暴排トピックス

これまでの延長線上ではない新たな対策が必要だ~令和7年の犯罪情勢を読み解く

2026.03.10
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首席研究員 芳賀 恒人

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複数名の中から特定の個人のデータを虫眼鏡でよく見ているイメージ

1.これまでの延長線上ではない新たな対策が必要だ~令和7年の犯罪情勢を読み解く

警察庁から「令和7年の犯罪情勢」が公表されています。刑法犯認知件数は前年比4.9%増の77万4142件で、4年連続で増加、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年を上回りました。特に匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)が関与する特殊詐欺とSNS型投資・ロマンス詐欺の増加が著しく、被害額は2024年の約1.6倍の計約3241億円と過去最悪を大幅に更新しました。警察庁の楠芳伸長官は「これまでの延長線ではない新たな対策が不可欠だ」と述べ、仮装身分捜査の積極的な実施や架空名義口座捜査の早期導入などを図るとしました。また、赤間二郎国家公安委員長も「厳しい状況で、国民の体感治安に悪影響を与えている」とした上で、「トクリュウの戦略的な取り締まりを進め、世界一安全な日本を実現したい」と決意を述べています。刑法犯認知件数は2002年をピークに減少が続いていましたが、2021年に底を打ち、増加に転じており、増加はコロナ対策の行動制限緩和も影響したとされてきたところ、コロナ前の件数を3.4%上回ったことで、治安の悪化基調が鮮明になった形です。この点については、警察庁が2025年10月に実施した治安に関するアンケートで、「日本の治安は良いと思う」旨の回答が2024年より3.9ポイント増の60.3%を占めた一方で、この10年間で治安が「悪くなったと思う」旨の回答が3.1ポイント増の79.7%に上り、過去最悪となったことも注目すべきポイント特徴的です。「悪くなったと思う」旨を回答した人がその要因として思い浮かべる犯罪では、72.0%が「オレオレ詐欺や投資詐欺、ロマンス詐欺などの詐欺」を挙げ、SNSの闇バイトなどでメンバーを集める「トクリュウ」による犯罪が目立っています。警察庁は「犯罪情勢は厳しい状況」と分析、2019年との比較では、詐欺などの知能犯、盗撮や不同意わいせつなどの風俗犯が2倍以上に増え、凶悪犯も約1.5倍になりました。窃盗は3.5%減とコロナ前の水準には達していないものの、2022年から4年連続で増加しています。2025年の特殊詐欺とSNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数は計4万2900件で、被害額と共に過去最多となり、トクリュウの資金獲得につながる犯罪の検挙数は2073人増の1万2178人となりました。逮捕者は詐欺や薬物の実行犯が大半で、警察当局が狙う組織の中核的人物はごく一部にとどまりました。

令和6年の犯罪情勢が公表された際、楠長官は「トクリュウの資金獲得活動の実態を解明し、関係機関と連携して違法なビジネスモデルの解体に取り組みたい」と述べていましたが、「違法なビジネスモデルの解体」には至っておらず、そのゴールさえ見通せていない状況が今なお続いています。また、暴排トピックス2025年3月号で筆者は、「国民の「体感治安」が悪化していることが統計上の数字からも読み取れるものとなっています」、「背景には犯罪組織が対話や金融サービスで進むデジタル化を悪用し個人の金融資産を狙っていることが挙げられ、薬物や人身売買など他の犯罪の資金源となる恐れがあり、国際的な捜査共助とSNS上の対策が重要になっています。こうした詐欺被害の深刻化に対し政府は2024年6月に総合対策をまとめ、広告管理の強化を柱とする措置をSNS事業者に要請しましたが、統計を見る限り、効果を挙げているとは認め難いものがあります。犯人が誘導元を詐欺広告からDMにシフトさせつつあり、犯罪収益のマネー・ローダリングにおいても暗号資産(仮想通貨)の悪用が進むなど、犯罪者の「匿名性」、犯罪自体の「匿名性」の度合いが高まっている傾向が顕著であり、当局には柔軟な対策が求められるともいえます。さらに、トクリュウはSNS上で闇バイトを募って実行犯を集め、「闇のエコシステム」を機能させています。警察は仮装身分捜査や「架空名義口座」など新たな手法を活用し、組織の解明と壊滅を図っていただきたいところです。一方、体感治安の悪化は「動機不明の事件」によっても増幅されます。「ローンオフェンダー」だけでなく、北九州や長野の事件は容疑者が逮捕されたものの、動機は不明なままであり、警察や検察は動機を解明して社会に共有し、再発防止に還元する必要があります。その積み重ねなければ、体感治安の好転には必要なものです。統計上の数字から見えてくるもの、統計上の数字には表れないものから見えてくるのは、最近の犯罪の有する、そこはかとない「不気味さ」です。トクリュウ対策、SNS対策、匿名化への対応、犯罪インフラ対策、そしてこれまでとは異次元の国内外の連携の強化、柔軟な対策の実行によって、これまで見えてこなかった犯罪の構図、犯罪の首謀者や実質的支配者という「悪意」を白日の下に晒すことが、「不気味さ」を払しょくし、「体感治安」の悪化を食い止めることにつながるのではないでしょうか」などと指摘しました。1年経っても、筆者が指摘したいことに大きな変化はありません。むしろ、筆者が危惧していた部分はさらに増強され(悪化し)、「これまでとは異次元の国内外の連携の強化、柔軟な対策の実行によって、これまで見えてこなかった犯罪の構図、犯罪の首謀者や実質的支配者という「悪意」を白日の下に晒すこと」の重要性がさらに増していることを痛感させられます。楠長官が述べている「これまでの延長線ではない新たな対策が不可欠だ」という指摘は、正にこうした文脈から捉えるべきであり、日本がこれまで踏み込んでこなかった新たな捜査手法を大胆に導入(仮装身分捜査や架空名義口座、司法取引や通信傍受、犯罪者側の端末に警察がウイルスを送り込んで情報を盗み出す「ポリスウエア」など)しつつ、「日本が世界中から狙われている」実態を直視し、市民や企業、国との間で「強い危機感」を持つべき状況にあるとの共通認識を持つ必要があります

トクリュウによる犯罪については、詐欺など資金の獲得を狙う犯罪では、2025年は1万2178人が摘発され、2024年から約2千人増えました。また、2025年に摘発が最も多かった容疑は犯罪収益移転防止法違反で、全体の4分の1を占めています。口座の売買などをする違法行為で、犯罪で奪った金を口座から口座へ移し、出どころをわかりづらくするマネー・ローンダリングが目的とみられます。さらに、増加が目立ったのは薬物事犯1887人(前年比970人増)や詐欺3075人(同420人増)で、強盗は2024年から44人減って304人となりました(2024年はトクリュウによる強盗が相次ぎ、警察は闇バイトの実行役らを相次いで逮捕し、一部の事件では指示役も逮捕しました)。ただ、闇バイトがきっかけで犯罪に関わるケースは後を絶たず、資金獲得を狙う犯罪では若い世代の関与が目立ち、4割は闇バイトがきっかけだったといいます。SNSで「高額報酬」などの文句につられている可能性があり、警察は闇バイトの応募者の保護にも取り組んでいます。指示役の摘発が一部にとどまるのも課題で、警察庁は2025年10月、トクリュウの中核的人物を選定する「匿流情報分析室」を設置、警視庁に全国の捜査員を集めた「匿流ターゲット取り締まりチーム」も発足し、指示役の捜査を進めています。

SNSをきっかけに犯罪被害に巻き込まれた18歳未満の子供は2025年に、2024年比80人増の1566人に上りました。このうち小学生は前年比2割増の167人で、過去最多となりました。子供を標的にした生成AIを悪用した性的偽画像の被害も深刻で、警察庁は注意を呼びかけています(なお、参考までに、小中高校生の3割が生成AIを日常的に利用していることが、こども家庭庁が実施したインターネット利用についての調査でわかりました。高校生の利用率は5割近くに達し、同庁は適切な利用を呼びかけています)。警察庁によれば、SNSを通じて被害に遭った18歳未満のうち、中学生は758人(前年比43人増)、高校生は579人(同3人減)で中高生が全体の8割超を占めました。小学生は前年から31人増え、2015年の35人から約5倍になっています。子供が相手と知り合ったSNSは、「インスタグラム」の456人が最多で、「X」は307人、「TikTok」は123人だったほか、オンラインゲームも81人に上りました。被害に遭った子供のうち、子供が最初にSNSに投稿していたのは7割超に上り、プロフィールや日常生活、友達募集などの書き込みから被害に巻き込まれている実態が浮かび上がりました。同庁が小学生167人の被害を分析した結果、年齢別では11歳が71人と最多で、12歳が57人、10歳が25人と続き、8~9歳も14人いました。罪種別では、「不同意わいせつ」や「児童ポルノ」の被害が多く、中高生に比べると、ティックトックや「LINE」のほか、仮想空間での交流アプリなど若年層に人気のツールで相手と接触しているケースが目立っています。

オンラインカジノで違法賭博に関与したとして、全国の警察が2025年に少年27人を摘発・補導したと発表しました。2024年の3人から急増しており、同庁は少年たちがスマホなどで安易に賭博に手に染めているとみて、警戒を強めています。27人は摘発が24人、補導が3人で、内訳は高校生が13人、中学生が8人、その他の少年が6人となりました。補導された中学生の中には、小学6年の頃からカジノ賭博を繰り返していた少年もいたといいます。同庁が2025年に公表したオンラインカジノの実態調査では、10代の経験者は全体(約337万人)の約5%にあたる約18万人と推計され、利用の理由は「暇つぶし」や「話題づくり」などで、安易に手を染めていることがわかります。また、他の犯罪につながる恐れもあります。警視庁が2025年、「ロマンス詐欺」の手口で男性から約288万円を詐取したとして詐欺容疑で摘発した男子高校生は、オンラインカジノの賭け金を稼ぐため女子大生になりすましたとされます。少年は脳の発達が未熟で、成人よりもギャンブル依存症に陥るリスクが高いとされ、警察庁はオンラインカジノの違法性や危険性の広報を強化しています。

警察庁は、2025年に大麻事件で摘発された20歳未満の少年は前年より245人(21.7%)増の1373人で、統計がある1990年以降で最多となったと発表しました。うち173人が、2024年施行の改正法で罰則対象になった大麻の「使用」で摘発されています。大麻事件での少年の摘発は増加傾向にあり、2016年の210人から、この10年で6.5倍になりました。SNS上では隠語で大麻の売買を持ちかける投稿があり、警察庁は「年齢が低いほど興味本位で安易に手を出す傾向がある」とみています。2025年の内訳は、有職少年が前年比55人増の624人、高校生が108人増の313人、無職少年が57人増の283人の順に多く、大学生は8人増の62人、中学生は2人増の28人でした。違反別では、使用のほかは、所持が97人増の1121人、譲渡・譲り受けが7人減の50人などでした。摘発された少年に警察庁が使用実態を調査したところ、初めて使用したきっかけは「誘われて」が64.3%に上り、「自分から求めて」が26.5%で続きました。大麻事件は近年、大学の運動部で相次いで発覚しており、2025年8月には、当時19歳の少年を含む国士舘大柔道部員2人が麻薬取締法違反の疑いで逮捕されています。

▼ 警察庁 令和7年の犯罪情勢
  • 刑法犯全体
    • 刑法犯認知件数の総数については、平成15年から令和3年まで一貫して減少してきたが、令和7年は77万4,142件3(前年比3万6,463件、4.9%増加)と、戦後最少となった令和3年から4年連続で前年を上回り、新型コロナウイルス感染症の感染拡大前である令和元年を上回った(令和元年比2万5,583件、3.4%増加)。また、人口千人当たりの刑法犯認知件数については6.3件(前年比0.3件増加)と、刑法犯認知件数の総数と同様に、戦後最少となった令和3年から4年連続で前年を上回った。
    • 刑法犯の検挙状況については、検挙件数は30万1,055件(前年比1万3,782件、4.8%増加)、検挙人員は20万663人(前年比8,837人、4.6%増加)であり、刑法犯の検挙率は38.9%(前年と同率)であった。
    • 刑法犯認知件数の包括罪種別の内訳について、増加数でみると、知能犯が7万7,473件(前年比1万5,487件、25.0%増加)、窃盗犯が51万3,931件(前年比1万2,424件、2.5%増加)と前年から大きく増加し、これらが刑法犯認知件数の総数の増加の76.5%を占めている。また、増加率でみると、最も顕著な知能犯に次いで、風俗犯が2万204件(前年比1,739件、9.4%増加)、粗暴犯が6万1,850件(前年比4,104件、7.1%増加)とそれぞれ大きく増加している
    • 窃盗犯については、自転車盗が17万2,654件(前年比1,366件、0.8%減少)と減少したものの、万引きが10万5,135件(前年比6,843件、7.0%増加)と増加し、総数の増加に大きな影響を与えている。
    • 知能犯については、全体の9割以上を占める詐欺(7万2,532件(前年比1万5,208件、26.5%増加))の増加が、総数の増加の主な要因となっている。
    • 風俗犯については、性的姿態撮影等処罰法8違反(9,962件(前年比1,526件、18.1%増加))が大きく増加し、総数の増加に大きな影響を与えている。
    • 粗暴犯については、暴行(3万1,137件(前年比1,887件、6.5%増加))及び傷害(2万3,460件(前年比1,168件、5.2%増加))が大きく増加した。
  • 窃盗犯全体
    • 前記のとおり、窃盗犯の認知件数は、平成15年から令和3年まで一貫して減少していたが、令和3年から4年連続で前年を上回り、令和7年には令和元年の水準にまで戻りつつある。刑法犯認知件数のうち、窃盗犯の認知件数は包括罪種別でみると最も大きな割合を占めており、その推移が、刑法犯全体の動向に大きな影響を与えているといえる。
    • また、窃盗犯の検挙状況について、検挙件数は17万3,507件15(前年比7,458件、4.5%増加)、検挙人員は9万2,589人(前年比4,287人、4.9%増加)、検挙率は33.8%(前年比0.7ポイント増加)であり、重要窃盗犯16の検挙率は49.9%(前年比5.8%減少)であった
    • 窃盗犯の手口別の認知件数をみると、令和7年は、侵入窃盗が4万7,233件(前年比4,197件、9.8%増加)、非侵入窃盗が27万3,106件(前年比6,376件、2.4%増加)、乗り物盗が19万3,592件(前年比1,851件、1.0%増加)となっており、非侵入窃盗が全体の53.1%を占めている。
    • 侵入窃盗は、令和4年まで減少した後、増減を繰り返しているが、非侵入窃盗及び乗り物盗は、いずれも刑法犯認知件数が戦後最少となった令和3年以降、増加傾向にある。
    • 非侵入窃盗のうち、万引きが最も大きい割合を占めており、令和7年の認知件数は10万5,135件(前年比6,843件、7.0%増加)と、全体の38.5%を占めている。
    • 万引きの発生場所別の認知件数をみると、令和7年は、商業施設が5万6,652件(前年比3,025件、5.6%増加)と全体の半数以上を占めるほか、コンビニエンスストアが2万2,929件(前年比2,926件、14.6%増加)、ドラッグストアが1万6,123件(前年比962件、6.3%増加)とそれぞれ増加した(図15)。また、被害品別の認知件数をみると、食料品類が被害品に含まれるものが5万3,186件(前年比5,915件、12.5%増加)と、大きく増加している。
    • また、万引きの検挙状況について、検挙件数は7万2,339件(前年比5,356件、8.0%増加)、検挙人員は5万5,192人(前年比3,604人、7.0%増加)、検挙率は68.8%(前年比0.7ポイント増加)であった。
    • 窃盗犯の認知件数を発生場所でみると、商業施設や一戸建住宅での発生が多いが、増加率では、空き家18が、統計をとり始めた令和2年以降5年連続で前年を上回って令和7年には1万3,971件となり、令和2年比で1万546件、307.9%増加と急増している。その内訳は、侵入窃盗が1万1,958件(前年比2,644件、28.4%増加)、敷地内等から窃取する非侵入窃盗が1,934件(前年比494件、34.3%増加)となっている
    • 空き家における窃盗犯の被害品別の認知件数でみると、侵入窃盗については、貴金属・宝石等が被害品に含まれるものが1,053件(前年比260件、32.8%増加)、家電製品類が被害品に含まれるものが391件(前年比61件、18.5%増加)、金属類が被害品に含まれるものが330件(前年比71件、27.4%増加)と大きく増加している。また、非侵入窃盗については、室外機が被害品に含まれるものが702件(前年比77件、12.3%増加)、その他の機械器具等が被害品に含まれるものが731件(前年比283件、63.2%増加)、金属類が被害品に含まれるものが227件(前年比83件、57.6%増加)と大きく増加している。
    • 室外機や金属類が被害品として増加している要因としては、銅等の金属価格の高騰により、その一部に銅等が使用されているこれら物品を金属くずとして売却するために窃取されているものと考えられる。
    • また、発生場所が空き家となる窃盗犯の検挙件数は5,723件(前年比1,035件、22.1%増加)、検挙率は41.0%(前年比2.4ポイント減少)となっている
    • 近年、組織的・広域的に金属盗や自動車盗、万引きが敢行され、盗品が海外へ不正に輸出されるなどの組織的窃盗・盗品流通事犯が発生しており、これらの犯罪収益が不法滞在外国人等による匿名・流動型犯罪グループの資金源になっているなど、治安上の大きな課題となっている。
    • なお、統計をとり始めた令和2年以降増加傾向であった金属盗19については、令和7年の認知件数は1万5,712件(前年比4,989件、24.1%減少)と減少した。
    • これは、太陽光発電施設からの金属ケーブル窃盗の被害が減少したことが大きな影響を与えたと考えられるが、引き続き、令和7年6月に公布された金属盗対策法20の確実な運用等により、金属盗の抑止及び検挙をより一層推進する必要がある。
  • 詐欺
    • 令和7年の財産犯の被害額については、約4,984億円22と前年比で23.9%増加し、過去最多となった令和6年の水準をさらに上回った。その内訳をみると、詐欺による被害額が約4,029億円と前年比で31.1%増加している。
    • 詐欺の認知件数について、令和7年は前年比で26.5%増加して7万2,532件となっており、詐欺における一被害当たりの被害額が高額化している実態が認められる。また、詐欺の犯行動機としては、「生活困窮」が占める割合が最も大きく38.4%(前年比1.5ポイント減少)であった。
    • 特殊詐欺の認知件数は2万7,758件23(前年比6,715件、31.9%増加)、被害額は約1,414億円(前年比約695億円、96.7%増加)と、いずれも前年比で増加し、過去最多となった。犯行手口別にみるとオレオレ詐欺の認知件数は1万4,393件(前年比7,641件、113.2%増加)、被害額は約1,121億円(前年比約663億円、144.5%増加)と大きく増加している。また、SNSを使用した非対面型の投資詐欺やロマンス詐欺(以下「SNS型投資・ロマンス詐欺」という。)の認知件数は1万5,142件(前年比4,905件、47.9%増加)、被害額は約1,827億円(前年比約555億円、43.6%増加)と、いずれも前年比で増加し、過去最多となるなど、特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺については、極めて深刻な情勢が継続している。
    • 特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺については、事件の背後にいる暴力団や匿名・流動型犯罪グループが、資金の供給、実行犯の周旋、犯行ツールの提供等を行い、犯行の分業化と匿名化を図った上で、組織的に敢行している実態にあるほか、東南アジア等の海外に架け場等の拠点が置かれ、指示役が国内の実行犯に犯行指示を出すなど海外から敢行されている実態がみられる
    • 令和7年における詐欺の検挙件数は1万7,448件(前年比1,273件、7.9%増加)、検挙人員は9,486人(前年比461人、5.1%増加)と、共に前年を上回った。
    • 特殊詐欺の検挙件数は6,590件(前年比14件、0.2%増加)、検挙人員は2,307人(前年比33人、1.5%増加)となったほか、SNS型投資・ロマンス詐欺の検挙件数は598件28(前年比336件、128.2%増加)、検挙人員は387人(前年比258人、200.0%増加)となった
  • 違法・有害情報
    • インターネット上には、児童ポルノ等の違法情報、犯罪を誘発するような重要犯罪密接関連情報や自殺誘引等情報(以下「違法・有害情報」という。)が存在する。特に、近年SNS上には、匿名・流動型犯罪グループ等による犯罪実行者募集情報が氾濫しており、応募者らにより実際に強盗や特殊詐欺等の犯罪が敢行されるなど、深刻な治安上の脅威となっている。
    • 警察庁では、インターネット利用者等から違法・有害情報に関する通報を受理し、警察への通報、サイト管理者等への削除依頼等を行うインターネット・ホットラインセンター(IHC)を事業委託するとともに、違法・有害情報を収集し、IHCに通報するサイバーパトロールセンター(CPC)を事業委託している。
    • IHCでは、犯罪実行者募集情報の実効的な削除のため、令和7年2月、重要犯罪密接関連情報としていた犯罪実行者募集情報を違法情報と位置付けるとともに、同年3月、体制を増強した。
    • また、同年6月に、ギャンブル等依存症対策基本法の一部を改正する法律が成立し、インターネットを利用して国内にある不特定の者に対し違法オンラインギャンブル等に誘導する情報を発信する行為等が禁止されたことから、同年9月の法施行に合わせてIHCの運用ガイドラインを改定し、これら情報を新たに違法情報として取扱範囲に追加した。
    • 令和7年におけるIHCの受理件数のうち、運用ガイドラインに基づいて63万3,036件を分析した結果、違法情報を10万5,553件、重要犯罪密接関連情報を1,538件、自殺誘引等情報を5,321件と判断した。
    • 令和7年中にIHCの運用ガイドラインに基づき犯罪実行者募集情報と判断された情報は1万4,241件となり、6,678件(削除依頼を行う前に削除されたものを除く。)についてサイト管理者等に削除依頼を行った結果、6,285件が削除に至った。
  • サイバー事案
    • ランサムウェアによるサイバー攻撃の被害は、依然として深刻な状況にある。令和7年9月、飲料メーカー大手のサーバがランサムウェアによる攻撃を受け、顧客や従業員等の個人情報約191万件について漏えいのおそれがあると発表した。また、同年10月にも通販大手のサーバがランサムウェアによる攻撃を受け、製品の受注・生産が停止したほか、顧客や社員等の個人情報が約74万件漏えいしたと発表した。令和7年中に警察庁に報告された企業・団体等におけるランサムウェアによる被害件数は、226件と、高水準で推移している。
    • フィッシングはインターネットバンキングに係る不正送金やクレジットカードの不正利用に使われているところ、令和7年におけるフィッシング報告件数は245万4,297件となり、前年比42.9%増加となった。
    • インターネットバンキングに係る不正送金事犯については、令和7年は発生件数が4,677件、被害額は約102.4億円となり、前年より増加(それぞれ前年比で7.0%、17.9%増加)した。特に被害額については過去最多となり、深刻な状況である。また、クレジットカードの不正利用事犯についても、被害額が高水準で推移している(令和7年9月末時点で約416.6億円、前年比6.1%増加)。
    • サイバー事案の検挙件数については、令和7年中は4,151件を検挙しており、前年比で15.0%の増加となった。その内訳を見ると、詐欺が572件と、大きく増加した(前年比70.2%増加)。
    • サイバー犯罪37の検挙件数については、令和7年中は1万4,934件を検挙しており、前年比で13.4%の増加となった。
    • また、令和7年における不正アクセス禁止法違反及びコンピューター・電磁的記録対象犯罪の検挙件数は、それぞれ432件、1,252件であった(それぞれ前年比23.3%減少、8.4%増加)。
    • なお、近年、SNS上での特定の個人に対する誹謗中傷も社会問題化しており、令和7年中は555件をインターネット上での名誉毀損罪及び侮辱罪で検挙している(前年比14.0%増加)。
  • 匿名・流動型犯罪グループによる多様な資金獲得活動
    • 近年、各種資金獲得活動により得た収益を吸い上げている中核部分は匿名化され、実行犯はSNS等でその都度募集され流動化しているなどの特徴を有する匿名・流動型犯罪グループが治安上の課題となっている。
    • 匿名・流動型犯罪グループは、警察による検挙を免れるため、国民生活を豊かにするために発展してきた通信サービスや金融サービスの匿名性を悪用しながら、特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺をはじめ、SNS等で募集された犯罪の実行者による組織的な強盗、悪質ホストクラブ事犯、組織的窃盗・盗品流通事犯、悪質リフォーム事犯のほか、インターネットバンキングに係る不正送金事犯等のサイバー事案に至るまで、近年、治安対策上の課題となっている多くの事犯に深く関与し、その収益を有力な資金源としている実態が見られる。
    • 令和7年の匿名・流動型犯罪グループによるものとみられる主な資金獲得犯罪の検挙人員は6,679人(前年比1,476人、28.4%増加)であり、詐欺が3,075人(前年比420人、15.8%増加)と46.0%を占めるほか、薬物事犯が1,887人(前年比970人、105.8%増加)、窃盗が1,020人(前年比29人、2.9%増加)、風営適正化法違反が393人(前年比101人、34.6%増加)、強盗が304人(前年比44人、12.6%減少)、となっている。
    • 主な資金獲得犯罪の検挙人員について、年齢層別にみると、20代前半が23.4%と最も多く、20代までの若年層が全体の約6割を占めている。
    • また、主な資金獲得犯罪の検挙人員のうち約3割の者は、SNSによる犯罪実行者募集情報が、犯行への応募・加担の経緯となっている。
    • さらに、主な資金獲得犯罪の検挙人員のうち、主犯・指示役の立場にあった者は約1割となっており、匿名・流動型犯罪グループ対策の撲滅を図るためには、主犯・指示役等のグループの中核的人物の実態解明・取締りを更に強化していく必要がある。
    • また、匿名・流動型犯罪グループは、獲得した犯罪収益について巧妙にマネー・ローダリングを行い、捜査機関等からの追及を回避しようとしている状況がうかがわれるところ、匿名・流動型犯罪グループから犯罪収益をはく奪し、その還流を防ぐため、警察においては、犯罪収益移転防止法に基づく疑わしい取引の届出に係る分析を含め、犯罪グループの資金の流れを徹底的に分析している。
    • 令和7年中、匿名・流動型犯罪グループによるものとみられる資金獲得犯罪のうち、組織的犯罪処罰法違反の検挙人員は674人(前年比294人、77.4%増加)であった。
    • 匿名・流動型犯罪グループは、獲得した犯罪収益の移転について、犯罪に利用する他人名義の金融機関の口座等を調達するいわゆる「道具屋」等から違法に入手した法人口座等を悪用しているほか、特に、国外への移転において、国内法人の商取引に係る資金決済を偽装するなどしている実態が明らかになっており、こうした違法なビジネスモデルについて、更なる実態解明を進めるとともに、関係省庁等とも緊密に連携し、その解体に向けた取組を強化していく必要がある。
  • ストーカー事案
    • ストーカー事案の相談等件数は2万2,881件(前年比16.9%増加)と、依然として高い水準で推移している。また、ストーカー事案の検挙件数についても、ストーカー規制法43違反の検挙が1,546件、刑法犯等の検挙が2,172件(それぞれ前年比15.3%増加、24.6%増加)と、ストーカー規制法の施行以降でそれぞれ最多となった。
  • 体感治安
    • 前項までに述べたような指標からは捉えられない国民の治安に関する認識を把握するため、令和7年10月、警察庁において「治安に関するアンケート調査」を実施したところ、日本の治安について「よいと思う」旨回答した方は、全体の60.3%を占めた。その一方で、ここ10年間での日本の治安に関し、「悪くなったと思う」旨回答した方は全体の79.7%を占めた
  • 犯罪情勢の総括
    • 平成15年から令和3年まで一貫して減少してきた刑法犯認知件数は、戦後最少となった令和3年から4年連続で前年を上回り、令和7年には、新型コロナウイルス感染症の感染拡大前である令和元年を上回った。詐欺の被害が深刻となっているほか、刑事法の整備等を背景として性犯罪に係る認知件数が増加した。刑法犯認知件数の総数に占める割合が大きい窃盗犯についても令和元年の水準に近づいている。
    • 詐欺については、特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数、被害額が共に過去最多となり、詐欺の被害額が4,000億円を上回るなど極めて深刻な情勢となっている。
    • サイバー事案については、インターネットバンキングに係る不正送金事犯の被害額が過去最多となったほか、ランサムウェアによるサイバー攻撃の被害が依然として深刻な状況にある。
    • また、匿名・流動型犯罪グループは、上記の特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺をはじめ、薬物事犯や組織的窃盗・盗品流通事犯といった多くの事案に関与し、その収益を有力な資金源としている実態が見られる。
    • さらに、人身安全関連事案については、ストーカー事案の相談等件数及び児童虐待又はその疑いがあるとして警察から児童相談所に通告した児童数が高水準で推移しているほか、配偶者からの暴力事案等の相談等件数は増加傾向が続いている。
    • 以上を踏まえれば、我が国の犯罪情勢は、厳しい状況にあると認められる。
  • 今後の取組
    • 国民の安全・安心を確保するため、警察としては、我が国の社会情勢等が大きく変化している中、直面する様々な課題に的確に対処するため、総合的な対策を、引き続き強力に推進する。特に、匿名・流動型犯罪グループが、その匿名性、流動性を利用して、特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺のほか、組織的な強盗、組織的窃盗・盗品流通事犯、悪質ホストクラブ事犯をはじめとする風俗関係事犯、オンライン上で行われる賭博事犯、悪質リフォーム事犯に加え、インターネットバンキングに係る不正送金事犯に至るまで、現下の治安上の課題となっている事犯に深く関与している実態を踏まえ、同グループの中核的人物の実態解明・検挙の更なる強化を図るため、令和7年10月、警察庁に設置した「匿名・流動型犯罪グループ情報分析室」において、情報の部門横断的な集約・分析を強化するとともに、警視庁に全国の捜査員を集めて新設した「匿流ターゲット取締りチーム」(T3)をはじめ、全国警察が一体となった戦略的・集中的な実態解明・取締りを推進し、違法なビジネスモデルの解体に取り組む。SNS等のインターネット上で犯罪実行者が募集された上で実行される犯罪については、「仮装身分捜査」も活用し、実行犯の身柄を早期に確保し、被害の未然防止を図るとともに、首謀者や指示役の検挙を推進する。
    • 詐欺については、特殊詐欺等の手口が一層複雑化・巧妙化する中、令和7年4月に犯罪対策閣僚会議において決定された「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」に掲げられた施策をはじめ、近年の被害の特徴や被害拡大の要因を踏まえた必要な取組を一層推進する。抑止面においては、詐欺被害の拡大に歯止めをかけるため、新たな手口に関する広報啓発を適時的確に推進することに加え、犯罪者グループが被害者に接触することを防ぐため、「みんなでとめよう!!国際電話詐欺♯みんとめ」のキャッチフレーズで行っている国際電話の利用休止の更なる呼び掛け、「警察庁推奨アプリ」の早期認定と利用促進を図るとともに、金融機関との一層の連携強化等の諸対策を強力に推進する。
    • また、検挙面においては、中核的人物の検挙に向けた捜査に加えて、被害を認知した段階での初動捜査を速やかに実施し、末端からの突き上げ捜査を徹底する必要があるところ、「特殊詐欺連合捜査班(TAIT46)」を有効活用し、被害認知時の初動捜査に万全を期する。さらに、警察官等をかたる特殊詐欺が海外拠点から実行され、被害額が著しく増加していることから、海外拠点の摘発につながる情報を収集・分析するとともに、関係機関や海外当局とのオペレーションレベルでの連携を強化し、海外拠点の摘発に取り組む。
    • 自転車盗等の街頭犯罪や万引きといった身近に存在する犯罪については、その抑止に向け、犯罪情勢を的確に分析した上で、街頭での警察活動等の警察が主体となった取組と、地域住民や自治体等の関係機関・団体等と連携した取組をより一層推進する。また、性犯罪に関しては、令和5年6月に公布された改正刑法及び性的姿態撮影等処罰法の内容、趣旨等を踏まえ、被害申告・相談しやすい環境の整備や、被害者の心情に配意した適切な捜査をより一層推進する。さらに、少年犯罪に関しては、街頭補導活動や学校での非行防止教室等の広報啓発活動、少年の立ち直り支援活動等を通じて、非行少年を生まない社会づくりのための取組を推進する。
    • サイバー空間をめぐる事案については、SNS等で実行犯を募集する手口による強盗等をはじめとした犯罪の実行者を募集する情報等がSNS上に氾濫していることを踏まえ、AI検索システムを活用したサイバーパトロールを行うなど、インターネット上の違法・有害情報の排除に向けた取組等を推進する。また、都道府県警察の捜査により得られた情報、暗号資産の追跡等の高度な専門的知識・技術に基づく支援により得られた情報等をサイバー特別捜査部にて集約し、俯瞰的・横断的な分析を行うなど、サイバー特別捜査部と都道府県警察とが一体となった捜査、実態解明等に向けた取り組みを推進するほか、国境を越えて敢行されるサイバー事案への対処のため、サイバー空間における脅威に関する情報の共有、国際捜査共助に関する連携強化、多国間における情報交換や協力関係の確立等についても推進する。加えて、脅威の深刻化に対応するための捜査・解析能力の高度化や事業者等と連携した被害防止対策を強力に推進する。
    • 人身安全関連事案については、被害が潜在化しやすく、事態が急展開するおそれが大きいという特徴を踏まえ、関係機関と緊密に連携しつつ、被害者等の安全の確保を最優先に、関係法令を駆使した加害者の検挙等による加害行為の防止や被害者等の保護措置等の取組を推進する。
    • これらの犯罪への対処を含め、その時々の情勢の変化に的確に対応するため、所属・部門を超えたリソースの重点化や能率的でメリハリのある組織運営を一層強力に推進することにより、警察機能を最大限に発揮し、国民の期待と信頼に応えていく

土地所有者を装い詐欺を働く「地面師」事件が大都市圏で再燃しています。従来の手口に加え、近年は秘匿性の高い通信アプリを操る指示役が背後で暗躍、大阪市内の一等地が狙われた事件では、偽装役を闇バイトで手配したとみられています。「まるでトクリュウだ」と警察当局は警戒を強めています。府警が被告のスマホを解析したところ、指示役とみられる人物と秘匿性の高い通信アプリで連絡を取り合っていた形跡があったといいます。指示役は逮捕・起訴されておらず、府警は捜査を続けています。大阪では近年、都心部の一等地が狙われる地面師事件が相次いでおり、2025年には市内の繁華街「ミナミ」の土地や建物を狙った事件で男女4人のグループが摘発されました。グループの中心人物で約14億円の詐欺罪などで起訴された被告は公判で、本名や顔も知らない上役がいることを明らかにしたほか、秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」で犯行の指示を受け、詐取金のうち「11億円超を(上役側に)渡した」と法廷で供述しています。この人物も摘発されていません。ある警察幹部は「最近は指示役が素性を明かさぬまま実行役を使い捨てにするトクリュウの特徴が合わさり、上位者の摘発が難しくなりつつある」と明かしています。SNS経由の闇バイトで、なりすまし役などを集めている実態も浮かんでいます。大阪駅近郊の土地が狙われた事件では、所有者を装う偽造免許証に60代男性の顔写真が使われましたが、男性は府警の任意聴取に「闇バイトに応募した」旨を供述、被告らのグループとSNSで接点を持ち、やり取りしていたといいます。SNSで犯罪の実行役などを募る手法は、近年治安上の脅威となっているトクリュウの典型的なやり口で、闇バイトは特殊詐欺や強盗、窃盗など幅広い犯罪で悪用されており、地面師も同様の可能性があります。

廣末登氏のJBPressの記事「「最後はヤクザで死にたい」暴排条例から15年、“組員”激減の裏で特殊詐欺が急増する“暴排の副作用”」は大変興味深いものでした。例えば、「「ワシだけちゃう思うけどな、いま、(暴対法、暴排条例で)ヤクザ厳しいねん。辞めるきっかけ(親分の代替わりや兄貴分のカタギ転向や離脱等)探している人多いと思うで。親分も代わったし、ワシ自身も、迷子になってるんちゃう? ……しゃかて、こん年のワシらが組やめて何ができる。たどり着くところは生保(生活保護)やろ、みじめや。この地元には13歳から住んどるんやで、離れたないしな。もう、この歳や、いまさら辞めても一般人が受け入れてくれるとは思われんな。みじめな終わり方するんなら、最後はヤクザで死にたいかな」…この現役幹部は、たとえ離脱しても、長年生活してきた地元の地域社会ですら、暴排の高まりから受け入れてもらえず、社会的な居場所が持てないのではという懸念を滲ませています」、「暴力団を辞めた者にとっても、「暴力団離脱後も5年間は暴力団員等とみなされ、各種契約が制約される」などという生きづらい社会が、現代社会なので」、「「暴力団排除条例による取締りに加えて、本改正法案が重罰をもって様々な社会生活場面からの暴力団及び暴力団員の事実上の排除を進めることは、かえってこれらの団体や者たちを追い込み、暴力犯罪をエスカレートさせかねないのではないか。暴力団を脱退した者が社会復帰して正常な市民生活を送ることができるよう受け皿を形成するため、相談や雇用対策等、きめ細やかな対策を講じるべきと考える」(第180回国会(常会)質問主意書第116号)として、暴力団離脱者の社会復帰における社会的「受け皿」の形成の必要性が言及されています。しかしながら、その社会的受け皿は、暴排条例施行後10年経った現在も、十分に形成されていないという現実があります。その上、ネット上のデジタルタトゥーにより、スティグマ(負の烙印)が付され、ますます社会復帰が困難になっています。下手をすると一度でも暴力団に加入したり、特殊詐欺に関与して名前が公表されてしまうと、未来永劫社会的に排除される可能性すら否めないのです。そうすると、離脱者には社会的居場所がありません。人間は社会的動物ですから、一人では生きられません。「居場所」や「受け皿」は、暴力団離脱者にだって不可欠なのです。さらに悪いことに、「かえってこれらの団体や者たちを追い込み、暴力犯罪をエスカレートさせかねないのではないか」という又市議員の指摘通り、組員を偽装離脱させて、あるいは非組員化することで、シノギを模索する暴力団のマフィア化や、暴力団を自らの意思で真正離脱したものの、社会復帰に失敗し、かつての犯罪スキルを応用する元暴アウトローの犯罪増加が懸念される事態が生じています。暴力団在籍時に覚えた手練手管を、暴力団離脱後も、匿名・流動型犯罪グループなどに所属し、様々な犯罪に応用されてしまうということです」、「暴力団構成員は減少傾向にあるものの、暴力団を離脱した者についても依然として犯罪性向が高い状況が見受けられることから、就労支援等の社会復帰対策を一層推進するなど、総合的な治安対策が必要であるといえる」と結論しています(警察庁組織犯罪対策部「平成28年における組織犯罪の情勢」)」などですが、筆者の指摘も引用されており、「いわば、「更生」=「暴力団からの離脱」という「形式」的なレベルにとどまり、本来の、事業者として関係をもつべきでない「反社会的勢力」という「実態」からみれば何の変化もないと言ってよく、「暴排は進展しても反社排除は進展していない」、あるいは、「離脱と更生の意味が大きく乖離している」とも言い換えることができるかと思います>(SPN JOURNAL「暴力団離脱者支援を巡る動向と今後の課題」2022年5月10日)。芳賀恒人氏が指摘する通り、昨今、社会の安全に対する脅威は急速に増しています。…暴排一辺倒では犯罪を減らせないことが様々な経験から、過去のデータから分かりました。そうであるなら、「離脱と更生の意味が大きく乖離している」現状を是正し、犯罪を減らすためには軌道修正する必要があるのではないでしょうか。それはたとえば、平成28年に警察庁が言及したように(警察庁組織犯罪対策部「平成28年における組織犯罪の情勢」)、真の安心・安全社会を目指すためには、ただ、反社や元反社の者を排除するだけではなく、「就労支援等の社会復帰対策を一層推進するなど、総合的な治安対策が必要である」という知見を、今こそ実践する必要があると考えます」と結ばれています。

