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  • 第72回“社会を明るくする運動”~犯罪や非行を防止し、立ち直りを支える地域のチカラ~(法務省)/7月は「再犯防止啓発月間」(法務省)/令和4年版通商白書(経産省)/令和4年版情報通信白書(総務省)

危機管理トピックス

第72回“社会を明るくする運動”~犯罪や非行を防止し、立ち直りを支える地域のチカラ~(法務省)/7月は「再犯防止啓発月間」(法務省)/令和4年版通商白書(経産省)/令和4年版情報通信白書(総務省)

2022.07.11
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更新日:2022年7月11日 新着13記事

手を重ねようとしている様子

【新着トピックス】

【もくじ】―――――――――――――――――――――――――

外務省
  • ウクライナ情勢の影響を受けたグローバルな食料安全保障への対応
  • ウクライナ情勢に関する外国為替及び外国貿易法に基づく措置について
法務省
  • 第72回“社会を明るくする運動”~犯罪や非行を防止し、立ち直りを支える地域のチカラ~
  • 侮辱罪の法定刑の引上げ Q&A
  • 7月は「再犯防止啓発月間」です
経済産業省
  • 「サプライチェーン イノベーション大賞 2022」の受賞者を決定しました
  • 「令和4年版通商白書」を取りまとめました

~NEW~
金融庁 金融安定理事会による「クロスボーダー送金の目標達成に向けた実装方法の策定:中間報告書」の公表について
▼報告書のエグゼクティブ・サマリー(仮訳)
  • クロスボーダー送金の改善に向けたG20ロードマップの基礎となる一歩は、クロスボーダー送金が直面する課題(コスト、スピード、透明性、アクセス)に直接関連するグローバルレベルの定量的な目標を設定することであった。定量的な目標は、ロードマップの野心を示し、説明責任を生む。もっとも、現状、包括的なデータソースが存在しないため、目標に向けた進捗状況の計測は簡単ではない。目標に向けた進捗状況の計測にかかる作業を執り行うべく、FSBは、KPI(重要業績評価指標)の具体的な提案の策定と、KPIの算出および今後の目標に向けた進捗のモニタリングに資する既存もしくは潜在的なデータソースを特定するため、FSBのメンバー機関の専門家からなるワーキンググループを設立した。本中間報告書は、FSBにとって、ワーキンググループの暫定的な見解と提言を、市中に共有しフィードバックを得るための機会であり、そうしたフィードバックは、先々採用される定量的な目標達成に向けた実装方法の最終化にも資する。
  • 目標が設定されている3つの決済セグメント(ホールセール、リテール、レミッタンス)は、エンドユーザー、インフラ、プロセス、決済メカニズムが大きく異なり、その差異は、ワーキンググループが提案するKPIと利用可能なデータベースに影響を及ぼす。
  • ホールセールのセグメントについて、ワーキンググループは、セグメント横断のKPIを提案し、スピードおよびアクセスをモニタリングするデータソースとして、民間ネットワークプロバイダを最も有力とみなしている。ワーキンググループは、透明性をモニタリングするために、サーベイや代理変数の活用を検討している。
  • リテールのセグメントについて、ワーキンググループは、同セグメントの多様なユースケース(例:企業間<B2B>、企業と個人間<B2P、P2B>、レミッタンスを除く個人間<P2P>)ごとに異なるKPIを提案しており、これらは潜在的にはセグメント横断のKPIに集計されうる。ユースケースごとに異なるKPIを提案することによって、KPIの代表性が高まり、4つの課題および目標達成に向けた進捗状況が、ユースケース間でどのように異なるかより理解することが可能となる。リテールセグメントにおけるエンドユーザーや決済サービス事業者(PSP)はとてつもなく多様であるため、包括的なデータ収集は実現できない。その代わりに、ワーキンググループは、例えば民間のデータ収集会社2から、代表的なサンプルを収集する可能性を検討している。
  • 最後に、レミッタンスのセグメントについては、当該セグメントにおける状況を改善するという公的セクターの長年の目標が、複数の高品質なデータベースの確立、特に注目すべきものとして世界銀行のRemittance Prices Worldwide (RPW)database(とりわけコストの計測、また、レミッタンスフローのスピード、アクセス、透明性の計測にも有用)、および、Global Findex database(とりわけアクセスと金融包摂の計測に有用)の確立につながった。ワーキンググループは、セグメント横断のKPIを計算するのに、これらおよび類似する公的セクターのデータベースを活用することを提案している。
  • 目標はグローバルレベルで設定され、モニタリングがなされる。加えて、進捗がみられるところおよび課題が残るところを評価するため、少なくとも何らかの形式での非集計データ(例えば、地域別、法域別、支払手段別、決済サービス事業者の業態別)の収集と公表についても、可能な限り実施されることになる。
  • ワーキンググループの作業は著しい進展を遂げてきたが、データギャップは残存しており、KPIの計測に向けた提案事項は、データの潜在的な提供者との更なる議論を通じて運用可能なものとする必要がある。例えば、殆どのPSPやインフラは、目標で求められている、正確なエンド・ツー・エンド(支払人から受取人)でみたクロスボーダー送金の正確なスピードまたはコストを算出するために必要な送金チェーンの全体像を把握していない。そのうえ、送金経路について、データの利用可能性の差異は現状不明瞭であり、潜在的に偏った状況認識につがなりうる3。次のステップの一環として、ワーキンググループは、目標横断的に残存するデータギャップを特定し、そのギャップを埋めるべく、既存のデータベースを拡張する、または、新たなデータベースを作成するための具体的な戦略と優先取組事項を明確化する。
  • ロードマップに広く当てはまるとおり、強いコミットメントと協調が成功に不可欠である。民間セクターの関与は、目標に向けた進捗のモニタリングをサポートする鍵となる。FSBは、本中間報告書で示す暫定的な提案について、市中からのフィードバックを募集する。とりわけ、KPI計測の実装方法の最終化に資する以下の質問へのフィードバックを歓迎する。
    1. FSBは、ロードマップの目標に向けた進捗を効率的にモニタリングするための適切な潜在的データソースを特定しているか。FSBが考慮すべき追加的、または代替的な公的・民間のデータソースはあるか。また、それはどのKPIを対象としているか。
    2. FSBは、関連する目標に密接かつ有意義に結び付くよう、適切にKPIを定義しているか。過度な負担になることなく、目標に向けた進捗について十分に代表性のある計測値を提供するためには、KPIの計算に当たってどのような追加的な考慮事項に留意すべきか。
    3. FSBは、いくつかの目標に向けた進捗のモニタリングのために、代理変数の使用を検討している。これらの提案された代理変数は適切か。FSBが検討すべき、十分に代表的かつモニタリングを簡素化しうる追加的または代替的な代理変数はあるか。
  • フィードバックは、2022年7月31日までにfsb@fsb.orgへ「クロスボーダー送金の目標に向けた進捗のモニタリング」の表題を付して送付することを求める。寄せられた回答は、今後の作業において、FSBのワーキンググループへの情報提供に資するものであり、対外公表されない。
  • 具体的には、寄せられた回答は、G20および市中に向けた2022年10月のFSB報告書に対して実装方法とKPIの更なる詳細をインプットするものとして役立つ。KPIに基づくクロスボーダー送金の現状のパフォーマンスの推計値を策定するには、信頼に足る推計値の策定に向けた潜在的なデータ提供者との協働を踏まえると、数か月程度の追加的な期間を要する見込みであり、利用可能となり次第、公表する。

~NEW~
警察庁 令和4年5月の特殊詐欺認知・検挙状況等について
  • 令和4年1月~5月の特殊詐欺全体の認知件数は6,060件(前年同期5,536件、前年同期比+9.5%)、被害総額は121.7憶円(107.6憶円、+13.1%)、検挙件数は2,292件(2,467件、▲7.1%)、検挙人員791人(850人、▲6.9%)
  • オレオレ詐欺の認知件数は1,338件(1,117件、+19.8%)、被害総額は38.8憶円(31.3憶円、+24.0%)、検挙件数は591件(1,013件、▲41.7%)、検挙人員は308人(240人、+28.3%)
  • 預貯金詐欺の認知件数は894件(1,212件、▲26.2%)、被害総額は10.0憶円(17.0憶円、▲41.2%)、検挙件数は518件(931件、▲44.4%)、検挙人員は189人(300人、▲37.0%)
  • 架空料金請求詐欺の認知件数は1,002件(792件、+26.5%)、被害総額は35.2憶円(26.5憶円、+32.8%)、検挙件数は64件(105件、▲39.0%)、検挙人員は36人(50人、▲28.0%)
  • 還付金詐欺の認知件数は1,622件(1,321件、+22.8%)、被害総額は18.3憶円(15.2憶円、+20.4%)、検挙件数は292件(177件、+63.8%)、検挙人員は50人(38人、+31.6%)
  • 融資保証金詐欺の認知件数は41件(79件、▲48.1%)、被害総額は0.9憶円(1.3憶円、▲34.6%)、検挙件数は11件(10件、+10.0%)、検挙人員は6人(5人、+20.0%)
  • 金融商品詐欺の認知件数は11件(14件、▲21.4%)、被害総額は0.9憶円(0.6憶円、+55.5%)、検挙件数は2件(3件、▲33.3%)、検挙人員は6人(7人、▲14.3%)
  • ギャンブル詐欺の認知件数は19件(32件、▲40.1%)、被害総額は1.7憶円(1.0憶円、+71.1%)、検挙件数は7件(1件、+600.0%)、検挙人員は4人(1人、+300.0%)
  • キャッシュカード詐欺盗の認知件数は1,120件(962件、+16.4%)、被害総額は15.8憶円(14.5憶円、+8.4%)、検挙件数は805件(734件、+9.7%)、検挙人員は184人(207人、▲11.1%)
  • 口座開設詐欺の検挙件数は270件(269件、+0.3%)、検挙人員は148人(160人、▲7.5%)、犯罪収益移転防止法違反の検挙件数は1,212件(852件、+42.3%)、検挙人員は966人(671人、+44.0%)、携帯電話契約詐欺の検挙件数は35件(72件、▲51.4%)、検挙人員は38人(58人、▲34.5%)、携帯電話不正利用防止法違反の検挙件数は6件(11件、▲45.5%)、検挙人員は3人(10人、▲70.0%)、組織犯罪処罰法違反の検挙件数51件(56件、▲8.9%)、検挙人員は10人(13人、▲23.1%)
  • 被害者の年齢・性別構成の特殊詐欺全体について、60歳以上91.5%、70歳以上73.3%、男性(25.7%):女性(74.3%)、オレオレ詐欺について、60歳以上98.1%、70歳以上95.9%、男性(19.7%):女性(80.3%)、架空料金請求詐欺について、60歳以上61.9%、70歳以上36.9%、男性(53.1%):女性(46.9%)、特殊詐欺被害者全体に占める高齢被害者(65歳以上)の割合について、特殊詐欺87.6%(男性22.7%、女性77.3%)、オレオレ詐欺97.6%(19.2%、80.8%)、預貯金詐欺98.3%(10.6%、89.4%)、架空料金請求詐欺50.5%(54.3%、45.7%)、還付金詐欺91.5%(28.6%、71.4%)、融資保証金詐欺2.9%(100.0%、0.0%)、金融商品詐欺27.3%(66.7%、33.3%)、ギャンブル詐欺57.9%(63.6%、36.4%)、交際あっせん詐欺0.0%、その他の特殊詐欺50.0%(100.0%、0.0%)、キャッシュカード詐欺盗98.8%(13.2%、86.8%)

