危機管理トピックス

三位一体の労働市場改革の指針(内閣官房)/G7広島首脳コミュニケ(首相官邸)/今後の仕事と育児・介護の両立支援(厚労省)

2023.05.22
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更新日:2023年5月22日 新着20記事

危機管理トピックス

【新着トピックス】

【もくじ】―――――――――――――――――――――――――

消費者庁
  • 訪問販売業者6事業者及び業務提供誘引販売業者8事業者に対する行政処分について
  • 大木製薬株式会社に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について
  • 電力市場における競争環境整備に向けた諸課題について(意見)を掲載しました。
国民生活センター
  • 国民生活 2023年5月号【No.129】(2023年5月15日発行)
  • 低価格で誘う換気扇やエアコンクリーニングの電話勧誘
  • ステロイドが検出された健康茶の類似商品でも検出!-検出された銘柄を飲用されている方は、医療機関にご相談を-
  • 学生の就活の不安につけ込むトラブル-Web会議で無料カウンセリング等を受けるだけのつもりが高額契約に-
厚生労働省
  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について
  • 第4回 日・ILO年次戦略協議の開催(結果)
  • 第7回今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会
経済産業省
  • 令和4年度大学発ベンチャー実態等調査の結果を取りまとめました(速報)~大学発ベンチャー数、過去最高の伸びを記録~
  • 子供の安全のため玩具への新たな規制が導入されます 消費生活用製品安全法施行令の一部を改正する政令が閣議決定されました
国土交通省
  • 「在宅勤務スペース」「宅配ボックス設置」などについて新たに調査しました!~令和4年度住宅市場動向調査の結果をとりまとめ~
  • 貸住宅管理業者及び特定転貸事業者59社に是正指導~全国一斉 立入検査 結果(令和4年度)~

~NEW~
金融庁 業界団体との意見交換会において金融庁が提起した主な論点
▼主要行等
  • 外国企業の口座開設対応について
    • 政府においては、イノベーションの創出や海外経済の活力の取り込みを通じ、日本経済全体の成長力を強化する等の観点から、対日直接投資の促進に取り組んでおり、2021年には「対日直接投資促進戦略」を策定した。その後、同戦略に掲げられた事項や、対日直接投資を推進するために重点的に進めるべき事項を検討するため、対日直接投資推進会議のワーキンググループにて議論が進められ、2022年12月に「中間整理(取組の方向性)」が取りまとめられた。
    • その中で、ビジネス環境の整備のため、外国人・外国企業の口座開設の円滑化等に取り組むことが盛り込まれ、金融庁において、JETRO、全国銀行協会と連携の上、2023年3月にJETROのウェブサイト(日本語版、英語版両方)へ法人口座開設に必要な一般的な書類等を掲載した。
    • 各金融機関においては、引き続き、外国人個人の銀行口座開設対応を含め、丁寧な顧客対応に万全を期していただきたい。
  • 国連安保理決議の着実な履行について(北朝鮮関連)
    • 2023年4月5日、国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会の専門家パネルが、2022年7月から2023年1月にかけての国連加盟国による北朝鮮制裁の履行状況等の調査結果と国連加盟国への勧告を含む最終報告書を公表。
    • 同報告書では、
      • 北朝鮮が暗号資産関連企業及び取引所等へのサイバー攻撃を継続し暗号資産を窃取していること
      • 北朝鮮による石油精製品の不正輸入および石炭の不正輸出が継続していること
        等の事案概要や、必ずしも制裁対象ではないが、こうした事案に関与している疑義がある会社名や個人名、船舶の名前について記載。
    • 同報告書を踏まえ、各金融機関においては、サイバーセキュリティ対策を徹底していただくとともに、安保理決議の実効性を確保していく観点から、報告書に記載のある企業や個人、船舶については、
      • 融資や付保などの取引が存在するかどうかに関する確認、
      • 取引がある場合には、同報告書で指摘されている事案に係る当該企業・個人等への調査・ヒアリング、
        などをしっかりと行った上で、適切に対応いただきたい。
  • マネロン対策等のシステム共同化について
    • 令和4年度補正予算で措置された「AIを活用したマネー・ローンダリング対策高度化推進事業」について、2023年3月、全国銀行協会の子会社のマネー・ローンダリング対策共同機構を含む2社を補助事業者として決定した。本事業を通じ、金融業界全体のマネロン対策等の高度化が図られるよう、金融庁としても積極的に支援していきたい。
    • 全国銀行協会においても、補助金が有効に活用され、サービス提供の開始に向けた準備が円滑に進むよう、引き続き共同機構を支援していただきたい。
    • 各行においては、中長期的な視野に立って、自行のマネロン管理態勢をどう高度化していくのか、その中で共同システムをどう活用できるのか、引き続き検討を進めていただきたい。
  • 金融商品販売・管理態勢に関するアンケート調査結果の還元及び「取組方針・取組状況」の充実について
    • 先般、地域銀行向けに金融商品販売・管理態勢に関するアンケート調査を実施した。調査結果で見られる課題は、業態によって差はあるが、他業態でも参考になるので紹介する。なお、調査結果は2023年4月11日に金融庁ウェブサイトで公表予定であり、詳細はそちらを確認いただきたい。
    • 調査結果について懸念点をいくつか申し上げると、
      1. リスク・リターン・コスト等を含む商品性の事前検証について、3割弱の銀行で「実施していない」との回答があった。
        • ※「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」では「個別の金融商品について、そのリスク、リターン、コスト等といった顧客が金融商品への投資を行う上で必要な情報を十分に分析・特定しているか」が監督上の着眼点とされており、また、顧客本位の業務運営に関する原則6においても「顧客にふさわしい金融商品・サービスの組成、販売・推奨等を行うべき」とされている。
      2. 三線管理について、1割強の銀行で準拠性に留まらない検証※を「実施していない」との回答があったほか、ごく一部の銀行ではあるが、販売手数料の高い金融商品の販売に傾注しないための工夫・検証や苦情を踏まえた販売態勢の検証・見直しを「実施していない」との回答があった。
        • ※例えば、高齢者に外貨建て一時払い保険を販売する際、行内規定で親族の同席が必要と規定している銀行が多いが、同席有無の外形的な事実のみの検証に留まり、販売偏重等について検証していない事例も散見される。
    • なお、これまでのモニタリングを踏まえると、「実施している」と回答した銀行の中にも、そうした取組みができていない先が多く、実際の販売態勢や営業実態について認識できていない先があることが懸念される。
    • こうした取組みを行わず、「顧客の最善の利益」を追求していくことは困難であると考えており、改めて現状の取組結果や態勢について検証いただくとともに、必要に応じて、「取組方針」を見直していただきたい。
      • ※四半期最終月の販売偏重や外貨建て一時払い保険の販売偏重がないかといった点についての検証も含む。
    • また、仕組債の販売について、多くの先で「2022年11月末時点で取扱無し」との回答があった。この点、金融商品全般の適切な販売態勢の構築の観点からは、販売停止の事実よりも、内部でどのような議論を行い、どのような理由・考え方で停止に至ったのかという点が重要と考えている。
    • なお、仕組債の販売を継続する場合は、適切なリスク・リターン検証結果に基づき、「顧客の最善の利益の追求」の観点から、経営陣が責任を持って判断していただきたい。
    • 金融庁としても、継続的に金融機関のモニタリングを行い、販売・管理態勢の向上に資する問題提起を行っていくが、経営陣においては、顧客本位の業務運営の確保・推進に向けて、リーダーシップを発揮していただきたい。
  • 「SNSで実行犯を募集する手口による強盗や特殊詐欺事案に関する緊急対策プラン」について
    • 2023年1月に発生した狛江市強盗殺人事件を含め、SNS上で実行犯を募集する強盗事件が広域で多発し、また、特殊詐欺被害も急増している。こうした情勢を踏まえ、3月17日、標記の緊急対策プランが策定された。
    • 金融庁関連の施策としては、
      • 預貯金口座の不正利用防止対策の強化として、
      • 不審な出金等がある口座について取引時確認を徹底・強化すること、
      • 店頭窓口で取引する際に、詐欺被害が疑われる顧客への注意喚起を徹底・強化すること、
      • 制度改正を含め、非対面の本人確認において公的個人認証の積極的な活用を推進すること、
    • 帰国する在留外国人から譲渡された口座を犯罪者グループ等が悪用することのないよう、
      • 在留期限に基づいた口座管理を強化すること、
      • 在留期限情報の共有態勢を検討すること
        が盛り込まれている。
    • 今後、関係する業界団体とも意見交換を行いながら、関係省庁と具体策を検討していきたい。

~NEW~
警察庁 犯罪統計資料(令和5年1~4月分)
  • 令和5年1~4月の刑法犯総数について、認知件数は209,011件(前年同期169,816件、前年同期比+23.1%)、検挙件数は80,861件(76,835件、+5.8%)、検挙率は38・7%(45.0%、▲6.3P)
  • 凶悪犯の認知件数は1,597件(1,315件、+21.4%)、検挙件数は1,342件(1,112件、+20.7%)、検挙率は84.0%(84.6%、▲0.6P)、粗暴犯の認知件数は18,334件(15,480件、+18・4%)、検挙件数は14,813件(13,058件、+13.4%)、検挙率は80.8%(84.4%、▲3.6P)、窃盗犯の認知件数は142,534件(113,990件、+25.0%)、検挙件数は47,387件(45,847件、+3.4%)、検挙率は33.2%(40.2%、▲7.0P)、知能犯の認知件数は15,056件(11,690件、+28.8%)、検挙件数は5,945件(5,893件、+0.9%)、検挙率は39.5%(50.4%、▲10.9P)
  • 万引きの認知件数は30,229件(27,639件、+9.4%)、検挙件数は19,788件(19,145件、+3.4%)、検挙率は65.5%(69.3%、▲3.8P)
  • 詐欺の認知件数は13,879件(10,598件、+31.0%)、検挙件数は5,092件(4,900件、+3.9%)、検挙率は36.7%(46.2%、▲9.5P)
  • 特別法犯総数について、検挙件数は21,391件(20,274件、+5.5%)、検挙人数は17,647人(16,661人、+5.9%)
  • 入管法違反の検挙件数は1,764件(1,297件、+36.0%)、検挙人数は1,266人(967人、+30.9%)、軽犯罪法違反の検挙件数は2,441件(2,163件、+12.9%)、検挙人数は2,434人(2,156人、+12.9%)、迷惑防止条例違反の検挙件数は3,288件(2,791件、+17.8%)、検挙人数は2,536人(2,143人、+18.3%)、ストーカー規制法違反の検挙件数は381件(300件、+27.0%)、検挙人数は324人(241人、+34.4%)、不正アクセス禁止法違反の検挙件数は141件(139件、+1.4%)、検挙人数は42人(63人、▲33.3%)、不正競争防止法違反の検挙件数は15件(18件、▲16.7%)、検挙人数は19人(23人、▲17.4%)、銃刀法違反の検挙件数は1,640件(1,472件、+11.4%)、検挙人数は1,373人(1,282人、+7.1%)、麻薬等取締法違反の検挙件数は340件(309件、+10.0%)、検挙人数は214人(179人、+19.6%)、大麻取締法違反の検挙件数は2,083件(1,807件、+15.3%)、検挙人数は1,678人(1,419人、+18.3%)、覚せい剤取締法違反の検挙件数は2,113件(2,590件、▲18.4%)、検挙人数は1,454人(1,748人、▲16.8%)
  • 来日外国人による 重要犯罪・重要窃盗犯 国籍別 検挙人員 対前年比較について、総数175人(149人、+17.4%)、ベトナム56人(50人、+12.0%)、中国27人(22人、+22.7%)、フィリピン8人(5人、+60.0%)、ブラジル8人(9人、▲11.1%)、スリランカ8人(15人、▲46.7%)、アメリカ6人(1人、+500.0%)
  • 暴力団犯罪(刑法犯)罪種別 検挙件数・検挙人員 対前年比較について、刑法犯の検挙件数総数は2,887件(2,951件、▲2.2%)、検挙人員総数は1,717人(1,798人、▲4.5%)、暴行の検挙件数は180件(201件、▲10.4%)、検挙人員は160人(205人、▲22.0%)、傷害の検挙件数は281件(297件、▲5.4%)、検挙人員は334人(327人、+2.1%)、脅迫の検挙件数は93件(116件、▲19.8%)、検挙人員は84人(122人、▲31.1%)、恐喝の検挙件数は107件(96件、+11.5%)、検挙人員は113人(134人、▲15.7%)。窃盗犯の検挙件数は1,327件(1,323件、+0.3%)、検挙人員は212人(245人、▲13.5%)、詐欺の検挙件数は544件(486件、+11.9%)、検挙人員は459人(398人、+15.3%)、賭博の検挙件数は8件(9件、▲11.1%)、検挙人員は36人(48人、▲25.0%)
  • 暴力団犯罪(特別法犯)主要法令別 検挙件数・検挙人員 対前年比較について、検挙件数総数は1,329件(1,757件、▲24.4%)、検挙人員総数は878人(1,190人、▲26.2%)、入管法違反の検挙件数は4件(2件、+100.0%)、検挙人員は2人(7人、▲71.4%)、軽犯罪法違反の検挙件数は23件(29件、▲20.7%)、検挙人員は17人(25人、▲32.0%)、暴力団排除条例違反の検挙件数は10件(10件、±0%)、検挙人員は21人(24人、▲12.5%)、銃刀法違反の検挙件数は21件(30件、▲30.0%)、検挙人員は13人(19人、▲31.6%)、麻薬等取締法違反の検挙件数は46件(58件、▲20.7%)、検挙人員は22人(21人、+4.8%)、大麻取締法違反の検挙件数は306件(295件、+3.7%)、検挙人員は192人(181人、+6.1%)、覚せい剤取締法違反の検挙件数は701件(1,007件、▲30.4%)、検挙人員は438人(642人、▲31.8%)、麻薬等特例法違反の検挙件数は39件(66件、▲40.9%)、検挙人員は16人(46人、▲65.2%)

~NEW~
内閣官房 新しい資本主義実現会議(第18回)
▼資料1 三位一体の労働市場改革の指針(案)
  • 基本的考え方
    • 働き方は大きく変化している。「キャリアは会社から与えられるもの」から「一人ひとりが自らのキャリアを選択する」時代となってきた。職務ごとに要求されるスキルを明らかにすることで、労働者が自分の意思でリ・スキリングを行え、職務を選択できる制度に移行していくことが重要である。そうすることにより、内部労働市場と外部労働市場をシームレスにつなげ、社外からの経験者採用にも門戸を開き、労働者が自らの選択によって、社内・社外共に労働移動できるようにしていくことが、日本企業と日本経済の更なる成長のためにも急務である。
    • これまでの我が国の賃金水準は、長期にわたり低迷してきた(先進国の1人あたり実質賃金の推移を見ると、1991年から2021年にかけて、米国は1.52倍、英国は1.51倍、フランスとドイツは1.34倍に上昇しているのに対して、日本は1.05倍)。この間、企業は人に十分な投資を行わず、個人は十分な自己啓発を行わない状況が継続してきた。
    • GXやDXなどの新たな潮流は、必要とされるスキルや労働需要を大きく変化させる。人生100年時代に入り就労期間が長期化する一方で、様々な産業の勃興・衰退のサイクルが短期間で進む中、誰しもが生涯を通じて新たなスキルの獲得に務める必要がある。他方で、現実には、働く個人の多くが受け身の姿勢で現在の状況に安住しがちであるとの指摘もある。
    • この問題の背景には、年功賃金制などの戦後に形成された雇用システムがある。職務(ジョブ)やこれに要求されるスキルの基準も不明瞭なため、評価・賃金の客観性と透明性が十分確保されておらず、個人がどう頑張ったら報われるかが分かりにくいため、エンゲージメントが低いことに加え、転職しにくく、転職したとしても給料アップにつながりにくかった。また、やる気があっても、スキルアップや学ぶ機会へのアクセスの公平性が十分確保されていない。
    • 人口減少による労働供給制約の中で、こうしたシステムを変革し、希望する個人が、雇用形態、年齢、性別、障害の有無を問わず、将来の労働市場の状況やその中での働き方の選択肢を把握しながら、生涯を通じて自らの生き方・働き方を選択でき、自らの意思で、企業内での昇任・昇給や企業外への転職による処遇改善、更にはスタートアップ等への労働移動機会の実現のために主体的に学び、報われる社会をつくっていく必要がある。
    • 企業側の変革も待ったなしである。企業が人への十分な投資を行っていない間に、諸外国との賃金格差は拡大し、先進諸国間のみならず、アジアにおける人材獲得競争でも劣後するようになっているおそれがある。グローバル市場で競争している業種・企業を中心に、人材獲得競争の観点からジョブ型の人事制度を導入する企業等も増えつつあるが、そのスピードは十分ではなく、人的資本こそ企業価値向上の鍵との認識の下、変化への対応を急ぎ、人への投資を抜本強化する必要がある。
    • こうした変革においては、働き手と企業の関係も、対等に「選び、選ばれる」関係へと変化する。一人ひとりが主役となって、キャリアは会社から与えられるものから、一人ひとりが自らの意思でキャリアを築き上げる時代へと、官民の連携の下、変えていく必要がある。
    • このため、リ・スキリングによる能力向上支援、個々の企業の実態に応じた職務給の導入、成長分野への労働移動の円滑化、の三位一体の労働市場改革を行い、客観性、透明性、公平性が確保される雇用システムへの転換を図ることが急務である。これにより、構造的に賃金が上昇する仕組みを作っていく。
    • また、構造的賃上げを行っていくためには、我が国の雇用とGDPの7割を占める地方、中小・小規模企業の対応も鍵となる。三位一体の労働市場改革と並行して、3月15日の政労使の意見交換でも基本的な合意があったように、「中小・小規模企業の賃上げには労務費の適切な転嫁を通じた取引適正化が不可欠である」という考え方を社会全体で共有し、賃上げの原資を確保し、成長と“賃金上昇”の好循環を実現する価格転嫁対策を徹底する必要がある。
    • あわせて、こうした取組と生産性向上支援の取組を通じて、地域の人手不足対策や、働く個人が安心して暮らすことができる最低賃金の引上げを実現する。
    • これらの改革に、官民を挙げて、大胆に取り組むことを通じて、国際的にも競争力のある労働市場をつくっていく。
  • 指針の方向性
    • 三位一体の労働市場改革を進めるに当たり、その前提として、在職中からのリ・スキリング支援やコンサルティング・助言機能の強化等を含めて雇用のセーフティネット機能を確保・拡充していくことが重要であり、民間の力も活用しつつ、官民一体となったリ・スキリングやマッチング機能の強化が求められる。その際、以下の3つの視点が重要となる。
      1. 企業内の人事・賃金制度の改革などにより内部労働市場が活性化されてこそ、外部労働市場、すなわち労働市場全体も活性化する。人的資本こそ企業価値向上の鍵との認識の下、個々の企業の実態に応じて、労使による企業内の人事・賃金制度の見直しを中核に位置付けつつ、労働移動に対する不安感等を徐々に払拭するとともに、人への投資の抜本強化などを通じて仮に転職しても将来戻ってきてもらえるような人材を惹きつける企業を増やしていく。
      2. 今回の改革は、我が国の雇用慣行の実態が変わりつつある中で、働く個人にとっての雇用の安定性を新たな形で保全しつつ、構造的賃上げを実現しようとするものである。働く個人の立場に立って、円滑な労働移動の確保等を通じ、多様なキャリアや処遇の選択肢の提供を確保する。
      3. こうした改革を中小・小規模企業の成長機会にもつなげていく。大企業内の人事制度が柔軟なものになれば、例えば、一定期間の中小・小規模企業への出向や副業・兼業等を通じた経験がスキルとして客観的に認識されるようになり、大企業と中小・小規模企業間の人材交流が活発化し、人手不足に直面する地域の中小・小規模企業の人材支援にもつながる。併せて労務費等の価格転嫁対策を徹底的に講じることにより、中小・小規模企業の収益確保に万全を期すとともに、賃上げにつなげていく。また、リ・スキリングなどに関する支援の充実により、経済格差が教育格差を生む負のスパイラルを断ち切り、全ての人が生きがいを感じられる社会をつくることにつなげる。
    • 上記の視点を踏まえつつ、以下の改革を三位一体で進めることとする。
      1. リ・スキリングによる能力向上支援
      2. 個々の企業の実態に応じた職務給の導入
      3. 成長分野への労働移動の円滑化
    • あわせて、多様性の尊重と格差の是正を重点事項として掲げ、最低賃金の引上げ、労務費の適正な転嫁を通じた取引適正化、正規雇用労働者・非正規雇用労働者間等の同一労働・同一賃金制の施行の徹底、中小・小規模企業労働者のリ・スキリングの環境整備、キャリア教育の充実等の取組を一体的に進めることとする。
    • この際、こうした改革には時間を要するものも含まれることから、一定期間ごとに官民でその進捗を確認し、時間軸を共有しながら、計画的に見直しを行っていく。
    • また、改革への対応は、業種別にも大きく異なることが想定されることから、業所管省庁との連携により、きめ細やかに対応を行う。
  • リ・スキリングによる能力向上支援
    1. 個人への直接支援の拡充
      • 国の在職者への学び直し支援策は、企業経由が中心となっており、現在、企業経由が75%(771億円(人材開発支援助成金、公共職業訓練(在職者訓練)、生産性向上人材育成支援センターの運営費交付金))、個人経由が25%(237億円(教育訓練給付))となっている。これについては、働く個人が主体的に選択可能となるよう、5年以内を目途に、効果を検証しつつ、過半が個人経由での給付が可能となるようにし、在職者のリ・スキリングの受講者の割合を高めていく。
      • その際、業種を問わず適用可能な科目についてのリ・スキリングが、労働者の中長期的なキャリア形成に有効との先進諸国での経験を踏まえ、民間教育会社が実施するトレーニング・コースや大学が実施する学位授与プログラムなどを含め、業種・企業を問わずスキルの証明が可能なOff-JTでの学び直しに、より重点を置く。
      • 業種・企業を問わず個人が習得したスキルの履歴の可視化を可能とする一助として、デジタル上での資格情報の認証・表示の仕組み(オープンバッジ)の活用の推奨を図る。
      • 雇用保険の教育訓練給付に関しては、高い賃金が獲得できる分野、高いエンプロイアビリティの向上が期待される分野(IT、データアナリティクス、プロジェクトマネジメント、技術研究、営業/マーケティング、経営・企画、観光・物流など)について、リ・スキリングのプログラムを受講する場合の補助率や補助上限について、拡充を検討することとし、具体的な制度設計を行う。
      • 特に今般拡充する部分については、在職者を含め労働者が自身の有するノウハウやスキル、本人の意向に応じて、リ・スキリングプログラムを受ける内容、進め方を、コンサルティングを受けながら適切に選択できるように、ハローワーク、職業訓練校などで、事前に在職者へのコンサルティングとリ・スキリングの内容の妥当性の確認を行うこととする。
      • キャリアコンサルタントの役割の強化を図り、将来的には、民間に在籍するキャリアコンサルタントの一部にも、支援措置の妥当性の確認の役割を担わせる可否の検討を進める。
      • 教育訓練給付の受給に係る手続について、オンラインを活用して受給までの効率化を図る。
      • 企業経由の支援策についても、その中身を見直しつつ、必要なものについては充実させることを検討する。この際、企業内でも訓練機会に乏しい非正規雇用労働者等について、働きながらでも学びやすく、自らの希望に応じたキャリアアップにつながる柔軟な日時や実施方法によるリ・スキリング支援を実施する。フリーランスの方々にも、柔軟で多様な訓練機会を提供する。
      • 2033年までに日本人学生の海外留学者数50万人という新たな目標の実現に向けた取組の中で、最近低調となっている社会人の海外大学院への留学を促進する。その際、在職者には時間的制約があることも考慮し、オンライン留学の取組も進める。
    2. 日本企業の人への投資の強化の必要性
      • 日本企業の人への投資(OJTを除く)は、2010年から2014年に対GDP比で0.1%にとどまり、米国(2.08%)やフランス(1.78%)などの先進諸国に比べても低い水準にある。かつ、近年、更に低下傾向にある。今後、人口減少により労働供給制約が強まる中、人への投資を行わない企業は、ますます優秀な人材を獲得できなくなり、それは企業価値や競争力の弱体化に
      • 直結することを認識しなければならない。
      • 他方で、諸外国の経験を見ると、人への投資を充実した企業においては、離職率の上昇は見られず、むしろ、自分を育てる機会を得られるとして、優秀な人材を惹きつけることが可能となっている。
      • このため、企業自身が、働く個人へのリ・スキリング支援強化を図る必要があることを肝に銘じる必要がある。
    3. 「人への投資」施策パッケージのフォローアップと施策見直し
      • 本指針を踏まえ、パッケージの各支援策が労働者にとってより利用しやすいものとなるよう、毎年度パッケージの実施状況をフォローアップし、その結果を翌年度の予算内容へと反映する。
      • あわせて、受講後の処遇改善・社内外への昇進・登用に与える効果について計測し、分析を行い、施策の改善に生かす。
    4. 雇用調整助成金の見直し
      • 現在の雇用調整助成金は、教育訓練、出向、休業のいずれかの形態で雇用調整を行うことによる費用を助成する制度である(大企業は1/2、中小・小規模企業は2/3を助成。教育訓練による雇用調整の場合は1人1日あたり1,200円を追加支給)。
      • 本制度は、リーマンショック、コロナ禍等の急激な経済情勢の悪化に対する雇用維持策として重要な役割を果たしたが、助成が長期にわたり継続する場合、労働者の職業能力の維持・向上や成長分野への円滑な労働移動を阻害するおそれがあるとの指摘もある。
      • このため、在職者によるリ・スキリングを強化するため、休業よりも教育訓練による雇用調整を選択しやすくするよう、助成率等の見直しを行う。教育訓練・休業による雇用調整の場合、給付期間は1年間で100日まで、3年間で150日までであるが、例えば30日を超えるような雇用調整となる場合には、教育訓練を求めることを原則とし、例外的にその日以降に休業によって雇用調整を行う場合は助成率を引き下げるなどの見直しを検討する。
    5. デジタル分野などの認定講座の拡充
      • デジタル分野へのリ・スキリングを強化するため、専門実践教育訓練について、デジタル関係講座数(179講座(2023年4月時点))を、2025年度末までに300講座以上に拡大する。その際、生成AIなど、今後成長が期待され、今の時代に即した分野に関する講座の充実を図る。
    6. 給与所得控除におけるリ・スキリング費用の控除の仕組みの柔軟化
      • 給与所得控除におけるリ・スキリング費用の控除の仕組み(特定支出控除)について、勤務先企業だけでなく、キャリアコンサルタントも、そのリ・スキリングが職務に関連する旨の証明を行えるように改正した。新制度の活用状況も見ながら、更なる制度の柔軟化を検討する。

