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  • 業界団体との意見交換会において金融庁が提起した主な論点(金融庁)/令和4年版犯罪白書(法務省)/令和4年版再犯防止推進白書(法務省)/国家安全保障戦略(内閣官房)/第110回新型コロナ対策アドバイザリーボード(厚労省)/OECDデジタル経済に関する閣僚会合(総務省)

危機管理トピックス

業界団体との意見交換会において金融庁が提起した主な論点(金融庁)/令和4年版犯罪白書(法務省)/令和4年版再犯防止推進白書(法務省)/国家安全保障戦略(内閣官房)/第110回新型コロナ対策アドバイザリーボード(厚労省)/OECDデジタル経済に関する閣僚会合(総務省)

2022.12.19
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更新日:2022年12月19日 新着24記事

会議の様子

【新着トピックス】

【もくじ】―――――――――――――――――――――――――

金融庁
  • 業界団体との意見交換会において金融庁が提起した主な論点
  • 「ESG評価・データ提供機関に係る行動規範」の公表について
  • 金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第4回) 議事次第
  • 金融審議会「事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ」(第3回)議事次第
  • 「サステナブルファイナンス有識者会議」(第15回)議事次第
法務省
  • 令和4年版犯罪白書
  • 令和4年版再犯防止推進白書(令和3年度再犯の防止等に関する施策)
内閣官房
  • 国家安全保障戦略について
  • 第7回 教育未来創造会議ワーキング・グループ 配布資料
厚生労働省
  • 第110回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年12月14日)
  • 令和4年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します
  • 「新たな児童虐待防止対策体制総合強化プラン」を決定しました
経済産業省
  • 令和3年度消費者相談報告書をまとめました
  • 「産業のGXに向けた資金供給の在り方に関する研究会 施策パッケージ」を取りまとめました
総務省
  • 新潟県村上市で発生した工場火災に係る消防庁長官の火災原因調査 中間報告の公表
  • 大阪市北区ビル火災を踏まえた避難行動に関するガイドラインの公表
  • OECDデジタル経済に関する閣僚会合の結果
国土交通省
  • 大阪市北区ビル火災を踏まえた火災安全改修に関するガイドラインの公表
  • 小型旅客船のハッチカバーの確実な閉鎖等を指導します。~知床遊覧船事故に関する運輸安全委員会からの経過報告を踏まえた対応~
  • 河川氾濫による浸水の頻度を見える化(国管理河川)~水害リスクマップ(浸水頻度図)のポータルサイトを開設~

~NEW~
警察庁 犯罪統計資料(令和4年1~11月分)
  • 令和4年1月~11月の刑法犯総数について、認知件数は549,884件(前年同期521,044件、前年同期比+5.5%)、検挙件数は230,751件(244,561件、▲5.6%)、検挙率は42.0%(46.9%、▲4.9P)
  • 粗暴犯の認知件数は48,108件(45,494件、+5.7%)、検挙件数は39,969件(39,839件、+0.3%)、検挙率は83.1%(87.6%、▲4.5P)
  • 窃盗犯の認知件数は373,841件(351,011件、+6.5%)、検挙件数は137,149件(149,759件、▲8.4%)、検挙率は36.7%(42.7%、▲6.0P)
  • 万引きの認知件数は76,698件(79,387件、▲3.4%)、検挙件数は53,877件(58,541件、▲7.9%)、検挙率は70.3%(73.7%、▲3.4P)
  • 知能犯の認知件数は36,461件(32,458件、+12.3%)、検挙件数は17,077件(17,388件、▲1.8%)、検挙率は46.8%(53.6%、▲6.8%)
  • 詐欺の認知件数は33,367件(29,449件、+13.3%)、検挙件数は14,566件(14,978件、▲2.8%)、検挙率は43.7%(50.9%、▲7.2P)
  • 特別法犯総数について、検挙件数は61,647件(65,100件、▲5.3%)、検挙人員は50,672人(53,242人、▲4.8%)
  • 入管法違反の検挙件数は3,790件(4,494件、▲15.7%)、検挙人員は2,806人(3,272人、▲14.2%)、軽犯罪法違反の検挙件数は7,042件(7,557件、▲6.8%)、検挙人員は6,992人(7,591人、▲7.9%)、迷惑防止条例違反の検挙件数は8,878件(7,909件、+12.3%)、検挙人員は6,775人(6,032人、+12.3%)、犯罪収益移転防止法違反の検挙件数は2,865件(2,335件、+22.7%)、検挙人員は2,392人(1,892人、+26.4%)、不正アクセス禁止法違反の検挙件数は487件(332件、+46.7%)、検挙人員は156人(124人、+25.8%)、不正競争防止法違反の検挙件数は59件(71件、▲6.8%)16.9%)、検挙人員は74人(73人、+1.4%)、銃刀法違反の検挙件数は4,657件(4,733件、▲1.6%)、検挙人員は4,111人(4,061人、+1.2%)、麻薬等取締法違反の検挙件数は941件(834件、+12.8%)、検挙人員は559人(470人、+18.9%)、大麻取締法違反の検挙件数は5,950件(6,206件、▲4.1%)、検挙人員は4,718人(4,911人、▲3.9%)、覚せい剤取締法違反の検挙件数は7,806件(10,380件、▲24.8%)、検挙人員は5,420人(7,020人、▲6.8%)22.8%)
  • 来日外国人による 重要犯罪・重要窃盗犯 国籍別 検挙人員 対前年比較について、総数549人(581人、▲5.5%)、ベトナム172人(215人、▲20.0%)、中国90人(92人、▲2.2%)、ブラジル36人(41人、▲12.2%)スリランカ35人(16人、118.8%)韓国・朝鮮20人(16人、+25.0%)、フィリピン19人(32人、▲40.6%)、パキスタン18人(6人、200.0%)、インド12人(17人、▲29.4%)
  • 暴力団犯罪(刑法犯)罪種別 検挙件数・検挙人員 対前年比較の刑法犯総数について、検挙件数は10,112件(11,338件、▲10.8%)、検挙人員は5,614人(6,367人、▲11.8%)
  • 暴行の検挙件数は566件(666件、▲15.0%)、検挙人員は558人(632人、▲11.7%)、傷害の検挙件数は932件(1,066件、▲12.6%)、検挙人員は1,052人(1,275人、▲17.5%)、脅迫の検挙件数は334件(346件、▲3.5%)、検挙人員は342人(339人、+0.9%)、窃盗の検挙件数は4,888件(5,597件、▲12.7%)、検挙人員は770人(948人、▲18.8%)、詐欺の検挙件数は1,707件(1,703件、+0.2%)、検挙人員は1,306人(1,404人、▲7.0%)、賭博の検挙件数は49件(57件、▲14.0%)、検挙人員は146人(130人、+12.3%)
  • 暴力団犯罪(特別法犯)主要法令別 検挙件数・検挙人員 対前年比較の特別法犯総数について、検挙件数は5,007件(6,675件、▲25.0%)、検挙人員は3,408人(4,552人、▲25.1%)、入管法違反の検挙件数は17件(17件、±0%)、検挙人員は24人(21人、+14.3%)、軽犯罪法違反の検挙件数は66件(85件、▲22.4%)、検挙人員は60人(75人、▲20.0%)迷惑防止条例違反の検挙件数は82件(107件、▲23.4%)、検挙人員は72人(97人、▲25.8%)、暴力団排除条例違反の検挙件数は18件(37件、▲51.4%)、検挙人員は42人(87人、▲51.7%)、銃刀法違反の検挙件数は103件(116件、▲11.2%)、検挙人員は69人(87人、▲20.7%)、麻薬等取締法違反の検挙件数は163件(134件、+21.6%)、検挙人員は66人(47人、+40.4%)、大麻取締法違反の検挙件数は932件(1,121件、▲16.9%)、検挙人員は543人(710人、▲23.5%)、覚せい剤取締法違反の検挙件数は2,926件(4,229件、▲30.8%)、検挙人員は1,953人(2,806人、▲30.4%)、麻薬等特例法違反の検挙件数は139件(147件、▲5.4%)、検挙人員は70人(84人、▲16.7%)

~NEW~
内閣府 男女共同参画局 男女共同参画会議(第68回)議事次第
▼資料1 「新しい資本主義」を見据えた男女共同参画・女性活躍の更なる推進に向けて
  • 「新しい資本主義」の中核には、女性の経済的自立が位置付けられている。男女間賃金格差の是正や、女性に多い非正規雇用労働者の待遇改善や多様な正規雇用の在り方等による正規化促進、男女問わず仕事と子育てを両立できる環境の整備など、女性の経済的自立に向けた取組の更なる強化を図る必要がある。
  • 女性を含め多様性の確保は企業の持続的成長、ひいては日本経済の成長にとって成功の鍵となるものである。女性がスキルアップしながら同時にキャリアアップできる環境を早急に整備することが必要である。
  • 女性の経済的自立を全国津々浦々で実現するためには、地域レベルの取組を更に強化していくことが重要である。女性デジタル人材や女性起業家の育成など、地方公共団体による女性活躍の様々な取組を強力に後押ししていく必要がある。
  • 配偶者等からの暴力(DV)は個人の尊厳を害する重大な人権侵害であり、その防止と被害者の保護は、男女共同参画・女性活躍の前提である。近年、DVの相談件数等が増加する中、精神的DVにより心身に重大な被害が生じた例も報告されている。このような現状等から、現行制度(DV法に基づく保護命令)の強化や生活再建支援等の必要性が指摘されるなど、DV対策の抜本強化が必要となっている。
  • 様々な国際協調の枠組みにおいて、ジェンダー平等の観点をあらゆる政策や制度に反映する「ジェンダー主流化」の重要性が共有されている。来年、我が国が議長国を務めるG7広島サミット及び関係閣僚会合においても、こうした国際的な潮流に合わせ、更に発展させていくために、ジェンダーの視点を取り入れていく必要がある。
▼資料2 配偶者暴力防止法の改正に向けて
  • 「配偶者暴力防止法見直し検討ワーキング・グループ報告書~DV対策の抜本的強化に向けて~」(令和4年10月女性に対する暴力に関する専門調査会・配偶者暴力防止法見直し検討ワーキング・グループ)を踏まえ、配偶者暴力防止法の見直しについて、来年の通常国会への提出も念頭に、以下を基に更なる検討を進める。
    1. 保護命令制度の拡充等
      1. 接近禁止命令等の申立てをすることができる被害者の範囲の拡大等
        • 配偶者からの暴力は、加害者が自己の従属を強いるため等に暴力を用いるという性格を踏まえ、接近禁止命令等の申立てをすることができる被害者について、「被害者を畏怖させる言動」である自由、名誉又は財産に対する加害の告知による脅迫を受けた者を追加する。
        • 要件である「身体に重大な危害を受けるおそれ」を「心身(心と体)に重大な危害を受けるおそれ」に改める。
      2. 接近禁止命令等の期間の伸長
        • 接近禁止命令の期間を現行の「6月」から「1年」に伸長する。
      3. 電話等禁止命令等における禁止行為の拡大
        • 禁止行為に、緊急時以外の連続した文書の送付・SNS等の送信注、性的しゅう恥心を害する電磁的記録の送信、位置情報の無承諾取得を追加する。 注:SNS等については、緊急時以外の早朝深夜(午後10時~午前6時)の送信も対象
      4. 子への電話等禁止命令の創設
        • 被害者と同居する未成年の子への接近禁止命令の要件注を満たす場合について、子への電話等禁止命令を創設する。(注:被害者への接近禁止命令の要件のほか、当該子に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため必要があることなど。)
      5. 退去等命令の期間の特例の創設
        • 被害者が住居の所有者又は賃借人が被害者のみである場合には、申立てにより6か月(原則は2か月)とする特例を創設する。
      6. 保護命令違反に関する罰則の加重
        • 罰則を2年以下の懲役又は200万円以下の罰金(現行は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)に加重する。
    2. 基本方針及び都道府県基本計画の記載事項の拡充
      • 国が定める基本的な方針及び都道府県が定める基本的な計画について、①被害者の自立支援のための施策、②国・地方公共団体及び民間の団体の連携・協力を必要的記載事項とする。
    3. 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する協議会の法定化
      • 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する協議会を法定化し、都道府県に協議会を組織する努力義務(市町村も協議会を組織できる)、情報交換の円滑化等を図るため、協議会の事務に関する守秘義務等を創設する。
        • ※上記のほか、民事訴訟手続のIT化等を踏まえ、保護命令手続に係る所要の規定等を整備する。

~NEW~
消費者庁 第1回「消費者力」育成・強化ワーキングチーム
▼【資料2-1】消費者トラブルの現状と消費者教育(全国消費生活相談員協会)
  • 訪問販売 布団類
    • 4か月程前から1人暮らしの私の家に布団の販売業者Aが訪問してくる。4月に敷布団の下に敷くカーペット2枚、5月に、かけ布団、肌掛け、シルク毛布、6月に光触媒ケット2枚とカバーリングを勧められ、これまで総額170万円の契約をした。すでに120万円は支払っている。先日、来訪した親戚がたくさんの布団を見ておかしいと言った。これまで同じような商品を別の訪販業者Bからも複数購入したが、Aが処分すると言って勝手に持ち帰った。解約できるか。(女性 70歳代)
  • 電話勧誘販売 占い師養成講座
    • 地元情報WEB掲示板で無料お試し占い相談の広告を見て申込み、2週間後にオンライン会議システムで行うことになった。その占い鑑定の後に、「占い師の時間講座を受ければ稼げるようになる」と勧誘された。画面越しに相手のSNSと友だち登録させられ、そのSNSで講座申込みサイトに誘導された。不審に思ったが、画面越しの相手が強引で怖さを感じて断れず、言われるまま6千円の講座をカード決済した。昨日、その相手にSNSで解約を申し出たら、拒否された。契約書は無い。(女性 30歳代)
  • 転売ビジネス
    • 大学生でコロナでバイトが減り生活が苦しくなった。友人から転売ビジネスで儲けているという話を聞き、会うことにした。転売ビジネスのノウハウを教えることで起業している大学生が同席し、儲けの証拠を見せられ、12万円払えばノウハウを教えると言われたので、貯金から支払った。転売ビジネスのノウハウを聞いたが儲かるとは思えなかった。結局は人を誘えばマージンが入ると言われた。マルチは大学で禁止されている。契約書面も領収書もない。連絡の手段はSNSだけだ。(女性 10歳代)
  • 副業セミナー
    • 18日前、SNSのフォロワーの女性から「自分がやっている化粧品を無料でもらって口コミを書く副業に興味はないか」とダイレクトメッセージが届き、別のSNSに誘われた。無料通話アプリで連絡があり、「商品がもらえる。口コミを見た人が商品を買うと収入になる」と言われた。また「7万円でセミナーを受けると商品の手配も全て会社がしてくれる。月20万円の収入が見込める」と誘われ契約した。セミナー代金はクレジットカードで分割払いにした。オンラインでセミナーを受けたが、口コミの副業についてではなく、人をどのように誘導して契約させるかという内容で、自分が誘われた経緯そのままだった。不審なので解約したい。書面は受領していない。(女性 20歳代)
  • 健康食品 化粧品
    • 1週間前にマッチングアプリで知り合った男性から、食事に誘われた。副業で稼げる方法がある、話を聞いてみないかと誘われ、事務所に連れて行かれ、健康食品や化粧品のネットワークビジネスの説明を受けた。知人を紹介すると数万円の紹介料が入る、やれば自信が付くと言われ、自分に自信をつけたくて契約した。親に見つかると困ると言ったところ契約書を預かると言われた。約5万円の登録料は払ったが、他に30万円必要と言われ、払えないと断ると消費者金融で借りるように指示された。(女性 20歳代)
  • 注文とは異なる商品の勧誘
    • 膝サポーターの折り込みチラシを見て、電話で注文した。オペレーターから「関節に良いサプリメントを購入すれば、サポーターは無料になる」といわれた。意味が良くわからなかったが、買わないといけないのかと思い承諾した。5日後サプリメントとサポーターが送られてきたが、その翌月、またサプリメントが送られてきた。定期購入になると聞いた覚えはない。自分が欲しかったのはサポーターでサプリメントはいらないので解約したい。(女性 70歳代)
  • 定期購入 注文画面での契約内容の変更
    • 1か月前、ニュースアプリに、980円で購入でき、いつでも解約できる白髪染めシャンプーの広告が表示された。URLで公式サイトを開き、お試しボタンを押したら注文画面が開いた。そこに、トリートメントも同時に無料で試せるとあり「トリートメントも試す」ボタンを押して注文した。1回目の商品が届き、白髪染めシャンプーの代金980円を支払った。昨日、白髪染めシャンプーとトリートメントが各2本、合計4本届いた。コンビニ後払いで2万円の請求書が入っており、解約には解約料がかかると書いてある。トリートメントは定期購入であることすらわからなかった。納得できない。(女性 50歳代)
  • 動画投稿サイトのアフィリエイト広告による誘引 シャンプー
    • 動画投稿サイトで「頑固なくせ毛もサラサラに」「いつでも解約OK」「回数の縛りがない定期購入」と大きく書かれたシャンプーの広告を見た。定価6,000円のところ、初回は7割引きの1,800円だったので、その広告の【今すぐ在庫を確認】というところをタップし注文した。1回目が届き、1か月後には2回目が届いたので開封すると、商品が3個と18,000円の請求書が入っていた。2回目に3個まとめて発送するとは書かれていなかった。電話で問い合わせるが、何度かけてもまったくつながらない。信用できない業者なので2回目から解約したい。(女性 30歳代)
  • 無料通話アプリによる勧誘 情報商材
    • 動画投稿サイトで、「毎日5分の作業で簡単に儲かる」という広告を見つけた。情報料が千円だったので申し込んだところ、情報のURLが送られてきた。詳しく作業内容を電話で説明するので都合の良い時間を連絡するようにと記載されていたので、日時を指定したところ無料通話アプリで連絡があった。「実際の作業にはサポートが必要。10万円から30万円のコースがあるが、高いほうがサポート内容も充実し、儲かる額も大きくなる」というので30万円のコースを選んで現金を振り込んだ。その後、作業内容の説明書が送られてきたが、よくある転売ビジネスのことだった。とても儲かるとは思えないので全額返金してほしい。(女性 50歳代)
  • 動画による勧誘 副業マニュアル
    • 動画投稿サイトで暗号資産で稼げるサイトを見て、そのサイトにSNSの自分のアカウントを追加した。担当者から、紹介動画を見るようメッセージが届いた。動画は数十分程度のものが数種類あり、どれも「詳しくは副業マニュアルを買ってからわかる、必ず儲かる。儲かって豊かな暮らしをしている」というものだった。担当者から指示された業者にクレジットカードで30万円を支払い、副業マニュアルを購入した。マニュアルを読んだが、業者に暗号資産を買ってもらい投資してもらう話のようだ。ネット検索したら業者は無登録だった。返金してほしいが担当者と連絡が取れない。(男性 40歳代)

~NEW~
国民生活センター 子どもを乗せた自転車 転倒に注意
  • 内容
    • 事例1 自転車の前席と後席に子どもを1人ずつ乗せていた。自転車を停車して、前席に子どもを乗せたまま、後席から子どもを降ろしたところ、自転車ごと右側に倒れ、前席の子どもが座席から落ちてしまった。顔面を打撲し、鼻やあごに擦り傷を負った。(当事者:3歳)
    • 事例2 電動自転車の幼児用座席に子どもを乗せたまま、短時間、自転車を離れた。その間に子どもが自転車の上で立ち上がってしまい、自転車ごと倒れた。子どもはヘルメットを着用していたので、けがはなかったが危なかった。(当事者:1歳)
  • ひとことアドバイス
    • 子どもを自転車に乗せる前にヘルメットを着用させ、乗せた後はシートベルトを締めましょう。
    • 前後の幼児用座席に子どもを2人乗せるときは、転倒防止のため「乗せるときは後席から」「降ろすときは前席から」の順番を守りましょう。
    • 子どもの乗せ降ろしの際にはハンドルが真っすぐ前を向いていること、自転車が横方向に傾いていないことなどを確認しましょう。
    • 停車する際は傾きや凸凹のない平らな場所に停車し、自転車に子どもを乗せたまま自転車から離れないようにしましょう。