~NEW~
内閣府 ESRI Discussion Paper No.370 コロナ禍での人々の生活満足度の動向について―緊急事態宣言が及ぼした影響の識別―
▼コロナ禍での人々の生活満足度の動向について
  • 2020年~2021年に実施された生活満足度に関する調査結果の個票データを用いて、この時期に人々の生活満足度がどのような動きをしていたかについて分析した。その結果、緊急事態宣言等が出されていた時期の当該地域の満足度は、平時においてほぼ同水準の満足度をとる地域で宣言等が出されなかった地域と比較して低下していた。その低下の程度は、平時において異なる調査間で生ずる変化幅よりも十分に大きく、バウンドを持って考察したとしても、緊急事態宣言が満足度を低下させていたと評価される。まん延防止等重点措置も満足度を低下させるが、緊急事態宣言よりはその程度は小さかった。また、緊急事態宣言等の解除は、その直後において、人々の生活満足度を措置無しの地域よりも高めた。
  • 緊急事態宣言は人々の生活満足度を低下させた。まん延防止等重点措置も満足度を低下させるが、緊急事態宣言よりはその程度は弱かった。緊急事態宣言等の解除は、少なくともその直後においては、人々の生活満足度を措置無しの地域よりも高めた。緊急事態宣言等の期間の長さの影響については本データからは明確に分からなかった。
  • 2022年1月25日、新型コロナウィルスの新たな変異株の流行によって再び34都道府県を対象としてまん延防止等重点措置が出された。今回は、措置に当たって、第三者認証制度やワクチン・検査パッケージ制度などを利用して、緩和的な制限を講ずることができることや、感染者数の推移によっては早期の解除もあり得ることなどが明示された13。
  • 上記のような行動制限に関する対応方針は、ここでの分析結果からは、人々の生活満足度の低下を和らげる方向に作用する可能性があると考えられる。今後の情報、データ等の蓄積を踏まえながら、更なる分析、評価を試みることとしたい。

~NEW~
国民生活センター 本当にお得? 注文確定の前に契約内容をしっかり確認
  • 内容
    • SNS上に通常約6千円のシャンプーが初回500円で購入できるとの広告があり、クレジットカード決済で注文した。再度購入しようと思い同じ広告を見たところ、注文を確定する画面の上方に、細かい文字で「5回継続購入」の記載が一部分だけ見えているのに気付いた。画面をスクロールしなければ全体が表示されず、前回は気が付かなかった。事業者に解約したいと伝えたが「5回継続購入の条件は明記されている」と言われ断られた。(当事者:60歳代男性)
  • ひとこと助言
    • ネット通販の注文画面では「初回限定」などとお得感を強調した表示に比べ、購入条件が小さく表示されていたり、気付きにくい場所に表示されていたりして、分かりづらいことがあります。画面の隅々まで見るなど注意が必要です。
    • 注文を確定する前に、定期購入が条件になっていないかを確認し、定期購入が条件の場合、継続期間や支払うことになる総額など契約内容もしっかり確認しましょう。
    • 特定商取引法が改正され、事業者は最終確認画面で、注文内容を明確に表示しなければならなくなりました。誤認させる表示により消費者が申し込みをした場合は、契約を取り消せる可能性があります。
    • 困ったときは、すぐにお住まいの自治体の消費生活センター等にご相談ください(消費者ホットライン188)。

~NEW~
総務省 令和4年「情報通信に関する現状報告」(令和4年版情報通信白書)の公表
▼別添1 「令和4年版情報通信白書の概要」
  • 過去50年間でインターネットやスマートフォンが急速に普及し、SNSやシェアリングエコノミーなどのICTサービスが社会に浸透していくなど、ICTは国民生活に不可欠な社会・経済インフラとして大きな役割を果たすようになった。
    • 我が国の生産年齢人口は2030年には6,875万人まで減少することが見込まれる中、ICT利活用による労働生産性の向上などICTの果たすべき役割はより大きくなる一方、ICTへの依存度の高まりに伴い顕在化する課題への対応が求められる。
  • 日本のICT産業の概況(2020年)
    • 情報通信産業の名目GDPは51.0兆円(前年比2.5%減)
    • ICT財・サービスの輸出額(名目値)は10.6兆円(全輸出額の13.7%)、輸入額(名目値)は16.8兆円(全輸入額の18.4%)
  • 電気通信事業
    • 2020年度の日本の電気通信産業の売上高は15兆2,405億円(前年度比2.5%増)
      • 新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、日本のインターネット上のトラヒックは急速に増加
  • 放送・コンテンツ
    • 2020年度の日本の放送事業者全体の売上高は3兆5,522億円(前年度比8.1%減)
    • 日本において、2021年にインターネット広告(2兆7,052億円)がマスコミ4媒体広告(2兆4,538億円)を初めて上回った
  • 電波の利用状況
    • 日本の無線局数は2010年度末(1億2,099万局)から2020年度末(2億7,711万局)にかけて2.3倍に増加
    • 2020年度末時点の5G基盤展開率は16.5%、5G基地局数は約2.1万局
  • 機器・端末関連
    • 2021年の日本のネットワーク機器の生産額は7,743億円(0.5%減)、半導体の生産額は7,412億円(同29.6%増)
    • 2020年の日本のICT機器の輸出額は6兆871億円、輸入額は9兆5,804億円で、3兆4,932億円の入超
  • サービス・アプリケーション
    • 2021年の日本のデータセンターサービスの市場規模は1兆7,341億円(前年比11.6%増)
    • 2021年の日本のパブリッククラウドサービス市場規模は1兆5,879億円(前年比28.5%増)
  • サイバーセキュリティ
    • 2021年のNICTERにおけるサイバー攻撃関連通信数は約5,180億パケット(前年比9.2%減)
    • 2020年の国内情報セキュリティ製品のベンダー別シェア(売上額)に占める外資系企業のシェアは50%超
  • デジタル活用
    • 2021年におけるスマートフォンの個人の保有割合は74.3%(前年差5ポイント増)
    • 年齢階層別のインターネット利用率は13歳~59歳までの各階層では9割を超えているが、60歳以降年齢が上がるにつれ利用率は低下
  • 郵便事業・信書便事業
    • 2021年度の日本郵政グループの連結決算は、経常収益が約11.3兆円(前年度比3.9%減)、当期純利益が5,016億円(同19.9%増)
  • 総合的なICT政策の推進
    1. 総務省デジタル田園都市国家構想推進本部の設置
      • 総務大臣を本部長とする同推進本部を設置し(2021年11月)、「デジタル田園都市国家構想」を推進
    2. 2030年頃を見据えた情報通信政策の在り方の検討
      • 情報通信審議会情報通信政策部会の下に新設された総合政策委員会において「2030年頃を見据えた情報通信政策の在り方」について取組の方向性や重点的に取り組むべき事項を取りまとめ(2022年5月)
  • 電気通信事業政策
    1. 光ファイバの整備・維持、海底ケーブル・データセンターの整備促進等
      • 「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」(2022年3月)に基づき、2027年度までに光ファイバ世帯カバー率99.9%を実現し、日本を周回する海底ケーブルを2025年度までに完成。データセンターについては、全国各地で十数カ所の地方拠点を5年程度で整備するなどの取組を推進
    2. 安心・安全な利用環境の整備
      • 自由で信頼性の高い情報空間の構築に向け、プラットフォーム事業者等の取組の透明性やアカウンタビリティの確保、誹謗中傷や偽情報等への対応、利用者情報の取り扱い等に対する取組を推進
  • 電波政策
    • 5Gの普及と高度化 5Gの人口カバー率向上(2025年度末までに全国97%)、5Gの機能の高度化・オープン化、5G・IoTソリューションの実証・実装・海外展開を促進等
  • 放送政策
    • 放送の将来像と放送制度の在り方の検討 放送を取り巻く環境の変化を踏まえ、「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」において、設備の共用化の推進、マスメディア集中排除原則の見直し、一部中継局のブロードバンドへの置換え等必要な措置を検討等を推進
  • サイバーセキュリティ政策
    • サイバー空間全体を俯瞰したサイバーセキュリティの確保 国民が安心してデジタルを活用できる環境を整備するため、電気通信事業者によるC&Cサーバの検知等の取組の促進や、IoT機器のセキュリティ確保、トラストサービスの普及に取り組むとともに、ASEAN等との連携を強化等を推進
  • ICT利活用の推進
    • ソリューションの開発・実装と、誰一人取り残されないデジタル社会の実現 社会・経済課題の解決につながるローカル5G等のソリューションの開発・実装に取り組むとともに、高齢者や障害者を含む誰もがICTによる利便性を享受できる環境の整備、青少年の情報リテラシーの向上等を推進
  • ICT技術政策
    • 次世代ネットワークに向けた研究開発と実装、国際標準化 超低消費電力化と固定・移動・宇宙通信の統合を可能とする次世代ネットワーク(Beyond5G)に向けて、研究開発・実装・国際標準化を推進
  • ICT国際戦略
    • 我が国のICT分野における国際競争力の強化 我が国の国際競争力強化と世界的な課題解決への貢献のため、DFFTのルール形成やサイバー空間の国際ルール作りなど国際的議論への積極的な貢献、デジタル分野での二国間・多国間における連携(日米、日欧、QUAD等)等を推進
  • 郵政行政
    • 郵便局におけるデジタル利活用の促進 デジタル化の進展など郵政行政を取り巻く社会変化に柔軟に対応し、経営の健全性と公正かつ自由な競争等を確保しつつ、デジタル技術を活用した行政事務受託や地域の高齢者の見守りなど、国民・利用者への利便性向上や地域社会への貢献を引き続推進