~NEW~
首相官邸 G7広島首脳コミュニケ(仮訳)
  • 前文
    • 我々G7首脳は、現在のグローバルな課題に対処し、より良い未来に向けた方針を定めるとの決意において、これまで以上に結束し、2023年5月19~21日に開催される年一回のサミットのため、広島で一堂に会した。我々の取組は、国際連合憲章の尊重及び国際的なパートナーシップに根ざしている。
    • 我々は、次に掲げる具体的な措置を講じている。
      • ロシアの違法な侵略戦争に直面する中で、必要とされる限りウクライナを支援する。
      • 全ての者にとっての安全が損なわれない形での核兵器のない世界という究極の目標に向けて、軍縮・不拡散の取組を強化する。
      • デカップリングではなく、多様化、パートナーシップの深化及びデリスキングに基づく経済的強靱性及び経済安全保障への我々のアプローチにおいて協調する。
      • G7内及びその他の国々との協力を通じ、将来のクリーン・エネルギー経済への移行を推進する。
      • 今日及び将来に向けたニーズに対応するため、パートナー国と共に、「強靱なグローバル食料安全保障に関する広島行動声明」を発出する。
      • 「グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)」を通じて質の高いインフラへの資金提供において最大6,000億米ドルを動員するという我々の目標を実施する。
    • 上記は、本コミュニケの参考文書に示されている。
    • 我々は、次のとおり協働し、また他の主体と共に取り組むことを決意している。
      • 自由で開かれたインド太平洋を支持し、力又は威圧による一方的な現状変更の試みに反対する。
      • 強固で強靱な世界経済の回復を促進し、金融安定を維持し、雇用と持続可能な成長を促進する。
      • 貧困の削減並びに気候及び自然危機への取組は密接に関連を持っていることを認識し、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を加速させる。
      • 国際開発金融機関(MDBs)改革を加速させる。
      • アフリカ諸国とのパートナーシップを強化し、多国間フォーラムにおいてアフリカがより代表されるように支援する。
      • 我々のエネルギー部門の脱炭素化及び再生可能エネルギーの展開を加速させることで地球を保全し、プラスチック汚染をなくし海洋を保護する。
      • 「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETPs)」、「気候クラブ」及び「森林・自然・気候の新カントリーパッケージ」を通じた協力を強化する。
      • 世界各地でのワクチン製造能力、パンデミック基金、パンデミックへの対応に関する新たな法的文書及びユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けた取組を通じて、国際保健に投資する。
      • 国際移住について協力し、人身取引及び密入国との闘いにおける我々共通の取組を強化する。
      • 我々が共有する民主的価値に沿った、信頼できる人工知能(AI)という共通のビジョンと目標を達成するために、包摂的なAIガバナンス及び相互運用性に関する国際的な議論を進める。
    • 我々は、次のとおり国際的な原則及び共通の価値を擁護する。
    • 大小を問わず全ての国の利益のため、国連憲章を尊重しつつ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持し、強化する。
      • 世界のいかなる場所においても、力又は威圧により、平穏に確立された領域の状況を変更しようとするいかなる一方的な試みにも強く反対し、武力の行使による領土の取得は禁止されていることを再確認する。
      • 普遍的人権、ジェンダー平等及び人間の尊厳を促進する。
      • 平和、安定及び繁栄を促進するための国連の役割を含む多国間主義及び国際協力の重要性を改めて表明する。
      • ルールに基づく多角的貿易体制を強化し、デジタル技術の進化に歩調を合わせる。
    • 我々は、誰一人取り残さず、人間中心で、包摂的で、強靱な世界を実現するために、我々の国際パートナーと協働していく。その精神から、我々は、豪州、ブラジル、コモロ、クック諸島、インド、インドネシア、大韓民国、ベトナムの首脳の参加を歓迎した。
  • ウクライナ
    • 我々は、国連憲章を含む国際法の深刻な違反を構成する、ロシアによるウクライナに対する侵略戦争を、改めて可能な限り最も強い言葉で非難する。ロシアによる残酷な侵略戦争は、国際社会の基本的な規範、規則及び原則に違反し、全世界に対する脅威である。
    • 我々は、包括的で、公正かつ永続的な平和をもたらすために必要とされる限りの我々の揺るぎないウクライナへの支持を再確認する。我々は、ウクライナに関するG7首脳声明を発出し、そこに示された明確な意図と具体的な行動により、ウクライナに対する我々の外交的、財政的、人道的及び軍事的支援を強化し、ロシア及びロシアによる戦争遂行を支援する者に対するコストを増大させ、・世界の、とりわけ最も脆弱な人々に対する戦争の負の影響に対抗し続けることにコミットする。
  • 軍縮・不拡散
    • 我々は、核軍縮に関するG7首脳広島ビジョンと共に、全ての者にとっての安全が損なわれない形で、現実的で、実践的な、責任あるアプローチを採ることによる、核兵器のない世界の実現に向けた我々のコミットメントを表明する。我々は、より安定し、より安全な世界を作るための軍縮・不拡散の取組の重要性を再確認する。核兵器不拡散条約(NPT)は、国際的な核不拡散体制の礎石であり、核軍縮及び原子力の平和的利用を追求するための基礎である。我々は、生物兵器禁止条約及び化学兵器禁止条約の普遍化、効果的な履行、及び強化に引き続きコミットしている。我々は、急速な技術開発に対応した形で、軍事目的に使用され得る物質、技術及び研究に対する効果的かつ責任ある輸出管理を強化するためにとられた措置を歓迎するとともに、この点における多国間輸出管理レジームの中心的役割を認識する。
  • インド太平洋
    • 我々は、自由で開かれたインド太平洋の重要性を改めて表明する。これは、包摂的で、繁栄し、安全で、法の支配に基づき、主権、領土の一体性、紛争の平和的解決を含む共有された原則、基本的自由及び人権を守るものである。この地域の重要性に鑑み、G7諸国及び我々のパートナーは、我々の関与を強化するために、それぞれのインド太平洋に係るイニシアティブを取っている。我々は、東南アジア諸国連合(ASEAN)及びその加盟国を含む地域のパートナーとの連携を強化するとの我々のコミットメントを強調する。我々は、ASEANの中心性・一体性に対する揺るぎない支持及び「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」に沿った協力を促進するとの我々のコミットメントを再確認する。また、我々は、太平洋島嶼国とのパートナーシップを再確認し、太平洋諸島フォーラムの「ブルーパシフィック大陸のための2050年戦略」に従って、これらの国の優先事項及びニーズを支持する重要性を改めて表明する。我々は、自由で開かれたインド太平洋の実現に貢献する民間企業、大学及びシンクタンクによる取組を歓迎し、更に奨励する。
  • 世界経済・金融・持続可能な開発
    • 世界経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック、ロシアによるウクライナに対する侵略戦争、関連するインフレ圧力などの複数のショックに対する強靱性を示した。しかしながら、我々は、世界経済の見通しについて不確実性が高まる中、引き続き警戒し、マクロ経済政策において機動的かつ柔軟である必要がある。
    • 強固で、持続可能で、均衡ある、かつ包摂的な成長のために努力するに当たり、我々は、中期的な財政の持続可能性及び物価の安定を支援する、安定及び成長を志向するマクロ経済政策の組み合わせにコミットしている。インフレ率は引き続き高く、そして中央銀行は、それぞれのマンデートに沿って、物価の安定を達成することに引き続き強くコミットしている。一方、全体的な財政スタンスとしては、中期的な持続可能性を確保しつつ、財政政策は、引き続き、適切な場合には、生活費の上昇に苦しむ脆弱なグループに対して一時的なかつ的を絞った支援を提供し、グリーン及びデジタル・トランスフォーメーションに必要な投資を促進すべきである。我々はまた、G7の為替相場についての既存のコミットメントを再確認する。我々は、供給サイドの改革、特に労働供給を増やし生産性を高める改革の重要性を改めて強調する。我々はまた、包摂、多様性とイノベーションの促進を通じた、我々の経済の長期的な成功のための、女性及び十分に代表されていないグループの極めて重要な役割を強調する。我々は、民間部門の持続可能性及び強靱性を強化するための、「G20/経済協力開発機構(OECD)コーポレート・ガバナンス原則」の成功裏の見直しを期待する。我々は、我々の経済・社会構造がダイナミックかつ根本的な変容を遂げていることを認識しつつ、ウェルフェアの多元的な側面及びこれらの側面を実用的かつ効果的な方法で政策立案に組み込むべきであるということを強調する。このような取組は、G7の中核的価値観である民主主義と市場経済への信頼を維持することに資する。
    • 我々は、金融セクターの動向を引き続き注意深く監視するとともに、金融安定及びグローバルな金融システムの強靭性を維持するために適切な行動をとる用意がある。我々は、2008年の世界金融危機後に実施された金融規制改革に支えられ、我々の金融システムが強靱であることを再確認する。我々は、ノンバンク金融仲介の強靱性の強化に関する金融安定理事会(FSB)及び基準設定主体の作業を強く支持する。我々は、通貨・金融システムの安定性、強靱性及び健全性に対する潜在的なリスクに対処しつつ、決済の効率性及び金融包摂のようなイノベーションの恩恵を活用するためのデジタル・マネーに関する政策検討を継続する。効果的なモニタリング、規制及び監視は、責任あるイノベーションを支援しつつ、暗号資産の活動及び市場がもたらす金融安定及び健全性のリスクに対処し、規制裁定を避けるために、極めて重要である。
    • 我々は、OECD/G20包摂的枠組みによる経済のグローバル化及びデジタル化に伴う課税上の課題に対応し、より安定的で公正な国際課税制度を確立する二つの柱の解決策の迅速かつグローバルな実施に向けた我々の強い政治的コミットメントを再び強調する。我々は、第1の柱に関する多国間条約(MLC)の交渉における重要な進展を認識し、合意されたタイムライン内にMLCの署名ができる状態となるよう、交渉の迅速な完了に対する我々のコミットメントを再確認する。我々は、第2の柱の実施に向けた国内法制の進展を歓迎する。我々は、途上国に対して、二つの柱の解決策の実施に係る支援の重要性を強調しつつ、持続可能な税収源を築くための税に関する能力強化に対する支援を更に提供する。
    • 我々は、2030年までの持続可能な開発目標の達成、貧困の削減、気候危機を含むグローバルな課題への対応及び低・中所得国における債務脆弱性への対処は、緊急であり、相互に関連し、かつ相互に強化し合うものであることを認識する。我々は、これらの課題に対処し、公正な移行を支援するために必要な民間資金及び公的資金を動員するために、自らの役割を果たす決意である。我々は、国際公共財を提供し保護することの重要性を認識しつつ、貧困を削減し繁栄の共有の促進のためのMDBsの取組に不可欠な要素として、強靱性、持続可能性及び包摂性の構築を組み込む取組を支援する。我々は、気候変動を含む脆弱性への対処を強化することにより、貧困をより効果的に削減するために、国際金融機関、二国間パートナー及び民間部門からの追加的な資金を動員するための開発資金ツールキットを強化するよう努める。我々は、6月22日~23日にパリで開催される国際開発金融の再活性化のためのサミットに始まり、ニューデリーでのG20サミット、ニューヨークでのSDGsサミット、マラケシュでの2023年世界銀行グループ・国際通貨基金(IMF)年次総会、ベルリンでのG20の「アフリカとのコンパクト」に関する会議及びアラブ首長国連邦(UAE)での国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)を通じてこのモメンタムを維持し、今後1年間の重要な局面において、パートナーと共にこの野心を実現し、この議題について具体的な進展を得るために協働する。
    • 我々は、SDGs達成に向けた進捗の後退を反転させるために、主導的な役割を果たすことを決意する。我々は、2023年がSDGs達成に向けた折り返し地点であることを認識しつつ、9月のSDGサミットの重要性を強調し、成功に向け野心的に貢献する。
    • 我々は、国際協力を再活性化し、多国間主義を強化することへのコミットメントを改めて表明する。我々は、持続可能な開発のための2030アジェンダとアディスアベバ行動計画(AAAA)の実施を加速し、その実施に当たっては地域主導の開発を通じたものも含め、包括的かつジェンダー分野を変革するような方法で行う。我々はまた、誰一人取り残さない社会の実現を目指し、新しい時代の人間の安全保障の概念を推進する。
    • 我々は、グローバルな課題に取り組む上で、開発協力と国際的なパートナーシップが果たす重要な役割や、国際的なパートナーとの連帯の必要性を強調する。我々はまた、持続可能な開発のための資金ギャップに対処するために、既存の資金の効率的な使用及び国内資金の更なる動員並びに民間金融資産の動員を求める。我々は、一部の国が採用している国民総所得(GNI)に対する政府開発援助(ODA)比0.7%目標などのそれぞれのコミットメントの重要性を認識し、革新的資金調達メカニズムを含むODAの増加とその触媒的な利用の拡大のための継続した取組の必要性を強調する。
    • 我々は、債務持続可能性に対する深刻な課題がSDGs達成に向けた進捗を損なっており、低・中所得国がロシアによるウクライナに対する侵略戦争やより広範なグローバルな課題から偏って影響を受けていることを引き続き懸念する。我々は、こうした国々の債務脆弱性に対処する緊急性を再確認し、参加者に明確性を与えながら、予測可能かつ、適時に、秩序だった方法で連携した「債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)を越えた債務措置に係る共通枠組」の実施を改善するためのG20の取組を完全に支持する。
    • 我々は、IMF理事会による、ガーナに対するプログラムへの最近の承認を歓迎する。
    • 共通枠組を越えて、中所得国(MICs)の債務脆弱性は、多国間の協調によって対処されるべきである。この点において、我々は、フランス、インド及び日本の3か国の共同議長の下、スリランカのための債権国会合が立ち上げられたことを歓迎し、MICsの債務問題に対処するための将来の多国間の取組の成功モデルとして、迅速な解決を期待する。我々はまた、民間債権者が、措置の同等性の原則に沿って、公平な負担を確保するために、債務措置を少なくとも同程度の条件で提供することの重要性を強調する。
    • 我々は、気候変動の影響に直面する債務者に対するセーフティネットを強化するために、「気候変動に対する強じん性を取り入れた借入条項(CRDC)」の発展を歓迎する。
    • 我々は、この論点に関する我々の財務大臣による作業を歓迎し、より多くの債権者が融資契約にCRDCを組み込むことを奨励する。債務データの正確性と透明性を高めるため、我々は、全ての公的二国間債権者が、債務データの正確性の分野におけるG20のイニシアティブを更に前進させることを含め、債務データ突合のためのデータ共有の取組への参加を促す。
    • 我々は、MDBs及び開発金融機関(DFIs)に対し、MDB改革の実施を通じたものを含め、民間資金を活用する能力を高めるための取組を加速させることを奨励する。
    • この点で、我々は、貧困削減と繁栄の共有の達成に不可欠である、気候変動、パンデミック、脆弱性、紛争などの国境を越えた課題によりよく対処するために、ビジネス・モデルを見直し、変革するためのMDBsの改革に関する進行中の作業を強く支持し、加速させることを奨励する。この改革は、既存の資本の最も効率的な使用を伴わなければならない。この目的のため、我々は、G20の「MDBの自己資本の十分性に関する枠組の独立レビュー」の勧告の実施に関する野心的なG20ロードマップの策定に貢献するとともに、MDBsに対し、その長期的な財政の持続可能性、強固な信用格付及び優先的に弁済を受ける地位を守りつつ、包括的な方法の下での更なる進展を求める。世界銀行グループにおける、今後10年間で最大500億米ドルのファイナンス能力を追加できる財務改革と、世界銀行グループのミッションと運用モデルに関する主要な改革を基礎として、我々は、野心的な改革が継続的に行われるよう、2023年の世界銀行グループ・IMF年次総会とそれ以降に向けた更なる進展を期待する。我々は、他のMDBsに対し、1つのシステムとしてのMDBsによる協調的な取組という観点からこのイニシアティブへの参加を奨励する。我々はまた、MDBsが、政策・知識面の支援を最大限に活用し、国内資金や民間資金の動員及び民間部門の関与を促進するための強化されたアプローチを模索することを求める。我々は、特別引出権(SDR)の自発的な融通又は同等の貢献を通じて最も必要としている国々を支援するための共同の取組を更に前進させた。我々は、日本とフランスによる追加のプレッジが、我々のこれまでの貢献やコミットメントと合わせて、1,000億米ドルの世界的な野心を射程に入れたことを歓迎し、既存のプレッジの履行を求め、野心の達成のために全ての意欲ある、貢献可能な国からの更なるプレッジを要請する。我々は、IMFが、2023年の世界銀行グループ・IMF年次総会までに2021年に合意された資金調達目標を達成すること、そして、今後数年間で増大する低所得国のニーズを満たすことを目指して、低所得国を支援する貧困削減・成長トラスト(PRGT)を持続可能な基盤に据えるために、全ての利用可能な選択肢を特定することを支持する。我々は、国内の法的枠組みとSDRの準備資産としての性格と地位を保持する必要性を尊重しつつ、MDBsを通じたSDRの自発的な融通を可能にするため実行可能な選択肢をさらに模索する。
    • 我々は、質の高いインフラへの資金提供、投資誘致に必要な政策改革を推進する取組の支援、国主導のパートナーシップの運用、案件形成支援を含む上流支援の促進等により、低・中所得のパートナー国のインフラ投資ギャップを縮小することの重要性を強調する。
    • 我々は、「G7グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)」及び協働に向けた我々の共通のコミットメントを再確認し、2027年までに6,000億米ドルを動員することを目指す。我々は、持続可能で、包摂的で、強靭であり、質の高いインフラへの官民投資のためのグローバル・パートナーシップを、パートナー国と共に引き続き強化していく。我々は、この目的に向けた行動を加速するため民間部門を動員する。
    • 我々の提案は公正かつ透明であり、現地レベルでのインパクトの実現に焦点を当て、地球規模の持続可能な開発の加速を目指す。我々は、G7とパートナーが、持続的かつ前向きな影響を生み出し、持続可能な開発を推進する投資を促進する上で、どのように具体的な進展を遂げてきたかを示すPGIIに関するファクトシートを歓迎する。我々は、アフリカのビジネス環境を強化するための重要な枠組みとして、G20の「アフリカとのコンパクト」を改めて支持し、改革志向のパートナーにこのイニシアティブに参加し、これを強化することを求める。
    • 我々は、透明で公正な開発金融を促進し、債務の透明性及び持続可能性、公正な審査、選択及び質の高いインフラ投資のための貸付慣行といった既存の原則の実施におけるギャップに対処するために協働するとの決意を共有した。この点、我々は、全ての主体に対し、質の高いインフラ投資に関するG20原則、G20持続可能な貸付に係る実務指針、OECD国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約、OECD多国籍企業行動指針を含む、国際ルール、スタンダード及び原則を遵守することを求める。これらのルール、スタンダード及び原則には、インフラ投資の健全性を保護するための措置も含まれている。
    • 我々は、開発、人道、平和及び安全保障の問題に共に取り組むことの重要性に留意する。
    • 我々は、女性、女児、及び脆弱な状況にある人々に焦点を当てた、前例のない数の人道危機に対処することを決意する。この観点から、我々は、緊急の食料危機への対応を含め、悪化する人道危機に対処するために、今年、合計で210億米ドル以上を供与することにコミットする。我々は、小島嶼開発途上国を含む多くの国が災害に対して脆弱であることに留意しつつ、仙台防災枠組2015-2030及び国連防災機関(UNDRR)が指揮した中間レビューの成果に沿って国際防災協力を加速する。我々は、災害に関する事前の備え、及び「リスク移転」だけではなく「リスク削減」にも貢献し、結果として先行的行動の強化につながる、人的資本、物品及びインフラへの投資の重要性を強調する。我々は、開かれた透明性のある方法で、我々が行った約束について説明責任を果たすことに引き続きコミットする。この点、我々は、食料安全保障及び栄養並びに難民及び移住に関するG7の開発関連のコミットメントをフォローアップする2023広島進捗報告書を承認する。
    • 我々は、持続可能な開発のあらゆる側面における推進力として、世界の都市の変革の力を強調する。我々は、持続可能な都市に関する協力を継続し、我々の関係閣僚に対し、カーボンニュートラルで、強靱で、包摂的な都市、及びデジタル化に関する原則の策定と都市のためのデータ及び技術の使用の促進を検討することを指示する。この作業は、気候変動に関連する最も大きな課題に直面している都市を持つグローバルなパートナーとの交流を支援する。
  • 気候
    • 我々の地球は、気候変動、生物多様性の損失及び汚染という3つの世界的危機並びに進行中の世界的なエネルギー危機からの未曾有の課題に直面している。我々は、この勝負の10年に行動を拡大することにより世界の気温上昇を摂氏1.5度に抑えることを射程に入れ続け、2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させ、エネルギー安全保障を確保するとともに、これらの課題の相互依存性を認識し、シナジーを活用することで、パリ協定へのコミットメントを堅持する。ロシアによるウクライナに対する侵略戦争が世界のエネルギー市場とサプライチェーンに影響を与えているが、遅くとも2050年までに温室効果ガス(GHG)排出ネット・ゼロを達成するという我々の目標は揺るがない。我々は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)及びその第6次評価報告書(AR6)の最新の見解によって詳述された、気候変動の影響の加速化及び激甚化に対する我々の強い懸念を強調し、その最新の見解を踏まえ、世界のGHG排出量を2019年比で2030年までに約43%、2035年までに約60%削減することの緊急性が高まっていることを強調する。我々は、国が決定する貢献(NDC)目標の達成に向けた国内の緩和策を早急に実施し、例えば、セクター別目標の設定又は強化、二酸化炭素以外の温室効果ガスに係る副次的目標の策定、厳格な実施措置の採用によるものを含め、我々の野心を高めるために昨年エルマウで行ったコミットメントを再確認する。我々は、我々の指導的役割に留意しつつ、また、全てのG7諸国において排出量が既にピークを迎えたことに留意し、この勝負の10年及びその後数十年間における世界の気温上昇を抑える上で、全ての主要経済国が果たすべき重要な役割を認識する。この文脈で、我々は、全ての主要経済国が、パリ協定以降、NDCの野心を大幅に強化し、既にGHG排出量のピークを迎えたか、遅くとも2025年までに迎えることを示し、特にNDCにおいて全てのGHGを対象とする経済全体の排出削減目標を含めるべきであったことを強調する。この観点で、我々は、2030年NDC目標又は長期低GHG排出発展戦略(LTS)が摂氏1.5度の道筋及び遅くとも2050年までのネット・ゼロ目標に整合していない全ての締約国、特に主要経済国に対し、可及的速やかに、かつCOP28より十分に先立って2030年NDC目標を再検討及び強化し、LTSを公表又は更新し、遅くとも2050年までのネット・ゼロ目標にコミットするよう求める。さらに、我々は、全ての締約国に対し、COP28において、世界のGHG排出量を直ちに、かつ遅くとも2025年までにピークアウトすることにコミットするよう求める。我々は、「グローバル・メタン・プレッジ」へのコミットメントを再確認し、2030年までに世界全体の人為起源のメタン排出量を共同で2020年比で少なくとも30%削減するための取組を強化する。我々は、COP28における第1回グローバル・ストックテイク(GST)の最も野心的な成果物を確保するために積極的に貢献することにコミットし、その結果が、緩和、適応、実施手段と支援にまたがる強化された、即時かつ野心的な行動につながるべきである。我々は、全ての締約国に対し、COP30に十分に先立って、GSTの成果による情報提供を受け、全てのGHG、セクター、分類を含む経済全体の絶対削減目標及び摂氏1.5度の道筋に沿って大幅に強化された野心を反映し、次期NDC及びLTSを提出することを求める。これらは、摂氏1.5度の道筋に沿って大幅に強化された野心を反映するとともに、再検討され強化された2030年目標も含むべきである。
    • 気候変動、生物多様性の損失、クリーン・エネルギーへの移行に関する行動の速度と規模を増加させる重要性に留意し、我々は、グリーン・トランスフォーメーションを世界的に推進及び促進し、遅くとも2050年までにGHG排出のネット・ゼロを達成するために我々の経済の変革の実現を目指して協働する。我々は、国の状況を考慮して、多様かつ現実的な道筋を通じた気候変動に強靭で、循環型で、ネイチャーポジティブな経済及びネット・ゼロGHG排出への移行を支援することを含め、排出削減を加速するために、開発途上国及び新興国に関与する。この目的のため、我々は、PGIIを含む協調行動により支援され得る、開発途上国の公正なエネルギー移行を支援することへの強いコミットメントを再確認する。我々は、南アフリカ、インドネシア及びベトナムにおけるJETPsで達成された進展を歓迎し、また、インド及びセネガルとの協議を継続する。我々は、「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)構想」、「脱石炭同盟(PPCA)」、「2050パスウェイ・プラットフォーム、ネット・ゼロ・ワールド(NZW)」、「グローバル・カーボンプライシング・チャレンジ」など、クリーン・エネルギー移行を支援することを目的とした世界各国のイニシアティブに留意し、摂氏1.5度への道筋に整合したこれらのイニシアティブを通じた対応の重要性を強調する。我々は、供給側の措置について更なる行動を取るとともに、インフラや材料の使用の変更の促進、最終用途技術の採用、持続可能な消費者選択の促進など、需要側における更なる脱炭素化の取組の必要性を認識する。我々はまた、地域のニーズや環境条件に基づく気候・エネルギー行動を前進させるために、他のステークホルダーやパートナーと連携した地方政府の重要な役割を認識する。我々は、高い十全性のある炭素市場及び炭素の価格付けが、炭素の価格付けのための政策手段の最適な活用を通じ、費用効率の高い排出レベルの削減を促進し、イノベーションを推進し、ネット・ゼロへの転換を可能にする重要な役割を有することを再確認する。我々は、効果的に排出を削減する炭素価格付け、かかる価格付けによらないメカニズム及びインセンティブを含む適切な政策の組み合わせを支持し、これらは各国固有の状況を反映して変わり得ることに留意する。我々は、OECDの炭素緩和アプローチに関する包摂的フォーラム(IFCMA)を強く支持する。
    • 我々は、産業の脱炭素化を進めるために、開放的、協調的かつ包摂的な気候クラブを、国際的なパートナーと協力して進めることを期待する。我々は、民間事業者が信頼できるネット・ゼロ・プレッジ及び透明性のある実施戦略を通じて、バリューチェーン全体におけるGHGネット・ゼロ排出にコミットすることを奨励する。我々はまた、脱炭素ソリューションを通じ他の事業者の排出削減に貢献するイノベーションを促すための民間事業者の取組を奨励・促進する。我々は、鉄鋼生産及び製品の排出に関する新しい「グローバル・データ・コレクション・フレームワーク」の実施に向け作業を開始することを決定した産業脱炭素化アジェンダ(IDA)の進捗を歓迎する。我々は、2030年までの高度に脱炭素化された道路部門へのコミットメントを再確認し、世界全体の保有車両からのGHG排出削減の重要性及び気温上昇を摂氏1.5度に抑えることを射程に入れ続けるために必要な軌跡に沿ったこの目標に近づくための多様な道筋を認識する。我々は、2050年までに道路部門でネット・ゼロ排出を達成するという目標にコミットしている。この文脈で、我々は、2035年まで又は2035年以降に小型車の新車販売の100%又は大宗を排出ゼロ車両にすること、2035年までに乗用車の新車販売の100%を電動車とすること、関連するインフラ及び持続可能なバイオ燃料や合成燃料を含む持続可能なカーボンニュートラル燃料を促進することを目的とする国内政策を含め、我々のそれぞれが保有車両を脱炭素化するために取る様々な行動を強調する。我々は、これらの政策が、2030年までにグローバルに販売されるゼロ排出の小型車のシェアが50%以上へ進展していくことを含め、高度に脱炭素化された道路部門への貢献をもたらすという機会に留意する。国際エネルギー機関(IEA)の「エネルギー技術の展望2023」の調査結果を考慮し、我々はまた、ネット・ゼロ達成への中間点として、2035年までにG7の保有車両からのCO2排出を少なくとも2000年比で共同で50%削減し、また、その進捗を年単位で追跡する可能性に留意する。
    • 我々は、遅くとも2050年までに国際海運からのGHG排出をライフサイクル全体でゼロにすることを達成するための世界的な取組を強化することにコミットすることを再確認する。我々は、信頼できる一連の対策を通じ、産業革命以前の水準に比べて気温上昇を摂氏1.5度に抑えるための取組に沿って、国際海事機関(IMO)のGHG削減戦略の改定においてこの目標を支持し、2030年及び2040年の中間目標を導入することを支持することにコミットする。我々は、国際民間航空機関(ICAO)の国際航空のためのカーボン・オフセット及び削減スキーム(CORSIA)を基礎として、持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進、新技術の導入及び運航の向上への取組を行うことを含め、2050年までに国際航空からのCO2排出実質ゼロを目指すICAOの目標の達成に向けた世界的な取組を加速することにコミットする。
    • 気候変動がもたらす脅威の増大に直面する中、気候変動に脆弱なグループの支援は、人間の安全保障を確保し、強靭で持続可能な開発を実現するために不可欠である。我々は、早期警戒システムに関連した「気候リスクに対するグローバル・シールド」及び他のイニシアティブや気候変動に対する強靭性を取り入れた借入条項の導入も含む、気候変動適応、気候災害リスク削減、応急対応、及び復旧・復興、及び早期警戒システムの強化を通じて、気候変動に脆弱なグループの強靭性を強化するための支援を増加・強化し続ける。我々は、意味のある緩和行動及び実施に関する透明性の文脈において、2020年から2025年にかけて年間1,000億米ドルの気候資金を合同で動員するという先進締約国の目標に対する我々のコミットメントを再確認する。我々は、2023年にこの目標を完全に達成するために、他の先進締約国と協働する。我々は、GHG低排出であり、かつ気候に対して強靱な開発に向けた道筋に資金の流れを整合させることも含め、世界的な取組の一部として、官民を問わず、多様な資金源から、パリ協定の目標の達成に貢献する、野心的で目的に沿った新規合同気候資金数値目標(NCQG)に関する議論を歓迎する。我々は、G7の重要な役割及び先進締約国が気候資金の動員を主導すべきであることを認識し、能力を有するがまだ国際気候資金の現在の提供者ではない全ての国及びステークホルダーが、この世界的な取組に貢献する必要性を強調する。
    • 我々は、パリ協定第2条1cに従って、温室効果ガスについて低排出型であり、及び気候に対して強靱である発展に向けた方針に資金の流れを適合させる我々自身の取組を加速することにコミットする。我々は、特に、クリーン技術や活動の更なる実施及び開発に焦点を当てた民間資金を含む資金を動員することの重要性を強調する。我々は、気候を含む持続可能性に関する情報の一貫性、比較可能性、及び信頼性のある情報開示へのコミットメントを強調する。我々は、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が、持続可能性に関する全般的な報告基準及び気候関連開示基準を最終化し、またグローバルに相互運用性のある持続可能性開示枠組の達成に向けて取り組むことを支持する。我々はまた、ISSBによる、その作業計画の市中協議に沿った、生物多様性及び人的資本に関する開示に係る将来の作業に期待する。我々は、「G20サステナブル・ファイナンス・ロードマップ」の実施及びモニタリングを支持することに引き続きコミットする。我々は、企業が信頼性のある気候移行計画に基づき、パリ協定の気温目標に沿ったネット・ゼロ移行を実行する必要性を強調する。我々はまた、摂氏1.5度の気温上昇目標を射程に入れ続けることと整合的で、カーボン・ロックインを回避し、効果的な排出削減に基づいているトランジション・ファイナンスが、経済全体の脱炭素化を推進する上で重要な役割を有することを強調する。我々は、緑の気候基金(GCF)の野心的で成功した第2次増資を期待するとともに、G7の強固なプレッジの必要性を再確認する。我々は、他の国々にも同様のプレッジを促すとともに、全ての潜在的な拠出者を奨励することによりGCFの拠出国ベースの拡大の必要性を強調する。我々は、規模を拡大した資金源からの供与において緩和と適応の間の均衡を達成するという文脈において、開発途上締約国に対する適応のための気候資金の供与を、2025年までに2019年の水準から共同で少なくとも2倍にすることを先進国に求めるグラスゴー気候合意の要請に対応するための取組を引き続き加速する。我々はまた、国際開発金融機関に対し、改定され強化された2025年予測を発表し、野心的な適応資金目標にコミットするよう求めるとともに、G7以外の国に対し、民間資金を含む適応資金の供与と動員の拡大を求める。我々は、資金動員におけるIFIsの重要な役割を強調し、それらの政策、投資、運営及びガバナンスにおいて気候及び環境問題を主流化することを求める。我々はまた、国際開発金融機関に対し、ネット・ゼロ移行を促進し、民間部門の投資を可能にするために、気候資金を含む国際公共財への資金を増やし、政策に連動する金融を通じて開発途上国の野心的な規制改革を支援するよう求める。更に、環境十全性を確保しつつ炭素市場の発展を促進させるため、我々は、カーボンクレジット市場における実施を促進するための「十全性(質)の高い炭素市場の原則」を支持する。我々は、気候変動の悪影響に伴い、既に生じている経済的及び非経済的な損失及び損害、及び世界的に特に最も脆弱な人々が感じている影響の規模について、強い懸念を強調する。
    • 我々は、世界的な気候変動の悪影響を警戒し、特に最も脆弱な国々に対して、損失と損害を回避し、最小化し、これらに対処するための行動と支援を増加させる。これには、パリ協定第8条の文脈で気候変動の悪影響に特に脆弱な開発途上国のための基金を含む、新たな資金面での措置を設立する国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)/パリ協定第4回締約国会合(CMA4)決定の実施や、「G7気候災害対策支援事例集」で特定された支援の提供が含まれる。
  • 経済的強靱性・経済安全保障
    • 経済的強靭性と経済安全保障をグローバルに確保することは、経済的な脆弱性の武器化に対する我々の最善の防御となり続ける。我々は、2022年G7エルマウ・サミットでのコミットメントを想起しつつ、構造的な脆弱性から保護するため、グローバルな経済的強靭性及び経済安全保障を強化する経済政策を推進していく。このため、我々は、G7内の、及び開発途上国との連携を含むG7以外の世界中のパートナーとの対話に関与し、協力的なアプローチをとっていく。その取組の中で、我々は、世界貿易機関(WTO)を中核とするルールに基づく多角的貿易体制に基づき、貿易を円滑化し、経済的強靱性を促進するため、国際的なルール及び規範を推進していく。我々の取組には、我々及び世界中のパートナーのサプライチェーンが、より強靭で持続可能で信頼性のあるものにするための行動をとることや、全ての人の繁栄を促進するための適切な措置が含まれる。また、基幹インフラにおける信頼性及び安全性を促進していく。我々は、戦略的依存関係及び構造的な脆弱性を悪化させ、労働者やビジネスに害を与え、国際的なルール及び規範を損ない得る非市場的政策及び慣行に対処するため、継続している連携を強化していく。世界の安全及び安定を損なうリスクに対処するため、警戒を高め、協力を強化するというエルマウにおける我々の決意を基に、我々は、経済的威圧に対する共同の評価、準備、抑止及び対応を強化するため、「経済的威圧に対する調整プラットフォーム」を立ち上げ、連携を強化していくとともに、G7以外のパートナーとの協力を更に促進していく。我々は、デジタル領域における不当な影響力、スパイ行為、違法な知見の漏えい及び妨害行為からグローバルなサプライチェーンを保護するため、悪意ある慣行に対する戦略的対話を深めていく。我々は、我々が開発する最先端技術が、国際の平和及び安全を脅かす軍事力の増強のために利用されることを防止するために連携する共通の責任及び決意を確認する。この文脈で、我々は、ここに、「経済的強靭性及び経済安全保障に関するG7首脳声明」を採択する。
    • 我々は、様々な分野での、特にグローバルなクリーン・エネルギー移行における重要鉱物の重要性の高まり、並びに、脆弱なサプライチェーンに起因する経済及び安全保障上のリスクを管理する必要性を再確認する。我々は、開かれ、公正で、透明性のある、安全で、多様で、持続可能で、追跡可能な、ルール及び市場に基づく重要鉱物の取引を支持する。我々は、重要鉱物に関する市場歪曲的な行為及び独占的な政策に反対し、強靱かつ強固で、責任と透明性のある重要鉱物サプライチェーンの構築の必要性を再確認する。我々は、市場の混乱等の緊急事態に対する備えと強靱性を強化し、IEAによる「重要鉱物の自主的なセキュリティプログラム」への支持を含め、そのような混乱に共同で対処する方法を検討することにコミットする。我々は、鉱物安全保障パートナーシップ(MSP)等の、重要鉱物資源の精製及び加工を含むサプライチェーンの多様化のための取組における共同の進展を歓迎する。我々は、WTOルールに則った、重要鉱物サプライチェーンにおける地元での価値創造を支援する。我々は、開発途上国との協力の下、重要鉱物資源の国内外でのリサイクルを推進する。我々は、上流及び中流の環境にも十分配慮しつつ、堅固な環境、社会、ガバナンス(ESG)基準により、鉱物資源の埋蔵地域や精製及び加工工場の地元住民を含む地域社会への利益の確保、労働者の権利保護、透明性の促進を確認し、クリーン・エネルギー移行を更に促進するため、重要鉱物資源及びそれを用いて製造される製品の持続可能で強靭なサプライチェーンを確立する必要があることを改めて表明する。我々は、G7気候・エネルギー・環境大臣が採択した「重要鉱物セキュリティのための5ポイントプラン」を歓迎し、同計画を実施するよう同大臣に指示する。
  • 貿易
    • 我々は、WTOを中核とするルールに基づく多角的貿易体制の基本原則及び目的として、現在の地政学的環境においてこれまで以上に重要である、自由で公正な貿易に対する我々のコミットメントの下、連帯する。我々は、これらの基本原則を尊重することは、透明で、多様で、安全で、持続可能な、信頼できる、そして全ての者にとって公平で世界の市民のニーズに応える強靱なグローバル・サプライチェーンを構築するために不可欠であることを確認する。我々は、それぞれの政策において、透明性、協調性、WTOルールの尊重を重視することを確認する。この世界貿易体制は、包括的でなければならず、それがもたらす繁栄が伝統的に適切に代表されていない集団を含む全ての人に実感されるべきである。このため、我々は、G7外のパートナー、特に、サプライチェーンや世界貿易体制において不可欠なパートナーである開発途上国パートナーとの協力を継続する。第12回WTO閣僚会議(MC12)の成果を踏まえ、第13回WTO閣僚会議(MC13)を成功させることを見据え、我々は、2024年までに全ての加盟国が利用できる完全かつよく機能する紛争解決制度の実現を目的とした議論の実施や、世界の貿易政策の課題に対応するための審議を強化することを含め、WTO改革に向けて取り組むことの重要性を強調する。さらに、我々は、漁業補助金協定の迅速な発効を確保し、漁業補助金に関する包括的な合意を達成するであろう追加規定についての勧告及び共同声明イニシアティブ(JSI)を含む複数国によるイニシアティブに建設的に関与し、電子的送信に対する関税不賦課のモラトリアムを恒久化するために、全てのWTO加盟国が協力することを求める。我々は、WTOのJSIにおける電子商取引交渉を加速し、2023年末までに野心的な成果を妥結するために取り組むことにコミットする。その成果は、高水準で商業的に意味のあるものであるべきである。自由で公正な貿易の流れは、多角的貿易体制に対する我々のコミットメントに合致しており、グリーンで公正な移行において重要な役割を果たす。我々は、環境物品・サービス及び技術の貿易の円滑化・促進を含め、WTOにおける我々の協力を継続する。我々は、グローバルな競争、貿易及び投資を歪める非市場的政策及び慣行とそれらの問題のある展開に関する我々の共通の懸念を再確認する。我々は、既存の手段のより効果的な使用並びに適切な新しい手段の開発及びより強力な国際ルール及び規範を通じて、公平な競争条件を確保するための我々の取組を更に強化する。我々は、不公正な取引慣行への対応が、パートナーの産業に不必要な障壁を作らず、我々のWTOの約束に整合的であることを確保していく。我々は、輸出管理が、軍事用途にとり重要な技術並びに世界、地域及び国家の安全保障を脅かすその他の活動のための技術の転用がもたらす課題に対処するための基本的な政策手段であることを再確認する。我々は、悪意ある者による重要・新興技術の悪用や研究活動を通じた重要・新興技術の不適切な移転に対処するため、マイクロ・エレクトロニクスやサイバー監視システム等の重要・新興技術の輸出管理に関する協力の重要性を確認する。我々は、貿易担当大臣に対し、10月のG7貿易大臣会合に向けてこれらの議論を深め、経済的威圧を含む貿易関連の課題に対し、適切な場合にはG7内外で協調又は共同行動を模索することを求める。
  • 食料安全保障
    • 我々は、世界が一世代で最も高い飢饉のリスクに直面し、食料安全保障及び栄養の状況が継続的かつ悪化していることを深く懸念する。COVID-19のパンデミック、エネルギー価格の高騰、気候危機やショック、生物多様性の損失、土地の劣化、水の安全、武力紛争など複数の要因が、近年の食料システムとサプライチェーンの世界的な途絶と混乱、世界の食料安全保障の悪化に寄与している。特に、ロシアによるウクライナに対する違法な侵略戦争は、グローバルな食料安全保障の危機を劇的に悪化させた。我々は、達成された前向きな成果を基礎として、G7及び関連する国際機関により既に開始されているイニシアティブを含め、喫緊の問題に対処し、グローバルな食料安全保障を改善するための努力を継続することにコミットしている。我々は、2022年のG7エルマウ・サミットで発表された世界の食料安全保障に対する140億米ドルという共同コミットメントを超えたことを強調し、特にアフリカと中東において、現在の食料安全保障危機の影響を受ける脆弱な国や地域に対して、食料及び栄養関連分野における支援を継続する。また、これに関し、他の国際ドナーに対しても、貢献を強化するよう要請する。
    • アフリカの角の至る所におけるニーズの規模から、我々は、エルマウ・サミットでのコミットメントを共同で満たし、同地域の歴史において最悪の干ばつの一つに対処するための支援を効果的に実施した。また、この点に関し、他の国際ドナーに対しても、貢献を強化するよう要請する。我々はさらに、ロシアに対して、ロシアの穀物や肥料の輸出を妨げる措置を解除するよう求める。ウクライナが世界への主要な食料輸出国として不可欠な役割を担っていることから、我々は、ロシアによる意図的なウクライナの農業部門の混乱が、最も脆弱な国々の食料安全保障に及ぼす現在及び将来の影響を深刻に懸念している。エルマウにおける我々のコミットメントを基礎として、我々は、穀物出荷の原産地の確認に使用できる穀物データベースの作成などを通じ、ロシアによるウクライナ産穀物の違法な収奪を特定し証明するための取組への支援を含め、ウクライナの農業部門の回復への支援を提供し続ける。我々は、EU・ウクライナの連帯レーン及びゼレンスキー大統領の「ウクライナからの穀物」イニシアティブの重要性を再確認する。我々は、ウクライナからの穀物輸出を更に促進し、必要としている人々への安定供給を可能にするために、国連及びトルコが仲介している黒海穀物イニシアティブ(BSGI)の継続かつ拡充した実施が極めて重要であることを再確認する。我々は、ロシアに対し、グローバルな食料供給を脅かすことを止め、BSGIが最大限の能力を発揮し、必要な期間にわたり活動できるようにすることを求める。我々は、食料・農業市場の開放を維持するために、ルールに基づく、開かれた、公正で、透明性のある、予測可能で無差別な貿易を確保し、不当な貿易制限的措置を回避する重要性を改めて表明し、我々のG20パートナーにも同様に行うことを求める。我々は、MC12で採択された、国連世界食糧計画(WFP)による食料購入の輸出禁止又は制限からの免除に関する閣僚宣言を歓迎し、完全な履行を求める。我々は、このような措置は、飢饉や深刻な食料不安のリスクがより高い国々に不均衡な影響を与えることを認識しつつ、農業生産国が課す輸出制限が世界の食料安全保障に与える影響に対処するため、より具体的な行動を求める。
    • 我々は、現在及び将来の食料危機への対応において、恣意的な措置や市場の変動を減らすために、市場の透明性と中立・公平なデータ及び分析に裏付けられた正確な情報の必要性を強調し、G20農業市場情報システム(AMIS)及びこれに関する国際機関による様々な取組の強化にコミットする。我々は、低・中所得国が、質の高い農業、市場及び食料安全保障に関するデータを収集、分析、利用し、データの質を維持する能力を強化することの重要性を強調する。我々はまた、危機対応に関する共通の理解を深めるための食料輸出国と輸入国との間の対話の価値を認識する。
    • 我々は、人間一人ひとりに焦点を当て、各人が手頃な価格で、安全、十分かつ高栄養価の食料への安定的なアクセスを可能にすることが不可欠であるという見解を共有する。
    • 全ての人々が十分な食料への権利を漸進的に実現するために、我々は、短期的な食料危機への対応から食料システムを持続可能なものとするための中長期的な取組といった食料安全保障のあらゆる側面において、女性や子どもを含む最も脆弱な人々を保護、支援する必要性を確認する。また、栄養は、人間中心のアプローチの観点から基本的なものであり、我々は、学校給食プログラムを通じたものを含む健康的な食事へのアクセス改善の重要性を強調する。我々は、地方、地域、世界の食料サプライチェーンの強化、多様化、持続可能性の確保や、構造的ボトルネックの解消を通じた、包摂的で、強靱で持続可能な農業と食料システムの確立が急務であることを認識する。これには、既存の国内農業資源を活用し、貿易を促進することによる現地生産能力の向上、気候変動への適応と気候変動の緩和、生物多様性の保全を伴う持続可能な生産性向上、持続可能な食料消費などが含まれる。我々は、地域や環境、農業の条件に適し、小規模農家を含む全てのステークホルダーに利益をもたらす、幅広いイノベーションと技術を推進する。また、研究開発(R&D)や責任ある投資において、中小企業やスタートアップを含む民間セクターの役割を強調する。手頃な価格、アクセス可能性を維持し、サプライチェーンの混乱の影響を軽減するために生産を多様化し、適切かつ安全な肥料の使用を含む肥料の効率的で責任ある使用と土壌の健全性を促進する必要があると認識する。我々は、WTOルールに沿った形で、摂氏1.5度の温暖化抑制とパリ協定の目標と整合的に現地エネルギー源の活用を支援することを通じ、現地の肥料生産を含む肥料バリューチェーンを支援することの重要性を認識する。などを通じ、これらの取組についてより広範なパートナーシップを強化する。我々は、付属文書「強靱なグローバル食料安全保障に関する広島行動声明」に示された具体的な措置をパートナー国と共に取り組むことをコミットし、国際社会におけるより広範な協力を要請する。
  • 労働
    • 我々は、デジタル・トランスフォーメーション及びグリーン・トランスフォーメーション並びに出生率の低下などに起因し高齢化が進む社会を含む人口動態の変化などの構造変化に対応しつつ、公正な移行を確保するための人への投資の重要性を強調する。
    • 我々は、これらの変革を推進するために、適切な社会的保護と積極的労働市場政策の組み合わせとともに、リスキリングやアップスキリングの取組を通じて個人を支援することにコミットする。我々は、労働者がこれらの変化に適応することを支援するためのリスキリングやアップスキリングは、人への投資であり、コストと見なすべきではないため、職業訓練や生涯を通じた学びを含め、労働力の移行するニーズに対応するために必要かつ十分な投資を提供し続けなければならない。我々は、持続可能な成長と生産性に見合った実質賃金の上昇につながり、ひいては更なる人への投資に寄与する、労働者のウェル・ビーイングと社会経済の活力の好循環の実現に向けた取組にコミットする。
    • 我々は、結社の自由と団体交渉権が、ディーセント・ワークと賃金の上昇を促進する上で重要な役割を果たすことを強調する。我々は、労使やその他のステークホルダーと建設的に関わりながら、全ての人に働きがいのある人間らしい良質な仕事を保証し、特に、女性並びに障害者、高齢者及び若者を含む少数派のグループを誰一人取り残さない、包摂的な労働市場を構築することを決意する。我々はまた、質の高い雇用の創出、社会的保護への普遍的なアクセス、労働市場におけるジェンダー平等の更なる改善に向けて取り組む。我々は、有給・無給のケアワークや家事の不平等な分担など、根本的な差別的社会規範やジェンダー規範に取り組み、育児休暇を含む社会保障の促進と保護、インフラや長期ケアへのアクセスの促進を含む育児や他の分野のケアワークやケア経済への支援を提供することにコミットする。COVID-19のパンデミックは、女性及び女児に不均衡に影響を与え、有給・無給のケアワークが我々の社会と経済の機能において果たしている不可欠な役割を示しつつ、ケアワークの不平等な負担がジェンダー不平等の主要な原因となっていることを浮き彫りにした。特に、我々は、親が仕事並びに家庭及び私生活を両立させ、社会のあらゆる分野に積極的に貢献できるよう、親であることの保護を支援し促進する必要性を再確認する。我々はまた、ケアの需要を満たすために十分な仕事を創出しつつ、無償ケアを認識し、削減し、再分配すること、ケア労働者に公平に報酬を支払い、社会対話と団体交渉においてケア労働者に代表性を与えることの必要性を強調する。我々は、職場における安全及び健康とウェル・ビーイングの促進、職業上の安全及び健康衛生の確保、労働者の包摂的かつ公平なキャリア形成支援など、様々な施策を通じて、ワーク・エンゲージメントと労働者の定着の強化の重要性を認識する。グローバル・バリューチェーンにおける国際労働基準及び人権、特に国際労働機関(ILO)によって採択された基本条約の尊重を確保すること、また、技術協力によるものを含む、SDGsの目標8に沿ったディーセント・ワークの促進にコミットする。
    • 我々は、あらゆる形態の強制労働と児童労働の実効的な廃止へのコミットメントを改めて表明する。我々は、グローバル・サプライチェーンからあらゆる形態の強制労働を撤廃するために、我々の協力と共同の取組を強化するための措置を講じることを再確認する。我々は、法律、規制、インセンティブ及び企業へのガイダンスなどの、義務的及び自主的措置のスマートな組み合わせを通じて、グローバル・サプライチェーンにおいて、ディーセント・ワークを引き続き促進し、権利保有者を引き続き保護し、実行可能であり、かつ既存の政策的アプローチに付加価値を与えるような、国際的な合意に基づく法的拘束力のある措置に関するアイディアと選択肢を模索するため、全ての関連するステークホルダーと緊密に協議し、国連及びILOにおける議論に建設的に取り組むことにコミットする。我々は、労働雇用大臣が策定した「労働者のキャリア形成と構造変化に対応するレジリエンスを促進する行動計画」を支持する。
  • デジタル
    • 我々は、急速な技術革新が社会と経済を強化してきた一方で、新しいデジタル技術の国際的なガバナンスが必ずしも追いついていないことを認識する。技術進化が加速する中、我々は、共通のガバナンスの課題に対処し、世界的な技術ガバナンスにおける潜在的なギャップや分断を特定することの重要性を確認する。人工知能(AI)、メタバースなどの没入型技術、量子情報科学技術、その他の新興技術などの分野において、デジタル経済のガバナンスは、我々が共有する民主的価値に沿って更新し続けられるべきである。
    • これらは、公正性、説明責任、透明性、安全性、オンラインでのハラスメント、ヘイト、虐待からの保護、プライバシー及び人権の尊重、基本的自由、そして個人データの保護を含む。我々は、安全性及びセキュリティが優先されることや、各プラットフォームがそのプラットフォーム上で子どもの性的搾取や虐待の脅威に対処することを確保し、オンラインでの安全とプライバシーに対する子どもの権利を堅持しながら、テクノロジーの責任あるイノベーションと実装を推進するため、テクノロジー企業及び他の関連するステークホルダーと協働する。我々は引き続き、民主主義のために技術を進歩させるための方法について議論し、新興技術とその社会実装について協力し、OECDの技術に関するグローバルフォーラムを含む関連するフォーラムを通じて、インターネット・ガバナンスを含むデジタル課題に関する包括的なマルチステークホルダー間の対話を期待する。我々は、法的拘束力を有する枠組みを尊重しつつ、AIの標準の開発におけるマルチステークホルダーアプローチの更なる推進にコミットし、責任あるAIの推進のため、透明性、開放性、公正なプロセス、公平性、プライバシー及び包括性を推進する手続の重要性を認識する。我々は、信頼できるAIという共通のビジョンと目標を達成するためのアプローチと政策手段が、G7諸国間で異なり得ることを認識しつつも、AIガバナンスに関する国際的な議論とAIガバナンスの枠組み間の相互運用性の重要性を強調する。我々は、マルチステークホルダー型国際機関を通じて、信頼できるAIのためのツール開発を支援し、マルチステークホルダープロセスを通じて、標準化機関における国際技術標準の開発及び採用を促す。我々は、国や分野を超えてますます顕著になっているAIの機会及び課題について直ちに評価する必要性を認識し、OECDなどの国際機関が政策展開の影響に関する分析を検討し、人工知能グローバルパートナーシップ(GPAI)が実践的なプロジェクトを実施することを奨励する。この観点から、我々は、関係閣僚に対し、生成AIに関する議論のために、包摂的な方法で、OECD及びGPAIと協力しつつ、G7の作業部会を通じた、広島AIプロセスを年内に創設するよう指示する。これらの議論は、ガバナンス、著作権を含む知的財産権の保護、透明性の促進、偽情報を含む外国からの情報操作への対応、これらの技術の責任ある活用といったテーマを含み得る。我々は、デジタル・技術大臣会合における「AIガバナンスの相互運用性を促進等するためのアクションプラン」を歓迎する。我々は、全ての産業及び社会部門において革新的な機会を提供し、持続可能性を促進し得るメタバースなどの没入型技術及び仮想空間の潜在性を認識する。我々は、OECDの支援を受けて、相互運用性、ポータビリティ及び標準を含め、この分野での共同のアプローチを検討するよう我々の関係閣僚に指示する。我々は、コンピューティング技術の研究開発におけるあり得べき協力に関心を表明する。我々はまた、関係閣僚に対し、デジタル貿易を更に促進するための方法を検討するよう指示する。
    • 我々は、越境データ流通、情報、アイディア及び知識は、プライバシー、データ保護、知的財産保護、データ及びクラウドインフラに関するものを含む安全性に関連する課題を提起する一方で、より高い生産性、より大きなイノベーション、より良い持続可能な開発を生み出すことを再確認する。我々は、正当な公共の利益の追求にかかる政府の能力を維持しつつ、信頼できる越境データ流通を可能にし、デジタル経済全体を活性化するために、「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」を促進することの重要性を改めて表明する。我々は、この概念を具体化するという我々の意思及び、マルチステークホルダー・エンゲージメントの支援、技術の役割の活用、国内及び自治体の政策と適正手続きの明確化等を通じて、将来の相互運用性を促進するために、信頼性のあるデータの流通を可能にする既存の規制アプローチや手段の間の共通性、補完性及び収斂の要素の特定に向けた取組のためのG7内外の協力に対する我々の支持を強調する。我々は、デジタル・技術大臣会合における「DFFT具体化のためのG7ビジョン及びそのプライオリティに関する附属書」及び「DFFT具体化に向けたパートナーシップのためのアレンジメントの設立」を承認する。我々は関係閣僚に対し、実質的な成果を実現するための作業を継続し、その後、我々に報告するよう指示する。我々は、民主的価値及び法の支配にコミットした国家間の越境データ流通における信頼性を高めるための手段として、「OECDの民間が保有する民間部門が保有するデータへの政府のアクセスに関する宣言」を歓迎する。我々は、インターネットの分断と、人権を侵害するデジタル技術の使用への反対を強調する。この文脈で、我々は、各国の正当な公共政策の利益を達成するために実施される我々の措置とは区別される必要のある、データの自由な流通に対する、透明性を欠き、恣意的に運用される正当化できない障壁に対抗すべきである。
    • 我々はデジタル・エコシステム全体の信頼を高め、権威主義的アプローチの影響に対抗することを目指す。我々は、社会及び経済の基盤としての安全で強靭なデジタルインフラの重要性を認識する。我々は、海底ケーブルの安全なルートの延長などの手段により、ネットワークの強靱性を支援し強化するために、G7や同志国との協力を深化することにコミットする。我々は、ICTSサプライチェーンにおける供給者の多様化の取組を歓迎し、安全、強靭で確立された構成と共に、オープンで相互運用可能なアプローチに向けた市場動向について、技術的に中立な立場で引き続き議論する。G7日本議長国下でオープンな無線アクセスネットワーク(RAN)の初期の導入が進んでいることに鑑み、我々は、オープンな構成及びセキュリティに関連する側面と機会について意見交換を行った。我々は、デジタル分野の包摂性を促進し、都市の課題に対処するため、ジェンダー間のデジタル格差を含むデジタル格差を埋める必要性及びスマートシティ・イニシアティブなどのデータと技術を都市のために使用する取組の重要性を認識する。
    • 我々は、包摂的な開発を促進し、デジタル専門家のより大きな雇用と移動を可能にし、セキュリティ、相互運用性、個人データの保護及びジェンダー平等を含む人権の尊重がグローバルな連結性に組み込まれることを確保しつつ、公平性、普遍性及び廉価性の原則の下、デジタル・アクセスを拡大するために他の国々を支援するという我々のコミットメントを再確認する。
  • テロリズム、暴力的過激主義、国際的な組織犯罪への対応/法の支配の堅持/腐敗対策
    • 我々は、オンライン及びオフライン上におけるあらゆる形態のテロリズム及び暴力的過激主義、並びに薬物取引、人身取引、児童の性的虐待・搾取、腐敗、詐欺、知的財産の窃取、ランサムウェアの脅威、サイバー犯罪及び環境犯罪を含む国際組織犯罪、並びにマネー・ローンダリング及びテロ資金供与に対して、全ての関係者と協力して、統一的、協調的、包摂的で、透明性のある、人権に基づきかつジェンダーに配慮した方法で取り組むという我々の強いコミットメントを改めて表明する。テロ目的のための新技術及び新興技術の悪用に対抗し、犯罪目的のための技術の悪用に対抗する上で、我々は、グローバルな協力及びデジタル対応能力の強化のための最大限の努力を継続する。この観点から、我々の協力及び「クライストチャーチ・コール」等の既存の枠組みを通じた取組を基礎とし、また、厳密に管理された合法的なアクセスの維持を含め、従前のコミットメントを想起しつつ、我々は、テロ及び暴力的過激主義コンテンツのオンライン上での拡散の問題への取組を強化し、セーフティ設計を優先し、特に、プラットフォーム上での児童の性的搾取及び虐待を阻止するよう民間部門に求める。我々は、効率的な国境を越えた協力の基礎を形成する刑事司法当局及びその他関連する当局による幅広い協力において、国際組織犯罪防止条約及び国連腐敗防止条約(UNCAC)並びにサイバー犯罪に関する条約(ブダペスト条約)等の欧州評議会における条約などの関連する国際約束に署名し批准するというパートナー国の取組を支持する。我々はまた、違法合成薬物の公衆衛生上及び安全保障上の重大な脅威を認識し、これに対処するため、他の意欲ある国及び民間部門との協力を強化する。
    • 我々はまた、法律の制定及び実施のための各国への法制度整備支援の提供や、司法機関に関連する能力構築等の、法務・司法分野における二国間の、地域的な及び多国間の連携及び協力を強化する。我々が共有する多くの優先事項を前進させるため、引き続き、腐敗との闘いを強化し、グッドガバナンスを促進し、及び説明責任があり、透明性があり、公平で、コミュニティに根ざした法執行を強化する。腐敗及び関連する不正資金や犯罪収益は、公的資源を流出させ、しばしば組織犯罪を助長し得るとともに、収奪政治(クレプトクラシー)体制により市民を犠牲にして富と権力を集積し、民主的統治を弱体化させることが可能になることを認識する。国際的な腐敗対策の義務と基準を精力的に実施し、関連する地域及び国際機関を通じたものを含む法執行に関する協力を強化し、腐敗した当事者の責任を問うため、より強力で統一されたアプローチを追求する。我々は、民主的制度の健全性と透明性のために実質的支配者の透明性が重要であることを想起し、実質的支配者を登録する機関の設立及び強化においてアフリカのパートナーを支援する重要性を再確認する。
  • 地域情勢
    • 我々は、より安全で豊かな未来を築くために、中核となる外交政策及び安全保障上の課題に関して結束する。また、我々は、差し迫ったグローバルな課題に対処し、国際システムがこれらの課題に効果的に対応できることを確保するために、幅広いパートナーと共に取り組むという決意を再確認する。
    • 我々は、G7のパートナーとして、それぞれの中国との関係を支える以下の要素について結束する。
    • 我々は、中国に率直に関与し、我々の懸念を中国に直接表明することの重要性を認識しつつ、中国と建設的かつ安定的な関係を構築する用意がある。我々は、国益のために行動する。グローバルな課題及び共通の関心分野において、国際社会における中国の役割と経済規模に鑑み、中国と協力する必要がある。
    • 我々は、中国に対し、パリ協定及び昆明・モントリオール生物多様性枠組に沿った気候及び生物多様性の危機への対処並びに天然資源の保全、脆弱な国々の債務持続可能性と資金需要への対処、国際保健並びにマクロ経済の安定などの分野について、国際場裏を含め、我々と関与することを求める。
    • 我々の政策方針は、中国を害することを目的としておらず、中国の経済的進歩及び発展を妨げようともしていない。成長する中国が、国際的なルールに従って振る舞うことは、世界の関心事項である。我々は、デカップリング又は内向き志向にはならない。同時に、我々は、経済的強靱性にはデリスキング及び多様化が必要であることを認識する。我々は、自国の経済の活力に投資するため、個別に又は共同で措置をとる。我々は、重要なサプライチェーンにおける過度な依存を低減する。
    • 中国との持続可能な経済関係を可能にし、国際貿易体制を強化するため、我々は、我々の労働者及び企業のための公平な競争条件を求める。我々は、世界経済を歪める中国の非市場的政策及び慣行がもたらす課題に対処することを追求する。我々は、不当な技術移転やデータ開示などの悪意のある慣行に対抗する。我々は、経済的威圧に対する強靱性を促進する。我々はまた、国家安全保障を脅かすために使用され得る先端技術を、貿易及び投資を不当に制限することなく保護する必要性を認識する。
    • 我々は引き続き、東シナ海及び南シナ海における状況について深刻に懸念している。
    • 我々は、力又は威圧によるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対する。
    • 我々は、国際社会の安全と繁栄に不可欠な台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認する。台湾に関するG7メンバーの基本的な立場(表明された「一つの中国政策」を含む)に変更はない。我々は、両岸問題の平和的解決を促す。
    • 我々は、強制労働が我々にとって大きな懸念事項となっているチベットや新疆ウイグルにおけるものを含め、中国の人権状況について懸念を表明し続ける。我々は、中国に対し、香港における権利、自由及び高度な自治権を規定する英中共同声明及び基本法の下での自らのコミットメントを果たすよう求める。
    • 我々は中国に対し、外交関係に関するウィーン条約及び領事関係に関するウィーン条約に基づく義務に従って行動するよう、また、我々のコミュニティの安全と安心、民主的制度の健全性及び経済的繁栄を損なうことを目的とした、干渉行為を実施しないよう求める。
    • 我々は、中国に対し、ロシアが軍事的侵略を停止し、即時に、完全に、かつ無条件に軍隊をウクライナから撤退させるよう圧力をかけることを求める。我々は、中国に対し、ウクライナとの直接対話を通じることも含め、領土一体性及び国連憲章の原則及び目的に基づく包括的、公正かつ永続的な平和を支持するよう促す。
    • 南シナ海における中国の拡張的な海洋権益に関する主張には法的根拠がなく、我々はこの地域における中国の軍事化の活動に反対する。我々は、UNCLOSの普遍的かつ統一的な性格を強調し、海洋における全ての活動を規律する法的枠組みを規定する上でのUNCLOSの重要な役割を再確認する。我々は、2016年7月12日の仲裁裁判所による仲裁判断が、仲裁手続の当事者を法的に拘束する重要なマイルストーンであり、当事者間の紛争を平和的に解決するための有用な基礎であることを改めて表明する。
    • 我々は、そのいずれもが複数の国連安保理決議(UNSCR)に違反している、北朝鮮による前例のない数の不法な弾道ミサイル発射を強く非難する。我々は、北朝鮮に対し、核実験又は弾道ミサイル技術を使用する発射を含め、不安定化をもたらす又はエスカレートさせるいかなるその他の行動をも自制するよう求める。これは、地域の安定を損ない、国際の平和及び安全に重大な脅威をもたらすものである。このような無謀な行動は、迅速で、結束した、力強い国際的な対応により対処されなければならない。これには、国連安全保障理事会により採られる更なる重大な措置が含まれる。我々は、関連する国連安保理決議に従った、核兵器及び既存の核計画、並びにその他の大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画の、北朝鮮による完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な放棄という目標への揺るぎないコミットメントを改めて表明する。我々は、北朝鮮の人々の福祉よりも不法な大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画を優先するとの北朝鮮の選択を懸念する。
    • 我々は、北朝鮮に対し、日本、米国及び韓国からのものを含め、繰り返し提示されてきた対話の申出に応じるよう求める。我々は、北朝鮮に対し、人権を尊重し、国際人道機関によるアクセスを容易にし、拉致問題を即時に解決するよう求める。
    • 我々は、ミャンマーの治安、人道、人権及び政治状況の悪化を引き続き深く懸念し、ミャンマーの人々との連帯を表明する。我々は、ASEAN議長を務めるインドネシア及びミャンマー担当ASEAN特使を通じたものを含め、ミャンマーの全てのステークホルダーとの継続的な関与を含む5つのコンセンサスの実施のためのASEANの取組を引き続き支持する。我々は、ミャンマー国軍に対し、全ての暴力を即時に停止し、全ての政治犯及び恣意的に拘束された人々を解放し、包摂的で平和的な対話のための環境を作り出し、同国を真に民主的な道に戻すよう引き続き求める。我々は、全ての国に対し、ミャンマーへの武器流入を防止するよう改めて求める。我々はまた、全ての人々、特に最も脆弱な人々に対する、完全かつ安全で、阻害されない人道アクセスを求める。
    • 我々は、アフガニスタンの安定に対する増大する脅威及び悲惨な人道・経済状況に重大な懸念を持って留意する。我々は、タリバーンに対し、テロ対策へのコミットメントを堅持し、アフガニスタンの領土がいかなる国に対する脅威や攻撃、テロ行為の計画や資金調達、テロリストの保護や訓練にも利用されないことを確保するよう求める。我々は、タリバーンによる人権と基本的自由に対する組織的な侵害に対して、最も強い反対を表明し、特に女性及び女児に対する容認できない決定の即時撤回を求める。全てのアフガニスタン人は、公的生活の全ての領域において、完全で、平等で、意義ある参加を享受し、人道支援及び基礎的サービスへのアクセスを持たなければならない。我々は、タリバーンに対し、国連安保理決議第2681号(2023年)及び第8条を含む国連憲章を尊重し、アフガニスタンにおける国連の制限のない活動を確保するよう求める。政治的包摂性と代表性の恒常的な欠如を改善するため、我々はタリバーンに対し、全てのアフガニスタン人が参加できる、信頼可能で、包摂的で、アフガニスタン人主導の国民対話に関与するための重要な措置を採るよう強く求める。我々は、その他の国際パートナーと連携して、タリバーンに統一されたメッセージを伝えることの必要性を認識する。
    • 我々は、イランが決して核兵器を開発してはならないという我々の明確な決意を改めて表明する。我々は、引き続き、信頼に足る民生上の正当性がなく、実際の兵器関連の活動に危険なほど近づいているイランの核計画の継続したエスカレーションを深く懸念している。この問題を解決するためには、外交的解決が引き続き最善の方法である。この文脈において、包括的共同作業計画(JCPOA)は引き続き、有益で参考となるものである。我々は、イランに対し、核不拡散及び保障措置に関する義務を含む法的及び政治的コミットメントを履行するために、迅速かつ具体的な行動をとることを求める。
    • 我々は、フェミニストの民衆抗議活動に対する抑圧や、イラン内外で女性、女児、少数派グループ及びジャーナリストを含む個人を標的とすることを含め、イランによる組織的な人権侵害に対する深い懸念を改めて表明する。我々は、イランの指導者に対し、全ての不当で恣意的な拘束を終わらせるよう求める。
    • 我々は、イランによる、国連安保理決議第2231号及び第2216号を含む国連安保理決議に違反した、国家及び非国家主体並びに代理団体に対する、ミサイル、無人航空機(UAV)及び関連技術の移転を含む、イランによる継続的な不安定化をもたらす活動について重大な懸念を表明する。イランは、ロシアのウクライナに対する侵略戦争への支援を止めなければならない。特に、我々は、イランに対し、ウクライナの重要なインフラを攻撃し、ウクライナの市民を殺害するために使用されている、武装化されたUAVの移転を止めるよう求める。我々は、イランとサウジアラビアの最近の関係正常化に関する合意を含む、二国間関係を改善し、地域の緊張を緩和するイニシアティブを歓迎する。我々は、中東の水路における海上安全保障を確保することの重要性を強調し、イランに対し、全ての船舶による航行の権利及び自由の合法的な行使を妨害しないよう求める。
    • 我々は、イスラエル人及びパレスチナ人に対して、二国家解決の実現に向け、信頼を構築するための措置を採ることを求める。そのために、全ての当事者は、入植活動や暴力の扇動を含む一方的な行為を控えなければならない。我々は、歴史的なエルサレムにおける現状への我々の支持を改めて表明する。我々は、エジプト、イスラエル、ヨルダン、パレスチナ自治政府、及び米国との間の最近の諸会合を歓迎し、彼らのコミットメントが真摯に履行されることを期待する。我々は、パレスチナ人の経済的自立及び国連パレスチナ難民救済事業機関への支援を継続する。
    • 我々は引き続き、シリアにおける、国連安保理決議第2254号と整合的な、包摂的で国連が仲介する政治プロセスに強くコミットしている。我々は、国際社会は政治的解決に向けた真正かつ揺るぎない進展があった後にのみ、正常化及び復興支援を検討すべきであるということを再確認する。我々は、化学兵器禁止機関(OPCW)の活動に対する継続的な支持を表明し、化学兵器の使用並びに適用可能な国際人道法及び国際人権法を含む国際法の違反に責任がある者の責任を追及することにコミットしている。我々は、特に、範囲や規模において代替の無い国連によるクロスボーダー支援を通じ、支援を必要とする全てのシリア人への完全で妨げられない人道アクセスを求める。我々は、シリア北東部に残る、ISISによる拘束者と避難民のための持続的な解決策を含む、ISISの永続的な壊滅に引き続きコミットする。
    • 我々はさらに、中東及び北アフリカの他の地域における安定と繁栄を維持するための我々の支持を表明する。イエメンについて、我々は、全ての当事者に対し、国連の下で、持続的な停戦を確保し、イエメン人主導の包括的で、持続的で、包摂的な政治プロセスに向けて取り組むよう求める。我々は、チュニジア政府が自国民の民主主義への希求に応え、自国の経済状況に対処し、IMFとの合意に達することを促す。また、我々は、アフリカ連合及びアラブ連盟と連携した、国連仲介の下での、リビアの安定と結束を達成するための取組を支持する。我々は、リビアの全てのステークホルダーが、2023年末までに、自由で、公正で、包摂的な大統領選挙及び議会選挙を実施するために、政治プロセスに建設的に取り組むことを求める。
    • 我々は、ロシアの侵略戦争の影響、アフガニスタン情勢による不安定化、食料及びエネルギー安全保障、テロ並びに気候変動の影響を含む様々な地域の課題に対処するために、中央アジア諸国に関与することを再確認する。我々は、「中央回廊」及び関連プロジェクトを含め、地域の繁栄と強靱性を高めるために、貿易・エネルギー関係、持続可能な連結性及び輸送を促進することを決意する。
    • 我々は、アフリカ諸国及びアフリカ連合(AU)を含む地域機関とのパートナーシップを深めている。我々は、国際場裏、特にG20においてより大きな代表性を求めるアフリカの呼びかけへの支持をそれぞれ表明した。我々は、アフリカ全域におけるテロ、暴力的過激主義及び不安定の拡散につながる根本的な状況に国際法に整合的な形で取り組む地域の政府を支持するとの我々の強いコミットメントを改めて表明する。我々は、大陸におけるロシアに関連のあるワグナー・グループ部隊のプレゼンスの高まり並びにその不安定化させる影響及び人権侵害を深刻に懸念する。西アフリカ及びサヘル、アフリカの角並びに大湖地域の状況を念頭に置き、我々は、アフリカ大陸における平和、安定及び繁栄に関するアフリカ主導の取組を支援するため共に取り組む。この観点から、我々は、エチオピア政府とティグライ人民解放戦線との間の敵対行為の停止に関する合意から生じている前向きな進展を歓迎し、両当事者に対し、完全な履行に引き続きコミットするよう求める。我々はまた、ソマリア大統領の改革の優先事項とアル・シャバーブとの闘いに対する国際的な支援を求める。我々は、コンゴ民主共和国の主権、独立、統一性及び領土一体性に対する我々のコミットメントを再確認する。我々は、3月に合意された敵対行為の停止を歓迎し、その完全な実施を求める。我々は、国連によって制裁を受けている3月23日運動(M23)武装集団の前進を非難し、アフリカの指導者たちと共に、M23が管理下に置いている全ての地域からから無条件で撤退するよう求める。我々はまた、西アフリカの沿岸国にテロの脅威及び活動が拡散していることを深刻に懸念し、これらの脅威に対処するための支援を行う用意がある。
    • 我々は、スーダン国軍と即応支援部隊との間の進行中の戦闘を強く非難する。これは、市民の治安及び安全を脅かし、スーダンの民政移管の回復への取組を損なうとともに、地域の安定に影響を与える可能性がある。我々は、当事者に対して、即時かつ前提条件なしに敵対行為を終了させ、文民主導の民主的な政府への復帰を求める。我々は、全ての関係者に対して、暴力を放棄し緊張を低減させ、人道支援関係者を含む全ての人々の安全を確保するための積極的な措置を採るよう求める。紛争当事者は、国際人道法の下での義務を堅持し、人道支援関係者を含む全ての人々の安全を確保しつつ、命を救う支援の提供を阻害又は制限してはならない。我々は、スーダンで活動する人道支援機関の勇気と不屈の精神を称賛する。我々は、自国が重大な人道上の課題に直面しているにもかかわらず、増え続けるスーダン難民を受け入れているスーダンの近隣諸国の寛容さを認識する。我々は、スーダン及び東・北アフリカ全域並びにサヘル地域の難民と帰還民のための対応活動を支援することをコミットする。
    • 我々は、共通の利益及び価値観を堅持するために、中南米の国々との協力を強化することの重要性を強調する。我々は、経済的課題、気候変動、生物多様性の損失、自然災害及びその他のグローバルな課題への対処のために地域のパートナーと共に取り組むことにコミットする。我々は、法の支配及び人権の尊重を促進し、この地域、特にベネズエラ、ハイチ及びニカラグアにおいて高まっている人道上及び安全上のニーズに応えるために、中南米のパートナー及びその他の主体との連携を強化するとの我々のコミットメントを改めて表明する。ハイチにおいて継続中の危機に関し、我々は、安定の回復のためにハイチ人主導の解決策に向けて取り組むことの重要性を強調し、暴力、汚職及び不安定を助長する者には責任を負わせる必要があることを強調する。
    • 我々は、2月27日にブリュッセル及び3月18日にオフリドにおいて行われたEU仲介による対話でそれぞれ合意に至ったコソボとセルビアの間の関係正常化への道筋に関する合意とその実施附属書を歓迎する。コソボとセルビアの市民のために潜在力を最大限に引き出すべく、また西バルカン地域の近隣国との良好な関係を前進させるために、我々は両当事者に対し、適切かつ誠実にそれぞれの義務を履行するよう求める。
    • 我々は、G7のエンゲージメント・グループとの交流及び同グループからのインプットに感謝する。我々はさらに、広島で我々と共に会合したIEA、IMF、OECD、UN、WB、WHO及びWTOの長からの貴重な貢献に感謝する。