~NEW~
金融庁 業界団体との意見交換会において金融庁が提起した主な論点
▼主要行等
  • 金融機関の業務・手続きにおけるFAXの利用の見直しについて
    • 現在、政府において、テレワークの推進や業務効率化を図る観点から、FAXの利用廃止に向けた見直し等含め、オンライン化に向けた対応を進めている。
    • こうした動きも踏まえ、先般金融庁から要請文を発出したとおり、各金融機関においては、FAXを利用している業務・手続きについて、国の行政機関との対応に限らず、業務・手続き全般について、積極的にFAX利用の見直しを行うなど、より一層の業務・手続きのオンライン化に向けた対応を検討いただきたい。
  • 外国人顧客の口座開設等について
    • 2022年10月に入国者数の上限撤廃等の水際対策のさらなる緩和が行われ、国際的な人の往来が活発化するとともに、外国人への銀行口座開設等の金融サービスの提供につき顧客ニーズがさらに高まることが予想される。
    • そうした中、金融庁の金融サービス利用者相談室にも、外国人顧客への金融サービスにつき、特に下記の「外国人顧客対応にかかる留意事項」の一部事項に関して、金融機関による適切でないと考えられる対応についての情報が利用者から寄せられている。
      • (参考)「外国人顧客対応にかかる留意事項」(令和3年6月、抜粋)
      • (顧客対応における留意点)
        • 窓口で口座開設等の手続を行う際、外国人顧客に対し、手続円滑化の観点から、事前記入による申込書等の提出を認めているか(自署欄を除く。)。
        • 外国人顧客が日本語で会話できない場合や日本語を書くことができない場合は一律に受付不可、といった対応を行っていないか。
        • 各種手続において、住所等については日本語での記載を必須とせず、ローマ字による記載を認めているか。
    • 各金融機関においては、これまでも、外国人に対する金融サービスの利便性向上に向けて様々な取組みを実施してきたものと承知しているが、業界団体及び各金融機関自らが、現場でどのような顧客ニーズや課題があるのかを把握・確認し、どのような取組みが必要であるかを継続的に検討するなど、PDCAを回していただくよう、改めてお願いしたい。その際、2021年6月に公表した「外国人顧客対応にかかる留意事項」や「取組事例」も活用しながら、継続的に創意工夫を積み重ねていただきたい。
    • また、水際措置の緩和に伴い、留学や海外勤務で日本を離れる日本人顧客も増加することが予想される。こうした顧客についても、外国人顧客と同様、利用可能なサービスについて分かりやすく説明するなど、丁寧な対応を行うよう併せてお願いしたい。
  • 国連安保理決議の着実な履行について(北朝鮮関連)
    • 2022年10月7日、国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会の専門家パネルが、2022年1月から7月にかけての国連加盟国による北朝鮮制裁の履行状況等の調査結果と国連加盟国への勧告を含む中間報告書を公表。
    • 同報告書では、
      • 北朝鮮が暗号資産関連企業及び取引所等へのサイバー攻撃を継続し暗号資産を窃取していること
      • 北朝鮮による石油精製品の不正輸入および石炭の不正輸出が継続していること
        等の事案概要や、必ずしも制裁対象ではないが、こうした事案に関与している疑義がある会社名や個人名、船舶の名前について記載。
    • 同報告書を踏まえ、各金融機関においては、サイバーセキュリティ対策を徹底していただくとともに、安保理決議の実効性を確保していく観点から、報告書に記載のある企業や個人、船舶については、
      • 融資や付保などの取引が存在するかどうかに関する確認
      • 取引がある場合には、同報告書で指摘されている事案に係る当該企業・個人等への調査・ヒアリングなどをしっかりと行った上で、適切に対応いただきたい。
  • 国内不動産向け与信に関するヒアリングについて
    • 2022年10月にかけて、大手銀行の不動産業向け貸出に係る貸出方針やリスク管理の状況等について、日本銀行と共同でヒアリングを行った。共同で行うのは初めてであったが、今後も日銀との連携を強化し、金融機関の負担軽減を図りたいと考えている。
    • 不動産業向け貸出残高は、ノンリコースローン等を中心に総じて増加基調にあるが、各行からのヒアリングでは、足元では、貸出基準が緩和的になっていることはなく、また、不動産業向け貸出ポートフォリオの質の劣化は見られず、与信コストの発生見込みは限定的であることが確認された。
    • 他方、不動産市場については足元で高値警戒感を指摘する声もあり、その動向は、物件の供給要因のほか、投融資主体の意欲といった需要要因に大きく影響されうる。目下急速に進行するグローバルな金融引き締めやそれに伴う金融環境の変化は様々な影響を及ぼしうるものであり、例えば、資金の逆流など我が国不動産市場に影響を与え、巨額の不動産業向けポートフォリオから与信コストが発生するリスクなどが考えられる。
    • 現に、各行とも、先行きのリスクとして、オフィス空室率上昇による賃料低下に加え、不動産市場で存在感の大きい海外投資家の資金流出などを認識していると聞いているが、今後とも、各行における予兆管理や、様々なシナリオ下での与信コストの発生見込み・財務への影響等について、継続的に意見交換したい。
  • 仕組債の組成コストの開示について
    • 国民が安定的な資産形成を行うためには、金融商品の組成・販売・管理等の各段階において、金融機関による顧客本位の業務運営を確保することが欠かせないと考えている。
    • 組成・販売段階に着目すると、仕組債については、組成や卸売を行う金融機関と、個人に販売を行う金融機関が別であるケースが多く存在する。この場合、顧客は、販売手数料だけでなく、組成や卸売に係るコストも実質的に負担していると承知。しかしながら、顧客に開示されているのは販売手数料のみであるケースが多く、顧客本位の観点からは、組成段階も含めた全てのコストが開示されることが望ましいと考えており、これまでも様々な場で、そうした問題意識を示してきた。
    • こうした中、組成側の金融機関によるコストの開示姿勢が十分ではない、という声がしばしば聞かれたことから、現在、外資系も含めた組成側の金融機関を対象に、販売側の金融機関に対する組成コストの開示への協力態勢について実態把握を行っている。金融庁としては、販売側の金融機関においても組成側の金融機関に対してコスト開示への協力を働きかけ、組成側の金融機関がそれに積極的に応えることが望ましいと考えており、業界全体の取組みを通じて、顧客の実質的なコスト負担の透明化が進むことを期待している。
    • なお、仕組債を取り扱う金融機関に対しては、これまでも、(1)経営陣において、仕組債の特徴(複雑な商品性を有しているため、顧客によっては理解が困難な上、実際にはリスクやコストに見合う利益が得られない場合がある点)を踏まえた上で取扱いを継続すべきか否かを検討しているか、(2)継続する場合にはどのような顧客を対象にどのような説明をすれば顧客の真のニーズを踏まえた販売となるのかを検討しているかといった点についてモニタリングを行うと申し上げてきた。現在、組成コストを開示しないまま、仕組債の販売を行っている金融機関も多数存在すると承知しているが、上記(2)との関係で、このような対応が自ら掲げる顧客本位の業務運営の取組方針に適合的なのか改めて十分に検討いただきたい。
  • 継続的顧客管理に係る丁寧な顧客対応について
    • 2020年10月、継続的顧客管理における顧客情報の更新に際して、顧客から苦情が寄せられる事例が複数見受けられたことから、丁寧な顧客対応をお願いしている。
    • しかしながら、依然として顧客対応が原因となってトラブルに発展した事例が複数あると聞いており、中には、窓口職員の説明に納得いただけない顧客への対応を、金融庁の金融サービス利用者相談室にその場で転送するような事例も認められている。
    • 各金融機関においては、顧客からの照会に対応する部署の職員がリスクベース・アプローチによるマネロン対策等について理解を深め、顧客対応が形式的なものにならないよう、職員に対して継続的に周知徹底を図ることにより、適切な顧客対応を確保していただきたい。
    • また、継続的顧客管理における情報更新の考え方については、全ての顧客に一律の時期・内容で調査を行う必要はなく、顧客のリスクに応じて調査をすることで、苦情を減らしたり、回答率を上げたりするなどの工夫をしている例もあると承知。
    • 継続的顧客管理については、金融庁において政府広報をはじめとした周知活動を行っているほか、2022年3月にマネロンガイドラインに関するよくある質問(FAQ)を改訂して、情報更新に係る考え方についても明確化を図っているので、参照いただきたい。
  • マネロン対策等のシステム共同化について
    • 全国銀行協会において、銀行業界全体でマネロン対策等の高度化を図るべく共同機関設立の検討が進められ、2022年10月13日、新会社の設立を決定し、提供するサービス内容等が公表された。
    • 金融庁としては本取組みに高く期待しており、各行においては、持続可能な対策を講じるという中長期的な視野に立って、新会社の利用に関する検討を進めていただきたい。
    • また、金融庁としては、先般公表された経済対策において、国民の安全・安心を確保するための施策として、「AIを活用したマネー・ローンダリング対策高度化推進事業」を実施することとした。
    • FATF第4次審査では取引モニタリングや取引フィルタリングの高度化・効率化が必要と指摘されており、第5次審査に向けてこれを確実に実現することは我が国金融業界にとって極めて重要であり、引き続き、皆様とともに対応を進めていきたい。
  • 暗号資産取引に係る注意喚起について
    • 国連安保理・北朝鮮制裁委員会の専門家パネルが2022年10月7日に公表した報告書では、
      • 北朝鮮当局の下部組織とされる「ラザルス」と呼称されるサイバー攻撃グループが、
      • 暗号資産関連企業や暗号資産交換業者を標的にサイバー攻撃を行い、暗号資産の不正な窃取に関与している
        と指摘されている。
    • また、数年来、日本の暗号資産交換業者も、ラザルスによるサイバー攻撃の標的となっていることが強く推察される状況にある。
    • こうした状況を踏まえ、10月14日に、暗号資産取引に関わる個人・事業者に対し、
      • 暗号資産を標的とした組織的なサイバー攻撃が実施されていることを高く認識いただくこと
      • 適切なセキュリティ対策を講じていただくこと
      • 不審な動きを検知したときは速やかに政府に情報提供をいただきたいこと
        を目的として、関係当局(警察庁、NISC)と連名で注意喚起を実施した。
    • 今後、暗号資産やブロックチェーンを活用した業務を行おうとする場合には、こうした点についても十分に注意いただきたい。
▼日本暗号資産取引業協会
  • 暗号資産取引に係る注意喚起について
    • 国連安保理・北朝鮮制裁委員会の専門家パネルが2022年10月7日に公表した報告書では、北朝鮮当局の下部組織とされる「ラザルス」と呼称されるサイバー攻撃グループが、暗号資産交換業者等を標的にサイバー攻撃を行い、暗号資産の不正な窃取に関与している、と指摘されており、我が国の暗号資産交換業者も、ラザルスによるサイバー攻撃の標的となっていることが強く推察される状況にある。
    • こうした状況を踏まえ、10月14日、暗号資産取引に関わる個人・事業者に対し、暗号資産を標的とした組織的なサイバー攻撃が実施されていることを認識いただくこと、不審な動きを検知したときは速やかに情報提供いただくこと等を、金融庁・警察庁・内閣サイバーセキュリティセンターの連名で注意喚起した。日本暗号資産取引業協会においても、暗号資産交換業者が適切なセキュリティ対策を講じるよう、お願いしたい。
  • Web3.0に関連した政府の取組みについて
    • 「経済財政運営と改革の基本方針2022(2022年6月7日付閣議決定)」において、「ブロックチェーン技術を基盤とするNFTやDAOの利用等のWeb3.0の推進に向けた環境整備」が盛り込まれた。これを踏まえ、デジタル庁が開催する「Web3.0研究会」において、Web3.0の環境整備に係る議論を行っているところ。
    • 金融庁においても、Web3.0に関する施策を金融面から推進するため、8月31日に公表した「金融行政方針(2022事務年度)」において、暗号資産について利用者保護に配慮した審査基準の緩和やNFT等のブロックチェーン上で発効されるデジタルアイテム等における暗号資産該当性に係る判断基準の明確化などを盛り込んだ。暗号資産取引業協会においても、CASCの早期導入に向け手続きが進捗しているものと承知している。Web3.0の健全な発展に向けて、これまで以上に連携を強化していきたい。
    • 一方、Web3.0や暗号資産の健全な発展のためには、暗号資産を用いた詐欺的事案や無登録業者への対応が必須であると考えている。暗号資産取引業協会においても、無登録業者に対する様々な取組みを行っていると承知しているが、更なる対策の強化に向けて、協力していきたい。
  • マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策について
    1. 2022事務年度のマネロン検査について
      • 金融庁は、2022事務年度も、預金取扱金融機関や資金移動業者、暗号資産交換業者に対して、マネロン検査を鋭意実施する予定。2021事務年度と同様に、金融庁マネロンガイドラインにおける「対応が求められている事項」の対応実施状況を中心に検証を行うものであり、引き続き、金融機関側において、何をどこまで対応すればよいかが明確になるような検査に努めていきたい。
      • 各事業者におかれては、こうした検査や2022年8月に公表した改訂版FAQ等も活用して、鋭意態勢整備を進めていただきたい。
    2. マネロン対策等に関する半期フォローアップアンケートについて
      • 各金融機関で進められているマネロンリスク管理態勢の整備状況について確認するため、昨年同様、各金融機関にフォローアップアンケートを送付した。
      • アンケートについては、各金融機関より先月までに回答をいただいている。
      • 2024年3月末までの態勢整備の期限まで残り約1年半となっている。金融庁としては各金融機関の取組状況を継続的に把握したいと考えており、今後とも協力をお願いしたい。
    3. マネロン対策等に係る広報について
      • 金融機関が継続的顧客管理を適切に実施していくためには、一般利用者の理解と協力が不可欠であることから、金融庁においては、各業界団体との連名チラシの作成や、政府広報、オンライン広告の配信等を通じて、積極的に情報発信を行っている。
      • 2022年3月にオンライン広告を配信し、金融庁のHPへのアクセスが増加するなど効果を確認できたため、9月から再度、オンライン広告を実施しているので、ご覧いただきたい。
      • 金融庁では引き続き、継続的顧客管理に係る広報を積極的に進めていくので、各協会で行われているマネロンの広報活動について連携していきたい。
  • 暗号資産等に関する国際的な議論
    • 10月12・13日に米国・ワシントンDCにてG20財務大臣・中央銀行総裁会議が開催され、会議終了後に議長総括が公表された。今後は11月半ばに首脳会議が開催される予定。
    • 今回のG20には、暗号資産について、FSBから3つの報告書が提出されたので、その内容を紹介したい。会議後に公表されたG20財務大臣中銀総裁会議の議長総括においては、これらの報告書への歓迎が示されている。
    • FSBからの3つの報告書は、具体的には、
    • 第一は、暗号資産に対する9つのハイレベルな規制監督上の勧告案に関する報告書であり、金融システム安定にリスクを及ぼす可能性のある全ての暗号資産関連の活動、発行者、サービス提供者に包括的に適用されるものである。
    • 第二は、2020年10月に公表された「グローバル・ステーブルコインの規制・監督・監視に関するハイレベル勧告」の見直しに関する報告書であり、2022年前半の暗号資産市場の混乱等を踏まえ、償還請求権確保の強化などが図られている。
    • 第三は、これら二つの勧告案の位置づけや、今後のFSBの作業方針に関する報告書である。FSBは、暗号資産及びグローバル・ステーブルコインに対する勧告を2023年夏までに最終化させ、その後は2025年末までに各法域での実施状況のレビューを行う予定である。
    • 国際的な議論を受け、既に米国や欧州等では規制枠組みの整備に向けた動きが本格化しており、今後、FSBの勧告をいかにグローバルに実施していくかについて、議論が深まっていくものと考えている。
  • FATFにおける暗号資産に関する議論の状況
    • 昨今、暗号資産については、対露制裁逃れに悪用されているのではないかといった懸念、また、ランサムウェア攻撃の身代金として用いられる事案も発生している。こうした背景から、最近のG7・G20の場でも、暗号資産に関する通知義務、いわゆるトラベルルールを含む、FATF基準のグローバルな実施の重要性が認識されているところである。
    • FATFでは、2019年6月に暗号資産に関する基準を最終化した後、官民における基準実施状況のモニタリングや業界との対話等を行い、年1回のペースで、トラベルルールを含むFATF基準のグローバルな実施状況について、その現状と課題をレビューした報告書を公表している。その一環として、2022年6月末、暗号資産にかかるFATF基準の実施状況や暗号資産市場のリスク動向(DeFi,NFT等)について整理した報告書を公表しており、そのポイントを3点紹介する。
    • 1点目は、世界的に見て、暗号資産に関するFATF基準(勧告15)の実施は不十分ということである。暗号資産の容易に国境を越えて移転できる性質に鑑み、グローバルなFATF基準の実施が重要である。
    • 2点目は、トラベルルールの実施についてである。民間セクターの技術的ソリューション開発は、一定程度進展しているものの、各国におけるトラベルルールの法制化の遅れが課題とされている。日本では、ステーブルコインは、改正法が成立し、暗号資産については、今次臨時国会での成立を目指している。これらの法律が施行されれば、我が国のトラベルルールの法制化が実現することになる。今後とも、グローバルなトラベルルールの実施に向けて、FATFのコンタクト・グループの場も利用しつつ、民間セクターや他国当局ともよく対話を進め、対応していきたい。
    • 3点目は、新たなリスクや最近の暗号資産市場の変化である。FATFは、分散型金融(DeFi)、非代替性トークン(NFT)等の新たなサービス、制裁回避やランサムウェア攻撃など、新たなリスクにも注視していくこととしている。
    • 最後に、2022年6月、金融庁の羽渕国際政策管理官がFATFの基準改訂等を担当する部会の共同議長に就任し、10月には、牛田国際資金洗浄対策調整官が暗号資産関係の作業を担当するコンタクト・グループの共同議長に就任したことを紹介したい。共同議長職を、(1)我が国の実情や考え方を国際的な議論に反映する、(2)世界の議論を国内に十分に紹介し我が国のマネロン等対策の向上に繋げるといった観点から、有効に活用してまいりたい。引き続き、日本暗号資産取引業協会と緊密な連携をお願いしたい。
  • FATF勧告対応法案による犯罪収益移転防止法の改正について
    • 10月26日に「国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案」(通称「FATF勧告対応法案」)を国会に提出した。
    • 本法案では、犯罪収益移転防止法の改正により、暗号資産の移転に係る通知義務(いわゆるトラベルルール)を課すなどの措置を講じることとした。
    • 暗号資産取引業協会では、既に、自主規制規則を改正して、トラベルルールの実行に向けた取組みを始めていると承知しているが、こうした措置は、トラベルルールの的確な履行を後押しするものと考えている。
  • 改正資金決済法を受けた政府令の整備等について
    1. 改正資金決済法を受けた政府令の整備について
      • 2022年6月に成立・公布された改正資金決済法について、2023年6月までの施行を目指して、現在、政府令・ガイドラインの準備を進めており、業界の事業者から事前に意見を伺っている。
      • 令和5年度の税制改正要望において、電子決済手段に係る所要の税制上の措置を要望している。
      • なお、(1)国内で登録等を受けていない者が発行したステーブルコインの取扱い(2)アンホステッド・ウォレットとの取引を行う場合の規律については、先日意見を伺ったところ。
    2. 令和5年度税制改正要望(暗号資産関係)について
      • 令和5年度税制改正要望において、自己保有分暗号資産について、法人税の期末時価評価課税の対象外とすることを税務当局(財務省・総務省)に要望している。
    3. 「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」について
      • 2021年7月に設置した「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」では、第7回会合(10月4日開催)において、いわゆるWeb3.0を念頭に、分散台帳技術等を活用した最近の動向として、その全体像や金融の役割・位置づけについて議論が行われた

~NEW~
金融庁 「ESG評価・データ提供機関に係る行動規範」の公表について
▼ESG評価・データ提供機関に係る行動規範
  • 原則1(品質の確保)
    • ESG評価・データ提供機関は、提供するESG評価・データの品質確保を図るべきであり、このために必要な基本的手続き等を定めるべきである。
  • 指針
    • ESG評価・データ提供機関は、原則1の実施のために、以下のような必要な措置を取るべきである。
      1. ESG評価・データの策定・提供については、合理的に入手が可能と考えられる情報を詳細に分析し、これを行うよう、必要な手続き等を定めること
      2. 質の高いESG評価・データを提供するための組織横断・継続的に適用される手法を定め、これを、機密性・知的財産等に配意しつつ、開示すること
      3. 定めた手法等が組織横断的に一貫して適用されるよう、組織内での浸透を図るほか、適切な体制の下で横断的な検証を行いつつ、知見を蓄積・共有する等の工夫を行うこと
      4. 上記のとおり定めたサービス提供手法について、定期的に、評価結果との間に乖離がないか等を確認し、必要がある場合には改善を図ること(評価に係るPDCAサイクルの実践)
      5. ESG評価手法・データを継続的に管理し、定期的に検証又は更新し、データの取得・更新時期(通常いつ取得・更新するか等)を開示すること(ESG評価・データの基となる評価・データ項目が多岐に渡る場合は、利用者ニーズも踏まえた重要性や有用性を鑑みて対象を集約又は限定するなど、合理的な範囲・方法で対応すること)。
      6. ESG評価・データ提供機関がESG評価・データ提供サービスを外部に委託する場合には、委託の内容と重要性に応じて必要に応じ上記1.から5.に相当する内容を委託先に求めるなど、委託先も含めてESG評価・データの品質を確保するために必要な措置を講じること
  • 原則2(人材の育成)
    • ESG評価・データ提供機関は、自らが提供する評価・データ提供サービスの品質を確保するために必要な専門人材等を確保し、また、自社において、専門的能力の育成等を図るべきである。
  • 指針
    • ESG評価・データ提供機関は、原則2の実施のために、以下のような必要な措置を取るべきである。
      1. 適切な評価・データの提供を行うための必要な情報を収集・分析し、意思決定を行うために必要な専門的人材や技術を保持すること
      2. 特に、ESG評価・データの提供に携わる人材が、専門的・職業的な知見を有し、誠実に職務を遂行するよう、必要な措置を講じること
      3. 専門的・職業的な評価を行い、質の高い評価・データの提供に取り組む人材が的確に評価されるよう、人事評価のあり方を検討すること
      4. 人材の確保・育成が、質の高い評価を継続していく上で重要であることを、ESG評価・データ提供機関の経営者が認識し、このために必要な対応を講じること
  • 原則3(独立性の確保・利益相反の管理)
    • ESG評価・データ提供機関は、独立して意思決定を行い、自らの組織・オーナーシップ、事業、投資や資金調達、その他役職員の報酬等から生じ得る利益相反に適切に対処できるよう、実効的な方針を定めるべきである。
    • 利益相反については、自ら、業務の独立性・客観性・中立性を損なう可能性のある業務・場面を特定し、潜在的な利益相反を回避し、又はリスクを適切に管理・低減するべきである。
  • 指針
    • ESG評価・データ提供機関は、原則3の実施のために、以下のような必要な措置を取るべきである。
      1. 提供するサービスに関して、自らの組織・従業員が行う評価・分析に影響を与え得る利益相反の可能性を特定し、その上で、これらを回避し、又は適切に管理・低減するための実効的な方針を定め、開示すること
      2. ESG評価・データの対象となる企業との他のビジネス関係により、ESG評価・データが影響を受けないことを確保するため、営業と評価の担当・部門間のファイアウォールを構築するなど、適切な手段を講じること
      3. アンケート調査等に基づき評価等を提供する場合について、調査等が不合理に著しく複雑又は理解しづらい場合に、調査等を理解し的確な回答を行うには事実上自らの有償サービスを利用する必要がある、といったことがないよう、調査やサービスの内容・構成について、留意すること
      4. 自らの職員が、ESG評価・データ提供サービスと利益相反が生じ得る有価証券取引やデリバティブ取引を行わないよう、適切な手段を講じること
      5. 自らの職員に関して、適切な業務・報酬体系を整備し、ESG評価・データ提供サービスに係る潜在的な利益相反を回避し、又はリスクを適切に管理・低減を図ること。例えば、必要に応じESG評価・データサービスの営業を担当する職員と別に評価等を行う職員を割り当てること
      6. 評価等の対象となる企業との間に存在する既存のビジネス関係が、評価に影響を与えないようにするために適切な措置を講じること
      7. 発行者負担モデルについては、評価対象となる企業から報酬を受け取るものであり、この点について利益相反を回避するための詳細な手続きを実施すること
      8. 同一の機関において、購買者負担モデル、発行者負担モデル、モデルの双方のサービスを提供する場合には、この点を踏まえた利益相反の防止のための適切な措置を講じること
  • 原則5(守秘義務)
    • ESG評価・データ提供機関は、業務に際して非公開情報を取得する場合には、これを適切に保護するための方針・手続きを定めるべきである。
  • 指針
    • ESG評価・データ提供機関は、業務に際して非公開情報を取得する場合には、原則5の実施のために、以下のような必要な措置を取るべきである。
      1. 守秘を前提としてESG評価・データサービスに関して提供された情報を保護するための方針・手続きを定め、開示・実施すること
      2. 守秘情報について、特段の取決めがない限り、提供目的に沿って、ESG評価・データサービス以外に使われることがないよう、方針・手続きを定め、開示・実施すること
  • 原則6(企業とのコミュニケーション)
    • ESG評価・データ提供機関は、企業からの情報収集が評価機関・企業双方にとって効率的となり、また必要な情報が十分に得られるよう、工夫・改善すべきである。
    • 評価等の対象企業から開示される評価等の情報源に重要又は合理的な問題提起があった場合には、ESG評価・データ提供機関は、これに適切に対処すべきである。
  • 指針
    • ESG評価・データ提供機関は、原則6の実施のために、以下のような必要な措置を取るべきである。
      1. アンケート調査等を通じて、評価対象となる企業から情報を収集する場合、収集時期を十分前に当該企業に伝達することとし、依頼を行うに当たっては、公開情報や過去に提出を受けている情報等の既に知り得た情報が利用可能で、また適切な場合には、評価機関等においてこれらを事前に入力した上で、企業に確認を求めること
      2. 企業がESG評価・データ提供に関して問合せ、問題提起を行うことが出来る統一的な窓口を設置し、対象企業に伝達する、もしくはわかり易い形で掲示しておくこと
      3. 自らの評価手法や顧客対応の方針等を踏まえて、ESG評価・データを開示するに際しては、可能な限り、速やかに当該評価・データの重要な情報源について評価対象企業に通知又は周知し、評価対象の企業がこれらに、事実誤認などの重大な欠陥がないかを確認する時間的猶予を、確保すること
      4. ESG評価・データの対象となる企業から、評価・データの情報源について重要又は合理的な問題提起があった場合には、自らの評価手法や顧客対応の方針等を踏まえて、少なくとも根拠となる重要なデータの正確性を企業が確認することを許容し、誤りがあれば訂正するなど、適時・適切に対処すること
      5. ESG評価・データ提供機関として、自らの提供する評価・データについて、評価等の対象企業と通常どのように関わるかに関する「対話の手順」を開示すること。当該手順には、状況変化による柔軟性も確保しつつ、評価対象の企業にいつ情報提供を依頼するのか、対象企業はいつ何について確認を行うことができ、課題等がある場合にはどのように問題提起を行うことが出来るか、評価機関等は問題提起に対してどう対応し得るか、といった内容を含めること
      6. 自らの評価手法や顧客対応の方針等の下で、利益相反等にも留意しつつ、可能な限り、企業との間で、建設的な対話を行うこと(例えば、評価結果のフィードバック等)
  • 投資家への提言
    • 投資家は、自らが投資判断等に用いているESG評価・データについて、評価の目的、手法、制約を精査・理解し、評価結果に課題があると考え得る場合等には、ESG評価・データ提供機関や企業と対話を行うべきである。
    • また、投資家自身が投資判断においてどのようにESG評価・データを利用するかについての基本的考え方を、一般に明らかにすべきである。
      • 具体的な提言
        1. 投資家は、自らが投資判断等に用いているESG評価・データについて、評価の基本的な目的・方針のほか、手法、制約等として、例えば、
          • 評価等に用いられているデータの情報源・時点、推計の方法
          • 定量的・定性的な判断の程度、検証可能性、他の評価基準との整合性
          • 当該評価・データを利用する際の留意点・制約条件
            等について理解し、評価方針と結果に不合理な乖離が見られると考えられる場合等には、評価機関や企業との間で対話を行うべきである
        2. 投資家は、アクティブ運用における自らの投資判断や、パッシブ運用で目標とする指数の選定等において、どのようにESG評価・データを利用しているのかについての基本的な考え方、具体的には、
          • どのようなESG評価・データをどのような目的で投資判断に利用しているか
          • 投資判断における当該ESG評価・データの重要性
          • 特に重視しているデータや留意している事項があればその内容
          • パッシブ運用において特定のESG指数を選定した理由
          • 等について、開示すべきである
          • また、自らが投資判断に関してESG評価を実施・利用している場合(いわゆる自家評価の場合)にも、同様に、自らがどのような基準・目的でESG評価を行い、投資判断で利用しているかについて、上記の点に沿って、受託者責任も踏まえつつ、開示すべきである
        3. 投資家は、ESG評価・データ提供機関や企業との間で、評価の質の改善に向けて、円滑かつ建設的なコミュニケーションを行うべきである。その際、個別の評価に際して取引関係等を背景とした不当な影響を行使しているとの誤認を与えないよう、留意すべきである
  • 企業への提言
    • 企業においては、規制動向等も踏まえつつ、ESG関連の情報をわかり易く開示すべきである。
      • 具体的な提言
        1. 企業は、自らのESG関連の情報について、リスクと機会双方の観点から、企業全体としての重要事項を整理し、市場関係者が確認し易い形で提供するなど、わかり易く整理し開示すべきである。また、適切な体制の下で、開示するESG情報の品質を確保するべきである
        2. 企業は、ウェブサイトや出版物において、開示する内容について、更新日等の時期に係る情報を明らかにすべきである
        3. 企業は、電子メールアドレスの開設など、国内外のESG評価・データ提供機関からの企業の戦略・方針等に関する問合せに対応する窓口を開示すべきである
        4. 企業は、ESG評価・データ提供機関への対応を行う担当者に、業務遂行上、当然に必要となるESG課題に関する知識を身に付ける機会を十分に提供すべきである。さらに、ESGに関連した事項に専門的知見を有する人材の育成を行うべきである
        5. 企業は、ESG評価・データ提供機関や投資家との間で、評価の質の改善に向けて、円滑かつ積極的にコミュニケーションを行うべきである。特に、評価機関等が明らかにしている方針に照らして評価等に課題がある場合には建設的な対話を通じ、改善を働きかけていくべきである。その際、個別の評価に際して取引関係等を背景とした不当な影響を行使しているとの誤認を与えないよう、留意すべきである

~NEW~
金融庁 金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第4回) 議事次第
▼資料1 金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告(案)
  • 四半期決算短信の義務付けの有無
    • 日本企業の開示を巡る現状に照らすと、経営戦略の進捗状況の確認としての意義、平均的な企業の開示姿勢への懸念や、開示の後退と受け取られることで日本市場全体の評価が低下するおそれ等に鑑みて、当面は、四半期決算短信を一律に義務付けることが考えられる。
    • その上で、将来的な四半期決算短信の任意化については、まず、企業の開示に対する意識の改善・向上や、企業が積極的に投資家へ充実した情報を提供するような市場環境の確立によって、上記の投資家からの懸念を払しょくする必要がある。このため、今後、適時開示の充実の達成状況や開示を巡る企業の意識の変化、有価証券報告書の開示タイミングの状況等を踏まえた上で、四半期決算短信の任意化について幅広い観点から継続的に検討していくことが考えられる。
  • 適時開示の充実
    • 企業の積極的な適時開示を促すためには、取引所における好事例の公表やエンフォースメントの強化のほか、適時開示ルールの見直し(細則主義から原則主義への見直し、包括条項における軽微基準の見直し)について、取引所において継続的に検討を進めることが考えられる。
    • その際、適時開示ルールの見直しについては、細則が定められている中でこれまで実務が行われてきた点や、インサイダー取引規制との関係を考慮すべきとの意見があり、これらも踏まえた検討が必要である
    • 適時開示を充実していく中で、投資判断における適時開示情報の重要性が高まることを踏まえると、適時開示情報の信頼性を確保することが重要となるが、これに対しては、企業における一層の体制整備のほか、将来的に、重要な適時開示事項(例えば、企業が公表する重要な財務情報等)について臨時報告書の提出を求めることを検討することが考えられる。ただし、重要な適時開示事項を臨時報告書の提出事由とすることについては、対象が過度に広がりすぎると企業負担の増加となることから、その対象範囲を明確化すべきとの意見があり、将来、具体化する際には、重要な適時開示事項の範囲や、将来情報が含まれる場合の取扱いについて検討していくことが考えられる。
    • その場合には、現状、適時開示は取引所のシステムに、臨時報告書を含む法定開示は金融庁のシステムに提出することとなっているが、同じ情報を適時開示と臨時報告書とで2度提出することは避けるよう、制度上の整理やシステム連携によるワンストップ化に向けた検討を進めることも重要である。さらに、将来的には、利用者及び作成者の利便性の観点から、上場企業の開示情報に係るシステムの在り方について、当局と取引所におけるシステム更改のタイミングも勘案しつつ、中期的な視点で検討を行うことが考えられる。
  • 四半期決算短信の開示内容
    • 現在の我が国の平均的な企業における開示姿勢等を踏まえると、今回の見直しが情報開示の後退と受け取られないようにする観点からは、原則として速報性を確保しつつ、投資家の要望が特に強い事項(セグメント情報、キャッシュ・フローの情報等)について、四半期決算短信の開示内容を追加する方向で、取引所において具体的に検討を進めることが考えられる。
    • 四半期報告書において、直近の有価証券報告書の記載内容から重要な変更があった場合に開示が求められてきた事項については、当該事項が元々、有価証券報告書における記載事項であることを踏まえると、これらに重要な変更があれば、同じ金融商品取引法上の報告書である臨時報告書の提出事由とすることが考えられる。例えば、有価証券報告書の記載事項であり、本年6月の当ワーキング・グループ報告において開示の充実を提言した「重要な契約」について、現行の四半期報告書において開示が求められているように、重要な変更があった場合や新たに契約締結を行った場合には、これを臨時報告書の提出事由とすることが考えられる。
  • 四半期決算短信に対する監査人によるレビューの有無
    • 速報性の観点等から、四半期決算短信については監査人によるレビューを一律には義務付けないことが考えられる。
    • 他方、投資家から監査人によるレビューを求める意見が一定程度あることや、企業側にもレビューを受けるかどうかは企業側の判断に委ねるべきであるとの意見があることを踏まえ、企業において任意でレビューを受けることを妨げないこととするとともに、投資家への情報提供の観点からレビューの有無を四半期決算短信において開示することが考えられる。
    • あわせて、例えば、会計不正が起こった場合(これに伴い、法定開示書類の提出が遅延した場合を含む)や企業の内部統制の不備が判明した場合、信頼性確保の観点から、取引所規則により一定期間、監査人によるレビューを義務付けることが考えられる。その際、監査人によるレビューを義務付ける要件やその期間については、取引所において、不適正開示等に対する実効性確保措置との関係も踏まえつつ、具体的に検討を進めることが期待される。
  • 四半期決算短信の虚偽記載に対するエンフォースメント
    • 適時開示を充実していく中で、投資判断における重要性が高まることとなる適時開示情報の信頼性を確保する観点から、将来的に、重要な適時開示事項(例えば、企業が公表する重要な財務情報等)を臨時報告書の提出事由とする場合には、四半期決算短信に含まれる情報も重要な適時開示事項に含め臨時報告書の提出事由とすることを検討していくことが考えられる。
  • 半期報告書及び中間監査のあり方
    • 非上場企業については、金融商品取引法上、任意で、上場企業に義務付けられている四半期報告書を提出することができる枠組みがある。この点、これまでの実務への配慮や、半期報告書に求められている保証の枠組みを中間監査から国際的に整合性が図られているレビューに変更することで海外投資家からの理解が深まるとの意見を踏まえると、非上場企業は、今回の四半期開示の見直し後においても、上場企業に義務付けられる半期報告書の枠組み(現行の第2四半期報告書と同程度の記載内容と監査人のレビュー、45日以内の提出)を選択可能とすることが考えられる。
    • 金融商品取引法上の第1・3四半期報告書廃止後に、これらの銀行等に開示が求められることとなる半期報告書については、上場企業と同様の制度(現行の第2四半期報告書と同程度の記載内容と、監査人のレビュー)に見直すべきとの意見があった。しかしながら、本件については、破綻処理制度等との関連も踏まえ、金融監督上の観点から、引き続き検討していくことが必要である。
  • サステナビリティ基準委員会(SSBJ)の役割や開示基準の位置付け
    • 今後、ISSBにおける基準開発の方向性を見据えながらサステナビリティ情報に関する我が国の開示基準を開発し、これを法定開示である有価証券報告書に取り込んでいく場合には、我が国の開示基準設定主体や当該開示基準設定主体が開発する開示基準を、法令の枠組みの中で位置付けることが重要である。
    • サステナビリティ情報に係る開示基準の設定主体を金融商品取引法令上で位置付ける場合には、我が国の会計基準設定主体や企業会計基準が同じく金融商品取引法令上の枠組みの中で位置付けられていることが参考となる。金融商品取引法令では、会計基準設定主体について5つの要件((1)独立性、(2)偏りのない多数の者からの継続的な資金提供、(3)高い専門性を備えた者による合議制の機関の存在、(4)基準設定における公正かつ誠実な業務運営、(5)経営環境及び会社実務の変化への対応並びに国際的収れんの観点からの継続的な検討)を規定し、この要件を満たす団体が開発する企業会計基準について、金融庁長官が「一般に公正妥当であると認められる企業会計の基準」として告示指定することとされている。
    • これを参考に、サステナビリティ情報についても、その開示基準の設定主体と開示基準自体を金融商品取引法令の中で位置づけることが考えられる。なお、会計基準設定主体の要件の一つに「国際的収れん」が挙げられているが、サステナビリティ開示に係る基準設定主体の場合は、国際的にサステナビリティ開示に係る基準開発が行われることとなった背景に国際的な比較可能性の確保があることを踏まえ、例えば「国際的な整合性」の観点から継続的な基準開発を行うという要件とすることが考えられる。
    • このような要件を前提として、FASFの下に設置されたSSBJについて考えると、SSBJは、5つの要件((1)独立性、(2)偏りのない多数の者からの継続的な資金提供、(3)高い専門性を備えた者による合議制の機関の存在、(4)基準設定における公正かつ誠実な業務運営、(5)経営環境及び会社実務の変化への対応並びに国際的収れんの観点からの継続的な検討)を満たしうると考えられる。今後、必要となる関係法令の整備を行うとともに、上記の条件を満たしたSSBJが開発する開示基準について、個別の告示指定により我が国の「サステナビリティ開示基準」として設定することで、サステナビリティ開示の比較可能性を確保し、投資家に有用な情報を提供していくことが重要である。
  • サステナビリティ情報に対する保証のあり方
    • サステナビリティ情報に対する第三者による保証については、国際的には、欧州や米国では限定的保証から導入し、合理的保証に移行するアプローチが提案されているほか、監査・保証に関する国際的な基準設定主体である国際監査・保証基準審議会(International Auditing and Assurance Standards Board:IAASB)において、基準開発に向けた審議が開始されており、今後、2023年9月までに基準の公開草案を承認し、2024年12月から2025年3月の間に最終化することが予定されている。
    • 有価証券報告書において、我が国の開示基準に基づくサステナビリティ情報が記載される場合には、法定開示において高い信頼性を確保することに対する投資家のニーズや、国際的に保証を求める流れであることを踏まえ、将来的に、当該情報に対して保証を求めていくことが考えられる。
    • まず、サステナビリティ情報については、その外縁が拡張し続けている中、どの範囲に対して保証を求めるかについて検討する必要がある。
    • また、現行では、金融商品取引法の規定により、有価証券報告書の財務諸表に対して公認会計士又は監査法人による監査が義務付けられていることを踏まえると、同じ有価証券報告書のサステナビリティ情報に対して保証を求める場合には、金融商品取引法において規定することが必要になると考えられる。
    • 保証の担い手については、ISSBが開発しているサステナビリティ開示基準において、サステナビリティ情報の開示に当たり財務情報との結合性(コネクティビティ)を前提としていることを踏まえると、財務諸表の監査業務を行っている公認会計士・監査法人によって担われることが考えられる。なお、サステナビリティというテーマが広範であり、多様な専門性を必要とする領域であることを踏まえると、保証の担い手を広く確保することも重要だと考えられる。
    • また、担い手の要件については、独立性や高い専門性、品質管理体制の整備、当局による監督対象となっていることなどが考えられる。特に、保証の担い手を法制度の中で位置づけることで、保証業務の一定の品質を確保し、必要な場合にはサンクションを設けておくことや、当局の監督対象とすることが考えられる。
    • 保証基準や保証水準については、保証の前提となる我が国の開示基準が、国際的な開示基準と整合的なものとなることを目指していることを考えると、この開示基準に基づいて作成されたサステナビリティ情報に対する保証についても、国際的な保証基準と整合的な形で行われることが、比較可能性の確保に資すると考えられる。
    • なお、現在でも、企業が、サステナビリティ情報について監査法人やそのグループ会社等から任意で保証を受ける動きがみられている。今後、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の記載欄において、保証を受けている旨を記載する際には、投資家の投資判断を誤らせないよう、例えば、保証業務の提供者の名称、準拠した基準や枠組み、保証水準、保証業務の結果、保証業務の提供者の独立性等について明記することが重要であり、必要に応じてこのような取扱いを明確化することが考えられる。
  • ロードマップ
    • サステナビリティ開示については、企業や投資家における予見可能性を高め、実務的な準備を確実に進める観点から、我が国におけるロードマップを示していくことが考えられる。その際、国際的な動向が流動的であることを踏まえ、将来の状況変化に応じて随時見直しすることを前提とすることが考えられる。このロードマップに沿って、将来的に我が国のサステナビリティ開示基準の開発やその法定開示への取り込み、サステナビリティ情報に対する保証のあり方の議論を進めるほか、我が国のサステナビリティに係る人材育成に取り組むことで、我が国におけるサステナビリティ開示の充実を着実に進めていくことが期待される。