同じく廣末登氏の文春オンラインの記事「「社会はそんなに甘くない」民間企業から就職を拒絶されただけじゃない…元ヤクザ幹部が身にしみた、暴力団離脱者を許さない「世間の厳しい目」」も、元工藤會幹部が銀行口座を開設できたことについて詳細にレポートされており、参考になります。一部抜粋すると、「2019年が終われば離脱から「おおむね5年」になるが、本当に制限がなくなるのか――「僕らはマイナスからのスタートになりますが、ずっとマイナスのままなんでしょうか。誰も見てくれないということだと、希望が持てないというのはあります」と、筆者に不安を語っていました。日々の商いに一生懸命なNさんを、筆者だけではなく町内の方々も応援していました。このままではいけないと考えた筆者も、Nさんが抱く不安を解消すべく、また、真正離脱した「元暴」の社会的制約を解除するために自分に可能な限りの行動をしました。当初は、筆者が、土砂降りの雨の中、暴追センターにNさんの口座開設をお願いしにいっても、そこの職員から相手にもされませんでした。警察関係者の中には、Nさんの偽装離脱を疑う声もありましたから、交渉は難航しました。やがてNさんの更生努力が認められ、日本で初めて満5年をまたずに「元暴」が外れました。筆者がNさんを伴って福岡県暴力追放運動推進センターを訪れ、そのセンターのトップである藪正孝専務理事と面会が実現してから約1年後、Nさんが東京三弁護士会主催のシンポジウムで「生きづらさ」を語ってから約半月後の出来事でした。この間、藪専務理事は幾度となく福岡県警に足を運び、担当者にお願いをし、協議を重ねたと聞いています。Nさんも、複数回、県警によばれて、最近の生活状況を尋ねられ、更生の意思確認をされたそうです。口座開設の際は、福岡県警の警察官2名が同行し、銀行の窓口に赴き、「口座を悪用しない」旨、誓約書を欠かされたとのことです。そして、ようやく真新しい銀行通帳がNさんの手に渡されました。警察の担当者も「これで、あなたの元暴の制約は取れた。もう、どこの銀行でも口座は開設できる」といったそうです。この快挙は、日本初といってもよいものであり、多方面から喜びの声が寄せられました。この出来事で、もうひとつ明らかになったことがあります。それは、「元暴5年条項」における5年カウントのスタート地点はどこなのかという問題です。これには諸説あり、民暴(民事介入暴力)専門の弁護士さんですら5年の起点を明確に指摘できる人がいませんでした。しかし、Nさんのケースでは、彼が警察署で調べを受けるために勾留されているときに、所属する組織の親分宛に「脱退届」を出した(警察官に渡した)時点で「離脱した」とみなされ、そこが起点になりました。この事例は、様々な点で暴力団離脱者の社会復帰において基準となると評価できます。「マイナスからのスタート」を誓い、うどん作りに命をかけたNさんの姿は、「まじめに、一生懸命生きていれば、誰かが見ていてくれる」という事実を証明しました。このたったひとつの口座開設という事実が、暴力団離脱者や離脱予備軍の方の胸の奥底に、かすかではありますが、希望の光を灯すことになったと確信します」という内容です。離脱と更生の意味の乖離のない状態、暴排かつ反社排除が実現した状態はこういった状態を指すといえますが、一方で、それが社会的に評価されるためには相応の高いハードルをクリアする必要があることをあらためて痛感させられます。

「ルフィ」などと名乗る指示役が起こしたとされる広域強盗事件で、強盗致死罪などに問われた藤田聖也被告の裁判員裁判の判決公判が東京地裁で開かれ、裁判長は「必要不可欠な役割を果たした」などとして、求刑通り無期懲役を言い渡しました。幹部4人の中で有罪となったのは2人目となります。弁護側は強盗事件への関与は「幇助にとどまる」と主張しており、実行役を確保したり指示を出したりしていた被告に「共同正犯」が成立するかが争点となっていました。裁判長は判決理由で、被告は実行役に対し積極的に暴行するよう指示しており、バールなどが凶器として使われる可能性を認識していたなどとして、「(被害者の死亡などの)重大な結果の発生に大きな影響を与えた」と認定、実行役を確保し、犯行時に的確な指示を出すなど重要な役回りをしており、「共同正犯が成立する」としました。また、被告は自らの手を汚さず強盗を実行させ、犯罪をエスカレートさせており、「厳しい非難が妥当」としました。一方で、量刑判断には、指示役の役割などを捜査機関に供述し、事件の実態解明に貢献したことを考慮したといいます。判決によれば、2023年1月、渡辺優樹被告らと共謀して東京都狛江市の住宅に侵入し、住人の女性=当時(90)=に暴行を加えて死亡させ、腕時計を奪ったなどとしています。本件については、産経新聞が「ルフィ幹部「無期」 非道の全貌明らかにせよ」と題した記事で評価しています。具体的には、「妥当な量刑判断である。比の入管施設からスマホの通信アプリで実行犯に強盗を指示し、金を運ばせた被告らの犯行は衝撃的で、社会不安を強めた。判決の「匿名性が徹底された、遠隔操作による組織的な広域連続強盗という新たな犯罪類型の先駆け」との事件評価は正鵠を射ている。模倣性も高く、厳罰で処すべきだ」、「判決は重要な指摘をした。「検挙されにくい海外から、自らの手を汚さず実行役に強盗させ、生身の人間である被害者に残忍な暴行を加えている現実感や抵抗感がないまま犯罪を継続していた。だからこそ人命を軽視し犯行をエスカレートさせていった」と現実感の乏しさが招く危険についてだ。闇バイト事件の源泉である特殊詐欺はそもそも「かけ子」「受け子」と役割が限定的なため犯罪の抵抗感が希薄だ。指示役も現場に絡まないため現実感が乏しい。これが匿名・流動型犯罪の特徴であり、犯行や加担者が減らない要因であろう。逆に現実感、抵抗感が伴えば加担者は減少する。対策のヒントになるのではないか」、「藤田被告より上位とされる2幹部の公判は始まっていない。比の上位組織とみられる「JPドラゴン」との関係や実態も判然としない。一方で特殊詐欺の被害は増え続ける。「ルフィ」グループの非道の実態を法廷で徹底的に明らかにし、社会に共有することで、犯行加担を食い止めなければいけない」との指摘は筆者としても完全に同意するものです。

広島県警は、2026年度の組織体制と警部以上の警察官、所属長級以上の一般職員計404人(うち退職者37人)の人事異動を発表、主な組織改編では、トクリュウへの対策や人身安全事案への対応を強化するため、新たな部署を設けて取り締まりを強化するとしています。トクリュウへの対策強化としては、組織犯罪対策1課に専門の係を新設する予定で、トクリュウや暴力団関係者が関係するトラブルが多発しているとして、歓楽街を抱える広島中央署と福山東署の一部部署で署員を増やすといいます。風俗営業などの許可を担う生活安全総務課の担当室の名称を「保安総合対策室」に改め、立ち入り検査を進め、違法行為には営業許可の取り消し処分をはじめとする対応を行い、資金源の断ち切りを図るとしています。

その他、最近の暴力団等反社会的勢力を巡る報道から、いくつか紹介します。

  • 神戸山口組の井上組長の自宅が競売にかけられました。買い手がつけば、組長は退去を迫られる可能性もあります。過去には六代目山口組の分裂を巡る抗争で、車が燃やされたり、銃弾が撃ち込まれたりする事件も起きました。売却基準価格は5199万円となっていますが、地元の不動産業者によれば、単純に土地と建物だけ見れば、価格は7000万円を超える可能性もあるといいます。神戸市内の不動産業者は「どうなんやろうね、みんな(組長の家と)知っているところ。買う人はおらへんやろうね、一般の人は」と話していますが、本件は、傘下の組員が起こした金銭トラブルで、暴力団対策法に基づく使用者責任を問う「組長訴訟」の結果、責任が認められ、大阪高裁が約2億7000万円の損害賠償を命じたものですが、賠償が行われなかったため、神戸地裁が強制競売の手続きを開始し、自宅を差し押さえました。神戸地裁が2026年2月24日、入札を公告、同3月24日に開札されます。落組長訴訟には被害者を適切に救済することや暴力団の資金を削る狙いもありますが、暴力団のトップの自宅が競売にかけられるのは極めて珍しい事態だといえます。
  • いわき信用組合が立ち入り検査に虚偽の説明をするなどし、東北財務局から「協同組合による金融事業に関する法律」違反の疑いで刑事告発された問題で、福島県警が同法違反容疑で、元役員ら複数の関係者を任意で事情聴取する方針を固めました。今後、具体的な日程を詰めるといいます。聴取対象は、告発された元役員らに加え、当時の状況を知る現経営陣も含まれるとみられます。いわき信組は旧経営陣が実体のない企業を通じた迂回融資や不正融資を行っていたと2024年11月に公表、東北財務局が報告徴求命令を出しました。その後の立ち入り検査で、特定の役員による不正融資への関与を隠匿したほか、社員が「破壊した」と説明していたパソコンを実際には役員に渡していたことが判明、事態を悪質と判断した東北財務局は2026年1月21日、同信組と元役員らを県警に刑事告発し、県警は告発状を受理していました。
  • 2013年12月に起きた「餃子の王将」社長射殺事件で、殺人罪と銃刀法違反に問われた工藤會傘下組織幹部の田中幸雄被告の公判が京都地裁で開かれ、事件で使われた可能性がある軽乗用車を特定した京都府警の捜査員が証人出廷、捜査員は、王将との間で不適切取引があった企業グループが拠点を置く福岡県全域と、現場となった京都府内の車両を調べた結果、被告が浮上したと証言しました。検察側によれば、事件では現場から走り去るバイクが確認され、約1.4キロ離れた場所で同型のバイクが、近くでも別のバイクが見つかりました。2台は盗難車両で、1台は京都市内の飲食店の駐車場で軽乗用車と一緒に現れた何者かが盗んでおり、防犯カメラにその様子が映っていたとされます。検察側証人の捜査員は、防犯カメラの映像から、軽乗用車の車種や型式、色を捜査したと説明、山科区をはじめとする事件に関連した京都府内の自治体と福岡県全域で、条件を満たす軽乗用車を調べた結果、3万9616台が該当、軽乗用車の特徴であるルーフレールやフロントガラスの色の情報を基にさらに絞り込み、最後は1台ずつじかに確認したところ、防犯カメラの映像に映った軽乗用車と酷似した1台が浮上したといいます。持ち主は被告の幼なじみで、バイクが盗まれた当時、被告はこの軽乗用車を借りていました。所有者の口座には被告名義の振り込みがあったことも明らかにされたほか、車の所有者である被告の知人の元交際相手も法廷外からビデオリンク方式で参加、元交際相手は知人が被告に車を貸して返却された後、知人と新品の雑巾で車内を清掃したことを振り返り、知人から「『警察が来ても何も知らないと答えればいい』といわれた」とも証言しています。捜査関係者によれば、幼なじみは福岡県在住とされ、福岡県全域を捜査対象とした理由について捜査員は「(王将と)トラブルがあった人物が密接に福岡県と関わりがあった」と説明しました。王将の第三者委員会は2016年、王将側が福岡県を拠点とする企業グループと不適切取引をした結果、約200億円が流出したと指摘しており、これらの事情を指しているとみられます。事件では被告が実行役であることを示す直接的証拠は見つかっておらず、弁護側は無罪を主張しています。
  • 高齢者に不動産を実際の価格の7倍と偽って売りつけ、現金をだまし取ったなどとして、警視庁暴力団対策課は詐欺の疑いで、住居不定の不動産会社(実体がない会社「寿不動産」)代表で住吉会傘下組織組員、東京都豊島区の会社役員ら9人を逮捕しました。容疑者らは高齢者を狙い、投資や相続税対策などの名目でマンションの部屋の購入を持ち掛け、少なくとも2022年6月~23年10月、1都3県の70~90代の男女39人から約7億5千万円を詐取した疑いがもたれています。仕入れ値は約1億3400万円だったとみられ、同課は詐取金の一部が暴力団に流れたとみて調べています。容疑者らは、数万件の高齢者のリストを基に電話をかけた上で、「新入社員の時に声をかけてもらってうれしかった。久しぶりに近くに来たので寄った」などと顔見知りを装って訪問、「終活を支援する」などと言って関係を深め、聞き出した資産状況に応じ、不正に販売額を釣り上げていたものです。販売した物件は築50年程度など、老朽化が進んでいるものがほとんどだったといい、主に独居者が狙われ、取引があった39人は事件当時70~94歳で、平均は84歳、既に8人が亡くなっており、認知症を患って判断能力が衰え、ほとんど言われるがままに契約を結んだケースもあったといいます。
  • 福井県敦賀市中心部にあった、元暴力団「正木組」の事務所を買い取り、治安向上に貢献したとして、福井県警が敦賀市に感謝状を贈っています。正木組は元々、六代目山口組の傘下組織で、六代目山口組が分裂した後には神戸山口組の傘下となりました。両組の抗争で、2016年2月、正木組事務所に銃弾が撃ち込まれる事件が発生、地裁が2017年10月、使用差し止めの仮処分を決定していました。その後は活動実態がないとして、県警は2022年、正木組を「消滅団体」に認定しましたが、市は「別の反社会的組織の拠点になることを未然に防ぐ」ため、2023年から元組長や関係者と買い取りに向けた交渉を開始、2025年12月に売買契約が成立しました(買い取り価格は約6800万円)。県警の増田美希子本部長が市役所を訪れ、米沢光治市長に「暴力のない安全で住みよいまちづくりに努められた」として感謝状を手渡しました。米沢市長は「反社会的組織が、再び敦賀に進出するのは絶対に許さないという意思表示だ」と述べました。消滅団体の事務所を自治体が購入するのは珍しいといい、市は今後、買い取った建物と敷地の活用法を検討していくとしています

暴力団等反社会的勢力とは異なりますが、ロシアが「闇バイト」と同じ構図でウクライナの若者を利用している実態が明らかになっています。ウクライナ侵略を続けるロシアは軍事面だけでなく、ウクライナ国内での工作活動を通じて社会に打撃を与えようとしており、ウクライナの若者たちを手先として利用、SNSで報酬をちらつかせて勧誘し、ロシアが求める情報を提供させて、犯罪に手を染めさせる、ロシア版「闇バイト」とも言える手口です。放火、爆破、スパイ活動など、ロシアがSNSなどで勧誘し、工作活動に関与したウクライナ人は、英BBCによると2025年までの2年間で800人以上に上り、うち240人が18歳未満でした。動機の大半は「小遣いほしさ」(司法当局者)で、ロシアは不安定な経済基盤や不安につけ込み、若者を標的にしている実態が明らかとなりました。工作活動に協力したとして、国家反逆罪で起訴された17歳の少年は2024年10月以降、SNSでウクライナ軍の位置情報を求められ、「渡河地点。700~800人の兵士がいる」などとうその位置情報だとばれないよう、橋の近くや廃屋がありそうな山奥などの地点を選び、信ぴょう性の高そうな情報も書き足し、現地の写真を送るよう指示された時には、ネットで検索した画像を送っていたといいます。2025年2月の早朝、ウクライナの情報機関「保安局」(SBU)がアパートに押しかけ家宅捜索を受け、携帯の履歴などから、その場で拘束されました。SBUや警察は、若者を守ろうと啓発活動に力を入れています。ネット情報に触れ続けている若者にはあえて、各校を回って対面での特別授業で「現実」を見せています。不穏なBGMに合わせて、編集された軍用車放火などの事件映像や、数千ドルを持ちかけるメッセージでの勧誘事例などの動画を再生、加害者になるだけでなく、爆発に巻き込まれたりして死亡した少年たちのケースも紹介、「死ぬか、一生のけがか、刑務所行きか―。関与した者を待ち受けるのは三つしかない」と強い口調で伝えています。授業を受けた女子生徒(16)は最近、「簡単な仕事で7000ドル」とのメッセージを受信したといい、「ロシアが私たちの人生を道具としてしか見ていない証拠。こんな策略に乗ってはいけない」と憤ったと記事は報じていましたが、ロシアの卑劣さには筆者も強い憤りを覚えます。

2.最近のトピックス

(1)AML/CFT/CPFを巡る動向

インターネット上で証券口座が乗っ取られて不正に株式が売買された事件で、不正アクセス禁止法違反と金融商品取引法(金商法)違反(相場操縦)に問われた貴金属輸出入会社「L&H」代表で中国籍の男の被告の初公判が東京地裁で始まっています。検察側は「前例のない相場操縦行為で市場の信頼を根幹から揺るがした」などとして懲役3年6月、罰金400万円、追徴金7807万円を求刑、弁護側は従属的な立場だったとして執行猶予付き判決を求め即日結審、判決は2026年3月23日に言い渡されます。被告は罪状認否で「間違いありません」と述べ、金商法違反に問われた法人としてのL&H社も起訴事実を認めています。報道によれば、被告は2025年3月、仲間と共謀し、入手した他人のIDとパスワードを使い、証券会社に開設された10口座に不正アクセスして乗っ取ったとされ、その上で、東証スタンダード上場の人材開発会社の株価を不正につり上げるため、乗っ取った10口座やL&H社の口座で、大量に売買の注文を出すなどし、株価を84円から110円まで上昇させ、計72万2900株を売り抜けたとされます。検察側は冒頭陳述で、被告は仲間から不正アクセスによる株価のつり上げを持ちかけられ、指示を受けて株式の売買を続けていたと主張、被告らが一連の取引で約850万円の利益を得ており、さらに取引後、犯行グループ内でやりとりしていた通信アプリの履歴を削除し、捜査当局の摘発を逃れる工作をしていたとも述べています。警視庁が証券取引等監視委員会などの協力を得て、売り抜けた口座を捜査する中で被告が浮上、乗っ取った口座を悪用した相場操縦のスキームを描いた指示役は別にいるとみられ、被告は実行役とみられています。何者かからSNSのチャットを通じて売買する銘柄や注文価格に関する指示を受けていたといい、事件直前には、L社の口座に別の法人などから計約5000万円の送金があったことも分かっており、この資金も不正売買の原資とした可能性があります。金商法は実態の伴わない売買や大量の注文によって意図的に株式や債券の価格を操る取引を「相場操縦罪」として禁じており、相場操縦が財産上の利益を得る目的だった場合、法定刑は10年以下の拘禁刑か3000万円以下の罰金、またはその両方と規定しています。金融庁によれば、証券口座が乗っ取られ株が不正に売買される被害は、各社が不正ログイン対策を強化したことで被害額は2025年4月(3046億円)をピークに減少していますが、根絶には至っていません。一連の事件では国内外で株取引などの実行役が摘発されましたが、犯罪組織の中枢は解明できていません。なお、香港警察は2025年6月、乗っ取り事件に関与したとみられる男女8人を逮捕しましたが、指示役である可能性は低いといいます。顧客のIDやパスワードを窃取する目的とみられるフィッシングサイトの内部からは、中国語のフォントが見つかっており、捜査幹部は「海外拠点の集団が国内の協力者を得て犯行に及んだ可能性がある」とみて、協力者を含めた指示系統の捜査を続けています。金融庁によれば、証券口座の乗っ取りによる不正取引は2025年1年間で9824件、売買額は約7400億円に上り、大半は被害が急増した2025年4、5月に集中、ただ不正取引は最近も続いており、2026年1月も100件以上ありました。

関連して、証券口座の乗っ取り事件に絡み、警視庁や大阪府警などの5都府県警は、日本や中国国籍の20~40代の男女5人を詐欺容疑などで摘発しました。5人は株の不正売買に使う証券・銀行口座を相場操縦グループに提供した疑いがあり、一部の容疑者はSNS上の「闇バイト」募集に応じていたといい、5人はおおむね犯行を認めているということです。事件では多くの証券・銀行口座が悪用されており、警察当局はこれまでに、証券各社や証券取引等監視委員会から相場操縦に使われた疑いのある数十件の証券口座に関して情報提供を受け、最終的に株式を売り抜け利益が入った口座に関する捜査から、国内の提供役が浮上したといいます。5人の逮捕・書類送検容疑は、2025年2~4月ごろに他人に譲渡する目的を隠して証券会社や銀行で口座を開設するなどした疑いで、SNS上で「即金」や「副業」とうたう投稿に応じて、口座を提供していた容疑者もいたといいます。5人は証券と銀行口座を合わせ計16の口座を開設し、1口座数万円ほどで第三者に提供していたとみられ、このうち警視庁が逮捕した無職の男が開設し、提供した4つの口座では計1億2600万円の売買利益が出ていたといいます

本人確認の不備に関する最近の事例を紹介します。

  • 他人の運転免許証を使ってインターネットバンキング(IB)の口座を不正に開いたとして、神奈川県警サイバー犯罪捜査課は、飲食店従業員の20代の容疑者を詐欺などの疑いで逮捕しました。容疑者は免許証に掲載された他人の顔写真に似せた偽画像を生成し、メガバンクの本人確認をすり抜けていたものです。金融機関はインターネットを介した口座開設の際、一般的に身分証明書の券面画像を送信させたうえ、本人の顔を、角度を変えながら撮影させるなどして照合し、本人確認していますが、券面の偽造はこれまでもあったものの、偽の顔写真を生成する技術の悪用が発覚するのは異例となります。容疑者のパソコンからは事件に使われたとみられるアプリが見つかっており、他人の顔写真を素材として、画像に首振りなどの動きをさせることのできるもので、生成AIが悪用された可能性があります。容疑者は2025年4月、不正に入手した他人名義の運転免許証とこのアプリを使い、メガバンクでネットバンキングの口座を開設、さらに口座情報を悪用してローン契約を申し込み、計80万円を借り入れだまし取るなどした疑いがもたれています。容疑者は事件を巡り、秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」で連絡を取っており、トクリュウの一員とみられ、事件で使った偽の顔画像を生成するアプリやパソコンはグループ側から提供を受けており、神奈川県警はこのグループが約300万円を不正に借り入れていたとみています。警察庁はなりすましを防ぐため、券面画像と顔写真による現行の本人確認方法を2027年4月に廃止し、原則マイナンバーカードのICチップを読み取る方式に一本化しますが、方式が改められるまでは、犯罪組織が今回と同様の口座開設を狙う恐れがあります。金融庁は2025年、制度変更を待たずにICチップ読み取り方式へ早期に移行するよう呼びかけており、金融機関側は対応を急いでいます。
  • 大阪・キタの不動産を巡る地面師事件で、ミナミ・道頓堀の不動産でも登記を不正に書き換え、所有権を無断で移転させたとして、大阪府警は、司法書士の男(詐欺未遂などの罪で起訴)を電磁的公正証書原本不実記録・同供用などの容疑で再逮捕し、新たに2人を逮捕しています。キタでは個人の土地が狙われましたが、今回は不動産会社の不動産でした。会社の代表は法人登記に記載する必要がありますが、法人登記も勝手に書き換え、代表を変更したというものです。3人は所有者になりすまし、第三者に売却しようとしていたとみられています。司法書士の男は共謀し、2024年11月、大阪市中央区道頓堀の不動産を所有する不動産会社について、法人登記で、株主総会の偽の議事録を大阪法務局に提出し、無職の男が代表に就任したとする虚偽登記を申請。翌12月には不動産登記で、同社がこの不動産を、自営業の男が代表を務めていた不動産業「スリーエース」に所有権を移転したとする虚偽登記を申請した疑いがもたれています。無職の男、自営業の男は、逮捕前の任意の調べに「闇バイトだった」という趣旨の説明をしているといいます。

最近のマネー・ローンダリングの事例をいくつか紹介します。

  • 詐欺で得た金を暗号資産に換えてマネー・ローダリングしたとして、大阪府警と京都府警の合同捜査本部は、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)の疑いで、3人の容疑者を逮捕しました。公式の取引所を通さずに違法に現金と暗号資産を換える業者などは「相対屋」と呼ばれていますが、容疑者は詐欺グループから依頼を受け、2024年2月~2025年12月ごろまでの間に計十数億円を暗号資産に換えたとみられています。大阪府警によれば、3人は換金する際、数%を報酬として受け取っていたとみられ、マネロンを依頼した詐欺グループなどの実態解明を進めています。同様の摘発としては、2026年1月、警視庁と愛知県警の合同捜査本部も、同法違反容疑で6人を逮捕、こちらは計28億5千万円相当の暗号資産をマネー・ローンダリングしたとみられています。相対屋については、SNS上には多数のアカウントが存在し、割安の手数料で換金できるとうたっていますが、こうした仲介業者は暴力団などの反社会的勢力とつながり、マネー・ローダリングに関与しているともいわれ、個人であっても相対屋を利用することで結果的に反社会的勢力に資金を提供することになりかねず、自覚がないまま犯罪に加担し、巻き込まれる危険があります。報道によれば、SNS上に乱立する相対屋のアカウントが、それぞれ勧誘の決まり文句にしているのが「税金対策」で、暗号資産への課税は見直しに向けた議論中であるところ、現状は高所得者ほど高い税率が適用される累進課税で、最大55%(住民税10%を含む)の税金がかかるため、相対屋は安価な手数料に加え、「取引記録が残らず高額納税を回避できる」として、正規の取引所をスルーした「相対取引」を持ち掛けているといいます。また、相場のレートより高額で取引する、とうたうケースもあるといいます。国に届け出をしていない無登録の個人・法人が、業として暗号資産を換金する行為は資金決済法に抵触します。不適切な税務処理が関係法令に触れるのは言うまでもなく、暴力団やトクリュウ、特殊詐欺グループといった反社会的勢力が相対屋を通じて、現金を暗号資産に交換することで、犯罪被害金などの追跡を困難にしているおそれがあり、警察当局も相対屋への警戒を強めています犯罪組織が暗号資産を持ち込み、現金に換えることもあり、個々の相対屋がどのような形でこれらの資産を運用しているのか、また組織的な背景は不明ですが、間に相対屋が絡むことで、資金の流れは一気に不透明になってしまうため、マネー・ローンダリングの手口の1つとなっています
  • 暗号資産を送金させる手口の特殊詐欺被害が急増、警察庁によれば、2025年の全国の認知件数は1千件を超え、前年から約10倍に増加、被害額も200億円近くに上っています。特殊詐欺の送金のやりとりが従来の手交や振り込み型から、一部で匿名性の高い仮想空間に移行しているとみられ、捜査当局はカネの流れの追跡に総力を挙げています。副業支援サイトへの応募に絡み、業者から「収益を得たら、(利用者と)連絡がとれなくなることがある。保証金を預けてほしい」「保証金は暗号資産に換えて、カギをかける必要がある」などといわれ、「保証会社」として紹介された消費者金融から50万円を借り、暗号資産に換えて送金、この業者は、副業支援名目で現金をだまし取る詐欺集団だったという事件が相次ぎ、警視庁特別捜査課は2026年2月、詐欺容疑で、この副業支援サイトを運営するなどしていたグループのメンバーら10人以上を逮捕、同様の手口で2024年6月以降、46都道府県の10~70代の男女450人以上から計7億円超を詐取していたとみて、全容解明を進めています。暗号資産で送金したケースを年代別でみると、50代以下の現役世代が過半数を占め、20代、30代もそれぞれ1割以上を占めるなど若年層への広がりも目立っており、警視庁が摘発した事件では、暗号資産を使ったことのない被害者に対し、SNSの画面共有機能などを用いて、暗号資産の口座開設の操作を教え、送金させたケースもあったといいます。現金と比べて取引の匿名性が高く、追跡が難しいとされる暗号資産。捜査当局が着目するのが、詐欺グループが詐取金を利用するために引き出す「現金化」のタイミングで、ある捜査幹部は「詐取金を暗号資産に換える以上、必ず、その先には現金化する人間がいる」と説明、摘発に力を入れているといいます。特捜課は2026年1月、特殊詐欺の詐取金や、闇バイト強盗に関与した「ルフィ」グループの被害金のマネー・ローンダリングに絡み、暗号資産を現金化していた「相対屋」の男を摘発、ただ、捜査幹部は「ほかにも複数の『相対屋グループ』が存在している」とみており、警戒を緩めていません。暗号資産は匿名性が高い一方、取引履歴がブロックチェーンと呼ばれる台帳に記録されるため、理論上、追跡は可能ですが、日本からの情報の照会が難しい海外の取引所を経由するケースなど追跡するに際し高いハードルもあります。暗号資産も悪用した犯罪収益の流れの解明は、暗躍するトクリュウの解体に欠かせない「至上命題」であり、警察当局は、警視庁を中心とした情報と捜査力の統合や、警察庁のサイバー特別捜査部などの解析技術の活用により、実態解明を急いでいます。
  • 海外のオンラインカジノサイトの送金機能を使って無登録で暗号資産を交換したなどとして、警視庁は、容疑者を資金決済法違反などの疑いで逮捕、このオンラインカジノサイトには、賭けた金額と同じ額の暗号資産を他の利用者のアカウントに送金できる機能があったといいます。報道によれば、容疑者はウソの個人情報でオンラインカジノサイトに登録した上で、国の登録を受けずに業として2024年1月、計3人から受け取った計3万8799円相当の電子マネーを暗号資産「ライトコイン」に交換した疑いがもたれています。容疑者のオンラインカジノサイトのアカウントには2023年9月~24年7月、何者かから3億2000万円分を超える暗号資産の入金があり、このうち一部は、クレジットカードの不正利用集団から送金されたものとみられる犯罪収益だった可能性があり、容疑者がマネー・ローダリングしていたとみられています。事件に関連して警視庁は2026年2月、アルバイトの容疑者も組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)の疑いで逮捕しています。ほかの人物と共謀し、窃取したノートパソコン1台の売却で得た犯罪収益の一部と知りながら2024年6月、現金15万円を大阪市内の駐車場の植木鉢の下に隠したというものですが、容疑者はSNSで「簡単なお仕事」「荷物を送るだけ」などとうたって闇バイトを集め、応募してきた人物に対して、他人名義のクレジットカードで電子機器や衣服を買わせていた可能性があるといい、不正購入した物品を売却して得るなどした犯罪収益について、容疑者らがマネー・ローンダリングしていた可能性もあるとみて警視庁が調べています。
  • 貴金属会社の偽の刻印を入れた金塊の売却益をマネー・ローダリングしたとして、警視庁特別捜査課は、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)の疑いで、東京都渋谷区の会社役員ら中国籍の男女3人を再逮捕しています。同課は容疑者らがこれまでに計約95億円を詐取し、大部分をマネー・ローンダリングしたとみています。3人の逮捕容疑は仲間と共謀して2025年3~4月、偽の刻印を入れた金塊を東京都千代田区の買い取り業者に売却して得た現金を含む計約7億2700万円を、暗号資産「ビットコイン」に交換し、海外の取引所に開設した他人名義の暗号資産口座に送金して犯罪収益を隠した疑いです。貿易会社役員が指示役で、会社役員が暗号資産口座を用意し、無職の被告が送金手続きを行っていたといい、金地金は密輸や特殊詐欺でだまし取られた金塊を加工したものとみられ、同庁が入手経路を調べています。関連して(マネー・ローンダリングかどうかは不明ですが)、香港税関当局は、日本行きの航空貨物に隠されていた金168キロと銀285キロを押収したと発表しています。総額2億3000万香港ドル(約46億円)相当で、貴金属類の押収額としては過去最大規模となります。金銀は箔状に加工され、大量の超音波眼鏡クリーナーや紫外線消毒器の底に詰められていたといいます。税関職員が、空港のX線検査で発見、機器は1個100香港ドル(約2000円)に満たないといい、税関当局者は「安い商品を送るのに高額な航空便を使うことを職員が不審に思ったことが摘発につながった」と説明、さすがの税関担当者のリスクセンスの高さと感心させられました。
  • 郵便局で不正に購入されたレターパックを買い取ったとして、福岡県警は、古物買い取り業者だった男2人を組織犯罪処罰法違反(犯罪収益収受)容疑で逮捕しています。2人は共謀し、詐欺罪などで起訴された被告らが不正に入手したクレジットカードで買ったレターパック1162枚(販売価格約50万円)について、犯罪収益と知りながら2025年2月、会社役員が店長だった早良区の店舗で約43万円で買い取った疑いがもたれています。報道によれば、局長と会社役員は知人で、同郵便局は2024年6月~25年3月にレターパックや切手など約6000万円相当を被告らに販売していた。県警は局長と当時の同郵便局課長代理が犯罪収益と認識して売った可能性があるとみています。事件を巡っては、福岡県警が2025年にレターパックを同店に転売していたトクリュウの男性4人を株式投資名目でクレジットカードなどをだまし取ったとして詐欺容疑で逮捕し、捜査を進めていました。トクリュウは、だまし取ったカードのショッピング枠を現金化するため、レターパックを大量購入して転売していたとみられています。その際、容疑者らは、トクリュウからカード枚数や限度額を聞いて、購入可能な枚数分のレターパックを準備するよう郵便局の男性局長らに連絡、それを受け、主にトクリュウ側の特定の2人が郵便局に行き、詐取したカードで何度も購入を繰り返していたといいます。福岡県警はこうした経緯から、容疑者や男性局長らが他人名義のカードと認識しながら販売や買い取りを繰り返していたとみて捜査を進めています。
  • 不動産の取引を装って詐欺事件の被害金をマネー・ローダリングしたなどとして、警視庁特別捜査課は、容疑者を詐欺と組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)容疑で逮捕、詐欺事件の被害金が振り込まれる複数口座を管理していたとみられています。警視庁によれば、日本で不動産を買いたい中国人富裕層の支払いを代行して中国元を受け取る(円元交換)マネロングループがあり、容疑者は日本国内の口座の「管理役」として詐欺事件で得た金のマネー・ローンダリングに携わっていたといいます。逮捕容疑は、警察官を装って2023年9~11月、神奈川県綾瀬市の70代男性から6500万円を詐取、そのうち500万円を正規の取引とみせかけて不動産業者の口座に入れて隠したというものです。資金移動は短時間で行われ、男性が金を振り込んだ5分後、その一部が業者へ送られていたといい、直後に容疑者が別のマネロン役に「送金した」と送ったメッセージが確認されたといいます。一連の事件はカンボジアを拠点とする特殊詐欺グループが主導し、トップの中国籍男性らが組織犯罪処罰法違反容疑などで逮捕、起訴されています。
  • 婚活アプリで女性を装って男性から現金をだまし取ったとして、警視庁特別捜査課は、詐欺容疑などで、ベトナム国籍の容疑者を逮捕しています。容疑者の自宅からは、キャッシュカード約200枚が見つかっており、同課は、同容疑者が複数の詐欺グループのマネー・ローダリングされた詐取金を引き出す口座を管理していたとみており、被害者は15都府県の計28人、被害額は計約2億4000万円に上るといいます。逮捕容疑は2025年12月~2026年1月ごろ、氏名不詳者と共謀し、婚活アプリで女性を装って宮城県の50代男性に「ショッピングサイトの運営資金を提供してほしい」などとうそを言い、銀行口座に振り込ませた約800万円のうち約100万円を足立区内のATMから引き出した疑いがもたれています。

金融機関と金融庁の間の意見交換会における主な論点について、直近の資料が公開されています。主要行等との会合で示された論点から一部紹介します。

▼ 金融庁 業界団体との意見交換会において金融庁が提起した主な論点
▼ 主要行等(令和8年1月27日)
  • 2025年10月24日付け金融活動作業部会(FATF)声明に係る要請について
    • 2025年10月22日から24日の間に開催されたFATF全体会合において、資金洗浄・テロ資金供与対策上、重大な欠陥を有する国・地域に係る声明が採択された。
    • 同声明においては、北朝鮮及びイランを対抗措置の適用が要請される国・地域とし、ミャンマーを同国より生ずるリスクに見合った厳格な顧客管理措置の適用が要請される国・地域としている。また、イランについては、今回から以下の対抗措置が追加された。
      • イランに拠点を置く金融機関の支店等の設置拒否
      • イランにおける金融機関の支店等の設置禁止
    • これを受け、2025年12月1日、関係する金融機関・協会に対し、金融庁を含む関係省庁から、要請文(「令和7年10月24日付けFATF声明を踏まえた犯罪による収益の移転防止に関する法律の適正な履行等について」)を発出した
    • 同要請文では、犯罪による収益の移転防止に関する法律に基づく取引時確認義務、疑わしい取引の届出義務及び外国為替取引に係る通知義務の履行の徹底等を求めているところ、傘下金融機関への周知・徹底をお願いしたい
  • 官民一体・業界横断的な金融犯罪対策に係る取組等について
    • 特殊詐欺や投資・ロマンス詐欺など金融サービスを不正に利用した犯罪被害が引き続き高止まりする中、2025年11月には銀行を騙るボイスフィッシングが増加するなど、金融サービスに関わる不正の手口は枚挙に暇がない。金融機関の利用者、すなわち国民を詐欺被害から守り、闇社会にカネを流さないことで金融システムへの信頼を守るためには、新たな不正の手口に対し、官民が連携し、スピード感をもって対処していくことが重要であることから、各金融機関においては、2026年も当局や業界団体との連携を密にお願いしたい。
    • 金融庁は、これまで警察庁との連名で、2024年8月と2025年9月の2回にわたり、業界団体等を通じて、預貯金口座の不正利用対策の強化に係る要請を行い、各金融機関においては、詐欺等の被害金の移転に使われている口座について、取引モニタリング等を通じて検知するなどの対策強化を進めていただいているものと承知している。
    • 一方で、特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺など、金融サービスを不正に利用した犯罪においては、犯罪収益の送金先として不正に売買・貸出された口座が悪用されているという特徴がある。
    • 詐欺被害の根絶に向けては、口座の売買・譲渡等が犯罪であることに加え、口座の売却等に対して金融業界として厳格に対応する方針について、国民の認知を高め、口座売買の抑止につなげることが、預貯金口座の不正利用の抑止、ひいては国全体の安心・安全を守ることに繋がるため、官民一体となって戦略的かつ強力な広報を行うことが必要となる。
    • このため、2025年12月より、全銀協を中心として、金融庁や警察庁、各業界団体が連携し、統一的なコンテンツとしてショート動画を作成し、デジタル媒体を中心に、当該コンテンツを用いた業界横断的な広報を展開している。
    • 金融庁も、各チャネルを活用しながら当該コンテンツを発信していく予定であり、各業界団体、金融機関においても、ショート動画の活用などを通じて、一人でも多くの利用者の目に留まるように様々な場所・場面において当該メッセージを積極的に発信いただきたい。
    • また、令和7年度補正予算において、「預貯金口座不正利用対策高度化推進事業費補助金」が措置された。本事業は、2025年4月22日に決定された「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」に「預金取扱金融機関間において不正利用口座に係る情報を共有しつつ、速やかに口座凍結を行うことが可能となる枠組みの創設について検討する」旨が定められており、政府としても、国民を詐欺等の被害から守るための環境整備に資する取組を支援するものであり、こうした事業等も活用しながら、官民一体となって一層の対策を講じてまいりたい。
▼ 全国信用金庫協会(令和8年1月29日)
  • 多国間制裁監視チームによる報告書公表について(北朝鮮関連)
    • 2025年10月、多国間制裁監視チーム(MultilateralSanctionsMonitoringTeam、MSMT)は、「北朝鮮によるサイバー及びIT労働者の活動」をテーマに、第2回目の報告書を公表した。
    • 報告書には、暗号資産窃取及びその資金洗浄や利用、IT労働者による外貨獲得並びに情報窃取を含む北朝鮮によるサイバー活動に係る具体的な情報が記載されている。
      • 報告書の対象期間(2024年1月~2025年9月)に、北朝鮮は少なくとも28億米ドル相当の暗号資産を窃取した。
      • 中国、ロシア、アルゼンチン、カンボジア、ベトナム、UAEを含む外国拠点の仲介者等に依存し、窃取した暗号資産を法定通貨に洗浄した。
      • 軍事装備品等の販売・移転を含む調達取引にステーブルコインを使用した。
    • 各金融機関においては、本報告書も参考に、引き続きサイバーセキュリティ対策、マネー・ローダリング対策の強化に取り組んでいただきたい。
    • (参考1)多国間制裁監視チーム(MultilateralSanctionsMonitoringTeam、MSMT)
      • 2024年4月に安保理北朝鮮制裁委員会専門家パネルの活動が終了したことを受け、同年10月、日本を含む同志国は多国間制裁監視チーム(MSMT)を設立。参加国は、日本、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ニュージーランド、韓国、英国及び米国の11か国。
    • (参考2)▼ 外務省報道発表「多国間制裁監視チーム(MSMT)第2回報告書の公表」
    • (参考3)報告書には、北朝鮮関係者がDMM Bitcoinから約308百万ドル相当の暗号資産を窃取した事案についても記載されている