~NEW~
内閣府 令和5年第6回経済財政諮問会議
▼資料2 金融政策、物価等に関する集中審議資料(内閣府)
  • デフレ脱却の考え方:持続性・安定性の確認
    • デフレ脱却とは、「物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがないこと」(2006年3月国会提出内閣府資料)。
    • 足下、消費者物価や賃金、予想物価上昇率に上昇傾向が見られ、価格転嫁も徐々に進んでいるが、その背景や内外の不確実性を十分踏まえ、物価や賃金の上昇が持続的・安定的なものとなるか各種関連指標(注)をきめ細かく見ていく必要。 (注)消費者物価やGDPデフレーター、需給ギャップ、単位労働コストなど。
  • デフレに関する4指標の動向
    • 消費者物価は、輸入物価の影響を受けやすい財物価の伸び率が高い一方、賃金等の国内要因の影響を受けやすいサービス物価の伸び率は相対的に低めで推移。GDPデフレーターは、価格転嫁の進展と資源価格等の下落により、2022年10-12月期にプラスへ転じた。
    • 単位労働コストは小幅の上昇が続き、GDPギャップは振れを伴いながらもマイナス幅が縮小傾向。
    • 各指標ともプラス方向の動きが見られるが、デフレ脱却に向けて、デフレに後戻りしないための持続性と安定性を確認していく必要。
  • 物価を取り巻く環境
    • 今年度の賃上げ率は30年ぶりの高い水準となり、近年0%台半ばで推移していたベースアップ率も2%を超える見込み。価格転嫁を通じたマークアップ率の確保や労働市場の円滑化等を通じた構造的賃上げの実現により、賃金上昇を伴う物価の持続的・安定的な上昇を目指していく。
    • 企業の設備投資意欲も高く、昨年度の投資計画(実績見込み)は2桁の伸び。国内投資の拡大やイノベーション促進に取り組み、生産性向上を伴う潜在成長率の引上げ、中長期的な成長期待(期待成長率)の上昇を目指す。
    • こうした取組を通じ、デフレに後戻りしないとの確信を広く醸成しつつ、成長と分配の好循環を実現する。
▼資料3 参考資料(マクロ経済運営の在り方)(柳川議員提出資料)
  • 賃金と物価、成長と分配の好循環について
    • マクロ経済運営の目指すべき方向性として、以下の点が提示された。
      • マクロ経済運営について、政府と日本銀行は緊密に連携し、賃金上昇を伴う形で、2%の物価安定目標と民需主導の経済成長が持続的かつ安定的に実現できるよう取り組む。
      • 輸入物価上昇による外生的な物価上昇から、賃金上昇やコストの適切な価格転嫁を通じたマークアップの確保を伴う賃金と物価の安定的な好循環を目指す。このため、政府は中小企業の価格転嫁対策、最低賃金の引上げパスの提示、適切な労働市場改革等を行う。
      • あわせて、政府は、成長力の持続的な向上と家計所得の幅広い増加に裏打ちされた消費や国内需要の持続的拡大が実現する「成長と分配の好循環」をマクロ経済運営の目標とし、賃金・物価の好循環に持続性を確保する。
      • その実現に向け、生産性向上とイノベーション促進に向けた民間投資を引き出すとともに、人への投資、GXなど社会課題の解決にも必要ながら過少投資となりやすい分野への官民連携した計画的な重点投資を推進する。
      • こうした取組を通じ、人々の物価観(デフレ予想から緩やかな物価上昇予想)と成長期待(潜在成長率の向上)をともに高め、デフレに後戻りしないとの確信を広く醸成する
  • 財政政策と金融政策のポリシーミックスについて
    • 具体的なポリシーミックスについては、以下の点が提示された。
      1. 財政政策
        • 財政政策は主として潜在成長率の引上げと社会課題の解決に重点を置いた政策対応をする。
        • この観点から、民需を引き出し、社会課題を解決する中長期の計画的な投資を推進するとともに、それを担保するワイズスペンティングを徹底する。
        • 緊急時の財政出動においては、その支出を必要以上に長期化・恒常化させない仕組みを予め取り入れる。特にコロナ禍で拡大した財政支出を早期正常化して平時の歳出規模に戻していく。
        • 内外経済を巡る不確実性が高い中、適切なポリシーミックスを実現するためにも、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進し、財政に関する信認を確保する
      2. 金融政策
        • 内外経済や金融市場を巡る不確実性が高い中にあっては、経済・物価・金融情勢に応じた機動的な対応が重要。
        • 日本銀行には、金融緩和による資産価格や生産性への影響にも目配りしつつ、賃金上昇を伴う物価安定目標の達成を目指すことを期待する。
        • そのうえで、賃金上昇を伴う形でインフレ率が持続的・安定的に2%程度に定着する下で、適切な金融政策の運営を期待する。
      3. ポリシーミックス
        • こうした取組を通じ、政府と日本銀行は緊密に連携し、目標を共有してその実現を目指す
      4. 賃金と物価、成長と分配の好循環
        • 賃金・物価の好循環の二巡目以降に向け、物価面ではインフレ予想の定着、年金給付額・規制価格の物価スライド推進、賃金面では中小企業の価格転嫁、最低賃金の引上げ・先行きの引上げパス提示が課題。
        • 賃金・物価の好循環実現により、企業の価格支配力、高付加価値商品開発、イノベーション、高賃金に向けたスキルアップと労働生産性上昇が期待。まずは賃金・物価の好循環を2025年までに定着できるよう政策資源を集中。その定着を確認後、成長と分配の好循環に向けたミクロ施策への取組を本格化
      5. ポリシーミックス
        • 経済成長率=潜在成長率+短期・中期ショックによる景気変動。財政政策は主に潜在成長率を押し上げる役割、金融政策は景気変動に対応する手段。
        • ポストコロナのマクロ政策運営として、短期的には財政支出の正常化、中長期的には、物価上昇圧力が持続的であれば、金融政策の正常化。正常化についてはコロナ危機の影響を大きく受けた人々に配慮しつつ進める。
        • 当面は超低金利政策を継続。政府は競争力と成長力を強化、ワイズスペンディングで社会問題を解決。
        • 景気に配慮した財政健全化が重要。不況時に緊縮財政を行うリスクを避けるべき。
        • 世界的低金利、デフレ、金余りという環境が変化。この変化を意識したマクロ経済運営をすべき。
      6. 金融政策
        • 賃金・物価の好循環に向け、インフレ予想を定着させることが大事な局面。物価目標の柔軟化は不適切であり、物価目標政策を堅持すべき。
        • 量的・質的緩和の副作用として、不動産等の資産価格が高くなり、新規企業の参入や若い世帯の住宅取得が難しくなっている。長い目で見ると、生産性や総生産の成長を停滞させることになってしまう。
        • 世界全体で2%以上のインフレが数年続くと予想される。日本もインフレ率が2%程度に定着すれば、量的・質的緩和は解除するのが望ましい。
        • 物価と賃金の上昇が続けば、異次元の金融緩和政策の見直しも視野に入れるべき

