINEであった。
  • 法務省が相談等を通じて調査救済手続を開始したインターネット上の人権侵害情報に関する人権侵犯事件は、引き続き高水準で推移している。
  • 法務省は、インターネット上の人権侵害情報について、法務省の人権擁護機関による削除要請件数と削除対応率のサイト別の数値を2022年に初めて公表した。2019年1月~2021年10月の期間内に、人権侵犯事件として処理されたのは5,136件であり、そのうち、法務局において、当該情報の違法性を判断した上で、実際に削除要請を実施した件数の合計は1,173件、削除対応率は74%。さらに、投稿の類型別(私事性的画像情報、プライバシー侵害、名誉毀損、識別情報の摘示)の削除要請件数及び削除対応率についても公表した。一般社団法人セーファーインターネット協会(以下「SIA」という。)が運営する誹謗中傷ホットラインについては、2021年1月1日から12月31日までの受領件数が2,859件(1,516名)であった。また、サイトの属性別には、SNSが最多の28%であり、次いで、匿名掲示板が19%、地域掲示板が7%であった。
  • また、三菱総合研究所が総務省の委託を受けて実施したSNS等ユーザを対象としたアンケート調査結果12では、「他人を傷つけるような投稿(誹謗中傷)」について、約半数(1%)が目撃しており、投稿を目撃したサービスとしては、Twitter(52.6%)が最も多く、匿名掲示板(39.7%)、Yahoo!コメント(32.0%)3、YouTube(28.2%)がこれに続いている。また、過去1年間にSNS等を利用した人の1割弱(8.9%)が「他人を傷つけるような投稿(誹謗中傷)」の被害に遭っており、年代別にみると20代で最も多く(16.4%)、10代及び30代がともに1割強でこれに次ぐ。40代以上は相対的に少なかった。
  • 有識者の分析結果によると、2020年4月のネット炎上件数は前年同月比で4倍であり、2020年1年間の炎上件数は1,415件となっている。
  • インターネットのような能動的な言論空間では、極端な意見を持つ人の方が多く発信する傾向がみられる。過去1年以内に炎上に参加した人は、約5%であり、1件当たりで推計すると0.0015%(7万人に1人)となっている。書き込む人も、ほとんどの人は炎上1件に1~3回しか書き込まないが、中には50回以上書き込む人もいるなど、ごく少数のさらにごく一部がネット世論を作る傾向がみられるとの指摘がある。また、炎上参加者の肩書き分布に特別な傾向は見られない。書き込む動機は「正義感」(どの炎上でも60~70%程度)となっている。社会的正義ではなく、各々が持っている価値観での正義感で人を裁いており、多くの人は「誹謗中傷を書いている」と気付いていないという分析結果が挙げられた。
  • 法務省は、インターネット上の人権侵害情報について、法務省の人権擁護機関による削除要請件数と削除対応率のサイト別の数値を2022年に初めて公表した。2019年1月~2021年10月の期間内に、人権侵犯事件として処理されたのが5,136件。そのうち、法務局において、当該情報の違法性を判断した上で、実際に削除要請を実施した件数の合計は1,173件、削除対応率は74%。さらに、投稿の類型別(私事性的画像情報、プライバシー侵害、名誉毀損、識別情報の摘示)の削除要請件数及び削除対応率についても公表を行った。
  • また、法務省人権擁護局は、公益社団法人商事法務研究会が主催し、2021年4月から開催されている「インターネット上の誹謗中傷をめぐる法的問題に関する有識者検討会」に参加し、削除要請に関する違法性の判断基準や判断方法等の議論に積極的に関与している。議論の結果は、2022年5月に公表された。なお、同有識者検討会には、総務省もオブザーバとして参加している。
  • 民間における取組としては、SIAは、2020年6月より、「誹謗中傷ホットライン」の運用を開始した。インターネット上で誹謗中傷に晒されている被害者9からの連絡を受け、コンテンツ提供事業者に、各社の利用規約に基づく削除等の対応を促す通知を行っている。
  • 2021年の受領件数は2,859件であり、そのうち、ガイドラインに基づき削除通知対象となる「特定誹謗中傷情報」に該当するものが796件(8%)、非該当が2,063件(72.2%)10であった。293件で対象となる1,414URLに対して削除等の対応を促す通知を行い、一週間後に削除確認されたものが1,046URL(削除率74%)であった。
  • 誹謗中傷等違法・有害情報への対応に関しては、国際的な対話が深められることも重要である。この点、総務省では、誹謗中傷を始めとしたインターネット上の違法・有害情報対策に関する国際的な制度枠組みや対応状況を注視し、対応方針について国際的な調和(ハーモナイゼーション)を図るための取組を実施している。

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総務省 プラットフォームサービスに係る利用者情報の取扱いに関するワーキンググループ(第17回)
▼資料1 プラットフォームサービスに係る利用者情報の取扱いに関するワーキンググループとりまとめ(案)