~NEW~
公安調査庁 国際テロリズム要覧2022
▼ダイジェスト版
  • 概況
    • 2021年は、米国同時多発テロ事件が発生してから20年目の節目となる年であった。同テロ事件以降、世界各地でテロ対策が強化された結果、「アルカイダ」や「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)は、最高指導者ら幹部や戦闘員が多数死亡するなど大きな打撃を受けた。しかし、両組織は消滅を免れ、2021年中も活動を継続した。
    • 世界各地のテロ情勢を見ると、アフガニスタンでは、8月、「アルカイダ」等と関係を有するとされる「タリバン」が実権を掌握したことにより、同国が再びテロの温床となる可能性が指摘された。また、同国で活動するISIL関連組織「ホラサン州」は、「タリバン」やシーア派民間人を標的とした攻撃やテロを繰り返し実行するなど、不安定な治安情勢が継続した。
    • アフリカ地域では、ISIL関連組織や「アルカイダ」関連組織が各地で活発な活動を継続した。特に、ISIL関連組織「中央アフリカ州」は、モザンビークやコンゴ民主共和国に加え、ウガンダでもテロを実行するなど、活動地を拡大させる動きを見せた。
    • 東南アジア地域では、インドネシア及びフィリピンにおいて、ISIL関連組織が、治安当局による取締りを受けながらも、テロを実行した。
    • 欧州では、引き続き、イスラム過激主義に感化されたとみられる者による「一匹狼」型テロが発生した。
  • 「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)の動向
    • ISILは、一定の勢力を維持しながら、テロ及び宣伝活動を継続した。ISILは、2019年3月にシリア及びイラクにおける支配地を喪失し、同年10月に最高指導者が交代した後も、両国に約1万人の戦闘員を擁し、約2,500万~5,000万ドルの資金を保持していると指摘されている。また、同組織は、両国において治安当局の活動が及びにくい山間部、砂漠地帯等に潜伏しつつ、治安部隊、同部隊に協力する住民等に対するテロを継続した。特にイラクでは、1月に首都バグダッドで、3年ぶりにシーア派住民を標的とした自爆テロを実行後、4月、6月、7月にも相次いでテロを実行したほか、主にイラク北部及び東部で多数の送電塔を爆破し、市民生活に大きな影響を与えた。宣伝活動においては、声明等の発出頻度の低下、使用する媒体の種類の減少が見られたが、2021年6月、広報担当アブ・ハムザ(当時)は、活発な活動が見られる「中央アフリカ州」及び「西アフリカ州」を称賛したほか、2020年に続き、全ての関連組織に対して収監されている同組織戦闘員の解放を呼び掛けた。また、アラビア語週刊誌で、関連組織を含むISILの戦果を定期的に配信し、自組織の影響力及びネットワークが維持されていることを誇示した。
    • ISIL関連組織の中では、特にモザンビーク等で活動する「中央アフリカ州」、ナイジェリアで活動する「西アフリカ州」及びアフガニスタン等で活動する「ホラサン州」の活動が注目された。「中央アフリカ州」は、3月、モザンビーク北部・パルマ市を襲撃し、一時的に同市の一部を占拠したほか、「西アフリカ州」は、5月、敵対する「ボコ・ハラム」の指導者を自爆に追い込み、同組織から多数の戦闘員を吸収したことで、勢力を拡大したとされる。また、「ホラサン州」は、8月、「タリバン」によるアフガニスタン掌握を受けて国外退避を求める市民らが殺到する空港付近で自爆テロを実行するなどした。
  • 欧米諸国における国際テロ関連動向
    • 欧米諸国では、引き続き、イスラム過激主義に感化されたとみられる者による「一匹狼」型テロや摘発事案が発生した。
    • フランスでは、4月、首都パリ近郊ランブイエの警察署で、イスラム過激主義の影響を受けていたとみられる男が職員を刃物で殺害した。英国では、10月、南東部・エセックス州リーオンシーで、ISILとの関連を自認していたとされる男が、下院議員を刃物で殺害した。
    • ISIL関連の摘発事案も相次いで発生し、ドイツでは、9月、ISILと関連を有するとされるシリア人の男が、南部・ハーゲンにおいてシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)の襲撃を計画したとして逮捕されたほか、10月には、西部・ボンにおいてISILに感化され、テロを計画していたとされる若者5人が家宅捜査を受けた。また、デンマーク及びドイツでは、2月、ISILの影響を受けたとみられる者を含む14人が、爆発物や火器を製造するための材料等を入手したなどとして逮捕されたほか、イタリアでは、12月、北東部ベネチア近郊において、ISILのメンバーとされるチュニジア人の男が逮捕され、スペインでは、10月、ISILを支持するとされる男が率いるテロ細胞のメンバー少なくとも4人が、カタルーニャ州バルセロナ及び首都マドリードにおいて、攻撃に用いる自動小銃の購入を企図したなどとして逮捕された。
    • ISILに参加した外国人戦闘員(FTF)の帰還をめぐっては、デンマークで、4月、シリアから帰還したFTFを含む6人が、テロ資金の移送に関与したなどとして逮捕されたほか、ギリシャでは、7月、シリアからの帰還後にモロッコでテロを計画していたとされるモロッコ出身のFTFが逮捕された。
  • 対テロ戦争の20年~米国同時多発テロ事件から「タリバン」復権に至るまでの国際テロ情勢と今後の注目動向~
    1. 2001~2011年(米国同時多発テロ事件~オサマ・ビン・ラディンの死亡)の国際テロ情勢
      • 2001年から2011年までの10年間は、おおむね「アルカイダ」に関連するテロが主たる脅威であった期間。同組織は、米国を第一攻撃対象とする「グローバル・ジハード」を自ら実践。同組織と関係を有する各地のイスラム過激組織も、大量殺りく型のテロを実行。さらに、「グローバル・ジハード」思想は世界各地でテロを誘発
      • 欧米では、過激思想に感化された自国育ちのテロリスト(「ホームグロウン・テロリスト」)によるテロの脅威が浮上。各国のテロ対策の強化等により欧米でテロを実行することが困難になった「アルカイダ」は、欧米在住の支持者らに対し、自国でのテロの実行を呼び掛け
    2. 2011~2021年(ISILの台頭及び勢力減退~「タリバン」の復権)の国際テロ情勢
      • 2011年から2021年までの10年間は、おおむねISILに関連するテロが主たる脅威であった期間。同組織は、「アラブの春」によるシリア情勢の不安定化に乗じて台頭し、シリアとイラクにまたがる領域に「カリフ国家」を一時、「建国」。「アルカイダ」に代わり「グローバル・ジハード」を主導し、欧州等でもテロを実行○2021年、アフガニスタンで反政府武装活動を継続していた「タリバン」が、同国における実権を20年ぶりに掌握。同組織の復権は、同組織と緊密な関係にある「アルカイダ」にとって復活の好機になると指摘されるなど、今後、同国を発生源とするテロの脅威が増大するおそれが示唆
    3. 当面の注目動向
      • 「タリバン」による実権掌握を復活の好機とする「アルカイダ」の動向及び対外テロを志向している可能性が否定できないISIL関連組織「ホラサン州」の動向
      • シリア及びイラクにおけるISILの復活に向けた動向
      • ISILや「アルカイダ」の関連組織、特に、西側諸国でのテロ実行の意図を持つ「アル・シャバーブ」、「アラビア半島のアルカイダ」(AQAP)等の動向
      • 外国人戦闘員(FTF)の動向、特に、アフガニスタンへの流入を示す動きやシリア及びイラクで拘留されているFTFの動向
      • 西側諸国在住の「ホームグロウン・テロリスト」らによる「一匹狼」型テロの動向
    4. 結論
      • ISILや「アルカイダ」は、過去20年間、米国等による大規模な軍事作戦等を受けながらも組織を存続。また、世界各地には、依然として政情が不安定で統治がぜい弱な地域が存在し、イスラム過激組織が活動する空間を提供。これらの点は、国際テロの脅威が今後も存在し続け、長期的視点に立って、そうした脅威を最小限に抑え込む対策を継続していく必要があることを示唆
  • 当面の注目動向
    1. アルカアイダ
      • 既に述べたとおり、「タリバン」の実権掌握は、対テロ戦争により弱体化していた「アルカイダ」にとって、復活の好機になり得ると見られている注28。このため、「アルカイダ」の動向には特段の注意を要すると言える。
      • 「アルカイダ」の動向に関する注目点としては、(1)「タリバン」による「暫定内閣」が各国から政府承認を得る上でリスクの一つとなっている「アルカイダ」をどう扱うか、(2)「タリバン」の実権掌握が「アルカイダ」の対外テロ実行能力の回復につながるか、(3)「アルカイダ」が後継者問題を克服するかが挙げられる。
      • (1)については、「タリバン」には20年かけて取り戻した支配権を再び危険にさらしてまで西側諸国等に対するテロを支援する動機はないという指摘がある一方で、「タリバン」が実際に「アルカイダ」の活動を完全に管理することは困難との指摘もあり、現時点では不透明な状況にある。「タリバン」が「アルカイダ」の活動をどこまで許容するのか、管理できるのかが注目される。
      • (2)については、「アルカイダ」は、米国主導の対テロ戦争によりテロ実行能力を大きく低下させており、西側諸国等に対して直接テロを実行する可能性は低いと長く見られてきた。しかし、これまでアフガニスタンで服役し、又は同国内外で潜伏していた「アルカイダ」メンバーの復帰が続いたり、新たな要員、特に外国人戦闘員(FTF)が一定数加入したりすることがあれば、「アルカイダ」の対外テロ実行能力の回復につながり得る。
      • (3)については、「アルカイダ」は、これまでに主要幹部の多くが殺害又は拘束されていることに加え、最高指導者のザワヒリが70歳と高齢で持病があり、2020年には死亡説が流れるなどしていることもあり、後継者問題がしばしば指摘されている。ザワヒリの後継者としては、オサマ・ビン・ラディン前最高指導者の警護責任者を務めたエジプト人のサイフ・アル・アデル、「アルカイダ」の公式メディア「アル・サハブ」の責任者でザワヒリの義理の息子とされるモロッコ人のアブド・アル・ラフマン・アル・マグレビ、アフガニスタンにおける「アルカイダ」ナンバー2とされるサウジアラビア人のアワブ・ビン・ハサン・アル・ハサニ等の幹部の名が専門家等により指摘されている。後継者問題への対応によっては、同組織の運営や求心力に影響が及ぶ可能性がある。
    2. ISIL関連組織「ホラサン州」
      • 「ホラサン州」は、2018年以降、当時の駐留外国軍、アフガニスタン軍等による掃討作戦強化の結果、勢力を後退させており、敵対関係にある「タリバン」を脅かすほどの存在にはならないと見られているものの注33、2021年にテロ件数を増加させるなど、活動を活発化させている。また、同組織は、今後、米軍からの軍事的圧力が低下すると見られる中、自組織を強硬派と位置付け「タリバン」との差別化を図り、「タリバン」に不満を抱いて離脱した者の受皿になるなどして、勢力を回復させる可能性が指摘されている。さらに、近い将来、西側諸国とその同盟国を攻撃するための能力を得るとの指摘もあり、その動向には注意を要する。同組織の動向に関する注目点としては、(1)同組織が「タリバン」からの圧力に抗して勢力を維持・拡大できるか、(2)同組織が対外テロを志向し、そのための能力も獲得するかが挙げられる。
      • (1)については、「ホラサン州」による首都カブール等でのテロ、「多信教徒」とみなすシーア派教徒へのテロ、「タリバン」に対するネガティブキャンペーン等が同組織の勢力の維持・拡大につながるかが注目される。なお、これまでのところ(2022年1月現在)、多数のFTFがアフガニスタンに流入している動きは見られないものの、仮にそうした動きが出てくれば、「ホラサン州」の勢力の維持・拡大につながるかも注目される。
      • (2)については、「ホラサン州」は設立以来、主にアフガニスタン国内で活動しているものの、過去に欧州で摘発されたテロ計画に同組織が関与していたとの指摘、同組織がその後も対外テロを志向しているとの指摘注37等に鑑みると、同組織が現在も対外テロを志向している可能性は否定できない。このため、同組織がアフガニスタンの不安定な情勢に乗じて、国内外から要員をリクルートするなどして、かつてISILが行ったように、対外テロ、特に西側諸国でテロを実行するための能力を獲得するかが注目される。
  • 外国人戦闘員(FTF)
    • FTFは、紛争地に渡航し、活動することで、現地の情勢を更に悪化させ得る存在であるほか、紛争地で実戦経験や人的ネットワークを得た後、出身国に帰国したり、第三国に移動したりすれば、テロの脅威を紛争地の外に拡散させ得る存在でもある。FTFのこうした危険性は、ISILの台頭の一因にFTFの存在があったとされることや、同組織が、2015~2017年にかけて、フランス、ベルギー及びトルコに送り込んだFTFが現地でテロを実行したこと等からも明らかである。このため、FTFは、「長期的、世界的な大きな脅威」となっている。
    • FTFの動向に関する注目点としては、(1)アフガニスタンにおける情勢の変化を捉えて世界各地からFTFが同国に流入する可能性、(2)シリアやイラクで拘留されているFTFが収容施設から逃亡したり解放されたりすることでISILの活動を活性化させる可能性が挙げられる。
    • (1)については、「タリバン」が実権を掌握した際、FTFが同国に流入する可能性が指摘されたものの、これまでのところ(2022年1月現在)、多数のFTFが流入している状況は見られない。しかし、アフガニスタン情勢は、当面流動的な状況が継続するとみられ、今後、FTFが流入する可能性も否定できない。仮に一定数のFTFがアフガニスタンに流入すれば、同国で活動する「アルカイダ」や「ホラサン州」に合流してこれらの組織が活動を活発化させるおそれがある。
    • (2)については、シリア及びイラクでは数千人ともされるFTFが施設に拘留されているとされ、FTFの家族等を含め、急造の施設に収容能力を超える戦闘員等が収容されている。また、彼らの出身国政府は、治安上のリスク増大のほか、訴追や収監に必要な証拠の収集が
    • 困難であること等を理由として、身柄の引取りに消極的な姿勢を維持している。こうした中、シリアでは、2020年10月、ISIL戦闘員やその家族の収容施設を管理するシリア民主軍(SDF)が、恩赦として被収容者600人以上を解放し、また、2022年1月、ISIL戦闘員が収容所を襲撃し、収容されていたISIL戦闘員の一部が脱走する事案が発生するなどしており、こうした動向がISILの活動を活発化させることが懸念される。
  • 「ホームグロウン・テロリスト」らによる「一匹狼」型テロ
    • ISILや「アルカイダ」が対外作戦能力を低減させている現在、これらの組織が欧米等西側諸国で直接テロを実行する可能性は低下しているとされる。一方、これらのテロ組織と直接の関係を有さない「ホームグロウン・テロリスト」らによる「一匹狼」型テロは、依然として欧州で継続的に発生しており、主要な脅威の一つとみられている。「一匹狼」型テロリストによる事件の多くは、組織的なテロと比較すると死傷者数は少ないが、中にはイベント会場や繁華街への車両での突入等、テロの実行場所や手法によって多数の死傷者を出した例もあり、注意が必要である。特に、新型コロナウイルス感染症対策を目的に実施されている移動、渡航、集会等の制限が緩和又は解除され、人流が回復した際には、これまで大きな被害を生じさせ得る標的が欠如していたためにテロの実行を見合わせていた者が犯行に及ぶ可能性があるため、警戒を要する。
  • テロ組織等による暗号資産の利用
    1. 暗号資産は、即時性、匿名性等に特徴
      • ビットコインに代表される暗号資産は、国際取引に時間を要さないなどの即時性、利用者の特定につながる情報が秘匿されるなどの匿名性のほか、価格変動による利ざやが期待されるなどの投機性に特徴がある。暗号資産は、世界各地で利用者が増加しており、その種類も1万を超えるとされる。
    2. テロ組織や同組織関係者による資金調達活動等への利用が懸念
      • 暗号資産は、その匿名性等から、「アルカイダ」、「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)等に関連した利用が拡大していると国連安保理が指摘しており、テロ組織や同組織関係者による資金調達活動への利用が懸念されている。実際、両組織のみならず、シリアを拠点に活動する「タハリール・アル・シャーム機構」(HTS)等も、戦闘員への「寄附」等を名目に、資金調達活動に暗号資産を利用している状況がうかがえる。また、資金調達後には、テロ目的での武器の購入等を行っているものと推察される。
    3. より匿名性の高い暗号資産の使用を呼び掛ける動きも
      • 2020年、米国において「アルカイダ」等との関連を有する暗号資産の口座の摘発が発表されたほか、英国でも、シリアで活動するISILへの支援等のため、5万ポンド以上に相当するビットコインをシリアへ送金したとされる男が逮捕されるなどした。こうした中で、テロ組織等においては、ビットコインでの取引は追跡されるとの認識から、匿名性がより高く、送金情報が第三者に漏れにくい別の暗号資産の使用を呼び掛ける動きも見られる。
    4. テロ組織等による暗号資産の利用には引き続き要注意
      • 暗号資産は、交換業者が取引に関与しない場合には、送金先や送金元の特定が困難とされる。また、米国等では摘発事例が見られるものの、暗号資産の取引を完全に把握するのは技術的に困難な面もあるとされ、技術の進歩と共に暗号資産の利用拡大が続くとみられる中、テロ組織等による暗号資産の利用には引き続き注意を要する。
  • サイバー空間をめぐるテロの脅威
    1. イスラム過激組織、同組織関係者等によるサイバー攻撃をめぐる動向
      • 「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)、「アルカイダ」等のイスラム過激組織は、サイバー攻撃を専門とする組織内部門の存否について明らかにしておらず、2021年末時点においても、これらのイスラム過激組織による組織的かつ大規模なサイバー攻撃事案は確認されていない。しかしながら、ISIL等は主として、サイバー空間を自組織の思想の拡散、リクルート活動、テロの計画や準備に関する連絡等の目的で利用している状況がうかがわれる。また、ISIL等との関連が疑われる個人又はグループによるサイバー攻撃事案については、従前から各国で発生している。
    2. イスラム過激組織との関連が疑われる個人等による主なサイバー攻撃事案
      • ISILについては、組織としてサイバー攻撃の実行を呼び掛ける声明や機関誌は特段把握されていない(2022年1月末時点)。一方、「アルカイダ」は、機関誌「ワン・ウンマ」英語版第2号(2020年6月)において、サイバー空間での「ジハード」を「E-Jihad」と位置付けた上で、金融機関、航空システム等の重要インフラに対するサイバー攻撃を呼び掛けるとともに、「米国を始めとする西側諸国におけるネットワークのセキュリティ対策は9.11(2001年の米国同時多発テロ事件)前と何ら変わっていない」などと主張し、西側諸国で同テロ事件以上の経済的影響を及ぼし得るサイバー攻撃の実行を呼び掛けている。
      • また、これらのイスラム過激組織以外にも、同組織との関連が疑われる個人又はグループがサイバー攻撃等を呼び掛けている。ISILとの関連では、「オンラインへの侵入は物理的なジハードの実行と同様に重要である」、「一度のハッキングで敵に何十億ドルもの損失を生じさせ得る」などの主張が、「アルカイダ」との関連では、西側諸国の基幹システム等に対するハッキングに加え、ハッカーを養成することの重要性等が訴えられている。
      • このように、イスラム過激組織、同組織関係者等が西側諸国へのサイバー攻撃の実行を希求しているところ、引き続きサイバー空間におけるテロ関連動向に注目していく必要がある。
  • 欧州出身の外国人戦闘員(FTF)及びその家族をめぐる現状
    • 2012年以降、シリア又はイラクに渡航した欧州出身の外国人戦闘員(FTF)及びその家族約5,000人のうち、2,000人以上が帰国、約3分の1が死亡、その他が紛争地域で拘束され、又は行方不明とされる。また、「シリア民主軍」(SDF)によって拘束され、シリア北東部の施設注1に収容されている欧州出身のFTF及びその家族は、約1,000人(うち600人以上が子供)と推計されている。
      1. 欧州に帰国したFTFをめぐる問題】
        • 欧州各国の治安当局は、帰国したFTF特有の脅威として、豊富な戦闘経験、高度な戦闘技術及び国際的な人的ネットワークの存在を指摘注3しており、欧州に帰国したFTFによるテロや、収監された刑務所内で他の受刑者を過激化する可能性が懸念されている。欧州の多くの国では、2014年にベルギーで、2015年にフランスで発生したテロを契機として、2015年以降、帰国したFTFに対する体系的な捜査が行われている。2020年7月時点で、テロ関連犯罪による受刑者(イスラム過激主義者)は、欧州10か国注5で約1,300人とされ、このうちFTFであった者の多くはテロ組織への参加等の軽微な罪で有罪判決を受け、ベルギーやフランスでは平均約6年半、ドイツでは平均約4年半の懲役刑に服しているといわれる。このため、2025年頃までには多数のFTFの釈放が見込まれ、これに伴うテロの脅威の増大が懸念される。また、帰国したFTFは、カリスマ性を有する英雄的存在として他者を感化し、過激化させる可能性が指摘されており、帰国後、収監されたFTFが他の受刑者に与える影響を注視する必要がある。
      2. シリア北東部で収容中の欧州出身のFTFに係る脅威
        • 2019年10月、米軍のシリア北東部からの一部撤収を受け、トルコ軍が同地で軍事作戦を開始した。SDFが同軍への対処を余儀なくされた結果、SDFによる収容施設の監視が緩んだほか、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う収容者と監視員との接触の減少により、同施設内部で過激主義がまん延しやすくなったと言われる。これにより、同施設内部では、元戦闘員が脱走し、イスラム過激組織に復帰したり、当局の監視を逃れて自国へ帰国したりするなどのリスクもあるとされる。
        • こうした中、多数の欧州人を含む「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)元戦闘員約5,000人を拘束していたとされるハサカ所在の収容所が、2022年1月、ISIL戦闘員200人以上によって襲撃され、拘束されていた元戦闘員約400人が消息不明となったとされる。また、約60か国(うち欧米は約20か国)出身の外国人女性及び子供約1万人を収容しているアル・ホールキャンプでは、ISIL支持者による収容者殺害事案も発生注7しているとされる。
      3. シリア北西部に滞在する欧州出身のFTFに係る脅威
        • 欧州出身のFTFの一部は、シリア北西部において複数のイスラム過激組織に分散しており、ISILは、これらのFTFに対し、現在所属する組織からの離脱及びISILへの参加を呼び掛けているとされ、FTFがこうした呼び掛けに応じる可能性が懸念される。また、現時点で、シリア北西部から第三国へのFTFの移動は限定的とされるが、今後、例えばアフガニスタンにおいてISIL関連組織や「アルカイダ」の勢力が拡大した場合、紛争地域に滞在する欧州出身のFTFが同国に移動してこれらの組織に参加したり、その高度な戦闘技術と人的ネットワークを生かしたりして、ISIL関連組織「ホラサン州」を始めとするイスラム過激組織の欧米を標的としたテロに関与する可能性も懸念される。
  • 欧米において継続する極右テロの脅威
    • 欧米諸国では、近年、白人至上主義やネオナチ思想を有したり、外国人排斥等を主張したりする極右過激主義者によるテロの脅威の高まりが指摘されている。コロナ禍が継続した2021年においても、引き続き同脅威が顕著であるとされ、イルヴァ・ヨハンソン欧州委員会委員は、2021年6月、「特に極右テロに関して、インターネット上での過激化の脅威が増加した」と述べるなど、コロナ禍におけるインターネット上での極右過激主義思想の拡大に対する懸念を表明した。
    • 最近の欧米における極右過激主義に関連したテロとしては、2021年6月、カナダのオンタリオ州西部ロンドンで、イスラム教徒一家に対する襲撃事件が発生した注20。また、英国やドイツでは、極右過激主義者の摘発が相次いだ。このほか、同年1月に発生した米国連邦議会議事堂襲撃事件についても、逮捕者の一部が極右組織との関わりを有していたとされる。
    • こうした極右過激主義者によるテロの脅威を受け、近年、欧米各国では、極右組織をテロ組織に指定するなど、極右組織によるテロへの対策が進められているが、一方で、インターネット上での交流等を通じた極右過激主義思想の若者への拡散や、軍及び法執行機関内部への浸透が懸念されている
      1. インターネット上での若者への極右過激主義思想の拡散
        • 欧州における若者への極右過激主義思想の拡散について、欧州法執行協力機構(ユーロポール)は、2021年6月、極右テロに係る最大の脅威とされる「自己過激化した若者」が、インターネット上のプラットフォーム等で極右思想を共有しつつ、緩やかに連携している旨指摘したほか、英国保安局(MI5)のケン・マッカラム長官は、7月、同国における極右過激主義に関連したテロの脅威につき、若者の関与が顕著であると指摘した。また、イタリアのルチアナ・ラムジュ内相は、6月、極右過激主義者らはインターネット上で若者を標的としていると述べるなど、インターネット上での若者への極右過激主義思想の拡散が懸念されている。
        • とりわけ、英国では、2020年8月、若者を中心としてインターネット上で設立された極右組織「ブリティッシュ・ハンド」を率いていた少年を始めとするメンバーの摘発が相次いだほか、ネオナチ組織と指摘される「アトムヴァッフェン・ディビジョン」(AWD)の関連組織「フォイヤークリーク・ディビジョン」(FKD)の英国支部を率いていた少年が、13歳の頃から極右思想に傾倒し、爆発物製造マニュアルのダウンロード等を行っていたことが判明するなど、極右過激主義に関連した若者の摘発事案が相次いだ。
        • 新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う社会経済情勢の悪化によって生じる不安や不満に対してぜい弱で、極右過激主義思想に係る知識が不十分な若者が、インターネット上での交流等を通じて極右過激主義思想に引き付けられ、同思想の拡散の土壌を形成することが懸念される。
      2. 軍及び法執行機関への極右過激主義思想の浸透
        • 欧州諸国では、近年、軍及び法執行機関における極右思想の浸透を示唆する事案が複数発生している。例えば、ドイツにおいては、極右過激主義との関連で、軍人の逮捕事案が続発しており、2021年6月には、ヘッセン州警察や機動隊等に属する計49人の現役警察官が、チャットグループで極右主義的な内容を共有していたとして捜査を受けた結果、フランクフルト警察特殊部隊(SEK)の解体が決定した。さらに、2021年9月には、極右過激主義への関与が疑われるドイツ国防省職員に対する捜査が行われた。また、英国においても、近年、軍人及び法執行機関の職員に係る極右関連事案が発覚している。軍及び法執行機関の職員は、武器や爆発物へのアクセスを有し、訓練経験があり、摘発を防ぐ手法を身に付けていることから、これらの機関内部における過激思想の浸透には注意を要するとされる。
      3. 米国連邦議会議事堂襲撃事件への極右過激主義思想の関与
        • 2021年1月6日、米国首都ワシントンC.の連邦議会議事堂で、バイデン次期大統領(当時)の当選を確定する上下院合同会議の手続中、暴徒化したトランプ大統領支持者らが同議事堂を襲撃し、一時占拠した。米連邦捜査局(FBI)は、3月、同襲撃事件を「国内テロ」の一形態であると発表した。同襲撃事件に係る容疑で起訴された者は、約700人とされ、そのうち少なくとも86人が極右組織と指摘される「プラウド・ボーイズ」、「スリーパーセンターズ」等と関わりがあったとされる。
        • 同襲撃事件等を受け、米国家安全保障会議(NSC)は、6月、同国として初めて国内テロ対策に関する国家戦略を発表した。同戦略は、「国内テロ」の主な要因として、民族的、人種的又は宗教的な憎悪等を動機とする暴力的な白人至上主義、暴力的な反政府主義を指摘している。
        • 同襲撃事件を受け、カナダ政府が「プラウド・ボーイズ」及び「スリーパーセンターズ」をテロ組織に指定した後、「プラウド・ボーイズ」のカナダ支部が財政難等を理由として解散したほか、米当局による同襲撃事件実行犯の逮捕等により複数の極右組織の勢力が弱体化したとの指摘があるものの、離脱したメンバーが極右過激主義思想を保持したまま分派組織等を形成する動きが指摘されるなど、極右組織によるテロの脅威が継続している。