~NEW~
総務省 情報通信ネットワークにおけるサイバーセキュリティ対策分科会(第5回)
▼資料5-2これまでの論点整理等に対する主なご意見
  • 脆弱性等のあるIoT機器の調査
    • NOTICEの取組については着実に成果を挙げていることを踏まえ、今後も継続していくべき。【後藤主査】
    • IoT機器を狙う攻撃の脅威が多様化しており、NOTICEの効果を維持するためにも、ID・パスワードの設定不備以外の脆弱性の対応を検討すべき。【吉岡構成員】
    • 脆弱性を狙う攻撃パターンが増加しているため、適切にフォローアップ及び調査対象を拡大することで、日本のネットワークの状況を把握することは重要。感染機器だけでなく脆弱性のある機器を潜在的なリスクとして認識し観測する必要がある。【NICT笠間氏】
  • 利用者への注意喚起
    • 利用者に何らかのアクションを求める情報伝達をする場合には、実際のリアクションに繋げるための伝達の仕方や、普段セキュリティの情報に触れない層にどう情報をリーチさせるか戦略的な検討が必要。【藤本構成員】
    • 利用者による対処に頼るのは難しいため、利用者が意識しなくても機器の安全性を確保していく取組が重要。【河村構成員】
    • 端末の接続拒否については慎重に行うべきではあるが、NOTICEの取組を加速させる観点でも接続拒否制度の利用者への啓発や、接続拒否のための要件及び手続の明確化による当該制度の活用を検討すべき。【吉岡構成員】
  • メーカーの対応
    • 利用者、ISP及びメーカー等のステークホルダー各々がどれだけの事を実施するのか、関係者間で協議しながら全体的にバランスの取れた施策とすべき。【後藤主査、齋藤構成員】
  • NOTICEの運営
    • NOTICEについては、一つの手段としてその効果を確認しながら、多数のステークホルダーが相互に協力しバランスの取れた対策とすることが重要。【後藤主査】
    • IoT機器の調査対象の拡大にあたっては、人員や体制を柔軟に確保出来るような対応をお願いしたい。【NICT笠間氏】
    • これまでのNOTICEの調査により、国内機器の機種・バージョン情報のデータも蓄積されているため、データの活用により国内の状況の可視化や関係団体との協調に繋げたい。【NICT笠間氏】
    • 本分科会で整理した取組全体を通じて、目指すべき共通の到達点・目標を設定すべき。【後藤主査、田中構成員、斎藤構成員】
  • C2サーバの検知・検知情報の共有・利活用
    • MiraiやEmotetのC2サーバの検知も出来ており、今後の成果が期待される。【小山構成員】
    • 検知したC2サーバ情報の共有が遅れると、C2サーバのIPアドレスが既に移動していて有効活用ができない可能性もあるため、
  • 検知結果の素早い共有方法や対策の検討が必要。【後藤主査、辻構成員】
    • 各社が自社網におけるC2サーバの状況を確認出来ることが、日本全体のネットワークの状況を見る上で必要。【齋藤構成員】
    • 検知結果のISP間の相関を見ると、ISPごとに検知しているC2サーバの系統が異なるため、検知ポイントを増やすことが出来れば全体像が見えてくるだろう。【辻構成員】
    • 各社の分析手法等を共有する上では、精度向上やノウハウ蓄積のため、各社ある程度同じ対象を調査した上で、対策を行うべきIoT機器やボットネットを確定する必要がある。【小山構成員】
    • 検知されたC2サーバへの対応については、利用者への注意喚起等をせずになるべく大元でどのような効果的な対策を取れるかという観点から検討できると良い。【河村構成員】
  • IoTボットネットの可視化
    • C2サーバの居場所は頻繁に変わる一方で、感染端末の場所は変わらないため、感染端末は次々異なるC2サーバから攻撃指令を受けている状況。そのためIoTボットネットの全体像の可視化を進めることは大変重要であり、統合分析対策センター(仮称)の取組に期待したい。IoTボットネットの変遷を可視化し、対策の効果を確認できると良い。【小山構成員】
    • 各社が自社網におけるC2サーバの状況を確認出来ることが、日本全体のネットワークの状況を見る上で必要。【齋藤構成員】(再掲)
    • 検知結果のISP間の相関を見ると、ISPごとに検知しているC2サーバの系統が異なるため、検知ポイントを増やすことが出来れば全体像が見えてくるだろう。【辻構成員】(再掲)
    • IoTボットネットの対策による効果を上げていくには、ボットネットの追跡性を高める意識をしながらC2サーバの検知精度の向上に取り組むことが必要。【小山構成員】
    • 既に運用されているIoT機器への対策も重要であるが、これから出てくる新たな製品についてもラベリングや適合性評価等の観点から対策を考えていく必要があるのではないか。【後藤座長、徳田構成員、中尾構成員】
    • NOTICE運営に必要な人員の確保についてはISPにとっても負担となっているため、フロー全体を見直す良い機会と考えている。【徳田構成員】
    • 「サイバー攻撃に効果的に対処していくためには、脆弱性のあるIoT機器、ボットネット、C2サーバ等全体を俯瞰した対応が必要」という指摘は大変重要であるが、その対応策として統合分析対策センター(仮称)の立ち上げのみならず、幅広い対策が必要ではないか。【林構成員、若江構成員】