(2)特殊詐欺を巡る動向

特殊詐欺とSNS型投資・ロマンス詐欺の2025(令和7)年の被害額が過去最悪の3241億円となりました。前年から1.6倍も増加しており、被害総件数も4万2900件(前年比37%増)で、特殊詐欺2万7758件(31%増)、SNS型投資・ロマンス詐欺1万5142件(47%増)となりました。被害額の急伸要因は特殊詐欺で、約1414億円と前年からほぼ倍増の結果となりました。「もはや地下経済という被害規模ではない。打てる手は全て打たねばいけない状況」(産経新聞)という指摘が誇張ではない酷い状況にあるとの危機感を持つ必要があります押し上げたのは警察官を騙るニセ警察詐欺で、特殊詐欺の被害額の約7割を占めました(被害額は985億円)。コロナ禍以降の非対面での消費行動への変化、スマホの普及、SNSやインターネットバンキング(IB)、暗号資産、生成AIなどが悪用され、被害が高額化した要因もあります。高齢の世代になると暗号資産を送ってしまう被害が多く、扱いになれていなくても指示に沿って送ってしまうといいます。被害者の中にはやりとりで詐欺を疑った人も少なくありませんが、「逮捕される」との言動に恐怖を抱き、捜査協力の意図でお金を振り込むなどしました。なお、増加が目立った手口が、振り込みではなく金地金を購入させてだまし取るというもので、この手口では36都道府県で計157件、総額53億円の被害があり、1件あたりの被害額は3388万円と高額で、2025年8~10月には、仙台市青葉区の70代女性が現金約1億1200万円と金地金約5.6キロ(時価約9800万円相当)をだまし取られた事件も発生しました。また、AIがやりとりの文面を作成したり、自然な日本語に翻訳したりできるほか、顔や声を変えることも可能となっており、2025年8月に特殊詐欺の拠点として摘発されたマレーシアの建物では、日本の警察の制服やパソコンが見つかり、パソコンには、ビデオ通話で被害者側に映る姿を日本の警察官のように加工するシステムが入っていたといいます。拠点から日本国内をターゲットに、AIを使って姿を変えてニセ警察詐欺を行っていた可能性があり。警察庁は「AIで詐欺の国際化が進んでいる」と指摘しています。これらはすべて人の弱みに付け込んだ犯罪であり、これ以上の被害を許してはなりません。また、著名人になりすますなどして投資を誘う「SNS型投資詐欺」の被害は9538件で1274億円(前年比46%増)、1件あたりの被害額が1342万円で、40代以下が被害の3分の1を占めました。被害の入り口はインスタグラムが最多、次いでユーチューブが多く、2024年から21倍に増えました。実在の投資家をかたった広告からLINEに誘導されるケースが目立っています。さらに、恋心を抱かせて金銭をだまし取る「ロマンス詐欺」の被害は5604件で552億円(同38%増)となり、1件あたりの被害額は987万円で、年代別でみると40~60代が被害者の76%を占めています。マッチングアプリから被害に遭うケースが3割超、インスタグラムが2割超となりました。一方、犯人グループは監視が緩い東南アジアに拠点を転々と築き、「高収入」と言って「闇バイト」で騙した日本人をかけ子などにして詐欺を繰り返しており、日本国内で検挙できる対象でさえなりつつあります。海外に組織がある以上、日本警察だけで事態を改善するのは難しく、国際協力が重要となります。2025年はタイ、カンボジア、マレーシアなど4カ国で拠点を摘発し54人を逮捕しました(逆に、国内での拠点の摘発は減っており、詐欺グループの拠点の摘発は2025年は11カ所で、2024年より18カ所少なく、拠点が国内から海外に移っており、国内の拠点は以前より小ぶりになっているとの指摘もあります)が、現地警察の協力が不可欠であり、2024年のミャンマー詐欺集団のように、国際的な圧力が摘発を実現した例もあります。このように日本の警察は東南アジア諸国や中国と協力関係を深化させる必要がありますが、リアルだけでなくサイバー空間における協力も不可欠です。そもそも犯罪に国境はなく、犯罪収益はいとも簡単に国境をまたいで移転し、リアルとサイバー空間の間をも容易に移転している実態があります。こうした犯罪収益を追跡し、引き出しを封じられる態勢も国際的に構築する必要があります。さらに、AIの深化で詐欺の一層の巧妙化も予測されるところであり、「AIにはAIで」(産経新聞)の対抗が必要であり、詐欺を見抜き被害を防ぐ「ホワイトAI」の開発と普及を急ぎたいところです。一方、海外では組織解明捜査のため合法ウイルスの使用を警察に認めており、「仮装身分捜査」や「架空名義口座」、「司法取引」などとあわせ、日本での導入も検討すべき状況になっていると思います。「やれることは全てやる。詐欺被害はそこまで深刻だ」(産経新聞)との指摘は正に正鵠を射るものと言えます。

警察庁では、特殊詐欺の電話を受けないことが重要だとして、被害が目立つ国際電話番号からの電話を遮断する機能を備えるアプリの推奨制度を始めています。また、認定・推奨制度の開始に先駆けて、警視庁は従前から配信していた防犯アプリ「デジポリス」に、2025年12月から国際電話のブロック機能を搭載、国際電話だけでなく、詐欺への悪用が確認された番号からの着信も拒否できる機能を追加、警視庁によれば、アプリのダウンロード数は約150万件超にのぼり、ブロック機能の搭載後、およそ2カ月半の間に詐欺の疑いがある国際電話などを遮断した数は推計値で20万件以上になるとみられ、被害防止への効果が期待されています。こうしたアプリの活用について、警察庁の担当者は「国民が犯罪グループとの『接点』を持たないようにさせるための対策を実践していきたい」としています。また、IBでの振り込み限度額を引き下げるなどの取り組みも進めるといいます。警察庁の楠芳伸長官は「極めて危機的な状況で、国民の体感治安を悪化させる大きな要因の一つとなっている」と指摘、詐欺に関与するトクリュウの取り締まりや被害防止の対策を強化するとしています。また、被害が増え続ける背景には海外組織の増大があり、特に東南アジアの国境付近が詐欺ビジネスの一大拠点となっていることは本コラムでも取り上げてきたとおりです。米シンクタンクの米国平和研究所による2024年の報告書によると、カンボジア・ミャンマー・ラオスを通るメコン川周辺地域には詐欺に関わる労働者が約30万人いるとみられ、犯罪組織は年間390億ドル(約6兆円)を得たと推定されています。3国の国境付近はかねて、違法カジノを運営する組織が活動していましたが、近年になって手法を詐欺に変えたとみられ、電話やSNSでだます実行役らを日本などから集めています。国境付近は中央政府の統治が十分に及ばず、警察庁幹部は「法執行機関の監視が届きにくい『空白地帯』だ」と指摘しています。米国平和研究所はこの地域について「現代最強の犯罪ネットワークへと進化しつつあり、世界の安全保障を脅かしている」と警告しています。犯罪組織は日本を含む先進国を標的としており、米国では2024年の投資詐欺被害が57億ドル(約8800億円)に上り、英国も同年に11億7000万ポンド(約2400億円)の金融詐欺被害があり、台湾や韓国も脅威にさらされています。被害を抑止するには拠点の摘発が欠かせませんが、日本の警察は、特殊詐欺は2000年ごろに日本で出始めた「オレオレ詐欺」を源流に様々な手口に変化、だます役や現金の回収役など役割を分ける組織的詐欺の被害は、まず日本を含む東アジアで顕在化したこともあり、国内の容疑者への捜査でノウハウを蓄積してきており、国際的な捜査の先導役を担える立場にあります。警察庁は2025年、幹部をタイやカンボジアなど4カ国に派遣して現地の警察幹部と対応を協議、同12月には東京で東南アジアを含む14カ国が参加する詐欺対策会議を開き、最新の手口などを巡る情報を共有しました。成果も出始めており、2025年にはマレーシア・日本・台湾の捜査当局による共同捜査で、クアラルンプールの拠点で活動していた詐欺グループ10人を逮捕しました。

警察庁はこれまでの捜査や関係国からの情報をもとに、国内のトクリュウおよび海外に拠点を置いて詐欺を繰り返す「海外トクリュウ」が海外の犯罪組織とつながり、東南アジアに大規模な拠点を設けていると見ています。現地でスマホなど、ツールの調達や住宅の契約に関わる人物などから、中国や台湾に関係する犯罪組織の存在もうかがえるといいます。犯罪グループは治安当局の警戒が比較的緩い東南アジアに拠点を構えるようになっており、米英や韓国、シンガポールなどを標的に詐欺を繰り返し、日本向けには日本人のかけ子を調達しているとされますが、AIなど最新の技術を悪用し、手口を巧妙化させており、警察幹部は「AIの精度が上がれば、日本人のかけ子も不要になるかもしれない。日本語の『壁』がなくなれば、被害がもっと増えかねない」と警戒しています。日本国内のトクリュウが中国系の犯罪組織と連携している可能性もありますが、今のところ実態はよく分かっていない状況です。一方、国内で摘発される外国人は増えており、2025年、特殊詐欺に関わったとして検挙された外国人は前年の1.8倍の236人で、2024年まで5%前後で推移していた検挙人員全体に占める割合は10.2%に伸びています。国籍別では、中国、ベトナム、マレーシアの順に多く、役割では、被害金を受け取る「受け子」が6割近くに上り、現金を引き出す「出し子」、現金の回収・運搬役と続き、短期滞在の資格で入国した外国人が2025年は顕著に増えたといい、警察庁は犯罪組織が日本に実行役を送り込み、犯行のあとすぐに出国させている構図があると見ています

本コラムでも継続的に取り上げてきましたが、警察は詐欺被害を金融機関やコンビニでの声かけで防いできました。しかしIBといった非対面での送金方法が増え、従来の発想では追いつかなくなっていることから、警察庁幹部は「トクリュウは便利なツールを使って犯罪に活用する。国境を超えて匿名化する犯罪のパラダイムシフトに対抗するため、新たな対策に取り組む」と話しています。海外トクリュウは、自動化ツールも悪用、機械による自動音声(オートコール)で無作為に電話をかける手口もみられるといい、住所や財産情報を聞き出す「予兆電話」が2025年に前年から7割増の33万5829件と急増したのは、自動化が理由とみられています。また、2025年は特殊詐欺に使われた電話番号の4分の3が国際電話で、2024年後半から増加し、2025年は前年の2倍近くに増えました。こうした状況に対し、警察庁は、金融庁、金融機関などと作る「金融犯罪対策センター(仮称)」を2026年内にも新設し、詐欺に悪用された口座情報を他の金融機関に共有し、振り込みや出金を停止、警察は被害届を受けたら、迅速に口座情報をセンター経由で金融機関に提供するといいます。トクリュウの「ビジネスモデルの解体」(警察幹部)には首謀者の摘発が欠かせず、海外の警察当局との連携強化を図っており、警視庁に2025年に設置された匿流対策の専従班「匿流ターゲット取り締まりチーム(T3)」の捜査員を国別に割り振り、海外拠点が摘発された時には現地に派遣、また、トクリュウは秘匿性の高い通信アプリを使っていて首謀者が特定されにくく、摘発を阻む大きな要因となっています。海外では、通信内容や登録者情報を把握するため、警察が犯罪者側が使う端末の中に、捜査用の合法的なウイルス「ポリスウエア」を忍び込ませる捜査手法が導入されており、警察庁は日本で法整備したうえでの導入の可能性を含めて、検討を加速化する考えだといいます。

日本の大鷹正人・駐タイ大使は、東南アジア4カ国における特殊詐欺への対策強化のため、国連薬物犯罪事務所(UNODC)を通じ、最大5億1600万円の無償資金協力を実施すると発表しました。対象はタイ、カンボジア、ラオス、ベトナムの4カ国で、拠出金は、特殊詐欺関連の捜査に必要な専門機材の配備や、職員研修など各国の捜査能力向上に充てられるといいます。大鷹大使は、詐欺対策は「世界的な課題だ」と強調、犯罪組織は特にメコン川流域の4カ国に拠点を置き、多国籍化もしており、「一つの国では対処しきれない」として地域連携の重要性を訴えました。UNODCのシャンツ東南アジア・太平洋地域代表も、メコン地域で詐欺や人身取引などを含む大規模な犯罪ネットワークが拡大していると指摘、各国と「より強いパートナーシップを築きたい」と述べています。

▼ 警察庁 令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)
  1. 特殊詐欺の概要について
    • 認知件数・被害額ともに著しく増加
      • 特殊詐欺の認知件数は、27,758件(+6,715 件、+31.9%)
      • 被害額は、約1,414.2億円(+695.4 億円、+96.7%)
    • 主な要因
      • ニセ警察詐欺による被害が顕著
      • 認知件数は 10,936件、被害額は 985.4億円で、認知件数に占める割合は 39.4%。
      • オレオレ詐欺に含まれるニセ警察詐欺の認知件数は 10,696件で、オレオレ詐欺の認知件数 14,393件に占める割合は 74.3%。
  2. SNS型投資詐欺の概要について
    • SNS型投資詐欺の認知件数は 9,538件(+3,125件、+48.7%)、被害額は 1,274.7 億円(+403.6 億円、+46.3%)と認知件数、被害額ともに前年に比べて増加。
    • 主な要因
      • 「ダイレクトメッセージ」からの被害が増加
      • 当初の接触手段は、バナー等広告が 3,760件(+859件、+29.6%)、ダイレクトメッセージが 3,576件(+1,443件、+67.7%)と、ダイレクトメッセージを当初の接触手段とする被害が増加しており、これらが全体の約8割を占める。
      • YouTube、投資のサイト及び Instagram におけるバナー等広告、Instagram、LINE 及び Facebook におけるダイレクトメッセージを接触手段とする認知件数の増加が、被害増加の主たる要因。
      • 認知件数をみると、バナー等広告が令和7年3月以降増加傾向にあり、その内容は、著名人の画像や動画を無断で使用した広告が確認されており、「必ずもうかる」、「元本保証」などの文言を含む広告も見られた。
  3. SNS型ロマンス詐欺の概要について
    • SNS型ロマンス詐欺の認知件数は 5,604件(+1,780件、+46.5%)、被害額は 552.2 億円(+151.4 億円、+37.8%)と、認知件数、被害額ともに前年に比べて増加。
    • 主な要因
      • 「暗号資産送信型」による被害が顕著
      • 暗号資産送信型の認知件数は2,148件(+1,362件、+173.3%)、被害額は246.3億円(+160.8 億円、+188.0%)。振込型における暗号資産振込と合わせると、一次的な主な被害金等交付形態が実質的に暗号資産であるものが総認知件数に占める割合は40.2%(+14.3 ポイント)、被害総額に占める割合は47.9%(+21.4 ポイント)。
▼ 資料1
  1. 特殊詐欺 検挙状況
    • 特殊詐欺全体の検挙件数は6,590件(+14件、+0.2%)、検挙人員(以下、この項において「総検挙人員」という。)は2,307人(+33人、+1.5%)と、いずれも増加。
    • 手口別では、オレオレ型特殊詐欺の検挙人員は1,869人(+144人、+8.3%)で、総検挙人員に占める割合は81.0%(+5.2ポイント)。
    • 役割別では、受け子が1,366人(-13人、-0.9%)と最も多く、総検挙人員に占める割合は59.2%(-1.4ポイント)。
    • 主犯の検挙人員は66人(+16人、+32.0%)で、総検挙人員に占める割合は2.9%(+0.7ポイント)。
    • 預貯金口座や携帯電話の不正な売買等の特殊詐欺を助長する犯罪で5,193件(+164件、+3.3%)、3,579人(+56人、+1.6%)を検挙
    • 暴力団構成員等の検挙人員は380人(-55人、-12.6%)で、総検挙人員に占める割合は16.5%(-2.7ポイント)。
    • 暴力団構成員等の検挙人員のうち、受け子は178人(-53人、-22.9%)、リクルーターは52人(-1人、-1.9%)、出し子は42人(+1人、+2.4%)。
    • 少年の検挙人員は463人(+47人、+11.3%)で、総検挙人員に占める割合は20.1%(+1.8ポイント)。
    • 少年の検挙人員のうち、受け子は348人(+62人、+21.7%)で、少年の検挙人員の75.2%(+6.4ポイント)を占める。
    • 受け子の検挙人員(1,366人)に占める少年の割合は25.5%(+4.7ポイント)と、受け子のおよそ4人に1人が少年
    • 外国人の検挙人員は236人(+106人、+81.5%)で、総検挙人員に占める割合は10.2%(+4.5ポイント)。
    • 外国人の検挙人員のうち、受け子は135人(+63人、+87.5%)、出し子は46人(+20人、+76.9%)で、それぞれ外国人の検挙人員の57.2%(+1.8ポイント)、19.5%(-0.5ポイント)を占める。
    • 国籍別では、中国が85人(+46人、+117.9%)と最も多く、次いでベトナムが55人(+23人、+71.9%)、マレーシアが37人(+24人、+184.6%)の順。
    • 国籍別に最も多い役割をみると、中国は受け子が50人(+25人、+100.0%)、ベトナムは出し子が27人(+13人、+92.9%)、マレーシアは受け子が32人(+20人、+166.7%)。
    • 特殊詐欺の受け子等として検挙した被疑者2,201人(+10人、+0.5%)のうち、受け子等になった経緯は、SNSから応募が823人(-126人、-13.3%)と最も多く、次いで知人等紹介が814人(+134人、+19.7%)となっており、受け子等として検挙した被疑者のうち、SNSから応募が37.4%(-5.9ポイント)、知人等紹介が37.0%(+5.9ポイント)を占める。
  2. SNS型投資・ロマンス詐欺 検挙状況
    • SNS型投資・ロマンス詐欺全体の検挙件数は598件(+336件、+128.2%)、検挙人員(以下、この項において「総検挙人員」という。)は387人(+258人、+200.0%)と、いずれも増加。
    • 手口別では、SNS型投資詐欺の検挙件数は352件(+222件、+170.8%)、検挙人員は216人(+158人、+272.4%)で、SNS型ロマンス詐欺の検挙件数は246件(+114件、+86.4%)、検挙人員は171人(+100人、+140.8%)。
    • 役割別では、受け子が102人(+85人、+500.0%)と最も多く、総検挙人員に占める割合は26.4%(+22.2ポイント)。
    • 主犯の検挙人員は85人(+59人、+226.9%)で、総検挙人員に占める割合は22.0%(+15.2ポイント)
    • 検挙人員のうち、暴力団構成員等は6人(±0人)で、役割別では主犯が3人(+3人)、受け子が1人(±0人)、出し子が1人(-2人、-66.7%)。
    • 少年は14人(+13人、+1,300.0%)で、役割別では主犯が7人(+7人)、受け子が6人(+5人、+500.0%)、打ち子が1人(+1人)。外国人は124人(+96人、+342.9%)で、役割別では受け子が60人(+52人、+650.0%)、出し子が20 人(+12人、+150.0%)と、これらで約6割を占める。
    • 外国人の国籍別では、中国が57人(+39人、+216.7%)と最も多く、次いでベトナムが44人(+41人、+1,366.7%)。役割をみると、中国は受け子が27人(+22人、+440.0%)、ベトナムは受け子が20人(+19人、+1,900.0%)と、それぞれ受け子が多くなっている。
    • SNS型投資・ロマンス詐欺の受け子等として検挙した被疑者296人(+196人、+196.0%)のうち、受け子等になった経緯は、SNSから応募が112人と最も多く、次いで知人等紹介が111人となっており、受け子等として検挙した被疑者のうち、SNSから応募が37.8%、知人等紹介が37.5%を占める。
  3. 架け場等の摘発状況
    • 犯行グループが欺罔電話をかけたり、架空の人物になりすましてメール等を送信したりする架け場等の犯行拠点について、令和7年中、国内では11箇所(-18箇所)を摘発。
    • また、海外拠点を外国当局が摘発し、日本に移送等して検挙した人数については、同年中54人(+4人、+8.0%)。
  4. 海外拠点への対策
    • 近年、警察官等をかたる特殊詐欺が海外拠点から実行され、令和7年中はタイやカンボジアなどの海外に架け場を置く特殊詐欺事件に関連する被疑者54人を検挙している。海外拠点においては、リクルーターとみられる者が「海外で簡単に稼げる仕事がある」等の口実で犯罪実行者を募集し、応募した者が渡航し、犯行に加担させられる事例も把握しているところ、特殊詐欺の架け子等として海外拠点で稼働していた者からは、
      • パスポートとスマホを取り上げられ、帰るなら数百万払えと言われた。
      • 詐欺をやりたくないと言うと、「臓器を売るぞ」、「家族を殺す」等と脅された。
      • ミスをしたり、管理者の指示どおりにやらないと暴力を受け、ひどいときにはアルコールをかけられ火をつけられた。
      • といった海外拠点での状況に関する供述が得られている。
    • 今後も、海外拠点の摘発につながる情報の収集・分析を強化するとともに、関係機関や現地当局とのオペレーションレベルでの連携を強化し、海外拠点の摘発に取り組む必要がある。
  5. 特殊詐欺連合捜査班(TAIT)を活用した迅速かつ効果的な取締りの推進
    • TAITを活用した特殊詐欺等事件の検挙件数は533件(+210件、+65.0%)、検挙人員は474人(+131人、+38.2%)で、内訳は特殊詐欺が492件(+207件、+72.6%)・430人(+122人、+39.6%)、SNS型投資・ロマンス詐欺が41件(+3件、+7.9%)・44人(+9人、+25.7%)であった。検挙した474人の主な役割は、受け子が181人(+60人、+49.5%)、出し子が126人(+29人、+29.9%)、現金回収・運搬役が48人(+20人、+71.4%)。
  • 対策の取組
    1. 「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」を踏まえた取組
      • 令和7年4月22日、犯罪対策閣僚会議において、一層複雑化・巧妙化する詐欺等について、手口の変化に応じて機敏に対策をアップデートするとともに、犯罪グループを摘発するための実態解明の取組や犯罪グループと被害者との接点の遮断といった抜本的な対策を強化する必要性を踏まえ、「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」が決定された。これを踏まえ、中枢被疑者の検挙の徹底を図るとともに、詐欺の手口の変化に応じた情報発信をタイムリーに行いつつ、関係省庁や事業者と連携した一層踏み込んだ対策を強力に推進。
    2. 取締り及び実態解明の推進
      1. 匿名・流動型犯罪グループの存在を見据えた取締りと実態解明の推進
        • 匿名・流動型犯罪グループの活動実態の変化に機動的に対応し、事件の背後にいる首謀者や指示役も含めた犯罪者グループ等の弱体化・壊滅のため、令和7年10月、警察庁に設置した「匿名・流動型犯罪グループ情報分析室」において、情報の部門横断的な集約・分析を強化するとともに、警視庁に全国の捜査員を集めて新設した「匿流ターゲット取締りチーム」(T3)をはじめ、全国警察が一体となった戦略的・集中的な実態解明と取締りを推進。
        • さらに、匿名性の高い通信アプリをはじめとする犯罪に悪用される通信アプリ等について、被疑者間の通信内容等を迅速に把握するために効果的と考えられる手法について、諸外国における取組を参考にしつつ、技術的アプローチや新たな法制度導入の可能性も含めて検討。
      2. 外国捜査機関との連携及び海外拠点に関する被疑者の摘発
        • 国境を越える組織的詐欺と闘う国際的な機運の高まりも踏まえ、東南アジア諸国の外国捜査機関との間で、情報交換や協議等を通じて、取締りの重要性について認識を共有、海外拠点につながる情報の収集・分析を強化するとともに、関係機関や現地当局とのオペレーションレベルでの国際連携を強化
    3. 被害防止対策の推進
      1. 犯人からの電話を直接受けないための対策の推進
        • ニセ警察詐欺の増加に伴い、高齢者だけでなく、20代、30代を含む幅広い年代の被害が増加。これは、特殊詐欺等の手口が巧妙化し、犯人側と接触してしまえば、誰もがだまされるおそれがあるということを意味する。したがって、機械的・自動的な仕組みによって、詐欺の電話を始めとする犯人側からの接触手段を適切に遮断し、国民が犯人側と接触せずに済む環境を実現することが重要
        • この点、令和5年7月以降、国際電話番号を利用した特殊詐欺が急増しているところ、固定電話については、「国際電話不取扱受付センター」に申し込むことにより、固定電話・ひかり電話を対象に国際電話番号からの発着信を無償で休止可能。また、携帯電話については、国際電話の着信規制が可能なアプリを利用することにより、着信を遮断可能であることから、無料の特殊詐欺対策アプリ(警察庁推奨アプリ)の普及に向け警察庁推奨制度を創設。
        • 警察では、このような国際電話の利用休止等が特殊詐欺の被害防止に極めて有効であることを広く社会に呼び掛け、社会全体の機運を醸成する活動を「みんなでとめよう!!国際電話詐欺#みんとめ」と呼称して推進。
      2. 広報啓発活動の推進
        • 幅広い年代に対して高い発信力を有する著名な方々により結成された「ストップ・オレオレ詐欺47~家族の絆作戦~」プロジェクトチーム(略称:SΟS47)による広報啓発活動を、公的機関、各種団体、民間事業者等の幅広い協力を得ながら展開。
        • 「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」に、変化する欺罔の手口の国民への迅速かつ実効的な広報・注意喚起が盛り込まれていることも踏まえ、被害が集中しているニセ警察詐欺に関し、警察庁及び全国警察が連動して、短期集中型の広報啓発を実施。同手口や、国際電話利用契約の利用休止申込みに関する情勢を捉えた広報啓発動画を制作し、全国で活用したほか、バナー等広告でかたられている著名人と連携した広報啓発等を推進。
        • 令和6年8月以降相次いで発生した犯罪実行者募集に起因する強盗等事件ついて、「国民を被害に遭わせない」ための対策として、犯行グループから押収した名簿に登載されている者等に対してコールセンターを活用した注意喚起を実施したほか、若年層が多く集まる地域(東京都、埼玉県、千葉県及び神奈川県内の繁華街等)において、犯罪実行者募集に応じないよう、アドトラックを活用した呼び掛けを実施。
      3. 関係事業者と連携した被害の未然防止対策の推進
        • コンビニエンスストア店員や金融機関職員等による声掛け等により、17,962件(-2,005件、-10.0%)、152.7億円(+60.8億円、+66.2%)の被害を防止(阻止率※1739.9%(-9.5ポイント))。※阻止件数を認知件数(既遂)と阻止件数の和で除した割合
        • ニセ警察詐欺において、SNSが被疑者と被害者との連絡ツールに使用されている状況を踏まえ、SNS事業者と連携した注意喚起を行う取組を推進
    4. 犯行ツール対策の推進
      1. 金融機関との情報連携体制の構築
        • 警察庁及び都道府県警察は、金融機関のモニタリングにより詐欺の被害のおそれが高いと判断される取引を検知した場合に、関係する都道府県警察へ迅速に情報提供する連携体制を構築。令和7年末現在、47警察本部と847金融機関が、警察庁と全国に顧客を有する都市銀行等28金融機関が連携中。警察で把握した不正利用口座に係る情報を迅速に金融機関に共有する情報共有型の連携については、25警察本部と345金融機関で導入。
        • 被害金の即時の追跡・凍結・回復を実現するための官民協働型枠組み構築に向け、金融機関と一層の連携強化。
      2. 犯行に利用されたSNSアカウントの利用停止措置の推進
        • 特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺に利用されたLINEアカウントの利用停止や削除等を促すため、令和7年中、LINEヤフー株式会社に情報提供したアカウントは18,214件(特殊詐欺8,709件、SNS型投資・ロマンス詐欺9,505件)。
        • 特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の犯行に利用されたFacebookアカウント及びInstagramアカウントの利用停止や削除等を促すため、令和7年中、MetaPlatforms,Incに情報提供したアカウントは422件(特殊詐欺71件、SNS型投資・ロマンス詐欺351件)。
      3. 犯行に利用された電話番号の利用停止等
        • 主要な電気通信事業者に対し、犯行に利用された固定電話番号等の利用停止及び新たな固定電話番号の提供拒否を要請する取組を推進。令和7年中は固定電話番号539件、050IP電話番号1,320件が利用停止され、新たな固定電話番号等の提供拒否要請を10件実施。
        • 悪質な電話転送サービス事業者が保有する「在庫番号」を一括利用停止する仕組みにより、令和7年中は新規番号の提供拒否対象契約者等が保有する固定電話番号等の利用停止等要請を7件実施し1,018番号を利用停止。
        • 犯行に利用された携帯電話について、携帯電話事業者に対して役務提供拒否に係る情報提供を推進(579件の情報提供を実施)。
        • 犯行に利用された電話番号に対して、繰り返し電話して警告メッセージを流すことで、その番号の電話を事実上使用できなくする「警告電話事業」を推進。
      4. データ通信専用SIM契約時における本人確認の義務付け等
        • データ通信専用SIMについては、現在は、携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律(平成17年法律第31号)に基づく契約締結時等の本人確認義務等が課されていない。
        • SNS型投資・ロマンス詐欺における悪用の実態として、例えば、被害時の連絡ツールの約9割は、SNSのメッセージ機能が用いられているところ、その際、本人確認義務が課されていないデータ通信専用SIMが悪用される場合がある。
        • そのため、「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」を踏まえ、携帯通信事業者による本人確認義務等の対象にデータ通信専用SIMを追加すること、個人による利用が通常想定されない回線数の役務提供を携帯通信事業者が拒否できることとすること等を内容とする携帯電話不正利用防止法の見直しを含むルール整備に取り組む。
    ▼ 資料2
    • 特殊詐欺の当初接触ツールについて
      • 携帯電話が前年の2.2倍と増加が顕著
      • 携帯電話を当初接触ツールとする手口は、オレオレ詐欺と架空料金請求詐欺が大半(オレオレ詐欺が約8割であり、前年の3.4倍と増加が顕著)
      • 20代~50代は、携帯電話による被害が多く、60代以上は、固定電話での被害が多い。
      • オレオレ詐欺は、固定電話、携帯電話ともに多い。(固定電話は全体の約5割、携帯電話は全体の約8割)
      • 還付金詐欺の大半は固定電話
      • 架空料金請求詐欺の大半は携帯電話
      • 令和7年の予兆電話件数については335,829件(前年比+142,354件、+73.6%
      • 令和7年の国際電話番号数については92,996件(前年比+45,400件、+95.4%
      • 予兆電話件数については、認知件数を上回る増加率(73.6%)※認知件数の増加率は31.9%
      • 犯行利用された番号種別については、国際電話番号が大幅に増加し、全体の75.5%を占める
    • ニセ警察詐欺の被害状況について
      • ニセ警察詐欺は、令和7年の特殊詐欺被害の多くを占める
      • 認知件数10,936件(特殊詐欺全体の39.4%)
      • 被害額985.4億円(特殊詐欺全体の69.7%)
      • 令和7年中は年間を通して増加傾向であり、令和8年において更なる対策が急務
      • 既遂1件当たりの被害が高額となる傾向
      • 被害者の年代については30代が最多であるが、既遂1件当たりの被害額は70代が最多
      • 当初接触ツールについては40代以下は携帯電話が9割以上であり、50代以上は固定電話が約6割
      • ニセ警察詐欺における振込型による被害認知件数8,656件、被害額601.1億円
      • 【内訳】
        • ATM3,960件、141.7億円
        • IB4,339件、399.6億円
        • 窓口1,357件、159.9億円
      • 振込型がニセ警察詐欺全体の約8割を占める
      • 認知件数ではATMとIBは大差ないものの、被害額ではIBがATMの約3倍と高額
      • 普段IBを利用しない高齢者等において、犯人からIB口座の開設、設定、振込方法等の指示を受けて被害が発生
      • 金地金をだまし取るニセ警察詐欺の手口を確認(認知件数・被害額共にニセ警察詐欺が9割以上)
      • 認知件数157件、被害額53.2億円(36都道府県で発生)
      • 既遂1件当たりの被害額が3,388.9万円と高額
      • 購入は店頭のほか、電話やインターネットによる
      • 交付手段については、犯行グループが指示する場所に郵送させられるほか、受け子が被害者方で回収する手口が大半を占める
    • SNS型投資詐欺の主な被害金等交付形態について
      • 振込型は、暗号資産送信型よりも1件当たりの被害が高額(既遂1件当たりの被害額振込型:1,388.2万円、暗号資産送信型:1,125.8万円)
      • 振込型のうち、IBは認知件数の70.8%、被害額の80.8%、IBによる被害が多数を占める
      • ATM、IB共に高齢者の1件当たりの被害額が高額となる傾向
      • 暗号資産送信型は、振込型に比べて20代~40代の被害割合が多く、高齢者だけでなく幅広い年代に被害が及んでいる。
    • SNS型ロマンス詐欺の主な被害金等交付形態について
      • 暗号資産送信型は振込型よりも1件当たりの被害が高額(既遂1件当たりの被害額暗号資産送信型:1,146.6万円、振込型:929.4万円)
      • 振込型のうち、IBは認知件数の51.6%、被害額の69.9%を占める
      • ATM、IB共に高齢者の1件当たりの被害額が高額となる傾向
      • 暗号資産送信型は、振込型に比べて20代~30代の被害も多く、幅広い年代に被害が及んでいる。
    • 海外拠点で稼働していた者の供述
      • 拠点の出入口は門扉があり、塀が高く有刺鉄線が張り巡らされていた。また、出入口には銃を持つ警備員がおり、自由に出入りはできない状態。
      • パスポートとスマホを取り上げられ、帰るなら数百万払えと言われた。
      • 架け子をする前に、マニュアルを何日も覚えさせられた。
      • 仕事後も反省検討会をさせられたり、自由な時間はほとんどなかった。
      • 詐欺をやりたくないと言うと、「臓器を売るぞ」、「家族を殺す」等と脅された。
      • ミスをしたり、管理者の指示どおりにやらないと暴力を受け、ひどいときにはアルコールをかけられ火をつけられた。

    2026年2月18日付日本経済新聞の記事「国際組織が仕掛ける「メガ詐欺」 国を挙げて個人を守れ」は大変示唆に富むものでした。とりわけ、「警察はだましの電話をかける「かけ子」や、被害金を受け取る「受け子」などを逮捕する。だが闇バイトなどで集められた容疑者らは主犯格と面識がないため組織中枢の摘発にはつながらず、犯罪のビジネスモデルは解体できないまま。中核部分は匿名化され、実行犯のメンバーはそのつど入れ替わるといった特徴から、警察は「匿名・流動型犯罪グループ(匿流=トクリュウ)」と位置づけ、取り締まりを強化してきた。捜査や規制を回避するように、その後も犯行の手口は変化。特殊詐欺は日本国内からではなく、タイやカンボジアの拠点に日本人を集め、そこから日本に向けた詐欺を行わせる「国際犯罪」に移行しつつある。25年中に特殊詐欺で使われた電話番号のうち75.5%が国際電話だった。依然として詐欺集団の中核は実態が明らかになっていない。ただ、海外に一大拠点を構え、継続して組織的な詐欺を繰り返している現状をみれば、主体は海外の犯罪組織と考えるのが自然だろう。かつて警察が国内にある特殊詐欺のアジト摘発に力を入れ始めたころから、「アジトを捜索してもカネが出てこない」という点がしばしば問題になっていた。当時の捜査幹部は「犯罪収益は頻繁に中国に送られていて、捜査はそこで事実上、頓挫していた」と証言する。日本のトクリュウや暴力団勢力が海外と連携している例もあるとみられるが、そもそも大がかりなトクリュウの「大本」は、変わらず中国などの国際犯罪組織なのかもしれない。日本警察はいま、東南アジアの国などと捜査協力を進め、相手国内の拠点にいる日本人の「かけ子」らを逮捕するなど成果を上げている。だが現地での捜査に直接関与することはできず、そこから主犯グループへとたどり着くことも難しい。一方で警察はサイバー捜査などでカネの流れを追い、犯罪収益が集まる首魁の居場所を探る。しかし海外の主犯格を日本で裁いたり、相手国内のグループを壊滅させたりすることは現実的ではない。投資詐欺やロマンス詐欺も、SNSのバナー広告やダイレクトメッセージなどの形で海外から仕掛けられる。島国である日本は長い間、「国境」「日本語」という壁が、海外からの犯罪の脅威を一定程度防いでいた。それがインターネットの普及で国境が消え、AIがだましの文句をたやすく生成する。著名人の姿や声を再現することで「認知の壁」も越えつつある。だましたカネはインターネットバンキングや暗号資産で送らせる手口が主流で、一度もリアル空間で被害者と接触しない。機械的に大量のワナをしかけ続け、反応があったものについて、じっくりだましていけばいいという犯罪だ。このため私たちは毎日のように見知らぬ着信やメッセージを受け取り、「詐欺ではないか」と疑い、世にあふれる悪意を実感する。こうしてメガ詐欺は被害実態以上に、国民が肌で感じる体感治安を損ない続けている。海外の犯罪組織が国際電話やSNSを介して個々人を恒常的に狙うという事態を、日本の法律や制度は想定していない。他の主要国と比べ比較的治安が良かっただけに組織犯罪に対する「耐性」が低く、被害がさらに広がっていく懸念もある。警察だけで対応できる問題では到底なく、政治や外交、法制度、教育など、国を挙げての総力戦が求められる。特に▽国際電話の遮断▽年齢など一定条件でSNSの利用を制限▽プラットフォーマー各社への実効性ある規制・制裁――といった犯行に直結するシステムの思い切った見直し策を考えたい。犯罪者側の端末に警察がウイルスを送り込んで情報を盗み出す「ポリスウエア」など、欧米で導入されているような新たな捜査手法を日本でも取り入れるべきではないだろうか。注目したいのは、サイバー攻撃の先手を打って被害を防ぐ「能動的サイバー防御(ACD)」の制度だ。25年に関連法が成立し、政府は攻撃の兆候を検知した際、警察や自衛隊が攻撃元のサーバーに侵入して無害化する措置を26年10月から可能とする方針を示している。国民の財産に重大な損害を与える組織的なメガ詐欺は重大サイバー事案にあたるのではないか。ACDの対象として、詐欺に使われるサーバーの無害化措置の可否についても検討してもらいたい」という指摘すべてがその通りだと思います。

    最近の特殊詐欺等の被害事案で特徴的なことの1つに、「詐欺であることを認めない/なかなか認めない」被害者が多いことが挙げられます。最近の報道からいくつか紹介します。