~NEW~
金融庁 金融審議会「事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ」(第3回)議事次第
▼事務局説明資料
  • 論点 ア「事業単位での事業成長担保権の設定について」
    • 事業単位の設定を認めるニーズが指摘された。その方法としては、分社化することが考えられる。
    • その他の方法としては、以下が考えられるものの、実現に向けては超えるべき課題が存在するところ、どのように考えるか。
  • 論点 イ「登記事項(極度額の取扱い)のあり方について」
    • 極度額は任意設定事項だとしても、任意に設定された場合において、商業登記簿への公示が必要かどうかは、別途検討すべきとする意見があった。
    • 公示制度に追加の機能や項目を設けることは、利便性のみならず、システム構築にあたっての金銭的費用や手続に係る時間的費用等を踏まえ、その費用対効果の観点から、慎重に検討する必要があると考えられる。
    • 事業成長担保権の公示制度では、上記の観点及び下記の現行制度との比較を踏まえ、極度額が任意に設定されていた場合についても、公示を不要とすることについて、どのように考えるか。
  • 論点 ウ「個別の登記登録制度のある財産と第三者の保護のあり方について」
    • 登記・登録制度のある個別財産の法律関係についてきめ細かく検討すべきとの指摘があった。問題となる場面として、(i)設定者が第三者に譲渡する場合、(ii)設定者が第三者に他の担保権を設定する場合、(iii)設定者が第三者に賃借権や用益物権等を設定する場合、(iv)当該財産に対して第三者による強制執行がされた場合が考えられるところ、以下のような整理及び寄せられた意見について、それぞれどのように考えるか。
  • 論点 エ「通常の事業活動の範囲について」
    • 事業を成長させ、その価値を高めるような行為を設定者が行う場合、それは通常の事業活動の範囲内における取引として、その相手方については主観を問わず保護する必要がある。
    • 一方で、事業価値の毀損など事業のリスクを変容させる行為については、通常の事業活動の範囲外として、事業成長担保権者の同意を必要とすることが、成長資金等の出し手のリスク管理の観点から必要と考えられる。
    • 当該範囲について、下記のとおり整理することについてどのように考えられるか。もっとも、不明確な場合も、設定者が事業成長担保権者の同意を得ることが促され、両者のコミュニケーション・相互理解が深まるとも考えられるため、一定程度解釈に委ねることも必要と考えられるか。
  • 論点 オ「簡易な実行手続のあり方について」
    • 簡易な実行手続に係る要検討事項は以下のとおり。簡易な手続とすることに伴う事業成長担保権者側のリスク(第三債務者の弁済(4.)や他の担保権の実行(6.))等について、実務上これを許容できるか、一部について本則の実行と同様とするか、といった点について、どのように考えるか。
  • 論点 カ「随時弁済・一般債権者の取分確保のイメージについて」
    • 9(iii)の裁判所の許可による随時弁済について、会社更生手続等では、支払不能等の原因に基づき債権者間の衡平に配慮し利害を調整する中で、例外的に認められるものであるために厳格な要件となる一方、事業成長担保権の実行手続における許可は、事業価値の維持を目的とすることから「少額の債権」や「事業に著しい支障」までは求められず、むしろ「事業の継続に必要であること」を要件とすることが考えられるか。
    • 9(iv)の一般債権者等の取り分確保について、その割合の定め方及びその法的構成をどのように考えるか。一般債権者への配当を破産手続等で公正に給付する法的構成は、担保権を信託する構成も考えられるか。
  • 論点 キ「双方未履行双務契約との関係について」
    • 事業成長担保権の実行手続は、倒産処理手続と同様、手続開始に伴う弁済禁止効により一方の債務のみ弁済が禁止されるため、両債務の対等性が損なわれるとして、倒産手続と同様の手当てを検討する余地があるとも考えられるか。
      • (注)倒産処理手続において、双方未履行双務契約の履行請求又は解除に係る規定が存在する趣旨については、当事者間の公平(履行請求をした場合に相手方の債権を財団債権等として扱うこと)を理由とするもののほか、財団拡充の必要性(財団拡充にとって必要な双務契約の履行を促すために財団債権等として扱うこと)や、破産管財人等の特別の権能(履行請求する場合は本来的に財団債権等となるため、主眼は解除時に相手方の原状回復請求権を財団債権等とすることにある)が挙げられている。
    • 他方、管財人による弁済が禁止される結果、相手方も同時履行の抗弁権により弁済を拒絶することで対抗することが可能であり、特段の手当ては不要と整理することも考えられるか。
    • また、双方未履行双務契約の履行・解除の判断について、実行手続の管財人と破産管財人との判断が異なった場合の調整規定を設ける必要性について、どう考えるか

~NEW~
金融庁 「サステナブルファイナンス有識者会議」(第15回)議事次第
▼資料2 事務局資料
  • ESG評価機関への期待(行動規範としてとりまとめ)
    1. 透明性の確保
      • 自社のESG評価について、目的・考え方・基本的方法論等を公表すること
    2. 人材の育成
      • 専門人材等を確保し、また、自社で専門的能力の育成等を図ること
    3. 利益相反の回避
      • 業務の独立性・客観性・中立性を損なう可能性のある業務・場面を特定し、潜在的な利益相反を回避し、又はリスクを適切に管理・低減すること
    4. 企業とのコミュニケーション
      • 評価を行う企業との窓口を明確化し、評価の根拠となるデータは確認・訂正を可能とし、こうした手順を予め公表すること
  • 機関投資家・企業への期待
    • 自らの投資でESG評価をどう活用しているか、明らかにすること(投資家)
    • サステナビリティに関する企業情報をわかり易く開示し、評価機関との窓口を明確化すること(企業)
  • カーボン・クレジットの取り扱いに関するQ&A(新設)
    • (問)政府主導のカーボン・クレジットではなく、民間主導で発行されるボランタリークレジットは、「その他これに類似するもの」に該当し、取扱可能でしょうか。
    • (答)「その他これに類似するもの」に該当するか否かについては、審査・承認手続の厳格性、帰属の明確性等の観点から、個別具体的に判断される必要があります。
    • 例えば、帰属の明確性に加えて、以下のいずれかの機関が当該ボランタリークレジット発行の基礎となる温室効果ガス排出削減・吸収事業の妥当性審査及び当該事業に基づく排出削減・吸収量の検証を実施している場合には、「その他これに類似するもの」に該当し、取扱可能と考えられます。
      1. 京都メカニズムやパリ協定第6条第4項メカニズムの指定運営機関
      2. ISO14065に基づき認証された機関など、検証等に関する認証を取得している機関又はその認定機関
  • 資産所得倍増プラン 7本柱の取組
    • 第一の柱:家計金融資産を貯蓄から投資にシフトさせるNISAの抜本的拡充や恒久化
      • NISA制度の恒久化を図る。併せて、非課税保有期間の無期限化と非課税限度額の引上げを進める。
    • 第二の柱:加入可能年齢の引上げなどiDeCo制度の改革
      • 加入可能年齢を70歳に引き上げる。拠出限度額・受給開始年齢の引き上げについて、2024年の公的年金の財政検証に併せて結論を得る。
    • 第三の柱:消費者に対して中立的で信頼できるアドバイスの提供を促すための仕組みの創設
      • 金融経済教育推進機構(仮称)が中立的なアドバイザーの認定を行う。助言対象を絞った投資助言業(例えば、つみたてNISAやiDeCoに限定)の登録要件を緩和する。
    • 第四の柱:雇用者に対する資産形成の強化
      • 職域において中立的な認定アドバイザーを活用した取組を企業に促す。
    • 第五の柱:安定的な資産形成の重要性を浸透させていくための金融経済教育の充実
      • 中立的な組織として金融経済教育推進機構(仮称)を設立する。国全体として総合的かつ計画的に推進すべく、国家戦略としての「基本的な方針」を策定する。
    • 第六の柱:世界に開かれた国際金融センターの実現
      • 金融資本市場の活性化、金融行政・税制のグローバル化、生活・ビジネス環境整備と効果的な情報発信などを総合的に進める。
    • 第七の柱:顧客本位の業務運営の確保
      • 「顧客本位の業務運営に関する原則」の見直しや必要なルールの整備を図る。
  • 資産所得倍増プラン(サステナブルファイナンス関連抜粋)
    • 第六の柱:世界に開かれた国際金融センターの実現
      • <金融資本市場の活性化>
        • スタートアップやESG等の社会課題の解決による成長に資する資金供給の円滑化、企業における開示やコーポレートガバナンスの促進、市場インフラの強化や規制改革等により、金融資本市場の活性化を図る。
      • ESG債市場等の活性化
        • ESG債は、近年の環境問題への世界的な関心の高まりを受けて、世界で発行額が急増(2018年0.2兆ドルから2021年1.2兆ドルに)している。我が国においても、国内発行額が増加(2018年0.5兆円から2021年2.9兆円に)しているが、経済規模からいえば更なる活用の余地は大きい。
        • ESG債発行額を順調に伸ばすため、調達資金の使途(プロジェクト内容)・資金の管理・活用実績/評価や企業の排出量などサステナビリティの取組を見える化し、グリーンボンド・トランジションボンド(脱炭素へ移行するための投資を資金使途とする債券)への信頼性を高めることが必要である。そのため、環境省の現行のガイドラインの更なる拡充や、日本取引所グループ(JPX)と連携した企業データプラットフォームの構築、トランジション・ファイナンスの推進に向けた環境整備(分野別技術ロードマップの充実)、開示規制の更なる充実を進めるほか、資本性を備えたESG商品の拡充についても取組を促す。
        • また、ソーシャル分野への投資やイノベーション投資を含め、経済利益に止まらず広く社会的課題の解決を目指す「インパクト投資」を拡大するよう、金融庁は来年6月を目途にそのための基本的指針を取りまとめる。
      • 人的資本への投資
        • さらに、中長期的な企業価値向上に向け、人的資本に関する開示ルールの整備やサステナビリティ情報の開示の充実を推進するとともに、国際ルールの形成を主導する
    • 第七の柱:顧客本位の業務運営の確保
      • アセットオーナー(企業年金含む)については、受益者等の便益を最大化する観点から、アセット(資産)の性格や規模を踏まえた適切な運用リターンの実現を図る必要がある。このため、関係省庁が連携して幅広い関係者との継続的対話の体制を整備し、運用体制・手法に係る調査研究の実施やベストプラクティスの共有・普及を図るなど、運用の改善に向けた対応を進める。