~NEW~
消費者庁 訪問販売業者6事業者及び業務提供誘引販売業者8事業者に対する行政処分について
  • 訪問販売業者【株式会社ic、株式会社クライアンフ、株式会社ベンチャープランニング、株式会社コネクション、株式会社JYC及びHearTs株式会社】に対する行政処分について
    • 消費者庁は、「住まいるサポート24」及び「プライムサポート」(注1)と称する生活のサポートに係る役務の提供を連携共同して行う訪問販売業者である株式会社ic(旧商号:株式会社アイコム。以下「エリアアイシー」といいます。)、株式会社クライアンフ(以下「クライアンフ」といいます。)、株式会社ベンチャープランニング(以下「ベンチャープランニング」といいます。)、株式会社コネクション(以下「コネクション」といいます。)、株式会社JYC(以下「JYC」といいます。)及びHearTs株式会社(以下「HearTs」といいます。)(上記いずれの事業者の本店所在地:北海道札幌市)(注2)に対し、令和5年5月17日、特定商取引法第8条第1項の規定に基づき、令和5年5月18日から令和5年8月17日までの3か月間、訪問販売に関する業務の一部(勧誘、申込受付及び契約締結)を停止するよう命じました。
      • (注1)別会社が提供する同名の役務の提供と間違えないよう提供会社名なども確認してください。
      • (注2)各処分対象事業者については、同名の別会社と間違えないよう会社所在地なども確認してください。
    • あわせて、消費者庁は、エリアアイシー、クライアンフ、ベンチャープランニング、コネクション、JYC及びHearTsに対し、特定商取引法第7条第1項の規定に基づき、再発防止策を講ずるとともに、コンプライアンス体制を構築することなどを指示しました。・また、消費者庁は、エリアアイシーの代表取締役延足昂大(のぶあし たかひろ)、クライアンフの代表取締役本多翔弥(ほんだ しょうや)、ベンチャープランニングの代表取締役鎌田達也(かまだ たつや)及びコネクションの代表取締役白幡航哉(しらはた こうや)に対し、特定商取引法第8条の2第1項の規定に基づき、令和5年5月18日から令和5年8月17日までの3か月間、前記業務停止命令により業務の停止を命ずる範囲の業務を新たに開始すること(当該業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることを含みます。)の禁止を命じました。
  • 業務提供誘引販売業者【株式会社ic、株式会社プロンティア、株式会社JYC、株式会社クライアンフ、株式会社ベンチャープランニング、株式会社コネクション、株式会社ブリッジ及びHearTs株式会社】に対する行政処分について
    • 消費者庁は、モバイルWi-Fi及びタブレット端末又はタブレット型パソコン(以下モバイルWi-Fi及びタブレット端末又はタブレット型パソコンを「本件商品」といいます。)の販売及びそのあっせんをし、当該モバイルWi-Fiによりインターネット接続を行う「モバプロ」と称する電気通信役務(以下「本件役務」といいます。)(注1)の提供及びそのあっせん(以下本件商品の販売及びそのあっせん並びに本件役務の提供及びそのあっせんを「本件商品の販売等」といいます。)を連携共同して行う業務提供誘引販売業者である株式会社ic(旧商号株式会社アイコム。以下「エリアアイシー」といいます。)、株式会社プロンティア(以下「プロンティア」といいます。)、株式会社JYC(以下「JYC」といいます。)、株式会社クライアンフ(以下「クライアンフ」といいます。)、株式会社ベンチャープランニング(以下「ベンチャープランニング」といいます。)、株式会社コネクション(以下「コネクション」といいます。)、株式会社ブリッジ(以下「ブリッジ」といいます。)及びHearTs株式会社(以下「HearTs」といいます。)(プロンティアを除くいずれの事業者の本店所在地:北海道札幌市。プロンティアの本店所在地:東京都板橋区)(注2)に対し、令和5年5月17日、特定商取引法第57条第1項の規定に基づき、令和5年5月18日から令和5年8月17日までの3か月間、業務提供誘引販売に関する取引の一部(勧誘、申込受付及び契約締結)を停止するよう命じました。
      • (注1)本件役務については、同名の別の役務と間違えないよう役務の提供者、内容等も確認してください。
      • (注2)各処分対象事業者については、同名の別会社と間違えないよう会社所在地なども確認してください。
    • あわせて、消費者庁は、エリアアイシー、プロンティア、JYC、クライアンフ、ベンチャープランニング、コネクション、ブリッジ及びHearTsに対し、特定商取引法第56条第1項の規定に基づき、再発防止策を講ずるとともに、コンプライアンス体制を構築することなどを指示しました。
    • また、消費者庁は、エリアアイシーの代表取締役延足昂大(のぶあし たかひろ)、プロンティアの代表取締役中村祐太(なかむら ゆうた)、クライアンフの代表取締役本多翔弥(ほんだ しょうや)、ベンチャープランニングの代表取締役鎌田達也(かまだ たつや)及びコネクションの代表取締役白幡航哉(しらはた こうや)に対し、特定商取引法第57条の2第1項の規定に基づき、令和5年5月18日から令和5年8月17日までの3か月間、前記取引停止命令により取引の停止を命ずる範囲の業務を新たに開始すること(当該業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることを含みます。)の禁止を命じました。