~NEW~
外務省 ウクライナ情勢の影響を受けたグローバルな食料安全保障への対応
  • 7月5日、日本政府は、ウクライナ情勢の影響を受けて悪化した、グローバルな食料安全保障への対応として、合計約2億ドルの支援を実施することを決定しました。
  • 今回の支援は、先月27日のG7サミットにおいて岸田文雄内閣総理大臣が表明した約2億ドルの食料安全保障分野への支援を具体化するものであり、(1)食料不足に直面する国々への食料支援及び生産能力強化支援、(2)中東・アフリカ諸国に対する人道支援としての緊急食料支援及びウクライナからの穀物輸出促進支援を、二国間支援や国連機関及び日本のNGOを通じて行うものです。
  • 日本政府は、G7を始めとする国際社会と連携しながら、世界の食料安全保障の確保のために取り組んでいきます。
  • 参考 支援の内訳
    1. 食料不足に直面する国々への食料支援及び生産能力強化支援
      • 二国間食糧援助・食料生産能力強化:約4,710万ドル
      • 国連世界食糧計画(WFP):約3,614万ドル
        食糧援助・食料生産能力強化
      • 国連食糧農業機関(FAO):約1,972万ドル
        食料生産能力強化
    2. 緊急食料支援及びウクライナからの穀物輸出促進支援
      • 国連世界食糧計画(WFP):6,800万ドル
        緊急食料・栄養支援
      • 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA):500万ドル
        緊急食料支援
      • 国連食糧農業機関(FAO):1,700万ドル
        ウクライナからの穀物輸出促進支援
      • 日本のNGO(ジャパン・プラットフォーム(JPF)経由):1,000万ドル
        緊急食料支援

