リスク・フォーカスレポート

コンプライアンスやリスク管理に関するその時々のホットなテーマを、現場を知る
危機管理専門会社ならではの時流を先取りする鋭い視点から切り込み、提言するコラムです。

ソーシャルメディアリスク編 第三回(2013.11)

1.青少年のインターネット・リテラシー調査

 総務省は、青少年のインターネット・リテラシーに関する実態調査を実施し、9月3日、結果概要を「平成25年度青少年のインターネット・リテラシー指標等」として公表した。

 これは、全国の高等学校1年生相当(約3,500名)に対し、インターネット・リテラシーを測るテストをアンケートとともに行い、結果を集計・分析して発表したものである。

▼総務省「平成25年度青少年のインターネット・リテラシー指標等」の公表

 本調査結果によると、スマートフォン保有者は全体の84%と昨年度(59%)より大幅に上昇しており、インターネットに接続する際、最もよく利用する機器についても、スマートフォンが全体の75%と昨年度(48%)から大幅に上昇している。一方で、アプリケーションを経由した情報漏洩の危険性を認知していない青少年が全体の33%存在している。

 また、青少年全体のテストの正答率は69%で、昨年度(67%)より2ポイント上昇している。これを、「最もよく利用するインターネット接続機器」別に整理すると、PCをよく利用する青少年の正答率が最も高く(73%)、これに対し、スマートフォンをよく利用する青少年の正答率は相対的に低く(68%)、そのうちスマートフォンのみを保有している青少年の正答率はさらに低い(64%)傾向があることがわかった。

 前掲の「スマートフォン保有者」と「スマートフォンを最もよく利用する機器」とした回答がともに昨年度から大幅上昇していることを考慮すると、73%と64%の正答率の差が9ポイントもあるとみるか、9ポイントにおさまったとみるかは、見解のわかれるところであろう。

 ただ、総務省では、スマートフォンは手軽にインターネットに接続できる一方で、特に高いリスク認識・対応能力のないまま利用している傾向があるとしており、インターネットを安全に安心して活用するためには、特にスマートフォンに関するリテラシーの向上が急務であると言及している。

 そこから、正答率の高低と「アプリケーションを経由した情報漏洩の危険性の認知」等の高低は相関していないか、あるいは誤答率の大半を占めているのが「同危険性の非認知」等なのかということが推測される。そうであれば、何れにしろ”リテラシーの向上”という方向性に繋がることは間違いない。

2.インターネット利用傾向の調査

総務省は、「平成25年度青少年のインターネット・リテラシー指標等」において、青少年がインターネットを安全に安心して活用するためのテストアンケートとして「ILAS:InternetLiteracyAssessmentindicatorforStudents:アイラス」を用いている。

▼総務省「平成25年度青少年のインターネット・リテラシー指標等」

①インターネット上の違法コンテンツ、有害コンテンツに適切に対処できる能力

②インターネット上で適切にコミュニケーションできる能力
(電子商取引の問題、利用料金や時間の浪費を含む)

③プライバシー保護や適切なセキュリティ対策ができる能力

 この3ポイントに関するテスト結果では、相対的に「違法情報への対応」、「料金や時間の浪費への配慮」については高い得点が出ている。それに対してネットオークションやゲームの課金等におけるオンライン決済ついての基本的な事項である「商取引」や、適切なウィルス対策に関する適正な知識・対応を指す「セキュリティリスク」は低く出ている。前年よりは改善されているものの、「商取引」「セキュリティリスク」について啓発が必要であると考えられる。

 また、ユーザー層別の結果では下記のような傾向が確認できる。

①スマートフォンをよく利用する人はリテラシーが低く、パソコンをよく利用する人はリテラシーが高い

②トラブルに遭遇した経験のある青少年のリテラシーが高い

③家庭で話し合いをしている青少年のリテラシーが高い

 一つ目に挙げた「スマートフォンをよく利用する人のリテラシーが低い」ということが、メディアでは話題となり、よく「スマホ世代はネットの危険性に対する認識が甘い」と報道された。しかし、スマホネイティブ(デジタルネイティブ)世代はインターネットの体験がスマートフォンからスタートして、それまではネットを使ったことがなかった層である。故に、ネットの危険性に対する理解や認識がないものと考えられる。つまり、インターネットの危険性を十分熟知しないままに、同様の危険性を内包するスマホを手軽な機器として獲得してしまったということになる。