~NEW~
消費者庁 大木製薬株式会社に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について
  • 課徴金対象行為
    1. 表示媒体
      • 商品パッケージ
      • 「ウイルオフ®」と称する自社ウェブサイト(以下「自社ウェブサイト」という。)
      • 地上波放送を通じて放送したテレビコマーシャル(以下「テレビコマーシャル」という。)
      • 「YouTube」と称する動画共有サービスにおける動画広告(以下「動画広告」という。)
    2. 課徴金対象行為をした期間
      • 令和元年12月10日から令和4年1月19日までの間
    3. 表示内容
      • 例えば、本件商品1について、令和2年9月1日から令和3年10月31日までの間、商品パッケージにおいて、「空間除菌」、本件商品1を首から下げている人物の画像、「二酸化塩素のパワーでウイルス除去・除菌※1 ウイルオフ ストラップタイプ」等と表示するなど、別表1「対象商品」欄記載の商品について、同表「表示期間」欄記載の期間に、同表「表示媒体」欄記載の表示媒体において、同表「表示内容」欄記載のとおり表示することにより、あたかも、同表「使用方法」欄記載のとおり本件3商品を使用すれば、本件3商品から発生する二酸化塩素の作用により、同表「場所」欄記載の場所において、身の回りの空間に浮遊するウイルスや菌が除去又は除菌される効果等の同表「効果」欄記載のとおりの効果が得られるかのように示す表示をしていた。
    4. 実際
      • 前記の表示について、消費者庁は、それぞれ、景品表示法第8条第3項の規定に基づき、大木製薬に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社から資料が提出された。しかし、当該資料はいずれも、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないものであった。
      • なお、前記ウの表示について、例えば、本件商品1について、令和2年9月1日から令和3年10月31日までの間、商品パッケージにおいて、「●屋内専用です。屋外や空気の流れが激しい場所では、効果が期待できません。」、「●利用環境により、成分の広がり、使用期間は異なります。また、全てのウイルス・菌に対して効果があるわけではありません。」等と表示するなど、別表2「対象商品」欄記載の商品について、同表「表示期間」欄記載の期間に、同表「表示媒体」欄記載の表示媒体において、同表「表示内容」欄記載のとおり表示していたが、当該表示は、一般消費者が前記ウの表示から受ける本件3商品の効果に関する認識を打ち消すものではない。
  • 景品表示法第8条第1項ただし書に該当しない理由
    • 大木製薬は、本件3商品について、(3)の表示の裏付けとなる根拠資料を十分に確認することなく、課徴金対象行為をしていた。
  • 命令の概要(課徴金の額)
    • 大木製薬は、令和5年12月18日までに、「課徴金額」合計4655万円を支払わなければならない。

~NEW~
消費者庁 電力市場における競争環境整備に向けた諸課題について(意見)を掲載しました。
▼電力市場における競争環境整備に向けた諸課題について(意見)(令和5年5月15日)
  1. 現状・課題
    • 2016年の電力小売全面自由化により、消費者は電力会社や料金メニューを自由に選択できることとなった。一方で、消費者保護のため、小売電気事業者間の適正な競争関係が確保されるまでの間は、経過措置として、大手電力の料金規制が維持されることとされ、現在も全国全ての地域で経過措置が解除されていない。
    • 2013年からの電力システム改革は、電力の安定供給を確保することのほか、燃料コストの増加等による電気料金の上昇圧力の中にあっても、競争の促進やメリットオーダーの徹底などにより電気料金を最大限抑制すること、また、電力会社、料金メニュー、電源等を選びたいという需要家の様々なニーズに多様な選択肢で応えることができる制度に転換することなどを目的とするものであった。競争を促進することにより価格競争を促進し、消費者の自主的かつ合理的な選択の機会の確保を図るものであったが、未だ十分な競争環境が整わない中で、ウクライナ情勢や円安による資源価格高騰等を背景に、電気料金が上昇する状況となっている。
    • 現下の外的要因による物価上昇の局面下においては、経過措置料金規制が維持されていることは消費者保護に資する面もあるが、大手電力7社から規制料金の値上げ申請がなされ、消費者は生活に不可欠なインフラである電気料金の動向を注視しているところである。
    • こうした状況下で、2022年12月以降、大手電力による不正事案(カルテル、情報漏洩・不正閲覧、インサイダー情報の非公表及びインサイダー取引、その他事実等)が立て続けに発覚した。電力システム改革の趣旨に反する不正事案の相次ぐ発覚は、大手電力や電力市場に対する消費者の信頼を著しく損なうものである。2022年10月5日に電力市場における競争環境整備に向けた諸課題について消費者庁から諮問を受けて以降、これらの事案が発覚したこともあり、本委員会においては、これらの事案にかかる関係省庁による調査結果が一通り公表されるのを待ち、本年4月18日に関係省庁から事案の概要についてヒアリングを行った。事案の概要は別添のとおり。
    • これらの不正事案は、小売電気事業者間の公平・公正な競争を阻害する、電力システム改革の趣旨に反するものである。一連の不正事案が発覚した状況を踏まえ、今般、消費者の信頼回復、また、自主的かつ合理的な選択の機会の確保を図るために、電力システムの基盤となる競争環境の整備に向けた諸課題について、本委員会で消費者の利益擁護の視点から調査審議を行ったので、以下のとおり意見を述べる。
  2. 必要と考えられる対応
    • 消費者の自主的かつ合理的な選択の機会の確保を図るため、また、一連の不正事案により損なわれた消費者の信頼を回復するため、大手電力や経済産業省においては、小売電気市場における公平・公正な競争環境の確保に向けた思い切った取組を早期にかつ総合的に検討・実施することが不可欠である。あわせて、2016年の電力小売全面自由化や電気料金に対する消費者の理解が十分でないことも踏まえ、電力会社や経済産業省においては、電気料金のメニューや電気料金の構成について消費者に対する丁寧で分かりやすい情報提供を継続して行っていくことも不可欠である。加えて、電力システム改革の経緯や一連の不正事案、ガバナンスについても透明性を持って情報開示していくことも求められる。消費者委員会としては、
      1. 電力の各制度は、消費者にとっては複雑で分かりにくいものとなっている。電力会社や経済産業省は、海外の規制当局が行った具体的な施策などを参考に、消費者への分かりやすく丁寧な情報提供に最大限の努力をすべきである。
      2. 送配電会社の所有権分離や、発販分離などについては、今後もそれぞれのメリット、デメリットも含めて総合的に検討すべきである。コミットメントの検証結果や電気の販売・調達の実態調査の分析等も踏まえると、競争環境整備に向けた現在の電力会社の取組では不十分と判断せざるを得ず、経済産業省及び事業者は改善に向けて可及的速やかに更に踏み込んだ検討を行うべきである。
      3. 今回の一連の不正事案は消費者を含むすべてのステークホルダーに対する信頼関係を失墜させた。公平・公正な競争環境の整備を進める中、長期間にわたる独占禁止法違反に対する公正取引委員会の排除命令が出たことは、構造的な問題であり、各電力会社のガバナンスに実効性が認められないと言わざるを得ない。電力システム改革の大前提である各社のガバナンス体制ならびにその運用を抜本的に見直し強化することが急務である。各社において原因究明や再発防止策が練られているところであるが、内部統制の体制・運用の強化はもとより、経営を監督する取締役会の機能強化および審議状況の積極的開示など、信頼回復に向けた最大限の取組みをすべきである。また、電力・ガス取引監視等委員会の監視機能の強化を図るとともに、今回の対応が一過性のものとならないよう、経済産業省は電気事業法やガイドラインについて行為規制や罰則強化を含め更なる対応を検討すべきである。
        との結論に達した。
    • 消費者への分かりやすい情報提供
      • 電気料金の基本的な構成や電源や時間帯による価格の変化等、電気料金がどのように決まっているかを十分に理解できていない消費者も多いと考えられる。電力会社や料金メニュー等について消費者が十分に理解し、エシカル消費の観点からも、容易に比較し選ぶことができるよう、経済産業省及び各電力会社は、こうした情報について分かりやすく、かつ、消費者に届くよう、継続的に情報提供していくことが必要である。また、消費者庁も、経済産業省と連携して、消費者に対する分かりやすい情報発信を積極的に行うことが必要である。
      • 特に、料金が事後的に変動する要因や変動幅等の情報など、価格が上昇するリスクに関する情報は丁寧に分かりやすく提供されることが求められる。また、消費者にとって理解しやすいよう、例えば、ポイントを絞った情報提供や図表・グラフ・概念図等を用いた情報提供などの工夫を行うことも有用である。
      • 合わせて、消費者の理解度を把握し、啓発の効果を経年的にモニタリングすることやKPIの設定も行うべきである。
      • 消費者が自らのライフスタイル等に応じて最適な選択ができるようにするためには(例えば、単に価格のみならず、再生可能エネルギーのメニューを選ぶ、デマンドレスポンスのメニューを選ぶ等)、公平・公正な競争環境を確保して健全な新電力を育成すること(再生可能エネルギーの導入拡大)や、電気使用の合理化を図るためのデマンドレスポンス市場の育成を行うことなども必要であり、これらに関する情報提供や消費者啓発について、経済産業省は消費者庁とも連携し積極的に進めていく必要がある。
    • 小売の電気市場における公平・公正な競争環境の確保に向けた取組
      • 公平・公正な競争環境の整備のための手法として、社内外・グループ内外の取引条件を合理的に判断し、内外無差別に電力卸売りを行うことなどを内容とする大手電力の自主的コミットメントの取組が2021年度から運用されており、これまでのところ一定の進捗や先進的な取組事例も見られる。しかしながら、明確な時間軸が設定されていないために進捗にバラツキがあり、相次ぐ不正事案が発覚していることも踏まえ、全体として取組を加速すべきである。
      • 電力・ガス取引監視等委員会においては、各社のコミットメントに基づく取組についても、その実態及び実効性をよく確認するべきである。
      • 現在、電力・ガス取引監視等委員会において、6月をめどに確認すべき項目を定めて2023年度の相対取引契約の内外無差別性を評価することを検討していることは評価できる。
      • この点、外部から無差別性の実態や実効性を確認することは困難を伴う面もあるため、実際に評価を行う際には、(取組の先進例として脚注2に記載したケースも含め)各社の取組や成果について丁寧かつ詳細に実態を精査することによって、内外無差別が確保されているかを検証・評価する必要がある。
      • 送配電会社の所有権分離や、発販分離などについては、今後もそれぞれのメリット、デメリットも含めて総合的に検討すべきである。コミットメントの検証結果や電気の販売・調達の実態調査の分析等も踏まえると、競争環境整備に向けた現在の電力会社の取組では不十分と判断せざるを得ず(脚注2参照)、経済産業省及び事業者は改善に向けて可及的速やかに更に踏み込んだ検討を行うべきである。
      • この点については、発販分離によって発電部門と小売部門がそれぞれ独立して最大限利潤を追求できるようになることは大手電力にとってもマイナスにならないのではないかとの意見もあった。
      • なお、発販分離が実行されれば公正な競争環境が必ず確保できるということではなく、その場合でも、市場のモニタリング等により、内外無差別の確保がなされているかを絶えず確認していくことが必要となる
      • スポット市場の拡大に向けて、大手電力がグループ内で取引している電力を含めて一定量を市場に放出するグロスビディングの今後の在り方について検討がなされている。こうした状況の中で、大手電力の発電電力量の一定割合をスポット市場に玉出しすることを義務付けることなども含め、さらに踏み込んだ検討を行うべきである。
      • 電力による電源アクセス環境の整備は、内外無差別の確保に寄与し、小売電気事業者間の競争促進が図られると考えられる。資源エネルギー庁において、中長期的な電源の安定確保という基本的な方向性の下、価格安定性と競争促進に寄与する環境整備の検討を進めるべく議論が行われており、発電事業者側及び小売電気事業者側双方の視点から検討を行うべく、電気の販売・調達の実態や取引における課題・ニーズ等を把握する目的でのアンケート調査・分析作業に取り組んでいることは、評価できる。
    • 一連の不正事案を踏まえた抜本的取組の検討の必要性
      • 一連の不正事案については、電力システム改革の本来の目的であった公平・公正な競争環境が全く整備されていないことを明らかにしたものであり、電気料金の高騰により消費者が大きな負担を強いられている中、消費者の大手電力に対する不信感を高めるものとなった。これに対して、現在、再発防止策として、不正閲覧については、内部統制の抜本的強化や、スイッチングシステムの改善などの制度的な対応などが検討されているほか、カルテルについては、主にコンプライアンスの徹底や研修の実施、法令遵守状況の点検・監査などが掲げられているところである。
      • 再発防止策として掲げられているこれらの取組は、電力市場自由化の中で、企業としてこれまでに当然行われてしかるべき取組・対応である。消費者の信頼を回復するためには、今後二度とこういった不正事案が発生することがないよう、これまで不正事案の発生を許容してきた体制・仕組みを抜本的に見直すことを検討すべきである。また、経営を監督する取締役会の機能強化および審議状況の積極的開示など、信頼回復に向けた最大限の取組をすべきである。
      • 電力の安定供給と公平・公正な競争環境の確保を両立することはもとより不可欠であるが、これまで、安定供給を大義名分として、体制・仕組みを抜本的に見直すことなく、公平・公正な競争を阻害する結果となっていたのではないかとも考えられる。顧客情報の不正閲覧にしても、営業利用は多くの大手電力で確認されていないとして、あくまでも顧客への丁寧・迅速な対応のために行われたとの説明がなされているが、そもそもそうであったとしても、新電力とイコールフッティングになっておらず公平・公正な競争が阻害されているとも評価できるところである。
      • 2013年の電力システム改革の議論の際、送配電部門の中立性の一層の確保を図るに当たり、一般電気事業者の送配電部門を別会社とする方式は法的分離の前提で改革を進めるとされ、所有権分離については改革の効果を見極めて、それが不十分な場合の将来的な検討課題とされた。
      • 法的分離を前提に情報遮断を徹底することが各社から約束されたにもかかわらず、不正行為が繰り返し行われていたことを真剣に受け止め、電力システム改革により実現したいと考えていた理想像と、現実には大きなギャップが生じている。こうした状況に対して、どういった対応が取られるべきか、便宜を図る動機をなくすためにも、所有権分離等について、消費者のメリット・デメリットを総合的に勘案しつつ、いずれの選択肢も排除することなく、送配電部門の独立性・中立性を徹底するための抜本的取組の検討を早期に行う必要がある。
      • 加えて、電力・ガス取引監視等委員会は、これらの不正を見抜けず、電力市場を監視する立場としての役割を果たせていなかったと言わざるを得ない。
      • この役割を果たすためには、高い専門性を有する職員を配置し、十分なリソースと中立性、独立性を確保し、機能強化を図ることが求められるとともに、監視機能の透明性を図るべきである。状況によっては法令上の対応も検討を進めるべきである。
  3. その他留意事項
    • 昨今の卸電力市場のスポット価格上昇等を背景に、リスクマネジメント不足等により撤退した新電力も存在する。そもそもガバナンス上の問題を抱えている新電力については撤退も止むを得ないとの考え方もあるが、そうした小売電気事業者と契約をしていた消費者にとっては、消費者トラブルとなるケースもあるとの指摘がある。これらを踏まえ、現在、経済産業省において検討している小売電気事業者に対する規律の強化について、大手電力系の小売電気事業者も含めた小売電気事業者全体のガバナンス不足、消費者志向経営の欠如の観点から検討し、消費者保護が図られるよう、適切な行政指導を行うことも含め、実効性を担保する方策を具体的に検討すべきである。