~NEW~
法務省 令和4年版犯罪白書
  • 刑法犯の認知件数は、平成8年から毎年戦後最多を更新して、14年には285万3,739件にまで達したが、15年に減少に転じて以降、19年連続で減少しており、令和3年は56万8,104件(前年比4万6,127件(7.5%)減)と戦後最少を更新した。戦後最少は平成27年以降、毎年更新中である。平成15年からの認知件数の減少は、刑法犯の7割近くを占める窃盗の認知件数が大幅に減少し続けたことに伴うものである。刑法犯の発生率の動向は、認知件数の動向とほぼ同様である。平成8年(1,439.8)から毎年上昇し、14年には戦後最高の2,238.5を記録したが、15年から低下に転じ、25年からは毎年戦後最低を記録している
  • 刑法犯の検挙人員は、平成13年から増加し続け、16年には38万9,027人を記録したが、17年から減少に転じ、25年からは毎年戦後最少を更新しており、令和3年は17万5,041人(前年比7,541人(4.1%)減)であった。
  • 65歳以上の高齢者の構成比は、平成4年には2.7%(7,741人)であったが、令和3年は23.6%(4万1,267人)を占めており、検挙人員に占める高齢者の比率の上昇が進んでいる。一方、20歳未満の者の構成比は、平成4年には47.3%(13万4,692人)であったが、その後減少傾向にあり、令和2年に9.8%(1万7,904人)と、昭和48年以来初めて10%を下回り、令和3年は8.8%(1万5,349人)であった
  • 刑法犯の検挙率は、平成7年から毎年低下し、13年には19.8%と戦後最低を記録したが、14年から回復傾向にあり、一時横ばいで推移していたものの、26年以降再び上昇しており、令和3年は46.6%(前年比1.1pt上昇)であった。
  • 窃盗は、認知件数において刑法犯の7割近くを占める。その認知件数、検挙件数及び検挙率の推移(最近30年間)を見ると、平成7年から13年まで、認知件数の増加と検挙率の低下が続いていたが、14年から検挙率が上昇に転じ、認知件数も、戦後最多を記録した同年(237万7,488件)をピークに15年から減少に転じた。認知件数は、26年以降、毎年戦後最少を更新し続け、令和3年は、38万1,769件(前年比3万5,522件(8.5%)減)であった。検挙件数は、平成17年から減少し続けており、令和3年は、16万1,016件(同9,671件(5.7%)減)であった。検挙率は、前年より1.3pt上昇し、42.2%であった
  • 詐欺の認知件数は、平成17年に昭和35年以降で最多の8万5,596件を記録した。その後、平成18年から減少に転じ、24年からは増加傾向を示していた。その後、30年から再び減少したが、令和3年は、前年から増加し、3万3,353件(前年比2,885件(9.5%)増)であった。検挙率は、平成16年に32.1%と戦後最低を記録した後、17年から上昇に転じ、23年から26年までの低下を経て、その後は上昇傾向にあったが、令和3年は、前年からわずかに低下し、49.6%(同0.6pt低下)であった。
  • 特殊詐欺(被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪(現金等を脅し取る恐喝及びキャッシュカード詐欺盗(警察官や銀行協会、大手百貨店等の職員を装って被害者に電話をかけ、「キャッシュカードが不正に利用されている」等の名目により、キャッシュカード等を準備させた上で、隙を見るなどし、同キャッシュカード等を窃取するもの)を含む。)の総称)の認知件数、検挙件数及び被害総額(現金被害額及び詐取又は窃取されたキャッシュカード等を使用してATMから引き出された額(以下「ATM引出し額」という。)の総額をいう。ただし、ATM引出し額については、平成21年以前は被害総額に含まれず、22年から24年までは、オレオレ詐欺に係るもののみを計上している。)の推移(統計の存在する平成16年以降)は、1-1-2-10図のとおりである。令和3年は、還付金詐欺(税金還付等に必要な手続を装って被害者にATMを操作させ、口座間送金により財産上の不法の利益を得る電子計算機使用詐欺事件又は詐欺事件)の認知件数が、前年と比較して2,200件(122.0%)増加した一方、預貯金詐欺(親族、警察官、銀行協会職員等を装い、あなたの口座が犯罪に利用されており、キャッシュカードの交換手続が必要であるなどの名目で、キャッシュカード、クレジットカード、預貯金通帳等をだまし取る(脅し取る)もの)の認知件数は、前年と比較して1,704件(41.2%)減少した。3年の特殊詐欺全体としての被害総額は、約282億円(前年比1.1%減)であった(警察庁刑事局の資料による。)
  • 特別法犯全体では、43年に交通反則通告制度が施行されたことにより大幅に減少した後、50年代は200万人台で推移していたが、62年に同制度の適用範囲が拡大された結果、再び大幅に減少した。平成元年から11年までは増減を繰り返していたが、12年からは22年連続で減少しており、18年からは、昭和24年以降における最少を記録し続けている。他方、道交違反を除く特別法犯では、平成13年から増加し、19年(11万9,813人)をピークとして、その後は増減を繰り返しながら緩やかな減少傾向にあり、令和3年は8万4,482人(前年比3,855人(4.4%)減)であった
  • 銃刀法違反は、平成21年(6,989人)をピークに一時減少傾向となったが、24年以降はおおむね横ばいとなっており、令和3年は5,401人(前年比7.2%減)であった。なお、3年6月、同法が改正され(令和3年法律第69号)、人の生命に危険を及ぼし得る威力を有するクロスボウについて、所持の禁止の対象とするとともに、所持許可制に関する規定を整備し、不法所持に対する罰則の新設等が行われた(4年3月施行)。
  • マネー・ローンダリング対策
    • 平成元年(1989年)にG7サミットの宣言を受けて設立された金融活動作業部会(FATF:Financial Action Task Force)は、平成2年(1990年)にマネー・ローンダリング対策に関する40の勧告(平成8年(1996年)及び平成15年(2003年)に改訂)を、平成13年(2001年)にテロ資金供与に関する8の特別勧告(平成16年(2004年)に改訂され、9の特別勧告となった。)をそれぞれ採択し、平成24年(2012年)には、従来の40の勧告及び9の特別勧告を統合・合理化する一方で、大量破壊兵器の拡散に関与する者の資産凍結の実施、法人・信託等に関する透明性の向上、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与の温床となるリスクが高い分野における対策の重点化等を求める勧告を採択した。
    • 我が国も、FATF参加国の一員として、犯罪収益移転防止法に基づき、金融機関等の特定事業者による顧客の身元等の確認や疑わしい取引の届出制度等の対策を実施し、国家公安委員会が疑わしい取引に関する情報を外国関係機関に提供するなどしているほか、金融庁が共同議長を務めるFATFの政策企画部会やその他の作業部会において、暗号資産を始めとする新たな規範の策定及びその実施に向けた議論・検討において主導的な役割を果たすなどしており、マネー・ローンダリング対策及びテロ資金供与対策における国際的な連携に積極的に参加している。
    • 国内においては、平成26年(2014年)、いわゆるマネロン・テロ資金対策関連三法が成立し、(1)公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律の一部を改正する法律(平成26年法律第113号)により、公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者に対する資金以外の利益の提供に係る行為についての処罰規定等が整備され、(2)犯罪収益移転防止法の改正(平成26年法律第117号)により、疑わしい取引の届出に関する判断の方法、外国所在為替取引業者との契約締結の際の確認義務、犯罪収益移転危険度調査書の作成等に係る国家公安委員会の責務等が定められたほか、(3)国際連合安全保障理事会決議第1267号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法(平成26年法律第124号。いわゆる国際テロリスト財産凍結法)が制定され、国際テロリストとして公告又は指定された者に係る国内取引が規制されることとなった。
    • FATFは、各国における勧告の遵守状況の相互審査を行っている。令和3年(2021年)6月には、FATFの全体会合において、第4次対日相互審査報告書が採択され、同年8月30日に公表された。
    • 国内では、同報告書で指摘された事項に対応するべく、同月にマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議が設置され、「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の推進に関する行動計画」が策定され、同行動計画に基づき、令和4年(2022年)5月に「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の推進に関する基本方針」が決定された。同基本方針では、我が国を取り巻くリスク情勢と我が国のマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の方向性を確認することで、一層の関係省庁間の連携強化を図り、対策の効果を高めていくこととしている
  • 汚職・腐敗対策
    • 平成9年(1997年)、経済協力開発機構(OECD:Organisation for Economic Co-operation and Development)において、国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約が採択された。我が国は、この条約を締結済みであり、その国内担保法として、平成10年(1998年)、不正競争防止法(平成5年法律第47号)の改正により外国公務員等に対する不正の利益の供与等の罪が新設され(平成11年2月施行)、同罪については、その後、国民の国外犯処罰規定の追加、自然人に対する罰則強化、法人に対する公訴時効期間の延長等の改正がなされている。
    • 国連は、平成15年(2003年)、自国及び外国の公務員等に係る贈収賄や公務員による財産の横領等の腐敗行為の犯罪化のほか、腐敗行為により得られた犯罪収益の他の締約国への返還の枠組み等について定めた腐敗の防止に関する国際連合条約を採択した。我が国は、平成18年(2006年)に同条約の締結について国会の承認を受け、平成29年(2017年)に同条約を締結した。
    • 令和3年(2021年)には、国連腐敗特別総会が開催され、腐敗対策に関する政治宣言が採択された。
  • サイバー犯罪対策
    • 平成13年(2001年)に欧州評議会において採択されたサイバー犯罪に関する条約は、(1)コンピュータ・システムに対する違法なアクセス、コンピュータ・ウイルスの製造等の行為の犯罪化、(2)コンピュータ・データの捜索・押収手続の整備等、(3)捜査共助・犯罪人引渡し等について定めたものである。我が国は、平成24年(2012年)、同条約を締結した。この条約の国内担保法として、平成23年(2011年)、情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律(平成23年法律第74号)が成立し、不正指令電磁的記録作成等の罪が新設されるなどした。
  • 犯罪少年の薬物犯罪においては、昭和47年に毒劇法が改正されてシンナーの乱用行為等が犯罪とされた後、同法違反が圧倒的多数を占め、その検挙人員(警察が検挙した者に限る。以下この項において同じ。)は、57年にピーク(2万9,254人)を迎え、その後は大きく減少し、令和3年は4人であった。
    • 犯罪少年による覚醒剤取締法、大麻取締法及び麻薬取締法の各違反の検挙人員の推移(昭和50年以降)は、3-1-2-3図のとおりである。覚醒剤取締法違反は、57年(2,750人)及び平成9年(1,596人)をピークとする波が見られた後、10年以降は大きく減少し、令和3年は114人(前年比18人増)であった。大麻取締法違反は、平成6年(297人)をピークとする波が見られた後、増減を繰り返していたが、26年から8年連続で増加しており、令和3年は955人(前年比102人(12.0%)増)であった。麻薬取締法違反は、昭和50年以降、おおむね横ばいないしわずかな増減にとどまっていたが、平成29年から増加傾向にある。
  • 少年の受刑者については、心身が発達段階にあり、可塑性に富んでいることから、刑事施設ではその特性に配慮した処遇を行っている。すなわち、処遇要領の策定に関しては、導入期、展開期及び総括期に分けられた処遇過程ごとに、矯正処遇の目標及びその内容・方法を定めている。また、矯正処遇の実施に関しては、教科指導を重点的に行い、できる限り職業訓練を受けさせ、一般作業に従事させる場合においても、有用な作業に就業させるなどしている。さらに、令和4年4月1日以降、改善指導の実施に関しても、犯した罪の大きさや被害者等の心情等を認識させるとともに、出所後の進路選択や生活設計を具体的に検討させ、社会復帰に対する心構えを身に付けさせるよう配慮するほか、民法の一部を改正する法律(平成30年法律第59号)の施行により成年年齢が引き下げられたことを踏まえ、18歳以上の少年の受刑者については、民法上成年として扱われる年齢であることに鑑み、各種法令上の成年としての権利とそれに伴う責任等について理解させ、成年としての自覚を促すよう配慮することとされた。
    • 加えて、少年の受刑者ごとに1人以上の職員を指定し(個別担任制)、その個別担任において、他の職員と緊密な連携を図りつつ、個別面接、日記指導等の個別に行う指導を継続的に実施している。なお、少年院において刑の執行をするときには、少年には、矯正処遇ではなく、矯正教育を行
  • 覚醒剤取締法違反
    • 覚醒剤取締法(昭和26年法律第252号)違反(覚醒剤に係る麻薬特例法違反を含む。以下この項において同じ。)の検挙人員(特別司法警察員が検挙した者を含む。)の推移(昭和50年以降)は、29年(5万5,664人)をピークとして減少した後、増減を繰り返していたが、45年から増加傾向となり、59年には31年以降最多となる2万4,372人を記録した。その後、減少傾向にあったが、平成7年から増加に転じ、9年には1万9,937人に達した。13年からは、減少傾向にあり、令和3年は7,970人(前年比7.9%減)であった
    • 覚醒剤取締法違反の年齢層別の検挙人員(警察が検挙した者に限る。)の推移(最近20年間)は、20歳未満、20歳代及び30歳代の検挙人員は、減少傾向にある。令和3年の検挙人員の年齢層別構成比を見ると、40歳代が最も多く(32.3%)、次いで、50歳以上(29.9%)、30歳代(23.3%)、20歳代(13.0%)、20歳未満(1.5%)の順であった。
    • なお、令和3年の覚醒剤取締法違反の検挙人員(就学者に限る。)を就学状況別に見ると、大学生が18人(前年比10人増)であり、高校生が10人(同1人減)、中学生は1人(同1人増)であった(警察庁刑事局の資料による。)
    • 令和3年に覚醒剤取締法違反により検挙された者(警察が検挙した者に限る。)のうち、営利犯で検挙された者及び暴力団構成員等(暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者をいう。以下この項において同じ。)の各人員を違反態様別に見たものである。同年の営利犯で検挙された者の比率は5.8%であり、暴力団構成員等の比率は39.0%であった。
    • 覚醒剤取締法違反の検挙人員(警察が検挙した者に限る。)のうち、外国人の比率は、平成20年以降、5%台から8%台で推移しており、令和3年は7.3%(568人)であった。国籍等別に見ると、韓国・朝鮮(117人、20.6%)が最も多く、次いで、ブラジル(103人、18.1%)、フィリピン、ベトナム(それぞれ77人、13.6%)の順であった(警察庁刑事局の資料による。)。なお、これら国籍等別の検挙人員を見るに当たっては、各国籍等別の新規入国者数・在留者数に違いがあることに留意する必要がある。
  • 大麻取締法違反等
    • 大麻取締法(昭和23年法律第124号)及び麻薬取締法の各違反(それぞれ、大麻及び麻薬・向精神薬に係る麻薬特例法違反を含む。以下この項において同じ。)の検挙人員(特別司法警察員が検挙した者を含む。)の推移(昭和50年以降)は、大麻取締法違反は、平成6年(2,103人)と21年(3,087人)をピークとする波が見られ、22年以降は減少していたが、26年から8年連続で増加している。29年からは、昭和46年以降における最多を記録し続けており、令和3年は5,783人(前年比9.9%増)であった
    • 大麻取締法違反の年齢層別の検挙人員(警察が検挙した者に限る。)の推移(最近10年間)は、平成24年以降、20歳代及び30歳代で全検挙人員の約7~8割を占める状況が続いているが、30歳代の検挙人員が令和元年以降3年連続で減少したのに対し、20歳代の検挙人員は、26年から増加し続けており、令和3年は2,823人(前年比11.1%増)であった。一方、20歳未満の検挙人員も、平成26年から増加し続けており、令和3年は994人(同12.1%増)であった。
    • なお、令和3年の大麻取締法違反の検挙人員(就学者に限る。)を就学状況別に見ると、中学生が8人(前年と同じ)、高校生が186人(前年比27人増)、大学生が232人(同13人増)であった(警察庁刑事局の資料による。)。
  • 覚醒剤等の押収量の推移
    • 覚醒剤等の薬物の押収量(警察、税関、海上保安庁及び麻薬取締部がそれぞれ押収した薬物の合計量)の推移(最近5年間)は、4-2-2-1表のとおりである。覚醒剤の押収量は、令和元年に平成元年以降最多の2,649.7kgを記録したが、令和2年(824.4kg)は前年の3分の1以下に急減し、3年は998.7kg(前年比21.1%増)であった
  • 密輸入事案の摘発の状況
    • 覚醒剤(覚醒剤原料を含む。以下この項において同じ。)及び大麻の密輸入事案(税関が関税法(昭和29年法律第61号)違反で摘発した事件に限る。ただし、警察等他機関が摘発した事件で、税関が当該事件に関与したものを含む。以下この項において同じ。)の摘発件数の推移(最近5年間)を形態別に見ると、覚醒剤の「航空機旅客(航空機乗組員を含む。以下この項において同じ。)による密輸入」は、前年の約10分の1に急減した令和2年(23件)に引き続き、3年も大きく減少し、5件(前年比78.3%減)であった。覚醒剤の「航空貨物(別送品を含む。)を利用した密輸入」は、2年(20件)は急減したが(前年比81.3%減)、3年は50件と前年の2.5倍に増加した。大麻の「航空機旅客による密輸入」も、前年の約3分の1に急減した2年(21件)に引き続き、3年も大きく減少し、6件(前年比71.4%減)であったが、大麻の「国際郵便物を利用した密輸入」は、平成30年以降高止まりの状況にあり、令和3年は159件(同10.4%増)であった。
    • 令和3年における覚醒剤の密輸入事犯の摘発件数を仕出地別に見ると、地域別では、アジア(30件)が最も多く、次いで、ヨーロッパ(24件)、北米(19件)の順であり、国・地域別では、米国(14件)が最も多く、次いで、マレーシア(11件)、英国(9件)の順であった(財務省関税局の資料による。)。
  • 矯正
    • 覚醒剤取締法違反の入所受刑者人員の推移(最近20年間)を男女別に見るとともに、これを入所度数別に見ると、4-2-3-4図のとおりである。令和3年の男性の入所受刑者は、3,530人(前年比205人減)であり、3度以上の者が61.9%を占め、同年の女性の入所受刑者は、541人(同91人減)であり、初入者が42.0%を占めた。男性は、入所受刑者全体のうち入所度数が3度以上の者の割合が一貫して最も高いのに対し、女性は、初入者の割合が一貫して最も高い
  • 組織的犯罪・暴力団犯罪
    • 令和3年における組織的犯罪処罰法違反の検察庁新規受理人員のうち、暴力団関係者(集団的に又は常習的に暴力的不法行為を行うおそれがある組織の構成員及びこれに準ずる者をいう。)は47人(7.2%)であった(検察統計年報及び法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。
    • なお、平成29年法律第67号による組織的犯罪処罰法の改正により、テロ等準備罪が新設された(平成29年7月施行)が、同罪の新設から令和3年まで、同罪の受理人員はない。
    • 暴力団対策法により、令和3年末現在、25団体が指定暴力団として指定されており、六代目山口組、神戸山口組、絆會(任侠山口組)、池田組、住吉会及び稲川会に所属する暴力団構成員は、同年末現在、約9,100人(前年末比約800人減)であり、全暴力団構成員の約4分の3を占めている(警察庁刑事局の資料による。)。
    • 令和3年に暴力団対策法に基づき発出された中止命令は866件(前年比268件減)、再発防止命令は37件(同15件減)であった(警察庁刑事局の資料による。)。
    • また、平成24年法律第53号による暴力団対策法の改正により導入された特定抗争指定暴力団等の指定や特定危険指定暴力団等の指定を含む市民生活に対する危険を防止するための規定に基づき、令和4年6月30日現在、2団体が特定抗争指定暴力団等に指定され、1団体が特定危険指定暴力団等として指定されている(官報による。)。
    • 暴力団関係者(犯行時に暴力団対策法に規定する指定暴力団等に加入していた者及びこれに準ずる者をいう。以下(2)において同じ。)の入所受刑者人員及び暴力団関係者率(入所受刑者人員に占める暴力団関係者の比率をいう。)の推移(最近20年間)は、令和3年の入所受刑者中の暴力団関係者について、その地位別内訳を見ると、幹部220人、組員359人、地位不明の者97人であった(矯正統計年報による。)
    • 令和3年における入所受刑者のうち、暴力団関係者の年齢層別構成比を見ると、40歳代が30.8%と最も高く、次いで、50歳代(30.3%)、30歳代(17.2%)、20歳代(10.4%)、60歳代(7.4%)の順であった(矯正統計年報による。)
  • 令和3年の仮釈放者の保護観察開始人員のうち、暴力団関係者(保護観察開始時までに暴力団対策法に規定する指定暴力団等との交渉があったと認められる者をいう。以下(3)において同じ。)の人員及び仮釈放者の総数に占める比率は、840人、7.8%(前年比0.4pt低下)であり、そのうち、一部執行猶予者の暴力団関係者は128人であった。3年の保護観察付全部・一部執行猶予者の保護観察開始人員のうち、暴力団関係者の人員及び保護観察付全部・一部執行猶予者の総数に占める比率は、220人、6.7%(同0.0pt上昇)であり、そのうち、保護観察付一部執行猶予者の暴力団関係者は185人であった(保護統計年報による。)
  • サイバー犯罪
    • サイバー犯罪(不正アクセス禁止法違反、コンピュータ・電磁的記録対象犯罪その他犯罪の実行に不可欠な手段として高度情報通信ネットワークを利用する犯罪をいう。)の検挙件数の推移(最近20年間)は、サイバー犯罪の検挙件数は、最近20年間では、平成15年以降増加傾向にあり、令和3年は1万2,209件(前年比2,334件(23.6%)増)と、大きく増加した。
    • 令和3年には、感染すると端末等に保存されているデータを暗号化して使用できない状態にした上で、そのデータを復号する対価として金銭を要求する不正プログラムである「ランサムウェア」による被害が拡大したことが確認されている
    • 不正アクセス行為の認知件数については、増減を繰り返しながら推移し、令和3年は1,516件(前年比1,290件(46.0%)減)であった。
    • 令和3年の不正アクセス行為の認知件数について、被害を受けた特定電子計算機(ネットワークに接続されたコンピュータをいう。)のアクセス管理者(特定電子計算機を誰に利用させるかを決定する者をいう。)別の内訳を見ると、被害は、「一般企業」が圧倒的に多く(1,492件)、「行政機関等」は15件、「プロバイダ」は5件、「大学、研究機関等」は4件であった。また、不正アクセス行為後の行為の内訳を見ると、「インターネットバンキングでの不正送金等」が最も多く(693件、45.7%)、次いで、「インターネットショッピングでの不正購入」(349件、23.0%)、「メールの盗み見等の情報の不正入手」(175件、11.5%)、「知人になりすましての情報発信」(71件、4.7%)の順であった。「インターネットバンキングでの不正送金等」は、前年と比較して1,154件(前年比62.5%)減少した(警察サイバー警察局、総務省サイバーセキュリティ統括官及び経済産業省商務情報政策局の資料による。)。
    • コンピュータ・電磁的記録対象犯罪(電磁的記録不正作出・毀棄等、電子計算機損壊等業務妨害、電子計算機使用詐欺及び不正指令電磁的記録作成等)、不正アクセス禁止法違反等の検挙件数の推移(最近5年間)は、4-5-2-2表のとおりである。不正アクセス禁止法違反の検挙件数は、近年、増減を繰り返しており、令和3年は429件(前年比29.6%減)であった。
    • サイバー犯罪のうち、不正アクセス禁止法違反及びコンピュータ・電磁的記録対象犯罪以外の犯罪(インターネットを利用した詐欺や児童買春・児童ポルノ禁止法違反等、犯罪の実行に不可欠な手段として高度情報通信ネットワークを利用する犯罪)の検挙件数の推移(最近5年間)は、検挙件数は、平成29年から5年連続で増加し、令和3年は1万1,051件(前年比27.0%増)であった。3年の検挙件数を見ると、詐欺は前年より大幅に増加した(同166.5%増)。性的な事件のうち、児童ポルノに係る犯罪は前年より1.9%増加し、青少年保護育成条例違反は前年より6.0%減少した。
    • 令和3年におけるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス。ただし、インターネット異性紹介事業(出会い系サイト)を除く。)に起因する事犯の被害児童数の総数は1,812人であり、主な罪名別に見ると、青少年保護育成条例違反が665人と最も多く、次いで、児童買春・児童ポルノ禁止法違反のうち、児童ポルノ所持、提供等(657人)、児童買春(336人)の順であった(警察庁生活安全局の資料による。)
  • 高齢者犯罪
    • 我が国の総人口は、令和3年10月1日現在、1億2,550万人で、高齢者人口は65歳以上では3,621万人(総人口に占める割合は28.9%)であり、70歳以上では2,835万人(同22.6%)である(総務省統計局の人口資料のうち、人口推計による。)。
    • 年齢層別の刑法犯検挙人員及び高齢者率(刑法犯検挙人員に占める高齢者の比率をいう。以下この節において同じ。)の推移(最近20年間)を総数・女性別に見ると、高齢者の検挙人員は、平成20年にピーク(4万8,805人)を迎え、その後高止まりの状況にあったが、28年から減少し続けており、令和3年は4万1,267人(前年比1.0%減)であった。このうち、70歳以上の者は、平成23年以降高齢者の検挙人員の65%以上を占めるようになり、令和3年は76.3%に相当する3万1,507人(同1.0%増)となった。高齢者率は、他の年齢層の多くが減少傾向にあることからほぼ一貫して上昇し、平成28年以降20%を上回り、令和3年は23.6%(同0.7pt上昇)であった。
    • 女性高齢者の検挙人員は、平成24年にピーク(1万6,503人)を迎え、その後高止まり状況にあったが、28年から減少し続けており、令和3年は1万3,162人(前年比1.0%減)であった。このうち、70歳以上の女性は、平成23年以降女性高齢者の検挙人員の7割を超えるようになり、令和3年は82.3%に相当し、前年と同じ1万831人であった。女性の高齢者率は、平成29年(34.3%)まで上昇し続けた後は横ばいで推移し、令和3年は33.5%(同0.6pt低下)であった。
    • 全年齢層と比べて、高齢者は窃盗の構成比が高いが、特に、女性高齢者は、約9割が窃盗であり、そのうち万引きによるものの構成比が約8割と顕著に高い。
  • 外国人犯罪・非行
    • 外国人新規入国者数は、平成25年以降急増し続け、令和元年には約2,840万人に達したが、2年2月以降、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、入管法に基づき入国拒否を行う対象地域の指定を始めとした水際対策が開始されたことにより大幅な減少に転じ、同年は358万1,443人(前年比2,482万1,066人(87.4%)減)であり、3年は15万1,726人(同342万9,717人(95.8%)減)であった。3年における外国人新規入国者数を国籍・地域別に見ると、ベトナムが2万4,623人(同72.9%減)と最も多く、次いで、中国(台湾及び香港等を除く。)1万9,374人(同97.7%減)、米国1万3,631人(同93.3%減)の順となっている。在留資格別の構成比は、短期滞在が47.3%と最も高く、次いで、技能実習(15.4%)、留学(7.7%)の順であった(出入国在留管理庁の資料による。)。
    • 在留外国人の年末人員(中長期在留者と特別永住者の合計数)は、27年以降過去最多を更新し続けていたが、令和2年(288万7,116人)に減少に転じ(前年比1.6%減)、3年は276万635人(同4.4%減)であった。同年における在留外国人の人員を国籍・地域別に見ると、中国(台湾を除く。71万6,606人)が最も多く、次いで、ベトナム(43万2,934人)、韓国(40万9,855人)の順であった(出入国在留管理庁の資料による。)
    • 令和3年における来日外国人による窃盗及び傷害・暴行の検挙件数を国籍別に見ると、窃盗は、ベトナムが2,653件(検挙人員937人)と最も多く、次いで、中国1,166件(同603人)、ブラジル303件(同107人)の順であった。傷害・暴行は、中国が245件(同299人)と最も多く、次いで、ベトナム165件(同198人)、フィリピン101件(同116人)の順であった(警察庁の統計による。)。なお、これら国籍別の検挙件数等を見るに当たっては、各国籍別の新規入国者数・在留者数に違いがあることに留意する必要がある
    • 来日外国人による特別法犯の検挙件数及び検挙人員は、いずれも、16年をピークに24年まで減少した後、25年からの増減を経て、28年から5年連続で増加していたが、令和3年は減少に転じ、検挙件数6,788件(前年比1,565件(18.7%)減)、検挙人員5,104人(同1,018人(16.6%)減)であった
    • 入管法違反の検挙件数は、平成17年から減少していたところ、25年から27年までの増減を経て、28年から増加し続けていたが、令和3年は減少に転じ、4,562件(前年比1,972件(30.2%)減)であった。3年における入管法違反の検挙件数を違反態様別に見ると、不法残留が2,906件と最も多く、次いで、旅券等不携帯・提示拒否(在留カード不携帯・提示拒否及び特定登録者カード不携帯・提示拒否を含む。)663件、偽造在留カード所持等(偽造在留カード行使及び提供・収受を含む。)517件、資格外活動217件の順であった(警察庁刑事局の資料による。)。
    • 令和3年における来日外国人による入管法違反及び覚醒剤取締法違反の検挙件数を国籍別に見ると、入管法違反は、ベトナムが2,109件(検挙人員1,429人)と最も多く、次いで、中国955件(同637人)、タイ325件(同265人)の順であった。覚醒剤取締法違反は、総数が444件(同335人)であり、ブラジルが94件(同66人)と最も多く、次いで、ベトナム86件(同72人)、フィリピン73件(同55人)の順であった(警察庁の統計による。)。なお、これら国籍別の検挙件数等を見るに当たっては、各国籍別の新規入国者数・在留者数に違いがあることに留意する必要がある
  • 再犯・再非行の概況
    • 再犯者の人員は、平成8年(8万1,776人)を境に増加し続けていたが、18年(14万9,164人)をピークとして、その後は漸減状態にあり、令和3年は平成18年と比べて43.0%減であった。他方、初犯者の人員は、12年(20万5,645人)を境に増加し続けていたが、16年(25万30人)をピークとして、その後は減少し続けており、令和3年は平成16年と比べて64.0%減であった。再犯者の人員が減少に転じた後も、それを上回るペースで初犯者の人員が減少し続けたこともあり、再犯者率は9年以降上昇傾向にあったが、令和3年は48.6%(前年比0.5p低下)であった
    • 有前科者の人員は、平成18年(7万7,832人)をピークに減少し続けているが(令和3年は前年比4.3%減)、20歳以上の刑法犯検挙人員総数が減少し続けていることもあり、有前科者率は、平成9年以降27~29%台でほぼ一定している。令和3年の有前科者を見ると、前科数別では、有前科者人員のうち、前科1犯の者の構成比が最も高いが、前科5犯以上の者も21.4%を占め、また、有前科者のうち同一罪名の前科を有する者は52.2%であった。
    • 暴力団構成員等(暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者をいう。)について、令和3年における20歳以上の刑法犯検挙人員の有前科者率を見ると、71.1%と相当高い(警察庁の統計による。)。
    • 覚醒剤取締法違反により検挙された20歳以上の同一罪名再犯者者率は、平成24年以降上昇し続けていたが、令和3年は前年比で2.0pt低下した68.1%であった。
    • 大麻取締法違反により検挙された20歳以上の同一罪名再犯者率は、平成16年(10.0%)を底として、翌年から上昇傾向に転じ、27年以降はおおむね横ばい状態で推移しており、令和3年は前年比で0.5pt上昇した24.2%であった。
    • 再入者の人員は、平成11年から毎年増加した後、18年をピークにその後は減少傾向にあり、令和3年は9,203人(前年比4.5%減)であった。再入者率は、平成16年から28年まで毎年上昇し続けた後、低下傾向にあり、令和3年は57.0%(同1.0pt低下)であった。
    • 女性について見ると、再入者の人員は、平成11年以降増加傾向にあったが、26年(996人)をピークにその後は減少し、令和3年は801人(前年比3.3%減)であった。3年における再入者率は、48.1%(同1.3pt上昇)であり、男性と比べると低い。
    • 総数の2年以内再入率は、平成11年に23.4%を記録した後、低下傾向にあり、令和元年に15.7%と初めて16%を下回り(政府は、2021年(令和3年)までに16%以下とすることを目標としていた。)、2年は15.1%(前年比0.5pt低下)であった。満期釈放者等も、平成11年に33.9%を記録した後、低下傾向にあり、20年以降は30%を下回り、令和2年は22.6%(同0.7pt低下)であった。仮釈放者の2年以内再入率は、平成23年以降わずかながら上昇し、25年から28年までは11%台で推移していたが、29年から低下し続け、令和2年は10.0%(同0.3pt低下)であった。2年の出所受刑者の2年以内再入率を、平成13年の出所受刑者と比べると、総数では6.5pt、満期釈放者等では9.7pt、仮釈放者では3.4pt、いずれも低下している。なお、令和2年の出所受刑者のうち一部執行猶予受刑者は1,489人であり、そのうち2年以内再入者は156人であった
    • 再入者のうち、前刑出所日から2年未満で再犯に至った者が5割以上を占めている。出所から1年未満で再犯に至った者は34.4%であり、3月未満というごく短期間で再犯に至った者も9.4%いる。また、再入者のうち、前回の刑において一部執行猶予者で仮釈放となった者は290人、実刑部分の刑期終了により出所した者は107人であり、そのうち出所から1年未満で再犯に至った者は、それぞれ111人、45人であった(矯正統計年報による。)
  • 犯罪被害
    • 平成14年(認知件数248万6,055件、被害発生率1,950.1)までは増加・上昇傾向にあったが、同年をピークとして、それ以降は減少・低下し続け、令和3年は、共に平成14年の約5分の1以下であった
    • 総数(この表に掲げた主な罪名の犯罪によって人が被害者となった認知件数の合計)に占める65歳以上の割合は、16.6%であり、これを罪名別に見ると、詐欺(52.3%)、殺人(27.4%)、横領(21.6%)の順に高い。
    • 各年齢層別に女性被害者が占める割合が最も高いのは、65歳以上であった。年齢層ごとに女性が被害者となった認知件数を見ると、すべての年齢層において、窃盗が最も多く、次いで、13歳未満及び13~19歳では強制わいせつ、65歳以上では詐欺、それ以外の年齢層では暴行の順であった
  • 新型コロナウイルス感染症と刑事政策
    • 特殊詐欺を始めとした詐欺事案
      • 大規模な自然災害が発生した後には、災害に便乗した義援金・寄付金などをかたった詐欺が発生するなど、特殊詐欺を実行する犯罪組織は、様々な社会の出来事に便乗した犯行を行う傾向があるところ、新型コロナウイルス感染症の感染拡大下においても、これに伴う人々の生活に対する不安や窮状につけ込んだ様々な手口による特殊詐欺事案が確認された。具体的には、行政機関の職員を名のる男から、同感染症関連の給付金の振込みに通帳等が必要であるから、職員を受取に向かわせる旨の電話を受けた事案や、息子を名のる男から、「会社を辞めた人が取引先から1,000万円を借りたが、コロナでうまくいかず行方不明になった。保証人の自分が返さないといけなくなった。」などと電話を受け、現金300万円をだまし取られた事案等が発生した。同感染症の感染拡大下において確認された特殊詐欺の予兆電話は様々なものがあり、「コロナの検査キットを送りますので家族構成を教えてください。」などと言って、新型コロナウイルス検査をかたったもの、「ワクチンが接種できるようになりました。後日返還するので、まず10万円を振り込んでください。」などと言って、ワクチンの優先接種をかたったもの、「コロナで会社が困っていれば500万から3,000万まで融資します。」などと言って、融資をかたったものなどが全国で相次いで確認された。これら同感染症に関連した特殊詐欺事案の認知件数は、令和2年は55件(被害額は約1億円)、3年は44件(被害額は約1億1,000万円)であり、検挙件数及び検挙人員は、2年は検挙件数13件、検挙人員16人、3年は検挙件数4件、検挙人員7人であった(警察庁刑事局の資料による。)。
        • また、特殊詐欺以外にも、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、マスクが品薄状態になった際には、インターネット上のショッピングサイトにおいてマスクの販売をかたり、利用者が代金を支払っても商品を送ってこない事案等も確認された。
    • ヤミ金融事犯
      • 新型コロナウイルス感染症の感染拡大下では、同感染症の影響等によって資金繰りが厳しくなった経営者に対し、法定利息を大幅に超える利息を受領する約定で金銭を貸し付ける契約をした出資法違反等の事件も発生しており、同感染症に関連したヤミ金融事犯の検挙事件数及び検挙人員は、令和2年は検挙事件数5事件、検挙人員23人、3年は検挙事件数4事件、検挙人員11人であった(警察庁生活安全局の資料による。)。
    • サイバー犯罪等
      • 新型コロナウイルス感染症の感染拡大下では、いわゆるフィッシング(実在する企業・団体等を装って電子メールを送り、その企業・団体等のウェブサイトに見せかけて作成した偽のウェブサイト(フィッシングサイト)を受信者が閲覧するよう誘導し、当該サイトでクレジットカード番号や識別符号を入力させて金融情報や個人情報を不正に入手する行為)の目的で、行政機関を装い、ワクチン接種や給付金の申請に関連した不審な電子メールを送付してフィッシングサイトへ誘導するなど、同感染症の感染拡大に乗じたサイバー犯罪やその疑いがある事案の発生も確認された。同感染症に関連するサイバー犯罪であると疑われる事案は、令和2年は887件、3年は257件確認された(警察庁サイバー警察局の資料による。)
    • 持続化給付金制度の悪用事案
      • 持続化給付金制度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、特に大きな影響を受けている事業者に対して、事業の継続を支え、再起の糧となるべく、事業全般に広く使える給付金を支給することを目的とした制度であり、令和2年5月から3年2月までの間に約441万件の申請がなされ、約424万件の中小企業・個人事業者に約5.5兆円の給付金が支給されたが、これらの申請の中には、事業を実施していないのに実施しているように装う、売上げの減少理由が同感染症の影響によらないのにそうであるかのように装う、支給対象であるかのように売上高を装うなど、実際は同給付金の支給要件を満たさないのにこれを満たすかのように装った不正な申請が含まれていた。このような不正な申請により持続化給付金をだまし取った詐欺事案につき、3年末までの検挙件数及び検挙人員は、4年8月17日時点の集計値で検挙件数2,578件、検挙人員2,866人(立件された被害額は合計約25億6,000万円)であった(警察庁刑事局の資料による。)。なお、同月10日時点で、持続化給付金の給付要件を満たさないにもかかわらず誤って申請を行い受給したなどとして同給付金の自主返還の申出が行われた件数は2万2,982件であり、そのうち返還済み件数は1万6,159件、返還済み金額は約173億3,500万円であった(経済産業省の資料による。)
    • 家賃支援給付金制度の悪用事案
      • 家賃支援給付金制度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い発出された緊急事態宣言の延長等により売上げの減少に直面する事業者の事業継続を下支えするため、事業者に対し、その事業のために占有する土地、建物の賃料負担を軽減する給付金の支給を目的とした制度であるが、同給付金の申請の中にも、賃料を実際よりも高く偽って申請するなどの不正な申請が含まれていた。このような不正な申請により家賃支援給付金をだまし取った詐欺事案につき、令和3年末までの検挙件数及び検挙人員は、4年8月17日時点の集計値で検挙件数64件、検挙人員61人(立件された被害額は合計約1億7,400万円)であった(警察庁刑事局の資料による。)。なお、同月10日時点で、家賃支援給付金の給付要件を満たさないにもかかわらず誤って申請を行い受給したなどとして同給付金の自主返還の申出が行われた件数は1,212件であり、そのうち返還済み件数は1,109件、返還済み金額は約8億6,900万円であった(経済産業省の資料による。)
    • 雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金制度の悪用事案
      • 雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金制度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により事業活動の縮小を余儀なくされた場合に、従業員の雇用維持を図るために、事業主に対して、休業手当等の一部を助成する制度であるが、これらの助成金の支給申請の中にも、雇用関係のない者を雇用関係があるように装ったり、休業の実態がないのに休業をしたことにするなどの不正な申請が含まれていた。このような不正な申請により雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金をだまし取った詐欺事案につき、令和3年末までの検挙件数及び検挙人員は、4年8月17日時点の集計値で検挙件数24件、検挙人員23人(立件された被害額は合計約1億4,600万円)であった(警察庁刑事局の資料による。)
  • 主要な犯罪の動向
    • 刑法犯の認知件数は、平成15年から減少を続けているところ、令和元年までの5年間における年平均減少率(複数年にわたる減少率から、一年当たりの減少率を求めたもの)は9.2%であったが、2年は61万4,231件(前年比13万4,328件(17.9%)減)であり、3年は56万8,104件(同4万6,127件(7.5%)減)であった。2年及び3年は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、政府による緊急事態宣言が発出され、対象地域の都道府県においては、外出自粛を始めとした感染防止に必要な数々の協力要請がなされ、全国的に人の移動や社会経済活動が大きく抑制された。このような人の活動の変化は、刑法犯認知件数の動向にも少なくない影響をもたらしたと見ることができる。
    • 平成27年から令和元年までの同月の認知件数の平均値を100とした場合における各月の指数を見ると、2年5月は50.0であり、同じ年の他の月と比べて顕著に少なかった。また、窃盗の認知件数の推移について、主要ターミナル駅滞在人口(人出)との関係を見ると、主要ターミナル駅滞在人口(人出)の減少・増加に伴い、窃盗の認知件数も減少・増加が見られた
    • 住宅対象の侵入窃盗の減少は、外出自粛等の要請によるいわゆる「ステイホーム」の影響もあると考えられる
    • 特殊詐欺は、給付金の支給等を始めとした種々の支援策やワクチンの接種に関連し、行政機関の職員等になりすまして現金等をだまし取ろうとする手口が報告されるなど、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が認知件数を押し上げる方向に作用した可能性がある一方で、人流の減少が犯行を抑制する方向に作用した可能性もある。そこで、平成30年以降における月別の認知件数の推移を見ると、令和2年及び3年の月別の認知件数は、元年の同月の認知件数よりも少なかった(同感染症の感染拡大前の2年1月を除く。)。2年の認知件数は、全体で前年より19.6%減少したところ、月別に見ると、全国47都道府県の主要駅のうち多くにおいて滞在人口(人出)が大きく減少した4月及び5月は、それぞれ前年より16.4%、10.3%の減少に過ぎなかった一方、滞在人口(人出)の減少が小さかったにもかかわらず、7月は前年同月比31.8%減、11月は同30.9%減と大きく減少した。したがって、2年の認知件数は、近年では比較的少ない傾向であったことが認められるものの、多くの主要駅における滞在人口(人出)の減少との関係は確認できなかった。3年の認知件数は、全体で前年より7.0%増加したものの、元年と比べると14.0%低い水準であった。3年の滞在人口(人出)を月別に見ると、多くの主要駅において、1月及び2月は前年同月から大きく減少し、4月及び5月は大きく増加したが、特殊詐欺の認知件数を月別に見ると、1月(前年同月比16.8%減)及び2月(同8.7%減)は他の月よりも少ない傾向が見られた一方で、4月(同7.0%増)及び5月(同1.2%増)は他の月と比べて多い傾向が見られなかった
    • サイバー犯罪の検挙件数は、近年増加し続けているところ、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行による経済の不安定化などにより、直接的に金銭を求めるサイバー攻撃も増加している。特に最近国内でも被害が急増しているランサムウェアは、感染すると端末等に保存されているデータを暗号化して使用できない状態にした上で、そのデータを復号する対価として金銭を要求する不正プログラムである。7-3-3-2図は、令和2年下半期以降における企業・団体等におけるランサムウェア被害の報告件数の推移を見たものである。2年下半期には21件であった報告件数が、3年下半期には85件と前年同期の約4倍に増加した。元年には20.2%であったテレワーク導入企業の割合は、同感染症の感染拡大の影響もあり、2年には47.5%、3年には51.9%と急激に上昇したことから(総務省情報流通行政局の資料による。)、テレワークを実現するためのVPN機器の脆弱性が悪用され、ランサムウェア被害の増加につながった可能性がある。一方で、ランサムウェア被害の増加の要因としては、テレワークの増加以外にも、企業のグローバル化に伴う海外拠点ネットワークの脆弱性の悪用や攻撃手法の高度化・巧妙化・組織化が進んだことなども挙げられていることに留意が必要である
    • 平成27年以降の覚醒剤及び大麻の密輸入事案の摘発件数の推移を入国者数(外国人の入国者数と日本人の帰国者数の合計)と対比して見ると、7-3-3-6図のとおりである。入国者数は、令和2年は元年より84.4%減少し、3年は2年より89.3%減少した。覚醒剤の密輸入事案の摘発件数は、2年は元年より83.1%減少し、大麻の密輸入事案の摘発件数は、2年は元年より15.1%減少した。覚醒剤の密輸入事案の摘発件数の多くは、航空機旅客による密輸入が占めていた(元年は53.9%)ことから、航空機旅客の減少の影響をより大きく受けたのに対し、大麻の密輸入事案の摘発件数の多くは、国際郵便物を利用した密輸入が占めていた(同69.0%)ことから、その影響を大きく受けなかった可能性が考えられる。なお、3年は、覚醒剤の密輸入事案の摘発件数に占める航空貨物の構成比が顕著に上昇した
    • 外国人新規入国者数は、平成25年以降増加していたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、令和2年2月に、入管法に基づく水際対策が開始され、さらに、同年4月に水際対策が強化されたことなどにより、大幅な減少に転じ、それに伴い、2年の在留外国人の年末人員も、前年から減少した。来日外国人による刑法犯の検挙人員の推移(平成27年以降)について、在留資格別、正規滞在・不法残留の別に見るとともに、正規滞在者指数(同年末現在の正規滞在者数を100とした場合における各年末の正規滞在者数の指数)及び不法残留者指数(28年1月1日現在の不法残留者数を100とした場合における各翌年1月1日現在の不法残留者数の指数)と対比して見たものである。正規滞在者指数及び不法残留者指数は共に、令和元年までは前年から増加し、2年及び3年に減少した(2年の技能実習の不法残留を除く。)。
    • 刑法犯の検挙人員について見ると、技能実習は、2年に正規滞在、不法残留とも前年から大きく増加し(それぞれ前年比51.9%増、同45.1%増)、3年は不法残留につき前年から22.6%増加した。
    • 短期滞在は、正規滞在につき、2年、3年とも前年から大きく減少した(それぞれ前年比47.7%減、同51.2%減)のに対し、不法残留については2年に大きく増加し、前年の2倍となった。留学は、正規滞在につき、2年、3年とも前年から減少したが、不法残留については、2年に前年から減少した後、3年は1.2%増加した。
    • なお、各年末の正規滞在者数(指数)や各翌年1月1日現在の不法残留者数(指数)と、1年間に検挙された延べ人数である検挙人員を一概に比較することは困難であることに留意を要する。
  • まとめ
    • 特殊詐欺の令和2年における認知件数は、前年比19.6%減と大きく減少した。その原因や新型コロナウイルス感染症の影響の有無については断定できないものの、同感染症感染拡大下において、人と人との接触が避けられたことにより、面識のない被害者と対面して財物を詐取するなどの態様による犯行が困難となっていた可能性も考えられる。
    • サイバー犯罪は、令和3年の検挙件数が前年比23.6%増と特に増加しており、企業・団体等におけるランサムウェア被害の報告件数についても3年下半期において前年同期から大きく増加しているが、その原因としては、テレワークの増加を含む様々な要因が考えられることからすると、今後、新型コロナウイルス感染症感染拡大が落ち着いたとしても、引き続き十分な警戒が必要である。
    • 児童虐待や配偶者からの暴力の相談(対応)件数・検挙件数については、新型コロナウイルス感染症感染拡大以前から増加傾向又は高止まりが続いており、令和2年及び3年における増加又は高止まりが同感染症の影響によるものか否かは判然としない。もっとも、海外では、都市封鎖下において、家庭内暴力が増加したことが報告されている地域もある。我が国においても、外出自粛等により加害者に監視され続けている状態で通報等が困難であった被害者が存在した可能性があり、暗数の存在も考えられるところである。
    • 違法薬物の密輸入は、新型コロナウイルス感染症感染拡大によって、大きな影響を受けた。令和2年は、特に携行型の犯行態様が多い覚醒剤について、航空機旅客による密輸入の摘発件数が前年から激減しており、これは入国者数激減に伴うものと言える。他方で、大麻については、国際郵便物を用した密輸入が多かったため、2年の摘発件数は大きく減少しておらず、同感染症の影響をそれほど受けなかった可能性が考えられる。なお、金の密輸入事件の処分件数についても、令和2事務年度(令和2年7月1日から3年6月30日まで)は前事務年度から激減しており、関税法改正による罰則強化や取締りの強化に加え、入国者数の激減により航空機旅客による犯行が困難となったこともその一因である可能性が考えられる。
    • 来日外国人については、短期滞在の正規滞在者において、新規入国者数が大きく減少した影響を受け、令和2年及び3年の刑法犯検挙人員は大きく減少した。これに対し、技能実習の不法残留者においては、2年、3年共に刑法犯検挙人員は前年と比べて増加したが、不法残留者数自体が、2年1月1日時点で前年同日時点と比べると大きく増加しており、3年1月1日時点においても前年同日と比べて増加していることを考え合わせると、検挙人員の増加は滞在人口の増加に伴うものであった可能性もある
  • コロナ禍における犯罪の動向等を踏まえた犯罪予防策
    • 特殊詐欺等、人々の混乱や窮状につけ込んで冷静な判断を失わせる犯罪では、パンデミックも口実として利用される。これらを防止するためには、その手口を新聞やテレビ等で取り上げるなどして注意喚起することが必要である。
    • また、給付金制度等を悪用した不正受給事案については、徹底した取締りとその公表により、詐欺によるものかは不明であるものの、多くの自主返納事案があった。取締りにより悪質事案を検挙するとともに、積極的な広報も行い、自主返納による被害回復を行うことも重要である。
    • 刑法犯認知件数は、初めて緊急事態宣言が発出された令和2年4月及び5月に大きく減少しており、外出自粛等の影響により、犯行機会が減少したものと考えられる。刑法犯認知件数は、その後も前年同月比で大きく減少したまま推移したが、3年4月以降においては、前年同月比で減少傾向は続いていたものの、前年同月から増加した月もあった。「コロナ禍」が収束するか否かにかかわらず、今後の犯罪動向については予断を許さない状況にあると言え、引き続き4年以降の動向を注視していく必要がある。
    • 児童虐待や配偶者からの暴力については、新型コロナウイルス感染症感染拡大下における外出自粛等の影響による暗数の増加も懸念されるところであり、法務総合研究所が実施している犯罪被害実態(暗数)調査を始め、可能な限りその実態解明に努めていくことも重要である。
    • 薬物を始めとする密輸入事案については、今後、入国者数が増加するに伴って増加することも懸念されるところであり、引き続き徹底した取締りを行うなどの水際対策が重要である。
    • サイバー犯罪については、新たな手口やその対策についての積極的広報を行うとともに、個人・企業・団体等において情報セキュリティ対策を行うなどの予防策を講じることが肝要である。
    • 来日外国人については、今後再び新規入国者数が増加することが考えられることから、例えば、その資格の付与に当たっての審査を十分に実施するほか、入国後の生活状況等について、必要なフォローや受入先である事業者に対する監督を充実させることが犯罪予防にもつながると考えられる。来日外国人犯罪の動向についても、引き続き調査・分析を行い、有効な予防策等の検討を継続していく必要がある。
  • 犯罪者・非行少年の生活意識と価値観
    • 刑法犯により検挙された者について、犯行の動機別構成比を犯罪・非行類型(薬物事犯類型及び交通事犯類型を除く。以下この節において同じ。)別に見ると、犯行の動機として、粗暴犯類型では憤怒等、詐欺事犯類型では生活困窮等、性犯類型では性的欲求の構成比がそれぞれ最も高かった。動機不明の構成比は、重大事犯類型(9.9%)が、他の犯罪・非行類型(1.2~3.6%)よりも高かった
    • 社会に対する満足度を対象者の年齢層別に見ると、対象者全体では、「満足」の構成比が30.5%であったが、少年の満足度が高い傾向が見られ、年長少年(48.4%)が最も高く、30歳代の者(15.9%)が最も低かった。「不満」の構成比は、50~64歳の者(23.8%)が最も高く、次いで、30歳代の者(21.5%)、年少少年(19.4%)の順であった。
    • 社会を「不満」とする者の主要な理由についての該当率を見ると、対象者全体では、「金持ちと貧乏な人との差が大きすぎる」(54.7%)が最も高く、次いで、「正しいと思うことが通らない」(41.3%)、「まじめな人がむくわれない」(40.9%)の順であった。年齢層別に見ると、「金持ちと貧乏な人との差が大きすぎる」の該当率は30歳代の者(78.3%)が、「正しいと思うことが通らない」の該当率は50~64歳の者(50.0%)が、「まじめな人がむくわれない」は30歳代の者(52.2%)が、それぞれ最も高かった。
    • 「悪い者をやっつけるためならば、場合によっては腕力に訴えてもよい」の項目について「賛成」に該当する者の構成比は、対象者全体では22.0%であったが、若年層における構成比が高い傾向が見られ、年少少年(28.6%)が最も高かった。「自分のやりたいことをやりぬくためには、ルールを破るのも仕方がないことだ」の項目について「賛成」に該当する者の構成比は、対象者全体では9.9%であった。年齢層別では、20歳代の者(18.2%)が最も高く、次いで中間少年(11.0%)、50~64歳の者(9.8%)の順であった。「義理人情を大切にすべきだ」の項目について「賛成」に該当する者の構成比は、対象者全体では73.7%であり、30歳代の者(84.5%)が最も高く、中間少年(51.2%)が最も低かった
    • 人々が犯罪・非行に走る原因に対する意識を対象者の年齢層別に見ると、対象者全体では、「自分自身」(75.3%)の構成比が最も高く、次いで、「友達・仲間」(14.2%)、「家族(親)」(5.6%)の順であった。年齢層別では、年少少年は、「家族(親)」(10.8%)の構成比が顕著に高かった。中間少年は、「自分自身」(58.1%)の構成比が顕著に低く、「友達・仲間」(29.9%)の構成比が顕著に高かった。年長少年は、「自分自身」(70.3%)の構成比がやや低く、「友達・仲間」(18.8%)の構成比がやや高かった。50~64歳の者と65歳以上の者は、「自分自身」の構成比(それぞれ82.5%、85.2%)がやや高かった。「その他」とした者の具体的な記述を見ると、「育ってきた環境」や「社会の仕組み」など環境や社会を原因として挙げる者や「全て当てはまると思う」など「自分自身」、「家族(親)」及び「友達・仲間」の全てを原因として挙げる者が多く、年齢層ごとに大きな差は見られなかった。
    • 平成元年以降の年齢層別の人口の推移は、少年を含む若年層の人口の割合が減少する一方、65歳以上の高齢者の人口が約2.5倍に増加するなど、少子高齢化が進んでいる。加えて、平均世帯人数が減少傾向にあるとともに(令和元年は2.39人)、ひとり親世帯数が増加傾向にあるほか、令和元年の共働き世帯数は、平成元年の約1.5倍に増加した一方、専業主婦世帯数は3分の2以下に減少しており、家族の形態が大きく変化してきている。
    • 他方で、近時、携帯電話、インターネット等の通信手段の普及・利用率が高まり、特に、スマートフォン保有率、若年者を中心としたSNS利用率は著しく上昇した。平成28年度及び令和元年度に内閣府が実施した「子供・若者の意識に関する調査」を見ても、学校で出会った友人との関わり方について、「会話やメール等をよくしている」の質問は、その他の質問と比べて、「そう思う」の該当率が大きく上昇しているなど、コミュニケーションの手段についての変化が見られる。
    • 高等学校等、大学・短期大学への進学率はいずれも上昇傾向にあり、高等学校の中途退学率は、令和2年に1.1%まで低下した。中学校及び高等学校における問題行動(不登校、暴力行為及びいじめ)は、中学校における不登校を除き、おおむね減少傾向にある一方、小学校における問題行動が増加傾向にあり、特に、暴力行為やいじめの増加が顕著である。
    • 我が国の経済情勢や完全失業率は、リーマンショックや新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響等という特殊要因により一時的に低調になった時期はあるものの、基本的には、おおむね堅調に推移していると言える。教育程度別の就職率の推移を見ると、中学新卒者、高校新卒者及び大学新卒者は、令和3年にいずれも95%を超えるなど高い水準にある。一方、就職後1年間の離職率の推移を見ると、2年は、中学新卒者では31.0%と、高校新卒者の2倍以上、大学新卒者の約3倍も高く、就労が継続しにくい傾向もうかがえる。内閣府が実施した「国民生活に関する世論調査」の中の働く目的についての結果を見ると、「お金を得るために働く」の3年の構成比は、総数では6割を超えたが、年齢層が上がるほど低くなる傾向にあり、「社会の一員として、務めを果たすために働く」や「生きがいをみつけるために働く」といった目的の構成比が高くなる傾向がある。