  • スマートフォンやIoT等を通じて、様々なヒト・モノ・組織がインターネットにつながり、大量のデジタルデータの生成・集積が飛躍的に進展するとともに、AIによるデータ解析などを駆使した結果が現実社会にフィードバックされ、様々な社会的課題を解決するSociety5.0の実現が指向されている。
  • インターネットへの接続についても大半がモバイル経由で行われており、SNS、動画共有サイト、ニュース配信、検索等含めた多くの情報流通がスマートフォン等経由で行われている。スマートフォン等を通じたインターネットの活用は社会経済活動のインフラとなるとともに、今後AIの活用やIoT化の進展に伴いデータ流通環境等を大きく変化させることが想定される。ポストコロナ時代に向けて、デジタルシフトは更に進んでいくことが想定される。
  • この中で、様々なサービスを無料で提供するプラットフォーム事業者の存在感が高まっており、利用者情報が取得・集積される傾向が強まっている。また、生活のために必要なサービスがスマートフォン等経由でプラットフォーム事業者により提供され、人々の日常生活におけるプラットフォーム事業者の重要性が高まる中で、より機微性の高い情報についても取得・蓄積されるようになってきている。これらの情報を踏まえ、プロファイリングやその結果を踏まえたレコメンデーションが幅広く行われることにより、利用者の利便性が高まる一方、知らないうちにその結果に利用者が影響される可能性も高まっている。
  • 利用者の利便性と通信の秘密やプライバシー保護とのバランスを確保し、プラットフォーム機能が十分に発揮されるようにするためにも、プラットフォーム事業者がサービスの魅力を高め、利用者が安心してサービスが利用できるよう、利用者情報の適切な取扱いを確保していくことが重要である。
  • イノベーションや市場の発展を維持しつつ、利用者が安心してスマートフォンやインターネットを通じたサービスを利用していくことができる環境を確保していく上でも、関係する事業者それぞれにおいて利用者情報の適切な取扱いが確保されることが重要であると考えられる。
  • そのため、スマートフォンやタブレットなどの通信端末の位置情報や、ウェブ上の行動履歴、利用者の端末から発せられ、又は、利用者の端末情報に蓄積される端末IDやクッキーなどの端末を識別する情報等の実態を把握した上で検討を行うことが適切である。
  • 今回モニタリングの対象とした各事業者において、プライバシーポリシーの内容を分かりやすく説明するための工夫を行っている。アカウント管理画面やダッシュボード等から、利用者が情報取得や第三者提供等を事後的に把握・管理できるようにしている事業者もある。
  • 一方で、広範な利用者情報の取扱いの全体像を一般の利用者に説明・理解させることは容易ではない。全ての事業者が、利用者から取得した利用者情報を広告表示に活用する場合があるとしており、情報収集モジュール等により、クロスサイトトラッキング等が幅広く行われている。
  • 利用者は多様であり、背景、知識、経験などが異なるため、それを踏まえて利用者が理解できるように、多様な方法を用意する必要があると指摘される(例えば、金融商品は法律の中で消費者の多様性を考慮した規制がある)。
  • 特に、消費者が想定しづらいものやプライバシー性が高い情報の取得等について、注意喚起をする仕組みが必要であると指摘される。情報開示が進展する中で、情報開示の視点で外部レビューやモニタリングを行っていくことが重要であると指摘される。
  • 利用者情報を取得・集約・分析することにより、当該利用者の詳細なプロファイリングを行い得る状況であることを鑑みると、利用者情報の取扱いについて一定のルール整備を検討していくことが必要であると考えられる。また、各事業者において、今後更に利用者情報の取扱いについて分かりやすい通知・説明や同意取得を工夫していくことが求められるものであり、その状況について継続的にモニタリングを行っていくことが必要であると考えられる。
  • 第2章のモニタリング結果からもみてきたように、電気通信事業者やプラットフォーム事業者は、個人情報保護法や電気通信事業GLなども踏まえつつ、網羅的なプライバシーポリシーを作成するだけではなく、利用者情報の取扱いの説明について既に様々な工夫を行ってきている。
  • しかしながら、一般利用者にとって、利用者情報の取扱いについて理解し把握することは困難である場合も多いとの指摘もある。
  • 第1章でみてきたように、日々の生活の中においてスマートフォン等の利用が不可欠になる中で、スマートフォン等で取り扱われる利用者情報の質や量が拡大し、機微情報や機密情報が含まれる可能性もある。さらに、スマートフォン等の利用者情報と、電子マネーを使った決済や購買履歴などの外部情報についても結びついた上で利活用される可能性がある。
  • これら利用者情報等がクロスサイト等で取得・集積・分析され、プロファイリングやターゲティングも高度化・精緻化している。適切に用いられれば利用者へのサービス提供やレコメンドの向上につながるなどイノベーションの促進に役立つという指摘もある。一方、商品広告の表示目的だけではなく、様々なマイクロターゲティング、プロファイリング結果を踏まえた採用や与信などの個人に影響を与えうる意思決定にも用いられるおそれもあり、利用者情報を提供した結果の本人に対する影響・アウトカムをあらかじめ説明することが困難となる場合もあることが指摘される。また、このような利用者情報の取扱いが社会へ様々な影響を与える可能性も指摘される。