~NEW~
国民生活センター 国民生活 2023年5月号【No.129】(2023年5月15日発行)
▼第2回 なぜフェアトレードなのか
  • 途上国の人びとが置かれた状況
    • 前回、途上国の生産者や労働者の人たちが作った物が買い叩かれていると述べました。この「買い叩き」についてまず説明しましょう。生産者の人たちは、作った物を市場まで持って行ければ買い手を選んで多少は高く売ることができます。でも、零細な貧しい生産者はトラックはおろか馬やロバさえ持てず、遠くに住んでいれば背負って行くこともできません。結局、売る先は村まで買いにくる「仲買人」だけとなります。商売上手な仲買人は生産者の足元を見て値切ってきます。カカオ(チョコレートの原料)、コーヒー、果物などの生ものは売り渋ると腐ってしまうので、生産者は泣く泣く安値で売らざるを得ません。これが「買い叩き」というものです。先進国の企業が安値を要求すると仲買人も一段と買い値を下げるため、買い叩きに拍車がかかります。
    • 生産者は次の収穫期の前に持ち金が尽きると、借金をしてしのがねばなりません。でも貧しい生産者に誰が貸してくれるでしょう。唯一貸してくれるのはあの仲買人です。彼らにとっては高利で貸すチャンスでもあります。一度高利で借りると待っているのは「借金地獄」です。ふくれあがる借金を返せない生産者は仲買人に頭が上がらず、ますます言い値で売り渡すしかなくなります。こうして仲買人は、生産者を「生かさず、殺さず」の状態で支配し続けるのです。
    • バナナや紅茶、綿花を栽培する大農園(プランテーション)で働く労働者も植民地時代さながらに重労働を強いられ、奴隷状態で働かされることすらあります(特に借金のかたに取られた債務労働者)。先進国向けに衣服を生産する縫製工場やサッカーボールを手縫いする工房も同様です。監禁されて火事になっても逃げ出せず、焼死するという痛ましい事件も起きています。
    • それらの農園や工場、工房では「児童労働」も絶えません。従順で安く使える児童は好都合ですらあります。学校にも行けずひたすら働かされる子どもたち。その数は世界全体で1億6000万人に上るといいます(ユニセフ調べ)。
    • 以上のような、「苦境」という表現では生易しい苛酷な状況に置かれた生産者、労働者や子どもたち─彼らに人間らしい暮らしを!と取り組むのがフェアトレードなのです。
  • 国際貿易のしくみ
    • かつて先進国に植民地支配された途上国では、今も「モノカルチャー(単一栽培/生産)経済」から抜け出せない国が少なくありません。モノカルチャーとは、先進国が欲するわずか1種類から数種類の農産物や鉱物(合わせて一次産品と言います)を生産させるしくみのことで、スリランカの紅茶、ガーナのカカオ、キューバの砂糖、ザンビアの銅などが代表的な例です。
    • 独立後も途上国が一次産品を生産・輸出し、先進国から工業製品を輸入するという“国際分業”は続いています。工業製品は技術革新等によって付加価値の高い製品が次々と生み出されますが、一次産品は付加価値を付けるのが難しいため交易条件が悪化して(=より多く売らないと工業製品が買えなくなって)いきます。
    • 1960年代から今日までの一次産品の実質価格(各年代は10年間の平均値、2020―22年は3年間の平均値)の推移を示した表です。表中の赤字は各一次産品の年代ごとの最高値、濃い青字は最安値、薄い青字は2番目に安い価格を表しています。
    • これを見ると、バナナと鉱物を除く一次産品の価格は1960年代ないし70年代に最高値を付けたあと下落して1990年代前後に最安値を記録し、その後は(中国、インド等の新興国で原材料や嗜好品への需要が高まったりして)多少持ち直しています。直近の2020―22年の価格を1960年代と比べると、バナナと鉱物を除く一次産品は1960年代を下回っています。つまり50年以上前よりも安い価格で取引されているわけで、生産者や労働者の人たちの生活がいかに苦しくなったかご理解いただけるでしょう。
    • では、1990年代前後に最安値を記録したのはなぜでしょう。それ以前は、一次産品価格の安定と向上を図る「国際商品協定」というものが途上国と先進国の間で結ばれ、機能していました。つまり、一次産品を生産する途上国に最低限度の価格を保証する“フェアトレード的”なしくみが政府間にあったのです。
    • ところが、1980年代に先進国で力を得て世界に広まった「新自由主義」政策により、国際商品協定は破棄ないし機能停止に追い込まれました。「新自由主義」というのは、政府の介入を極力抑え、市場や企業の自由な振る舞いに任せることで経済の効率化・活性化を図る経済思想で、政府が介入する国際商品協定はその標的となり、崩壊させられたのです。生産者を守るために途上国の政府が一次産品を買い上げたり生産を支援したりするしくみも“介入”に当たるとして縮小・撤廃を迫られました。
    • 1990年代はまた「グローバリゼーション」に突入した時代で、自由の翼を得た先進国企業は世界を股にかけて活動し始めました。合併と買収(M&A)を繰り返し、グローバルな「メガコンペティション(大競争)」に勝ち残った大企業は市場支配力、価格決定力を強め、一次産品価格をいっそう押し下げました。
    • このようにして、一次産品は1990年代前後に史上最安値を記録したのです。単年の史上最安値は最盛期の3分の1から4分の1にまで落ち込みました。国際的にも国内的にも支えを失った途上国の生産者や労働者の人たちは、むきだしの自由貿易の荒波に放り込まれ、底なしの貧困の淵に沈んでいったのです。
    • そうした極貧の渦中にある人々に最低限度以上の価格を保証する、まっとうな取引、貿易を推し進めたのがフェアトレードでした。
  • 先進国の貿易・援助政策
    • 新自由主義を世界に唱道した先進国主導のもと、「自由貿易」の推進母体となる世界貿易機関(WTO)が1995年に発足しました。自由貿易とは、手短かに言えば関税や輸入割り当て、規制などの障壁をなくして自由に貿易できることを言います。それが本当に望ましいかどうかは別として(例えば自国の環境や労働者を守ろうとして規制を強化すると、規制が緩い国のモノやサービスを“不当”に排除するとして提訴/報復されたりする)、どの国も等しく自由に貿易できれば少なくとも平等、公正とは言えるでしょう。ところが現実はそうではありません。
    • WTO発足以前の通商交渉では、主に先進国が生産し輸出する工業製品について自由貿易のルール作りが進められ、ほぼ実現しました。
    • 2001年に始まったWTO下の通商交渉は、「ドーハ開発アジェンダ」と名付けられたように、貿易を通じて途上国の開発を後押しすることが一大目標とされ、途上国側は農産物の貿易自由化に大きな期待をかけました。それが実現すれば途上国の主要な産物である農産物の輸出を大きく伸ばすことができるからです。しかし、途上国産の安い農産物から自国の農家を守りたい先進国側が難色を示し続けているため、交渉は完全に行き詰まり、農産物の貿易自由化はいまだに実現していないのです。
    • 先進国は途上国産の農産物の輸入に抵抗しているだけではありません。自国の農家に多額の補助金を出して輸出を後押ししているのです(途上国に対しては農業補助金の縮小・撤廃を要求しておきながら)。多額の補助金がもらえる欧米の農家は生産コスト以下の安値で国際市場に売り出せます(ダンピング輸出と言う)。そのため、例えば本来は高いアメリカ産のトウモロコシが、その原産地であるメキシコのものより安くなってメキシコに流れ込むという逆流現象が起きました。作っても売れなくなったメキシコの農家は食べるためにアメリカに“不法”越境し、底辺労働者になっていると言います。
    • 先進国は自分たちが輸出したい工業製品のためには“自由”貿易を唱えて途上国の市場をこじ開けながら、途上国が輸出したい農産物に対しては自国市場を閉じる(=保護貿易)だけでなく、補助金で競争力を付けさせた農産物を途上国市場に売り込む─何と手前勝手なことでしょう。
    • 現実の“自由”貿易は、先進国にとっては“自由”そのものですが、途上国にとっては“不自由”な「不公正貿易」なのです。
    • まやかしの“自由”貿易ではない、途上国にとっても「公正」な貿易の実現をめざすのがフェアトレードなのです。
    • 公正な貿易を求めてきた途上国に対して、先進国は「援助」することで要求をかわしてきました。その援助の大半は、途上国の工業化・都市化を支援する「近代化」という考え方に基づいたものでした。近代化を進めれば、その果実が次第に農村部や貧困層にしたたり落ちていって貧困問題も解決するとされてきました(トリクルダウン理論)。しかし、トリクルダウン効果は、あっても微々たるものだったため、貧困問題に正面から取り組む必要性が認識され、貧困層に直接届く援助が農業、教育、医療、小規模金融などさまざまな分野で行われるようになりました。国際協力NGO(市民団体)も、先進国政府による援助以上に貧困層に寄り添った支援をしてきました。そうした援助は成果も上げてきましたが(特に自然災害や紛争が引き起こす緊急事態や人道危機に際して)、弊害があったことも事実です。
    • 最大の弊害は援助への「依存」です。援助が潤沢で手厚ければ手厚いほど、人は「援助してもらう」ことに慣れっこになり、自身で努力するのをやめてしまうものです。私も長年国際協力に関わるなかで、そうした場面を数多く見てきました。依存するのは途上国の人たちが怠け者なためではまったくなく、人間の本性と言えるものです。援助はまた“一方通行”の行為で、「してあげる」「してもらう」という上下関係を生み出し、援助を受ける人たちに卑屈な思いをさせることも少なくありません。
    • 依存を招く援助とは違って自助努力を促し、双方向の対等な関係を築いて、人々に自信と自尊心をもたらすような公正な「ビジネス」を実現するのがフェアトレードなのです

~NEW~
国民生活センター 低価格で誘う換気扇やエアコンクリーニングの電話勧誘
  • 内容
    • 自宅に電話があり「お試し価格の3千円で、換気扇やエアコンのクリーニングができる」と勧誘され、換気扇の掃除を依頼した。業者が来訪し換気扇を掃除した後、汚れが付きにくくなるからと、コーティングを強く勧められ、断れずに承諾した。すると、風呂場や洗面所の換気扇もコーティングされて約30万円も請求された。高額だと思う。(80歳代)
  • ひとこと助言
    • 低価格と勧誘されても、電話の説明だけでは詳しい内容は分かりません。安易に訪問を承諾せず、いったん切って、周りに相談するなどしてから判断しましょう。
    • 電話勧誘トラブルの防止には、通話録音装置や迷惑電話対策機能が付いた電話機を使用することも有効です。
    • 作業を依頼した場合、作業当日に追加の契約を勧誘されてもその場で決めないようにしましょう。作業時は、なるべく家族などに同席してもらいましょう。
    • クーリング・オフができる場合があります。困ったときは、お住まいの自治体の消費生活センター等にご相談ください(消費者ホットライン188)。

~NEW~
国民生活センター ステロイドが検出された健康茶の類似商品でも検出!-検出された銘柄を飲用されている方は、医療機関にご相談を-
  • 国民生活センターの「医師からの事故情報受付窓口」に寄せられた情報をもとに、健康茶を購入して調べたところ、医薬品成分のステロイドであるデキサメタゾンが含まれており、2023年4月12日、消費者への注意喚起等を行いました(注)。当該健康茶は「ジャムー・ティー」との表示があるもので、4月上旬には、インターネット通信販売で、当該健康茶以外にも、商品名に「ジャムー」等と表示がある茶が販売されていました。そこで、当センターで入手できた3銘柄について調査を行いました。その結果、2銘柄からデキサメタゾンが検出され、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、「医薬品医療機器等法」とします。)上問題となると考えられ、飲用されている方への健康影響が懸念されましたので、消費者へ注意喚起することとしました。
  • 消費者へのアドバイス
    • 医薬品成分のステロイドが含まれていた2銘柄を飲用されている方は、医療機関を受診するようにしましょう。
  • 事業者への要望
    • 医薬品成分のステロイドが含まれていた2銘柄を販売している、または販売していた事業者は、直ちに同銘柄の販売を中止するとともに、購入者へ医療機関の受診を勧める周知を行うよう要望します。
  • 行政への要望
    • 医薬品成分のステロイドが含まれていた2銘柄について、医薬品医療機器等法上問題となると考えられましたので、当該事業者への指導等を要望します。

~NEW~
国民生活センター 学生の就活の不安につけ込むトラブル-Web会議で無料カウンセリング等を受けるだけのつもりが高額契約に-
  • 就職活動(以下、就活という)中の学生(以下、就活生という)の不安につけ込み、高額なセミナーやビジネススクール等を契約させるトラブルについて、全国の消費生活センター等に相談が寄せられています。
  • 最近の就活は、企業セミナーや面接のWeb開催のほか、就活生によるSNSでの情報収集等、オンラインの活用が進んでいます。2020年7月に国民生活センターは就活セミナー会場や事業者の事務所等で行われる勧誘について注意喚起をしましたが、トラブルの傾向にも変化がみられます。現在は就活生がインターネット広告等で見つけた無料カウンセリングに参加するためや、SNSで知り合った人からアドバイスを受けるためにWeb会議に参加したところ、不意打ち的に高額なセミナーやビジネススクール等の契約を勧誘されるケースが目立ちます。そこで、改めて相談事例やアドバイスを紹介し、トラブル防止のために注意を呼びかけます。
  • 相談事例
    1. Web会議で無料カウンセリングを受けたら、高額な就活セミナーを勧誘された
      • 就活に悩み、SNSで就活塾の広告を見てサイトに登録し、Web会議での無料カウンセリングを受けた。「自己分析や面接対策のセミナーを受ければ大手企業に100%内定する」と言われた。約50万円かかると言われたが、その場で判断するよう迫られ、考える余裕もなく勧められるまま申し込んだ。その後、「セミナーのオリエンテーションのために頭金2万円を支払うように」と言われ、振り込んだ。Web会議でのオリエンテーションでセミナーの説明を受け、電子の契約書面にサインをした。
      • 後日、友人に相談すると高額だと言われ、無料通話アプリのメッセージで「高額で支払えないのでやめたい」と担当者に伝えると、「今やめるのはもったいない。みんな苦しくてもローンで支払っている」と電話で説得され、解約に応じてもらえなかった。その後、担当者やローン会社からの電話に出ないでいると、無料通話アプリのメッセージで「解約に応じる」と連絡が来た。しかし、解約料として契約金額の20%を請求され、納得できない。(2022年5月受付 20歳代 男性)
    2. その他、以下のような相談も寄せられています
      • Web会議で就活のアドバイスをもらうはずが、高額なプログラミングスクールを勧誘された。
  • 就活生へのアドバイス
    • 無料カウンセリングのつもりでWeb会議に参加しても、いきなり高額な契約の勧誘を受けることがあるため注意しましょう。
    • SNSで知り合った人からの一見親切な誘いは、高額な契約の勧誘が目的の恐れがあるため注意しましょう。
    • 断定的な説明や就活生の不安をあおる言葉に注意しましょう。
    • 安易にクレジットの高額決済や借金をしないようにしましょう。
    • 契約してしまっても、クーリング・オフや契約の取り消しができる場合があります。
    • 不安に思った場合は早めに消費生活センター等に相談しましょう。

~NEW~
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について
  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、令和5年5月8日から感染症法上の5類感染症に位置づけることとなり、当該新規患者数の発生状況等の把握については、定点医療機関(全国約5,000か所のインフルエンザ/COVID-19定点)からの報告に基づくものとなりました。
  • このたび、令和5年第19週(令和5年5月8日から令和5年5月14日まで)分の新型コロナウイルス感染症の発生状況を、別紙1のとおり取りまとめましたので、お知らせします。
  • なお、5類感染症への位置づけ変更前となる令和5年5月7日までの推移等もお示ししています。ただし、これはHER-SYS(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム)を活用してこれまで入力された定点医療機関による報告数を集計(5月17日17時時点)したものであり、各定点医療機関からの報告がHER-SYS上明らかでない場合は含まれない等、全ての定点医療機関による報告数が網羅されていない点に留意が必要となります。
  • あわせて、G-MIS(医療機関等情報支援システム)における新型コロナウイルス感染症の新規入院患者数等についても、別紙2のとおり取りまとめましたので、お知らせします。
  • 今後、発生状況等については、毎週金曜日14時を目途に公表する予定です。令和5年第20週(令和5年5月15日から令和5年5月21日まで)分については、5月26日(金)に公表予定です。

~NEW~
厚生労働省 第4回 日・ILO年次戦略協議の開催(結果)
  • 4月23日・24日、日本政府と国際労働機関(ILO)は第4回日・ILO年次戦略協議を開催しました。
  • 4月23日、倉敷国際ホテル(岡山県倉敷市)において、本協議のハイレベルセッションとして、加藤勝信厚生労働大臣とジルベール・F・ウングボILO事務局長の会談を行いました。本セッションにおいては、加藤厚生労働大臣とウングボILO事務局長のほか、ILOからリチャード・サマンス調査研究局長、麻田千穂子アジア太平洋地域総局長、ジェイムズ・ハワード事務局長官房シニアアドバイザー、高﨑真一駐日代表、日本政府から富田望厚生労働省総括審議官(国際担当)、松居眞司外務省国際協力局専門機関室長ほかが出席しました。
  • 本セッションにおいて、日本とILOは、労働安全衛生やグローバルサプライチェーンといった分野等における一層の連携強化について確認するとともに、労働分野における開発協力や国際労働基準の遵守・批准に向けた検討といった取組について、意見交換を行いました。
  • また、日本によるILOへの人的、財政的及び政策的貢献について確認するとともに、ILOの活動や成果に関する日本国内での認知度向上の必要性及び重要性について認識を共有しました。両者は、ILOにおける日本人職員の増強に向けて、引き続き双方の取組を進めていくことで一致しました。
  • さらに、4月24日、対面形式(東京)及びオンライン形式を併用し、政策担当者において人事、開発協力及び国際労働基準に関する各セッションを行い、ハイレベルセッションで確認された方向性等について、意見交換を行いました。
  • 参考1 国際労働機関(ILO)
    • ILOは、労働条件の改善を通じて、社会正義を基礎とする世界の恒久平和の確立に寄与すること、完全雇用、社会対話、社会保障等の推進を目的とする国際機関(本部はスイス・ジュネーブ)であり、唯一の政、労、使の三者で構成される機関。日本はILO加盟国として、政労使ともに総会や理事会等の各種会合に積極的に参加している(参照:厚生労働省ウェブページ、ILO駐日事務所ウェブページ)。
  • 参考2 日ILO年次戦略協議の開催の背景
    • 2017年5月、ガイ・ライダーILO事務局長と塩崎厚生労働大臣(当時)との間で結ばれた協力覚書に基づき開催しているもの。第1回年次戦略協議は2018年6月にジュネーブのILO本部、第2回年次戦略協議は2019年1月に東京において開催し、第3回年次戦略協議は2020年12月にオンライン形式で開催した。