3.親の気持ち

 トレンドマイクロは、小学4年生から中学3年生の保護者412名を対象とした「小・中学生のインターネット利用に関するセキュリティ調査」というアンケートを実施した。

▼トレンドマイクロ「子供の安全、安心なインターネット利用のために~セキュリティ教育における課題と対策~」

 その結果は、「お子様にSNS(facebook、mixi、LINEなど)を利用させたいと思いますか?」という質問に対し、「利用させたくない」という保護者が38.3%、「どちらかというと利用させたくない」が49.8%となっている。合わせると88.1%、約9割の保護者が「子供にSNSを利用させたくない」と考えている。

【子供のインターネット利用に対して保護者が不安に思うこと】

      • 意図しない課金サービス(サイト・アプリ・ゲームなど)の利用58.3%
      • 有害サイト(アダルト、出会い系、違法行為の勧誘サイトなど)や不適切(性的行為などをイメージさせる画像など)な画像の閲覧57.3%
      • 個人情報の漏洩(掲示板やSNSに氏名、学校名、住所、電話番号などを書き込むなど)50.2%
      • ウイルス感染43.7%
      • (出会い系、アダルト系などの)迷惑メールの受信43.4%

 保護者は子供のスマートフォン・PC利用に不安を持ち、かつリスクの内容も大枠のところは把握しているが、”大枠”故に、実際の安全対策は手薄である。

 SNSにおける情報の公開範囲などのプライバシー設定や確認については、チェックしている保護者は半分程度であり、残りはチェックせずに子供に使わせているという結果が出ている。また、個人情報をオープンにしない設定にしているかを確認していない。そもそも、子供が使っているアプリやサイトが何なのか、知らない保護者もいる。

 以前のように「子供がネットに触れるのはパソコンのみ」という時代なら、まだ保護者がチェックすることも可能であったが、現在では、親が知らない方法で、アプリやサービスを使ってインターネットに触れられる環境が整っている。青少年がネットを介した事件・事故への被害者や加害者にならないよう、保護者、学校ともにネットリテラシーの向上に向けた教育・啓発が急がれる。

 しかし、昔とて親が子供のしていることを全て把握していたわけではないことも事実である。ただ、昔以上に親子間のコミュニケーションや学校との相互理解が縦横になってきているとの認識が不可欠である。スマホを買い与えないという究極の選択を取れない以上、尚更である。

4.いじめ防止対策推進法

 2013年6月に国会で成立した「いじめ防止対策推進法」が9月28日に施行されたことを受けて、文部科学省は法律の具体的な運用方法などを示した「いじめ防止基本方針」(10月11日付)を全国の教育委員会などに通知した。同方針により、同法に基づくいじめ防止対策が各学校で取られることになる。

主な内容としては、

①重大ないじめが発生した際の文部科学省への調査報告を学校や自治体に義務付け

②学校に教職員や心理・福祉の専門家による組織を常設

③最近悪質化しているインターネットを利用したいじめ・中傷への対策などを推進

 などが挙げられる。

 特に③に関しては、青少年のインターネット利用の増加に起因する。平成23年度の内閣府の調査によると、青少年の携帯電話の所有率は、小学生で約2割、中学生で4割台後半、高校生では9割台後半となっており、高学年に近づくほど携帯電話の所有は当たり前となっている。このうち、携帯電話を所有する青少年のうち、小学生の7割半、中高生のほとんどがインターネットを利用している。

▼内閣府「平成23年度「青少年のインターネット利用環境実態調査」結果について】

 また、東京都教育委員会の発表によると、東京都の約5分の1の学校に「学校裏サイト」が存在するとしている。しかも、最近ではFacebookやLINEなどSNSを利用したものも出現しており、その中身は特定の生徒を実名で中傷するなど、かなり悪質なものが存在する。

5.学校裏サイト

 東京都教育委員会は11月15日、2013年10月の都内公立学校裏サイトの監視結果を公表している。

▼東京都教育庁「学校非公式サイト等の監視結果について(平成25年10月)」

 10月は巡回監視実施校数727校のうち、学校裏サイトが検出された学校数は、145校(小学校7校、中学校80校、高校58校、特別支援学校)。検出された不適切な書き込み総数872件の内訳は「自身の個人情報」722件、「他人の個人情報」23件、「誹謗中傷」14件、「虐待・暴力被害、飲酒・喫煙等の不適切行為」113件であった。「自殺・自傷」は0件だった。