~NEW~
外務省 ウクライナ情勢に関する外国為替及び外国貿易法に基づく措置について
  • ウクライナをめぐる現下の国際情勢に鑑み、この問題の解決を目指す国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため、主要国が講ずることとした措置の内容を踏まえ、閣議了解「ロシア連邦関係者に対する資産凍結等の措置等について」(令和4年7月5日付)を行い、これに基づき、外国為替及び外国貿易法による次の措置を実施することとした。
    1. 措置の内容
      1. 資産凍結等の措置
        • 外務省告示(7月5日公布)により資産凍結等の措置の対象者として指定されたロシア連邦の関係者(57個人・6団体)及びウクライナ東部の不安定化に直接関与していると判断される者(5個人)に対し、(1)及び(2)の措置を実施する。
          1. 支払規制
            • 外務省告示により指定された者に対する支払等を許可制とする。
          2. 資本取引規制
            • 外務省告示により指定された者との間の資本取引(預金契約、信託契約及び金銭の貸付契約)等を許可制とする。
      2. ロシア連邦及びベラルーシ共和国の特定団体への輸出等に係る禁止措置
        • 外務省告示(7月5日公布)によりロシア連邦の特定団体として指定された65団体及びベラルーシ共和国の特定団体として指定された25団体への輸出等に係る禁止措置を実施する。
      3. ロシア連邦向けのサービスの提供の禁止措置
        • 財務省告示(7月5日公布)により、ロシア連邦向けの信託サービス、会計・監査サービス、経営コンサルティング・サービスの提供を許可制とする。
        • (注1)令和4年9月5日以後に開始される役務取引について適用する。
      4. ロシア連邦からの貴金属(金)の輸入禁止措置
        • ロシア連邦からの貴金属(金)の輸入禁止措置を導入する。
        • (注2)当該輸入禁止措置については、後日、財務省告示により指定する予定。
    2. 上記資産凍結等の措置等の対象者
      別添参照
▼(別添1)資産凍結等の措置の対象となるロシア連邦の個人及び団体
▼(別添2)ウクライナ東部の不安定化に直接関与していると判断される者として我が国が指定する個人
▼(別添3)輸出等に係る禁止措置の対象となるロシア連邦の特定団体
▼(別添4)輸出等に係る禁止措置の対象となるベラルーシ共和国の特定団体