    • 2026年3月2日付読売新聞の記事「ニセ警官に洗脳された詐欺被害者、「本物」駆けつけても信用せず…権威悪用でマインドコントロール」では、「警察官を装う「ニセ警察詐欺」で、本物の警察官が被害者に詐欺だと説明しても、信用されないケースが複数確認されたことが、京都府警の調査でわかった」といい、「警察官の権威を悪用した「マインドコントロール」の手法が使われていると分析。専門家は「『警察が電話で捜査対象だと伝えることはない』と警察が周知することが大事」と指摘する」と報じています。報道によれば、京都府警は府内で2025年起きたニセ警察官と被害者のやりとりなど事件の傾向を具体的に調査、被害者が本物の警察官に疑いの目を向けるケースが複数確認されたといいます。「ニセ警察官に「(説得に駆けつけた)警察官に犯罪に加担するスパイがいる」と伝えられた被害者がいた。詐欺と理解するのに4か月かかった人もいたという。ニセ警察官から「犯罪に関与している」と言われ、「自分が逮捕されるのでは」と判断力を失わせるようにも仕向けられていた。「極秘捜査なので、周囲への相談はダメ」と伝えて孤立化を図られ、警察が覚知できないまま被害が拡大することもあった。京都府内で昨年、ニセ警察官から電話があった高齢女性は、駆けつけた府警の警察官から詐欺と説明され、ニセ警察官からの電話に代わりに出て警告する姿も見せられた。しかし女性は「だまされていない」「電話は本物の警察官だ」と納得しなかったという。府警は調査の結果、「被害者の焦りや不安を巧みに利用し、マインドコントロールのような状態に陥れる犯罪」と分析した。他の特殊詐欺でもマインドコントロールの面があるとされるが、警察という捜査機関の立場で被害者を萎縮させ、「言いなり状態」に強く向かわせていく点が、ニセ警察詐欺の大きな特徴と見る」といいます。府警は対策として、悪用されている国際電話番号の利用休止手続きを支援するなどの対策を進めており、事件を覚知すれば、専門性の高い捜査員を迅速に派遣する態勢も取っています。報道で立正大の西田公昭教授(社会心理学)は、「自分が望む情報を重視・収集する「確証バイアス」の影響で、ニセ警察官が本物の警察官だと思い込むと指摘する。「人は一度信じた事実を判断基準とし、反する新情報は否定する傾向がある」と説明する。ニセ警察詐欺の特徴として「ニセ警察官が『あなたを信じている』と良い人を演じることで、被害者は『なんとかしてほしいし、優しい警察官を怒らせないようにしよう』と服従姿勢になってしまう」とする。むやみに詐欺と伝えても反発を招く恐れがあるとし、「あなたが心配だ」と伝えて信頼関係を築くことが先決とする。西田教授は「確証バイアスは人間の心理の仕組みであり、個人の資質ではない。『人はそもそも、だまされやすい存在だ』と一人ひとりが理解することが重要」としている」と報じていますが、本コラムでも以前から指摘し続けてきたとおりです。また、詐欺対策のサービスを開発する「トビラシステムズ」のアンケート調査によれば、ニセ警察詐欺の手口は中高年層に比べ、若年層で知られていないことが明らかになったといい、若年層で被害件数が多く、同社は対策が必要と指摘している点は注目すべきかと思います。ニセ警察詐欺を知っている人は60代の92%に対し、20代は66%と最も割合が低かったといい、同社は「若者への啓発を進め、不審な電話番号をブロックする対策アプリなども使い、接点を断ち切ることが重要」としています。
    • 阪府内の自営業の60代男性が警察官をかたるオレオレ詐欺の被害に遭い、4億4300万円相当の暗号資産をだまし取られた事件が発生しました。大阪府警が認知した特殊詐欺の被害額としては過去2番目に高く、2026年に入って全国の警察が公表した中では最悪の被害となりました。2026年3月3日付朝日新聞の記事「「警視庁渋谷署刑事課員の野村」が4.4億円詐欺 今年最悪の被害額」によれば、「昨年9月、男性宅の固定電話に警視庁渋谷署刑事課員を名乗る男から「運転免許証を落としていないか? 個人情報が悪用されている」と電話があった。男性は当初、詐欺を疑い、最寄りの警察署に行って相談したという。だが、再び渋谷署員を名乗る男から電話があり、警察に相談に行ったことを伝えると、「これは詐欺ではない。最寄りの署から電話をしてもらう」と言われた。直後にかかってきた電話では、最寄り署の電話番号が電話機に表示されて、相手から「先ほど署で話した者です。渋谷署からの電話は詐欺ではない」と言われ、男性は話を信じるようになった。その後、電話やSNSを通じ、「渋谷署刑事課の野村」を名乗る人物らから「(男性に)マネー・ローダリングの疑いがある」「捜査で資産を調べる必要がある」などと言われ、昨年12月~1月、40回にわたり、計4億4300万円相当の暗号資産を相手方に送金した。野村を名乗る人物はSNSのビデオ通話でやり取りした際、警察官の制服を着ていたという」という状況だったといいます。発信元の電話番号を偽装する「スプーフィング」の手口が使われたとみられています。
    • 特殊詐欺の電話を再現した中央大の実験で、心理学を学んでいる被験者の学生が相次いで個人情報を教える寸前にまで至ったといい、専門性の高い学生たちでさえ被害者になりかねない、手口の巧妙さが改めて浮き彫りになっています(2026年3月7日付毎日新聞)。実験は2025年12月、中央大文学部の有賀敦紀教授(心理学)らが神奈川県警の協力を得て実施したもので、県警は実験の約1カ月前、被験者に特殊詐欺の被害状況について説明し、実験内容には「だまし」が含まれることも伝えたといいいますが、県警の警察官がかけ子役を担い、被験者の携帯に電話をかけて「警視庁捜査2課のヤマダ」とうその肩書を名乗り、さらに「特殊詐欺の犯人が、あなたが共犯者だと言っている。心当たりはありますか?」などと淡々とした口調で話し、最終的にLINEのIDを聞き出そうとする段階で「実験終了」としたといいます。教授らが、学生がどのタイミングで電話を切ったかなどを調べたところ、148人のうち25人が電話に出て、うち5人がIDを教える直前までだまされたという結果となりました。実験結果の分析によれば、電話に出た学生は、携帯電話を介した特殊詐欺があることを知らない傾向があったほか、かけ子役が女性の場合には、電話を途中で切ることに心理的な抵抗も生じていたといい、また、かけ子役は具体的な法律名や「マネー・ローダリング」といった専門用語を駆使し、強気の態度で臨んだため受け手が「本物らしさ」を感じ、詐欺への疑念を弱めた可能性もあるとしています

    警察官をかたって金を振り込ませる特殊詐欺の手口に絡み、「身体検査」や「常時監視」が必要だとして、ビデオ通話の際に女性を裸にさせるといった性被害を伴うケースが、2025年に全国で約240件確認されたことがわかりました。前述のとおり、特殊詐欺全体でも20~40代の被害が急増しており、警察当局は「ビデオ通話で取り調べを行うことは絶対にない」と動揺しないよう呼びかけています。「犯人にはタトゥーが入っている。確認のため服を脱いでください」。警察官をかたる男はビデオ通話で相手の女性にこう告げるといい、自らにかかった「嫌疑」を晴らそうと女性はその言葉に従ったといったケースが典型的です。「タトゥーの確認」といった口実もあれば、身体検査を理由に服を脱ぐよう強要するケースも多いといいます。また「容疑者のため24時間監視が必要」としてビデオ通話を延々と続けさせ、入浴やトイレに行くときも通話を切らず、自身を撮影するよう強いられることもあり、これら一連のやり取りで被害者を精神的に追い込み、「容疑を晴らすために口座の金を調べる必要がある」と最終的に送金を要求するといいます。なお、大阪府警によれば、性被害を伴うケースで、撮影された裸の動画が流出・拡散したり、新たな脅迫に使われたりといった二次被害につながった事例は現時点では確認されていないといいます。犯罪心理学に詳しい関西国際大の中山誠教授は報道で「逮捕される」「家族にも危害が及ぶ」といった発言で混乱を誘い、「正常思考を失わせる手口」と分析、そのうえで「警察から電話がかかってくるというだけで、驚いてしまうのが通常。こうした手口があることを知り、自分も被害に遭うかもしれないと常に意識しておくことが重要だ」と指摘しています。

    全国の警察が2020~24年度に詐欺拠点などで押収した名簿に記載されていた個人情報が、延べ約235万人分にのぼることが警察庁への取材でわかったといいます。特殊詐欺などの犯罪グループがこの情報をもとにして電話をかけるなどしていた疑いがあります。都道府県警が国内外での捜査で押収した名簿は警察庁に情報が集約されており、2024年度は51万人分が押収されたといいます。名簿に個人情報が書かれていた人には、各地の警察が訪問したり、委託先のコールセンターが電話したりして注意喚起をしています。近年相次いでいるのは、東南アジアでの詐欺拠点から大量の個人情報が載った名簿が見つかるケースで、これらの拠点で、日本に向けて詐欺が行われています。2025年5月に摘発されたフィリピンの拠点からは、約20万人分の個人情報を載せた約5千枚の名簿が見つかっており、一部には生年月日も書かれていたといいます。この拠点では警察官をかたって金銭をだましとる「ニセ警察詐欺」が行われていたといい、詐欺グループの一員とみられる複数の日本人が逮捕されました。詐欺グループに個人情報を載せた名簿を提供する悪質な「名簿屋」の存在も問題になっています。名簿の個人情報は、メールなどから偽物のサイトに誘導して情報を抜き取る「フィッシング」などで不正に入手された可能性があります。警察庁と個人情報保護委員会は、不審なメールや電話、訪問販売などで個人情報を伝えないよう、ショート動画を作って注意を呼びかけています

    警視庁は詐欺グループによる新たな手口が確認されたと発表、塗装業者や工務店に嘘の仕事を依頼し、物品などの代理購入を持ち掛けて金銭をだまし取るというものです。警視庁はトクリュウによる犯行とみて、警戒を呼び掛けています。実際の事例としては、2026年2月中旬、東京都文京区にある外壁塗装業者に、実在する介護施設職員を名乗る男から仕事の依頼があり、後日、引き受けた業者側に男から「ミスで備品の発注ができなくなり、代わりに発注してほしい」と消毒液100個分の代理購入を持ち掛けられ、業者側は消毒液販売会社だと伝えられた相手に連絡を取り、IBから指定された口座に145万円を振り込んだといいます。ところが、「もっと買ってほしい」と重ねて要求されたことで業者側は不審に思い、介護施設に確認の電話をすると、仕事の依頼はなく、詐欺被害に遭ったことが分かったというものです。警視庁匿名・流動型犯罪グループ対策本部によると、2026年2月中旬までに消毒液などの代理購入を持ち掛ける同様の詐欺、詐欺未遂事件は少なくとも計5件確認され、被害総額は約720万円に上るといい、被害は都内以外でも確認されているといいます。

    東南アジアを拠点とした特殊詐欺に対する国際的な圧力が強まるなか、カンボジア政府が「4月までに特殊詐欺を根絶させる」との目標を掲げ、取り締まりを強化しています。大規模な摘発で詐欺拠点から大勢の外国人が脱出しており、人権団体は、事件に無理やり加担させられていた外国人も多いとして、適切な保護を求めています(日本大使館も対応に追われているといいます)。カンボジア政府は2026年1月、インターネットを通じて世界中を標的に詐欺を繰り返してきた企業集団プリンス・グループの陳志会長を逮捕し、国籍を剥奪したうえで、出身国の中国に送還しました。2025年10月には、米当局が同グループに制裁をかけるなど、国際的な圧力が高まっていました。陳会長の逮捕後、カンボジアのソコン外相は特殊詐欺の撲滅に向けた取り組みは「これで終わりではない」と説明、カンボジア政府は、2026年4月までに特殊詐欺の根絶を目指すとしています。カンボジアのサイバー犯罪対策委員会によると、2026年1月から2月上旬にかけ、約190カ所の詐欺拠点を摘発、中国、マレーシア、インドなどの国籍を持つ2508人を逮捕しました。同2月7~8日にかけて、900人超に国外退去を命じたといいます。また、約200カ所の詐欺拠点を封鎖したことも明らかとなりました。こうした取り締まりの強化を受け、詐欺拠点から脱出する外国人が急増しており、同1月16日から20日にかけて、1440人のインドネシア人が詐欺拠点から脱出、カンボジアの首都プノンペンにあるインドネシア大使館に支援を求めて殺到しており、国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」の調査報告で「この数週間で少なくともカンボジア国内の17カ所の詐欺拠点から数千人が解放されたり逃げたりしたと推定される」と述べています。同団体は、施設を脱出した35人に聞き取り調査を実施。施設内で虐待や性的暴行を受けていたとの証言を得たといいます。人身売買で詐欺グループに引き渡され、犯罪に加担させられていた被害者もいるとして「緊急の領事支援が必要だ」と訴えています。一方、日本政府は日本人らへの特殊詐欺が深刻化しているとして、2026年内にも詐欺の拠点のあるカンボジアなど東南アジア4カ国の警察にパソコンの解析などに使う機材を提供するとしています。前述した国連薬物犯罪事務所(UNODC)と最大5億1600万円の無償資金協力を供与する書簡に署名した取り組みの一環です。

    海外の犯罪グループとのかかわりが疑われる最近の事案から、いくつか紹介します。

    • 特殊詐欺に関与したとして、警視庁は、会社役員と、20代の無職の男3人を詐欺と組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)容疑で逮捕しました。男はカンボジアの首都プノンペンを拠点にしていた詐欺グループの日本側のメンバーで、同庁は、約30人の現金回収役を取りまとめていたとみています。4人は仲間と共謀して2023年8月、弁護士を装って、茨城県の70代の女性に「詐欺の嫌疑を晴らすため、資産を預かる必要がある」などとうその電話をかけ、都内のアパートの空き部屋に現金1760万円を郵送させて犯罪収益を隠した疑いがもたれています。詐取金は、待機していた別の仲間が受け取り、都内の公園のトイレ内で、男3人に渡していたといいます。詐欺グループは同9月にカンボジア警察に摘発され、埼玉県警などが同11月、現地で拘束された日本人の男25人を移送し、詐欺容疑などで逮捕していたものです。35都道府県の計約170人から総額約31億円を詐取していたとみられ、同庁などが実態解明を進めています
    • カンボジアの英字紙クメール・タイムズは、同国南部シアヌークビルで当局がカジノ施設を摘発し、日本人を含む805人を拘束したと報じました。特殊詐欺に関与していたとみられ、在カンボジア日本大使館が確認を進めているといいます。同紙などによれば、日本人以外に中国や韓国、米国など6か国の外国人が拘束され、パソコン約650台や携帯電話約1000台も押収されたといいます。シアヌークビルでは2025年12月にも、特殊詐欺への関与が疑われる日本人16人が拘束されています。カンボジアは国際的な詐欺組織の拠点になっているとして非難されており、カンボジア政府は摘発を強化しています。ベトナム国境と接する南東部バベットでは2026年2月末、中国人を中心に特殊詐欺に関与したとみられる外国人2000人超が一斉摘発されています。
    • インドネシアの入国管理局は、警察官などをかたる特殊詐欺に関与していた疑いで日本人13人をジャカルタ近郊ボゴールで拘束したと発表しました。日本政府関係者によれば、特殊詐欺への関与疑いでインドネシアで邦人が摘発されるのは初めてだとみられます。報道によれば、「不審な外国人がいる」との情報提供を端緒に捜査を開始、13人全員が男性で、多くが40代、うち12人は投資活動のためのビザで滞在していました。2月から三つの家を拠点に特殊詐欺をしていた疑いがあるといいます。拘束時、室内からは詐欺の手順が記されたマニュアルや台本、電子機器などが見つかり、入管が発見した台本などによると、13人はそれぞれ通信会社の社員や警察官を装っていたといいます。LINEで被害者をビデオ通話で脅迫し、偽造の逮捕状を示すなどして指定先に送金するよう指示していたといいます。
    • ベトナムの有力紙トイチェなどは、首都ハノイで特殊詐欺に関与したとみられる日本人4人と中国人3人が地元当局に拘束されたと報じました。在ベトナム日本大使館も、日本人4人の拘束を確認しました。報道によれば、7人は警察や検察などを装い、日本に特殊詐欺の電話をかけていた疑いがあり、当局は中国人の1人がリーダーとみて調べているといいます。
    • カンボジアの拠点で特殊詐欺に関与したとして日本人29人が逮捕された事件で、愛知など6県警合同捜査本部は、同拠点では日本語を話す韓国籍の男性も詐欺電話のかけ子をしていた疑いがあると明らかにしました。男性は日本の在留資格を持っていますが、日本には移送されていません。男性は日本名を持ち、29人と同じ作業場で日本へ電話をかけていたといいます。捜査本部は、この男性を詐欺拠点側に紹介したとして、職業安定法違反容疑で東京都墨田区のガールズバー経営者を再逮捕しました。男性とは知人関係だったといいます。

    金融庁では「SNS上の投資詐欺が疑われる広告等に関する情報受付窓口」を設置し、投資詐欺を目的とするようなSNS上の投資広告や投稿等について情報収集を行っています。こうした情報の中には以下のように、類似した事例に関して複数の情報が寄せられているものがあります。非常にコンパクトにまとまっており、参考になります。

    ▼ 金融庁 それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!
    • 以下のいずれかに該当する又は類似している場合には投資詐欺である可能性が高く、入金したお金が戻ってこないといった被害も確認されています。こうした事例を見かけた場合には関わり合いにならず、「SNS上の投資詐欺が疑われる広告等に関する情報受付窓口」や金融庁金融サービス利用者相談室、または証券取引等監視委員会情報提供窓口に情報をお寄せ頂くとともに、最寄りの警察署にご相談ください。
    • 以下に該当するもの全てが投資詐欺であることを示すものではありません。また、全ての投資詐欺の手法を網羅するものでもありません。
    • 動画投稿サイトの広告等からSNSのクローズドチャットへ誘導され、投資への勧誘が行われる事例
      • 投資関連の投稿をフォローするとDMが届き、最終的にクローズドチャットへ誘導される。
      • 誘導された先のアカウント名に「◯◯証券」、「◯◯運用会社」や「◯◯投資クラブ」といった名称のほか著名人の名称や画像が使われている。
      • 「講師」や「先生」、「アシスタント」が登場し、投資の指南をする。
      • グループチャット内にいわゆるサクラがおり、指南に従えば利益が上がるかのようなメッセージが投稿される。
      • 情報交換や勉強会などから始まり、その後、虚偽の成功談をもとに投資話を持ち掛ける。架空の口座で取引させ、しばらくは利益が出て出金もできるかのように装いながら、追加で高額な入金をさせる。
    • AI診断を謳い文句に誘導され、投資への勧誘が行われる事例
      • AI診断を謳い文句にウェブサイトへ誘い込み、分析レポートを配信すると偽ってSNSへ誘導し、投資話を持ち掛ける。
    • 国内に登録のない海外FX業者をSNS上で紹介している事例
      • 無登録の海外FX業者(無登録業者として当局が警告を行っているものを含む)を紹介している。
      • キャッシュバックキャンペーンなどの特典を強調している。
    • 金融商品取引業者を騙っている事例
      • 既存の金商業者の名称やそれらしい名称を用いて信用させて投資を促し、特定の口座に入金を要求してくる。
      • 金融商品取引業者の登録番号を詐称している。
      • 既存の金融商品取引業者に似せた偽物のウェブサイトへ誘導してくる。
    • 高速取引行為者(HFT業者)を騙っている事例
      • 高速取引行為者は投資勧誘を行うことができないにもかかわらず、実在の高速取引行為者の名称を騙ってIPO銘柄の取引勧誘を行っている。
    • 政府公認の投資プログラムを騙るサイトから誘導する事例
      • 政府要人や著名人の画像を利用したフェイクニュースを作成し、特定の投資プログラムへの投資を呼び掛けている。
      • 「政府公認」、「金融庁の免許がある」などと偽り、あたかも政府・行政機関が個社との取引を推奨しているかのように装って勧誘を行っている。
    • 特典や褒賞などをきっかけに投資へ誘い込む事例
      • 預入金額に応じたキックバックを行うなどの特典を掲げて入金させようとする。
      • 架空の企画(暗号資産業界で最も影響力のある人物グランプリなど)で投票を依頼し、候補者が上位入賞したように見せかけ、その見返りとして架空口座に褒賞金を支払ったように装うと同時に、暗号資産取引のためとして追加資金を入金させようとする。
    • 特別待遇されているものと思わせ、投機心や射幸心を煽ることで投資へ誘い込む事例
      • プロ投資家向けの口座など、選ばれた人だけの口座が特別に利用できると謳って勧誘を行う。
      • プロ投資家向けの運用手法を特別に提供すると偽る。
      • 無料で注目株や利益確定銘柄の情報を提供すると偽る。
      • 新規公開株式(IPO)等について、身に覚えのない応募枠に当選したとして入金させる。又は、特別な応募枠があると誘い興味を持たせ、過剰な数の応募をさせた上で全て当選したと偽り、支払い義務があるとして資金を入金させる。
    • 証券口座を装ったスマホアプリが使われている事例
      • グループチャット等で投資勧誘された後、証券口座開設のためにアプリのインストールを求めてくる。
      • 既存の金商業者に似せた名称がアプリに使われていることがある。
      • 入金に個人名義の口座を指定してくる。
      • アプリ上で、振り込んだ額と同額が入金されたかのように残高表示される。
      • 取引の結果、利益が出ているかのように装う。最初のうちは出金できるが、まとまった金額を出金しようとすると理由をつけて断られ、その後出金できなくなる。
    • こうした投資勧誘を受けた場合には、冷静にご対応いただくとともに、取引をする業者が金融商品取引業や暗号資産交換業の登録等を受けているか、ご確認ください。
    • 「金融庁から免許・許可・登録等を受けている金融事業者検索(金融事業者一括検索機能)」では、名称や電話番号等を入力することで金融庁から免許・許可・登録等を受けている業者を簡単に検索することができます。
    ▼ 「金融庁から免許・許可・登録等を受けている金融事業者検索(金融事業者一括検索機能)」
    • 無登録で金融商品取引業を行っているとして、金融庁(財務局)が警告書の発出を行った者を公表しています。
    ▼ 「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」
    • 既存の金融事業者を騙ったウェブサイトや、既存の金融事業者を騙った投資勧誘等も確認されていますのでご注意ください。
    • 入金の際に証券会社が個人名義の銀行口座を指定することはありません。
    • 偽サイトやフェイクニュース等による詐欺的な投資勧誘にご注意ください!!

    暴力団やトクリュウが関与した最近の犯罪から、いくつか紹介します。

    • 組織的に特殊詐欺事件に関与した疑いで、大阪府警は住吉会傘下組織「武蔵屋一家」の組事務所に家宅捜索に入りました。2024年3月、茨城県に住む80代女性が、息子をかたる男から「俺だけど。職場の若い女の子に子どもができた」などとウソの電話を受け、現金60万円をだまし取られるオレオレ詐欺事件が発生、府警は、「武蔵屋一家」組員らグループ数人を逮捕していたもので、府警は、暴力団の組織的な関与や詐欺被害金の行方について捜査しています。
    • フィリピン拠点の暴力団系犯罪グループ「JPドラゴン」が特殊詐欺を繰り返していたとされる事件で、福岡県警に詐欺容疑などで2026年1月に逮捕された同幹部の佐藤翔平容疑者が「毎月500万~1500万円の『上納金』を複数の日本人幹部に納めていた」と供述していることが判明しました。佐藤容疑者は逮捕後の取り調べで、「かけ子」のまとめ役だったと説明、フィリピンの拠点には、かけ子のチームが少なくとも3班あり、1班で毎月3000万~5000万円をだまし取っていたといいます。こうして集めた現金の一部を幹部らに毎月上納した上で、自らの報酬として毎月1500万円程度得ており、多い時は3000万円に上ったといいます。また、受け子はグループ内で「R」と呼ばれ、SNSで募集し、佐藤容疑者らが電話で面接をしてリクルートしていたといいます。佐藤容疑者は、氏名不詳者らと共謀して2022年10~12月に三重県や岐阜県などの当時70~80代の男女3人にうその電話をかけ、キャッシュカード計10枚を盗んで271万円を引き出したり、140万円をだまし取ったりしたとして逮捕され、福岡地検が詐欺と窃盗の罪で起訴しました。また、県警は、氏名不詳者らと共謀して2023年2月に別の女性にもうその電話をかけてキャッシュカードを盗み、現金計約78万円を引き出したとして佐藤被告を窃盗容疑で書類送検しました。

    最近の特殊詐欺等を巡る報道からいくつか紹介します。報道自体はこれ以上されていますが、被害の大きい事件を中心に取り上げます。

    • 警察官などになりすまし男性から現金約1400万円をだまし取ったとして、三重県警は、詐欺の疑いで17~24歳の男女8人を逮捕しました。このグループによる詐欺の被害額は少なくとも10億円とみられ、県警は実態解明を進めています。他の人物と共謀して2025年7月以降、東京都東村山市の90代男性に警察官らをかたって「あなたの口座が狙われている」「引き出して自宅に保管して」「お金は検査する」などと電話し、同8月、現金1465万円を入れた紙袋を自宅のポスト脇に置かせ詐取したとしています。
    • 和歌山県警和歌山東署は、和歌山市の60代の男性会社経営者が、SNSを通じて投資話を持ちかけられ、現金計2億4550万円をだまし取られたと発表しました。男性は2025年8月、SNSの広告を通じ株式投資のグループに招待され、メンバーから「優良株を知っている。購入すれば必ずもうけられる」などと言われ、指示された株式投資専用アプリを登録し、同9月から2026年1月までに計2億3950万円を振り込んだといいます。その後、出金のため手数料600万円を振り込んだものの、追加で資金を要求されたことを不審に思って同署に相談し、被害が発覚したものです。
    • 口座に送金された計1億6000万円超が詐欺の被害金と知りながら、ATMで不正に引き出すなどしたとして、神奈川県警は、窃盗や詐欺などの容疑で、2人の容疑者を逮捕しました。管理する複数の預金口座に送金された計約1億6700万円について投資詐欺の被害金と認識しながら、2019年4~5月の17回にわたり、ATMで引き出したり、別の口座に振り込んだりして、盗むなどした疑いがもたれています。
    • 愛知県警一宮署は、一宮市の50代男性会社員が、LINEを通じて株に関する投資話を持ちかけられ、現金計約1億4800万円をだまし取られたと発表しました。男性は2025年8月ごろ、インターネットで投資の広告をクリックしたところ、LINEに誘導され、その後、日本人男性を名乗る人物らから投資を持ちかけられ、勧められた投資サイトに登録、投資や引き出し手数料などの名目で、同10月から2026年2月までに計22回現金を振り込んだといいます。サイト上では利益が出ていましたが、出金できず被害に気付いたものです。
    • SNS型投資詐欺で多額の現金をだまし取ったとして、奈良県警桜井署と県警組織犯罪対策課は、詐欺の疑いで、川崎市幸区の会社員を逮捕しました。「犯罪とわかっていながら、男性から金をだまし取る行為をした」と容疑を認めています。何者かと共謀し、2025年12月~2026年1月、LINEで知り合った奈良県桜井市の70代の男性の自宅を計2回訪れ、証券会社員と身分を偽り、男性から株式投資名目で現金計6500万円をだまし取ったとしています。容疑者は現金を回収する「受け子」とみられ、男性は投資詐欺で現金1億4500万円をだまし取られたといい、県警は共犯者らの行方や余罪などを捜査しています。
    • 青森県警八戸署は、県内に住む50代女性がSNS型ロマンス詐欺で、3606万円をだまし取られる被害にあったと発表しました。女性は2025年12月、スマホで「TikTok」を見ていたところ、「小林健太」を名乗る男からダイレクトメッセージ(DM)を受け取り、LINEアカウントを登録、メッセージのやりとりを始め、女性と「小林」がやりとりをするうちに結婚を約束すると、「株式投資で稼いで2人で暮らそう」と持ちかけられたといいます。その後、証券会社マネジャーらのLINEアカウントと投資サイトを紹介され、2026年1月、指定された口座に計423万円を振り込み、さらに女性宅を訪れた男に対し、現金3183万円を手渡したといいます。投資サイト上では利益が表示されたが、その後も現金を要求されたため、知人に相談して被害が発覚したものです。

    特殊詐欺の被害から守るために開発された民間事業者のアプリが、警察庁の推奨制度で初めて認定されました。スマホにダウンロードすれば、詐欺が疑われる番号を遮断したり、警告を発したりする機能を無料で使えます。認定を受けたのは、NTTタウンページとトビラシステムズが共同開発した「詐欺対策 by NTTタウンページ」、トレンドマイクロが提供する「詐欺バスター Lite」の二つのアプリで、いずれもすでに利用できるようになっています。これまでに詐欺に使われた番号や、詐欺の疑いがある番号から電話がかかってきた際に遮断したり、「詐欺電話の可能性があります」などと注意を発したりするものです。国際電話番号もブロックの対象になるほか、こうした詐欺が疑われる番号は、警察庁が捜査などで把握して提供した分に、事業者側が独自に判断し蓄積しているものも加えており、実在すると確認できている約500万件の企業などの名称が表示される「ホワイトリスト」機能もあります。また、アプリでは、詐欺グループの最新の手口といった防犯情報も読めます。警察庁で事業者のトップらが出席して認定式が開かれ、楠芳伸長官は「国民の皆様にぜひ警察庁推奨の詐欺対策アプリをダウンロードして犯人との接点を断っていただきたい。周囲にもお勧めいただき、詐欺に遭わない社会の実現にみんなで取り組んでいきましょう」と呼びかけました。同庁は詐欺への新たな対抗手段として、自治体や関係団体と連携し、広く普及を図る考えです。推奨アプリ制度は詐欺被害対策として警察庁が2025年12月に始めたもので、事業者からの申請を受け、警察庁が審査し認定する仕組みで、他にも数社から申請や問い合わせがあるといい、同庁は今後、推奨アプリの数を増やしていく方針だといいます。

    (3)薬物を巡る動向

    財務省は、全国の税関が2025年に押収した不正薬物が前年比15%増の約3211キロだったと発表しました。2019年(約3339キロ)に次いで過去2番目に多い結果となりました。航空機旅客による密輸の摘発が増えており、犯行グループがインバウンド(訪日外国人客)の増加に合わせて密輸量を増やしている可能性があるといいます(国際郵便物を利用した密輸は22%減の428件となりました)。不正薬物のうち覚せい剤は前年比53%減の約840キロでした。ただ、航空機旅客による密輸は93%増の約664キロと大幅に増え、全体の8割を占めました。発送地別の摘発件数は、米国からが43%を占め、タイが27%、ベトナムが8%と続いています。また、大麻は約1531キロと前年の3.5倍に急増し、過去最大となりましたが、東京税関が2025年6月に摘発したベトナム人グループによる1000キロ超の大麻密輸は、国内で一度に押収された違法薬物量として過去最大でした。コカインやMDMAなどの麻薬は49%増の798キロでした。また、「ゾンビたばこ」などと呼ばれ、手足のしびれなどの健康被害や異常行動を引き起こす恐れがある指定薬物「エトミデート」の摘発も4件ありました。一方で、金地金の摘発件数は2024年比61%減の192件、押収量は68%減の425キロとなりました。このほか、ベトナムからコメ約45トンを「緑豆」と偽って不正に輸入しようとした事例があり、国内のコメ価格が高騰していたことから、密輸を試みた可能性が指摘されています。

    厚生労働省は、違法薬物の流通や密売に関する情報を分析する麻薬取締部の機能を強化、トクリュウが違法薬物の取引に使用している秘匿性の高い通信アプリなどの情報を関東信越厚生局麻薬取締部に集約し、新たに導入する分析機器で解析、担当の麻薬取締官も増やし、迅速な捜査で中心人物の摘発につなげるといいます。近年、化学物質を合成して作られた違法薬物の使用が若者らの間で広がり、売買には主にSNSが使われ、トクリュウが密売に関与するケースが増えており、秘匿性の高い通信アプリで連絡を取り合い、組織の実態が見えにくいことが捜査の壁となっていることから、関東信越厚生局麻薬取締部は、分析が困難な情報を各地の麻薬取締部から収集、秘匿性の高いアプリの情報を解析する分析機器を導入、検挙した密売人らのスマホの通信履歴などを分析し、指示役につながる情報がないかを探るといいます。分析結果は各地の麻薬取締部と共有するほか、担当の麻薬取締官も6人増やします。また、違法薬物は医薬品医療機器法などで製造や販売が禁じられていますが、規制された薬物の化学構造を一部改変した別の薬物が登場するいたちごっこが課題になっており、厚労省は、薬物を鑑定する最新の装置も導入し、検出能力を高め、新たな薬物の登場を早期に察知し、広がる前に規制をかけられるようにするとしています。麻薬取締部には全国で計約300人の麻薬取締官が所属し、麻薬取締法に基づき違法薬物の捜査にあたっていますが、捜査を効率的に進めるため、情報の集約と機能強化を図るものです。人員の確保や装置の購入に必要な経費約4億円を2025年度補正予算に計上しています。

    SNSを悪用した医薬品の不正販売を防ぐため、東京都は、秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」を通じた取引を監視の対象に加えると明らかにしました。都議会第1回定例会の一般質問で答えたものです。SNSが向精神薬や糖尿病治療薬「マンジャロ」などの不正販売の温床となり、オーバードーズ(過剰摂取)や不適切な使用を招いていると指摘されています。都薬務課は2019年から「X」で不正販売を監視し、疑わしい投稿に対し、「許可なく販売することは医薬品医療機器法に違反する。直ちに中止してください」などと警告してきました。当初は年に数十件だった警告は、2025年度は約400件に上っているといいます。Xを入り口にテレグラムでのやり取りに移るケースも目立ち、都は2026年度、テレグラムの情報発信機能「チャンネル」に監視の網を広げ、「監視・指導を一層強化していく」としています。

    警察庁は、2025年に大麻事件で摘発された20歳未満の少年は前年より245人(21.7%)増の1373人と、統計がある1990年以降で最多になったと発表しました。摘発されているのは、有職少年が624人、高校生が313人、無職少年が283人、大学生が62人、中学生が28人でした。また、2024年に改正された法律で、大麻の「使用」も罰則の対象になり、173人がこの理由で摘発されました。警察庁の調査では、「誘われて」が64.3%、「自分から求めて」が26.5%と、友人などに誘われて始めるケースが多い結果となりました。後述するように、大麻事件は近年、大学の運動部で相次いで発覚しています。2025年8月には、当時19歳の少年を含む国士舘大柔道部員2人が麻薬取締法違反の疑いで逮捕されました。

    大学の運動部への大麻の蔓延については、本コラムでも以前から取り上げてきましたが、いまだに問題となっています。直近でも以下の事例がありました。

    • 流通経済大が、男子サッカー部員が茨城県龍ヶ崎市の寮で大麻を使用した疑いがあり、茨城県警の捜索を受けたと発表、大学の聞き取りに5人が使ったことを認め、うち1人から簡易尿検査で陽性反応が出たといい、サッカー部は無期限活動停止となりました。報道によれば、2026年2月上旬以降、「部員が違法薬物を使用している」といった複数の情報が中野雄二監督らに寄せられたといい、同24日にはより具体性のある情報が届きいたといいます。同26日に部員に対する聞き取りを始め、簡易尿検査の市販キットで複数人を調べたところ、1人から陽性反応が出たほか、5人が「大麻と認識して使った」と説明し、大麻リキッドだったことや複数回の使用を認める部員もいたといいます。大学側は茨城県警竜ヶ崎署に相談、使用を認めた部員5人が任意で事情を聞かれ、同28日には龍ヶ崎市内にある寮のうち、2棟の計3室が麻薬取締法違反の疑いで捜索を受けました。5人はいずれも2年生で、寮の屋上で大麻を使用したとみられており、先輩の部員を通じて大麻を入手したと話している部員もいるとのことです。なお、大学は中野監督の職務を停止しています。また、今後、違法薬物への啓発活動や研修などを実施したり、寮の管理を改めたりして再発防止に努めるとしています。
    • 大麻を使用したとして、神奈川県警が、日本体育大レスリング部の男子部員を麻薬取締法違反の疑いで横浜地検に書類送検しています。同部を巡っては、別の男子部員が横浜市内のコンビニエンスストアで下半身を露出したとして、2025年12月に公然わいせつ容疑で逮捕されていました。報道によれば、この部員と書類送検された部員は、同じ寮で生活していたといいます。この部員は大麻由来の成分を含む菓子を食べていたとみられていますが、鑑定結果は陰性だったものの、神奈川県警が関係先を家宅捜索し、入手経路や違法性の認識の有無を慎重に調べていたものです。書類送検を受け、日体大はホームページで「禁止薬物に関与するような行為は断じて許されるものではなく、誠に遺憾。早期に再発防止策を策定する」などとする、石井隆憲学長名のコメントを発表しました。