~NEW~
法務省 令和4年版再犯防止推進白書(令和3年度再犯の防止等に関する施策)
▼全体版
  • 薬物事犯者は、犯罪・非行をした者であると同時に、薬物依存症の患者である場合が多い。2020年(令和2年)出所者(覚醒剤取締法違反)の2年以内再入者は776人であり、そのうち8割以上に当たる654人が同罪名による再犯であることから(特1-1-1参照)、覚醒剤への依存の強さがうかがえる。
  • そのため、薬物事犯者の再犯・再非行を防止するためには、「改善更生に向けた指導」のみならず、「依存からの『回復』に向けた治療や支援」を継続することも必要である。矯正施設や保護観察所では、効果検証を実施しながら専門プログラムの改善等を図っているほか、薬物事犯者を地域の保健医療機関等に適切につなげるための支援にも注力している。
  • また、薬物事犯の中でも大麻事犯の検挙人員は8年連続で増加するなど過去最多を更新しており、「大麻乱用期」とも言える状況になっている。大麻事犯は、検挙人員の約7割が30歳未満であるなど、若年層における乱用拡大が顕著でもあり、その対応が急務となっている
  • 刑事施設における薬物依存離脱指導の効果検証結果
    • 刑事施設における特別改善指導「薬物依存離脱指導」(【施策番号44】参照)については、刑の一部執行猶予制度の開始により、当該対象者の実刑部分が比較的短期間となる可能性があることから、刑期の短い者等にも柔軟に指導できるよう、標準プログラムを改訂し、2017年度(平成29年度)から本格的に新体制で指導を実施(以下「新実施体制」という。)している。この新実施体制における標準プログラムの指導効果を検証するため、専門プログラムの受講による薬物に対する態度等の変化について、心理尺度を用いた質問紙調査を実施した。また、新実施体制における標準プログラムの受講率及び薬物依存離脱指導対象者の再犯※3率を標準プログラム改訂前の指導体制(以下「旧実施体制」という。)と比較し、改訂に伴う効果を中心に確認した。
    • 調査1では、受講群と比較対照(受講待機)群に対し、受講前後(比較対照群については同時期)に自記式質問紙調査を実施し、専門プログラムによる心理尺度得点の変化を確認したところ、薬物を再使用しないためのスキル、継続的に治療や援助を求める態度、薬物依存の問題を変えたいという変化への動機付け及び薬物の対処行動に関する全般的な自信について得点の上昇が認められた。調査2では、新実施体制における調査対象者の95.1%が標準プログラムを受講しており、旧実施体制の調査対象者と比べて受講率が27.0ポイント向上したほか、新実施体制の調査対象者の再犯率は20.9%であり、旧実施体制下での結果(26.6%)より5.7ポイント低く、統計的に有意な差が認められた(特1-1-6参照)。これらの検証結果から、標準プログラムの改訂は、受講率の向上に寄与し、薬物犯罪の再犯率の減少にも寄与した可能性が示唆された。
  • 保護観察所における薬物再乱用防止プログラムの効果検証結果
    • 保護観察所における薬物再乱用防止プログラム(【施策番号44】参照)については、運用を開始した2016年(平成28年)6月から一定期間が経過したことを踏まえ、その対象者の再犯追跡調査及び質問紙調査を行った。再犯追跡調査については、2018年(平成30年)に薬物事犯により保護観察に付された成人保護観察対象者の保護観察開始後4年以内の薬物事犯の再犯率を、同プログラム受講群と非受講群別に調査したところ、同プログラム受講群の再犯率は30.3%であり、非受講群のそれ(34.6%)より統計的に有意に低く、同プログラムの受講による一定の再犯防止効果が示唆された。
    • 質問紙調査については、刑事施設において薬物依存離脱指導の専門プログラムを受講した者等が仮釈放等により釈放された後の薬物再乱用防止プログラム受講前後の心理尺度得点の推移を調査したところ、薬物依存からの離脱につながる態度等が比較的高い水準に保たれていることが認められた刑事施設や保護観察所では、薬物依存からの回復に向けた指導・支援を実施しているが、刑事司法機関が関わることのできる期間は限られたものであることから、保護観察所においては、保護観察等の処遇終了時期を見据えて地域の保健医療機関等の支援につなげるよう取り組んでいる。
    • 基本的な取組としては、保護観察所で実施している薬物再乱用防止プログラム(【施策番号44】参照)に、ダルク等の支援機関・団体のスタッフの参加を得て、ダルク等の活動に触れる機会を作ったり、薬物依存を改善するための医療やプログラム等の援助を提供している機関等と連携し、これら機関等の医療や援助を受けるよう保護観察対象者に必要な指示を行ったりしている。また、2019年度(令和元年度)から、薬物依存のある対象者が、地域における支援を自発的に受け続ける習慣を身に付けられるよう、仮釈放後の一定期間、更生保護施設等に居住させた上で、ダルク等の支援機関・団体と連携した保護観察処遇を実施するなどの試行的な取組(【施策番号47】参照)を開始している。
    • また、法務省及び厚生労働省は、「薬物依存のある刑務所出所者等の支援に関する地域連携ガイドライン」(【施策番号52】参照)を策定し、2016年度(平成28年度)から運用を開始している。保護観察所は、同ガイドラインに基づき、地域において薬物依存症者への治療や支援を実施している機関・団体による連絡会議を定期的に開催するなどして、地域支援体制の構築を図っているほか、個別のケースについてケア会議を開催するなどして、保護観察期間中のできるだけ早い段階から地域社会での治療・支援につなげるように努めており、こうした取組を通じて、治療・支援に当たる機関・団体の相互理解を深めている。
    • 薬物事犯保護観察対象者のうち、保護観察期間中に地域の保健医療機関等による治療・支援を受けた者の割合は2017年度(平成29年度)は5.2%、2020年度(令和2年度)は7.2%と上昇傾向にあったが、2021年度(令和3年度)においては、6.3%と減少に転じた。保護観察期間中に地域の保健医療機関等の治療・支援につながる割合は小さく、今後も引き続き、地域社会での治療・支援へのつなぎに力を入れていく必要がある。
    • 第208回国会において成立した刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)による改正後の更生保護法には、保護観察における特別遵守事項として、更生保護事業を営む者その他の適当な者が行う特定の犯罪的傾向を改善するための専門的な援助であって法務大臣が定める基準に適合するものについては、これを受けることを指示し、又は保護観察対象者にこれを受けることを義務付けることを可能とする規定が設けられた。これにより、保護観察対象者に対して、保護観察期間中から支援機関・団体によるプログラム等の受講を義務付けることが可能となった。このような取組を通じて、保護観察対象者と地域社会との間で、保護観察対象者が、保護観察終了後も自らの意思でそうしたプログラム等の受講を続けられる関係性が築かれ、地域社会において“息の長い”支援が可能となっていくものと考えられる
  • 大麻等の薬物対策のあり方に関する見直しについて
    • 我が国における薬物行政については、戦後制定された薬物4法を基本として、取締りをはじめとした各種施策が実施されてきたところ、違法薬物の生涯経験率は諸外国と比較して、著しく低くなっているなど、高い成果を挙げてきている。
    • しかし、大麻事犯の検挙者数は急増しており、若年層における大麻乱用や、再犯者率の上昇、大麻リキッドなど人体への影響が高い多様な製品の流通拡大が問題となっている。
    • 大麻に関する国際的な動向に目を向けると、諸外国においては、大麻から製造された医薬品が市場に流通し、2020年(令和2年)12月に開催された国連麻薬委員会(CND)の会合において、麻薬単一条約上の分類に、大麻の医療上の有用性を認める変更がなされたところである。
    • このような大麻に関する我が国社会状況の変化や国際的な動向等を踏まえ、厚生労働省は、今後の薬物対策のあり方を検討するため、2021年(令和3年)に「大麻等の薬物対策のあり方検討会」を開催し、同検討会では、「使用」に対する罰則を設けていないことが「大麻を使用してもよい」いう誤ったメッセージと受け止められかねない状況となっているとの指摘や、再乱用防止と社会復帰支援の推進については、刑事司法機関、医療・保健・福祉機関、民間支援団体等がより一層連携し、“息の長い”支援を目指すことの重要性が確認された。
    • 厚生労働省ではこのとりまとめを受けて、大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の改正に向けた議論や、その論点整理等を行うため、2022年(令和4年)3月に厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会の下に大麻規制検討小委員会を設置し、大麻規制の見直しについての議論をとりまとめた。具体的には、
      • 若年層を中心に大麻事犯が増加している状況の下、薬物の生涯経験率が低い我が国の特徴を維持・改善していく上でも、大麻の使用禁止を法律上明確にする必要がある
      • 大麻について使用罪の対象とした場合でも、薬物乱用者に対する回復支援のための対応を推進し、薬物依存症の治療等を含めた再乱用防止や社会復帰支援策も併せて充実させるべきである
        といった方向性が示された。今後、大麻取締法等の改正に向けて、引き続き必要な検討を進めていく予定である。
  • 今後の展望
    • 刑事司法機関、医療・保健・福祉機関といった各関係機関が、それぞれが行う指導や支援を更に充実させることはもちろんのこと、各関係機関の指導や支援が連続性・一貫性をもって実施される必要がある。そのためには、各関係機関の連携体制を深め、対象者に関する情報の共有が密に行われることが望ましい。また、それぞれの関係機関のみで効果検証を行うのではなく、刑事司法手続やその後の地域社会での指導・支援を合わせて検証を行うことなどを通じ、各関係機関の縦割りを打破し、政府一丸となって薬物事犯者に対する効果的な方策を検討していきたいと考えている。
  • 性犯罪者の再犯防止のためには、刑事司法関係機関における取組を更に充実させる必要があることは言うまでもない。他方で、性犯罪により刑事施設に入所する者は、性犯罪者の一部であり、例えば、罰金や保護観察が付かない執行猶予判決を受けた者など、刑事司法関係機関からの指導を受けないまま、社会に戻る者も存在する。そうした者たちの再犯を防止するためには、地域住民に身近な各種サービスを提供している地方公共団体による取組を進めることも不可欠であるが、性犯罪者に対する支援は、専門的な知見を必要とすることなどから、地方公共団体が独自に、性犯罪者に特化した取組を進めることは容易ではないと考えられる。そのため、政府においては、対象者本人に係る必要情報を地方公共団体に適切に提供するだけではなく、2022年度(令和4年度)中に、地方公共団体等が活用可能なプログラムを開発することとしており、今後、地方公共団体が連携した性犯罪者の再犯防止対策を一層推進していくこと必要であると考えている。
  • 刑法犯の検挙件数は毎年減少する中、児童虐待に係る検挙件数は増加傾向にあり、配偶者からの暴力事案等の検挙件数も10年前と比較すると3倍以上に増加するなど、これらの犯罪を防ぐための取組が急務となっている。これらの犯罪についての再犯防止を推進する上では、加害者と被害者の関係性を踏まえた指導が必要であり、加害者と被害者が再び一緒に生活する可能性があることも想定した上で、指導を行わなければならない場合もあるという特性がある。
  • 新受刑者のうち、高齢者や障害を有する者の割合は増加傾向にある)。また、高齢者の2年以内再入率は直近の5年間では20.0%前後で推移しており、出所者全体(2016年(平成28年)出所者:17.3%、2020年(令和2年)出所者:15.1%)と比べると一貫して高く、知的障害を有する受刑者は、再入者全体と比べると、再犯に至るまでの期間が比較的短く、刑事施設への入所度数は高い傾向にある。高齢者や障害がある者の再犯を防止するためには、社会内での福祉的支援につなげることが有益と考えられることから、政府においては、矯正施設在所中の指導及び出口支援(矯正施設出所者等を福祉サービス等に橋渡しする取組)に加え、入口支援(【施策番号34、42及び43】参照。起訴猶予者、刑の執行猶予者など刑事司法の入口段階にある者に対して、福祉サービス等に橋渡しする取組)を進めている。
  • 刑事施設における各種指導は、収容の大半を占める男性を念頭にその枠組みが構築されてきた。しかし、女性受刑者は、男性受刑者と比較すると、罪名が覚醒剤取締法違反である者、高齢者(65歳以上)、精神障害の問題を抱えている者の割合が高く、また、女子少年院在院者は、男子のそれと比較して、被虐待経験を有する者の割合が高いなど)、女性受刑者等は、特有の課題を有していることがうかがえる。そのため、近年は、女性受刑者等の特有の課題に着目した指導・支援の充実を図っている
  • 政府は、「再犯防止推進計画」(平成29年12月15日閣議決定)に、「学校等と連携した修学支援の実施等」や「少年・若年者に対する可塑性に着目した指導等」などを明記し、それらの取組を推進してきた。その結果、若年(26歳未満)の出所者の2年内再入率や少年院出院者の2年以内再入院率(特2-3-2参照)はおおむね減少傾向にあるなど、若年者や少年に対する再犯防止の取組には、一定の成果が認められるものの、出所受刑者(全体)の2年以内再入率(【指標番号3】参照)のそれと比較すると、いずれの減少幅も小さい現状にあることが認められる。また、少年院出院者の2年以内再入院率は、直近の2020年(令和2年)出院者で9.0%となっており、政府目標(8.8%)にわずかに届いておらず、若年者、少年の再犯・再非行防止のための取組は、今後も、重点的に取り組む必要がある。
  • 2016年(平成28年)12月に成立・施行された「再犯防止等の推進に関する法律(平成28年法律第104号)」において、地方公共団体は、その地域の実情に応じ、再犯防止施策の推進に関する計画(以下「地方再犯防止推進計画」という。)を定め、それらの施策を実施する責務を有することが明記された。しかしながら、多くの地方公共団体にとって、再犯防止はこれまで取り組んだことがない事業であり、具体的な取組を進めるためのノウハウや知見が蓄積されていなかったため、法務省では、「地域再犯防止推進モデル事業」の実施や協議会の開催など、地方公共団体の再犯防止施策を推進するための取組を進めている。また、「再犯防止推進計画加速化プラン」(令和元年12月23日犯罪対策閣僚会議決定)の成果目標の一つとして「2021年度(令和3年度)末までに、100以上の地方公共団体で地方再犯防止推進計画が策定されるよう支援する」旨が定められていたところ、2022年(令和4年)4月1日現在、371の地方公共団体で同計画が策定されている。
  • 民間協力者による矯正施設内での活動については、篤志面接委員や教誨師といった長年矯正の分野で活動している方々に加えて、近年では、IT企業・アスリート等、これまで矯正施設とは関わりがなかった方々が新たに矯正施設での処遇に携わる事例が増えている。この傾向は、刑事施設、少年院を問わず確認でき、社会全体で再犯防止に取り組む機運が高まってきている
  • 刑務所出所者等の就労の機会を確保することは、再犯防止のために重要であり、「宣言:犯罪に戻らない・戻さない」(平成26年12月16日犯罪対策閣僚会議決定)において、犯罪や非行をした者を実際に雇用している協力雇用主の数を、2020年(令和2年)までに約1,500社まで増加させるという数値目標が設定された。政府においては「宣言」で設定された数値目標の確実な達成を図るべく、協力雇用主の活動に対する支援の充実に向けた施策を推進し、刑務所出所者等の就労の機会の増加に取り組んできた。
  • 保護司は、犯罪をした人又は非行のある少年が、実社会の中で健全な一員として更生するよう、保護観察官と協働して保護観察等を行うなど、更生保護の中核の役割を果たしており、地域社会の安全・安心にとって欠くことのできない存在である。
    • 2021年(令和3年)3月、京都コングレスのサイドイベントとして開催した「世界保護司会議」では、「世界保護司デー」の創設等を盛り込んだ「京都保護司宣言」が採択され、我が国の保護司制度は“HOGOSHI”として、国際的な評価と共感を得ることとなった。
    • しかし、近年、保護司数は減少の一途をたどり、高齢化も進んでいる。その背景には、人口の減少や地域における人間関係の希薄化といった社会的要因に加え、保護司活動に伴う不安や負担が大きいことが指摘されており、保護司制度の維持が危惧される状況にある。
    • こうした状況を踏まえ、地域社会の変化に適応し、幅広い世代から多様な人材を保護司として迎え入れ、やりがいを持って長く活動できるよう、保護司活動に対する支援に取り組む必要がある。
  • 再犯防止をめぐる近年の動向
    • 刑法犯検挙者中の再犯者数は、2007年(平成19年)以降、毎年減少しており、2021年(令和3年)は8万5,032人であった。再犯者率は、初犯者数が大幅に減少していることもあり、近年上昇傾向にあったが、2021年(令和3年)は、48.6%と前年(49.1%)よりも0.5ポイント減少した。
    • 新受刑者中の再入者数は、刑法犯検挙者中の再犯者数と同様、近年減少傾向にあり、2021年(令和3年)は9,203人であった。再入者率は、近年58~59%台で推移していたところ、2021年(令和3年)は57.0%と前年(58.0%)よりも1.0ポイント減少した。
    • 出所受刑者の2年以内再入者数は、2008年(平成20年)以降、毎年減少しており、2020年(令和2年)出所者では2,863人と、近年2年以内再入者数が最も多かった2005年(平成17年)出所者(6,519人)と比べて2分の1以下であった。満期釈放者の再入者数については、「再犯防止推進計画加速化プラン」(令和元年12月23日犯罪対策閣僚会議決定)において、2022年(令和4年)までに2,000人以下とするという数値目標を設定しているところ、2019年(令和元年)の満期釈放者の再入者数は1,936人となって当該目標を達成し、2020年(令和2年)では、更に1,749人まで減少した。
    • また、出所受刑者の2年以内再入率については、「再犯防止に向けた総合対策」(平成24年7月20日犯罪対策閣僚会議決定)において、2021年(令和3年)までに16%以下にするとの数値目標を設定しているところ、2019年(令和元年)出所者では15.7%となって当該目標を達成し、2020年(令和2年)出所者では、更に15.1%まで減少した。なお、いずれの出所年においても、満期釈放者の2年以内再入率は、仮釈放者(10.0%)よりも高く、2020年(令和2年)は22.6%であった
  • 2020年(令和2年)出所者の2年以内再入率について、主な罪名・特性別で見ると、「覚醒剤取締法違反」(15.5%)、「窃盗」(20.0%)、「高齢(65歳以上)」(20.7%)が全体(15.1%)よりも高くなっている。
    • また、2020年(令和2年)出所者の2年以内再入率は、2019年(令和元年)出所者と比べて、「覚醒剤取締法違反」(0.3ポイント減)、「性犯罪」(1.3ポイント減)、「傷害・暴行」(3.0ポイント減)、「窃盗」(1.8ポイント減)、「女性」(0.3ポイント減)が低下した一方、「高齢(65歳以上)」(0.8ポイント増)は上昇している。
    • 一方、少年院出院者の2年以内再入院率については、「再犯防止に向けた総合対策」(平成24年7月20日犯罪対策閣僚会議決定)において、2021年(令和3年)までに8.8%以下にするとの数値目標を設定しているところ、2020年(令和2年)出院者の2年以内再入院者数は152人、2年以内再入院率は9.0%と、いずれも調査の開始(1996年(平成8年))以降、過去最低であった。
    • 協力雇用主数は、近年増加傾向にあり、2021年(令和3年)10月1日現在、2万4,665社であった。実際に刑務所出所者等を雇用している協力雇用主数については、「宣言:犯罪に戻らない・戻さない」(平成26年12月16日犯罪対策閣僚会議決定)において、2020年(令和2年)までに約1,500社にまで増加させるとの数値目標が設定されていたところ、2019年(令和元年)に1,556社と目標を達成したが、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大した2020年(令和2年)以降は減少傾向にあり、2021年(令和3年)は1,208社と前年(1,391社)より減少した。また、協力雇用主に雇用されている刑務所出所者等数についても、2020年(令和2年)以降は減少傾向にあり、2021年(令和3年)は1,667人と前年(1,959人)より減少した。
    • 刑務所出所時に適切な帰住先がない者の数については、「宣言:犯罪に戻らない・戻さない」(平成26年12月16日犯罪対策閣僚会議決定)において、2020年(令和2年)までに4,450人以下に減少させるとの数値目標を設定していたところ、2017年(平成29年)には当該目標を達成し、2021年(令和3年)は2,844人にまで減少した。刑務所出所時に適切な帰住先がない者の割合は、2021年(令和3年)は16.0%と前年(17.3%)よりも1.3ポイント減少した。
  • 就労・住居の確保等のための取組
    • 地方公共団体のうち、保護観察対象者を雇用する取組を実施している団体は、2021年(令和3年)12月末時点で69団体であり、2010年(平成22年)から2021年(令和3年)までで、延べ74人の保護観察対象者が雇用(予定を含む。)され
    • 2021年(令和3年)12月末現在、全国の都道府県及び市区町村のうち、171(前年:159)の地方公共団体では入札参加資格の審査に際して、68(前年:64)の地方公共団体では総合評価落札方式における評価に際して、それぞれ協力雇用主としての刑務所出所者等の雇用実績等を評価している
    • 法務省は、保護観察所が行う受刑者等の釈放後の生活環境の調整を充実させるため、生活環境の調整に対する地方更生保護委員会の関与を強化し、地方更生保護委員会が、矯正施設収容後の早期の段階から受刑者等に対し帰住先等に関する調査を行うなどした上で、保護観察所に対して指導・助言・連絡調整を行い、保護観察所はこれを踏まえて、福祉サービスや民間の依存症回復支援施設等への帰住調整も含め、適切な帰住先を迅速に確保するための取組を行っている。2021年(令和3年)は、地方更生保護委員会における受刑者等に対する帰住先等の調整に関する面接調査が4,829件(前年:4,201件)行われた。また、「再犯防止推進計画加速化プラン」(令和元年12月23日犯罪対策閣僚会議決定)において、生活環境の調整の充実強化と仮釈放の積極的な運用を図ることを明記し、2020年度(令和2年度)からは、専ら当該調査及び調整を行う地方更生保護委員会の保護観察官を全国の刑事施設11庁に駐在させ、その運用の積極化を図っている。
    • 法務省は、出所後の適当な住居等がない刑務所出所者等を更生保護施設で一時的に受け入れて、社会適応に必要な生活指導を行うなど、刑務所出所者等の居場所の確保に取り組んでいる。2021年度(令和3年度)の更生保護施設への委託実人員は6,811人(前年度:7,206人)であり、そのうち、新たに委託を開始した人員は5,315人(前年度:5,791人)であった。
    • 法務省は、刑事施設において、出所後の社会生活で直ちに必要となる知識の付与等を目的として、講話や個別面接等による釈放前の指導を実施している。特に、適当な帰住先が確保できていないなど、釈放後の生活が不安定となることが見込まれる満期出所者に対しては、刑事施設に配置された福祉専門官や非常勤の社会福祉士等が個別面接を行うなどして、受刑者本人のニーズを把握しながら、更生緊急保護の制度や、社会保障等の社会における各種手続に関する知識を付与し、必要な支援につなぐための働き掛けを行っている
  • 保健医療・福祉サービスの利用の促進等のための取組
    • 法務省は、検察官に対する研修等において、犯罪をした者等の福祉的支援の必要性を的確に把握することができるよう、再犯防止の取組等について講義を実施している
    • 法務省は、保護観察所において、起訴猶予等となった高齢者又は障害のある者等の福祉的支援が必要な者に対して専門的な支援を集中して行うことを目的として、2018年度(平成30年度)から、入口支援(【施策番号34】参照)に適切に取り組むための特別支援ユニットを設置し、更生緊急保護対象者に継続的な生活指導や助言を行っていた。2021年度(令和3年度)からは、特別支援ユニットを発展させ、社会復帰対策班を設置し、入口支援にとどまらず、更生緊急保護の対象者に継続的に関与し、その特性に応じた支援が受けられるよう関係機関等と調整を行うなどの社会復帰支援の充実を図っている。
    • また、検察庁は、社会復帰支援を担当する検察事務官の配置や社会福祉士から助言を得られる体制の整備などにより、社会復帰支援の実施体制の充実を図っている。
    • 法務省は、刑事施設において、改善指導(【施策番号83】参照)のうち、特別改善指導の一類型として、薬物依存離脱指導の標準プログラム(指導の標準的な実施時間数や指導担当者、カリキュラムの概要等を定めたもの。)を定め、同指導を実施している。
    • 同指導は、認知行動療法に基づいて、必修プログラム(麻薬、覚醒剤その他の薬物に依存があると認められる者全員に対して実施するもの)、専門プログラム(より専門的・体系的な指導を受講させる必要性が高いと認められる者に対して実施するもの)、選択プログラム(必修プログラム又は専門プログラムに加えて補完的な指導を受講させる必要性が高いと認められる者に対して実施するもの)の三種類を整備し、対象者の再犯リスク、すなわち、犯罪をした者が再び犯罪を行う危険性や危険因子等に応じて、各種プログラムを柔軟に組み合わせて実施している。2021年度(令和3年度)の受講開始人員(三種類のプログラムの総数)は7,493人(前年:7,707人)であった。
    • 少年院において、麻薬、覚醒剤その他の薬物に対する依存等がある在院者に対して、特定生活指導して薬物非行防止指導を実施し、2021年(令和3年)は303人(前年:293人)が修了している。また、男子少年院2庁(水府学院及び四国少年院)及び全女子少年院9庁では、薬物依存からの回復をサポートする民間の自助グループ、医療関係者、薬物問題に関する専門家等を指導者として招へいし、グループワークを中心とした指導を実施しているほか、保護者向けプログラムを実施しているなど、特に重点的かつ集中的な指導を実施しており、2021年度(令和3年度)は、75人(前年:53人)が修了している。なお、男子少年院2庁においては、この指導を、他の少年院から在院者を一定期間受け入れて実施している。
    • 保護観察所において、依存性薬物(規制薬物等、指定薬物及び危険ドラッグ)の使用を反復する傾向を有する保護観察対象者に対し、薬物再乱用防止プログラムを実施している。同プログラムは、ワークブックを用いるなどして依存性薬物の悪影響を認識させ、コアプログラム(薬物再乱用防止のための具体的方法を習得させる)及びステップアッププログラム(コアプログラムの内容を定着・応用・実践させる)からなる教育課程と簡易薬物検出検査を併せて行うものとなっている。
    • また、医療機関やダルク(【施策番号85】参照)等と連携し、薬物再乱用防止プログラムを実施する際の実施補助者として保護観察対象者への助言等の協力を得ているほか、保護観察終了後を見据え、それらの機関や団体等が実施するプログラムやグループミーティングに保護観察対象者がつながっていけるよう取り組むなどしている。なお、2021年度(令和3年度)は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、実施補助者として関係機関からの協力を得ることが難しくなるなど、関係機関との連携に支障が生じた一方、保護観察対象者との個別面接時に、関係機関に同席してもらうなど代替措置を講じ、関係機関との連携を図った。
    • 法務省は、刑事施設の教育担当職員に対し、薬物依存に関する最新の知見を付与するとともに、認知行動療法等の各種処遇技法を習得させることを目的とした研修を実施している。少年院の職員に対しては、医療関係者等の協力を得て、薬物依存のある少年への効果的な指導方法等についての研修を実施している。2017年度(平成29年度)からは、薬物使用経験のある女子在院者については、低年齢からの長期間にわたる薬物使用や女子特有の様々な課題を抱えていることが多く、それらの課題に適切に対応し得る専門的な指導能力が求められることから、専門的知識及び指導技術の一層の向上を図るため、女子少年を収容する施設間において、職員を相互に派遣して行う研修を実施している。
    • また、施設内処遇と社会内処遇との連携強化のため、2017年(平成29年)から、矯正施設職員及び保護観察官を対象とした薬物依存対策研修を実施している。同研修においては、SMARPPの開発者及び実務者のほか、精神保健福祉センター、病院及び自助グループにおいて薬物依存症者に対する指導及び支援を行っている実務家を講師として招き、薬物処遇の専門性を有する職員の育成を行っている。
    • さらに、保護観察所において、2017年(平成29年)4月から、処遇効果の充実強化を図ることを目的として、薬物依存に関する専門的な処遇を集中して行う薬物処遇ユニットを保護観察所に設置し(2022年(令和4年)4月現在で28庁)、薬物事犯者に係る指導及び支援を実施している。
    • 厚生労働省は、薬物依存症を含む依存症対策について、各地域において、医療体制や相談体制の整備を推進するとともに、地域支援ネットワーク構築、依存症全国拠点機関による人材育成・情報発信や、依存症の正しい理解の普及啓発などを総合的に推進している。
    • また、厚生労働省は、2017年度(平成29年度)から、依存症対策全国拠点機関として独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターを指定している。同センターでは、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターと連携して薬物依存症を含む依存症治療の指導者養成研修を実施するとともに、都道府県及び指定都市の医療従事者を対象とした依存症治療の研修を実施している。
    • このほか、厚生労働省は、都道府県及び指定都市が薬物依存症の専門医療機関及び治療拠点機関の選定や薬物依存症者への相談・治療等の支援に関わる者(障害福祉サービス事業所や福祉事務所の職員など)を対象とした研修を進めていくに当たり、財政的、技術的支援を行っている。
  • 犯罪をした者等の特性に応じた効果的な指導の実施等のための取組
    • 法務省は、刑事施設において、警察等と協力しながら、暴力団の反社会性を認識させる指導を行い、離脱意志の醸成を図るため、特別改善指導(【施策番号83】参照)として暴力団離脱指導を実施している(2021年度(令和3年度)の受講開始人員は383人(前年度:551人)であった。)。
    • また、保護観察所では、暴力団関係者の暴力団からの離脱に向けた働き掛けを充実させるため、警察、暴力追放運動推進センター及び矯正施設との連携を強化しており、暴力団関係者の離脱の意志等の情報を把握・共有して必要な指導等をしている。
    • さらに、警察及び暴力追放運動推進センターでは、矯正施設及び保護観察所と連携し、離脱に係る情報を適切に共有するとともに、矯正施設に職員が出向いて、暴力団員の離脱意志を喚起するための講演を実施するなど暴力団離脱に向けた働き掛けを行っている。
    • 警察は、暴力団からの離脱及び暴力団離脱者の社会復帰・定着を促進するため、都道府県単位で、警察のほか、暴力追放運動推進センター、職業安定機関、矯正施設、保護観察所、協賛企業等で構成される社会復帰対策協議会の枠組みを活用して、暴力団離脱者のための安定した雇用の場を確保し、社会復帰の促進に取り組んでいる。
    • 法務省は、検察庁、矯正施設及び更生保護官署がそれぞれのシステムで保有する対象者情報のうち、相互利用に適する情報について、対象者ごとにひも付けることにより、情報の相互利用を可能とする刑事情報連携データベースシステムを運用している。その上で、他の機関が個々の対象者に実施した処遇等の内容の詳細を把握できるデータ参照機能や、多数のデータを用いた再犯等の実態把握や施策の効果検証等を容易にするデータ分析機能を整備・運用することにより、再犯防止施策の実施状況等の迅速かつ効率的な把握やそれぞれの機関における処遇の充実、施策の効果検証、再犯要因の調査研究等への利活用を可能とし、再犯防止施策の推進を図っている