~NEW~
法務省 第72回“社会を明るくする運動”~犯罪や非行を防止し、立ち直りを支える地域のチカラ~
  • “社会を明るくする運動”とは?
    • “社会を明るくする運動”~犯罪や非行を防止し、立ち直りを支える地域のチカラ~は、すべての国民が、犯罪や非行の防止と犯罪や非行をした人たちの更生について理解を深め、それぞれの立場において力を合わせ、犯罪や非行のない安全で安心な明るい地域社会を築くための全国的な運動です。令和4年で72回目を迎えます。
  • 地域のチカラが犯罪や非行を防ぐ
    • テレビや新聞では、毎日のように事件(犯罪)のニュースが報道されていますが、安全で安心な暮らしはすべての人の望みです。犯罪や非行をなくすためには、どうすればよいのでしょうか。取締りを強化して、罪を犯した人を処罰することも必要なことです。しかし、立ち直ろうと決意した人を社会で受け入れていくことや、犯罪や非行をする人を生み出さない家庭や地域づくりをすることもまた、とても大切なことです。
    • 立ち直りを支える家庭や地域をつくる。そのためには、一部の人たちだけでなく、地域のすべての人たちがそれぞれの立場で関わっていく必要があります。“社会を明るくする運動”では、犯罪や非行のない地域をつくるために、一人ひとりが考え、参加するきっかけをつくることを目指しています。
  • あなたもできることから始めてみませんか
    • “社会を明るくする運動”では、街頭広報、ポスターの掲出、新聞やテレビ等の広報活動に加えて、だれでも参加できるさまざまな催しを行っています。イベントに参加したり、このホームページを見たりしたことなどをきっかけにして、犯罪や非行のない安全で安心な暮らしをかなえるためいま何が求められているのか、そして、自分には何ができるのかを、みなさんで考えてみませんか。

~NEW~
法務省 侮辱罪の法定刑の引上げ Q&A
  • 改正の概要・趣旨
    • Q1 今回の侮辱罪の法定刑の引上げはどのようなものですか。
    • A1 これまで、侮辱罪(刑法231条)の法定刑は、「拘留又は科料」とされてきました。今回の改正で、「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に引き上げられました。改正法は、令和4年7月7日から施行され、その後に行われた行為に適用されることになります(施行の前に行われた行為は、改正される前の法定刑が適用されます。)。
    • Q2 侮辱罪とは、どのような罪ですか。
    • A2 侮辱罪は、事実を摘示せずに、「公然と人を侮辱した」ことが要件になっています。具体的には、事実を摘示せずに、不特定又は多数の人が認識できる状態で、他人に対する軽蔑の表示を行うと、侮辱罪の要件に当たることになります。
    • Q3 「拘留又は科料」とは、具体的にどのような刑罰ですか。
    • A3 「拘留」は、1日以上30日未満、刑事施設に拘置する刑です(刑法16条)。「科料」は、1,000円以上1万円未満の金銭を支払う刑です(刑法17条)。これまでの侮辱罪の法定刑は、刑法の罪の中で最も軽いものでした。
    • Q4 なぜ、侮辱罪の法定刑が引き上げられたのですか。
    • A4 近時、インターネット上で人の名誉を傷つける行為が特に社会問題化していることをきっかけに、非難が高まり、抑止すべきとの国民の意識が高まっています。人の名誉を傷つける行為を処罰する罪としては、侮辱罪(処罰の対象となる行為について、Q2参照)のほかに、名誉毀損罪(刑法230条)があり、この罪は、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」ことが要件となっています。いずれも、人の社会的名誉を保護するものとされていますが、両罪の間には、事実の摘示を伴うか否かという点で差異があり、人の名誉を傷つける程度が異なると考えられることから、法定刑に差が設けられています。名誉毀損罪の法定刑は「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」とされる一方、侮辱罪の法定刑は「拘留又は科料」とされてきたのです。しかし、近年における侮辱罪の実情などに鑑みると、事実の摘示を伴うか否かによって、これほど大きな法定刑の差を設けておくことはもはや相当ではありません。そこで、侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し、これを抑止するとともに、悪質な侮辱行為に厳正に対処するため、名誉毀損罪に準じた法定刑に引き上げることとされたものです。
    • Q5 今回の改正によって、侮辱罪の法定刑の上限が懲役1年とされたのはなぜですか。罰金を追加すれば十分ではないのですか。
    • A5 今回の改正の趣旨は、Q4のとおり、「拘留又は科料」とされてきた侮辱罪の法定刑を名誉毀損罪に準じたものに引き上げることです。Q4のとおり、近年における侮辱罪の実情などに鑑みると、侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し、これを抑止するとともに、悪質な侮辱行為に厳正に対処するためには、法定刑に罰金を追加するだけでは不十分であると考えられます。こうしたことから、今回の法改正では、侮辱罪の法定刑の上限が懲役1年とされたものです。
    • Q6 侮辱罪の法定刑の引上げ後も「拘留又は科料」を残すこととされたのはなぜですか。
    • A6 今回の改正の趣旨はQ4のとおりですが、侮辱罪の法定刑が引き上げられた後も、悪質性の低い事案も想定されますので、個別具体的な事案に応じた適切な処罰ができるよう、軽い刑である拘留・科料も残すこととされたものです。
  • 侮辱罪の処罰範囲について
    • Q7 今回の改正によって、侮辱罪の処罰範囲は変わるのですか。
    • A7 今回の改正は、侮辱罪の法定刑を引き上げるのみであり、侮辱罪が成立する範囲は全く変わりません。これまで侮辱罪で処罰できなかった行為を処罰できるようになるものではありません。
    • Q8 どのような場合に侮辱罪が成立するのかがあいまいではないですか。
    • A8 個別具体的な事案における犯罪の成否については、法と証拠に基づき、最終的には裁判所において判断されることとなりますが、侮辱罪にいう「侮辱」にどのような行為が当たるかについては、裁判例の積み重ねにより明確になっていると考えています(例えば、令和2年中に侮辱罪のみにより第一審判決・略式命令のあった事例については、こちらから御参照いただけます。)。
    • 表現の自由との関係について
    • Q9 政治家を公然と批判した場合なども、侮辱罪による処罰の対象となる可能性があるのですか。
    • A9 刑法35条には、「法令又は正当な業務による行為は、罰しない。」と定められています。侮辱罪の要件に当たったとしても、公正な論評といった正当な表現行為については、刑法35条の正当行為として処罰されません。このことは、今回の改正後も変わりません。
    • Q10 侮辱罪の法定刑の引上げにより、憲法が保障する表現の自由を侵害することになりませんか。
    • A10 表現の自由は、憲法で保障された極めて重要な権利であり、これを不当に制限することがあってはならないのは当然のことです。今回の改正は、次のとおり、表現の自由を不当に侵害するものではありません。
    • 今回の改正は、侮辱罪の法定刑を引き上げるのみであり、侮辱罪が成立する範囲は全く変わりません(Q7参照)。
    • 法定刑として拘留・科料を残すこととしており、悪質性の低いものを含めて侮辱行為を一律に重く処罰する趣旨でもありません(Q6参照)。
    • 公正な論評といった正当な表現行為については、仮に相手の社会的評価を低下させる内容であっても、刑法35条の正当行為に該当するため、処罰はされず、このことは、今回の改正により何ら変わりません(Q9参照)。
    • 侮辱罪の法定刑の引上げについて議論が行われた法制審議会においても、警察・検察の委員から、「これまでも、捜査・訴追について、表現の自由に配慮しつつ対応してきたところであり、この点については、今般の法定刑の引上げにより変わることはない」との考え方が示されたところです。
  • 法定刑の引上げに伴う法律上の取扱いの変更について
    • Q11 侮辱罪の法定刑の引上げに伴い、法律上の取扱いにどのような変更が生じるのですか。
    • A11 侮辱罪の法定刑の引上げに伴って、例えば、次のような違いが生じます。
    • 教唆犯及び幇助犯(※1)について、これまでは、処罰することができませんでしたが(刑法64条)、法定刑の引上げに伴い、その制限がなくなります。
    • 公訴時効期間(※2)について、これまでは1年でしたが、法定刑の引上げに伴い、3年となります(刑事訴訟法250条2項6号・7号)。
    • 逮捕状による逮捕について、これまでは、被疑者が定まった住居を有しない場合又は正当な理由なく出頭の求めに応じない場合に限り逮捕することができましたが(刑事訴訟法199条1項ただし書)、法定刑の引上げに伴い、その制限がなくなります。
    • 現行犯逮捕について、これまでは、犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合又は犯人が逃亡するおそれがある場合に限り現行犯逮捕をすることができましたが(刑事訴訟法217条)、法定刑の引上げに伴い、その制限がなくなります。
    • (※1)教唆とは、他人をそそのかして犯罪実行の決意を生じさせ、その決意に基づいて犯罪を実行させることをいい、幇助とは、実行行為以外の行為で正犯の実行行為を容易にさせることをいいます。
    • (※2)公訴時効とは、犯罪行為が終わった時点から起算して一定の期間が経過すると、その後の起訴が許されなくなる制度のことです。
    • 侮辱罪による逮捕について
    • Q12 侮辱罪の法定刑の引上げにより、逮捕について不適切な運用がなされる可能性があるのではないですか。
    • A12 侮辱罪による逮捕に関して、今回の改正により、被疑者が定まった住居を有しないことなどの制限がなくなることとなりますが(Q11参照)、それ以外の要件に変わりはありません。まず、逮捕状による逮捕は、正当行為などの違法性を阻却する事由がないことを含めて被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合において、逮捕の必要性があるときに、あらかじめ裁判官が逮捕の理由及び必要性を判断した上で発する逮捕状によらなければなりません。そして、現行犯逮捕については、逮捕時に、正当行為などの違法性を阻却する事由がないことを含めて犯罪であることが明白で、かつ、犯人も明白である場合にしか行うことができません。仮に「侮辱」に該当するとしても、表現行為という性質上、違法性を阻却する事由の存否に関して、憲法で保障される表現の自由との関係が問題となるため、現行犯逮捕時に、逮捕時の状況だけで正当行為でないことが明白とまでいえる場合は、実際上は想定されません。したがって、侮辱罪の法定刑の引上げにより、正当な言論活動をした者が逮捕されるといった不適切な運用につながるものではありません。
    • Q13 侮辱罪の法定刑の引上げにより、一般の私人による現行犯逮捕が増えて混乱が生じることになりませんか。
    • A13 現行犯逮捕は、誰でも行うことができますが(刑事訴訟法213条)、侮辱罪の法定刑の引上げ後も、正当行為などの違法性を阻却する事由がないことを含めて犯罪であることが明白で、かつ、犯人も明白である場合にしか行うことができません(Q12参照)。そして、私人により現行犯逮捕が行われた場合には、その後、逮捕された者の引渡しを受けた警察官らが、逮捕の理由及び必要性について必ず判断することとなります。さらに、現行犯逮捕の要件を満たさないにもかかわらず、現行犯逮捕が行われた場合には、その現行犯逮捕を行った者は、民事上・刑事上の責任を問われる可能性もあります。したがって、今回の改正が、私人の現行犯逮捕に伴う混乱につながることはありません。

