• ホーム
  • SPN JOURNAL Online
  • 連載コラム
  • 危機対応時の問い合わせ一次対応トークのポイント ~情報漏えいや企業不祥事対応の通知(公表)後の対応における基本的な考え方~

SPNの眼

危機対応時の問い合わせ一次対応トークのポイント ~情報漏えいや企業不祥事対応の通知(公表)後の対応における基本的な考え方~

2026.03.03
印刷

総合研究部 主幹研究員 小田 野々花

記者会見後のメディアインタビューマイク

「不正アクセスによる情報漏えいのお詫びとお知らせ」「●●に関するお詫びとお知らせ」などというタイトルの企業ホームページ内の文章を目にしたことがある方は多いのではないでしょうか。昨今、話題になっている不正アクセスによる情報漏えいのほか、その他の危機対応(品質不正、製品回収…等)においても、多くの場合、企業の危機管理対応の過程で「事案の通知/公表」をする必要が生じます。具体的には、お客様(お取引先様)へのお詫びメールの一斉送信や、自社ホームページへの文書掲載、場合によっては記者会見などの手法で事案の公表が行われます。

しかし、情報漏洩対応や不祥事対応は通知や公表をして終わりではありません。通知・公表後に待っているのは、通知した相手やその他取引先、場合によってはメディアなどからの問い合わせ対応です。この問い合わせに真摯に、適切に対応できるかどうかが、お客様、お取引先様からの信頼や企業のレピュテーションにも影響を及ぼします。

本稿では、情報漏えい対応やその他不祥事対応における通知・公表後の、特にお客様や取引先などからのお問い合わせ対応について、その基本とポイントを解説いたします。もちろん、それぞれの事案ごとに異なる事情もありますため、方針そのものも各事案や相手に応じて決定する必要はありますが、ベーシックな考え方のご参考としていただけましたら幸いです。

情報漏えい対応やその他の企業不祥事対応そのものについては、それぞれに様々な手順がありますが、その全体像は、弊社の他のコラムをご参照ください。

本コラムでは、お客様やお取引先様からの問い合わせの一次対応の例として紹介しております。問い合わせてきた相手が一般のお客様なのか、関係の深いお取引先様なのか、委託元様なのかによって、どの範囲まで、どのタイミングで回答するかは変わりますため、原則的な考え方のご参考としていただけましたら幸いです。

【情報漏えいや企業不祥事対応・通知(公表)後の問い合わせ対応トークのポイント】

  1. 謝罪→回答→謝罪の形でお答えする
  2. 公表文や想定問答以上のことは回答しない(困ったら一旦確認)
  3. 回答期限など不確定な事項の話はしない(守れない約束をしない)
  4. 言い返さない・口論しない
  5. 「~できません」はなるべく避ける※上級者向け

1.謝罪→回答→謝罪 の形でお答えする

情報漏洩事案や企業不祥事事案を通知・公表した際には様々なお問い合わせが寄せられます。「なぜこのようなことが起こったのか」「うちに影響はあるのか」「今後も御社と取引をすすめていて大丈夫か」など、内容や温度感も様々です。そのような様々な質問に対応する際、回答の前にまず謝罪をし、回答後、最後も謝罪で締めくくると真摯な反省の気持ちを相手に伝えることができ、紛糾しにくい傾向にあります。

考え方
  • 何かに回答するとき、何かをお伝えするときは、まず冒頭で、お騒がせしていることについて謝罪し、内容・事実について簡潔に述べ、最後に謝罪で終わらせると、より丁寧です。
対応例 「この度はご迷惑をおかけしており、誠に申し訳ございません。~~~、~~でございます。今回、○○という事態が発生しましたことは事実でございます。今後も、事故防止対策を行い、再発防止につとめてまいります。改めまして、この度は御迷惑・ご不安をおかけいたしますこと、心よりお詫び申し上げます。」

2.公表文や想定問答(QA)以上のことは回答しない(困ったら一旦確認)

通常、情報漏えい事案や不祥事事案を通知・公表する前には、公表文書を準備し、想定問答(QA)を準備します。QAを事前に準備するのは、想定される質問への回答方針・回答内容について、自社として共通認識を持っておくためです。

ただ、どれだけ想定問答を事前に準備していても、通知や公表後は、予想もしていなかったような問い合わせや、公表文書や想定問答に書いていない内容に関する質問が寄せられることもあります。もしそのような質問や問い合わせが寄せられたとしても、焦らず、お答えできる範囲の方針や内容を回答しましょう。

考え方
  • 通常、事案の公表や通知に際しては公表文と、想定問答(QA)を準備します。
  • 公表文や想定問答(QA)に書いていないこと=会社として方針が統一されていないことであるため、無理に回答するのではなく、「わかり次第回答する」というスタンスに終始することが肝要です。
対応を誤ると… お客様から聞かれたから、何かをお伝えしなければ、と思い公表文やQAに書いていないことまで話してしまうと…

  • 結果的に会社の方針と異なり、混乱を招く
  • 回答した相手に対し回答修正の手間が発生する
  • 発言が二転三転することとなり、信用をさらにさらに失う

あるいは、「確認します」と回答してしまうと…

  • 「確認した結果を連絡してほしい」「いつわかるのか」等のさらなる質問が続いてしまい、対応に窮してしまう可能性がある
対応例 報告書や、QA以上のことを尋ねられたら…

「誠に申し訳ございません。現時点では、ただ今ご回答申し上げた以上のこと(公表に記載した以上のこと)は確認できておりません。新たな情報や進展がありましたら、改めて、公表等の形でご報告申し上げます。」と回答する。

3.回答期限など不確定な事項の話はしない(守れない約束をしない)