※9月の監視結果

 巡回監視実施校数726校、学校裏サイトが検出された学校数142校、検出された不適切な書き込み「自殺・自傷」1件、「自身の個人情報」710件、「他人の個人情報」8件、「誹謗中傷」10件、「不適切行為」116件であった。

▼東京都教育庁「学校非公式サイト等の監視結果について(平成25年9月)】

※8月の監視結果

 巡回監視実施校数726校、学校裏サイトが検出された学校数125校、検出された不適切な書き込み、「自殺・自傷」0件、「自身の個人情報」729件、「他人の個人情報」12件、「誹謗中傷」4件、「不適切行為」135件。

▼東京都教育庁「学校非公式サイト等の監視結果について(平成25年8月)】

 常態化しつつあるネット上の「いじめ」にどう対応していくべきか、まずは実態を監視した上で、行政だけなく、学校、サイトを提供する企業、父兄の間で検討・協力していく必要がある。

※インターネット依存傾向の調査

 弘前大学教育学部によると高校生より中学生の方が、インターネットへの依存傾向が高いことが分かったという。

 インターネットの1日の平均利用時間は、6時間以上が、高校生が4.5%、中学生が6.9%だった。また、3~6時間は高校生24.3%、中学生22%。

▼弘前大学教育学部「ネット・ケータイ問題」研究プロジェクト「小・中学生のゲーム機によるネット利用の実態調査」

6.インターネットいじめ

 インターネット上でのいじめは、掲示板やブログを利用した不特定多数が閲覧するサービスの特徴を活かした「匿名による特定個人への誹謗中傷」「特定の個人情報掲載」「特定個人へのなりすまし」が挙げられる。

 また、メールを利用した匿名による脅迫メッセージ(死ね。うざい、消えろ等)送付やSNSを利用した特定の人の投稿にだけ「いいね」しない、「シェア」しない。あるいは、いじめの暴力シーンなどを動画で撮影し「シェア」する。さらには、いじめ対象の本人になりすまし、猥褻な行動を投稿する等といった悪質なものまである。

 学校裏サイト等への対策手法としては、青少年や保護者へのネットリテラシーの啓蒙活動の活発化やサイトの監視、サイト閲覧をブロックするURLフィルタリングがあるが、本質的な対策とはいえない。手法は手法として取らねばならないが、その前に近年の教師へのプレッシャーの増大や多忙すぎる状況、それと表裏一体をなして見ぬふりをする態度、あるいは学校の隠蔽体質などの問題は避けて通ることはできない。

 また、青少年の有害サイト問題は、大人のサイト利用問題の状況にも大きく影響を受けている。多くの学校非公式サイトが一般の大型掲示板のスレッドの構成部分という形をとる可能性もある。インターネットの匿名性を利用して子供のふりをして子供向けサイトに書き込む大人の存在、モラル無視で青少年を金儲けのターゲットにしている悪徳業者の存在という社会的背景も見逃せない。

 特に、特定学校裏サイト等に張られているネット広告の中には、ネット風俗など青少年健全育成の従来の基準からすれば、有害な宣伝・広告が圧倒的に多い。青少年向け雑誌などマスメディアにおける有害広告問題と同様の視点で、青少年向け受発信メディアとしての学校非公式サイトにおける広告問題を捉えていく必要がある。

 青少年のソーシャルメディアや、学校裏サイト利用に関する問題点は、この種のサイトの提供業者や不適切広告出稿業者などの存在等、社会や大人のモラルに直結している。普通の企業においても、自社広告の出向先サイトのチェックや想定外の広告利用のされ方などに対し、常に目を光らせていなければならない。悪質企業を退出させるアイデアも考えていかなければならないだろう。

 また、学校裏サイトやソーシャルメディアを利用したインターネット上のいじめは、ネットを介さない従来のいじめの実態の把握を十分した上で、リアルとネット上での入れ替わりや相互補完のメカニズムなどを注意深くウォッチしていく必要がある。

 もっと言えば、いじめる側の心理やいじめる側が何時いじめられる側に回るか分からない構造、さらに両者ともに対するメンタルケアなど複層的なセーフティネットの準備と、子供たちに対する十分な人権教育を社会的に推進していかなければならないのである。

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