~NEW~
法務省 7月は「再犯防止啓発月間」です
  • 平成28年12月に「再犯の防止等の推進に関する法律」(再犯防止推進法)が公布・施行されました。
  • 同法第6条には、国民の間に広く再犯の防止等についての関心と理解を深めるため、7月を再犯防止啓発月間とする旨が定められています。
  • 法務省では、ふだんの生活では触れる機会の少ない「再犯防止」というテーマについて、御関心を持っていただけるよう、PRイベントや情報発信を積極的に行っています。
▼再犯防止啓発ポスター

~NEW~
経済産業省 「サプライチェーン イノベーション大賞 2022」の受賞者を決定しました
  • メーカー(製)、卸(配)、小売(販)50社が参加する製・配・販連携協議会は、「サプライチェーン イノベーション大賞2022」の受賞者を決定し、本日の製・配・販連携協議会総会/フォーラムにおいて表彰を行いました。
    1. 「サプライチェーン イノベーション大賞2022」について
      • サプライチェーン イノベーション大賞とは、サプライチェーン全体の最適化に向け、製・配・販各層の協力の下、優れた取組を行い、業界を牽引した企業に対して、製・配・販連携協議会がその功績を表彰するものです。
      • 今回は、合計7件(共同提出含む)の応募があり、表彰選考委員会が審査した結果、1件の取組をサプライチェーン イノベーション大賞として、2件の取組を優秀賞として、これらの取組を表彰しました。
    2. 受賞企業
      1. サプライチェーン イノベーション大賞(1件)
      2. サプライチェーン イノベーション優秀賞(2件)