不正アクセスや不祥事事案において、事案が発生した直後の第一報として公表や通知を行い、その通知・公表文書に「詳細につきましては現在調査中」などを記載していた場合、「いつ詳細がわかるのですか」「次に報告してくるのはいつですか」などの質問を受けることも多くあります。

そこにおいても、無理やり「いついつまでに~できるかと…」などと回答することは避けましょう。詳細は調査中である、見通しが立たない、等の状況であれば、それをきちんと伝えることも必要です。

考え方
  • 危機対応案件は、様々な要因(新事実の発覚、新たな事故等)により状況が変化することが多々あります。先の見通しが立てにくく、見通しを立てても変わりやすいです。
  • ただ、誠実な方、お客様思いの方ほど、良かれと思って「いつまで何をします(することを目指します)」と回答しすぎてしまう傾向があります。
  • 相手にご迷惑をかけないためにも、公表文書以上の「いついつまでには●●できると思います」等は言わないことが得策です。
対応を誤ると… 良かれと思って、「●●までに●●できると思います」「●●までに●●します」等と伝えてしまうと…

  • 結果的に会社の方針と異なり、混乱を招く
  • 回答した相手に対し回答修正の手間が発生する
  • 発言が二転三転することとなり、相手からの信頼がさらに低下する
対応例 約束や期限を求められたら…

「この度はご迷惑をおかけしており申し訳ございません。できるだけ速やかに対応できるようにしてまいります。現時点では、調査中のため、見通しは立っておりません。新たな情報・進展につきましては、わかり次第、公表等を通じて皆様にお伝えいたします。現時点ではご期待にそったご案内ができず誠に申し訳ございません。」で通す

4.言い返さない・口論しない

情報漏えい対応や不祥事事案において通知や公表を行った後は、お客様やお取引先様から様々なご指摘をいただきます。中には、お怒りの声もあることでしょう。中には、少しずれた内容のものもあるかもしれません。しかし、そこで反論をしたり口論したりしてしまうことのメリットは少なく、情報漏えいや不祥事事案を起こしてしまった当事者として、極力、お客様の感情を逆なでしないような対応を心がけるべきです。

また、要望を受けた場合も同様で、「~してほしい」等の要望があった場合も、すぐにその場で回答をするのではなく一度持ち帰って、自社の方針としての回答を固めてから回答することが望ましいです。

考え方
  • お相手から様々なご指摘を受けた際に、いえいえ、それはこうではなくて…と修正したくなることもあるかと存じます。
  • しかし、情報漏えい事案や不祥事事案においては、自社側が「その事案を起こしてしまった企業」であり、お問い合わせを受けた時点で、自社が非常に弱い立場である状態からお話がスタートします。
  • 相手からの質問や要望についてその場で返答をすることがリスクになる可能性もあります。
対応を誤ると… 良かれと思って、色々な説明をしすぎてしまうと…

  • 自分にとっては事実を述べているだけだとしても、聞いている相手には、言い逃れや言い訳に聞こえてしまう可能性もあります。
対応例 委託元様からご要望を受けたら…

「承りました」「申し訳ございません。追って回答致します」等でこちらの意見を言わない。もし、社としての見解を聞かれた場合は、「現時点でお伝えできるのは、公表文(謝罪文)と先ほど回答させていただいた(想定問答の範囲内)事項のみでございます。」と対応する

余程の事実の誤りがあったとしたら…

「この度はご迷惑をおかけしており申し訳ございません。~~~です(簡潔に)。改めまして、誠に申し訳ございません。」のように「謝罪+事実+謝罪」で伝える

決めつけ等をしてくる場合は、「そのように捉えられても致し方ないとは思いますが、現時点で判明しているのは、~でございます(公表文、想定問答の範囲)」と、お客様の意見としてながしつつ、淡々と事実関係を伝える

5.「~できません」はなるべく避ける ※上級者向け

最後に、上級者向けのポイントですが、自社としてどうしても、「~できない」ことを回答せざるを得ないケースがございます。そうした場合に、真正面から「できません」「いたしかねます」と回答してしまえば、相手の神経を逆なでしてしまう可能性があります。そこで、上級編として、「~できません」という言い方を避ける方向で回答をすることも一つのポイントとしてご紹介します。

考え方
  • 危機発生時の対応としては、「~できません」という言葉よりも、「~してまいります」という言葉を使うと「対応してくれない」印象が軽減します。
  • 対応にあたり、断定をする表現を差し控えると先方に良い印象を与える事例も多くあります。
対応例 「いつになるかわかりません」の言い換え
(公表文に記載の時期)を目指してまいります

「お答えできません」の言い換え
窓口に確認いたします
(自分自身が「できない」と回答するのではなく、窓口へ回す)

明らかな不当要求の場合は、「お客様からぼご意見・ご要望として承りますが、当社として対応できるのは…でございます」と、意見で流しつつ、できることを明確に伝える形で、相手の不当要求を暗に否定・拒絶する

ここまで、情報漏えい事案やその他不祥事事案における、通知や公表後の問い合わせ対応トークのポイントを紹介いたしました。本コラムは、主にお客様やお取引先様からの問い合わせの一次対応に絞り、解説しています。全てのケースにあてはまるものではございませんが、前提として、相手に対して真摯な対応をする、という考え方に基づきます。

誠心誠意謝罪することや、決まっていないことを無理に回答しないことなどの基本的な考え方は、多くのケースで活用可能です。危機対応時の問い合わせ対応においても、基本となる考え方を踏まえたうえで、各場面に合った対応をすること、迷いが生じた場合にはその場で回答せず、社として検討したうえで、回答をすることが大切です。

不正アクセス等による個人情報漏えいや不祥事事案は、いつ発生するかわかりません。もし発生したときに、本コラムが問い合わせ対応時の考え方のご参考となりましたら幸いです。

Back to Top