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内閣官房 国家安全保障戦略について
▼「国家安全保障戦略」概要
  • 「戦略」策定の趣旨
    • パワーバランスの歴史的変化と地政学的競争の激化に伴い、国際秩序は重大な挑戦に晒されている。同時に、気候変動など地球規模課題等での協力も必要。国際関係において対立と協力の様相が複雑に絡み合う時代。
    • 我が国は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面。我が国周辺では軍備増強が急速に進展。力による一方的な現状変更の圧力が強まっている。
    • サイバー攻撃、偽情報拡散等が平素から生起。有事と平時の境目はますます曖昧に。安全保障の対象は、経済等にまで拡大。軍事と非軍事の分野の境目も曖昧に。
    • 対立と協力が複雑に絡み合う国際関係全体を俯瞰し、外交力・防衛力・経済力を含む、総合的な国力を最大限に活用し、国益を守る。本戦略は国家安全保障の最上位の政策文書。
    • 本戦略に基づく戦略的な指針と施策は、戦後の安全保障政策を実践面から大きく転換。
  • 我が国の国家安全保障に関する基本的な原則
    • 国際協調を旨とする積極的平和主義を維持。我が国を守る第一義的な責任は我が国にある。変化する安全保障環境を直視し、必要な改革を遂行。我が国自身の安全保障上の能力と役割を強化。
    • 普遍的価値を維持・擁護する形で、安保政策を遂行。世界的に最も成熟し安定した先進民主主義国の一つとして、普遍的価値の維持・擁護を各国と協力する形で実現。国際社会が目指すべき範を示す。
    • 平和国家として、専守防衛、非核三原則の堅持等の基本方針は不変。
    • 日米同盟は我が国の安全保障政策の基軸。
    • 我が国と他国との共存共栄、同志国との連携、多国間の協力を重視
  • グローバルな安全保障の環境と課題
    • グローバルなパワーの重心が、インド太平洋地域に移る形で、国際社会は急速に変化。国際秩序に挑戦する動きの加速。
    • 他国の領域主権等への力による一方的な現状変更及びその試み。
    • サイバー空間・海洋・宇宙空間・電磁波領域等におけるリスクが深刻化。
    • 経済安全保障の必要性の拡大。他国に経済的な威圧を加える動き。
    • 国際社会のガバナンスが低下。気候変動など共通の課題対応で国際社会が団結しづらい状況。
  • インド太平洋地域における安全保障の環境と課題
    • 「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)というビジョンの下、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の実現、地域の平和と安定の確保は、我が国の安全保障にとって死活的に重要。
      1. 中国の安全保障上の動向
        • 十分な透明性を欠いたまま、軍事力を広範かつ急速に増強
        • 東シナ海、南シナ海等における、力による一方的な現状変更の試みを強化
        • ロシアとの戦略的な連携の強化、国際秩序への挑戦
        • 十分な透明性を欠いた開発金融、他国の中国への依存を利用した経済的な威圧
        • 台湾について武力行使の可能性を否定せず、また、台湾周辺における軍事活動の活発化 等
        • 現在の中国の対外的な姿勢や軍事動向等は、我が国と国際社会の深刻な懸念事項であり、我が国の平和と安全及び国際社会の平和と安定を確保し、法の支配に基づく国際秩序を強化する上で、これまでにない最大の戦略的な挑戦であり、我が国の総合的な国力と同盟国・同志国等との連携により対応すべきもの。
      2. 北朝鮮の安全保障上の動向
        • ミサイル関連技術及び運用能力の急速な進展。核戦力を最大限のスピードで強化する方針
        • 拉致問題は、我が国の主権と国民の生命・安全にかかわる重大な問題であり、国の責任において解決すべき喫緊の課題 等
      3. ロシアの安全保障上の動向
        • ウクライナ侵略等。北方領土での軍備増強及び活動活発化、中国との戦略的な連携の強化 等
        • ロシアの対外的な活動、軍事動向等は、今回のウクライナ侵略等によって、国際秩序の根幹を揺るがし、欧州方面においては安全保障上の最も重大かつ直接の脅威と受け止められている。また、我が国を含むインド太平洋地域におけるロシアの対外的な活動、軍事動向等は、中国との戦略的な連携と相まって、安全保障上の強い懸念
  • 我が国の国家安全保障上の目標
    • 我が国の主権と独立、国内・外交に関する政策を自主的に決定できる国であり続ける。領域、国民の生命・身体・財産を守る。有事等の発生を抑止。万一、脅威が及ぶ場合も、これを排除し、かつ被害を最小化させつつ、有利な形で終結。
    • 我が国経済が成長できる国際環境を安全保障政策を通じて主体的に確保。安保と経済成長の好循環の実現。我が国の経済の自律性、優位性、不可欠性を確保。
    • 国際関係における新たな均衡を、特にインド太平洋地域において実現。一方的な現状変更を容易に行い得る状況の出現を防ぎ、安定的で予見可能性が高く、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を強化。
    • 多国間の協力の分野において国際社会が共存共栄できる環境を実現。
  • 我が国が優先する戦略的なアプローチ
    1. 危機を未然に防ぎ、平和で安定した国際環境を能動的に創出し、自由で開かれた国際秩序を強化するための外交を中心とした取組の展開
    2. 我が国の防衛体制の強化
      • 国家安全保障の最終的な担保である防衛力の抜本的な強化(領域横断作戦能力に加え、スタンドオフ・防衛能力、無人アセット防衛能力等を強化。反撃能力の保有、令和9年度に、防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組をあわせた予算水準が現在のGDPの2%に達するよう所要の措置、有事の際の防衛大臣による海上保安庁に対する統制を含む、自衛隊と海保との連携強化等)
      • 総合的な防衛体制の強化(研究開発、公共インフラ、サイバー安全保障、同志国等との国際協力)
      • 安全保障上意義が高い防衛装備移転等を円滑に行うため、防衛装備移転三原則・運用指針を始めとする制度の見直しを検討。三つの原則そのものは維持しつつ、必要性、要件、関連手続の透明性の確保等を十分に検討。各種支援の実施。
      • 防衛生産・技術基盤の強化、人的基盤強化等(ハラスメントを一切許容しない組織環境等)。
    3. 米国との安全保障面における協力の深化
    4. 我が国を全方位でシームレスに守るための取組の強化
      • サイバー安全保障
      • 海洋安全保障・海上保安能力
      • 宇宙安全保障
      • 安全保障関連の技術力の向上と積極的な活用
      • 情報に関する能力の向上
      • 有事も念頭に置いた我が国国内での対応能力の強化
      • 国民保護の体制強化
      • 在外邦人等の保護
      • エネルギーや食料など国家安全保障に不可欠な資源の確保
    5. 経済安全保障政策の促進
      • 自律性、優位性、不可欠性の確保等。レアアース等の重要物資の安定供給確保等によるサプライチェーン強靭化。セキュリティ・クリアランスを含む我が国の情報保全の強化の検討等。
    6. 自由・公正・公平なルールに基づく国際経済秩序の維持・強化
    7. 国際社会が共存共栄するためのグローバルな取組
  • 我が国の国家安全保障を支えるために強化するべき国内基盤
    1. 経済財政基盤の強化
      • 安全保障と経済成長の好循環の実現。有事の際の持続的な対応能力を確保。経済・金融・財政の基盤強化。
    2. 社会的基盤の強化
      • 平素からの国民の安全保障に関する理解と協力。
      • 諸外国やその国民に対する敬意を表し、我が国と郷土を愛する心。
      • 平和と安全のために危険を顧みず職務に従事する者の活動が社会で適切に評価される取組。
    3. 知的基盤の強化
      • 安保分野における政府と企業・学術界との実践的な連携の強化、効果的な国内外での発信等。
  • 結語
    • 国際社会が対立する分野では、総合的な国力により、安全保障を確保。国際社会が協力すべき分野では、諸課題の解決に向けて主導的かつ建設的な役割を果たし続ける。このような行動は、我が国の国際的な存在感と信頼を更に高め、同志国等を増やし、我が国を取り巻く安全保障環境を改善することに繋がる。
    • 希望の世界か、困難と不信の世界かの分岐点に立ち、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の下にあっても、安定した民主主義、確立した法の支配、成熟した経済、豊かな文化を擁する我が国は、普遍的価値に基づく政策を掲げ、国際秩序の強化に向けた取組を確固たる覚悟を持って主導していく
▼「国家防衛戦略」概要
  • 概観
    • 普遍的価値や政治・経済体制を共有しない国家が勢力を拡大しており、力による一方的な現状変更やその試みは、既存の国際秩序に対する深刻な挑戦
    • ロシアによるウクライナ侵略は、最も苛烈な形でこれを顕在化。国際社会は戦後最大の試練の時を迎え、新たな危機の時代に突入
    • グローバルなパワーバランスが大きく変化。特に、インド太平洋地域においては、こうした傾向が顕著であり、その中で中国が力による一方的な現状変更やその試みを継続・強化
    • 米中の競争が激化。米国は今後10年が決定的との認識
    • 科学技術の急速な進展が安全保障の在り方を根本的に変化させ、各国は将来の戦闘様相を一変させる、ゲーム・チェンジャーとなりうる先端技術の開発を実施
    • サイバー領域等におけるリスクの深刻化、偽情報の拡散を含む情報戦の展開、気候変動等のグローバルな安全保障上の課題も存在
  • 我が国周辺国等の軍事動向
    • 中国:今後5年が自らの目指す社会主義現代化国家の全面的建設を始める肝心な時期と位置付け。国防費の急速な増加を背景に能力も強化するとともに軍事活動を活発化。対外的な姿勢や軍事動向等は、我が国と国際社会の深刻な懸念事項。我が国の平和と安全及び国際社会の平和と安定を確保し、法の支配に基づく国際秩序を強化する上で、これまでにない最大の戦略的な挑戦
    • 北朝鮮:大量破壊兵器や弾道ミサイル等の増強に集中的に取り組み、ミサイル発射を活発化。関連技術・運用能力を急速に向上。従前よりも一層重大かつ差し迫った脅威
    • ロシア:ロシアによるウクライナ侵略は、欧州方面における防衛上の最も重大かつ直接の脅威と受け止められている。北方領土を含む極東地域において軍事活動を活発化。こうした軍事動向は、我が国を含むインド太平洋地域において、中国との戦略的な連携と相まって防衛上の強い懸念
    • 今後、インド太平洋地域において、こうした活動が同時に行われる場合には、それが地域にどのような影響を及ぼすかについて注視していく必要
  • 新しい戦い方の顕在化
    • 精密打撃能力による大規模なミサイル攻撃
    • 情報戦を含むハイブリッド戦
    • 宇宙・サイバー・電磁波領域や無人アセットを用いた非対称的な攻撃
    • 核兵器による威嚇も生起
  • 防衛上の課題
    • ロシアがウクライナを侵略するに至った軍事的な背景としては、ウクライナがロシアによる侵略を抑止するための十分な能力を保有していなかったこと
    • 高い軍事力を持つ国が、あるとき侵略という意思を持ったことにも注目すべき。脅威は能力と意思の組み合わせで顕在化するところ、意思を外部から正確に把握することは困難。国家の意思決定過程が不透明であれば、脅威が顕在化する素地が常に存在
    • このような国から自国を守るためには、力による一方的な現状変更は困難であると認識させる抑止力が必要であり、相手の能力に着目した防衛力を構築する必要
    • 新しい戦い方が顕在化する中、それに対応できるかどうかが今後の防衛力を構築する上での課題
  • 基本的考え方
    • 抜本的に強化された防衛力は、防衛目標である我が国自体への侵攻を我が国が主たる責任をもって阻止・排除し得る能力
    • これは相手にとって軍事的手段では我が国侵攻の目標を達成できず、生じる損害というコストに見合わないと認識させ得るだけの能力を我が国が持つこと
    • こうした防衛力を保有できれば、米国の能力と相まって、我が国への侵攻のみならず、インド太平洋地域における力による一方的な現状変更やその試みを抑止、それを許容しない安全保障環境を創出
    • 新しい戦い方に対応するために必要な機能・能力としては以下のとおり
      • 我が国への侵攻そのものを抑止するために、遠距離から侵攻戦力を阻止・排除(スタンド・オフ防衛能力、統合防空ミサイル防衛能力)
      • 抑止が破られた場合、①と②の能力に加え、領域を横断して優越を獲得し、非対称的な優勢を確保(無人アセット防衛能力、領域横断作戦能力、指揮統制・情報関連機能)
      • 迅速かつ粘り強く活動し続けて、相手方の侵攻意図を断念(機動展開能力・国民保護、持続性・強靭性)
  • 「反撃能力」:我が国への侵攻を抑止する上での鍵
    1. 必要性
      • 近年、我が国周辺のミサイル戦力は質・量ともに著しく増強。ミサイル攻撃が現実の脅威。既存のミサイル防衛網を強化していくが、それのみでは完全な対応が困難になりつつあるところ
      • このため、ミサイル防衛により飛来するミサイルを防ぎつつ、相手からの更なる武力攻撃を防ぐために、我が国から有効な反撃を相手に加える能力が必要
    2. 意義
      • 「反撃能力」とは、我が国に対する武力攻撃が発生し、その手段として弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合、武力の行使の三要件に基づき、そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、相手の領域において、我が国が有効な反撃を加えることを可能とする、スタンド・オフ防衛能力等を活用した自衛隊の能力
      • こうした有効な反撃を加える能力を持つことにより、武力攻撃そのものを抑止する。その上で、万一、相手からミサイルが発射される際にも、ミサイル防衛網により、飛来するミサイルを防ぎつつ、反撃能力により相手からの更なる武力攻撃を防ぎ、国民の命と平和な暮らしを守っていく
  • スタンド・オフ防衛能力等を活用した反撃能力について
    • 「反撃能力」については、1956年2月29日に政府見解として、憲法上、「誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能である」としたものの、これまで政策判断として保有することとしてこなかった能力に当たるもの
    • この政府見解は、2015年の平和安全法制に際して示された武力の行使の三要件の下で行われる自衛の措置にもそのまま当てはまるものであり、今般保有することとする能力は、この考え方の下で上記三要件を満たす場合に行使し得るもの
    • この反撃能力は、憲法及び国際法の範囲内で、専守防衛の考え方を変更するものではなく、武力の行使の三要件を満たして初めて行使され、武力攻撃が発生していない段階で自ら先に攻撃する先制攻撃は許されないことはいうまでもない
    • また、日米の基本的な役割分担は今後も変更はないが、我が国が反撃能力を保有することに伴い、弾道ミサイル等の対処と同様に、日米が協力して対処していくこととする
  • 我が国自身の防衛体制の強化 国全体の防衛体制の強化
    • 我が国を守るためには自衛隊が強くなければならないが、我が国全体で連携しなければ、我が国を守ることはできない
    • 防衛力の抜本的強化に加え、外交力、情報力、経済力、技術力を含めた国力を統合し、あらゆる政策手段を体系的に組み合わせて国全体の防衛体制を構築
    • 防衛力の抜本的強化を補完する不可分一体の取り組みとして、我が国の国力を結集した総合的な防衛体制を強化
    • 政府と地方公共団体、民間団体等との協力を推進
    • 具体的な取組
      • 我が国自身の防衛体制の強化に裏付けられた外交努力
      • 力による一方的な現状変更やその試みを抑止するとの意思と能力を示し続け、相手の行動に影響を与えるためのFDOと戦略的コミュニケーション
      • 認知領域を含む情報戦等への対応の強化
      • 有事を念頭に置いた自衛隊と警察や海上保安庁との間の連携要領の確立
      • 宇宙・サイバー・電磁波領域の能力を防衛力に直結するよう政府全体で強化
      • 先端技術の防衛面での活用、防衛産業を活用しつつ早期装備化を実現
      • 防衛ニーズを踏まえた空港・港湾の整備・強化、平素からの空港・港湾等の使用等の各種施策
      • 自衛隊による海空域や電磁波の利用、弾薬・燃料等の輸送・保管等の円滑化
      • 政府全体として国民保護訓練の強化等の各種施策
      • 自衛隊・海上保安庁の緊密な協力・連携。同盟国・同志国等と海洋安全保障協力を推進
      • 防衛施設周辺の地方公共団体や地元住民の理解及び協力を獲得
  • 日米同盟による共同抑止・対処
    • 米国との同盟関係は、我が国の安全保障の基軸
    • 日米共同の意思と能力を顕示し、力による一方的な現状変更やその試みを抑止
    • 我が国への侵攻が生起した場合には、日米共同対処により侵攻を阻止
    • 日米共同の抑止力・対処力の強化(役割・任務・能力の議論を深め抑止力を一層強化)
    • 同盟調整機能の強化(同盟調整メカニズム(ACM)等の調整機能を更に発展)
    • 共同対処基盤の強化(情報保全、サイバーセキュリティ、装備・技術協力等)
    • 在日米軍の駐留を支える取組(在日米軍再編等)
  • 同志国等との連携
    • 我が国の安全保障を確保するため1カ国でも多くの国々との連携強化が極めて重要
    • 地域や各国の特性等を考慮した多角的・多層的な防衛協力・交流を積極的に推進