~NEW~
厚生労働省 第7回今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会
▼資料2 今後の仕事と育児の両立支援について(論点案)
  • 子が3歳までの両立支援について
    1. テレワークは、通勤時間が削減されることなどにより仕事と育児の両立のためにも重要なものとして位置付けられてきた。また、コロナ禍を機に柔軟な働き方の一つとして一定の広がりも見られる。さらに、企業に対するヒアリング等においても、テレワークを育児との両立のために活用する事例が確認された。
      • 育児との両立に活用するためには、就業時間中は保育サービス等を利用して就業に集中できる環境が必要であるため、例えば、保育所等への入所に当たり、居宅内での勤務と居宅外での勤務とで一律に取扱いに差異を設けることのないよう、保育行政において徹底していくことが必要である。こうした条件が整えばテレワークは、フルタイムで勤務できる日を増やせることも含めて仕事と育児の両立に資するものであるため、現行の育児休業制度や短時間勤務制度の単独措置義務は維持しつつも、現在、努力義務となっている出社・退社時間の調整などに加えて、テレワークを努力義務として位置付けることとしてはどうか。
    2. また、短時間勤務が困難な場合の代替措置の一つに、テレワークも設けてはどうか。
    3. 短時間勤務を原則1日6時間とする現行の規定については、子を養育する労働者が入れ替わっていくことから、今後制度の利用を希望する労働者にとっても、企業にとっても、原則6時間という規定を維持することは引き続き必要であるのではないか。一方で、ヒアリング等からも、短時間勤務の中でも1日6時間より長い時間働くことや、柔軟な勤務時間の設定に対するニーズもあったことから、原則1日6時間とする措置を設けた上で、他の勤務時間も併せて設定することを促していくことが必要ではないか。
  • 子が3歳以降小学校就学前までの両立支援について
    • (柔軟な働き方を実現するための措置)
      • 子の年齢に応じて、短時間勤務や、フルタイムで働きながらテレワークや出社・退社時間の調整(フレックスタイム制を含む。)、休暇などを活用した柔軟な働き方に対するニーズが変わっていく中で、育児との両立が可能となるよう、これらの制度の活用を促進する方法として、以下の措置を設けることとしてはどうか。
        • 業種・職種などにより、職場で導入できる制度も様々であることから、これらの制度の中から、各職場の事情に応じて事業主が措置を講じる義務を設けることとしてはどうか。
        • 平成22年以前の勤務時間等短縮措置制度を参考としつつ、事業主が措置を選択する制度としてはどうか。その際、育児との両立の在り方やキャリア形成への希望に応じて、労働者が短時間勤務だけでなく柔軟な働き方をしながらフルタイムで働ける制度を選ぶことができるようにするために、例えば、事業主が複数の制度を選択して措置し、その中から労働者が1つ選ぶという仕組みが考えられるのではないか。
        • 事業主が措置を選択する際には、労働者からのニーズを把握することは重要と考えられるため、労使で話し合うことや労働者からの意見を聞くこととしてはどうか。その方法として、過半数労働組合や過半数代表者、既存の労使委員会の仕組みを参考とすることも考えられるが、さらに、ヒアリングで聴取した実例を踏まえ、子どもを育てる労働者の意見を集約するための手段について、どのように考えるか。
        • 労働者が選択して適用された制度について、その労働者自身にとって適切な選択となっているかの確認を促すために、定期的な面談などを通じて、見直しを行うことも必要ではないか。
      • 特に、事業主がフルタイムを前提としたテレワークやフレックスタイム制などを措置する場合、それを活用する労働者にとって育児負担と相まって負荷が大きくなることが懸念される。男女間での育児・家事負担の平準化のための取組を一層進めることに加えて、以下の仕組みを設けることとしてはどうか。
        • 柔軟な働き方を選択することによる心身の健康の不調が生じないよう、事業主の配慮(勤務間の休息時間や勤務時間外の業務へのアクセス状況の確認、面談による労働者の状況への配慮等)や労働者自身のセルフケアなどを促す仕組みを設けること
      • 事業主が短時間勤務制度を選択する場合には、3歳までに措置されている現行制度と同様、1日原則6時間とする措置を設けた上で、他の勤務時間も併せて設定することを促していくものとしてはどうか。
        • また、事業主がテレワークを選択する場合には、実質的に育児との両立が可能となったといえるための基準を設ける必要はあるか(例えば、週1~2回程度使える制度とするなどの基準や、他の措置とのバランスを勘案した基準を設けること等について、どのように考えるか。)
    • (残業免除(所定外労働の制限))
      • 育児期の長時間労働の是正等を通じた両立支援の必要から、現在3歳まで請求できる残業免除(所定外労働の制限)について、3歳以降小学校就学前まで請求を可能とすることについてどのように考えるか。
  • 子の看護休暇について
    • 労働者の心身の疲労を回復させることなどを主たる目的として制度化されている年次有給休暇とは別に、子を育てる労働者の特別のニーズに対応するためのより柔軟な休暇が必要と考えられることから、現行の子の看護休暇について、以下の見直しを行うこととしてはどうか。
      • 取得目的について、現行の育児・介護休業法において努力義務となっている育児目的休暇や、コロナ禍で小学校等の一斉休校に伴い、多くの保護者が休暇を取得せざるを得なかったことを踏まえ、子の行事(入園式、卒園式など)参加や、感染症に伴う学級閉鎖等にも活用できるものとしてはどうか。
      • 子の看護休暇を取得する労働者の多くは5日未満であることや子どもの病気のために利用した各種休暇制度の取得日数の状況等を参考に、1年間の取得日数は原則5日としつつ、診療を受けた日数の状況等を勘案して、取得可能な年齢については、小学校3年生の修了までに引き上げることとしてはどうか。
      • 子の看護や行事等への参加等のニーズは、労働者の勤続年数にかかわらず存在することから、労働移動に中立的な制度とする等の観点からも、勤続6か月未満の労働者を労使協定によって除外できる仕組みについて、見直すことについてどのように考えるか。
  • 子が小学校就学以降の両立支援について
    • 子が小学校就学以降においては、職場全体での残業のない働き方や柔軟な働き方が進めば、育児のために特化した支援が一律に必要な場面は少なくなると考えられる。そうした中でも、小学校就学以降の子を育てる労働者にとっても、子の看護やその他の育児に関するニーズがあることを踏まえて、上記3(1)のとおり、子の看護休暇を見直し、小学校3年生の修了までに引き上げることとしてはどうか。
  • 両立支援制度の円滑な利用を通じ、次世代育成支援対策を促進することについて
    • 現在の少子化の進行等の状況や、男女がともに、育児休業や両立支援制度を利用し、育児期に仕事やキャリア形成と育児を両立できる働き方が可能となるような社会の実現に向けた課題がまだ残されていることから、次世代育成支援対策推進法(令和7年3月末で失効予定)を延長し、その仕組みを活用していくことが有効ではないか。
    • 特に、同法において、常時雇用労働者101人以上の企業に策定が義務付けられている一般事業主行動計画について、行動計画策定指針上は数値目標の設定が望ましいことやPDCAサイクルの確立が重要であるとされているところ、その取組状況は個々の企業によって濃淡が見られる現状にある。その実効性を高めるため、上記のような手法を、指針ではなく法律上の仕組みとして規定することとしてはどうか。
    • 一般事業主行動計画の策定に当たっては、今後の次世代育成支援において重要なのは「女性が働きやすい職場」だけではなく「男女がともに仕事と子育てを両立できる職場」であるという観点を明確にするため、例えば、男性育児休業の促進、子育て期を含めた全ての労働者の時間外労働の縮減や柔軟な働き方の促進等の事項を盛り込むことについて具体的に示すこととしてはどうか。
    • ヒアリングを通じて把握してきた好事例等の内容を踏まえ、行動計画に盛り込むことが望ましい事項として、以下のような項目を策定指針で示すこととしてはどうか。
      • (企業全体の方針)
        • 育児休業期間や短時間勤務などを活用する期間の評価に関すること
        • 育児休業取得時や短時間勤務活用時等の業務の分担や代替要員確保に関する企業としての方針(本人及び周囲の労働者に対する周知方法を含む)
        • 育児休業からの復職後に復帰するポジションに関する納得感の向上に向けた取組に関すること(原職や原職相当のポジションへの復帰や、意欲・能力を活かす仕組み)
        • 多様な状況にある子や親の両立支援に関する取組に関すること
        • 育児に必要な時間帯や勤務地に対する配慮に関すること
        • 両立支援に対するニーズの把握に向けたトップダウン・ボトムアップ・当事者間のつながりによるコミュニケーション手段の多様化
      • (両立支援制度の利用者に対する取組)
        • 育児中の労働者が、今後のキャリアの希望に合わせて、両立支援制度の利用や配偶者との育児分担等について検討することを促すためのキャリア研修
      • (個々の職場の管理職や上司に対する取組)
        • 育児休業取得者等の周囲の労働者に対するマネジメントや評価に関すること
        • 制度利用者本人のキャリア形成・能力開発の観点や、円滑な制度利用のために周囲の労働者の業務見直しや評価等への配慮を行うことで職場でのあつれきが生じないようにする観点から、上司向けの情報提供や研修に関すること 等
  • 両立支援制度の活用をサポートする企業や周囲の労働者に対する支援
    • 育児休業や短時間勤務等を活用する場合に、育児休業取得者等の代替要員の雇用や、周囲の労働者による支援をする場合に、代替要員の確保や周囲の支援の負担を軽減するような助成措置の強化や、業務量・達成目標の見直しや体制の整備などに関するノウハウの共有などが必要ではないか。また、企業規模に応じた支援の内容についてはどのようなものが考えられるか。
  • 障害児等を育てる親等、個別の事情に配慮した両立支援の在り方について
    • 子に障害がある場合や医療的ケアを必要とする場合にどのような支援が必要かということについては、子の障害等の状況が多様であることや、障害等のない子を育てる場合や高齢者の介護と比較した場合の仕事と育児・介護の両立支援の課題が異なりうることなどへの留意が必要。
    • 現行制度の運用においては、以下の対応が必要ではないか。
      • 子に障害がある場合や医療的ケアを必要とする場合に、育児と仕事の両立支援制度に加えて、子が要介護状態の要件を満たせば、介護休暇等の制度も利用可能であることや、介護休業若しくは介護休暇に関する制度又は介護のための所定労働時間の短縮等の措置に準じて、介護を必要とする期間、回数等に配慮した必要な措置を講ずる努力義務が事業主に課されていることについて、周知を強化すべきではないか。
      • 現行の要介護状態の判断基準について、主に高齢者介護を念頭に作成されており、子に障害がある場合等では解釈が難しいケースも考えられることから、具体的な障害の状態等を踏まえて、さらに検討することが今後の課題として考えられるのではないか。
    • 加えて、企業や労働組合、当事者団体へのヒアリングを通じて、労使での話合いや、様々なコミュニケーション手段を活用したニーズの把握などにより、企業が個々の労働者への配慮を行う事例も見られたことを参考として、企業が、社内で規定している制度以外の制度の利用を希望するなどの個人の意向を聞き、それを尊重する仕組みを設けることについてどのように考えるか。
      • その際、各家庭において様々な事情から、勤務時間帯や勤務地、制度の利用期間などに対する個別のニーズが想定されるところ、対象となる労働者の範囲についてどのように考えるか。
  • その他
    1. 令和3年改正育児・介護休業法の着実な施行に向け、引き続き取り組んでいくことが重要ではないか。
      • 産後パパ育休等の施行
      • 個別周知・意向確認
        • プライバシーの取扱いにおいてさらに留意が必要な点はあるか。例えば、妊娠・出産等に関する情報が適切に管理されるよう、社内で共有する範囲を定めるといった取組を事業主に促すことについて、どのように考えるか。
      • 育児休業取得状況の公表
        • 現在、常時雇用する労働者が1,000人超の事業主に対して男性の育児休業取得状況の公表が義務付けられたが、さらにどのような拡充が考えられるか。
        • 企業規模が小さい場合には、一定期間内に育児休業を取得しうる者(本人又は配偶者が出産した者等)が限られる場合があるため、どのような配慮が考えられるか。
    2. 男性の育児休業取得率の目標を掲げる場合には、取得率だけでなく、男性の育児休業取得日数や育児・家事時間等も含めた目標の検討が必要ではないか
▼資料3 今後の仕事と介護の両立支援について(論点案)
  1. 仕事と介護の両立支援制度の情報提供や、制度を利用しやすい雇用環境の整備の在り方
    1. 介護の必要性は突然直面するケースが多く、あらかじめ介護の準備を考えておくことや、地域包括支援センターなどの相談機関に早期に相談しておくことが、要介護者やその家族にとって重要である。一方で、介護休業制度をはじめとする仕事と介護の両立支援制度や、その本来の趣旨が当事者に認識されていないという声があり、それに加えて、勤務先に介護休業等を取得しづらい雰囲気等があることが、仕事を続ける上での課題として挙げられている。介護に直面した労働者が離職せずに仕事と介護の両立を実現することが、企業・労働者双方にとって重要である。
      こうした現状を踏まえ、既存の制度を利用しないまま介護離職に至るようなケースを防止するために、仕事と介護の両立支援制度の周知や雇用環境の整備について、次のような論点が考えられるのではないか。
    2. 介護休業をはじめとする仕事と介護の両立支援制度の内容や利用目的について、国においても、両立支援制度を解説した動画の掲載等を行うとともに、保険者による介護保険の第2号被保険者への制度周知に活用いただけるよう、介護保険制度や両立支援制度の概要が記載されたリーフレットを作成・公開している。こうした取組を一層進めるとともに、今後、労働者に対し情報を届けやすい主体である、個々の企業(職域)を活用した、さらなる周知について、どのような取組が考えられるか。
      • 企業から労働者個人に対する情報提供の在り方についてどのように考えるか。
        • 個別の情報提供に当たっては、両立支援制度の本来の利用目的を十分に説明した上で、仕事との両立に必要な制度が選択できるよう労働者に対して働きかけることが必要ではないか。
        • 当事者によっては、家族の介護を行っている又は直面していることを職場で明らかにしたくない等の事情を抱える者もいることについて配慮が必要ではないか。
      • あわせて、企業が、介護保険の第2号被保険者となる40歳の労働者に対して、介護保険制度の説明を含め、制度の情報提供を一律に行うなどの仕組みも考えられるか。
        • 既に、40歳以上の労働者に対して詳細な資料を作成・配布する取組を行っている企業もあり、こうした取組を参考にしてはどうか。
    3. 企業による、仕事と介護の両立支援制度を利用しやすい雇用環境の整備の在り方についてどのように考えるか。
      • 既に、介護に対する不安の解消を目的とした社内セミナーの開催や、複数の相談窓口の相談体制の整備、上司向けの研修等を行っている企業もあり、こうした取組を参考にするほか、企業における個別の取組を好事例として共有する仕組みも重要ではないか。
        • その際、併せて両立支援制度の本来の利用目的を十分に周知し、制度に対するリテラシーを育成することが必要ではないか。
    4. これらの取組に加えて、両立支援制度の本来の利用目的を周知するために適切な手段として何が考えられるか。
  2. 介護休業
    • 介護休業について、本人が直接介護を行うための休業ではなく、介護を要する家族を支える体制を構築するという利用目的の理解促進を行いつつ、こうした目的に照らして、現行の介護休業制度の取得日数(対象家族1人につき93日)や、分割回数(3回に分けて取得可能)についてどのように考えるか。
  3. 介護期の働き方(介護休暇や短時間勤務等の選択的措置義務、テレワークの在り方等)
    • 現行の育児・介護休業法では、介護休業制度に加え、仕事と介護の両立のための働き方に関する制度として、介護休暇制度や、短時間勤務制度等の選択的措置義務が設けられており、法制度としては、一定の整備がされている現状にはあるが、これらの利用目的の理解促進を行いつつ、次のような見直しが考えられるか。
      • 現行の介護休暇について、介護体制構築後の通院等の日常的な介護ニーズなどに対応するものとして設けられているが、こうしたニーズは、労働者の勤続年数にかかわらず存在することから、労働移動に中立的な制度とする等の観点からも、勤続6か月未満の労働者を労使協定によって除外できる仕組みについて、見直すこととしてはどうか。
      • 今後、多様化していく介護の実情を踏まえ、選択的措置義務の一つに、テレワークも追加することについてどのように考えるか。
        • テレワークを導入することで、かえって要介護者が家族である労働者本人に依存する恐れがあるという意見もあったため、要介護者の家族である労働者本人に求められる役割を踏まえた整理が必要ではないか

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経済産業省 令和4年度大学発ベンチャー実態等調査の結果を取りまとめました(速報)~大学発ベンチャー数、過去最高の伸びを記録~
  • 経済産業省で、「令和4年度大学発ベンチャー実態等調査」の結果を取りまとめましたので、速報としてお知らせします。2022年10月時点での大学発ベンチャー数は3,782社と、2021年度に確認された3,305社から477社増加し、企業数及び増加数ともに過去最多を記録しました。
  • 目的・背景
    • 大学発ベンチャーは、大学等における革新的な研究成果をもとに、経済社会にイノベーションをもたらす担い手として期待されています。本調査は、大学発ベンチャーの設立状況を定点観測するとともに、事業環境やニーズ等を調査し、その成長に寄与する要因等を分析することで、今後の政策展開に活用するため実施しています。
  • 調査の結果概要
    1. 大学発ベンチャー数の推移
      • 2022年度調査において存在が確認された大学発ベンチャーは3,782社でした。2021年度に確認された3,305社から477社増加し、企業数及び増加数ともに過去最高を記録しました。
    2. 大学別大学発ベンチャー数
      • 大学別の大学発ベンチャー数では引き続き東京大学が最も多いものの、京都大学、慶應義塾大学、筑波大学等、他大学も目立ち、多くの大学がベンチャー創出に力を入れていることがうかがえます。
    3. 大学発ベンチャーにおける経営人材に関する分析
      • 大学発ベンチャーにおける経営人材(CEO)が経営人材(CEO)となる前の最終経歴は、「大学・公的研究機関の教職員・研究者」が多く、アカデミア出身者が経営人材(CEO)となるケースが多いことがうかがえます。
    4. 大学発ベンチャーにおける博士号取得者の活躍状況に関する分析
      • 大学発ベンチャーの従業員総数に占める博士号取得者の在籍割合は、大学発ベンチャーの定義別に見ると、特に研究成果ベンチャーや共同研究ベンチャーにおいて高くなっています。また、大学発ベンチャー全体においても一般企業研究職に比べて在籍割合が高いことから、大学発ベンチャーでは博士号取得者が積極的に活用されていることがうかがえます。

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経済産業省 子供の安全のため玩具への新たな規制が導入されます 消費生活用製品安全法施行令の一部を改正する政令が閣議決定されました
  • 本日、「消費生活用製品安全法施行令の一部を改正する政令」が閣議決定されました。本政令は、消費生活用製品安全法の特定製品に新たに磁石製娯楽用品と吸水性合成樹脂製玩具を指定し、技術基準に適合しない製品の販売を規制するものです。
  • これにより、強力な磁力を有する複数個の磁石を組み合わせて使用するいわゆるマグネットセット(写真)や水を吸収することで大きく膨らむ吸水性の玩具(写真)は、販売できなくなります。
  • 既にマグネットセットや水で膨らむボールを購入された方におかれては、同製品を乳幼児に触らせないように十分注意をお願いします。また、仮に同製品が販売されていたとしても、購入しないようにお願いします。
  • 改正の背景
    • 磁石製娯楽用品(マグネットセット)については、平成29年から令和4年に、子供が複数個の磁石を誤飲し腸壁を挟んで強力な磁石が引き合うことにより開腹手術による摘出が必要となった事故が11件発生したほか、吸水性合成樹脂製玩具(水で膨らむボール)については、令和3年に、乳幼児がこれらの製品を誤飲したため腸内で大きく膨らみ開腹手術による摘出が必要となった事故が4件発生しています。当該2製品は、仮に事故が発生した場合の事故の危険性が大きく、被害も重大であることから、特定製品へ指定して規制対象とし、技術基準に適合しない製品の販売を規制することとしました。
    • 消費生活用製品安全法では、「消費生活用製品のうち、構造、材質、使用状況等からみて一般消費者の生命又は身体に対して特に危害を及ぼすおそれが多いと認められる製品」を「特定製品」として消費生活用製品安全法施行令で指定し、特定製品の製造及び販売を規制しています。
  • 改正の概要
    • 消費生活用製品安全法の特定製品を指定する消費生活用製品安全法施行令の別表第一に次の2製品を加えます。
    • 磁石製娯楽用品(磁石と他の磁石とを引き合わせることにより玩具その他の娯楽用品として使用するものであつて、これを構成する個々の磁石又は磁石を使用する部品が経済産業省令で定める大きさ以下のもの※に限る。)
    • 吸水性合成樹脂製玩具(吸水することにより膨潤する合成樹脂を使用した部分が吸水前において経済産業省令で定める大きさ以下のもの※に限る。)
      • ※今後、乳幼児が飲み込みうる大きさとして、経済産業省令において、ISO8124-1に規定されている小部品シリンダーに収まる大きさ以下のものと規定する予定。
      • 注1:磁石製娯楽用品の技術基準として、ISO8124-1と同様に、仮に誤飲した場合でも体外に自然排出される水準の磁力である、磁束指数(最大磁束密度の二乗と極の面積に積)が50kG2・mm2未満となることを求める予定。
      • 注2:吸水性合成樹脂製玩具の技術基準として、ISO8124-1と同様に、仮に誤飲した場合でも体外に自然排出される水準である、吸水前の状態から50%を超えて膨潤しないことを求める予定。
    • 今後の予定
      • 公布:令和5年5月19日(金曜日)
      • 施行:令和5年6月19日(月曜日)
  • 改正の効果
    • いわゆるマグネットセットは、今後技術基準で定める予定の磁力を超えるものであるため、技術基準を満たさず、規制により販売ができなくなります。
    • また、いわゆる水で膨らむボールも、今後技術基準で定める予定の膨潤率を超えて膨張するため、技術基準を満たさず、規制により販売ができなくなります。
    • なお、マグネットセットはおもちゃとしての販売以外にも「14歳以上向けストレス解消」等の記載で販売されている場合がありますが、こうした子供向けではない製品についても、新たな規制の対象になり、販売できなくなります。
  • 消費者への注意喚起
    • 既にマグネットセットや水で膨らむボールを購入された方におかれましては、当該製品を乳幼児に触らせないよう、十分に注意して下さい。(万が一、誤飲が疑われる場合は、すぐに医療機関を受診して下さい。)
    • また、マグネットセットや水で膨らむボールが仮に販売されていたとしても、購入しないようにお願いします。

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国土交通省 「在宅勤務スペース」「宅配ボックス設置」などについて新たに調査しました!~令和4年度住宅市場動向調査の結果をとりまとめ~
  • 令和4年度住宅市場動向調査の結果をとりまとめましたので、公表いたします。
  • 本調査は、統計法に基づき総務大臣の承認を受けた一般統計調査で、個人の住宅建設に関して影響を受けたことや資金調達方法等についての実態を把握し、今後の住宅政策の企画立案の基礎資料とすることを目的として、平成13年度から毎年度実施しています。
  • 新型コロナウイルス感染症を契機とした「新しい生活様式」を踏まえた調査内容とすべく、令和4年度調査から、「住宅取得等の過程におけるインターネット活用状況」、「在宅勤務・在宅学習スペースの状況」、「宅配ボックス設置の状況」を新たな調査項目として追加しました。
  • 調査の概要
    • 調査対象者
      • 令和3年度中(令和3年4月~令和4年3月)に住み替え・建て替え・リフォームを行った世帯を対象として、注文住宅、分譲住宅、既存(中古)住宅、民間賃貸住宅及びリフォーム住宅の利用関係別に調査を行った。
    • 調査項目
      • 住み替え・建て替え前後の住宅、世帯の状況、住宅取得等の資金調達の状況等
  • 調査結果の概要
    • 住宅取得等の過程におけるインターネット活用状況(資料「調査結果の概要(抜粋)」参考1)
      • いずれの利用関係別においても、「情報収集」と回答した割合が最も高い。一方で、「オンライン会議システムを活用した物件説明・商談」は低水準にとどまっている。
    • 在宅勤務・在宅学習スペースの状況(資料「調査結果の概要(抜粋)」参考2)
      • 住宅購入世帯(注文住宅・分譲住宅・既存住宅取得世帯)では、「在宅勤務等に専念できる個室がある」と回答した割合が最も高い。一方で、民間賃貸住宅入居世帯では、「在宅勤務等に専念できる個室やスペースなどはない」と回答した割合が最も高いが、「在宅勤務に専念できる個室がある」と拮抗している。
    • 宅配ボックス設置の状況(資料「調査結果の概要(抜粋)」参考3)
      • 分譲集合住宅では、「設置している」と回答した割合が他の利用関係別と比べて際立って高い。一方で、戸建住宅では「設置していない」と回答した割合が高い。
    • 既存住宅にした理由(資料「調査結果の概要(抜粋)」 参考4)
      • 既存住宅にした理由について、既存戸建て取得世帯では、「新築住宅にこだわらなかったから」、「リフォームで快適に住めると思ったから」と回答した割合が前年度調査から増加しており、既存住宅への抵抗感が減少傾向にあることがうかがえる。

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国土交通省 貸住宅管理業者及び特定転貸事業者59社に是正指導~全国一斉 立入検査 結果(令和4年度)~
  • 国土交通省では、令和5年1月から2月にかけ、全国97社の賃貸住宅管理業者及び特定転貸事業者へ立入検査を実施し、うち59社に是正指導を行いました。
  • 引き続き、立入検査等を通じて賃貸住宅の管理業務等に関する適正化に向けた指導等を行って参ります。
  • 賃貸住宅管理業者及び特定転貸事業者(いわゆるサブリース業者)(以下「賃貸住宅管理業者等」という。)が、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(以下「法」という。)に基づき適正に賃貸住宅管理業及び特定転貸事業を営むことは、極めて重要です。
  • 国土交通省は、令和5年1月から2月にかけ、法施行後初めて全国97社(事業規模の大きさ等を勘案して選定)に対して立入検査を実施し、59社に対して是正指導を行いました。
  • 指導の対象については、「管理受託契約締結時の書面交付」が最も多く、「書類の備え置き及び閲覧」、「管理受託契約締結前の重要事項説明」が次ぎ、一部の賃貸住宅管理業者等において法の各条項の理解不足が見られる結果となりました。
  • なお、59社すべてにおいて是正がなされたこと等を確認しています。
  • 国土交通省としては、引き続き、立入検査等による指導を行い、悪質な法違反に対しては、法に基づき厳正かつ適正に対処して参ります。
  • また、関係団体に対しても、研修活動等を通じて、賃貸住宅管理業及び特定転貸事業全般の適正化に向けた指導等を図るよう、引き続き要請して参ります。

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