    最近の国内における薬物事犯の報道から、いくつか紹介します。

    • 東京・歌舞伎町の「トー横」と呼ばれる一帯で、10代少女に無許可で睡眠薬を販売したとして、警視庁少年育成課は、麻薬取締法違反(向精神薬譲渡)容疑で、専門学校生の20代の女を書類送検しています。トー横では、若者による薬のオーバードーズ(過剰摂取)が問題となっています。市販薬を万引きしたり、医師から処方された薬を譲渡したりするケースもあるとみられ、女は任意の調べに「余ったから売った。やってはいけないことだった」と話しているといいます。女はSNSに「睡眠薬1錠余っているんだけど欲しい人いる?」などと投稿し、少女が「買いたい」と応じたといい、2人はいずれもトー横に出入りしていたといいます。女は睡眠薬について「トー横で知り合った男から買った」と説明、同課はこの男についても調べています。警視庁は2026年1月、歌舞伎町で一斉補導を実施、睡眠薬など約600錠を所持したり、けいれんを起こして救急搬送されたりした10代少女らを補導しており、若者のオーバードーズを防ぐための警戒を強めています。
    • 福岡市・中洲を中心に、違法薬物を密売していたグループの指示役とみられる男が逮捕されました。警察は大量の違法薬物を押収していて、暴力団が関与しているとみて調べています。大麻取締法違反などの疑いで逮捕されたのは、福岡市早良区の20代の会社員ら13人で、プロ格闘家や風俗店従業員など客計7人も逮捕されています。容疑者らは2024年9月、福岡市中央区平尾の路上で、大麻を含むおよそ140グラムの植物片などを営利目的で男3人に譲り渡したなどの疑いがもたれており、警察は2024年9月以降、違法薬物の密売人やその客あわせて17人を逮捕、その後の調べで、容疑者が密売を取り仕切っていた疑いが浮上したということです。容疑者は、福岡市・中洲の飲食店で知人を通じて密売人を募集。複数の密売グループをつくり、中洲での違法薬物の取引を意味する「中洲手押し」という隠語などをSNSに投稿して客を集め、秘匿性の高い別のSNSで販売の指示や客との連絡をとっていたとみられています。警察は大量の違法薬物を押収していますが、発覚を免れるため、保管場所を転々とさせていたとみられ、グループが拠点としていた民泊施設やマンションの一室などからは、乾燥大麻5.5キロのほか、違法薬物の錠剤1100錠などが押収されています。警察は違法薬物の量などから、背後に暴力団が関与しているとみて調べています。
    • 九州厚生局麻薬取締部と熊本県警は、大麻由来の有害成分テトラヒドロカンナビノール(THC)を使用したとして、麻薬取締法違反の疑いで熊本市中央区にある店舗の従業員の20代の容疑者を逮捕しています。報道によれば、店はGOODCHILL(グッドチル)熊本下通店で、日本では規制されていない大麻由来成分カンナビジオール(CBD)を含む商品を扱っています。また取締部と熊本県警はコカインを所持したとして、同法違反の疑いで同店従業員だった20代の容疑者と知人の会社員の20代の容疑者を逮捕しています。
    • 自宅で覚せい剤を製造したなどとして、覚せい剤取締法違反に問われた山梨県甲斐市、大学院生の男に対し、福島地裁郡山支部は、懲役2年6月、執行猶予4年(求刑・懲役2年6月)の判決を言い渡しました。報道によれば、男は2025年3月、山形県米沢市の自宅で覚せい剤を製造し、自宅で覚せい剤を使用したもので、裁判長は、「(大学院などで得た)科学的知見や実験器具を悪用し、安易に覚せい剤を製造、使用したことは相応の非難に値する」と述べた一方、「速やかに自首をし、犯行を素直に供述するなど反省の態度を見せている」として執行猶予をつけました。覚せい剤を自宅で製造できる環境が整えられること自体に驚かされます
    • プロ野球の広島東洋カープは、「ゾンビたばこ」と呼ばれる指定薬物「エトミデート」を使用したとして、医薬品医療機器法違反で起訴された羽月被告との契約を解除したと発表しました。球団は「信頼を大きく損なう事態となったことを深くおわびする」とコメント、新井監督は「監督として責任を感じる。チーム全体で改めて事の重大さを自覚し、信頼回復に努める」との談話を出しています。
    • 「ゾンビたばこ」と呼ばれる指定薬物エトミデートを使用したなどとして、近畿厚生局麻薬取締部は、20代と30代の男女2人を医薬品医療機器法違反(指定薬物の使用)などの疑いで逮捕、送検しています。2人はエトミデートを使ったことを認め、その上で、「過度に使用してふらふらして倒れることもあった」、「強い渇望感があり、使用後3日くらいは砂漠の中で水を欲するくらいの衝動があった」と供述、「数百万円は購入に使ったのではないか」とも話しているといいます。2人は2026年1月中旬~下旬、覚せい剤やエトミデート、大麻などを体内に摂取し、使用した疑いがもたれています。2人は同居しており、同1月に覚せい剤約4グラムと大麻約4グラムを自宅で所持したとして逮捕され、同2月に1人の容疑者が覚せい剤取締法違反(所持)などの罪で起訴されました。2人の自宅からエトミデートが付着したカートリッジ27本、覚せい剤約15グラム、大麻植物片約52グラムのほか、コカインなど麻薬3種類を押収したといいます。同部が薬物密売に関するSNSの投稿をサイバーパトロールで発見、2026年に入って、2人を密売グループの関係者とみて捜査していたといいます。容疑者はエトミデートについて、2024年10月ごろから使用していたと供述し、「SNSを通じて知り合った薬物の密売人からサンプルとしてもらったのが最初だった」などと話しているといいます(エトミデートの問題が表面化する1年以上前から使用していたことになり、筆者が想像する以上に国内で蔓延が進んでいる可能性があります)。厚生労働省によると、エトミデートは一部の国で鎮静剤などの医療品として使われていますが、日本国内で承認されていません。過剰摂取すると手足がけいれんしたり、意識を失ったりすることから「ゾンビたばこ」とも呼ばれています。エトミデートの使用をめぐっては、2026年に入り、プロ野球広島東洋カープの選手だった羽月隆太郎被告(25)が逮捕、起訴されていますが、同部によるエトミデートの使用容疑の検挙は初といい、担当者は「大阪でも乱用が認められた。歯止めを効かせられるよう、今後も厳重に捜査していきたい」と話しています。
    • 麻薬「ケタミン」約48キロを密輸しようとしたとして、東京税関は、ルーマニア国籍の男を関税法違反(輸入未遂)などの容疑で現行犯逮捕し、東京地検に告発しています。税関が一度に押収したケタミンの量としては過去最多といいます。報道によれば、男は2026年1月、スーツケース2個にケタミン約48キロを隠し、ドイツから羽田空港に密輸しようとした疑いがもたれています。税関職員が、手が震えている男を不審に思い、荷物を確認したところ、ケタミンが見つかったといいます。また、麻薬のケタミン約15キロをドイツから密輸したとして、大阪府警関西空港署などは、麻薬取締法違反(営利目的共同輸入)の疑いで、英国籍の容疑者を逮捕しました。大阪税関によれば、一度の摘発量としては1994年の関西空港開港以来、最多といいます。2026年1月、ポリ袋入りのケタミン約15キロをスーツケースに入れ、飛行機でドイツから韓国を経由して関西空港に密輸した疑いがもたれています。
    • 航空会社のスターフライヤーは、パイロット訓練生の20代の男が覚せい剤取締法違反(使用)容疑で福岡県警小倉南署に逮捕されたとして、懲戒解雇にしたと発表しました。同社によれば、男は2025年4月に入社し、副操縦士として勤務するための訓練を受けていたといい、同年11月から2026年1月にかけて計34回、乗客を乗せた機体に搭乗、2025年12月29日に関西―羽田便、同30日には羽田―山口宇部便で操縦の一部を担当したといいます。乗務前には機長らが顔色などをチェックしていたものの、覚せい剤使用の兆候は確認されなかったといい、同社は国土交通省航空局に事案を報告、再発防止を指示されたということです。多数の乗客の生命・財産を預かる業務にもかかわらず、薬物の支配下にあって運航されることはあってはならず、航空会社としてより一層徹底した取り組み(薬物検査の実施など)を行っていただきたいと思います。
    • 大麻を所持、使用したとして、広島県警は、東広島署刑事2課の巡査を懲戒免職処分とし、発表しました。巡査は麻薬取締法違反(所持)容疑で逮捕、起訴され、使用容疑でも追送検されています。報道によれば、巡査は2025年12月、自宅である官舎で乾燥大麻を所持し、使用、自宅からは大麻片約5.5グラムのほか、大麻リキッドや合成麻薬LSDなども見つかったといいます。「仕事のストレスでやり始めた」「やめられなかった」などと説明、また、巡査は「署のトイレや捜査用車両で大麻リキッドを使用したことがある」「広島に来てから20回ぐらい大麻を購入したことがある」とも話したといい、その常習性もさることながら、警察としてその兆候をもっと早く掴むことができなかったのかと指摘せざるをえません。
    • 秋田県教育委員会は、大麻と麻薬成分を含むキノコ「マジックマッシュルーム」を自宅で所持していたとして、中学校教諭(麻薬取締法違反で公判中)を懲戒免職処分にしました。2026年2月の初公判で起訴事実を認めたためで、薬物所持による教職員の懲戒処分は県内で初めてだといいます。県教委は同法違反容疑で逮捕された後の2025年10月上旬、同市教委を通じて辞職願を提出してきましたが、県教委は受理せずに起訴休職状態になっていたと説明、県教委や同市教委が10月末に行った事情聴取には、「係争中で認否も含め答えられない」と話していたといいます。県教委では不祥事防止に向けた研修を行っていますが、「今後は薬物についても機会を設けたい」と述べています。
    • コカインを所持したとして、警視庁は、7人組ガールズグループ「XG」プロデューサーで、「SIMON」などとして活動する容疑者ら男4人を麻薬取締法違反(共同所持)容疑で現行犯逮捕しました。ほかに逮捕されたのは、米国籍で自称音楽プロデューサーの容疑者と、会社員の男2人で、4人は共謀して、愛知県内のホテル一室で、コカイン1袋を所持した疑いがもたれています。同庁が、4人が滞在していたホテルの部屋を同容疑で捜索したところ、コカイン4袋と乾燥大麻1袋が見つかったものです。
    • 自宅で乾燥大麻数グラムを所持したとして、厚生労働省関東信越厚生局麻薬取締部に逮捕された音楽デュオ「DefTech」のMicroとして活動する容疑者について、東京地検は20日、麻薬取締法違反で東京地裁に起訴しました。西宮容疑者は2026年2月に現行犯逮捕されていました。
    • 大阪府吹田市の関西大学幼稚園に不審者が侵入し、女性職員を羽交い締めにした事件で、大阪府警吹田署は、建造物侵入容疑で現行犯逮捕した男を、自宅で大麻を所持したとする麻薬取締法違反(所持)容疑で再逮捕しています。「大麻成分は入っていないと思っていた」と容疑を否認しています。男は、現行犯逮捕された当初は「(侵入)当日、自宅で大麻を吸った。命を狙われていると思うようになって幼稚園に逃げ込んだ」と供述していたといいます。吹田市内の自宅で、大麻約1・5グラムを所持したとされ、現行犯逮捕後に男の自宅を捜索し、室内から植物片や吸引器具などを押収、鑑定で大麻と断定したものです。
    • 大阪市浪速区の市営住宅一室で2026年1月、住人の高齢男性が殺害された事件で、大阪府警捜査1課は、殺人罪で起訴された20代の被告を、コカインを所持したとする麻薬取締法違反(共同所持)容疑で再逮捕しました。容疑者は、面識のない海本さん宅に入った理由を「薬物の売人から追われていた」と供述、捜査の結果、実際に大阪市内でコカインを購入し、売人とトラブルになっていたことが確認されたといいます。
    • 茨城県内の茂みに男性の遺体が遺棄された事件で、警視庁は、男性を車で連れ去って殺害したとして、被告ら男女3人を殺人や営利目的誘拐容疑で再逮捕しました。3人は共謀して225年6月、松永さん(当時48歳)を自宅から誘い出して、乗用車で連れ去った上、都内などを走行中の車内で、松永さんの顔面や頭部を蹴るなどして殺害した疑いがもたれています。同庁は、3人が松永さんとの間で違法薬物の取引を巡ってトラブルになったとみて調べています。
    • 警察署で2025年7月、勾留中の男と接見し、男が書いた証拠隠滅を指示するメモを携帯電話で撮影して関係者に送ったとして、愛知県警が証拠隠滅教唆の疑いで、愛知県弁護士会所属の弁護士を書類送検しました。男はコカインを使用したとする麻薬取締法違反の罪などで公判中で、県警中村署で勾留されていた被告と接見、コカイン入りのカプセル剤を名古屋市守山区のマンション一室のテーブルに置くよう指示するメモを撮影し、被告のいとこに送ったとしています。県警は、コカインが入っていると知らずにカプセル剤を飲んだように偽装する目的だったとみています。被告は証拠隠滅教唆罪でも起訴され、いとこも証拠隠滅罪で起訴されています。
    • 佐賀県警科学捜査研究所の元職員(懲戒免職)によるDNA型鑑定不正をめぐり、県弁護士会の出口聡一郎会長は、所属弁護士が再審請求を検討している覚せい剤取締法違反事件の鑑定者の一人が元職員だったと明らかにしました。元職員が在宅起訴されて氏名が明らかになったため分かったといいます。再審請求が検討されているのは、覚せい剤取締法違反の所持と使用の罪で福岡高裁の有罪判決が確定した事件で、男性は2017年11月に逮捕され、覚せい剤の所持を否認しましたが、薬物のパケットに付着した微物が男性のものだとするDNA型鑑定結果が決め手になったものです。不正発覚後、服役中の男性から、一審佐賀地裁で国選弁護人を務めた弁護士に調査の依頼があり、複数の弁護士がこの事件の鑑定者が元職員かどうか調査、佐賀地検からは、事件記録が規定の保存期間を過ぎて廃棄済みのため確認できないとの回答で、弁護側は手元に残る裁判資料を元に調査を続けるとし、鑑定者が元職員の可能性がある場合は再審請求する方針を示していました。県警や地検は、元職員による鑑定のうち「不適切」とした130件は、送検された25件も含め、捜査・公判への影響はなかったとしています。出口会長は「今回の事件の鑑定は130件に含まれていない可能性がある」としたうえで、「弁護士が男性と協議したうえでになるが、再審請求を検討せざるをえないだろう」と述べています。

    メキシコ治安当局は2026年2月、中西部ハリスコ州での銃撃戦で凶悪な麻薬組織「ハリスコ新世代カルテル(CJNG)」リーダーのネメシオ・オセゲラ容疑者(通称エル・メンチョ)を殺害しました。米国務省が最大1500万ドル(約23億円)の懸賞金をかけて行方を追っていました。同容疑者殺害を受け、ハリスコ州では、カルテル側の報復とみられる車両爆破や放火などが発生、ナバーロ州知事は連邦政府や地元自治体とも連携する治安会議を設け、住民への攻撃を防ぐための緊急態勢に移行しています。メキシコ国防省によれば、ハリスコ州の州都グアダラハラ近郊、約130キロメートルのタパルパ市での掃討作戦でCJNGメンバー4人を殺害し、メンチョを含む3人はメキシコシティへの搬送中に死亡したといいます。特殊部隊が主導したこの作戦では、航空機を撃墜できる「ロケットランチャー」や装甲車両など殺傷能力の高い武器を押収、メキシコの大物「麻薬王」として知られるオセゲラ容疑者は1980~90年代に米国で逮捕され、釈放されて帰国すると一代で巨大カルテルを築きました。2000年代に結成したCJNGはコカインや合成麻薬「フェンタニル」の密輸で巨万の富を得ていたことがわかっており、米麻薬取締局(DEA)が最重要容疑者の一人として行方を追っていました。米国は同容疑者を密輸や麻薬密売などの罪で2022年に起訴し、情報提供の懸賞金も引き上げていました。「シナロア・カルテル」を率いたホアキン・グスマン・ロエラ受刑者(通称エル・チャポ、米国で服役中)やかつてのパブロ・エスコバル(コロンビア)と並ぶ水準の麻薬王として、米当局もメンチョの摘発に執念を燃やしていたところです。トランプ米大統領は2026年1月のベネズエラ攻撃後も、メキシコへの米軍の派遣を繰り返しメキシコ政府に提案してきました。シェインバウム大統領はこの提案を断りながらも、凶悪犯ら37人を米政府に引き渡すなど、麻薬密輸を許さない姿勢を積極的に発信してきました。米側が重要視していたメンチョの殺害も、こうした努力を誇示する一端だといえます(米連邦捜査局(FBI)も情報提供で協力したことがわかっていますが、作戦自体はメキシコ治安当局の単独だったとみられています)。今回の殺害は、メキシコでの麻薬密売組織との戦闘の転換点となる可能性があります。シェインバウム大統領は、米軍の地上部隊を投入せずに国内最強の麻薬密売組織に対する高度な作戦を遂行できることを米国に誇示することに成功したものの、メキシコ国内での麻薬密売組織による暴力活動が制御不能に陥った場合、同氏の人気に影を落とすリスクも孕んでいます。麻薬密売組織との血みどろの戦闘に疲弊した国民に恐怖を呼び覚ましたことで、同氏にとっての政治的なリスクは特に深刻で、与党の国家再生運動(MORENA)が2018年に政権を掌握した背景には、計数万人の死者・行方不明者を出した政府と麻薬密売組織の戦闘に対する国民の憤りが大きく作用、ロペス・オブラドール前大統領は「銃弾ではなく抱擁を」というスローガンを掲げ、社会プログラムを通じた貧困や暴力の根源的要因の解消を優先、しかし、このアプローチがCJNGのような犯罪組織に縄張りを固めさせ、アボカド生産者への恐喝から燃料密輸計画に至るまで目まぐるしいほど多様な産業に影響力を広げさせる余地を与えたとの批判が出ています。そして、シェインバウム氏の就任後、殺人事件発生率が劇的に低下してきましたが、オセゲラ容疑者の殺害を受けた暴力行為が阻みかねないことが懸念されています。報道によれば、殺人率事件発生率が低下した一因としてCJNGが国内各地で支配力を強めていたことがあり、オセゲラ容疑者殺害を受けてこの構造が崩壊する可能性があるというものです。さらに、メキシコ軍がシナロア・カルテルとCJNGの両方に対する同時の本格的な軍事攻勢は困難だと指摘されているところです。また、2026年に米国、カナダと共催するW杯はメキシコシティ、モンテレイでも試合開催が予定されており、人命に直結する治安の悪化は会場準備の遅れとは根本的にレベルの異なる懸案であり、レビット米大統領報道官は、「現時点で米国人が負傷、死亡したという報告はない。米国人には髪の毛1本にも触れてはならない」と述べ、麻薬カルテルに警告しています。2026年3月、メキシコ政府は、米国、カナダと共催する6、7月のサッカーワールドカップ(W杯)での安全確保に向け、政府や国際サッカー連盟(FIFA)の関係者が会談し、作業部会を設置、メキシコ側は治安や国防、交通部門のトップのほか、3都市の関係者らも会談に出席、ガルシア治安・市民保護相は、政府と3都市の連携で「大会期間中の安全を保証する」と述べ、FIFA側は取り組みに謝意を示したと報じられています。

    メキシコとは対照的に、南米エクアドルは、米軍と共同で麻薬犯罪組織の取り締まりに乗り出しました。米国の軍事力を活用して国内の治安対策を強化するとしています。キューバ大使に国外退去を求めるなど、米国寄りの姿勢も鮮明にし、麻薬対策に注力する米国との連携強化を前面に打ち出す動きとなっています。中南米を管轄する米南方軍とエクアドル国軍は、麻薬対策などの一環として共同軍事作戦を開始したと発表、エクアドルのノボア大統領は「3月には米国を含む地域の同盟国と共同作戦を実施する」と述べ、犯罪組織への取り組みが「新たな局面に入った」との見解を示しました。エクアドル外務省は、キューバの在エクアドル大使と外交団に対し、48時間以内の国外退去を命じました。理由は明らかにしていないが、犯罪対策での米国との協力を踏まえ、親米姿勢を鮮明にしたとみられています。キューバのディアスカネル大統領は「前例のない行為だ。歴史的な友好と協力関係を損なう」と批判、ロドリゲス外相も、今回の措置が米国の圧力の下で決定された可能性について指摘しています。トランプ米政権は、中南米における麻薬対策を外交政策の柱の一つとして位置付けてきました。麻薬生産国に隣接するエクアドルは、近年、麻薬取引の主要な中継地となっており、米国はこれまでもエクアドル政府に対し、麻薬組織対策を目的とした資金提供やテロ組織指定などで連携する姿勢を示してきました。エクアドルは中南米地域で最悪レベルの殺人件数を記録し、治安対策が喫緊の課題となっています。治安対策を最優先とするノボア氏は、非常事態宣言の発令や軍の動員など強硬な措置を進めてきましたが、改善の見通しは立っていない状況にありました。かねて米軍との軍事的連携の可能性を模索してきたエクアドルは、米国にとっても同地域での主要同盟国の一つと位置付けられており、米国は軍事行動に踏み切ることで、中南米地域の麻薬対策を加速させる狙いがあるとみられています

    トランプ米政権は2026年3月、南部フロリダ州で中南米諸国の首脳らを招いた会議を開き、麻薬カルテルの壊滅を目指す「軍事連合」を発足させました。米政権が重視する西半球で、影響力を行使する取り組みの一環で、会議は「米州の盾サミット」と名付けられ、アルゼンチンやエルサルバドルなど12カ国の首脳を含む計17カ国が参加しました。また、それに先立ち、ミラー米大統領次席補佐官は、米南方軍司令部に中南米各国の軍首脳を招いて開いた会議で、麻薬組織​を打倒できるのは軍事力だけだと強調しました。第2次トラ‌ンプ政権は、ベネズエラ沖で麻薬を運搬していると見なした船舶を攻撃したり、メキシコ政府の麻薬組織首領拘束作戦を支援した​りするなど、麻薬犯罪に対する軍事力行使をいとわな​い姿勢を打ち出しています。ミラー氏は「数十年にわ⁠たる取り組みの結果、麻薬組織の問題には刑事司法に​よる解決策が存在しないとわれわれは学習した。本会議が​法律家の集まりではなく軍事指導者の会議である理由は、これらの組織は軍事力によってのみ打ち負かせるからだ」と力説しました。法律専​門家や野党民主党は、麻薬取引の犯罪者をテロ組織と同列​視するトランプ政権のやり方に合法性があるのかどうか疑問視して‌いますが、ミラー氏は、何の違いもないと主張、麻薬組織については「それらの(テロ)組織と同じように残虐かつ容赦なく扱われるべきだ」と言い切っています。国防総省が「第1回アメリカ大陸カルテル対策会議」と銘打った会議には、アルゼンチンやペルー、エクアドル、ボリビア、ジャマイカなど中南米国家の国防相らが参加しましたが、米国の強硬姿勢には中南米の一​部諸国から不安も​出ており、コ⁠ロンビアとブラジル、メキシコは今回の会議に代表者を派遣していません。一方、ヘグセス米​国防長官は、この会議で麻薬犯罪対策に関す​るより緊⁠密な協力につながる作戦行動というテーマを重視したいと述べ、長年にわたって資源不足を訴えてきた南⁠方軍​に必要な資源を提供すると約束し喝​采を浴びました。ただイラン攻撃が始まったことで、南方軍は今後米軍内の部隊​や艦艇、航空機の確保を巡って他の部門と競合を迫られることになります。また、ヘグセス氏は、麻薬カルテル撲滅に向けて参加国と共同で取り組むと確認、ヘグセス氏は「必要であれば単独でも攻撃に出る」と表明しました。米軍は、エクアドル軍と共に「指定テロ組織」への作戦を開始したと発表したばかりであり、それ以外の国の軍とも共同作戦を拡大する可能性があろ、ヘグセス氏は「我々の望みは意欲と意思と能力を備えた隣国や同盟国と共に、皆で協力して取り組むことだ」と強調しています。

    (4)テロリスクを巡る動向

    国の公安又は利益に係る犯罪等の取締り及びこれらの犯罪に関する情報収集並びに重大事案への対処を担う警備警察の取組等について紹介した「焦点~令和7年の治安の回顧と展望」から、テロリスクに関する記述を紹介します。なお、本レポートでは、特集として「ローン・オフェンダーその他不特定多数の者に危害を加えるおそれのある者に対する対策の更なる強化」が組まれていました。安部元総理に対する銃撃事件、岸田総理(当時)に対する爆発物投てき事件、自由民主党本部、首相官邸に対する火炎びん投てき事件など、「近年、特定のテロ組織等と関わりのないままに過激化した個人、いわゆるローン・オフェンダー(LO)が、 暴力に訴える過激な手段により公共の安全と秩序を脅かしている」としてその実態や対策がコンパクトにまとめられています。

    ▼ 警察庁 焦点~令和7年の治安の回顧と展望
    • ローン・オフェンダー等対策の概要
      • 組織性を有さず単独で過激化して違法行為を実行するローン・オフェンダーに対処するためには、下図のように違法行為に及ぶ「意思」や「能力・物」に着目することで、その「前兆」に関する情報を把握することが有効である。警察では、様々な警察活動を通じて関連情報を把握できるよう部門横断的な取組を進めるとともに、サイバー空間における情報収集・分析や関係事業者等との協力を通じて、幅広く確実な「前兆」の把握に努めている。
    • 部門横断的な取組
      1. 司令塔機能の強化
        • ローン・オフェンダー等による被害を未然に防止するためには、警察の各部門が緊密に連携して「前兆」の収集や部門横断的な対策を行う必要がある。
        • このため、警察では、情報の一元的な集約及び危険度評価を行うとともに、関係部門による対策の調整を担う司令塔を都道府県警察本部・警察署の警備部門に設置している。
      2. 専従体制の整備
        • 警察庁においては、令和7年4月、全国の情報収集・分析や対策の司令塔として専従かつ常設の「ローン・オフェンダー等対策室」を新設した。
        • さらに、警視庁においても、令和7年4月、各種対策の実効性を一層強化することを目的として、公安部内にローン・オフェンダー等対策に専従する公安第三課を新設したほか、その他道府県警察においても、専従体制を拡充させている
      3. 都道府県警察の知見の融合
        • 道府県警察において指導的立場となる捜査員を育成するほか、都道府県の区域を越えた事案における関係警察の連携を確保するため、捜査員を警視庁(公安第三課)へ派遣し、各種実務を経験させる「LO対策実務研修」を令和7年10月から開始した。
        • この研修を通じて、捜査技能を向上させるとともに、都道府県警察の知見の融合を図っている
    • サイバー空間における情報収集・分析
      • 一般にローン・オフェンダー等は、現実空間における他者とのつながりが希薄である一方、サイバー空間では、過激な言説に影響を受けたり、違法行為を行うための下調査を行ったりするなど、一定の反応・活動が認められることが多い。
      • 特に、SNS等においては、要人への危害を予告したり、ほのめかしたりする内容の投稿がなされる場合があり、こうした投稿については違法行為に及ぶ「意思」の表明となり得ることから、必要な情報収集・分析を行い、危険度に応じて対策を講じる必要がある
        1. 脅威情報の収集・分析
          • 警察では、インターネット上に公開されたテロ等関連情報の収集・分析(オシント:オープン・ソース・インテリジェンス)を担う警察庁警備局インターネット・オシントセンターと都道府県警察が連携し、サイバー空間における脅威情報の収集・分析を実施している。
          • また、令和8年度には、この情報収集・分析業務の高度化・効率化を図るため、AIを活用した実証実験事業を実施することとしている。
        2. 全国オシント研修会・LO犯罪心理学講演会の実施
          • 警察庁は、都道府県警察の職員が参加する全国オシント研修会を開催し、サイバー 空間における情報収集について講義・演習を実施している。
          • また、犯罪心理学の専門家を招へいしてLO犯罪心理学講演会を開催し、ローン・オフェンダー等対策に係る知見の醸成に努めている
    • 関係事業者等との協力の拡充
      • ローン・オフェンダー等による違法行為の「前兆」を見逃さないためには、違法行為に利用し得る「物」にも着目することが重要である。警察では、過去の事例を踏まえ、違法行為の実行に至るまでの過程でローン・オフェンダー等が接触・利用し得る事業者等に幅広く協力を呼び掛け、確実な「前兆」の把握に努めている
        1. 爆発物原料対策
          • 爆発物の原料となり得る化学物質等は、薬局、ホームセンター、インターネット通信販売等で容易に入手が可能な状況にある。過去の重大事件では、ローン・オフェンダーが市販の化学物質から爆発物等を製造して違法行為に及んでおり、こうした化学物質の入手に際する不審な動向は、ローン・オフェンダー等による違法行為の「前兆」となり得る。
          • このため、警察では、爆発物の原料となり得る化学物質を販売する事業者を個別に訪問し、販売時における本人確認や使用目的の確認の徹底、不審情報の通報等を要請しているほか、実際に接客に当たる従業員に対し、不審購入者の来店や電話による問合せがあった場合を想定したロールプレイング型訓練を行っている。また、令和7年4月には、従来の指定11品目に準じて注視すべき化学物質5品目(追加5品目)についても販売事業者への働き掛けを行うこととするなど、取組を強化している。
          • 警察では、これらの販売事業者等から得られた不審情報を集約・分析するなどして爆発物を用いた違法行為の未然防止を図っている。
        2. 空薬きょう対策
          • 手製の銃砲を製造するローン・オフェンダー等が弾丸を用意する際、空の薬きょうを購入し利用する事例があった。
          • 空薬きょうは、市場の規模こそ小さいものの、一般消費者同士の個人間取引により流通していることから、警察では、取引の機会を提供するプラットフォーム事業者に対し、空薬きょうが悪用されないようにするための対策を呼び掛けている。
        3. 不動産事業者との連携
          • 過去の重大事件において、被疑者の自宅等において銃砲や爆発物が製造・保管された際、その工作音や異臭等に関する苦情が近隣住民や管理会社で把握されていた事例もあることが確認されている。
          • このような「前兆」を把握するため、警察では、不動産の業界団体に対する個別訪問、研修の機会を利用した広報啓発等を通じて、テロ等重大事案の未然防止に理解を得るとともに、金属加工時の異音、火薬製造時の異臭等の不審情報の通報を呼び掛けている。
    • 第27回参議院議員通常選挙に係る取組
      1. 情報収集体制の強化
        • ローン・オフェンダーによる3つの重大事件は、いずれも国政選挙の期間中(令和4年の参議院議員通常選挙、令和5年の衆議院議員補欠選挙及び令和6年の衆議院議員総選挙)に発生した。令和7年の第27回参議院議員通常選挙では、要人等に対する事件を二度と起こさせないため、警察庁LO脅威情報統合センターを設置し、組織を挙げてローン・オフェンダー等対策を強力に推進した
        • センターは、下図のとおり、全国警察から関連情報を一元的に集約・統合するとともに、都道府県警察が行う対策の調整や、警護部門等への情報共有を行った。その過程では、警護対象者や候補者に危害を加える旨を予告するなどSNS上の危険な投稿が889件確認され、都道府県警察において警告を行うなど必要な対応を行った。
      2. プラットフォーム事業者との協力強化
        • 警察は、令和7年の参議院議員通常選挙において、商品やサービスを直接保有・提供する事業者だけでなく、多数のユーザーに取引の場やシステムを提供するプラットフォーム事業者にも対策を呼び掛けた。
        • なかでも、大規模なSNSを運営するX Corp.は、ローン・オフェンダー等によるテロを未然に防止する観点から、警護対象者や候補者へ危害を加える旨を予告するなど危険な投稿について、同社のポリシーに基づき警察からの緊急開示要請に積極的に対応した。警察は、同社の協力を得て投稿者を特定し、警告等の必要な対応を行った。
    • 小型無人機の利活用推進に向けた取組
      • 警察では、小型無人機の性能向上等を踏まえ、各種警察活動の合理化・高度化に資する観点から、小型無人機の利活用を推進している。具体的には、平素から、人が立ち入ることが困難な場所における行方不明者の捜索、交通事故事件捜査における現場見取図の作成及び警護における高所からの現場状況の確認に活用しているほか、災害や事故等の発生時には、小型無人機によって撮影した映像をリアルタイムで警察本部、警察庁及び首相官邸に伝送するなど、現場状況の把握や被災者の救出救助、避難誘導等の活動に活用している。
      • 令和7年4月には、警察庁における小型無人機等の活用等について司令塔機能を担う体制を整備するため、警備局警備運用部警備第一課に小型無人機等運用室を新設した。同室が中心となり、都道府県警察等における、小型無人機の部門を越えた利活用や操縦士の更なる育成等の取組を推進している。
    • イスラム過激派と我が国に対するテロの脅威
      • ISIL(いわゆるイスラム国)は、平成31年(2019年)3月、イラク及びシリアにおける全ての支配地域を失い、令和元年(2019年)10月には、米国の作戦行動により初代指導者バグダーディが殺害された。その後の指導者の相次ぐ死亡により、現在は、令和5年(2023年)8月に就任した5代目指導者アブ・ハフス・アル・ハシミ・アル・クラシに対し、ISILの「州」を称する各地の関連組織が忠誠を表明している。ISILについては、中枢組織の弱体化や求心力の低下が指摘されているものの、アフガニスタン及びアフリカ地域において、関連組織がテロの実行及びプロパガンダの発信を継続している
      • また、ISILは、イラク及びシリアにおける軍事介入に対する報復として、従前から、「対ISIL有志連合」参加国等に対するテロの実行を呼び掛けているほか、同年10月に発生したハマス等のパレスチナ武装勢力によるイスラエルへのテロ攻撃及びその後の武力衝突を受け、欧米権益等に対するテロ実行の呼び掛けを強化している。令和6年(2024年)1月には、ISIL広報官が独自メディアを通じて「かれらに会えば、何処でもこれを殺しなさい」と題する音声声明を発出し、民間人と軍人を区別することなく、ぜい弱な標的に狙いを定め、爆発物や銃器、刃物、車両等を使用した攻撃を世界各地で実行するよう呼び掛けた。こうした情勢下、同月、イラン・ケルマーンにおいて連続自爆テロ事件が発生し、少なくとも84人が死亡、284人が負傷しており、また、同年3月のロシア・モスクワのコンサート会場における襲撃テロ事件では、少なくとも144人が死亡、551人が負傷しているところ、いずれもISILが犯行声明を発出している
      • さらに、欧米では、計画段階で阻止されたものも含め、ISILのプロパガンダに影響を受けたとみられる者によるテロ事件が確認されている。例えば、同年8月に発覚したオーストリア・ウィーンのコンサート会場を標的とするテロを計画したことにより逮捕された男は、インターネットを通じて過激化しISILに忠誠を誓っていた人物であり、男の自宅から化学物質や爆発装置等が発見されるなどした。令和7年(2025年)1月には、米国・ニューオーリンズにおいて、ISILに参加したと自称する米国市民がピックアップトラックを運転して群衆に突入するなどして14人が死亡、少なくとも57人が負傷したが、これは、過去10年間の米国におけるアル・カーイダ(以下「AQ」という。)やISIL関連の攻撃で最多の死者数を出した事件とされる。また、同年2月には、オーストリア・フィラハにおいて、インターネットを通じて短期間で過激化しISILに忠誠を誓ったとされるシリア国籍の男が路上で通行人を無差別にナイフで襲撃し、1人が死亡、5人が負傷する事件が発生したほか、同年12月には、豪州・シドニーのボンダイビーチにおいても、ISILの影響を受けたとみられる男2人が銃を乱射し、15人が死亡、40人以上が負傷する事件が発生するなど、ISILは欧米において引き続き重大な脅威となっている。
      • 加えて、イラク及びシリアでISILが支配地域を失ったことにより、両国における外国人戦闘員及びその家族の多くが同地を離れて、母国又は第三国に渡航してテロを行う危険性が指摘されてきた。一方で、旧支配地域に残留する者の一部は、いまだ拘束されずに活動を継続しており、その脅威は継続している。戦闘員以外の女性や子供の帰還についても、同人らが過激思想に感化されている可能性を考慮すれば、帰国後にテロ対策上の脅威となることが懸念されている。
      • AQは、令和4年(2022年)7月に指導者アイマン・アル・ザワヒリが米国の作戦により殺害された後、新指導者の発表が認められないなど、指導部の損失に直面しているが、令和3年(2021年)8月にアフガニスタンで実権を掌握したタリバーンとの密接な関係が指摘されており、同国を拠点として活動が活発化することが懸念されている。一方で、中東やアフリカにおいて活動するAQ関連組織は、各地で自律的に活動しており、現地政府・治安機関等を狙ったテロを継続している。
      • また、ISILをはじめとするイスラム過激派組織による先端技術の悪用も懸念されており、暗号資産を通じた資金獲得活動やAIによるプロパガンダ素材の生成と様々な言語への翻訳、暗号化されたアプリへのリクルート対象の誘導等により、影響力の強化及び勢力の拡大を図っているとの報告もある。これらの事情を鑑みれば、国際テロを取り巻く情勢は、依然として厳しい状況にあるといえる
    • 我が国を標的とするテロの脅威
      • 平成25年(2013年)1月の在アルジェリア邦人に対するテロ事件、平成31年(2019年)4月のスリランカにおける爆弾テロ事件等、邦人や我が国の権益がテロの標的となる事案が現実に発生していることから、今後も、邦人がテロや誘拐の被害に遭うことが懸念される。
      • ISILは、独自メディアである「アル・フルカーン」やオンライン機関誌「アル・ナバア」を通じ、欧米権益等に対するテロの実行を呼び掛けるプロパガンダを継続している。
      • また、アフガニスタンを拠点とするISIL-Kの関連メディアにおいて、タリバーンに協力的な国家を批判する意図で、他国の国旗とともに我が国の国旗が掲載されるなど、我が国に言及する状況が確認されている
      • AQについても、米国とその同盟国をテロの標的とするよう呼び掛けているほか、米国で拘束中のAQ幹部ハリド・シェイク・モハメドは、我が国に所在する米国大使館を破壊する計画等に関与していたと供述している。
      • こうした動向や供述は、米軍基地をはじめとする欧米権益等が多数存在する我が国に対するイスラム過激派組織によるテロの脅威の一端を明らかにしたものといえる。これらの事情を鑑みれば、我が国に対するテロの脅威は継続しているといえる。
    • サイバー情勢
      • サイバー空間は、地域や年齢、性別を問わず、全国民が参加し、重要な社会経済活動が営まれる公共空間へと変貌を遂げ、金融、航空、鉄道、医療等といった国民生活や社会経済活動を支える基盤となる機能から、警察や防衛といった治安や安全保障に関わる国家機能に至るまで、あらゆる場面で実空間とサイバー空間の融合が進んでいる。
      • こうした中、政府機関、金融機関等の重要インフラ事業者等におけるDDoS攻撃とみられる被害や情報窃取を目的としたサイバー攻撃、国家を背景とする暗号資産獲得を目的としたサイバー攻撃事案等が相次ぎ発生するなど、サイバー空間をめぐる脅威は、極めて深刻な情勢が続いている。
      • 近年、世界各地で機密情報や知的財産の窃取、重要インフラの機能停止等を企図したとみられるサイバー攻撃が相次いで発生している。こうした攻撃の中には国家の関与が疑われている攻撃も数多く存在し、今後も世界的規模でのサイバー攻撃の発生が懸念される
    • 【事例】サイバー攻撃集団「MirrorFace」による情報窃取を目的とした攻撃
      • 令和7年(2025年)1月、警察庁及び内閣サイバーセキュリティセンターは、2019年頃から日本国内の組織、事業者及び個人に対するサイバー攻撃キャンペーンが、「MirrorFace」(別名:EarthKasha)と呼称されるサイバー攻撃グループによって実行されたと評価し、連名で注意喚起を発出した。攻撃対象、手口、攻撃インフラ等を分析した結果、「MirrorFace」による攻撃キャンペーンは、主に我が国の安全保障や先端技術に係る情報窃取を目的とした中国の関与が疑われる組織的なサイバー攻撃であると評価している。
    • 【事例】サイバー攻撃集団「SaltTyphoon」による情報窃取を目的とした攻撃
      • 令和7年(2025年)1月、米国財務省外国資産管理局(OFAC)は、中国四川省を拠点とするセキュリティ企業「四川聚信和网科技有限公司(四川聚信)」に対する制裁を発表した。
    • 四川聚信は、中国国家安全部(MSS)と強いつながりがあり、サイバー攻撃グループ「SaltTyphoon」の活動に直接関与しているとされている。「SaltTyphoon」の一連の攻撃は、米国の国家安全保障、外交政策等に係る情報窃取を目的とした組織的なサイバー攻撃であると評価されている。
    • 【事例】サイバー攻撃集団「APT27」による情報窃取を目的とした攻撃
      • 令和7年(2025年)3月、米国司法省は、世界的なコンピュータ侵入キャンペーンに関与したとして、中国公安部2名、安洵信息技術有限公司(i-Soon)従業員8名及び「APT27」(別名:SilkTyphoon、UNC5221)構成員2名を訴追したと発表した。これらのアクターは、中国公安部(MPS)及びMSSの指示や独自の判断に基づき、米国を拠点とする中国の批判者及び反体制派、米国内の大規模な宗教組織、アジアの外務省、並びに米国の連邦政府及び州政府等を標的としたサイバー攻撃を実施し、窃取したデータの対価としてMPS及びMSSから多額の金銭を受け取っていたとされている。
      • 同日、米国財務省は、訴追された「APT27」構成員及び同人が設立した上海黒英信息技術有限公司(ShanghaiHeiying社)を制裁対象に指定することを発表した。
    • 【事例】サイバー攻撃を支援する民間企業
      • 令和7年(2025年)12月、英国政府は、英国及び同盟国に対するサイバー攻撃を実行したとして中国を拠点とする安洵信息技術有限公司(i-Soon)及び北京永信至科技有限公司(IntegrityTech)を公表し制裁を行った。制裁対象となった企業は、世界中で80以上の政府機関及び民間企業を標的としたサイバー攻撃を実施したほか、他者の悪意あるサイバー活動を支援したとされている。英国国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)は、これらの民間企業が中国のサイバー攻撃を支援したと評価している。
    • 【事例】フランスへのサイバー攻撃
      • 令和7年(2025年)4月、フランス外務省は、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)に属するハッカー集団「APT28」が2021年以降にフランスの省庁や防衛関連企業、シンクタンク、2024年パリオリンピック関連組織等に対してサイバー攻撃を行ったとする声明を発表した。これらの攻撃は、情報窃取やシステム侵害を目的とした国家主導の行為であり、フランスは国際法違反として強く非難した。
      • 声明は、フランス国家情報システム庁(ANSSI)の技術的分析に基づいており、「APT28」の活動がフランスのITインフラに深刻な脅威を与えたとしている。
    • 【事例】西側諸国の物流企業とテクノロジー企業を標的としたサイバー攻撃
      • 令和7年(2025年)5月、米国サイバーセキュリティ・社会基盤安全保障庁(CISA)、米国国家安全保障局(NSA)、米国連邦捜査局(FBI)、西側諸国当局等は、GRUによる西側諸国の物流企業やテクノロジー企業を標的とするサイバー攻撃に関し、共同サイバーセキュリティアドバイザリー(CSA)を発出した。同アドバイザリーによれば、物流企業やテクノロジー企業を標的とした攻撃では、以前に公開された戦術、技術、手順(TTP)が組み合わせて使用されており、また、ウクライナや隣接するNATO諸国のIPカメラを大規模に標的とする攻撃とも関連している可能性が高いとしている。
    • 【事例】マイクロソフトの認証情報を窃取するサイバー攻撃
      • 令和7年(2025年)7月、英国外務省は、欧州各国を標的としたサイバー攻撃に関与したとして、GRUの3部隊(26165、29155、74455)及びGRUの幹部職員を含む関係者18人に対する制裁を発表した。同日、NCSCは、GRU26165部隊に属するサイバー攻撃集団「APT28」が、Microsoft社のサービスにおける被害者のメールアカウントへのアクセスを可能とする認証情報を窃取するためマルウェア「AUTHENTICANTICS」を使用していたことを明らかにした。林官房長官(当時)は22日の記者会見で、悪意あるサイバー活動を明らかにするための英国政府の取組を支持すると述べた。
    • 【事例】北朝鮮IT労働者による外貨獲得
      • 令和6年(2024年)12月、米国司法省は、経済制裁違反、電信詐欺、マネー・ローダリング、身分盗用等の長期にわたる共謀により、14人の北朝鮮人を起訴したと公表した。彼らは、IT労働者として米国企業や非営利団体で身元を偽装して雇用され、雇用による収入に加えて、企業の機密情報を窃取し雇用主を恐喝することで収入を補い、2017年4月から2023年3月までの6年間に少なくとも8,800万ドルを不正に稼いだとされている
      • 北朝鮮IT労働者が手口を一層巧妙化させ、世界的に活動を拡大している現状を踏まえ、令和7年(2025年)8月には、警察庁、外務省、財務省及び経済産業省は、「北朝鮮IT労働者に関する企業等に対する注意喚起」(令和6年(2024年)3月公表)を更新するとともに、米国及び韓国と共に、「北朝鮮IT労働者に関する共同声明」を発出した。
    • 【事例】サイバー攻撃集団「TraderTraitor」による暗号資産関係事業者を標的とした攻撃
      • 令和7年(2025年)2月、FBIは、北朝鮮を背景とするサイバー攻撃グループ「TraderTraitor」が暗号通貨取引所Bybitから約15億ドル相当の暗号資産を盗んだことを公表した。
      • 「TraderTraitor」は急速に活動を進めており、盗まれた資産の一部をビットコインやその他の暗号資産に変換し、複数のブロックチェーン上の何千ものアドレスに分散しているとされている。
      • また、「TraderTraitor」は、北朝鮮当局の下部組織とされる「LazarusGroup」の一部とされており、手法の特徴として、同時に同じ会社の複数の従業員に対して実施される、標的型ソーシャルエンジニアリングが挙げられる。

    イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の活動が世界中で活発化してきている印象があります。最近の報道から、いくつか紹介します。