~NEW~
内閣官房 第7回 教育未来創造会議ワーキング・グループ 配布資料
▼資料2 論点整理にあたっての基本的考え方(案)
  • これまでの意見を踏まえ、コロナ後のグローバル社会を見据えた人への投資の推進にあたっての現状認識や基本的な考え方として、以下のように整理してはどうか。
    1. 留学生の受入れ・派遣や教育の国際化を巡る現状
      1. 留学生の受入れ
        • 増加する世界の留学生数(160万人(2000)→560万人(2020))
        • 諸外国は留学生受入れを戦略的に実施(英国・フランス・ドイツ・オーストラリア)
        • 留学生受入れを重要な貿易・外貨獲得手段として位置付ける国も存在(英国・オーストラリア)
        • コロナ禍で日本の外国人留学生の受入れは減少(31万人(2019)→24万人(2021))
        • OECD諸国と比較して博士・修士・学士課程における留学生在籍割合はそれぞれ20%、10%、3%と低い状況
        • 卒業後の就職率は約4割程度
      2. 日本人学生の派遣
        • 海外への学位取得目的の留学者は中国・インドが大きく伸長する一方、停滞する日本人の留学(フランス・ドイツ・韓国は、人口千人あたり1.5人に対し、日本は0.5人に留まる)
        • 日本人学生の留学(大学等が把握しているもの)は約7割が1カ月未満の短期留学
        • コロナ禍で日本人学生の派遣は激減
        • 内向き志向や経済的理由、留年や就職への不安による留学の停滞
        • 高校生の留学における地方格差
      3. 教育の国際化
        • 英語による授業を実施する大学は4割
        • 日本の高等教育は海外から評価を十分に得られていない
        • 日本の子供の養育環境は高度外国人材から評価を十分に得られていない
        • インターナショナルスクールの市場は拡大傾向
        • 米国、英国、フランスなどの大学は多くの海外キャンパスを設置
    2. これまでの成果と課題
      • 留学生30万人計画の検証結果
        • 遠隔・オンラインの利点も活かしつつ、「実留学」を引き続き推進していくことが重要
        • 受入れ数を重視するこれまでの視点から、より出口(アウトカム)に着目して受入れの質を図る視点に転換
        • 日本人学生の海外留学の促進も含めて、学生の派遣・受入れの両面で質の高い国際流動性を高めていくことが重要
      • 「高等教育を軸としたグローバル政策の方向性」の策定
        • 2027年を目途に激減した外国人留学生・日本人学生の留学を少なくともコロナ禍前の水準に回復
    3. 留学生の受入れ・派遣や教育の国際化の意義
      • グローバル社会において、外国人留学生の受入れや日本人学生の派遣、教育の国際化は、日本社会全体の成長をけん引し、国際競争力を強化する上で必要不可欠
        1. 外国人留学生の受入れの意義
          1. 教育研究力の強化(教育研究の活性化、国際競争力の向上、国際的なネットワークの構築)
          2. 外交、人道的な意義(国際社会への知的国際貢献、親日派・知日派の人的ネットワークの育成、相互理解と友好親善、国際社会でのプレゼンス向上、避難民支援)
          3. 留学生の定着による高度専門人材の確保(我が国の経済社会の活性化、一層の国際化)
          4. 多文化共生社会への変革促進(多様な価値観が混ざり合うことによる新たな価値やイノベーション創出、多様性と包摂性のある開かれた活力ある社会の形成)
        2. 日本人学生の派遣の意義
          1. 我が国をけん引する人材の育成(世界を舞台に活躍する人材から地域の成長・発展を支える人材まで厚みのある多様な人材の育成、異文化理解や多様な価値観への共感力、コミュニケーション能力、国際的素養の涵養、日本に対する理解の深化、アイデンティティの確立)
          2. 幅広い人的ネットワークの形成
          3. 外交的な意義(国際社会でのプレゼンス向上、相互理解と友好親善)
          4. 国際的に開かれた活力ある社会の実現
        3. 教育の国際化の意義
          1. 大学の国際競争力の強化(多様な学生や研究者が切磋琢磨できる環境の醸成による教育環境の活性化、イノベーション創出)
          2. 国際頭脳循環の実現、国際研究ネットワークの構築
          3. 多様性、包摂性のある地域・社会の構築に向けた教育環境の整備
    4. 今後の方向性
      1. 外国人留学生受入れにあたっての考え方
        1. 基本的方向性
          • 優秀な外国人留学生の受入れ促進
          • 多様な価値観が混ざり合う環境創出のための受入れ地域の多様化
          • 日本語を覚え、日本語で学び、日本語で働く一人一人のキャリアパスとしての位置づけ
          • 教育研究及び生活環境のソフト・ハードを併せた質及び魅力の向上
          • 留学時の隘路解消(情報提供の強化や各種手続きの簡素化)
          • 卒業後の定着に向けた企業・社会での受入れや起業の推進、日本と母国の懸け橋となる人材の受入れ促進
        2. 今後受入れを促進する優秀な外国人留学生の人材像
          • 博士・修士をはじめとするイノベーションを創出する人材
          • 社会の様々な場面で活躍する高度専門人材
          • 国際頭脳循環に参入する研究人材
          • 日本のよき理解者として母国との懸け橋となる人材
      2. 日本人学生の派遣にあたっての考え方
        1. 基本的方向性
          • 海外大学・大学院での日本人留学生における中長期留学者の数と割合の向上(高校段階、中短期留学(特に学期単位での単位取得)、学位取得までの段階的な取組促進、前提としての教員の指導力強化)
          • オンラインの特性(心理面でのハードル下げ、費用・時間面での利点、複数国・地域との同時交流)を生かした実留学への契機としての取組促進
          • 留学促進の隘路解消(情報格差の是正、ブランド力強化や寄附を含めた経済支援の充実、単位互換や授業料相互免除等の促進、英語教育・英語によるプログラムの充実、社会との接続強化)
          • 国際頭脳循環に参入するための博士人材等派遣促進
          • 社会人の海外大学院への留学推進
        2. 海外派遣を通じて育成を目指したい人材の姿
          • 異文化を理解して相手の立場を理解する共感力、豊かな語学力・コミュニケーション能力、社会課題を自分事として捉える主体性・積極性、多様な人を巻き込む行動力等を身に付けて様々な分野でグローバルに活躍できる人材
          • エネルギー・食料問題・安全保障など地球規模の課題から我が国や地域が抱える課題を発見し、解決する人材
          • 国際頭脳循環に参入し、各分野をリードする研究人材
        3. 教育の国際化にあたっての考え方
          1. 基本的方向性
            • 国際的な学生、研究者、大学間交流の活性化など国内大学等の国際化の推進
            • 高度専門人材を受け入れるための子供の教育環境の充実、日本語教育機関の質の向上
            • 日本型教育の海外展開
          2. 目指したい教育の国際化の姿
            • 多様な背景を持った者が集い、多様な価値観が混ざり合う環境が創出される教育研究環境
            • 高度専門人材が安心して来日できる子供の教育環境
            • 日本の教育の海外展開による国際プレゼンスの向上、親日層の拡大、相互理解促進、留学生受入れ推進、関係国とのパートナーシップ構築
    5. 考えられる指標
      1. 外国人留学生の受入れ関係
        • 外国人留学生の数
        • 外国人留学生における学位取得を目的とする者の数と割合
        • 全学生数に占める留学生の割合
        • 留学生の卒業後の国内定着率
        • 外国人留学生の満足度
      2. 日本人学生の派遣関係
        • 日本人留学生における学位取得を目的とする者の数と割合
        • 中短期の留学者数(併せて、実際に学位を取得した者の割合や、中短期留学で語学力向上や長期留学につながっているかどうかの把握を国費留学生について実施)
        • 高校段階での留学者

~NEW~
厚生労働省 第110回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年12月14日)
▼資料1 直近の感染状況の評価等
  • 感染状況等の概要
    • 全国の新規感染者数(報告日別)は、直近の1週間では10万人あたり約716人となり、今週先週比は1.20と増加傾向にあり、一部の地域では増加幅が大きくなるなど地域差がみられる。
    • 今後の免疫の減衰や変異株の置き換わりの状況、また、年末年始における接触機会の増加等が感染状況に与える影響に注意が必要。
    • 病床使用率は全国的に上昇傾向にあり、重症者数と死亡者数は増加傾向にある。
  • 感染状況等と今後の見通し
    1. 感染状況について
      • 新規感染者数について、全国的には増加傾向にあり、中でも遅れて感染拡大となった地域では増加幅が大きくなるなど地域差がみられる。
      • 北海道では今夏の感染拡大の最高値を超えて以降、減少傾向が継続している。また、東北、北陸・甲信越では、減少傾向から再度増加傾向に転じている。近畿や中四国、九州・沖縄などでは、全国より増加幅が大きい傾向にあり、10万人あたりで全国を上回る地域もみられる。また、高齢者施設と医療機関の集団感染も増加傾向にある。
      • 全国の年代別の新規感染者数は、すべての年代で増加しており、人口あたりでは10代以下を始めとして若い世代が多く、他の年代よりも増加幅が大きくなっている。また、多くの地域では高齢者の新規感染者数の増加が進んでおり、全国では重症者数と死亡者数も再び増加傾向となっており、今後の推移に注意が必要。
      • 本年1月以降の小児等の死亡例に関する暫定報告にあるように、小児感染者数の増加に伴う、重症例、死亡例の発生に注意が必要である。また、小児の入院者数の動向にも注意が必要。
      • 季節性インフルエンザについては、例年の同時期よりも低い水準にあるものの、直近2年間の同時期より高く、微増している。
    2. 今後の見通しについて
      • 今後の感染状況について、エピカーブや全国及び大都市の短期的な予測では、地域差や不確実性はあるものの、多くの地域で増加傾向が見込まれる。一方で、北海道では減少傾向の継続が予測されている。さらに、今後の免疫の減衰や、より免疫逃避能のある株への置き換わりの状況、また、年末年始における接触機会の増加等が、地域の感染者数の推移に影響すると考えられるため注視が必要。
      • 季節性インフルエンザについても、新型コロナウイルス感染症との同時流行を含め今後の推移に注意が必要。
    3. 感染の増加要因・抑制要因について
      • ワクチン接種および感染による免疫等 ワクチン接種と自然感染により獲得した免疫は、経時的に低下していると考えられる。また、60代以上では、20-40代と比較してワクチンの接種率は高いが、感染による免疫獲得は低く、高齢者層での感染拡大が懸念される。
      • 接触状況 夜間滞留人口について、地域差がみられるが、首都圏や愛知、大阪、福岡など大都市を中心に増加傾向にあり、昨年同時期と比較して同一又は上回る水準で推移している。加えて、年末年始における接触機会の増加等が懸念される。
      • 流行株 国内では現在BA.5系統が主流となっているが、BQ.1系統やXBB系統などのオミクロン株の亜系統は、より免疫逃避能があるとされ、海外で感染者数増加の優位性が指摘されている。特にBQ.1系統は国内で割合が増加しつつあり、注視が必要。
      • 気候・季節要因 冬が本格化し全国的に気温の低下がみられ、換気がされにくい場合がある。また、冬の間は呼吸器ウイルス感染症が流行しやすくなる。
    4. 医療提供体制等の状況について
      • 全国的には、病床使用率は上昇傾向にあり、ほぼすべての地域で3割を上回り、北日本や関東など多くの地域では5割を上回っている。重症病床使用率は、0~4割程度と地域差がみられる。
      • 介護の現場では、施設内療養や、療養者及び従事者の感染がみられる。
      • 全国的に救急搬送困難事案数は増加したが、特に非コロナの搬送困難事案数は大きく増加し、ほぼ第7波のピークと同レベルに達した。今後の動向も踏まえつつ、年末年始の救急医療提供体制の確保には注意が必要。
  • 必要な対策
    1. 基本的な考え方について
      • 限りある医療資源の中でも高齢者・重症化リスクの高い方に適切な医療を提供するための保健医療体制の強化・重点化を進めることが必要。また、国民一人ひとりの自主的な感染予防行動の徹底をお願いすることにより、高齢者等重症化リスクの高い方を守るとともに、通常医療を確保する。
      • 11月18日の政府対策本部決定に基づき、外来医療等の状況に応じた感染拡大防止措置を講じていく。
      • 国、自治体は、日常的な感染対策の必要性を国民に対して改めて周知するとともに、感染防止に向けた国民の取組を支援するような対策を行う。
    2. ワクチン接種の更なる促進
      • 「オミクロン株対応ワクチン」について、初回接種を完了した全ての12歳以上の者に対する接種を進めることが必要。
      • 4-5対応型ワクチンの接種も開始されたが、BA.1対応型ワクチンとBA.4-5対応型ワクチンいずれも従来型ワクチンを上回る効果が期待されるため、いずれか早く打てるワクチンの接種を進めることが必要。最終接種からの接種間隔については、5か月以上から3か月以上に短縮されたことを受け、接種を希望するすべての対象者が年内にオミクロン株対応ワクチンの接種を完了するよう呼びかける。
      • 未接種の方には、できるだけ早い時期に初回接種を検討していただくよう促していく。
      • 小児(5~11歳)の接種については、初回接種とともに追加接種を進める。小児(6か月~4歳)の接種については、初回接種を進める。
      • 新型コロナワクチンの今後の接種のあり方について速やかに検討を進めることが必要。
    3. 検査の活用
      • 国と自治体は検査ができる体制を確保し、検査の更なる活用が求められる。
      • 高齢者施設等について、従事者への頻回検査(施設従事者は週2~3回程度)を実施する。
      • 有症状者が抗原定性検査キットで自ら検査を行い、陽性の場合に健康フォローアップセンター等で迅速に健康観察を受けられる体制整備の更なる推進が必要。
      • OTC化されインターネット販売もされている抗原定性検査キットについて、一層利活用を進める。
    4. 保健医療提供体制の確保
      • 国の支援のもと、都道府県等は、主に以下の病床や発熱外来等のひっ迫回避に向けた対応が必要。
      • 病床確保計画に基づく新型コロナウイルス感染症の全体の確保病床数は引き続き維持し、感染拡大時には時機に遅れることなく増床を進めるとともに、新型コロナ病床を有していない医療機関に対しても、院内において新型コロナ患者が生じた場合の対応能力の向上を支援(病室単位でのゾーニングの推進等)することにより、新型コロナの対応が可能な医療機関の増加を引き続き図ること
      • 確保病床等の即応化や、病床を補完する役割を担う臨時の医療施設等の整備に加え、宿泊療養施設や休止病床の活用など、病床や救急医療のひっ迫回避に向けた取組
      • 入院治療が必要な患者が優先的に入院できるよう適切な調整(後方支援病院等の確保・拡大、早期退院の判断の目安を4日とすることの周知など転院・退院支援等による病床の回転率の向上等)、高齢者施設等における頻回検査等の実施や平時からの医療支援の更なる強化
      • 発熱外来の診療時間の拡大、箇所数の増加等のほか、地域外来・検査センターや電話・オンライン診療の強化等による外来医療体制の強化・重点化
      • 受診控えが起こらないよう配慮の上、例えば無症状で念のための検査のためだけの救急外来受診を控えることについて、地域の実情に応じて地域住民に周知。併せて、体調悪化時などに不安や疑問に対応できるよう、医療従事者等が電話で対応する相談窓口を周知するとともに、こうした相談体制を強化
      • 職場・学校等において療養開始時に検査証明を求めないことの徹底
    5. 新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの同時流行に備えた対応
      • 同時流行下に多数の発熱患者等が生じる場合も想定し、各地域の実情に応じて、発熱外来の強化や発熱外来がひっ迫する場合に備えた電話診療・オンライン診療の強化、健康フォローアップセンターの拡充と自己検査キットの確保、相談体制の強化等を進める。また、新型コロナウイルス感染症の新たな治療の選択肢であり医師の適応確認の上処方される経口薬含め、治療薬の円滑な供給を進める。
      • 都道府県は、地域の実情に応じた外来医療の強化等の体制整備の計画に基づき、保健医療体制の強化・重点化に取り組む。
      • 国民各位への情報提供とともに、感染状況に応じた適切なメッセージを発信することが必要であり、従来の抗原定性検査キット・解熱鎮痛薬の早めの準備の呼びかけ等に加え、重症化リスクに応じた外来受診・療養を呼びかける。
      • 併せて、感染した場合にもできる限り重症化を防ぐため、新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザのワクチンについて、接種対象者への接種を進める。
      • なお、感染者数が膨大となり医療のひっ迫が生じる場合や、ウイルスの特性に変化が生じ病原性が強まる等の場合には、住民や事業者に対する感染拡大防止や医療体制の機能維持に関する更なる協力の要請・呼びかけや、行動制限を含む実効性の高い強力な感染拡大防止措置等が考えられ、状況に応じた対応を行うことが必要。
    6. サーベイランス・リスク評価等
      • 発生届の範囲の限定、届け出項目の重点化、多くの感染による検査診断・報告の遅れ、受診行動の変化などにより、現行サーベイランスの精度の低下が懸念され、発生動向把握のため、実効性ある適切なサーベイランスの検討を速やかに進めることが必要。また、変異株について、ゲノムサーベイランスで動向の監視の継続が必要。
      • リスク評価について、新型コロナウイルス感染症に関する病原性、感染力、変異等についての検討を速やかに進めることが必要。
    7. 効果的な換気の徹底
      • 屋内での換気が不十分にならないよう、効果的な換気方法の周知・推奨が必要(エアロゾルを考慮した気流の作り方、気流を阻害しないパーテーションの設置等)。
    8. 基本的な感染対策の再点検と徹底
      • 以下の基本的感染対策の再点検と徹底が必要。
        • 場面に応じた不織布マスクの正しい着用、手指衛生、換気の徹底などの継続・3密や混雑、大声を出すような感染リスクの高い場面を避ける
        • 飲食店での忘年会・新年会は、第三者認証店等を選び、できるだけ少人数で、大声や長時間の滞在を避け、会話の際はマスクを着用する
        • 咽頭痛、咳、発熱などの症状がある者は外出を控える・医療機関の受診や救急車の利用については目安を参考にする
        • 自宅などにおいて抗原定性検査キット・解熱鎮痛薬を準備する
        • できる限り接触機会を減らすために、例えば、職場ではテレワークの活用等の取組を再度推進するなどに取り組む
        • イベントや会合などの主催者は地域の流行状況や感染リスクを十分に評価した上で開催の可否を含めて検討し、開催する場合は感染リスクを最小限にする対策を実施する
        • 陽性者の自宅療養期間について、短縮された期間中は感染リスクが残存することから、自身による検温などの体調管理を実施し、外出する際には感染対策を徹底すること。また、高齢者等重症化リスクのある方との接触などは控えるよう求めることが必要。
        • 症状軽快から24時間経過後または無症状の場合の、食料品等の買い出しなど必要最小限の外出の許容について、外出時や人と接する時は必ずマスク着用、人との接触は短時間、移動に公共交通機関は利用しないなど、自主的な感染予防行動の徹底が必要。
  • 参考:オミクロン株とその亜系統の特徴に関する知見
    1. 感染性・伝播性 オミクロン株はデルタ株に比べ、世代時間が約2日(デルタ株は約5日)に短縮、倍加時間と潜伏期間も短縮し、感染後の再感染リスクや二次感染リスクが高く、感染拡大の速度も非常に速いことが確認されている。なお、報告されているデータによれば、これまでの株と同様に発症前の伝播は一定程度起きていると考えられる。
    2. 感染の場・感染経路 国内では、多くの感染がこれまでと同様の機会(換気が不十分な屋内や飲食の機会等)で起きており、感染経路もこれまでと同様、飛沫が粘膜に付着することやエアロゾルの吸入、接触感染等を介していると考えられている。
    3. 重症度等 オミクロン株による感染はデルタ株に比べて相対的に入院のリスク、重症化のリスクが低いことが示されているが、現時点で分析されたオミクロン株による感染の致命率は、季節性インフルエンザの致命率よりも高いと考えられる。また、肺炎の発症率についても季節性インフルエンザよりも高いことが示唆されているが、限られたデータであること等を踏まえると、今後もさまざまな分析による検討が必要。
      • 昨年末からの感染拡大における死亡者は、昨年夏の感染拡大と比べ、感染する前から高齢者施設に入所している利用者が感染し、基礎疾患の悪化等の影響で死亡するなど、新型コロナが直接の死因でない事例も少なくないことが報告されている。また、新型コロナ発生当初からデルタ株流行期までは、典型的な新型コロナ感染によるウイルス性肺炎によって重篤な呼吸不全を発症する事例が多かったが、オミクロン株流行期には、入院前からの基礎疾患の悪化や入院中の別の合併症の発症など、肺炎以外の疾患が死亡の主たる要因との報告がある。
      • 今夏の感染拡大では、前回に引き続き、昨年夏の感染拡大時よりも重症化率の減少や、入院患者に占める高齢者の割合が上昇している。さらに、今夏の感染拡大における死亡者は、昨年末からの感染拡大と比べ、人工呼吸・ネーザルハイフローの使用率やステロイドの処方率が下がっている。
      • 小児等の感染では内因性死亡が明らかとされた死亡例において、基礎疾患のなかった症例も死亡しており、痙攣、意識障害などの神経症状や、嘔吐、経口摂取不良等の呼吸器症状以外の全身症状の出現にも留意が必要といった実地調査結果の暫定報告がなされている。
      • 本年7・8月の自宅での死亡事例においては、同時期の死亡者全体の傾向と同様、70歳以上の者が約8割を占め、新型コロナ以外の要因による死亡事例も多いことが示唆される。自治体においては、診療・検査医療機関をはじめとする外来医療体制や健康フォローアップ体制の整備等が進められており、引き続き、自宅療養者への必要な医療の提供に努めることが重要。
    4. ウイルスの排出期間 国内データによれば発症後10日目までは感染リスクが残存し、発症後7日目までが感染力が高く、5日間待機後でもまだ3分の1の患者が感染性のあるウイルスを排出している状態。8日目(7日間待機後)になると、多くの患者(約85%)は感染力のあるウイルスを排出しておらず、当該ウイルスを排出している者においても、ウイルス量は発症初期と比べ7日目以降では6分の1に減少したとの報告がある。
    5. ワクチン効果 従来型ワクチンについては、初回免疫によるオミクロン株感染に対する感染予防効果や発症予防効果は著しく低下する。入院予防効果については、半年間は一定程度保たれているものの、その後50%以下に低下することが報告されている。一方で、3回目接種によりオミクロン株感染に対する感染予防効果、発症予防効果や入院予防効果が回復することや、3回目接種後のワクチン効果の減衰についても海外から報告されている。オミクロン株対応ワクチン(4-5対応型)については、接種後0-2か月(中央値1か月)での発症予防効果が認められたと報告されている。
    6. オミクロン株の亜系統 引き続き、世界的にBA.5系統が主流となっているが、スパイクタンパク質に特徴的な変異を有するオミクロンの亜系統、及び組換え体が複数報告されている。欧州及び米国から多く報告されているBQ.1系統(BA.5.3系統の亜系統)、インドやシンガポールなどを中心に報告されているXBB系統(BJ.1系統(BA.2.10系統の亜系統)とBM.1.1.1系統(BA.2.75.3系統の亜系統)の組換え体)等、感染者数増加の優位性が指摘されている亜系統もある。欧米では、BQ.1系統の占める割合が増加している国もあり、国内でも割合が増加しつつある。また、WHO等によると、これらの変異株について、免疫逃避から感染者数増加の優位性につながっている可能性は指摘されているが、これまでに得られた情報によると、感染性や重症度等が高まっていることは示唆されていない。新たなこれらの亜系統や組換え体の特性について、引き続き、諸外国の状況や知見を収集・分析するとともに、ゲノムサーベイランスによる監視を続けていくことが必要。

~NEW~
厚生労働省 令和4年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します
  • 厚生労働省では、このたび、令和4年「高年齢者雇用状況等報告」(6月1日現在)の集計結果を取りまとめましたので、公表します。
  • 「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」では、高年齢者が年齢に関わりなく働き続けることができる「生涯現役社会の実現」を目指して、企業に「定年制の廃止」や「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」(高年齢者雇用確保措置)のいずれかの措置を、65歳まで講じるよう義務付けています。
  • さらに、令和3年4月1日からは、70歳までを対象として、「定年制の廃止」や「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」という雇用による措置や、「業務委託契約を締結する制度の導入」、「社会貢献事業に従事できる制度の導入」(高年齢者就業確保措置)という雇用以外の措置のいずれかの措置を講じるように努めることを義務付けています。
  • 今回の集計結果は、従業員21人以上の企業235,875社からの報告に基づき、このような高年齢者の雇用等に関する措置について、令和4年6月1日時点での企業における実施状況等をまとめたものです。
  • 厚生労働省では、今後とも、生涯現役社会の実現に向けたさらなる取組を行うとともに、これらの措置を実施していない企業に対して、都道府県労働局、ハローワークによる必要な指導及び助言を実施していきます。
  • 集計結果の主なポイント
    1. 65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業の状況
      • 高年齢者雇用確保措置の実施状況(10ページ表1、11ページ表3-1)
        • 65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業は235,620社(99.9%)[0.2ポイント増加]
        • 企業規模別には中小企業では99.9%[0.2ポイント増加]、大企業では99.9%[変動なし]
        • 高年齢者雇用確保措置を「継続雇用制度の導入」により実施している企業は、
        • 全企業において70.6%[1.3ポイント減少]
      • 65歳定年企業の状況(12ページ表4)
        • 65歳定年企業は52,418社(22.2%)[1.1ポイント増加]
        • 中小企業では22.8%[1.1ポイント増加]
        • 大企業では15.3%[1.6ポイント増加]
    2. 66歳以上まで働ける制度のある企業の状況
      • 70歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況(13ページ表5-1)
        • 70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業は65,782社(27.9%)[2.3ポイント増加]
        • 中小企業では28.5%[2.3ポイント増加]
        • 大企業では20.4%[2.6ポイント増加]
      • 66歳以上まで働ける制度のある企業の状況(14ページ表6)
        • 66歳以上まで働ける制度のある企業は95,994社(40.7%)[2.4ポイント増加]
        • 中小企業では41.0%[2.3ポイント増加]
        • 大企業では37.1%[3.0ポイント増加]
        • 70歳以上まで働ける制度のある企業の状況(14ページ表7)
      • 70歳以上まで働ける制度のある企業は92,118社(39.1%)[2.5ポイント増加]
        • 中小企業では39.4%[2.4ポイント増加]
        • 大企業では35.1%[3.0ポイント増加]
        • 定年制廃止企業等の状況(12ページ表4)
      • 定年制の廃止企業は9,248社(3.9%)[0.1ポイント減少]
        • 中小企業では4.2%[変動なし]
        • 大企業では0.6%[変動なし]
          • ※この集計では、従業員21人~300人規模を「中小企業」、301人以上規模を「大企業」としています。

~NEW~
厚生労働省 「新たな児童虐待防止対策体制総合強化プラン」を決定しました
  • 本日開催した「児童虐待防止対策に関する関係府省庁連絡会議」において「新たな児童虐待防止対策体制総合強化プラン」を決定しましたのでお知らせします。
  • 児童相談所や市町村の体制強化については、平成30年12月に決定した「児童虐待防止対策体制総合強化プラン」(新プラン)に基づき取り組んでまいりました。
  • しかしながら、依然として全国の児童相談所における児童虐待相談対応件数は増加しており、児童虐待防止対策を更に推進していくため、9月2日の関係閣僚会議において、令和4年度改正児童福祉法やこども家庭庁の創設を踏まえた新たな総合的対策である「児童虐待防止対策の更なる推進について」を決定したところです。
  • この決定に基づき、児童相談所や市町村の体制強化を引き続き計画的に進めていくため、現在の「児童虐待防止対策体制総合強化プラン」に代わる次のプランとして「新たな児童虐待防止対策体制総合強化プラン」を策定いたしました。
  • 本プランの対象期間は令和5年度から令和8年度までとし、令和6年度までに児童福祉司を1,060人増員、令和8年度までに児童心理司を950人増員することなどを目標に掲げることとしています。
  • 厚生労働省では、本プランを達成するため、関係省庁と連携しつつ、必要な取組を強力に進めていきます。