~NEW~
経済産業省 「令和4年版通商白書」を取りまとめました
▼通商白書の概要
  1. 地政学的不確実性のもたらす経済リスクと世界経済の動向
    1. 世界経済に対する地政学的不確実性の高まりと経済リスク
      1. ロシアのウクライナ侵略による世界経済への影響
        • ロシアのウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす行為であり、我が国として、断じて許容できない。
        • G7を中心とする先進国は、エネルギー分野を含め、前例の無い大規模な経済制裁を迅速に導入・実施し、ロシアとの経済・政治関係の見直しを急速に進めてきた。これを契機に、冷戦後かつてないほどに経済的分断への懸念が高まっており、自国中心主義や経済安全保障の重視により多極化が進行する国際経済の構造変化を加速させ、国際経済秩序の歴史的な転換点となる可能性がある。他方、新興国・途上国の多くは、経済制裁などの踏み込んだ行為を控え、ロシアとの経済・政治関係に関して、ロシアに配慮した中立的な姿勢を示している。
        • ロシアとウクライナは、世界経済に占める経済規模は大きくないものの、エネルギー、食料、及び重要鉱物等、特定産品において世界有数の産出国・輸出国であり、それらの産品を両国からの輸入に依存する諸国では、供給の途絶リスクが懸念される。更に、ウクライナ情勢の短期的な収束が期待しづらい中、食料・エネルギー等の国際商品市況が高騰しており、特に輸入依存度の高い諸国では、国民生活への影響も懸念される。
        • 我が国では、ウクライナ情勢のみならず、中長期的な観点と、国民の生活や安全保障の観点から、重要物資の安全供給に関わるリスクの分析・対応を検討するため、経済産業大臣を本部長とする「戦略物資・エネルギーサプライチェーン対策本部」を設置し、対策の方向性を示している。
      2. 第2節.世界的な供給制約の高まり
        • コロナ禍での世界経済の非対称な回復や急激な財政措置による需給バランスの歪みに加え、中国におけるロックダウンやロシアのウクライナ侵略の影響によりサプライチェーンが混乱している。海上輸送におけるコンテナ需給のひっ迫、陸上輸送における労働者不足、航空輸送における旅客便の減少を受けた航空貨物スペースのひっ迫、燃料価格の上昇等により、物流コストが高騰している。原油価格は、コロナ禍における世界的な経済回復による石油需要回復への期待や、天然ガス・石炭価格の高騰を受けた代替資源としての需要の高まりから高騰しているものの、ロシアのウクライナ侵略を受けた世界的な供給減への懸念から価格が更に急騰した。
        • エネルギーの海外依存度が高い我が国は、通貨安もあいまって交易条件が悪化している。こうした中、異常気象による食料の不作、脱炭素に向けた資源・エネルギー需要の急激なシフトなどによって肥料や食料も含めたコモディティ価格が上昇しており、エネルギー安全保障や食料安全保障にも影響を及ぼしている。
      3. 第3節.先進国の金融政策正常化に伴う新興国経済への影響
        • 米国を始め多くの国において、2021年秋頃から資産買入ペースの減速や政策金利の引上げなど、金融政策正常化への取組が開始された。新興国と先進国との金利差が縮小すると、相対的に金利が上昇した先進国への資金移動が促され、新興国から資金が流出することで通貨安となる懸念がある。新興国の通貨安は、新興国発行の外貨建て債務の返済負担増や、輸入価格の上昇を通じたインフレ加速に繋がり、新興国経済に悪影響を及ぼすおそれがある。新興国の中央銀行は、需給のひっ迫、資源高、通貨安等により高進するインフレ対策と通貨防衛のため、政策金利を引上げており、景気への影響が懸念材料となっている。過去の金融危機等の経験を踏まえ、多くの新興国では、外貨準備の積み増し等を実施してきており、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)が改善していることで、大規模な資金流出圧力は抑制され、現段階では影響は限定的なものに留まっている。他方、ロシアのウクライナ侵略による食料・エネルギー価格高騰やそれを契機とした経済社会の不安定化や政情不安の懸念もあり、不確実性が増加している。
      4. 第4節.世界における政府・民間債務の急増
        • 世界の債務残高は、金融危機後、景気変動と連動しつつ長期金利の持続的な低下傾向を背景に増加しており、コロナ禍において更に増加した。政府債務は、コロナ禍における大規模な経済対策等の政策要因により、顕著に増加しており、企業債務は、コロナ禍の資金繰り対応等から増加している。家計債務は、コロナ禍の経済的苦境に加え、住宅ローン要因で増加している。今後、各国中央銀行の金融政策正常化がインフレ抑制のために急速に進んでいけば、債務負担が増大する可能性があり、インフレや金利の動向に注視する必要がある。
    2. 第2章.世界経済の動向と中長期的な経済成長に向けた取組
      1. コロナ禍からの正常化を見据えた世界経済の動向
        • 世界経済は、ウクライナ情勢に伴う供給制約や資源価格高騰によるインフレ高進等の下方リスクがあり、先行き不透明感が残るものの、コロナ禍からの正常化の進展が見込まれる。正常化過程における注目点として、コロナ禍でのオンラインビジネスの急速な拡大と根強い対面需要、偶発債務を含めた政府債務の動向、製薬業等のクロスボーダーM&A件数の増加といったビジネス機会を捉えた国際投資の動向、地域間の経済回復ペースの差異による貿易偏在の影響、テレワーク浸透などの働き方の多様化の進展が不動産市場の住宅・オフィス需要に与える影響、デジタルデバイドがもたらす人的資本の格差、高スキルと中・低スキルの労働者間にある雇用格差、経済のグリーン化が資源調達に与える影響、ビジネスダイナミズムの重要性が挙げられる。
      2. 第2節.米国経済の動向
        • 米国では、巨額の財政措置により消費が喚起され、コロナ禍からの経済回復が進行している。経済活動再開に伴って、失業率が改善しており、コロナ不況後の急激な求人増を受けて、労働条件を見直す動きから自主退職者が増加する「大交渉時代」となっている。また、無店舗小売業を中心に起業申請数がコロナ前より高水準で推移するなど、労働市場の構造変化を示唆する動きも見られる。さらに、歴史的水準でインフレが進行しており、FRBはインフレ抑制を最優先課題としている。インフレ高止まりの中、人手不足や物価上昇を映じて名目賃金は上昇するも、実質賃金はマイナスで推移しており、今後の経済成長を下押しする可能性がうかがえる。
      3. 第3節.欧州経済の動向
        • 欧州経済は、大規模な財政措置にも支えられ回復基調にあるものの、ロシアのウクライナ侵略により、エネルギーを中心に大幅なインフレに直面しており、先行きは不確実性が高い。
        • EUは、欧州経済の復興のため、グリーンとデジタルを中心的な柱とし、産業競争力の強化と域外国への依存度の低減を目指し、戦略的自律を強調した産業政策を展開している。同時に、気候変動・人権等の共通価値に関するルールメイキングで先行し、新たなグローバルスタンダード構築にも注力している。
      4. 第4節.中国経済の動向
        • 2021年の中国経済は、年初に高い成長率を実現したが、年央から洪水、感染再拡大、電力不足、半導体不足、不動産規制、資源高等の様々な要因から3四半期連続で減速が続いた。2022年も、ゼロコロナ政策に伴う感染再拡大や不動産規制に伴う不動産市場の低迷のほか、上海等の大都市の厳しい防疫措置、ロシアのウクライナ侵略に伴う資源価格の高騰やサプライチェーンの混乱等から、減速が続いていくことが懸念されている。
        • 中国が中長期的に成長を継続する上で、多くの課題がある。人口動態は、2020年の人口センサスの合計特殊出生率1.3が国連の低位推計(同1.45)を下回っており、事態の深刻さを示唆している。国有企業には、効率性が低いにも関わらず大きな資源が投入されているとの指摘がある。政府補助金は、中国製造2025の10分野を中心に、国有企業に限らず、民営企業を含め幅広い企業に支給されており、赤字の補填や研究開発、設備投資に利用されている可能性もある。金融リスクも懸念材料で、非金融企業債務が高水準で、家計債務も急拡大しており、地方政府財政は不動産関連収入に大きく依存している。不動産は規制もあり2021年後半から冷え込み、関連融資などのリスクも指摘されている。所得格差も依然として残り、「共同富裕」の方針が掲げられているものの、こうした課題に対して効果が期待される不動産税の実現には長い年月がかかると見られる。
        • このような中で、2022年3月の全国人民代表大会は、秋の共産党大会を意識し、経済の安定を最優先する方針を掲げた。2022年の経済成長率目標を5.5%前後として、その実現のため「積極的な財政政策」と「穏健な金融政策」を挙げているが、目標達成のためのハードルは高い。
      5. 第5節.インド・東南アジア経済の動向
        • 各国で「ゼロコロナ」から「ウィズ・コロナ」へとシフトする動きが見られる。海外からの入国制限の緩和も徐々に進み、これまで低迷を余儀なくされてきた観光関連業種の回復やビジネス人材の往来の本格再開により、貿易・投資活動の活発化等が期待される。今後は、ウクライナ情勢等によるインフレ圧力の高まり、米国の金融政策正常化の影響、中国における感染再拡大とそれに伴う経済活動の制限措置の影響等のリスク要因に注意が必要である。コロナ禍への対応に加え、コロナ後の成長を見据えた取組も重要であり、デジタル経済、デジタル技術を通じた第四次産業革命の推進、投資促進といった経済の高付加価値化・産業高度化、気候変動問題への対応などサステナビリティの実現を大きな軸として、中長期的課題への取組の進展が期待される。我が国もアジアのパートナーとして、アジアと一体となって持続的成長を実現していくことが期待される。
    3. 第3章.世界経済の長期的展望
      1. 長期の人口動態と経済成長
        • 国の産業構造や経済発展の動向には様々な要因が影響しており、天然資源は人為的に変えることができない要因である一方、人口は、出産・育児に関する給付金や移民政策等の政策対応によって一定の影響が与えられる重要な要因の一つである。世界人口は、国連中位推計では増加が長期的に継続するが、2065年にピークという他機関での試算もあり、出生率のすう勢的な低下に左右される。コロナ禍は、現時点で近年の出生率減少傾向に拍車を掛けているわけではないが、出会いの機会や雇用・所得の減少を通じて、家族計画に影響する可能性もある。
        • 人口構成においては二つの主要な指標があり、それらは労働力人口比率と高齢化率である。労働力人口比率の上昇で、限界消費性向が比較的高い年齢層の人口比率が高まることにより、耐久財需要の増加が見込まれる。また、高齢化率の上昇は、潤沢な金融資産を保有する購買力の高い年齢層の人口比率が増えることにより、高齢層の消費市場(シルバーマーケット)形成が注目される。当面の人口増加により、中国やインドを中心とした発展途上国ではメガシティが増加し、メガシティ未満の大都市も大部分が発展途上国から出現する。
        • そうした大規模都市の持続的な発展を支えるためのインフラ整備は、2020-30年に38兆ドルの需要が推計されており、資金供給のために特に民間資金の活用が不可欠である。
      2. 第2節.グローバルで加速するトレンド
        • コロナショックを契機に、デジタル変革、地政学リスクの増大、共通価値の重視、政府の産業政策シフトという4つのトレンドがグローバルで加速している。これらは、今後の国際関係や世界経済の動向を左右し、企業経営に大きな不確実性を生み出すと共に、企業の付加価値の源泉に変化をもたらしている。
        • 特に、地政学リスクや共通価値に関しては、各国政府の国際ルール形成や政策ポジションの違いによってルールのブロック化が発生しており、それを受けた市場のブロック化も進行している。さらに、政府の産業政策強化の動きにより、米国、欧州など主要国・地域の特定セクター(航空宇宙、半導体、グリーン関連等)において大規模な市場が形成されており、立地国の政策ポジションによって企業の市場獲得の機会に違いが発生する可能性がある。
        • このような状況において、企業にとって、従来のコスト削減・低価格製品提供の重視から、差別化・高付加価値化や効率的なオペレーションに取り組むビジネスモデル・産業構造への変革を積極的に促し、企業の稼ぐ力を引き上げることが重要である。その上で、さらに、コロナ禍で加速した4つのトレンドを踏まえて、デジタル化による企業変革、政府が創出する需要の取り込み、経済安全保障・社会的インパクト・共通価値を中核事業における付加価値に転換するビジネスモデルへの変革まで促し、新しい資本主義における付加価値創造型のビジネスモデル・産業構造を実現させていくことが必要であろう。
  2. 第2部.経済構造・技術・地政学・価値観の変化に対応した通商の在り方:課題と機会
    1. 第1章.共通価値を反映したレジリエントなグローバルバリューチェーン
      1. 第1節.グローバルバリューチェーンの実態と課題
        • 世界では、経済連携協定を通じた関税引下げの動きとあいまって、輸送コストの小さい近隣地域内での中間財貿易を中心にグローバルバリューチェーンの展開が進んでおり、アジア域内では複雑な国際生産分業体制が構築されている。その中で日本は、中間財を供給する前方参加とともに、海外から中間財を受け取る後方参加も拡大させてきた。中国の対米輸出の中に日本の付加価値も含まれるが、部品サプライヤーの現地進出や現地地場企業の技術向上等を背景にシェアは低下している一方、日本の対米輸出における中国の付加価値シェアは急速に上昇している。近年、前方参加と後方参加の両面にわたって、地政学リスクやパンデミック、自然災害等による供給制約等など課題が顕在化している。このような課題に対して、日本の企業サイドでは、米中対立を見据えた生産拠点及び供給元の見直しや、中間財供給元が一部の国のシェアが大きいことから、供給元の多様化や現地化の動きなど、強靱なサプライチェーン構築への取組が見られる。
      2. 第2節.経済安全保障とサプライチェーンの強靱化
        • 米中間の技術覇権争いや、ロシアのウクライナ侵略といった地政学リスクの高まりのほか、新型コロナウイルス感染拡大もあって、世界で不確実性が増大する中、安全保障の対象範囲が経済・技術分野に急速に拡大している。こうした中、輸入依存度が高く、サプライチェーン途絶リスクの大きい重要品目等について、国内生産拠点の整備と海外生産拠点の多元化の両輪で、サプライチェーンの強靱化が進められている。機微技術や新興技術については、進展の著しさや保有主体の多様化により流出形態が多様化・複雑化しており、各国で輸出管理・投資規制の強化が進められているなど、経済安全保障要請が高まっている。
      3. 第3節.共通価値の可視化とサステナブルなグローバルバリューチェーンの構築に向けて
        • 近年、脱炭素・人権等のサステナビリティや包摂性に関する「共通価値」への関心が高まっており、関連情報の把握・開示がサプライチェーンマネジメントの課題として要請されている。サプライチェーン全体の可視化、問題発生の予防、問題が発生した場合における適時・適切な対応が企業にとって重要な課題となっている。デジタル技術の活用はそのために有効であり、欧州で先行するデータ連携を参考に、日本とアジアが一体となった高度なサプライチェーンマネジメントの仕組みを構築し、アジア大のデータ共有基盤構築による価値創造につなげていくことが期待される。
    2. 第2章.イノベーションによって変化する世界の貿易構造と経済成長の道筋
      1. テクノロジーと貿易
        • 様々な財・サービスの急速なデジタル化はデータを含めたデジタル貿易を拡大させており、アジアを中心に越境データフローが急増している。国内外でデータ収集を行う企業の生産性が高いことが確認されているが、一部の国ではデジタル保護主義の動きが強まっており、デジタル関連規制の動向を把握する重要性が増している。ロボットやAI等の新興技術は、効率化や価値創出を可能にする一方で、複雑化するルールや高度化する技術リテラシーへの対応が課題となっている。世界で国家間以上に国内の格差が高まる中、労働代替を目的とした新興技術の活用は、労働市場の二極化やスキル間格差の一因となり得るため、今後は人的資本投資や労働補完技術への研究開発投資のほか、時流の変化を見据えた雇用・教育体系の見直しも重要となる。
      2. 第2節.アジア大のスタートアップによる新しい経済機会の創出
        • スタートアップは、その急激な成長によってマクロ経済の成長をけん引し、将来の雇用、所得、財政を支える新たな駆動力となり得る。米国・中国のほか、インドや東南アジア等のアジア新興国においてもスタートアップが大規模な資金調達を行ない、急速に成長している。特にアジア新興国のスタートアップ、プラットフォームビジネスは、規模の優位性のみならず、デジタル技術による社会課題解決や、対象市場の地域・顧客特性に合わせたテーラーメイドの多様な事業戦略を展開し、市場を獲得している。アジアのデジタル経済が大幅に拡大する中、アジアの成長ポテンシャルを取り込むべく、日本もDX支援等を通じたアジアのスタートアップとの協業やデータ連携の取組など、アジアとの共創による新しい経済機会の創出を図っていくことが求められる。DDFTの確保のほか、日本がアジアの共創パートナーとして選ばれるよう、日本国内のグローバル化、デジタル化、スタートアップをめぐる諸課題にも取り組んでいく必要がある。
      3. 第3節.無形資産と経済成長
        • IoTやロボット等の先端技術産業市場は、今後の急拡大が見込まれている。高い技術力が求められる市場で企業が活躍していくためには、機械設備等への投資のような有形資産投資だけではなく、従業員の能力を高めていくための人的資本投資や研究開発(R&D)等を含む無形資産への投資の重要性が高まってくる。主要先進国の無形資産投資の動向を比較すると、我が国の特徴としては、R&Dが無形資産に占める割合が高い一方で、人的資本及び組織改革投資の割合が低位であることが挙げられる。R&Dへの無形資産投資比率の高さは、我が国の製造業の多様性の維持に寄与していると見られるものの、労働生産性を高めていくためには、人的資本を含めた他の無形資産への戦略的な投資が重要となる

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