    • アサド前政権が崩壊した中東シリアで、ISの活動が再び勢いづいています。IS対策などで駐留していた米軍は近く、部隊を完全撤退させる方針と伝えられており、シリア暫定政権がISを封じ込められるのか、懸念が出ている状況です。「今日のシャーム(シリア)は十字軍に支配されている」とISの報道官は米欧と接近する暫定政権のシャラア大統領を強く非難し、支持者らに暫定政権への攻撃を促しました。2日後、東部デリゾール郊外で暫定政権軍の兵士1人が殺害され、北部ラッカでも治安職員4人が殺害され、いずれもISの攻撃でした。ISは2003年のイラク戦争後に結成された「イラクのアルカイダ」を源流とし、シリア内戦に乗じて勢力を拡大、2014年6月にイラク第2の都市モスルを制圧し、「建国」を宣言、最盛期にはイラクとシリアの国土の各3分の1を支配するまでに拡大しましたが、2019年3月にシリアの最後の拠点を喪失、同年10月には最高指導者のバグダディ容疑者が米軍の急襲で死亡しました。シリアでは2024年12月、父子2代半世紀以上、強権体制を敷いたアサド前政権が反体制派の攻撃で崩壊、反体制派の主導で発足した暫定政権は、前政権時代に敵対していた米欧との関係を改善し、2025年11月には対IS作戦で米軍主導の有志連合に正式に参加しました。一方、ISは政変に伴う混乱に乗じて活動を活発化しているとされ、暫定政権の統治に反発を強めています。国連が発表した報告書によれば、ISはシリアとイラクに計3千人規模の戦闘員を擁しており、その大部分がシリアで活動、2025年、少なくとも5回にわたってシャラア氏ら重要閣僚の暗殺を試みたといいます。米軍は2014年からIS掃討作戦を開始し、シリアに駐留を続けてきましたが、トランプ政権は部隊撤退を進めています。2026年3月までの1カ月以内に約1千人とされる駐留部隊を完全に撤退させる方針です。1期目のトランプ政権は2018年、「我々はISに勝った」として撤退を表明しましたが、議会や政権内部から反発を受けて頓挫、ただ、2025年1月の政権復帰後は再び撤退する姿勢を示しています。ロイター通信によれば、米政権高官は「シリア政府が自国におけるテロとの戦いの責任を担う意思を示している」と主張、米軍がIS掃討を担う地上部隊として支援してきたクルド系武装勢力シリア民主軍(SDF)は2026年1月、暫定政権への統合で合意しましたが、暫定政権の統治には脆弱性が残っています。暫定政権は2026年1月、IS関係者やその家族らを収容していた北東部アルホルのキャンプの管理をSDFから引き継ぎましたが、米紙WSJが米当局者の話として報じたところによれば、収容者の半数以上にあたる1万5千~2万人が、管理の不備などの隙をついて脱走したといいます。暫定政権は、イスラム教アラウィ派など少数派との衝突が相次ぎ、治安の維持に課題が生じています。ISの抑え込みに失敗すれば、情勢の一層の混乱は避けられず、米軍がシリアから完全に撤退すれば、ISが再び台頭する可能性があり、地域における安全や米軍の安定を危険に晒される可能性があります。
    • 豪州のアルバニージー首相は、シリアのキャンプに収容されているISの戦闘員と疑われている自国民に同行していた家族について、政府として帰国支援や本国への送還は行わないとの方針を示しました。シリア北部のキャンプから釈放された34人のオーストラリア人は「技術的な理由」で拘留センターに戻されましたが、地元メディアが「ISの花嫁」と呼ぶこの集団には子供も含まれています。与野党議員の反対にもかかわらず、いったんダマスカスへ移動した後、最終的に豪州に帰国する見通しです。内務省報道官は、法を犯した者は訴追されると強調、「この集団の人々は、罪を犯してオーストラリアに戻れば、法の厳格な適用を受けることを認識する必要がある」と述べています。ISはオーストラリアでテロ組織に指定されており、メンバーには最大25年の禁錮刑が科される可能性があります。さらに、豪州政府は、シリア北部のキャンプに収容されている自国民の1人に対し、行使されることがまれなテロ活動防止権限に基づいて一時的に帰国を禁止すると表明しました。施設にいるオーストラリア人34人は、収容所当局が条件付きの解放を承認したことを受け帰国する見込みです。豪州政府は既に、キャンプに収容されていた者への支援は一切行わないと表明しており、国家安全保障上の脅威となる人物がいないか調査中です。バーク内相は「この集団の1人に対し、治安機関の助言に基づいて一時的な入国禁止命令が発令された」と説明、2019年に導入された法律は、政府が安全保障上のリスクと判断した14歳以上の国民を最長2年間入国禁止にできるもので、アルバニージー首相は、子どもを含むこの集団の一部のメンバーが「残忍で反動的なイデオロギー」に同調し、「われわれの生活様式を弱体化させ破壊しようとしている」と述べました
    • イラクと米国が協力し、情勢が不安定なシリアの収容所にいたISの戦闘員約5700人をイラク国内へ移送しました。イラクは訴追に向けて捜査し、国内の過激派ネットワークの一掃につなげる考えですが、移送先施設がテロの標的となるリスクも考えられるところです。イラク司法当局は、「計61か国から集まったIS戦闘員5704人の移送を完了した」と発表し、刑事手続きを始めたと明らかにしました。米中央軍も、「地上と空中で極めて困難な任務」が終了したとの声明を出しました。戦闘員らはイラクの首都バグダッドの空港近くや南部の刑務所に収容されました。ISの残党が今も活動する一方、拘束された戦闘員らはシリア北東部ハサカ県の複数の収容所に収監されていました。シリア北東部では2024年の内戦終了後もシリア暫定政権とクルド人勢力の対立が続いており、収容所が襲撃され、多数の戦闘員が脱走する懸念がありました。イラク政府は過激派の脅威に長年苦しんでおり、移送を好機と捉えています。司法当局は収容した戦闘員を「危険度ごとに分類」して事情聴取を進め、訴追手続きと合わせ、国内に潜伏する過激分子の情報も収集して掃討したい考えです。もっとも、数千人規模に及ぶ過激派の受け入れは危険な賭けともなります。IS壊滅後、イラクは国内ですでに多くの戦闘員を収監しており、収容能力は窮迫しており、収容所内の監視体制も脆弱で、過激分子が連絡を取ったり勧誘したりするなど、過激思想拡散の温床になっていると指摘されています。テロの悪夢を記憶する市民などからは、「過激派の脅威がシリアからイラクに戻ってきた」と危惧する声が上がっているほか、将来的な取り扱いも課題です。移送された戦闘員の6割はシリア人で、イラク人は1割未満にとどまっています。欧米出身者もおり、イラクは外国人戦闘員の本国送還を模索していますが、各国は受け入れに及び腰で、こうした状況が続く中、国内の収容施設が襲撃される可能性もあり、対応を誤ればISの再生を助長しかねないリスクを孕んでいます
    • パキスタン政府は、隣国アフガニスタンとの国境地帯にある武装勢力の拠点7カ所を攻撃しています。パキスタン政府は、ISの分派の隠れ家などを標的に、パキスタン国内で相次ぐ武装勢力によるテロに対する「報復」だと主張しています。アフガンのイスラム主義組織タリバン暫定政権は、アフガン東部でパキスタン軍の爆撃があったと認め、女性や子どもを含む数十人が死傷したと明らかにしました。タリバン暫定政権の国防省は「露骨な領土侵犯だ」と非難する声明を発表、民間人が犠牲になったとして「安全を守るため、適切な時期に対応を取る」と警告しています。パキスタン政府は声明で、2月上旬に発生した首都イスラマバードのモスクに対する自爆テロなどの責任はアフガンに拠点を置く武装勢力にあると指摘、国境を越えた攻撃を防ぐようタリバン暫定政権に求めましたが、具体的な対策を取らなかったと批判を強めています。タリバン暫定政権のムジャヒド報道官は、アフガン東部ナンガルハル州などでパキスタン軍の特殊部隊による爆撃があったとXに投稿、パキスタンとアフガンは2025年10月、国境地帯で衝突、両国で数十人が死亡し、カタールとトルコの仲介で停戦に合意したものの、同11月には停戦維持に向けた協議が決裂し、緊張関係が続いていました。
    • ナイジェリア国防当局の報道官は、イスラム過激派の掃討作戦を強化するため、米軍部隊約100人がナイジェリアに到着したと述べています。部隊はナイジェリア軍の訓練と助言に当たり、戦闘には参加しないと報道官は説明しました。トランプ米大統領は、ナイジェリア北西部で同国政府がイスラム過激派からキリスト教徒を守れていないと批判しています。ナイジェリア軍は今月、約200人の米軍部隊が追加派遣されるとの見通しを示していました。米軍は2025年12月にISを攻撃し、小規模な米軍部隊がナイジェリアに展開して同国の情報収集を支援しています

    バングラデシュの首都ダッカで2016年7月、武装集団が飲食店を襲撃し、外国人客らを人質に立てこもり、日本人8人が死傷したテロ事件から約10年が経過しました。2026年2月24日付毎日新聞の記事「「安全はコストじゃない」 ダッカテロ事件10年、被害者が語る教訓」は重要な気づきを得られる内容でした。記事では、当時、銃撃などで大けがをした建設コンサルタント会社「アルメック」の渡辺玉興・海外業務室長が、海外に進出する中小企業の安全対策を強化するための会合に出席し、「安全対策はコストではなく、事業を続けるための前提条件だ」と教訓を語ったことが正にその通りだと感じました。以前の本コラムでも詳細に取り上げましたが、事件は地元のイスラム過激派勢力によるもので、ISが犯行声明を出しました。20人が殺害され、そのほとんどがイタリア人や日本人ら外国人で、日本人は、国際協力機構(JICA)が発注した事業で調査していた建設コンサルタントや技術者らで、渡辺さんは事件で同僚ら7人を失いました。なお、暴排トピックス2016年7月号で筆者は、以下のような指摘をしています。現時点で、筆者の懸念がすべて解消されたかと言えば、かなり厳しい認識を持たざるを得ないというのが正直な感想です。

    ざっと挙げただけでも、以上のような(省略)兆候やISを取り巻く緊迫した情勢・背景事情があり、このようなテロを事前に察知することは不可能ではなかったのではないかとさえ思えます。ISがテロを活発化させているラマダン期間中に、ISに敵視されている外国人が集まるレストラン(ソフトターゲット)で夕食を取ることがいかに危険な行為であるかは、今、現地から遠く離れた日本で冷静に状況を分析すれば明らかですが、当事者にとっては、ある程度注意していたこと(例えば、車で移動していたなど)もあって、それ以上の危険はないだろうと盲信するなど、感覚が麻痺していたのかもしれません(あるいは、注意情報等が十分伝わっていなかった可能性も考えられるところであり、万が一、そうであれば、JICAや外務省などの危機管理体制の抜本的な見直しが急務となります)。

    さて、これらの分析を通して、危機管理(テロリスクへの対応)の第一歩は、情報収集とその的確な分析が重要であることを痛感させられます。さらに、本テロ事件で言えば、どうしてもその飲食店で会食する必要があったのか、必要があったのなら夜ではなく昼にする、といった対処をするだけでもリスクを大きくヘッジできた可能性があり、情報収集・分析に加え、適切なテロリスク対策・対処法を事前に知っておくことも極めて重要であると認識させられます

    また、海外に進出している日本企業もまったなしの対応を迫られています。海外進出企業の多くは、現地での活動と安全確保の両立に苦労している実態があり、例えば、一般社団法人 日本在外企業協会が2015年に行った調査では、危機管理マニュアルを持つ企業は71%にとどまっており、日本の多くの事業者の海外進出が危機管理対策の面ではまだまだ手探りの状況であることが伺えます。

    さらに、外務省等から情報提供面でのサポートがあるとはいえ、現時点で、現地従業員の安全確保は企業自身に委ねられているのが実情であり、治安状況によっては、現地の軍隊に警備などを依頼せざるを得ない可能性も否定できませんし、今回のテロで犠牲者を出したコンサルティング会社のように、中小規模の事業者が自助努力として莫大な警備費用等を支払える余裕があるとは考えにくく、安全コストは誰が負担すべきかが今後の大きな課題となりそうです。

    毎日新聞の記事に戻りますが、このJICAの事業は2022年にバングラデシュ初の都市高速鉄道「ダッカメトロ」として部分開業し、経済発展の起爆剤と位置づけられています。渡辺さんは外務省で開かれた会合で、事件で得た教訓について語り、「この国で大きな事件はめったに起きないと発生確率で考えるのではなく、起きたらどうなるか、社員の命や会社の事業にどれほど大きな影響が出るかを基準に判断することが重要だ」と指摘、「個人の注意で安全は守れない。『気をつけてください』だけでは限界がある」として、危険情報確認や緊急時の連絡方法などを会社が事前に決める仕組みが必要だと訴えました。渡辺さんは毎日新聞の取材に「安全対策は現場任せや個人の注意に委ねる部分が少なくなかったが、企業で責任を持って管理する体制づくりが進んだ」と過去10年を振り返り、安否確認システムの導入や緊急連絡網の整備、海外渡航前の在留届の提出、外務省の安全情報配信サービス「たびレジ」の登録が徹底されてきたといいます。一方、「中小企業では専任の安全担当者を置けないことが多く、短期出張者の安全意識の浸透は十分ではない」点が課題だといいます。さらに、慣れによるリスク感度の低下やサイバー・偽情報など新たなリスクも課題だと指摘しています。渡辺さんが出席したのは「中堅・中小企業海外安全対策ネットワーク」会合で、事件を受けて2016年9月に設立され、会合は今回で10回目だといいます。外務省や全国商工会連合会などが参加し、安全対策のノウハウ共有などに取り組んでいます。同省によれば、2024年に発生したテロの件数は前年比3%減の3492件で、死者数は同13%減の7555人で減少傾向にあるものの、テロが発生した国の数は前年の58カ国から66カ国に増えています。発生地域は中東や北アフリカが多かったところ、近年はアフリカのサヘル地域(サハラ砂漠南縁部)が多い状況です。実生泰介領事局長は日本人が海外で直面するリスクについて「テロだけでなく政情不安や大規模感染症、自然災害など多様化している」と指摘、「『海外は危ないから行かないで』ではなく、日本の底力を高めるためにも海外に打って出る日本人を後押ししたい」と話しています。正に「危機管理」の本質的な役割(存在意義)を示すものでもあります。

    2026年2月16日付産経新聞の記事「「テロ定義法」の策定も急務だ」も興味深いものでした。金沢工大大学院教授、元海将・伊藤俊幸氏の論考ですが、「衆院選の期間中、全国各地の街頭演説で共通した異変が繰り返された。候補者が演説を始めると集団や個人が拡声器や大声で罵声を浴びせ、ひどい場合は至近距離に詰め寄り威圧した。演説が事実上成立しない場面もあった。こうした行為は「抗議」「表現の自由」と説明されがちだ。しかし「反対意見を表明する自由」と「演説を成立不能にする行為」は本質的に異なる。街頭演説は候補者の「言論の自由」であると同時に、有権者が政策を知り比較・判断するための民主主義のインフラである。「威圧と騒音」で国民の政治参加を断念させる行為は、「政治的暴力」そのものである」、「「米国」では、国内テロの定義自体は「人命に危険な違法行為」を要件としている。しかしこれは処罰の最終形を示す定義にすぎない。実務上は、政治的目的をもって市民や政府を威迫・強要する行為は、人命危険が顕在化する前の段階から、テロ関連事案として捜査・介入の対象となる。「英国」では「政府に影響を与える、または公衆を威迫する意図の下、政治・宗教・思想的目的のために一定の重大行為、あるいはその脅しを行うこと」がテロと定義され、計画や支援など実行前段階から介入が可能とされている。「フランス」は「威迫または恐怖によって公の秩序を重大に攪乱(かくらん)することを目的とする企てと結び付いた犯罪」をテロとして扱い、「ドイツ」は「刑法典におけるテロ組織規定」などを軸に、組織化や準備段階から対処する。共通するのは、「表現の自由」と「選挙の自由」を並列の憲法価値として捉え、「表現が他者の政治的権利を破壊する地点で制限される」という明確な線引きだ。日本にはこの線がない。「テロ定義法」がないため「暗殺」という重大な犯罪も「政治的暴力」と認定できず、「威圧や恫喝」は制度の隙間に落ちる。選挙期間中の「演説妨害」と、銃弾による「暗殺」は別の問題ではない。「恐怖によって政治を黙らせる」という一点で、同じ連続線上にある。政治的動機をもって社会を威迫し、選挙や言論を萎縮させる行為を、正面から「政治的暴力」と定義して未然に排除する構造・制度が必要だ。いま日本に求められているのは国家としての覚悟そのものである」というもので、大変示唆に富むものだと思います。

    その他、海外における最近のテロリスクを巡る報道から、いくつか紹介します。

    • 欧州警察機関(ユーロポール)は、スペイン通信​社EFEに対し、中東紛争が欧州連合(EU)‌の安全保障に「直ちに影響を及ぼす」と警告、テロリズム、重大​な組織犯罪、暴力的な過激​主義、サイバー攻撃の脅威が増⁠大するとの見解を示しました。広報官は、欧​州のインフラに対するサイバー攻撃の増加や、高度化するAIを悪用し、​紛争を巡るネット上の情報氾​濫を利用したオンライン詐欺の増加が予想されると述べたほか、イランに関連するグループが、EU域内で「不安定化活動」を企てる可能性があると指摘、これに​はテロ攻​撃、威嚇⁠キャンペーン、テロ資金調達、サイバー犯罪など​が含まれると述べています。また、「EU域内にお​ける⁠テロの脅威や、暴力的な過激主義は深刻と考えられる」と語り、⁠独自​の思想に基づく単​独犯や小規模組織による活動がテロ脅威をさ​らに高める可能性があると指摘しました。
    • ロシアの通信監督当局は、通信アプリ「テレグラム」への接続の制限を始めたと明らかにしました。ロシア法に違反し、犯罪対策が不十分なことが理由だと主張しています。また、ロシア当局は、メッセージアプリ「テレグラム」の創業者パベル・ドゥーロフ氏をテロ活動の助長に関する刑事事件の一環として捜査していると国営紙が報じています。ロシアはウクライナ侵略を始めた2022年以降、インターネット規制による情報統制を強めています。ロシアで利用者が多いテレグラムが本格的に制限されれば、同国でメッセージのやり取りなどに使えるサービスの選択肢が一段と限られることになります。最近、テレグラムは、同アプリが犯罪の温床になっているとの批判や、欧米やウクライナの情報機関に情報が漏洩しているといったロシア側の主張を否定していました。同紙は「ドゥーロフ氏の行為は、ロシア刑法第205.1条第1.1項(テロ活動への支援)に基づく刑事事件の一環として捜査されている」と伝えています。ロシア大統領府のペスコフ報道官は、ロシアへの「潜在的な脅威となり得る」資料がテレグラム上に大量に存在することを当局が確認したと述べたほか、「多数の違反が確認され、テレグラム管理者による当局への協力拒否も記録されている。関係当局は適切と見なす措置を講じている」と語っています。ロシアの通信規制当局は、過激派コンテンツを削除しないとして、国内で広く利用されているテレグラムに制限を導入しており、ロシア当局は約1年前に開始された国産アプリ「MAX」への切り替えを促しています(ただし、当局による監視に使われるのではないかといった懸念がでています)。テレグラムはロシア出身のドゥーロフ氏が2013年に立ち上げた、現在は中東に拠点を置いています。暗号技術により秘匿性を高めたのが特徴で世界に広がりましたが、犯罪行為に絡む書き込みを放置しているとの批判も出ています。ドゥーロフ氏は2024年にプラットフォーム上で違法取引を可能にした共謀などの疑いでフランス警察に逮捕され、後に保釈されましたが、ロシアは仏当局の捜査を非難していました。
    • テキサス州オースティンのバーで少なくとも2人を殺害、14人を負傷させた容疑の男について、捜査当局は、男に精神疾患の診断歴があったと明らかにしました。一方、米連邦捜査局(FBI)は男とテロの関連性について捜査を進めており、容疑者がイランの国旗が描かれたシャツと、「アラーの所有物」と文字が書かれたスウェットシャツを着用していたとされ、米国とイスラエルが共同でイランを攻撃したことが容疑者の動機となったのではないかとみられているようです。

    (5)犯罪インフラを巡る動向

    ロシアによるウクライナ侵攻では、「ドローン(無人航空機)」が戦い方を大きく変えています。地上の格闘戦や近接戦より、長距離砲撃や戦闘機による空中戦の方が、敵を殺害する兵士の心理的負担を軽くすることはこれまでも指摘されてきました。相手を人間ではなく単なる標的の一部、機械だと思い込むことができるためです。操縦士がカメラの映像を見ながら左右2本のレバーでドローンを操作する戦争は「戦争のゲーム化」と例えられています。「実戦で目の前の敵兵を撃つのと比べ、画面越しで攻撃するのははるかに容易だ」という兵士の証言があるとおりですが、ウクライナ軍の偵察用ドローンにも高画質・多機能のカメラが装備されている一方、爆撃用のドローンの多くのカメラ映像では、敵兵は「地面の点」か「暖色のスポット」にしか見えないため、兵士から戦争の現実感や殺害する実感を奪っていると指摘されています。ウクライナ軍のドローン部隊の兵士たちによれば、ビデオゲームの経験者が、操縦で卓越した技能を発揮するケースも多いようです。2022年には全死傷者の10%未満だったドローンによる死傷者は、2025年時点で最大80%まで跳ね上がったといいます。フランス国際関係研究所(IFRI)は2025年2月に公表した報告書で、戦争の大部分が「相互拒否の空中戦」に変貌したと指摘、このような変化を「イノベーションの速度、迅速な順応、継ぎ目のない技術統合によって定義される新たな戦争の論理」の一部と位置づけ、その中にはAIを含む他の技術も組み込まれるとの見方を示しています。戦争犯罪の最大のツールとなりつつあるドローンの正に「犯罪インフラ化」が顕著に進んでいるといえます。

    レクサスやアルファードなどの高級車を繰り返し盗んだなどとして、大阪府警は、男女2人の容疑者を窃盗容疑などで逮捕しました。報道によれば、自動車整備工場などで使われる「故障診断機」を悪用していたとみられています。容疑者らは、他の氏名不詳者と共謀し、2020年5月~2026年5月、大阪府吹田市の駐車場などで、アルファードやクラウン、レクサスなどの高級車を盗んだ疑いがあり、大阪、愛知、静岡など11府県で計356件、自動車210台や空き巣、事務所荒らしなどの総額約10億円相当の被害を裏付けたとしています。解錠用具を用いてドアの鍵を開け、自動車整備工場などでスマートキーの複製にも用いられる故障診断機を車に接続、車載コンピューターからキーの情報を盗み出し、複製していたといいます。本件のように自動車の窃盗被害が増えており、2025年は6386件で2024年から306件増え、4年連続の増加となりました。海外に不正輸出されているとみられ、車の制御システムに侵入する機器「CANインベーダー」を使う手口が目立ち、被害は7割が住宅や駐車場で起きています。警視庁や茨城県警などは2026年2月、ブラジル国籍の男3人を窃盗容疑で逮捕、事件に使われたとみられる機器を関係先から押収、CANインベーダーの中でも新型の装置だったといいます。販売サイトによれば、この装置は2021~24年式のトヨタ車の解錠や始動が可能だといい、「違法に使用した際の責任は負わない」とした上で、希望者は秘匿性の高いアプリ「テレグラム」で連絡するよう案内、インターネット上では、車種や年式に応じた様々な機器が数十万~数百万円で売られており、捜査関係者は「高級車の窃盗はほとんどがCANインベーダーを使ったものだ」と指摘しています。また、犯罪組織は盗難車を不正輸出しているとみられ、警視庁は2025年11月、車を解体する茨城県内の「ヤード」から横浜港に送られたコンテナを捜索、ドアやエンジンなどのパーツを発見、盗難された9台のトヨタ車を分解したもので、コンテナは貨物船でアラブ首長国連邦(UAE)に輸出される直前だったといい、警察は、盗難から輸出まで一連の行為にトクリュウが関与しているとみています。今後、解錠機器の所持規制を検討するほか、全国に3000か所あるとされるヤードの実態解明を進め、悪質業者の取り締まりも強化するとしています。また、自動車メーカーには盗難防止機能の向上を働きかける方針だといいます。

    米西部ワシントン州最高裁は、米インターネット通販最大手アマゾン・ドット・コムの通販サイト上で購入した亜硝酸ナトリウムを摂取して自殺した利用者の遺族が、アマゾンを相手取り損害賠償訴訟を起こすことができるとの判断を全会一致で示し、同州最高裁のホイットナー判事は、アマゾンには利用者に対し合理的な配慮を示す義務があり、「第三者による予見可能な行為からの被害」にさらさないようにすべきだと指摘しました。これまでに28の遺族が訴訟を提起、アマゾンは亜硝酸ナトリウムと自殺との関連を何年も前から把握していながら、自殺を助長し得る他の商品とともに、販売を無制限に認め続けてきたと主張しています(遺族側はこれらの商品を総称して「自殺キット」と呼んでいるといいます)。遺族側代理人弁護士は「アマゾンは利用者が自殺目的で使うことを認識しながら商品を販売し、利益を上げるべきではない」と述べていますが、アマゾンは遺族への弔意を示したものの、判決には同意しないと表明、同社は声明で、高濃度の亜硝酸ナトリウムは「直接摂取を意図したものではなく、不幸なことに多くの商品と同様に悪用され得る」と指摘、現在では、純度10%を超える亜硝酸ナトリウムの販売を禁止しているとしています

    SNSの依存性についての最近の報道から、いくつか紹介します。

    • SNSの利用について、依存性が高い「病的使用」が疑われる人は10~20代で6%に上ったとの調査報告書を、国立病院機構久里浜医療センターがまとめました。国内の人口に換算すると140万人規模となり、0~1%台だった他の各年代より高く、若年層でSNS依存が深刻化しつつある実態が浮き彫りとなっています。調査は厚生労働省の依存症対策事業の一環で、2025年1~2月、無作為で抽出した9000人に調査票を郵送し、10~80歳の男女4650人から有効回答を得ました。SNS依存には正式な病名はないため、依存性を測る海外の検査を参考に、「使えない時に気分が悪くなった」「嫌な気持ちから逃れるために使っていた」などの9項目から、病的使用の疑いを判断したものです。過去1年間のユーチューブやXなどの利用状況について尋ねた結果、「病的使用の疑い」に該当したのは、10代で男性7.1%、女性7.5%、20代で男性4.8%、女性5%に上りました。一方、30代以上の各年代は0~1%台となりました。病的使用が疑われる人のうち、27%がSNSなどの使用を巡り「家族に暴言を吐いたり、暴力を振るったりした」と回答、一方、「家族から暴言を吐かれたり、暴力を受けたりした」も19%に上りました。「30日以上学校を休んだ」は6%、「6か月以上続けて自宅に引きこもっていた」は5%でした。ゲームやメールなどインターネットの「病的使用の疑い」についても調べたところ、10~20代で14.5%に上りました。同センターが2018年度に同年代を対象に調査した際は6.2%で、同センターは「SNS依存の背景には、孤独や対人関係への不安などがあると考えられる。ネット利用の低年齢化が進む中、学校や家庭、地域が連携して適切な利用方法を指導する必要がある」としています。国立病院機構久里浜医療センターによる今回の調査は、日本でのSNS依存の実態を明らかにした初の公的調査となります。SNSを巡っては、好みの投稿や動画が次々と流れてくるアルゴリズムや、関心のある情報に囲まれる「フィルターバブル」といった特性から、依存性が指摘されてきました。日本では、SNSが「よりどころのない子供の居場所になっている」との意見もありますが、いじめを助長したり犯罪に巻き込まれたりするリスクもあり、海外では子供の利用を法律で規制する動きが広がっています。こども家庭庁は有識者会議を設置して、子供の利用規制について議論していますが、今回明らかとなった病的使用の実態や海外の動向も踏まえ、検討を急ぐ必要があります。
    • SNSや動画投稿アプリが抱える依存性の問題について、巨大IT企業の責任を問う動きが米欧で活発になっています。スマホ上にお薦めの動画や投稿を次々表示する機能など、コンテンツを見せるために用意された設計に問題があると考えられつつあるようです。米アルファベット傘下のユーチューブと米メタ傘下のインスタグラム、中国系短編動画投稿アプリ「TikTok」は、若者に特に人気のアプリで、最新情報を知ったり、交流を広げたりする上で欠かせないツールですが、画面をスクロールすることで刺激的な動画を際限なく閲覧でき、依存性を懸念する声は絶えません。調査機関ピュー・リサーチ・センターの2025年の調査によれば、米国の13~17歳の21%がティックトックを、17%がユーチューブを「ほぼ常に見ている」と回答、米国では、西部カリフォルニア州の裁判所で企業の責任を問う裁判が始まりました。訴状や米メディアによれば、原告である同州の女性は、幼い頃からインスタなどを利用したことで依存症に陥り、深刻な精神的被害を受けたと主張、メタとアルファベットが意図的に依存性の高いアプリを設計したとして、損害賠償を求めています。米メディアによれば、同様の訴訟は数千件も起こされており、今回の結果がSNS依存を巡る今後の動向を左右する可能性があります。一方、欧州連合(EU)欧州委員会は、ティックトックの「無限スクロール」などのアプリ設計が依存症を引き起こす恐れがあると指摘。巨大IT企業に利用者保護などを義務付けた法律(DSA)に違反するとの暫定的な判断を下し、ティックトック側がこうした設計を変更する必要があるとの見解を示しました。オーストラリアでは2025年12月、依存対策などを目的に16歳未満のSNS利用を禁じる法律を施行、日本でもこども家庭庁が2026年1月、SNS規制などの必要性を検討する作業部会を設置、若者をどう依存から守るか、議論が進む可能性があります。
    • 上記カリフォルニア州ロサンゼルスでの裁判では、原告側はメタが利用者の利用時間を12%増やす目標を掲げていたと指摘、これに対し、証言台に立ったザッカーバーグCEOは「かつては(利用時間の)目標値を設定していたが、もうしていない」と反論しました。本来は規約で利用できないはずの13歳未満の利用者が約400万人いると推定していたことを示す社内メールの存在も明らかになりました。ザッカーバーグ氏は「利用者の一部が年齢を偽っている」と述べ、年齢の確認機能を改善していると弁明しました。これまでSNS依存は、本人や家庭の問題として処理されてきましたが、SNS企業への批判に対して、メタは裁判が始まる前から声明で「成長より安全を優先してきた」と反発、同じく出廷したインスタグラムの責任者は「SNSへの没頭は臨床的な依存とは言えない」と主張し、メタの責任を否定しました。SNS企業側は、今回の裁判で不利な判決が出れば、SNSの根幹であるとする「表現の自由」の萎縮につながりかねないと主張しています。米国のSNS企業は、利用者の投稿によるトラブルの法的責任を原則、問われません。ネット上の有害な情報規制を目的とした通信品位法の230条によって、投稿の管理は利用者に委ねられてきたためですが、今回の裁判では投稿の内容ではなく、SNSの仕組みが争点となっています。結果によっては、訴訟がさらに増える可能性もあり、企業側は警戒しています。メタのリー最高財務責任者(CFO)は2026年1月末の決算発表で、損害賠償額が膨れれば、「最終的に重大な損失につながる可能性がある」と述べています。
    • 米国では1990年代、喫煙が原因のガンなどの疾患の治療に巨額の税金が支出され、健康被害を引き起こす製品を販売したタバコ企業が負担を迫られましたが、SNS企業をめぐる訴訟には、タバコ訴訟との類似性を指摘する声があります。SNSの健康被害を研究する米コーネル大のアシュリー・シェイ研究員は、「脳は20代まで発達し続けることがわかっているが、衝動や短期的な満足を司る報酬中枢よりも、それを抑制する機能の前頭前皮質は発達が遅い」とし、判断力が未熟な子どもへの影響は大きい」と懸念しています。同氏は「未成年に『こうしなさい』というのではなく、SNSの機能が私たちの認知システムにどう影響するかを学び、本人が行動を変えられるような教育も必要になる」と述べていますが、正にその通りだと思います。なお、米スタンフォード大の研究者は、SNS利用で脳内物質ドーパミンが放出されるため、薬物と同じような中毒性があると指摘、米保健福祉省は報告書で、SNSを1日3時間以上使う子供は、精神状態が悪化するリスクが2倍になるとの研究結果を紹介していますが、「心身の健康との因果関係はまだ科学的に立証できていない」とする専門家もいます
    • 世界では、未成年のSNS利用を規制する動きが出始めています。豪州以外でも、欧州連合(EU)の欧州議会も2025年11月、EU加盟27カ国でSNSを利用できる最低年齢を16歳とする決議案を賛成多数で採択し、行政府の欧州委員会に迅速な法案提出を求めました。米国でも複数の州で、未成年がアカウントをつくる際に年齢確認や保護者の同意を得ることを義務づける関連法が成立しています。フランスのマクロン大統領は「これは健康だけでなく、教育や民主主義の保護に関わる問題だ」と15歳未満のSNS利用を禁じる法案について意義を強調しています。法案は2026年1月末、国民議会(下院)で可決済みで、現地で新学期が始まる9月には規制が始まる見込みです。フランスは2018年から小中学校での携帯電話の利用も禁止しており、欧州の中でもSNS利用への問題意識が強いといえます。スペインのサンチェス首相も「子どもたちは依存症やポルノ、暴力がまん延する空間にさらされている」と指摘し、16歳未満の利用を制限する方向で議会との調整を急ぐ考えを示しました。同様の規制を目指す動きはデンマークやギリシャ、イタリア、スロベニア、チェコなど他の欧州各国でも続いています。
    • 欧州各国で、SNSの利用に年齢制限を設けようとする動きが相次いでいますが、大手SNSの大半は米国企業が運営しており、規制強化が新たな欧米対立の引き金になりかねない恐れがあります。日本政府でも同様の議論が始まっており、影響を受ける可能性があります。規制の実効性が焦点となるところ、課題の一つが、年齢確認の方法です。フランスは事業者に確認を求める方針ですが、アプリごとに厳格な確認をしようとすれば、利用者は運営会社ごとに個人情報を提供しなければならず、不便なだけでなく情報漏えいのリスクが高まることになります。欧州連合(EU)加盟国については、SNSを運営する巨大IT企業を規制するのは、「デジタルサービス法(DSA)」を定めたEUの役割であり、各国の規制にも限界があるとされます。EUは各国が使える共通の年齢認証機能の開発を検討していますが、さらに踏み込んで特定の年齢のSNS利用を域内で一律に制限しようとすれば、加盟国間の調整は難航必至であるうえ、最大の壁となりそうなのが巨大IT企業の対応です。EUの行政執行機関である欧州委員会は、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」がショート動画を無制限に流すなど「中毒性のある設計」を取り入れており、「未成年などの心身の健康に害を及ぼす可能性がある」として、DSAに違反しているとの予備的見解を出しました。判断が確定すれば、運営会社に巨額の制裁金を科す可能性がありますが、大半の人気SNSは米巨大IT企業が運営しており、規制への反発が予想されます。「強気」の背景には、トランプ米政権が「言論の自由」を持ち出し、SNSへの規制を「デジタル検閲」(バンス米副大統領)とみて強くけん制していることもあります。第2次トランプ政権発足後、米欧間ではロシアの侵攻を受けたウクライナ支援やデンマーク領グリーンランドの領有などを巡り緊張関係が生じてり、欧州による巨大IT企業への規制強化がさらなる火種となりかねない状況にあります。

    その他、SNSを巡る最近の報道から、いくつか紹介します。

    • 米ニューメキシコ州の連邦裁判所に提出された内部文書によれば、メタの幹部は、児童虐待などの事例を法執行機関に報告する会社の能力を阻害するという社内の警告にもかかわらず、フェイスブックとインスタグラムに接続されたメッセージングサービスを暗号化する計画を推進していたことがわかりました。メタのコンテンツポリシー責任者モニカ・ビッカート氏は、ザッカーバーグCEOによる計画の公表が準備されていた2019年3月の社内チャットで、「われわれは会社として悪いことをしようとしている。これはあまりにも無責任だ」と述べていたといいます。ニューメキシコ州のトーレス司法長官が起こした訴訟の証拠開示手続きで入手された電子メール、メッセージ、ブリーフィング文書などが公開されたもので、これらの資料は同社が計画の影響をどのように評価していたかや、政策・安全担当上級幹部が当時、この計画をどう見ていたかについて新たな情報を提供するものとなります。
    • 米カリフォルニア州での訴訟の一環として公開された裁判所提出資料によれば、13歳から15歳のユーザーのほぼ5人に1人が、メタに対し「インスタグラムで(見たくなかった)裸体や性的な画像」を目にしたと報告していたといいます。また、2021年1月の別の文書によれば、メタの研究者は10代のユーザーについて家庭内の「触媒」であり、弟妹や親のアプリ利用に影響を与えるとして、同社に10代ユーザーに注力するよう求めていました。この研究者はメモで「新規ユーザーを獲得(および維持)するには、家庭内におけるティーンの影響力を認識する必要がある」と述べていました。フェイスブックとインスタグラムを所有するメタは、グローバルリーダーらから同社の製品が若年ユーザーに害を及ぼしていると指摘されています。
    • メタは、運営するインスタグラムで、10代の利用者が自殺や自傷行為に関する言葉を短期間に繰り返し検索した場合、保護者に自動で通知する新機能を導入すると発表しました。深刻な事態を未然に防ぐ狙いで、若者の安全対策を強化しました。保護者にはメールやアプリを通じてアラートが届き、同時に子供との対話に向けた専門家の助言も提供するもので、新機能は、米国や英国、オーストラリアなどで先行導入し、他の地域は2026年内に展開する予定だといいます。なお、新機能について、子供の自殺予防に取り組む団体からは「保護者をパニックに陥らせる」(英モリー・ローズ財団)との懸念も出ています。10代の生成AIの利用が広がる中で、メタはAIとの対話に関しても、同様の通知機能を年内に導入する方針だといいます。
    • 米国務省は、欧州などでヘイトスピーチやテロ関連宣伝などと見なされて禁止されたコンテンツの視聴を可能にするオンラインポータルサイトの開発を進めており、トランプ政権の立場では、これは「検閲」への対抗措置とされています。「freedom.gov」と呼ばれるこのサイトは、VPN(仮想プライベート・ネットワーク)機能を組み込み、利用者が米国内からアクセスしたように見せかける案が検討されており、利用者のサイト上での動向は追跡されない仕組みだといいます。このポータルサイト開発計画は、貿易やウクライナ、デンマーク自治領グリーンランドといった問題で既に高まっているトランプ政権と欧州の伝統的な米同盟国の緊張をさらに増幅させかねず、このサイトは、米政府が外国市民に対して自分たちの国・地域の法律を破ることを推奨する形になる点も極めて異例といえます。トランプ政権は、特に保守的な意見が封殺されていると判断した場合、言論の自由を外交政策の重点に掲げてきました。一方、欧州では言論の自由に対する解釈が米国とは異なり、欧州連合(EU)がさまざまな制限を設けているのは、ナチズムなどの過激主義者の政治宣伝が再び勢いを持つのを阻止しようという取り組みに由来しています。ただトランプ政権側は、ルーマニアやドイツ、フランスなどで右派政治家が抑圧されていると批判し、EUのデジタルサービス法(DSA)と英国のオンライン安全法は言論の自由を制限していると主張しています。
    • 東京都は2026年度から3年間にわたり、小学3年生~中学3年生を対象にSNSの利用実態を調査するとしています。利用頻度やメンタルヘルスの状況について、同じ子どもに継続して回答してもらい、日常的なSNSの利用が心身にどう影響しているか把握し、適切な利用促進や意識啓発といった対策につなげるというものです。全学年合計で数千人規模の子どもを調査対象とし、SNSの利用時間や目的などを尋ね、精神面の健康に関する世界保健機関(WHO)の測定指標を用い、利用状況とメンタルヘルス悪化の関係性を調べるとしています。都が2025年12月に開いた子どものメンタルヘルスに関する有識者会議では「10代のデジタルネーティブ世代で問題増加が目立つ」との指摘がありました。都は思春期のインターネットやSNSの利用に関し、心の健康に一定の影響を与えている可能性があるとみています。2025年に実施した子ども向けの調査によれば、17歳で「今の自分は幸せだ」と感じる度合いは小学3・5年生より低く、都内の小中高生の自殺者数も増加基調にあります。
    ▼ 総務省 デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会 青少年保護ワーキンググループ(第3回)配布資料
    ▼ 資料3 個別論点ごとの議論
    • デフォルト設定・広告の閲覧制限
      • スマホにおけるインターネットの利用形態は、大きくWebの閲覧とアプリの利用で区別できる。
      • 青少年のインターネットの利用に伴い発生するリスクについて、新たなリスクが生じ、技術的保護策で対応できている部分がある一方、対応が事業者の自主的な取組に委ねられている部分も存在する。
      • 各媒体において、広告掲載基準が定められ、青少年保護に配慮した取組も実施されている。
      • 特定のコンテンツについて、未成年への配信を制限はいずれの媒体でも実施されているが、広告のパーソナライズの制限やターゲティングの制限には対応にばらつきがある。
      • EUでは1992年に、法規制強化の動きを背景にEASAが設立。EASAがガイドラインを作成するとともに、EU域内の各国の広告業界団体がネット広告に倫理・表現コードを適用し、苦情処理や自主是正を実施。青少年保護の関係では、ターゲティング広告の禁止を規定している。
      • 英国、フランスでも自主規制団体による取組が実施され、青少年保護に関する規制も盛り込まれている。
    • 利用対象年齢
      • プラットフォームサービスにおける利用規約上の対象年齢と、各アプリストアのレーティングはおおむね類似。
      • 他方、LINEについては対象年齢とGooglePlayのレーティングに差異がある。
      • Appleは、暴力・性・ギャンブルのほか、医療・ウェルネス、アプリの機能等、レーティング基準を細かく設定。Googleは、暴力・性・ギャンブルに関する内容が中心であるが、開発者向けの専門ポリシーによる管理などの多角的な措置を実施。
      • 両者の比較に限界はあるが、レーティングの項目は類似。
      • Webコンテンツの審査・認定について、日本ではI-ROIやEMAといった機関が2000年代後半から2010年代までWebサイトの審査・認定に関する取組を行っていたところ、現状では取組を終了している。
    • 年齢確認
      • 利用開始時の年齢確認方法について、自己申告で生年月日を入力する手法が多く取られているところ、LINEでは携帯電話事業者の登録情報に基づき年齢を確認している。
      • 利用中の措置について、他の利用者からの通報やコンテンツなどからの検知に基づき、利用者が対象年齢未満であることが疑わしい場合には、身分証の提示などによる確認方法が一部取られている。
    • 直近の諸外国の状況
      1. オーストラリア 16歳未満SNS禁止施行後1か月の動向
        • 2026年1月16日、eセーフティ・コミッショナーは施行後の初期対応として、主要SNSが16歳未満と特定された約470万アカウントのアクセスを削除・停止・制限したと公表した。
        • Metaは、「青少年が利用する多くのアプリは、法律の適用範囲外で、年齢認証ツールを導入していなかったり、安全性を重視していなかったりする。年齢確認と保護者の承認をアプリストアにおいて実施するよう法律を拡張する必要がある」との嘆願書を提出。Snapchatも同様の主張。
        • また、YouTubeは、16歳未満のアカウントを禁止した結果、ペアレンタルコントロールやウェルビーイング設定など、年齢に応じてアカウントに設定できる機能が使えなくなり、かえって子どもの安全を損なうとして政府を批判している
        • シドニー在住の14歳の少女(Amy)は、施行から1か月が経過し、「スマホから切り離された感覚があり、生活習慣が変わった」と述べている。施行直後は無意識にSnapchatを開こうとしていたものの、数日後には「ストリーク(毎日投稿を求められる仕組み)を気にしなくてよくなり、むしろ自由を感じた」と日記に記している。
        • 13歳の少年(Aahil)は、「利用時間や生活はほとんど変わっていない」と述べている。YouTubeやSnapchatについては、年齢を偽って利用を継続し、規制対象外のRobloxやDiscordなどのゲーム、メッセージングプラットフォームで友人と交流している。
        • 15歳の少女(Lulu)は、TikTokやInstagramで年齢を偽った新規アカウントを作成し、利用自体は継続していると語っている。ただし、「SNSを使い過ぎたくないという意識も生まれ、本を読む時間は増えた」とし、一定の行動変容も見られる。
        • 複数の未成年に共通して、Snapchat等が使えなくなった結果、WhatsAppやFacebookMessengerといった規制対象外のメッセージングアプリへ移行したとの指摘もなされている。
      2. フランス 15歳未満のSNS利用を禁止とする法案の可決
        • 仏国民議会は、ソーシャルネットワークの利用によって生じるリスクから未成年者を保護することを目的とする法案を可決した。
        • この法案には、15歳未満の児童生徒にSNSサービスへのアクセスを禁じるという条項が含まれ、プラットフォーム事業者に対し利用者の事前の年齢確認を義務付ける。※学習目的での事典類、科学研究、ソフトウェア開発・共有にかかわるサービスへのアクセスは例外。
        • プラットフォーマーへの規制は、電子通信・郵便・出版流通規制機関(ARCEP)が所掌する。
        • この法案ではまた、未成年が過度に商業目的のコンテンツに触れることを避ける目的から、未成年向けのSNS上で心身の健康への悪影響が疑われる商品の広告を掲載しない、インフルエンサー等が成人向けのコンテンツをオンライン上で公開する際には「15歳未満の視聴は危険」という旨の表示を義務付ける等の規定が設けられている。
        • 2026年9月1日(教育法典の改正部分は2026年~2027年学年度の新学期開始日)を施行日とし、施行日前に開設されたアカウントに対しては、施行日から4ヶ月後に施行
      3. スペイン 16歳未満SNS禁止の方針
        • 2月3日、スペインのサンチェス首相は16歳未満の子供によるSNSの利用を禁止する方針を発表。
        • 16歳未満の子供のSNS利用禁止に際し、SNSを運営するプラットフォーム企業に年齢確認システムの導入を義務付ける方針。