~NEW~
経済産業省 令和3年度消費者相談報告書をまとめました
  • 経済産業省消費者相談室では、当省所管の法律、物資やサービスについて、消費者の方や各地域の消費生活センター等からのご相談、苦情等を受け付け、助言や情報提供等を行っていますところ、このたび令和3年度消費者相談報告書をまとめました。
  • 本報告書では、令和3年度に受け付けた消費者相談件数等の動向や特徴をお示ししています。
  • 消費者取引における契約トラブルの未然防止や解決等にお役立てください。
  • 報告書のポイント
    • 令和3年度の相談件数は、8,103件(前年度比4.7%増)となり、3年連続で前年度から増加しました。このうち、「特定商取引法関係」は5,629件(前年度比13.8%増)となり、全体の7割近く(構成比69.5%)を占めました。
    • この「特定商取引法関係」の取引類型の中では、「訪問販売」が2,051件(前年度比63.8%増)であり、前年度から最も増加しました。特に、住宅の水回り設備や鍵の解錠等の修理・修繕、リフォーム等の工事・加工に関する相談が多く寄せられました。また「電話勧誘販売」が940件(同30.9%増)となり、「訪問販売」に次いで増加し、SNSの音声通話機能や会議アプリを利用した勧誘等に関する相談が多く寄せられました。
    • 「特定商取引法関係」に次いで件数が多かった「割賦関係」は844件(前年度比▲1.3%)となり、全体の1割強(構成比11.0%)を占めました。このうち、「割賦販売(クレジット)」が687件(前年度比▲6.3%)となり、不正利用や身に覚えのない請求に関する相談が多く寄せられました。

~NEW~
経済産業省 「産業のGXに向けた資金供給の在り方に関する研究会 施策パッケージ」を取りまとめました
▼GXファイナンス研究会の概要
  • 基本的考え方
    • 2050年CNの実現に向け、民間金融による資金供給を促進するためには、政府による政策ロードマップの提示を行うとともに、公的資金と民間資金の組み合わせ(ブレンデッド・ファイナンス)や官民の知見共有・協働のための体制整備が必要。
    • 本研究会ではGX分野における民間資金を引き出していくための第一歩としての施策パッケージをとりまとめ。
      1. グリーン・ファイナンスの拡大
        • プッシュ型での案件組成支援、発行補助対象拡大を検討
        • 資金使途に関して、市場参加者の知見を踏まえて例示を更新等
      2. トランジション・ファイナンスの拡大
        • 分野別技術ロードマップの拡充(自動車分野の追加)
        • 信頼性向上に向けた取組(研究機関による排出経路の定量化等)
        • トランジション・ファイナンス実行後のフォローアップのための債券投資家等向けガイダンス策定
        • トランジション・ファイナンスと整合的なファイナンスド・エミッションに係る算定・開示に関する具体策を検討する官民チーム発足 等
      3. GX分野におけるブレンデッド・ファイナンスの開発・確立
        • 脱炭素技術のイノベーション促進等に向けて、GX技術の社会実装段階において、民間が取り切れないリスクについて、公的機関によるリスク補完の在り方を検討
      4. 地域・中小企業のGX投資促進にむけた資金供給
        • 日本政策金融公庫によるGXに取り組む者への低利融資制度創設
        • 中小企業の脱炭素化に向けた地域ぐるみでの支援体制の構築
        • 「脱炭素アドバイザー資格認定制度」の創設を検討 等
      5. 企業のGX投資促進等にむけた市場環境の整備等
        • 有価証券報告書にサステナビリティ情報の記載欄の設置にむけた府令改正
        • TCFDコンソーシアムによる開示支援と人材育成プログラム策定
        • TCFD開示に関しシナリオ分析の実践ガイドの提供や地域金融機関向けの支援プログラムの実施等
        • 幅広いアセットクラスや企業のステージにおけるインパクト投資について金融庁で検討深化
      6. GX実践企業の評価軸の構築と金融市場における活用
        • GX実践企業の「機会」評価に関するガイドライン・レポートの策定。特に、削減貢献量に関して、グローバルに発信するための「気候変動への貢献開示イニシアティブ」の組成検討(GXリーグと連携)
      7. 資金還流の形成
        • 企業の気候変動関連投資を支えるための資金環流の促進にむけ、公的金融の活用も含め、必要な施策を検討関係省庁及び関係する検討体において、絶えず政策をアップデートする努力をしつつ、相乗的な効果が発揮されるよう相互に連携

~NEW~
総務省消防庁 新潟県村上市で発生した工場火災に係る消防庁長官の火災原因調査 中間報告の公表
  • 出火場所の調査
    • 発見者(従業員)から、令和4年2月11日23時35分頃に3号機の窯の上から、高さ1メートル位の火が出ていた旨の供述が得られた。
    • 同日23時36分頃、Fスタジオ北側に設置されている屋外カメラの映像から、Fスタジオ焼き工程の北側に面した窓が明るく揺らぎ始める様子が確認された。
    • 3号機上段の乾燥機を見分すると、東側に比べ西側が強く焼損しており、また乾燥機西側の扉には、火炎が噴出した痕跡が確認された。
    • 工場北西部分にある、焼き工程部分の3号機上段にある乾燥機の西側内部が出火場所である可能性が最も高いと考えられる。
  • 出火原因の調査
    • 出火場所付近のガス配管の見分等から、出火原因となり得る顕著な損傷は認められず、さらに、ガス配管から出火したとみられる焼損も確認されなかった。出火場所付近の電気設備及び配線の見分から、出火原因となり得る短絡(ショート)痕などは認められなかった。ガス配管、電気設備及び配線から出火した可能性は低いと考えられる。
    • 出火場所として特定した乾燥機の内部には火災後、煎餅カスの炭化物が、2~3センチ程度堆積していたことが確認された。
    • この煎餅カスは食用油などの油分を含み、乾燥機及び乾燥機下に設置された焼き釜から熱を受けている状況であったと推察される。(同型の乾燥機の温度を計測した結果、内部の温度は130℃前後であった。)
    • また、消防研究センターにおける、当該設備で製造されていた煎餅カスの分析※から、「乾燥機等からの熱」に加え「煎餅に含まれる油分が酸化した際の酸化熱」が蓄熱した場合、発火点を超える温度となることが観測された。※物質の温度を制御しながら変化させ、その物質が受けた熱で、その温度によってどのような化学的変化(発熱など)が生じるかを分析
    • 乾燥機内に堆積した油分を含んだ煎餅カスが乾燥機及び焼釜から熱を受け、さらに、油分の酸化反応による酸化熱も加わったことで発火点に達し、出火原因となった可能性が最も高いと考えられる。
  • 延焼拡大要因の調査
    • 出火箇所である焼き工程の乾燥機3号機の周囲に、段ボール等の延焼拡大の要因となる可燃物は確認されていない。
    • 一方、出火箇所の天井に火災の残渣物があり、床面にも天井から落下したと思われる同様の残渣物が確認された。
    • これらの残渣物の成分を消防研究センターにおいて鑑定したところ、ポリウレタンを含有していることが確認された。
    • このため、消防研究センターにおいて天井に発泡ポリウレタンが吹き付けられていた場合を想定し、火災性状の再現実験を実施した。
    • 実験から、天井に発泡ポリウレタンが吹き付けられていた場合、天井面に容易に着火し、急速に延焼拡大することが確認された。
    • さらに、燃焼終了後、火災現場で確認された残渣物と類似した残渣物が生成されることを確認した。
    • 天井に吹き付けられた発泡ポリウレタンが、延焼拡大要因となった可能性が最も高いと考えられる。
  • 再現実験
    • 発泡ポリウレタンが吹き付けられた火災現場を模した天井(10×5m)にガスバーナーを近づけたところ、10秒程度で天井表面に着火した。
    • 2~3分程度で天井全体に炎が回り、5分程度で天井全面がほぼ燃え尽きることが確認された。
    • また、実験の燃焼終了後、天井から落下した残渣物は火災現場で確認された残渣物と類似していた。

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総務省消防庁 大阪市北区ビル火災を踏まえた避難行動に関するガイドラインの公表
  • 令和3年12月17日に大阪市北区において発生したビル火災を受け、消防庁が国土交通省と合同で設置した「大阪市北区ビル火災を踏まえた今後の防火・避難対策等に関する検討会」において、直通階段が一つの建築物における防火・避難対策の検討を行い、令和4年6月28日に報告書がとりまとめられました。
  • 本報告書を受け、今般、消防庁では「直通階段が一つの建築物向けの避難行動に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)を策定したことから、公表します。
    1. ガイドラインの趣旨
      • 直通階段が一つの建築物を対象に、在館者が直通階段を使用して避難することが困難になった場合における退避区画※を使用した退避・避難行動等及びその留意事項並びに火災発生のリスク及び被害軽減のための日常における施設や設備の維持管理について示した。
        • ※退避区画は、「消防隊が到着するまでの間、一時的に人命安全が保たれるよう、直通階段から離れた位置にある居室や廊下等の室、又はこれらの部分について、防火的に区画された退避スペース」のことをいう。退避区画の満たすべき基準は国土交通省が策定した「直通階段が一つの建築物等向けの火災安全改修ガイドライン」に示されている。なお、「直通階段が一つの建築物等向けの火災安全改修ガイドライン」は国土交通省ホームページに公表されます。
    2. ガイドラインのポイント
      • 火災発生時の基本行動
        • 火災発生時における初期消火、避難、通報に関する基本的な実施事項について記載した。
        • 大阪市北区ビル火災のように直通階段を使用できない場合における、避難上有効なバルコニーを使用した避難や直通階段から離れた位置にある居室等からの避難など、状況に応じた避難方法について示した。
      • 「直通階段が一つの建築物等向けの火災安全改修ガイドライン」の防火避難対策を講じた
        • 建築物における退避・避難行動(退避区画を使用した退避・避難行動)
        • 国土交通省が策定した「直通階段が一つの建築物等向けの火災安全改修ガイドライン」に基づく退避区画を使用した退避・避難方法について記載した。
        • 具体的には、階段室に煙が充満している場合や火災進展が極めて速い場合など、直通階段や避難上有効なバルコニーが使用できない際の退避区画への誘導方法や退避区画内で実施すべき事項等について示した。
      • 火災発生のリスク及び被害軽減のための対策
        • 火災発生のリスク及び被害軽減のための対策として、建物の関係者が日常的に実施すべき事項について記載した。
        • 具体的には、「竪穴部分の維持管理」、「退避区画の維持管理」、「階段、廊下、避難口その他避難上必要な施設の維持管理」、「防火対象物点検報告の実施」、「消防用設備等の点検報告の実施」及び「放火防止対策の徹底」について示した。
    3. その他

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総務省 OECDデジタル経済に関する閣僚会合の結果
▼(添付資料) 「信頼性のある、持続可能で、包摂的なデジタルの未来」に関する閣僚宣言(仮訳)
  • 我々は、経済及び社会の繁栄を可能にするため、オープンで自由、グローバル、相互運用可能で信頼性が高く、アクセスしやすく手頃で、安全かつ回復力のあるインターネット並びに法の支配、人権及び民主主義の価値の尊重により支えられた、安全、安心、包摂的で、持続可能なデジタル環境を促進するため、全てのステークホルダーとともに、以下についてコミットする。
    • オフライン及びオンラインの両方において、人権の享受の促進、個人データの強力な保護、デジタル時代に適した法律及び規制並びに信頼でき、安全で責任ある、持続可能な新興デジタル技術及び人工知能の利用を含め、人間中心の権利志向なデジタルトランスフォーメーションを推進すること。
    • 民主主義国家間の包摂的なマルチステークホルダーによる議論並びに技術の普及、イノベーション、信頼、リスクベースのアプローチ、プライバシー及びデータ保護を促進する政策的枠組み並びにアジャイルな規制、予見的な政策及び国際標準開発における協力といったアプローチを通じて、オンラインプラットフォームを含む新興技術及びビジネスモデルがもたらすガバナンス上の課題に取り組みながら、インターネットガバナンスのマルチステークホルダーシステムを世界的に前進させること。
    • 長期的な社会的及び経済的利益に基づき、競争の促進及び投資の奨励、確かな法規制枠組み並びに効率的かつ透明性のある予測可能な周波数管理の支援等を通じて、大容量、高品質、手頃で、安全かつ回復力のある接続性及びコンピューティング基盤へのユビキタスアクセスを前進させること。
    • 特に、競争、通信サービス、デジタル貿易、プライバシー及びデータ保護並びに消費者政策の分野を含む、データ流通、オンラインプラットフォーム及び市場に関する政策並びに規制を通じて、あらゆる規模の企業にまたがる多様なビジネスモデルを考慮し、革新的で豊かな経済のためにより競争力のある市場を促進すること。
    • バリューチェーン全体を通して、半導体の設計及び製造を含むデジタル技術のサプライチェーンをより持続可能で多様、安全、かつ、回復力があるものにし、デジタルトランスフォーメーション、経済及び社会の機能並びに安全を阻害する不足及び混乱から保護すること。
    • デジタルトランスフォーメーションについて、誰もが参加し、学び、働き、探求し、革新し、貢献し、また、利益を得る機会を平等に得られるよう、ジェンダー間の隔たりを含むあらゆるデジタルデバイドに対処すること。これには、特に、接続性、デジタル技術、デジタル公共サービス、モバイル政府、スキル、トレーニング、教育、キャパシティビルディングに投資し、人々がデジタル社会に積極的に参加し、労働力の転換を成功させることができるようにすることが含まれる。
    • 表現の自由を含む人権と自由を尊重しつつ、誤情報及び偽情報の作成、拡散並びに受容を助長する根本的な要因に対処すること。
    • 表現の自由を尊重しつつ、違法な、また、有害なオンラインコンテンツと闘い、全ての児童をオンライン上の操作及び虐待から守ることにより、個人、特に児童をオンライン上で安全に保つよう取り組むこと。
    • 児童及び若者にとってポジティブで年齢に応じた安全なデジタル環境を推進し、全ての児童がオンライン上で積極的に、安全な、また、十分な情報を得た上での選択をするために必要なスキル及び能力を習得する機会を提供すること。
    • 信頼、セキュリティ、回復力を増進する政策アプローチを開発することにより、デジタルトランスフォーメーション、経済成長、社会繁栄の基盤としてデジタル・セキュリティを強化すること。
    • 消費者がデジタル環境において十分な情報を得た上で意思決定できるようにするとともに、誤解を招く、操作的、欺瞞的、詐欺的で違法性のある不公正な商習慣並びに安全でなく、保証されていない商品及びサービスから保護することにより、消費者の幸福を確保すること。
    • 公共部門及び民間部門の内外で、責任及び透明性があり、信頼可能な、プライバシーを尊重したデータの利用、アクセス及び共有を増進することにより、データ主導の意思決定及びイノベーションを支援し、経済及び社会の繁栄を促進するデータガバナンス政策及び戦略の策定及び実施を継続すること。
    • 新たなプライバシーリスク及び急速な技術開発に直面する中で、プライバシーその他の人権及び自由を保護すること。
    • 将来の相互運用性を促進するため、共通理解を深め、越境を含め信頼性のあるデータ流通を可能にする既存の規制的アプローチ及び手段の間の共通性、補完性及び収斂の要素の特定に向けて取り組むための努力を強化すること。
    • ネガティブな環境外部性を緩和すること並びに環境にポジティブな効果をもたらすデジタル技術及びソリューションを開発及び実装することにより、経済及び社会を持続可能性のあるネットゼロ目標に向けて前進させるため、デジタルトランスフォーメーションを活用すること。
  • 我々は、OECD、特にそのCDEPが、デジタル政策及び取組に関する知識及び経験の共有、エビデンスベースを構築及び増進、グッドプラクティスの特定並びに他の関連する国際フォーラムにおける協力を含む、国際的な、マルチステークホルダーによる協力への関与により、我々の共通の価値を反映し、人間を中心とした、信頼性のある、持続可能で、包摂的な、かつ、ジェンダーに対応したデジタルの未来のための政策基準及びガイダンスを開発するフォーラムであることを強調する。
  • 我々は、OECDに対し、CDEPを通じて、また他の委員会との協力の下、以下を指示する。
    • 相互依存が強まるグローバルなデジタル経済及び社会のための政策決定に情報を提供するため、当機構の歴史的及び制度的な専門知識、分析ツール並びに多種多様な国及びステークホルダーグループと協力する実績のある能力を基に、グローバルなデジタル政策の枠組みを推進するためのテーマ別及び横断的取組をさらに発展させること。
    • デジタルトランスフォーメーションの経済的側面並びに経済成長、ビジネス能力、競争市場、イノベーション、生産性、社会、労働市場及び雇用見通しへの全体的影響について、部門横断的なものを含めた理解を強化し、関連する政策提言を策定すること。これらでは、オンラインプラットフォーム及び没入型環境、新興技術、人工知能、信頼性のある自由なデータ流通及び国境を越えたデータ流通、デジタル・セキュリティ、知的財産、プライバシー及びデータ保護並びに通信その他のインフラストラクチャを扱うものとする。
    • 従来の計測アプローチに課題を呈する分野に焦点を当て、デジタルトランスフォーメーションを支援するために、OECDのエビデンスベースを強化する包括的なデジタル計測のアジェンダを推進すること。これには、デジタルトランスフォーメーション及びデジタルデバイドが経済、社会、人権及び個人の幸福に与える影響、通信サービスが手頃な価格か、データ及びデータ流通の価値、オンライン上の違法、有害及び誤解を招くコンテンツによる個人、社会及び民主主義への影響、デジタル技術が環境に与える影響及びグリーントランジションへの貢献、人工知能及び新興技術の研究及び使用の進展並びにプライバシー及びデジタル・セキュリティに関する問題が含まれるが、これらに限定されない。
    • 市民や企業が国内及び国境を越えた社会並びに経済活動に積極的に参加するために、ますます不可欠となっている信頼性のある安全なデジタルアイデンティティシステムの開発等に関して、関連するOECD勧告の実施を促進するための継続的なガイダンスを含め、新しい技術の動向、関連する社会的及び経済的影響並びにイノベーション及び責任があり、かつ、信頼性があるデジタル技術を社会の利益のために使用することを支援する政策及び規制の枠組みへの影響を特定し、分析すること。
    • デジタル及び新興技術政策に関するマルチステークホルダーの協力を培い、テクノロジーガバナンスに関する未来志向の戦略的議論を促進し、また、共有する民主主義的価値に沿った技術の開発及び利用に関する情報を提供するため、OECDテクノロジーガバナンスに関するグローバルフォーラムを実現すること。
    • 全ての領域にわたる汎用技術としての人工知能から各国が利益を得るためのガイダンスを提供すること、人工知能を統治し、かつ、そのリスクを効果的に管理するため、将来を見据え首尾一貫して実施可能な枠組みの開発を支援すること並びに信頼できる人工知能を実装するための効果的な政策立案及び実行のため、エビデンス、予見、ツール及びインシデント監視を提供すること。
    • インターネット政策立案の原則に関するOECD勧告の影響を評価するために見直し、勧告に反映されているオープンで、相互運用可能な、分散性及び相互接続性のあるインターネットの性質に脅威を与えるおそれのある動向を考察すること。
    • 人間及び人権の保護を中心に据えたデジタルトランスフォーメーションを促進する方法に関する政策分析及びガイダンスを含め、いかにしてオフラインと同様にオンラインでも権利及び自由が尊重され、また、適用されるべきかについての共通理解を深めるため、知識の共有を促進すること。
    • 全ての人のための大容量、高品質、手頃で、安全かつ回復力のある通信インフラストラクチャ及びサービスへのユビキタスなアクセスを培う、将来においても有効な接続性政策及び規制の策定を支援するため、接続性のエコシステム及び市場構造の傾向を特定し、分析すること。
    • デジタルの世界で包摂的な成長を促進し、誰もが繁栄するよう支援するため、各国が全てのデジタルデバイドに対処し、人間中心のデジタル技術の導入及び普及を活性化させるよう支援する、包括的な理解及び政策提言を策定すること。
    • 社会的に弱い立場にある人々や過小評価された団体を特に重視して、メンタルヘルス、ワークライフバランス、デジタル・リテラシー、労働基準及び社会結合等の課題に焦点を当て、デジタルトランスフォーメーション及びオンラインプラットフォームのデータ主導型の取組が個人の幸福及び社会へ与える影響を分析すること。
    • エビデンスに基づく政策及び意思決定並びに国境を越えた協力の促進を含め、デジタルトランスフォーメーション及びグリーントランジションにおける消費者保護及び権限付与の強化を支援すること。
    • オンラインの安全を増進するための新興的なアプローチを把握し、表現の自由その他の自由を含む人権を尊重した関連する政策提言及び一貫性のある補完的な規制アプローチを支援するためのエビデンスベースを改善すること。これには、テロリスト及び暴力的過激派コンテンツ並びに児童の性的搾取及び虐待を含むオンライン上の有害な、又は、違法なコンテンツ及び行為への対策に関する洞察の収集及び透明性の向上が含まれる。
    • 表現の自由を含む人権及び自由の保護を尊重しつつ、オンライン上の誤情報及び偽情報のコンテンツの原因及び影響に対処するための政策アプローチをさらに開発するため、誤情報及び偽情報に関するエビデンスベースを拡大すること。
    • 将来の相互運用性を促進するため、モデル契約条項又は他の転送ツールのような、信頼性のあるデータ流通を可能にする既存の規制アプローチと手段の間の共通性、補完性及び収斂の要素に関する共通の理解をさらに構築するための努力を支援すること。
    • データのアクセス及び共有を促進し、かつ、経済的進歩及び社会的目標を支えるため一貫性があり補完的である、包括的及び効果的なデータガバナンスの枠組の開発を支援すること。
    • 関連する技術動向の影響を評価し、規制及び国境を越えた協力並びに公正かつ責任あるデータの取組に基づく信頼、イノベーション、競争を促進することにより、個人データ及びプライバシー保護を支援すること。
    • デジタル・セキュリティに対する経済的インセンティブ及び政策アプローチの有効性に関するより良い理解に基づき、リスクベースのアプローチ並びに製品及びサービスのセキュリティ、通信インフラストラクチャのセキュリティ、脆弱性対策、脆弱な利用者及び発展途上国のキャパシティビルディング並びに協調的なインシデント対応等の領域に特に重点を置いた、デジタル・セキュリティを強化するためのさらなる政策ガイダンスを提供すること。
    • 持続可能なビジネスモデル及び消費者エンゲージメントを培い、デザインにより、また、デフォルトで持続可能な環境技術の開発を促進し、並びに、ネットゼロ目標の達成及び気候変動の緩和に貢献するデジタル技術に影響するツイントランジションを支援するための政策提言及びグッドプラクティスを把握し、特定すること。
  • 我々は、各国が新型コロナウイルスのパンデミックから回復し、また、世界中の主権並びに個人の権利及び自由に対する脅威を考慮して共に働き、OECDを通じて、全てのものに利益をもたらす人間中心で権利志向のデジタルトランスフォーメーションのため、我々の共有する価値を維持し、この宣言で描かれた道を追求することを決意する。

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国土交通省 大阪市北区ビル火災を踏まえた火災安全改修に関するガイドラインの公表
  • 令和3年12月17日に大阪市北区で発生したビル火災を受け、国土交通省が消防庁と合同で設置した「大阪市北区ビル火災を踏まえた今後の防火・避難対策等に関する検討会」において令和4年6月28日にとりまとめられた報告書を踏まえ、今般、国土交通省では「直通階段が一つの建築物等向けの火災安全改修ガイドライン」を作成しましたので公表します。
    1. 本ガイドラインの趣旨
      • 直通階段が一つの建築物等の安全性向上に向け、建築基準法令に基づき直通階段の増設等を即時求められない既存建築物に係る対策を推進する観点から、特に重要となる改修と各改修において満たすことが望ましい仕様等を本ガイドラインにまとめました。
    2. 本ガイドラインのポイント
      1. 直通階段が一つの建築物に係る対策(二方向避難の確保等)
        • 原則、現行基準に適合させるため、既存の直通階段から離れた位置に直通階段又は避難上有効なバルコニーを設置
        • 他方、これらの改修が現実的に困難な場合は、これらの改修に準じた措置として、避難器具を用いた避難又は消防隊による救助まで一時的に退避できるスペース(退避区画)を設置(本ガイドラインにおいて新たに提示)
      2. 直通階段等の竪穴部分の防火・防煙区画が形成されていない建築物に係る対策
        • 避難経路となる直通階段等を防護し、上階への煙の拡散を防止する観点から、直通階段等を他の部分と準耐火構造の壁や煙を遮断できる防火設備等で区画
    3. 参考
      1. 直通階段が一つの建築物における退避区画を活用した退避方法等については、本日、総務省消防庁ホームページにおいて「直通階段が一つの建築物向けの避難行動に関するガイドライン」が公表されています。
      2. 令和4年6月17日公布の改正建築基準法に盛り込まれた既存不適格建築物に関する制限の合理化措置及び今後の政令改正等を通じ、直通階段が一つの既存不適格建築物等について一定の増築等を行う際には、現行基準への適合に代わり現行基準に準じた措置の実施を新たに認めることとしており、その具体的内容は本ガイドラインを踏まえ今後定める予定です。

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国土交通省 小型旅客船のハッチカバーの確実な閉鎖等を指導します。~知床遊覧船事故に関する運輸安全委員会からの経過報告を踏まえた対応~
  • 本年4月23日に知床で発生した遊覧船事故に関し、昨日、運輸安全委員会から公表された経過報告において国土交通大臣へ示された意見を踏まえ、ハッチカバー等の確実な閉鎖や避難港の活用に関する指導等を実施します。
    1. 船首甲板開口部・避難港に関する意見への対応
      1. 事業者への指導
        • 国は、小型旅客船を運航する事業者に対し、以下を直ちに指示。
          • 【船首甲板開口部】発航前検査の確実な実施(特にハッチカバー等の確実な閉鎖の確認)、発航前検査毎の結果の記録
          • 【避難港】設定している避難港の再確認、教育・訓練の実施
      2. 事業者による自主点検・国への報告
        • 限定沿海以遠を航行区域とする小型旅客船を運航する事業者(以下「事業者」という。)は、ハッチカバー等の閉鎖装置の作動状況・避難港の活用状況等について自主点検を行い、ハッチカバーの開放時・閉鎖時等の写真と発航前検査の記録とともに、その結果を令和5年1月末までに国に報告。
      3. 国による確認・立入検査等
        • 国は、事業者による自主点検結果を確認し、ハッチカバー等の劣化・損傷等により、安全基準不適合のおそれがある場合、令和5年3月中旬までに立入検査等を実施。
      4. 避難港に関する教育・訓練
        • 事業者は、設定している避難港への入港方法等に関する教育・訓練を令和5年3月中旬までに実施。
    2. 小型旅客船の隔壁の水密化等の検討
      • 国は、小型旅客船の更なる安全性確保のため、「船首部に設置されるハッチカバーの締付装置の備付け」、「船首部に設置される隔壁の水密化」等について、学識経験者や造船技術者等からなる技術検討会を設置して検討。令和5年3月末までに結論。

~NEW~
国土交通省 河川氾濫による浸水の頻度を見える化(国管理河川)~水害リスクマップ(浸水頻度図)のポータルサイトを開設~
  • 国土交通省では、これまで、住民の避難等を目的として、洪水ハザードマップのもととなる洪水浸水想定区域図(想定最大規模の洪水を対象)を作成・公表してきました。これに加え、今般、防災まちづくりや企業立地の参考となることを目的として、「水害リスクマップ(浸水頻度図)」を作成し、ポータルサイトを開設しました。
  • 水害リスクマップ(浸水頻度図)は、多段階の浸水想定図(発生頻度は小さいものの浸水範囲が広い大規模な洪水や、浸水範囲は狭いものの発生頻度が高い小規模な洪水など、様々な規模の洪水の浸水想定図)を重ね合わせたものであり、今回開設するポータルサイトでは、全国の国管理河川の水害リスクマップと多段階の浸水想定図をまとめて確認することができます。
  • 今後、水害リスクを踏まえた、まちづくりや企業の立地選択等での更なる活用促進に向け、流域治水協議会等を通じて情報共有を図り、議論を深めてまいります。
▼水害リスクマップ一覧
  • 多段階の浸水想定図
    • 高頻度から中頻度で発生する降雨規模毎(年超過確率1/10、1/30、1/50、1/100、1/150又は1/200)に作成した浸水想定図。
    • 今回公表する図は、国管理河川からの氾濫による浸水のみを対象。
  • 水害リスクマップ(浸水頻度図)
    • 多段階の浸水想定図を用いて、降雨規模毎の浸水範囲を浸水深毎(0.0m以上、0.5m以上(床上浸水以上)、3.0m以上(1階軒下浸水以上))に重ね合わせて作成した図面。
    • 今回公表する図は、国管理河川からの氾濫による浸水のみを対象。
      • ※一定の条件下でのシミュレーション結果であり、雨の降り方や内水も含めた浸水形態によっては実際の浸水状況と異なる場合があります

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