  • このような情勢等も踏まえ、各国はクロスサイト等の情報の取扱いに関して、特に本人へのサービス提供と直接関係がない本人が意図しない取扱いや本人の合理的な期待を超える取扱いを行おうとする際は本人にこれを知らせ、本人同意を求めること、事後的な検証可能性を高めるための透明性確保や報告・公表義務を課すこと等の規制強化を進めているところであり、グローバル展開するプラットフォーム事業者もこれに対応しつつある。
  • 我が国においても、利用者保護の観点から、このような業界の状況やグローバルな規制状況なども踏まえつつ、適切な対応を検討していくことが求められていると考えられる。
  • スマートフォンやタブレットなどの通信端末の位置情報や、ウェブサイト上の行動履歴、利用者の端末から発せられ、または、利用者の端末情報に蓄積される端末IDやCookieなどの端末を識別する情報等については、通信の秘密やプライバシー保護の関係で、その適切な取扱いの確保のための規律を検討していく必要がある。
  • 特に第1章及び第2章でもみたように、異なるアプリやウェブサイトを通じた横断的なパーソナルデータの取得・収集・分析が進んでおり、利用者のサービス提供に直接結びつくものではないため利用者が指示したり意識したりしていないものが多くある。このような利用者が十分認識しない中でのパーソナルデータの取得・収集・利活用について、利用者情報の取扱いに係る通知・公表や同意取得の在り方について、検討を行い、指針やルールを明確化していく必要があると考えられる。また、様々な機会を通じて取得したパーソナルデータについて、何らかのIDなどに基づき名寄せを行い、多角的にプロファイリングを行う場合は今後増えてくると考えられる。このプロファイリングの実施や特定の個人への適用、それによるサービスや判断についてどう考えるべきか検討が必要であると指摘される。
  • 利用者に適切に通知・公表や同意取得を行っていく観点から、下記のような点が重要であると考えらえる。
  • 第一に、利用者と直接の接点があるアプリ提供者やウェブサイト運営者等のサービス提供者が、第1章で指摘されたように当該アプリやウェブサイトにおいて、取得者が誰かも含めどのような情報取得や情報提供を行っているか把握していない場合があるという問題がある。まずは、当該アプリやウェブサイト等のサービスを提供する際において、誰がどのような情報取得を行うとともに、第三者にどのような情報提供を行う必要があるのかについて検討した上で、これを把握することが必要である。
  • 第二に、アプリ提供者やウェブサイト運営者等のサービス提供者が、上記のプロセスを経た上でこれを踏まえ、取得者や取得・提供する情報の種類や用途などに応じて、利用者が理解できるように通知・公表又は同意取得を行っていく必要がある。この際、内容に応じて、通知・公表や同意の取得等について検討を行う必要があると考えられる。
  • さらに、第1章でも指摘されたようにプロファイリング97の有無や情報利用による利用者へ与えうる影響(アウトカム)が重要であり、これを利用者に伝えていく必要があると考えられる。特に利用者が受けうる不利益についての情報については重要であると考えられる。このような影響について利用者に分かりやすく伝えていくよう促していく必要があると考えられる。
  • 第2章でみたように、プライバシーポリシー等について、分かりやすく見せるための仕組みや工夫については、大手のプラットフォーム事業者や電気通信事業者においては一定の検討が行われている。利用者の意見や外部レビューなども踏まえながら継続的にこのような工夫を行い、利用者に分かりやすく通知・公表や同意取得を行うとともに、利用者が理解した上で有効な選択を行える環境を整えていく必要があると考えられる。
  • 第2章でもみたように、例えば、階層的な通知、個別同意、プライバシー設定の工夫などについては、EUのGDPRに基づく同意取得や透明化のガイドラインや米国のNIST Privacy Frameworkにおいて推奨されるとともに、カリフォルニア州CCPAにおいても規定された重要な事項を示す階層的通知が求められるなど、欧米において共通的な認識が形成されていると考えられる。
  • このような階層的な通知、個別同意、プライバシー設定の工夫については、我が国における当該サービスの利用者に合わせた形で、必要に応じてユーザ調査なども実施した上で、導入されることが望ましい。
  • 一例として、野村総合研究所により、我が国のインターネットの利用者について、通知・同意取得における利用者の考え方について、因子1:企業の情報利用に対する抵抗感、因子2:ネットサービスの利用における自己効力感により4種類のパーソナリティに分類し、そのパーソナリティに応じた工夫の効果に係る調査結果がある。

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