    性的ディープフェイクなどを巡る最近の報道から、いくつか紹介します。

    • オーストラリアのインターネット監視機関「電子安全委員会」は、オンラインゲームアプリ「ロブロックス」で子供の性的搾取を巡る報告が相次いでいるとして、運営会社に対する調査を行うと発表しました。結果次第では、2025年12月に施行された16歳未満のSNS利用禁止措置の対象に指定することも視野に入れています。同委員会は子供のSNS禁止措置で、インスタグラムやユーチューブなど10のサービスを対象に指定、ロブロックスは主機能がゲームのため対象から外されたものの、16歳未満の利用者への成人の接触を制限するなどの自主規制を講じると約束していました。しかし、子どもを手なずけて性加害に及ぶ「グルーミング」などが報告されており、同委は直接確認する必要があると判断したものです。
    • インドネシア政府は、子どものSNS利用を大幅に制限すると発表しました。政府が「高リスク」と定めたプラットフォームを対象に、16歳未満のアカウントを停止するもので、インスタグラムやTikTok、X、フェイスブック、YouTube、ゲームプラットフォームのロブロックスが含まれ、同様の規制は東南アジアで初となります。ムティア・ファヒド通信・デジタル相は「子どもたちはポルノやネットでのいじめ、オンライン詐欺など脅威に直面している」と語り、新たな規制により子どもを守る狙いがあるとしました。
    • スペイン政府は、生成AIで作成された子供の性的画像の拡散に関わった疑いで、米SNSのX、メタ、TikTokをそれぞれ調査するよう検察当局に指示しました。スペイン政府によれば、同国の子供の5人に1人が、自身の画像が生成AIで性的に加工される「ディープフェイク」の被害に遭ったことが調査団体の調査で判明しています。サンチェス首相は、調査対象とするSNSについて「これらのプラットフォームはわが国の子どもたちのメンタルヘルス、尊厳、権利を損なっている」、「子供たちの権利を侵害し、心の健康と尊厳を傷つけている」、「国はこれを許容できない。巨大企業の免責状態は終わらせなければならない」と述べました。

    サイバーセキュリティを巡る最近の報道から、いくつか紹介します。

    • 本コラムで以前から指摘しているとおり、企業が標的のサイバー攻撃で、サプライチェーン(供給網)が防御の盲点になっていますが、日本経済新聞社とKPMGジャパンが国内上場企業向けに実施した共同調査で、委託先を含む国内取引先経由の攻撃が最も被害を及ぼしていたことがわかり、中小企業が多く、対策の遅れが弱点として狙われていることが明らかとなりました。攻撃経路別に業務上の被害が生じた企業の割合をみると、「国内の委託先・取引先」を介した攻撃で10.8%と最多となり、「自社の国内拠点」(8.4%)や「子会社の海外拠点」(同)などを上回りました。上場企業は日ごろ取引先とシステムを共用したり、電子メールで連絡を取り合ったりしており、攻撃者はセキュリティが脆弱な取引先を攻撃して認証情報などを奪って踏み台とし、その先の上場企業のデータを盗んだり暗号化したりしています。2025年10月にランサムウェア(身代金要求型ウイルス)攻撃で事業が停止したアスクルは、業務委託先に付与していた管理者アカウントの認証情報が悪用されました。また、2022年の大阪急性期・総合医療センターの被害も、委託契約していた給食事業者のシステム経由で侵入されたものです。今回の調査では国内や海外の委託先・取引先で「攻撃があったかわからない」との回答も3割前後に上り、実態を十分把握できていないケースが多いことがわかりました。さらに、過去1年間に金銭被害が発生したサイバー攻撃で合計被害額が1000万円を超えた企業が計25.7%に達し、10億円以上との回答も2.3%あるなど被害は甚大です。それにもかかわらず、上場企業が委託先・取引先のセキュリティを管理する取り組みは十分ではありません。指針の整備(33.3%)、委託先の選定時に対策をアンケートで確認する(32.8%)などが中心で、実際に順守しているかや正直に答えているかの保証もありません。定期的なセキュリティ監査を実施しているのは13.9%、相手に対する定期的な教育・訓練の提供は9.1%と、踏み込んだ取り組みはまだ少ない現状があります。AIを使う巧妙な攻撃も増えており、KPMGコンサルティングは「業務への影響を十分に考慮しない都度判断の委託先選定はリスクが高い」と指摘、大手が委託先などに対策への負担を一方的に求める行為は、中小受託取引適正化法(取適法)に抵触しうることから、「求める対策の水準をあらかじめ明示し、実施に必要な費用を見積もりの段階で料金に織り込んでもらうことが重要だ」と指摘しています
    • 国立研究開発法人・情報通信研究機構(NICT)が国内のIoT機器を対象に毎月行っている調査で、IDやパスワードが脆弱で不正アクセスのリスクが高い機器の検知件数が2025年は累計17万件超に上ったことがわかりました。調査対象の拡大などにより検知件数は年々増加しており、カメラをのぞき見されたり、サイバー攻撃に悪用されたりする恐れがあり、担当者はパスワードの見直しなどの対応を呼びかけています。検知された機器は、ルーターが約半数を占め、カメラは1割程度となっており、工場出荷時に共通パスワードが設定されていた旧型機が多いといいます。脆弱なカメラが乗っ取られたとみられる被害も起きており、文部科学省は2025年10月、国内の保育施設に設置されたカメラがハッキングされ、施設内の映像が外部から見られる状態になっていたとして、保育所や幼稚園に注意喚起の通知を出しています。また、サイバー攻撃の一種で、大量のデータを送りつけてシステム障害などを引き起こす「DDoS攻撃」に悪用される恐れもあり、2024年末~25年初めに国内の航空会社や金融機関などに行われたDDoS攻撃では、世界各地の300超のIoT機器が乗っ取られ、データの送信拠点に使われました。脆弱なIoT機器が多い状況を受け、国は安全性強化に本腰を入れており、経済産業省と独立行政法人・情報処理推進機構(IPA)は2025年3月、IoT機器のセキュリティ対策の認証制度「JC―STAR」を始めました。対策のレベルに応じて「★1~4」の4段階が設定され、最低限の脅威に対応する「★1」は、「推測可能な初期パスワードを設定しない」「脆弱性が見つかったソフトウェアは自動更新するか、簡単に更新できるようにする」など16項目の適合基準を満たす必要があります。これまでに約160製品に「★1」が付与されましたが、より安全性が高い「★2」以上の適合基準については今後定めるとしています。
    • 米ニューヨークで4日開かれた「PLUSサイバーシンポジウム」に登壇したパネリスト​らによれば、ランサムウェア攻撃を‌仕掛けるハッカーが金銭を目的としてスピードと規模を重視する中、身代金交渉が標準化され​たビジネスとして外部委託され​るようになっており、専門家は、ハッカーが身代金交渉を海外のコールセンターへ外注するケースが増加してお​り、オペレーターは感情移入をほとんど​せずに台本に沿って対応していると指摘、かつて‌は法⁠執行機関の人質交渉のような駆け引きだったが、現在では一つの成果を目指す定型的なやり取りになっているといいます。専門家は「​金銭的な​成果を得るプ⁠ロセスのコモディティー化に過ぎない」とし、「(ハッカーは)​ひたすら規模を求めており、​状況は5年前、10年⁠前と全く異なる」と述べています
    • 勤務先のファイルサーバーに侵入し、偽の警告画面などを表示させて業務を妨害したとして、大阪府警は、滋賀県長浜市に住む元IT会社社員の男性を偽計業務妨害などの疑いで逮捕しました。「社長への不満と復讐心からやった」と容疑を認めています。逮捕容疑は2025年8月、当時勤務していた大阪市内のIT会社のサーバーに侵入、身代金要求型ウイルス「ランサムウェア」に感染したとする警告画面をモニターに表示させたり、強制的にシャットダウンするプログラムを仕込んだりするなどして業務を妨害したとしています。男性は「社員のセキュリティ意識の低さを知らしめたかった」と話しています。府警サイバー犯罪捜査課によると、男性は社内システムの担当だったといい、同僚のIDを使ってシステムにログインしていたといいます。ウイルス感染の調査やデータ復旧などで被害額は少なくとも約2000万円に上ったとみられています。外部からの攻撃にはこのような類型もあることを認識しておく必要があります。
    • 米アルファベット傘下グーグルは、中国系ハッカー集団の不正侵入を阻止するために対策を施したと発表しました。このハッカー集団は42カ国で少なくとも53の組織に不正侵入していたといい、ロイターに独占提供された調査結果によれば、このハッカー集団は「UNC2814」および「ガリウム」と呼ばれており、過去10年弱にわたって政府機関や通信会社など侵入していました。グーグルと非公開のパートナー企業は、このハッカー集団が管理していたグーグルクラウドのプロジェクトを打ち切り、使っていたインターネットのインフラを特定して無効化するとともに、標的選定やデータの窃取活動に利用していたグーグルのスプレッドシートへのアクセス用アカウントを無効化したものです。グーグルは「これは世界中の人々や組織を監視するために使われた巨大な装置だった」と指摘、ハッカー集団がさらに最低でも22カ国へのアクセスが可能性だったとし、ある事例ではグーグルが「GRIDTIDE」と呼んでいるバックドアをシステムに設置していたと明らかにしました。このシステムには氏名と電話番号、生年月日、出生地、有権者ID、国籍のID番号が保存されていました。グーグルは「同様の手法が通話記録の窃取、ショートメッセージサービス(SMS)の監視、さらに通信事業者の合法的傍受機能を利用しての個人の監視にも用いられてきた」と説明、これに対して在米中国大使館の劉鵬宇報道官は声明で「サイバーセキュリティは全ての国が直面している共通の課題であり、対話と協力を通じて対処すべきだ」とした上で「中国は一貫してハッキング活動を法に基づいて反対し、取り締まっており、サイバーセキュリティ問題を中国への中傷・誹謗に利用しようとする試みを断固として拒否する」と主張しています。
    • 米軍とイスラエル軍によるイラン攻撃では、イラン国内のアプリや防犯カメラがハッキングされるなどイスラエルのサイバー技術が駆使されました。SNS上でのスパイ活動やAIを使った市民監視も活発で、軍関係のIT企業が暗躍しました。軍民一体で高める「サイバー戦闘力」がイスラエルの軍事作戦を支えているといえます。「武器を置くか、解放軍に加われ」2月28日朝の首都テヘラン攻撃直後、こうしたメッセージがイランのスマホアプリ「BadeSabaCalendar」に表示されました。同アプリはイスラム教徒向けに礼拝時間を管理するもので、イスラエルがアプリをハッキングした可能性があります。イスラエルと米国は張り巡らせた諜報網によってイラン側の機密情報を把握している可能性が高いことも明らかとなりました。英紙FTなどによれば、イスラエルは数年前からテヘラン市内の多数の監視カメラをハッキングしており、護衛隊を中心に各隊員の警護対象、勤務時間などの日常情報を蓄積し、警備が手薄な時間帯などを分析していたと報じています。スマホアプリのハッキングも初めてではなく、2021年にはイスラエル企業NSOグループのスパイソフト「ペガサス」が監視対象者のスマホに仕掛けられ、米メタの対話アプリ「ワッツアップ」の記録などが盗み見られていたことが明らかになりました。同社はジャーナリストや反体制派を監視するツールとして各国政府にペガサスを販売していました。2023年に始まったパレスチナ自治区ガザ侵攻では、イスラエル軍がガザ市民の通話・通信記録などを傍受し、攻撃対象を決める際の重要な判断材料としていたといい、大量監視のデータ基盤構築に米マイクロソフトが協力したと報じられ、同社はイスラエル軍へのサービス提供を一部停止しました。イスラエル軍隊員は世界中のSNSやネットの闇サイトに「アバター(分身)」と呼ぶ架空の人物のアカウントを多数運用し、日頃から情報収集しており、SNSに写真を投稿する利用者に接触して街中の画像を入手、不特定多数のグループチャットに入り込んで友人のように振る舞うこともあるといいます。衛星画像では捉えきれない地上の詳細な様子を探り、侵攻ルートの確認など軍事作戦遂行に役立てているとみられています。海外の重要人物や技術者と直接やりとりできれば、敵対組織のシステムへのハッキングに役立つ情報も集められるためです。こうした特殊作戦はサイバー空間にとどまらず、2024年9月のレバノンやシリアでのポケベルの爆発事件では、親イランの武装組織「ヒズボラ」の構成員や市民が死亡、死傷者は約3000人にのぼりましたが、イスラエル側がハンガリーにつくった架空会社などを通じ、製造過程でポケベルに爆発物を組み込み、遠隔操作で一斉に爆発させたものです。イスラエルにとってセキュリティを含むハイテク産業は同国輸出額のおよそ半分を占める基幹産業です。一方、通信傍受や大量監視といったイスラエルの手法には批判の声もあります。ガザ侵攻をめぐってはオランダの国際刑事裁判所(ICC)が2024年11月、戦争犯罪や人道に対する罪を犯したなどとしてネタニヤフ首相らに逮捕状を出しました。専門家は、「ユダヤ人迫害の歴史もあり、イスラエルでは『自分たちを守るためなら何でもする』という価値観が強い」、「セキュリティソフトが日常的に情報収集に使われている可能性もある」と警鐘を鳴らしています。

    AI/生成AIを巡る最近の報道から、いくつか紹介します。

    • 米国防総省が2月28日に開始したイランへの軍事攻撃で、新興企業アンソロピックのAIモデル「クロード」を利用していたことが分かりました。アンソロピックは完全自律型兵器や米国民の大規模監視への利用制限を求める一方、国防総省は米軍のあらゆる合法活動で利用を認めるように迫るなど対立が続いており、アンソロピックは2026年2月末、AIの軍事利用を巡る制限措置の解除を求める同省の要求を拒否、これを受け、トランプ大統領は、全ての連邦機関に対して、同社の技術使用を停止するよう指示したほか、同社を「サプライチェーン上のリスク」に指定しました(この指定は通常、米国の敵対国に用いられるものです)。その直後、競合の米オープンAIはアンソロピックに代わり、米軍の機密システムにAI技術を提供すると発表、国防総省などはアンソロピックの技術の排除に6カ月の移行期間をもうけ、段階的に利用をやめる方針を打ち出しました。アンソロピックのAIは米国の情報機関や軍で幅広く使用されてきていました。米軍は今回の攻撃でトマホーク巡航ミサイルやB2ステルス爆撃機のほか、イランの設計を参考にした低コストのドローンを初めて使用しましたが、2026年1月のベネズエラへの攻撃に続き、AIの軍事利用が深まっています。軍事力を左右するほどAIの重要性が高まり、国家は先端技術を手中に収めようと介入を強めています一方、アンソロピックは利用規約などに基づき、(1)敵を攻撃する自律兵器、(2)米国民の監視、の2つの目的でAIを使わないよう政府に求めていました(「AIは大規模監視や自律殺傷兵器に利用されるべきではない。重大な意思決定には人間が関与し続けるべきだと信じる」と述べており、AIの高度化が進むなか、人間の判断が介在しない殺傷兵器が登場すれば、現在の技術では制御が難しいとみています)。国防総省はこれに対し、一企業が国防目的のAIの使用範囲に口を出す姿勢そのものに不満を募らせていたとみられています。同社のアモデイCEOは倫理重視のAI開発を掲げ、テック界に珍しくトランプ米政権への批判も辞さずにきましたが、その姿勢が反感を買い、信念を貫くか、妥協するかの正念場に立たされ、最終的に信念を貫いたものの、政権から理不尽なほど徹底的に排除される結果となりました。同社では安全重視の経営方針やアモデイ氏の掲げる理念に共感して集まった研究者が多いだけに、軍事や兵器への利用で安易に妥協すれば組織が分裂しかねないことや、AIが原因の大量失業リスクを声高に叫ぶ一方で、プログラミングや事務の自動化が得意なAIを自社が猛スピードで開発して雇用を奪おうとする矛盾も抱えるなど、米AI開発企業の「良心」としての立場を維持できるかは見通せませんが、いったんは筋を通したと評価できると思いますが、国際ルールやAI倫理の整備が追いつかないうちに、テック企業は愛国心という踏み絵を迫られる事態になってしまっています。AIなど技術の軍民両用をめぐる議論は米国に限った話ではなく、技術の開発を進めながら軍事面でもどの程度利用を進めていくのかは、世界共通の課題となっており、世界が真摯に議論を成熟させていく必要があります。なお同社は、ヘグセス米国防長官による「サプライチェーン上のリスク」への指定を不当として提訴する意向を示し、「法廷で争う」とする声明を発表しました。同社は声明で過去に米国企業が対象になっていないと指摘し、「法的に不適切なだけでなく、政府と交渉するあらゆる米企業にとって危険な前例だ」と政権側に反発、国防総省と契約する企業とアンソロピックの取引を禁じる趣旨のヘグセス氏の発言については「裏付けとなる法的権限がない」と主張しています。一方、意に沿わない企業に露骨な圧力を加える政権の手法には反発が強まる可能性があります。政権とアンソロピックの対立は、AIの軍事利用の範囲を決めるのは政府と企業のどちらなのかを問うものとなります。米CNBCは「AIを基礎的な安保上のインフラとして位置づける官民の連携態勢を構築することが求められる」との専門家の見方を伝えています。なお、今回の件でオープンAI社は世論の逆風に晒されています。同社は原則として合法的な用途での利用を認めているとされ、解釈や運用次第では大規模監視などにつながる恐れがあるとの批判を招いているものです。その結果、米国内でのChatGPTの削除件数は急増、一方でアンソロピックを支持する声は高まっており、米アップルのアプリ配信サービス「アップストア」の米国版では、クロードがChatGPTを抜いて無料アプリランキングの首位に躍り出ています。
    • ウクライナは、攻撃用無人機など兵器に搭載するAIの高度化を急いでいます。AI兵器の危険性が指摘される中、ロシアとの開発競争が起き、今後の戦況を左右しかねないという現実に直面しているためです。AI活用を防衛など他の領域にも広げるための取り組みも進んでいます。ロシアも開発を進めており、実用化に先行した方が戦場での優位性を得ることができることになります。また、AIの活用は攻撃用だけにとどまらず、ウクライナ国防省は、この4年で蓄積された露軍の無人機やミサイルの攻撃を捉えたレーダー情報など、大量のデータをAIの学習用に提供するプロジェクトを開始、真っ先に活用が期待されるのが、AIによる防空システムです。過去の攻撃について学習したAIが、自動で敵の無人機を捕捉し、迎撃することを想定しており、防空強化の切り札となる可能性があります。今後、重要になってくるのがAI規制のあり方で、ウクライナは現在、技術革新を促進する立場から規制を設けていませんが、欧州連合(EU)加盟を目指す上で、将来的にはリスクの高いAIの利用を禁じるEUの「AI法」に準じた法整備が必要となります。AI兵器の規制については国際的な取り組みも欠かせず、ゼレンスキー大統領は2025年9月の国連総会での一般討論演説で、「兵器へのAI活用について定めた国際ルールが必要だ。核兵器拡散抑止と同じように緊急性を要する」と訴えています。
    • アンソロピックは、自社の対話型AIサービス「クロード」が、複数の中国企業に不正利用されたと発表しました。偽アカウントを大量に使用し、AIモデルを写し取る「蒸留」が行われたとしています。アンソロピックによれば、中国企業はいずれも生成AI開発を手がける「ディープシーク」「ムーンショットAI」「ミニマックス」の3社で、計2万4000の偽アカウントを通じてクロード上で1600万回以上のやり取りが行われたといい、中国モデルの訓練・改良に不正利用されたといいます。AIモデルを効率的に学習する手法の蒸留は必ずしも違法ではありませんが、生物兵器の製造やサイバー攻撃に悪用される恐れがあるため、アンソロピックは厳格にルールを定めており、中国企業にはサービスの利用を禁じています
    • 日本生命保険の米国法人が、対話型の生成AI「ChatGPT」が弁護士資格を持たないのに法律業務を取り扱う「非弁行為」を行ったのは違法だとして、開発元の米オープンAIを中西部イリノイ州の連邦地裁に提訴しました。和解済みの紛争が再燃し多額の損失を被ったとして計1030万ドル(約16億円)の損害賠償を求めています。報道によれば、日本生命の保険金の元受給者がChatGPTを「法的助手」として不正に利用、AIは和解合意を破棄して訴訟を再開させるための法的分析や申立書の作成を支援し、一度終了した裁判の蒸し返しを促したとしています。日本生命側は、この行為が弁護士資格のない法律実務を禁じる州法に違反すると指摘、不当な訴訟対応で生じた弁護士費用など約30万ドルに加え、懲罰的賠償として1000万ドルの支払いを請求しました。対話型生成AIの非弁行為を巡り主要企業が訴えられるのは初の事例とみられています。
    • カナダ西部で8人が死亡した銃撃事件を巡り、米紙WSJなどは、米オープンAIが事件前に容疑者の18歳の女の暴力的な兆候を検知していたと報じました。社内でカナダの警察当局への通報を検討したものの、社内基準を満たしていないと判断し、通報しなかったといいます。WSJによれば、容疑者は2025年6月、オープンAIの対話型AI「ChatGPT」で銃暴力を含むシナリオを記述、オープンAIのシステムが危険性を検知し、一部の従業員は上層部に通報を促しましたが、容疑者のアカウントを停止しただけで通報は見送ったといいます。同社は「差し迫った他者への身体的危害」という条件を満たしていなかったとしています。
    • インターネット技術を悪用した犯罪の低年齢化が進んでおり、生成AIを使えば、専門家レベルの知識を入手でき、不正なプログラムも作成できてしまいます。専門家は「ネットやスマホの普及で、犯罪ツールが子供にとって身近なものになってしまっている」と警鐘を鳴らしています。警察庁の統計によれば、2025年に不正アクセス禁止法違反事件で摘発された20歳未満は81人(暫定値)、20歳以上も含めた摘発者の総数が2022年以降、250人前後で推移する中、20歳未満の割合は26.5%から32.7%に上昇しました。ネットカフェ運営会社のサーバーに不正アクセスし、公式アプリの機能を一部停止させるなどしたとして、警視庁は2025年12月、同法違反容疑で高校生を逮捕、高校生は対話型生成AI「ChatGPT」でプログラムを作成したとみられ、約725万件の会員情報を得たとされ、「システムの脆弱性を見つけるのが楽しかった」と供述しています。
    • ベトナムで、AIを包括的に規制する法律が施行されました。事業者などがAIで画像や映像などを作成した場合、その旨を明記させるといった内容で、こうした規制は東南アジアで初めてだといいます。同法は2025年12月にベトナム国会で可決されました。AIを「人間の権威や責任に取って代わるものではない」とし、人間中心のAI開発や運用を目指すことを目的としています。AIで作成した偽動画「ディープフェイク」などへの対策として、AI利用を明記させるほか、AIで実在の人物などを模倣し、人々の認識や行動を操作する行為なども禁じました。東南アジアでは、米国とAI開発を競う中国が各国への働きかけを強める中、日本は「日ASEAN・AI共創イニシアチブ」を提唱、各国の言語や価値観を尊重したAIの開発協力などを進めています。
    ▼ 消費者庁 第1回 AI技術の利用と消費者問題に関する専門調査会
    ▼【資料2】消費者を取り巻くAI技術の現状について
    • 生成AI:「人間のように文章や画像を生成し、多岐にわたるタスクを自律的にこなすことができる革新的な技術」
    • 消費者が直接利用できる生成AIなどのAI技術
      • 利用例:
        • 調査・分析
        • 対話による相談・生活サポート
        • 文章・画像・動画・音楽作成など
      • 主に事業者が利用するAI技術
        • 事業者が、消費者行動の予測・分析などに利用 例:
          • 商品・サービスのレコメンド機能
          • 広告の「最適化」など
        • 問題意識
          • 消費者の意思決定の材料の提供を行っていた段階から、意思決定を代替する段階になってきたといえるのではないか。
          • いかなる仕組みにより、生成物を人間が作成したものであるかのように消費者に認識させるのか。
          • 消費者の意思決定のプロセスに一定の影響を与えると考えられるのではないか。
          • 消費者の意思決定のプロセスに問題が生じているのであれば、対策が必要なのではないか。ほか
        • AI利用実態調査アンケート(第2回専門調査会で結果報告予定)
        • 趣旨
          • 消費者が生成AIをどの程度、またどのように利用しているかを調査。
          • 生成AI(特に対話型AI)の利用が消費者の日常生活に影響を与えているか、また与えているとすればどのような影響を与えているかを調査。
        • 対象予定者
          • 国内の10代から70代以上の生成AI利用者
    ▼ 【資料3】米国における消費者を取り巻くAI技術の現状(朝日新聞 五十嵐編集委員)
    • 州レベルで進むAI関連の法制度
      • 米国では、連邦議会によるデジタル分野の規制が進まず、州レベルでの規制づくりが先行。
      • 全米州議会議員連盟(NCSL)によると、2025年には50州すべてがAI関連の法案を提案。38州がおよそ100件のAI規制を導入。
      • 業界団体IAPPによると、包括的なAI法を導入したのはカリフォルニアやニューヨークなど5州。
      • 背景
        • 急速なAIの進化に対する懸念
        • 子どもの自殺など依存の問題
        • SNS時代の「反省」
    • カリフォルニアのAI法
      • 2025年9月、カリフォルニア州で「最先端AI透明化法(Transparency in Frontier Artificial Intelligence Act)」(SB53)を成立。26年1月に施行。売上高5億ドル(約780億円)以上の大規模なAIモデルを開発する企業が対象。
      • リスクや違反を報告する内部告発者の保護、違反企業に対しては最大100万ドルの罰金。
      • 核や化学兵器の作成、殺人や暴行などにつながる「壊滅的リスク」についての査定や、モデルの安全性に関する対応策の提出。例)開発したAIエージェントが金融システムに侵入し、不正な注文をするなどの危険な行動をした場合、州政府に報告しなければならない。
      • 24年のAI法案は議会で可決されたが、ニューサム知事が拒否権を発動。開発費が1億ドル(約155億円)以上の先端モデルを開発する企業が対象。
      • 公開前の安全性テストの実施や、問題が起きた際にシステムを止める「停止ボタン(kill switch)」の導入、第三者による毎年の監査を義務づけ。違反した場合は州の司法長官が法的措置。
      • 「厳しすぎる」とテック企業の反対を受け、廃案に
    • チャットボット関連の法案
      • カリフォルニア州で25年10月、AIチャットボットの安全性確保を義務づける「コンパニオン・チャットボット法」(SB243)が成立。
      • 26年1月施行。米メディアによると、全米で初のチャットボット規制法
      • AIサービスであることの明示、自殺念慮を示した場合の対応策の策定を義務づけ、未成年向けに3時間ごとの注意喚起。違反1件につき1000ドルの罰金(民事訴訟を想定)
      • 全米州議会議員連盟(NCSL)によると、AIチャットボットの法案は、少なくとも5州が導入(カリフォルニア、ニューヨーク、ニューハンプシャー、メイン、ユタ)
    • 子どものSNS利用をめぐる法規制
      • 未成年のSNS利用を制限する法律は、25年10月時点で米国の10州(テキサス、ユタなど)で法律が成立。一方、テック企業側の訴訟などにより、カリフォルニア、オハイオなど6州では法律差し止め(米年齢認証提供者協会=AVPA=調べ)
      • カリフォルニアやコロラドなど41州と首都ワシントン特別区は23年10月、メタが若者への心理的な悪影響を知りながら利用者を欺いたとして、州の消費者保護法違反などで同社を提訴。原告にはフロリダやケンタッキーなど共和党の支持が強い州も
      • メタがアルゴリズムの設計に、「変動報酬スケジュール」と呼ばれる心理学の手法を使ったと主張。時系列でなくランダムに投稿を表示することで、ドーパミンの分泌を操り、アプリを繰り返し使うように誘導していると訴えた。
      • 事業者の「製造者責任」を問題視、ネット事業者が利用者の投稿に対する責任を免除する「通信品位法230条」をかわす狙い。
    • 子どものSNS規制が広がった背景
      • SNSによる未成年者の心理への悪影響の顕在化
      • 元フェイスブック従業員、フランシス・ホーゲン氏の内部告発(2021年)
      • ジョナサン・ハイト氏「不安な世代(Anxious Generation、2024年)」がベストセラーに医務総監からの警告、「たばこ」と同じ扱いに
      • SNS企業の規制への超党派の支持→連邦レベルでも数年にわたり規制を検討(Kids Online Safety Act、連邦プライバシー法など)
      • 学区レベルでの訴訟の拡大、授業へのスマホ持ち込み禁止の広がり
    • トランプ政権の動き
      1. 2025年7月、「AI行動計画」
        • 「AI競争に勝つ」として、技術革新の加速、インフラの構築、外交安全保障での主導権の3本柱を提示。「言論の自由とアメリカの価値観の保護」を掲げ、連邦政府が契約するAI技術については「客観的でイデオロギー的な偏向がない」ことを条件に。
      2. 2025年12月、AI関連の州レベルの法律を「一本化」する大統領令
        • 州による過度な規制がイノベーションを阻害しているとして、方針に沿わない規制をつくる州には司法省の「タスクフォース」が意義を申し立てる方針を表明。
        • 州の権限を弱めるトランプ氏の手法には、民主党だけでなく、共和党の有力政治家らも反発→フロリダ州のデサンティス知事(共和党)「ビッグテックへの補助金だ」
        • トランプ氏の元側近スティーブ・バノン氏「テック男(tech bro)たちは私腹を肥やす一方、大統領からMAGA派の支持基盤を遠ざけている」
    • 企業側の自主規制
      1. オープンAI
        • 25年、GPT4oからGPT5への切り替えで、利用者から「冷たい」の声、前バージョンを再開→依存問題が顕在化
        • 長時間利用の場合、休憩を促す機能を導入
        • AIによる年齢予測機能
        • 未成年の利用者が自殺願望を抱いている場合、保護者に連絡
        • 心理学者、教育関係者らと対策を協議
      2. メタ
        • 13歳以下の利用者の1対1のAIチャットボットとのやりとりを保護者が制限できる機能
        • 保護者が子どもがAIとやりとりしている内容を把握できる機能
        • AIによる年齢予測機能(PF上のやりとり、誕生日の投稿などから予測)
    • 保護者によるコントロールには限界も
    • AIに対する世論
      • 米国では、AIに対する警戒感が強い
      • 25年のピューリサーチの調査
      • 日常生活でのAI活用の広がりについて、米国人の50%が「わくわくするより懸念している」と回答。「懸念よりわくわくしている」は10%のみ→調査対象の25カ国で「懸念」が最多
      • 日本は「懸念している」が28%、「わくわく」が16%、「同じぐらい」が55%
    • リテラシー向上への対応
      • 児童や生徒向けのデジタルリテラシー教育
    • スマホ向けパウチYondr(ヨンダー)
      • 所得の高い家庭の子どもほどSNSを使わない(ピューリサーチ調べ)
        • 「ほぼ常にネットを使っている」13~17歳の割合
        • 世帯収入:3万ドル以下(51%)
        • 7万5千ドル未満(50%)
        • 7万5千ドル以上(43%)
        • →AIの進化による教育格差に留意
      • テクノロジー企業に一方的に偏る情報格差 企業側の情報開示など、透明性を高める必要
      • テック企業の倫理的問題を扱う市民団体の層の厚さ テクノロジー分野の報道の充実も
    • 生成AIが会話形式で質問に回答する「AIチャットボット」を規制する州法案が2026年1月以降、全米50州のうち27州の州議会に提出されたことが米NGO「透明性連合」の調査でわかりました。米国ではAIチャットボットが未成年に与える有害性が社会問題化しており、各州が規制強化を急いでいます米国ではトランプ政権がAI開発に注力する一方、法案審議中のオハイオ、アラスカの2州を除いた48州が1月中旬までに何らかのAI規制を設けています。このうち、AIチャットボットを対象とする州法を制定したのは、ニューヨークやユタなど6州にとどまっていました。米国では、AIチャットボットが10歳代の若者の自殺を助長する事例が相次いでおり、規制を求める声は強まり、バージニア州では1月、利用者が「自殺願望」などの言葉を入力した際に対処する機能を導入していないAIチャットボットを違法とする州法案が提出されました。アラバマ州議会でも、AIチャットボットに年齢を確認する機能を義務付ける州法案が議論されています。カンザス州では、年齢確認の義務化や、未成年者には保護者の同意を義務付ける規則案が盛り込まれました。アイオワ州は、違法行為が認定された事業者に罰則を設ける方針です。NGO共同創設者のジャイ・ジャイシマ氏はAIチャットボットについて「公衆衛生上の有事になる恐れがある」と警告する声明を出しています。
    • 2026年3月9日付日本経済新聞の記事「AIエージェントの損害、責任は誰がとる? リスク恐れる日本企業」で、AIが自律的に作業をする「AIエージェント」により生じた損害の責任の曖昧さがリスクになっているとの指摘がありました。現状、裁判所の判例の蓄積はなく、企業がひるむ一因となっているというものです。政府の見解は整理の途上にあり、「AI事業者ガイドライン」の更新で、誤動作などのリスクを念頭に「人間の判断を必須とする仕組み」の導入を求める予定です。報道でアンダーソン・毛利・友常法律事務所の清水亘弁護士は「損害があった場合、現実的に可能な対策をしていない限りサービス提供企業に責任が生じ得る」と指摘、企業は損害が生じる前提に立ち、AI同士の相互チェックや権限に制限を設ける仕組みなどで、リスクを抑える運用をする必要があると提起しています。記事は「日本は米欧中に比べてAI導入が進んでいない。企業がためらう一因としてAIを巡る責任の曖昧さがあるとの指摘もある。リスクに敏感な日本企業に合わせて、国として本気でAI導入を進めるならば、予見性を高めてリスク対処の指針をどのように示すかは重要な論点になる」と指摘していますが、正にその通りだと思います。
    • メルカリは、2025年7~12月に不正アカウントの利用制限数が前年同期比58%増の76万2486件になったと発表、AIを活用し、不正リスクが高いと判断した人の利用制限を進めているといいます。商品不備などの問い合わせ数の割合を示す「トラブル遭遇率」は0.38%で0.08ポイント改善しました。針のついた注射器や医薬品、偽ブランド品などの規約違反商品の削除件数は13%増の5654万件となりました。2024年1~6月は3億件を上回る水準でしたが、不正利用者への利用制限により大幅に減少しています。メルカリは2025年から不正などを働く可能性の高い利用者をAIで検知するシステムを導入、キャンセル頻度や通報数などから全ユーザーをリスクごとに分類し、不正リスクが高いと判断したユーザーにトラブル未然防止のため制限をかけています。トラブル発生時には購入代金や販売利益を全額補償するなどの救済策の拡大・迅速化も進めました。問題商品を回収して目視で確認する「商品回収センター」に商品が到着してから補償するまでの所要時間は2025年1~6月と比べて26.7時間減少して24.7時間となったほか、補償実施の割合は0.1ポイント増の99.6%となりました。
    • AIは仕事や生活に欠かせない道具になりつつあるものの、いくつかの科学研究は、人間の心に潜む偏見をAIが増幅する恐れがあると指摘しています。AIは現代文明が生んだ利器だが、使い方を間違えば人間を傷つけたり、仕事で特定の人を不利な立場に追いやったりする「もろ刃の剣」になる懸念が出てきています。女性の労働者は男性より若く、仕事の経験が乏しいというAIが抱く「偏見」を、米スタンフォード大学などが2025年に指摘しました。研究チームは対話型AIの「ChatGPT」を使い、架空の人物の履歴書を計3万5000枚作成、医師や経営者など約50の職種で人事採用に使う想定で、AIはインターネット上にある大量の画像や文章を学習、履歴書を調べると、AIが生んだ架空の女性は男性よりも平均で1.6歳若く、仕事をした期間も0.9年短い結果となりました。科学研究の基準でみると明らかに女性が若く、働いた年数が短く、この履歴書が示す女性像には偏りがあることがわかりました。ネット上の画像や文章に広がる偏見が、AIの偏向を招いた可能性が指摘されています。男性の労働者は女性より年長で職務経験が豊富だと考えがちな人間の偏見を、データを学習したAIが増幅したことも考えられます。AIの偏向は人の心を傷つける危険性があるだけでなく、経済的な不利益ももたらしかねません。スタンフォード大などは作成した履歴書をChatGPTに読ませ、架空の人物が各職種にどの程度ふさわしいかを採点させたところ、年長で仕事に従事した期間も長い男性の評価が高かくなりました。女性はAIにはじかれて対面の面接を受けられずに、就職できる機会が減る可能性も出ています。また、AIは人間の国籍にも敏感で、スイスのチューリヒ大学は中国人が書いた文章をAIが低く評価するという研究成果を2025年に発表しました。ネットに広がる「中国嫌い」のバイアスをAIが増幅した可能性があると考えられます。こうした状況に対し専門家は、「学習に使うデータを他の情報源と照らし合わせるなどすれば、偏りを防げるかもしれない」と指摘、AIが年齢で人を判断するのを防ぐ規則を設けるのも役立つ可能性もあります。AIの暴走に備えるのは大事ですが、それだけでは不十分で、AIの偏見は人間の心から生まれるのであり、現代は誰もがネットやSNSで簡単に情報を発信でき、自分でも気付かないうちに人を傷つける偏見を広げ、AIを歪ませている可能性があり、AIの学習材料になるデータに対しても責任が出てくる時代といえるかもしれません。
    • 東京都は、都民を対象とした「AIに関する意識調査」の結果を公表しました。月に複数回以上、AIを業務(仕事や学業)やプライベートで利用していると回答した人は3割以上いた一方で、インターネットやSNS上に広がる情報が本物か、偽物か確認するかどうかについては、3人に1人が「特に何もしない」と回答したといいます。AIの利用頻度についてプライベートで「月に複数回以上利用する」とした回答は全体の39.2%、業務(仕事や学業)では28.8%で、プライベートでも、業務でも、年齢層が高くなるにつれて、利用頻度が下がる傾向が見られました。AIに対するイメージや期待を複数選択で聞く質問では、「生活がより便利で豊かになる」(39.6%)がもっとも多く選ばれ、「誤った情報が拡散されるリスクがある」(30.0%)も上位となりました。AIを使ったサービスに期待する分野は「医療・介護」(44.5%)が最多で、「人とのコミュニケーション支援」(39.2%)、「交通・移動支援」(39.0%)と続きました。インターネットやSNS上の情報の真偽を確かめるためにどんな行動をするのか、複数選択で聞いたところ、「複数の異なる情報源(メディア)と比較する」(44.7%)、「情報の発信元(企業や団体)の信頼性を確認する」(36.7%)などが挙げられた一方、「特に何も行動しない」も33.2%いる結果となりました。
    • AIが発達し人間の創作分野に使われるようになれば、もはや人の脳は必要なくなり、AIが取って代わる可能性すらありうる状況になっています。「廃用性障害」という状態があり、使っていない機能は衰えるというもので、一般的には身体機能の低下を指しますが、脳機能にも当てはまります。例えば「最近漢字が出てこない」のは、パソコンを使って文章を書くことに慣れると手書きで書くことが少なくなり、簡単な漢字も忘れてしまうのであり、これも立派な廃用性障害といえます。脳は使わないと機能が低下しやすく、これが長期間続くと記憶・注意・判断などの認知機能の低下、社会的交流の減少、抑鬱傾向などに陥り、認知症のリスク因子となります。つまり、廃用性障害は認知症の土台をつくってしまう可能性があるといえます。AIは非常に便利であり、今後もさらに発達する可能性がありますが、決して人間の脳、さらに言えば人類の運命をも脅かすことがないように、むしろ脳を活性化する方法で、「便利な道具」として使うことが求められています。

    (6)誹謗中傷/偽情報・誤情報等を巡る動向

    ミラノ・コルティナ冬季五輪は、日本勢の活躍に国内が沸き立った一方で、SNSなどでは選手らの尊厳を傷つける悪質な投稿も深刻な問題となりました。JOCは日本とミラノに拠点を設け、24時間態勢でSNSなどを監視、管理者側への削除要請は1919件に上り、371件の削除を確認したといいます。大きな成果である一方、1500件以上はまだ残っていることになります。「事実に基づく投稿だから」として、管理者側が削除要請に応じないこともあり、いわば「グレーゾーン」に対しては、スポーツ界が粘り強く協力を求めるしかない状況です。正当な批評の声は、競技力向上や組織運営の是正に欠かせませんが、誹謗中傷や感情に任せた悪罵は、残酷で愚かな行為であるとの認識を、まずは社会全体で共有しなければならないといえます。なお、先ごろ開幕した「2026 WORLD BASEBALL CLASSIC」(WBC)では、AIを使った誹謗中傷検出システム(英Signify GroupのAI誹謗中傷検出・通報支援サービス「Threat Matrix」)が導入されます。日本代表の選手、監督、コーチを対象に、前後一定期間のSNS投稿を監視し、誹謗中傷の抑止と迅速な対応を目指すとしています。これは日本プロ野球選手会が2025年10月のクライマックスシリーズ・日本シリーズでも導入したシステムで、日本野球機構(NPB)、NPBエンタープライズ、日本プロ野球選手会が共同でWBCでも活用するものです(なお、同システムは「FIFAワールドカップカタール2022」「ラグビーワールドカップフランス2023」など世界規模のスポーツイベントを中心に数多くの導入実績があるといいます)。SNS上で使われる造語や愛称、略称なども検知、検出された投稿は、SNS運営元に通報して削除要請する他、発信者情報開示請求や、刑事手続きに必要な証拠保全も行い、家族に中傷が及んだ場合も同様に対応するといいます。投稿者を確認した場合は、NPBエンタープライズが主催する大会・試合、日本プロ野球選手会に関連する各種イベントなどへの入場禁止を含む厳正な措置を検討するというものです。ただ、管理者であるデジタルプラットフォーマーが削除対応など速やかに実施できるかが重要となることは間違いありません。関連して、日本高野連は、第98回選抜高校野球大会に出場する選手や指導者、審判員らをインターネット上の誹謗中傷から守るため、新たにモニタリング調査を実施すると発表しています。Xとヤフーニュースのコメント欄が対象で、民間企業に委託して監視するもので、人格否定に該当する差別的な投稿が確認された場合は、削除を要請し、法的措置が必要な場合は主催者側で検討するといいます。高野連の井本亘事務局長は「SNS上の誹謗中傷は多感な世代の部員らに心身的にも深刻な影響を与える。安全なプレー環境を確保するためにも、実態把握を目的としたモニタリングをする」と説明していますが、こちらも法的措置の検討を主催者側が行うということであり、迅速かつ厳格な対応ができるのかが注目されるところです。

    2022年7月施行の改正刑法で厳罰化された侮辱罪の適用状況を検証する法務省の有識者検討会が報告書をまとめています。

    ▼ 法務省 侮辱罪の施行状況に関する刑事検討会 取りまとめ報告書
    • 改正法は、特にインターネット上の誹謗中傷が社会問題化したことを契機として、誹謗中傷全般に対する非難が高まるとともに、これを抑止すべきとの国民の意識が高まったことを踏まえ、侮辱罪について厳正に対処すべき犯罪であるとの法的評価を示し、これを抑止するため、侮辱罪の法定刑を引き上げたものであったところ、改正法施行後、法定刑の引上げによって、悪質な事案についてより適切に対処できるようになるなど、インターネット上の誹謗中傷対策として一定の効果があったと評価することができる。
    • 他方で、本検討会におけるヒアリングや議論において、
      • インターネット上の誹謗中傷に関する相談件数は、改正法施行後も引き続き増加傾向にある
      • インターネット上の誹謗中傷は、匿名の多数人によって広く拡散され、消去も困難であることから、被害者に生じる社会的・精神的影響が非常に大きい
      • 被害者は、そのような影響を受けている中で、警察への対応や、発信者情報開示命令の申立て等の手続をとる必要があるが、それらの手続の経済的・時間的・精神的負担が大きい
      • 誹謗中傷の加害者の中には認知のゆがみがあり、誹謗中傷を繰り返す者がいる

    などといった指摘があり、インターネット上の誹謗中傷をめぐる現状は依然として憂慮すべき状況にあることが確認された。

    • 本検討会は、このような指摘を踏まえ、更なる刑事上の措置の要否等について議論を行い、
      • 侮辱罪の法定刑を更に引き上げるべきか
      • インターネット上の誹謗中傷に関する特別な処罰規定を設けるべきか
      • 表現の自由との調整規定を設けるべきか
      • 被疑者の特定に係る被害者の負担を軽減する方策
      • 侮辱罪を損害賠償命令制度の対象事件に含めるべきか
      • 死者に対する侮辱罪を設けるべきか

    等について検討を行ったが、いずれについても、更なる事例や学説上の議論の集積、政府が現在行っている施策の効果を待つ必要があるなどの理由から、現時点において、直 ちに更なる措置を講じるべきであるとの結論には至らなかった

    • しかし、インターネット上の誹謗中傷をめぐる現状は、前記のとおり憂慮すべき状況にあり、今後、インターネット上の誹謗中傷をめぐる社会の情勢が変化していく可能性もあることから、引き続き、そうした社会の情勢や侮辱罪の運用状況を注視していく必要がある。
    • それとともに、侮辱罪による処罰は表現の自由と緊張関係に立つものであることから、侮辱罪による処罰が表現の自由に対する不当な制約となっていないかとの観点からも、その運用状況を注視していく必要がある
    • 政府に対しては、こうした社会の情勢や侮辱罪の運用状況に加え、民事上・行政上の様々な施策の状況や効果等も踏まえつつ、刑事上の在るべき対応について、今後も不断に検討するとともに、その結果に基づいて臨機に対応することを求めたい。
    • それと同時に、インターネット上の誹謗中傷に適切に対処する観点からは、表現の自由に十分配慮しつつ、侮辱罪を適用すべき事案については個別具体的な事情に応じて適正な処分・科刑が実現されることが重要であり、侮辱罪の運用に関し、関係機関において、本検討会におけるヒアリングや議論の結果を踏まえ、
      • 被害者の心情に十分配慮した被害者への適切な対応の徹底
      • 事案の当罰性の程度に応じた適正な処分や量刑
      • 表現の自由の重要性に配慮した個別の事案ごとの慎重かつ適正な判断

    等、より一層の適切な運用がされることを期待したい。

    現時点で適用対象拡大など法改正は必要ないとする一方、インターネット上の誹謗中傷は「憂慮すべき状況にある」と指摘、政府に対し、関連施策の効果なども踏まえて刑事上の対策を「不断に検討し、臨機に対応することを求める」としています。侮辱罪は、SNSで中傷を受けた女子プロレスラーの木村花さん(当時22)が亡くなったのを契機に議論が加速し、法改正につながった経緯があります。法務省によれば、施行後のネットによる行為で侮辱罪が適用され、2025年6月末までに罰金か科料が確定したのは104人で、報告書は「悪質な事案により適切に対処できるようになるなど、ネット上の中傷対策として一定の効果があった」と評価しています。その上で、相談件数が増加傾向にあることや、被害者の精神的負担の大きさが検討会の審議で指摘されたとし、また、侮辱罪による処罰は「表現の自由と緊張関係に立つ」とし、不当な制約になっていないかどうかの観点で運用を注視する必要性があるとも記載、検討会の議論の結果を踏まえ、関係機関で適切な運用を行うよう求めています。筆者としても継続的に注視してきたテーマですが、表現の自由との兼ね合いが難しいものの、他人の尊厳を傷つけ、生命身体財産の毀損につながるものまで広く表現の自由を認めることには問題意識があります。その点、報告書の最後で、「表現の自由に十分配慮しつつ、侮辱罪を適用すべき事案については個別具体的な事情に応じて適正な処分・科刑が実現されることが重要であり、侮辱罪の運用に関し、関係機関において、本検討会におけるヒアリングや議論の結果を踏まえ、・      被害者の心情に十分配慮した被害者への適切な対応の徹底、・事案の当罰性の程度に応じた適正な処分や量刑、・表現の自由の重要性に配慮した個別の事案ごとの慎重かつ適正な判断等、より一層の適切な運用がされることを期待したい」と指摘している点に深い共感を覚えました。今後の動向についても引き続き注視していきたいと思います

    誹謗中傷や誤・偽情報を含む問題の1つに「影響工作」があります。とりわけ、中国による日本への影響工作が激化している実態があり、中国が仕掛けてきている「認知戦」に対し、日本としても厳格に対応していく必要性が高まっています。例えば直近では、X上で衆院選公示前の2026年1月中旬から、3000件規模のアカウント群が協調的に高市首相や日本の政策を批判する内容を投稿・拡散していることがSNS分析会社「ジャパン・ネクサス・インテリジェンス」の調査でわかったといいます。アカウントや投稿の特徴から、中国系の影響工作の可能性があり、日本社会の分断をあおり、海外からの日本の評価をおとしめる狙いがあるとみられます。報道によれば、アカウント群による活動は衆院選公示(1月27日)の約1週間前に始まり、日本語や英語で「首相が旧統一教会から票を買っている」「首相は軍備増強と歴史修正に道を開いた」「社会保障の若者負担が増す」などの主張を投稿・拡散、アカウントは計約3000件あり、約1000件が投稿し、約2000件が投稿をリポスト(転載)、アカウント名は、カタカナと漢字を組み合わせたものなど規則性や共通点があり、転載していたアカウントの多くは1月19~24日に作成されていたといいます。さらに日本語の投稿には、翻訳した痕跡が残ったものや、ハッシュタグ(#付きの語句)に中国の簡体字や不自然な日本語が交じったものもあり、中国のブログや国営メディアに掲載された画像や、生成AIで作成されたとみられる画像も使われており、各アカウントの投稿や転載・返信は1~数件にとどまり、「同一アカウントで大量投稿するとプラットフォーム事業者から不正検知され、凍結されるため、多数のアカウントを使い、投稿を抑えているとみられる」、「活動は続いており、長期的な工作を行っている可能性がある」と同社が分析しています。影響工作に詳しい専門家は、「背後は断定できないが、中国共産党及び政府が一貫して使ってきた対日批判のナラティブ(言説)の論点と大きく矛盾しない。高市首相の信頼を失墜させ、社会の亀裂を突くことを図る動きとみられる」と指摘しています。

    関連して、米オープンAIは、同社の対話型AI「ChatGPT」の悪用に関する詳細な事例報告を公表し、中国警察やロマンス詐欺、日本の高市早苗首相への中傷を意図した活動などと関連したアカウントを停止したと明らかにしました。ChatGPTとソーシャルメディアのアカウントなど他のツールを連動させ、マッチングアプリ運営者や法律事務所、米政府当局者などを装って、サイバー犯罪を実行したケースが見られたといいます。例えば中国発とみられる少数のアカウントは、オープンAIのモデルを利用して米国人やオンラインフォーラム、米連邦政府の建物の所在地に関する情報を要求し、さらに顔入れ替えソフトについての指示を求めていたといい、この同一アカウント群は、州レベルの米当局者やビジネス・金融分野の政策アナリスト宛てに、対象者を有償のコンサルテーションに参加させようとする英語のメールを作成したといい、オープンAIは、中国の法執行機関に関連する個人とつながるChatGPTアカウントを停止、この人物は高市氏を狙った秘密裏の影響工作に関与していたとしています。中国当局の関係者が2025年10月中旬、首相の評判を落とす計画を作成するための助言をChatGPTに求め、首相に関する否定的なコメントを投稿し増幅させることや、在留外国人を巡る首相の姿勢を批判し、偽メールアカウントから日本の政治家に苦情を送信することなどに関して計画をつくるよう指示、保守的な政治姿勢を巡り中傷する狙いもあったといいますが、ChatGPTは利用者からの不適切な指示に応じないよう設計されているため、協力を拒否、ただ、同じ人物は2025年10月末に計画の実施状況の文章を推敲するよう指示、オープンAIはこの人物のアカウントを停止したといいます。報告書は、中国当局の工作の標的が国内だけでなく世界各国の反体制派や首脳らに及び、「少なくとも数百人のスタッフや数千の偽アカウントを使っている」と指摘しています。また、同社によれば、複数のChatGPTアカウントは、インドネシア人男性を標的にしたロマンス詐欺を行うために利用されており、毎月数百人の被害者がだまされていた可能性が高いといい、こうした詐欺はChatGPTを使って架空の出会い系サービスの宣伝文や広告を作成し、ユーザーをそのプラットフォームに誘導するとともに、標的に高額な支払いを必要とする複数の作業を強要していたとされます。また別の複数のアカウントはオープンAIのモデルを利用して法律事務所、実在する弁護士や米国の法執行機関になりすまして詐欺を行っていたといいます。

    2026年2月16日付朝日新聞の記事「社会を内部から壊すSNSの「野火」 情報工作から日本を守るには」も興味深いものでした。ロシアによる大規模な選挙介入を受けた東欧モルドバで、偽情報工作を監視するシンクタンク「ウォッチドッグ」のヨージュン・モラフスキ客員研究員は、こうした動きを「社会の内部から弱体化させる攻撃」と指摘しています。具体的には、「私たちはこれまで、ロシアから拡散された偽情報の「デバンク(うそを暴くこと)」にファクトチェックなどで取り組んできました。しかし、限界があり、残念ながらフェイクニュースはSNSを通じて、野火のように一気に広がります。デバンクに取りかかるころには、多くの人に偽情報の印象が植え付けられている。それを覆すことは容易ではありません」、「私たちが力を入れているのが、相手の手口をあらかじめ市民に知ってもらい、「免疫」をつける「プリバンキング(事前の反論)」です。たとえばロシアについて言えば、「ロシアはうそをつく」という前提や、特に戦時下で発信される情報は疑ってかかるべきだということを繰り返し市民に伝えることが重要だと考えています」、「最近目立つのは、同性愛など宗教や伝統的価値観に触れるテーマを利用し、社会の分断をあおる手法です」、「今のところ、生成AIを使ったディープフェイク動画などの悪用は限定的です。しかし、生成AIや自動翻訳技術の進化によって、言語の壁は、ほぼなくなりました。私たちが、ロシアによるモルドバへの情報工作を監視していると、発信拠点が7千キロ以上離れたベトナムであることが少なくありません。つまり情報工作を行う「トロール(荒らし)部隊」が、ロシアやモルドバ国内にある必要がなくなっているのです。現地の言語を知らなくてもAIで簡単に偽情報を生成し、世界中にばらまける時代なのです」、「2016年の米大統領選では、北マケドニアの小さな村で若者たちが100以上ものトランプ氏支持のフェイクニュースサイトを立ち上げ、発信していたことが話題になりました。奇妙な外国人名のアカウントが、日本のニュースに多数のコメントを付けているのを見かけたら、トロールを疑ってみてもいいかもしれません」、「外国人嫌悪は、社会に怒りや混乱を生みやすいテーマです。モルドバでも親ロシア派が、「欧州連合(EU)に加盟すれば、3万人のアラブ移民が流入し、テロが起きる」といった主張で不安をあおっています。彼らの狙いは、社会の分断です。人々を怒らせ、混乱させ、不安にさせる。ロシアのプロパガンダの本質は、特定の思想や信念を広めることではない。憎しみをあおり、対話を阻害して、社会を内側から引き裂くことにあります。米国では16年や24年の大統領選でロシアの介入が指摘されており、社会の分断が顕著に表れた例だと言えます。ロシアはこれを一種の「成功例」ととらえ、他の地域にも広げようとしています」、「ロシアは米国や欧州、日本を「いわゆる西側」とひとくくりに見ています。社会に分断の種をまき、極端な政治対立を引き起こして、民主主義国の団結を弱めることが目的です。ロシアにとって日本はアジアの主要なライバル国の一つであり、日本が西側諸国と足並みをそろえている以上、当然、標的になり得ます。その結果、政治はより二極化し、過激になり、制裁といった対ロシアの連帯が弱まるだけでなく、民主主義や人権といった地球規模の共通の価値が揺らいでいくでしょう」、「まず必要なのは、徹底したモニタリングです。データに基づいて情報工作の実態を可視化しなければ、政府や企業を動かすことはできません。私たちは大統領選などの際に、動画投稿アプリ「TikTok」に数千、数万という単位で偽アカウントや偽情報の投稿を報告してきました。しかし、実際に削除などの対応が取られたのは半分ほど。偽情報の拡散をどうやって止めるか、プラットフォーム企業を交えて議論するしかありません。ベトナムや北マケドニアの「バイト」に拡散をやめるよう説得したところで、何も状況は変わらないからです。ティックトックや米メタといった巨大IT企業に加え、研究者やジャーナリスト、市民社会の代表者を交えた対話の場を設け、具体策を探る。日本のような国には、それを実現できる十分な影響力があると思います」というものですが、残念ながら本コラムで以前から指摘しているとおり、日本の規制の方向性が「事業者の自主性に任せる」ものが多く、規制の強制力がほぼないうえ、メタに代表されるデジタルプラットフォーマーがそうした「お願いベース」の自主規制を悉く無効化している「蛮行」が目立つ状況にあります。前回の本コラム(暴排トピックス2026年2月号)でも取り上げましたが、政府の有識者会議で法規制を提言してきた森亮二弁護士「プラットフォームに自主対策をお願いする段階はとうに過ぎている。少なくとも(投稿本体でなく)広告についてはプラットフォーム事業者による広告主の身元確認義務、被害に対する損害賠償の連帯責任を負わせる法律は作れるし、作れば効果があるはず」と、法規制導入を提言していることに、筆者も強く同意するところです。

    2025年10月の宮城県知事選でSNSを中心に流言飛語が飛び交ったことを受け、宮城県は、選挙期間中の偽・誤情報や中傷対策などを話し合う有識者検討会の初会合を開きました。憲法や情報法が専門の曽我部真裕・京都大大学院教授は「中傷や偽・誤情報の拡散という深刻な問題も顕在化し、選挙に及ぼす影響は無視できない。宮城モデルとして、他県や国に参照されるような先導的な取り組みにしたい」と述べています。検討会は、現行制度を前提に表現の自由などに配慮したうえで、民間主体の取り組みを円滑に進める環境整備の方策を探るものとし、情報工学やAI、法律などの専門家8人で構成され、夏ごろをめどに提言案をまとめるとしています。報道によれば、NPO法人メディアージ常務理事の漆田義孝氏は言論をゆがめるような情報への対策や規制は必要だと指摘、しかし、行政など公的機関が発信すると「『権力による擁護』と受け止められるリスクがある」ため、「ファクトチェックの主体は有権者個人であることが理想」と述べ、県民に政治や行政に関心を向けてもらえるような情報発信方法の定期的な見直しを提案した。古田大輔・日本ファクトチェックセンター編集長は対策について「ファクトチェックだけでは不十分」としつつ、誤った情報の拡散の歯止めや再拡散の予防などの効果があると説明、新たな組織をつくる場合、責任の所在や検閲との線引きなどを課題に挙げています。村井嘉浩知事は選挙期間中、事実に基づかない中傷があるとして「毅然と対応する」と発信、法的措置に向けた検討を続けており、知事選後、「県として第三者的な立場で選挙のファクトチェックができるかの検討」を幹部に指示していました。

    院選期間中に偽情報や誤情報を見た人の9割が事実だと誤認していたことが、東洋大の調査で判明しました。毎日新聞によれば、調査した専門家は「投開票までの期間が短かったため、メディアが偽・誤情報をファクトチェックして打ち消しても、十分に浸透しなかった可能性がある」と分析しているといいます。小笠原盛浩教授(社会情報学)の研究チームが、衆院選投開票日の2026年2月8日から3日間、国内の18~79歳の男女1800人を対象にインターネットでアンケートを実施、メディアのファクトチェックで「誤り」「根拠不明」と判定された「マンション価格高騰は外国人が投機目的で購入」など偽・誤情報5件について、選挙期間中に接触したかどうかや、何が情報源だったか、事実と誤認したかどうかなどを尋ねたところ、有効回答1793人のうち、1件以上を見聞きした人は半数強の921人に上り、このうち89.4%にあたる823人が事実と誤認、5件のうち接触率が最高の44.4%だったのは「マンション高騰」で、89.6%が事実と誤認していたといいます。ほかの4件は「こども家庭庁を廃止すれば減税分の財源をまかなえる」(接触率15.6%、誤認識率72.8%)、「中道改革連合の街頭演説に集まった聴衆の動画はAIで作成」(接触率11.8%、誤認識率67.0%)などで、「マンション高騰」が際立ったのは、与野党が外国人の不動産取得規制を公約に掲げていたことなどが影響したとみられています。情報源は、テレビ32.7%、ニュースサイト・アプリ22.7%、政党・候補者以外のSNS20.0%の順で、動画共有サイトは6.2%となり、2025年の参院選後にチームが実施した調査の結果と、ほぼ同じ傾向となりましたテレビやニュースサイトが情報源として多かったのは、打ち消す報道を見た人が、逆に印象の強い偽・誤情報の方を事実として記憶した可能性があるといい、小笠原教授は「現在の環境では真偽不明な情報の流通量が非常に多く、選挙期間中はその傾向が強まる。拡散した偽・誤情報を打ち消す報道が、より早く、誤解されずに浸透するよう、メディアは選挙時のファクトチェックを一層迅速に行うとともに、伝え方をさらに工夫してほしい」と述べていますが、一方で生成AIによる巧妙な偽動画などが広がっていることから「個人で情報の真偽を見極めることが困難になっており、信頼できる情報にアクセスしやすい環境の整備が必要だ」と訴えており、筆者もまったく同感です。

    地震などの自然災害発生時に被災地近くに原子力発電所があり、被害規模が大きいほどSNS上で偽情報が拡散されやすいことが、IT企業「Spectee」の調査で分かりました。自治体などから早期に公式情報が出されることで抑制される可能性が高まるとも指摘しています。2024年1月に発生した能登半島地震では、嘘の救助要請や、原子力発電所に関連した偽情報の投稿がSNS上で多数確認されました。調査では、広域にわたる道路寸断や津波被害が起こるなど災害規模が大きかったことや、原発への影響に関する懸念が生じたことなど複合的な要素がそろったことが、偽情報が投稿される要因となったと指摘しています。同社は「SNSに寄せられた情報を行政や民間の持つ情報と照らし合わせ、ネットワークを強化していくことが重要だ」と指摘しています。

    米国とイスラエルによるイランへの軍事攻撃を巡り、SNS上で偽・誤情報や真偽不明の情報が拡散しています。Xでは、英文で「(イランの)革命防衛隊が弾道ミサイルで米原子力空母を攻撃した」「米軍基地が攻撃され、米兵560人が死傷した」などとする投稿が相次ぎ、中には10万回以上閲覧されたものもありましたが、中東を所管する米中央軍は公式アカウントの投稿でいずれも虚偽だと否定しました。日本語の投稿では、「イスラエルの原子力施設がミサイルで破壊され、放射性物質が漏えいした」とする複数の書き込みが確認されましたが、添付されていた映像は、過去にウクライナで弾薬庫の爆発事故が起きた際に投稿されたものでした。毎回言われることですが、SNS上の情報に接する際には、情報源や信頼できる発信者かどうかを確認することや、安易に拡散させることがないよう注意が必要です。一方、米イスラエル両国とイランの交戦では、激しい情報戦も行われており、イラン側は国営メディアなどを通じて大規模な「戦果」を強調し、米中央軍は頻繁な「ファクトチェック」で対抗、イスラエルはイランへのサイバー攻撃で体制に揺さぶりをかけているとみられています。ただ、イランやアラブ諸国では報道規制が厳しいこともあり、戦況の正確な把握は困難な現状がその傾向に拍車をかけている側面もあるようです。各国のインターネットの接続状況を監視している民間団体「ネットブロックス」によれば、イラン国内では2026年2月28日に戦闘が始まって以降、ネットはほぼ完全に遮断されており、イラン当局は外部の情報を制限し、国民に戦闘が優位に進んでいると印象づける狙いがあるとみられています。米紙WSJなどによれば、イスラエルはイランで多くのイスラム教徒が使用する携帯電話のアプリにサイバー攻撃を実施、礼拝の時間を知らせるアプリで、軍事作戦の開始に合わせて画面上にペルシャ語で「報いの時が来た」などと表示させたほか、同じ時間帯にはイラン国営通信のニュースサイトもハッキングされ、「イラン政権にとって恐怖の時間だ。イラン革命防衛隊と民兵組織は壊滅的な打撃を加えられた」とのメッセージが映し出されるなど、イラン国民や治安部隊を心理的に揺さぶり、体制を動揺させる狙いがあったとみられています。イスラエルメディアによると、イラン革命防衛隊が使う通信インフラも一時、機能不全に陥りました。サイバー攻撃により、革命防衛隊内部のコミュニケーションを妨害し、混乱させようとしたといいます。イスラエルは2024年9月、イランの支援を受けるレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの戦闘員らが所持するポケベルを一斉に爆発させ、数千人の死傷者を出すなど、世界的にも優れたサイバー能力を持っているとされます。

    メキシコの麻薬密売組織「ハリスコ新世代カルテル(CJNG)」の指導者で、指名手配中だったネメシオ・オセゲラ容疑者(通称「エルメンチョ」)が軍の作戦で殺害されたことを受けて、ソーシャルメディア上では激しい暴力行為に関する偽情報が拡がりました。これらの偽情報拡散は犯罪組織によるプロパガンダ(宣伝活動)によって助長されているようです。実際、メキシコ各地ではオセゲラ容疑者殺害への報復として忠実な支持者らが道路を封鎖し、車を燃やすなどし、治安が悪化、偽情報の中には「グアダラハラ空港が暗殺者に占拠された」、「滑走路上の飛行機が炎上」、「観光客に人気のプエルト・バジャルタ市内の教会や複数の建物から煙が立ち上っている」などといったものがありました。これらの画像は虚偽でしたが、数万回もシェアされたといいます。偽情報は何も知らない一般ユーザーだけでなく、報復攻撃を実際以上に大きく恐ろしいものに見せかける目的でカCJNGが関与したケースもあり、予想外の速さで拡散されたと考えられます。メキシコの犯罪組織によるソーシャルメディアの利用について研究しているペンシルベニア大学のジェーン・エスバーグ助教授はロイターの報道で「彼らはメキシコ政府が国を統制できていないことを示そうとしている」と述べ、この戦略はカルテルが全国に存在するというイメージを醸成するのに役立ったが、暴力の規模や治安部隊が直面している状況を把握することを困難にしていると指摘しています。

    埼玉県川口市で外国籍の市民が増えている現状や、「外国人排斥」を訴えるデモ活動などが続いていることについて、大野元裕知事が県議会で、「外国人住民の増加が治安に影響を与えているという明確なファクト(事実)はない」と述べ、川口市の治安や県の取り組みについて説明しました。川口市内の刑法犯認知件数がピークの2001年は1万6657件だったのに対し、2025年は4417件にまで減っていることに言及、「その間、在留外国人数が約4倍に増加しているにもかかわらず大幅に減少している」と説明、2025年の国全体の刑法犯認知件数は2024年と比べて悪化(増加)していますが、川口市を管轄する県警川口署と武南署では改善(減少)しており、大野知事は「国との間で比較すれば(治安は)改善している」と話し、県の取り組みが犯罪の減少に寄与しているという考えを示したものです。そのうえで、全ての県民が安心して暮らせる社会を作るための決意として、「不当な差別的言動は地域社会に分断を招きかねない。徹底して排除されるべきものだ」と答弁、県民総ぐるみの「人権尊重社会をめざす県民運動」の実施などを通じて、人権意識の高揚を図るということです。

    (7)その他のトピックス

    ①中央銀行デジタル通貨(CBDC)/暗号資産を巡る動向

    欧州中央銀行(ECB)のチポローネ専務理事は、2029年下半期の導入が計画されている中銀のデジタル通貨(CBDC)「デジタルユーロ」について、「決済での銀行の中核的地位を維持することにつながる」と訴えています。デジタルユーロの計画を巡っては、銀行が決済処理の役割を失う可能性があるとの懸念を引き起こしてきましたが、チポローネ氏は「銀行が決済分野での役割を失う可能性は、ステーブルコインだけでなく、他の民間のソリューションにも起因する」とし、デジタルユーロの有無にかかわらず銀行がリスクに直面していると指摘、その上で、デジタルユーロの導入は銀行を支援することになると主張しました。また、ECBとしてはイタリアの「バンコマット」や、スペインの「ビズム」といった欧州の決済スキームも保護したい意向を表明しています。ECBは各国の決済システムについては「共同ブランド化」の協定に基づき、デジタルユーロのインフラを活用してユーロ圏全域で利用可能なカードを発行できるようにする計画で、それらの機能は、デジタルユーロの導入に先駆けて利用できるようにするとしています。ただ、ユーロ圏21カ国のうち、国内決済システムを持つのは8カ国にとどまり、他の国は国際決済システムに完全に依存、トランプ米政権と欧州の関係悪化を受け、ECBは欧州での決済の4分の3超をビザやマスターカードなどが占めていることを戦略的なリスクだと位置付けており、いる。チポローネ氏は「デジタルユーロを使った加盟店手数料の上限は、最も高額な国際決済システムの手数料より低く設定されるものの、通常は最も安価な国内決済システムの手数料よりは高くなる」とし、「デジタルユーロは国内決済システムを優遇することになる」と述べています。また、チポローネ氏は、デジタルユーロの導入に伴い、欧州の銀行では4年間で40億~60億ユーロ(約47億~71億ドル)のコストがかかる見通しだと述べています。ECB側では、デジタルユーロの導入コストは約13億ユーロで、運営コストは年間約3億ユーロとなる見通しで、ユーロ圏外のEU加盟国の国民は、自国の中央銀行がECBと合意すれば、デジタルユーロでの支払いができるようになります。

    FATFがアンホストウォレットを介したP2P取引を通じてのステーブルコインの悪用に関する報告書を公表、金融システムを守るための管理強化を呼びかける内容となっています。

    ▼ 金融庁 FATFによる「ステーブルコイン及びアンホステッド・ウォレット(P2P)に関する報告書」の公表について
    ▼ プレス・リリース(翻訳)
    • ステーブルコインとアンホストウォレットに関するターゲットレポート-ピアツーピア取引 パリ、2026年3月3日—金融活動作業部会(FATF)の新しい報告書は、特にホストされていないウォレットを介したピアツーピア(P2P)取引を通じてのステーブルコインの不正利用に関連する違法な金融リスクを強調し、金融システムの健全性を守るための管理強化のための各国および民間セクターへの推奨措置を示しています
    • FATFのステーブルコインとアンホストウォレットに関するターゲットレポートは、ステーブルコインが急速に拡大し、2025年半ばまでに250種類以上が流通し、時価総額は3,000億米ドルを超えていることを強調しています。チェイナリシスによると、2025年の不正な仮想資産取引量の84%がステーブルコインであり、しばしば非ホストウォレットや資金の出所を隠すための複雑なマネー・ローダリング技術が関与していました
    • 報告書は、ステーブルコインの価格安定性、流動性、相互運用性が正当な利用を支える一方で、犯罪的な悪用の魅力にもなっていることを強調しています。これにはマネー・ローダリング業者やテロリストの資金提供者、さらにはDPRKを含む国家系サイバー犯罪グループがステーブルコインをランサムウェア、フィッシング、その他のサイバー犯罪の資金洗浄に好む手法として採用すること、イランの関係者がステーブルコインを活用して拡散を資金調達することが含まれます。
    • 脆弱性には、アンホストウォレットを介したP2P取引が個人や団体間で直接行われ、規制された仲介者である仮想資産サービスプロバイダー(VASP)や金融機関の関与なしに行われること、またステーブルコイン発行者がクロスチェーン活動の管理に困難を抱え、それが違法金融対策の対象外となる可能性があることが含まれます。
    • リスクの軽減
      • 報告書は、ステーブルコインエコシステム内で活動する企業に対して、ステーブルコインを他の仮想資産と区別する特徴を明確に考慮した、限定的な規制枠組みを実施している地域のみであることを強調しています。
      • FATF基準は、既にVASPに適用されるものを超えるステーブルコインの枠組みを管轄区域に採用することを義務付けていませんが、各国にステーブルコインに関連する特定のマネー・ローダリング、テロ資金供与、拡散資金調達のリスクを認識し、それぞれの特徴を反映した比例的かつ効果的な緩和措置を実施するよう促しています。
      • 各国はFATF基準の勧告15を完全に実施し、ステーブルコイン発行者、仲介VASP、金融機関およびその他関連の関係者が明確なマネー・ローダリング防止およびテロ資金供与義務の対象となるようにすべきです。
      • さらに、ステーブルコインの悪用を緩和するための法域および民間セクターの良い実践例も強調しています。
        • ステーブルコイン発行者に対し、セカンダリーマーケットでの凍結、バーン、引き出し、顧客デューデリジェンスを実施し、必要に応じて許可上場(事前承認済みアドレスへの取引制限)や上場拒否(高リスクアドレスを含む取引のブロック)などのスマートコントラクト管理を実施するなどのリスクベースの技術的およびガバナンス管理を採用することを求めます。
        • スマートコントラクト機能、クロスチェーン取引メカニクス、ブロックチェーン分析ツール、アンホストウォレットを介したP2P取引のリスク監視などの専門知識を含む、監督機関および法執行機関内で強力な技術力を開発します。
        • 有能な当局が迅速な国内外協力に必要なツールと法的枠組みを備え、確立されたチャネル、覚書、迅速な情報交換を可能にする仕組み、特にステーブルコインの凍結や焼却に関わる場合などを確実にします。
        • 分類、リスク指標、新たな脅威に関する協力を強化する官民パートナーシップの確立や、調査のためのより戦術的なパートナーシップの構築
      • FATFグローバルネットワーク全体から50件以上の提出物をもとに、新技術やブロックチェーン分析ツール、その他のリスク軽減策がステーブルコインに関わる違法行為を検出・阻止するためにどのように活用されているかを示す事例研究も紹介しています。

    ステーブルコインを巡る国内外の最近の報道から、いくつか紹介します。

    • 金融庁は、野村ホールディング(HD)や大和証券グループ本社、メガバンク3行の5社が始めるステーブルコインを使った有価証券決済の実証実験に対して支援を決めたと発表しています。実証実験では、国債、上場株式、投資信託、社債といった振替制度で扱われる有価証券を対象に、証券会社間取引における振替口座簿の記録とブロックチェーン上のデータを同期させる仕組みを検証、あわせて、その証券の移転とステーブルコインによる代金の支払いを同時に行えるか、実務上の課題を検証するものです。これまで、ブロックチェーンを活用した有価証券は、主にセキュリティトークン(ST)として不動産証券化商品や社債などで活用が進んできましが、国債や株式など振替機関の利用を前提とする有価証券では、STと同様の仕組みを単純に適用することは容易ではありませんでした。金融庁によれば、既存市場で流通している有価証券をブロックチェーンの仕組みと連動させる点で先進性があり、将来的に証券決済全体の高度化につながる可能性があるとして支援を決めたといいます。
    • 三菱UFJ信託銀行の窪田博社長は、法定通貨と価値が連動する円建てのデジタル通貨「ステーブルコイン(SC)」を「来年度に発行したい」と表明しています。まずは法人向けのクロスボーダー決済(国際決済)などへの利用を想定しており、円建てSC普及へ「しっかり貢献する必要がある」と強調しています。発行するSCは、裏付け資産となる国債や預金を信託銀行が管理する日本独自の「信託型」で、実現すれば国内初となります。「少ないシステム投資で発行できる」のが利点で、当面は日系企業と海外現地法人の間の決済などを主な用途と見込んでいます。SC市場はドル建てが現在9割超を占めており、窪田氏は「早く円建てSCを出さなければ、これまで円決済だったものがドル建てSCに代わるリスクがある」と分析、その場合、「国力や経済力の低下につながる」と懸念しています。また、流通拡大には「商業銀行が入らないといけない」と指摘、既に同社はメガバンク3行や三菱商事と、SCの共同発行やクロスボーダー決済の実証実験も進めており、連携して実用化を急ぐとしています。
    • 欧州中央銀行(ECB)が公表した報告書によれば、ユーロ圏にお​けるステーブルコインの普及は金融‌政策の効果を弱め、銀行から預金を吸い上げ、実体経済への融資を減らす可能性があるといいます。ステーブルコインは⁠依然として限定的な存在ではあるものの、急ピッチ​で成長していることから、規制が追いつ​いていないとの懸念が高まっています。伝統的な貸し手にとっての問題は、ステーブルコインの利用拡​大が銀行預金からの資金流出を招き、​銀行が市場でより高コストな資金調達を余儀な‌くさ⁠れる可能性があることです。またECBにとっての主要な問題は、大半のステーブルコインがドルを裏付けにしている点で、ドルベー​スの資産が欧​州で広く⁠利用されるようになれば、域外の政策動向が流動性や支出​環境に影響を与え、ECBの影響力を弱める​可能性が⁠あります。報告書は「外国の金融環境がステーブルコインを通じてユーロ圏に『輸入』され⁠る可​能性がある」と指摘し、特​に金融ストレス期にはECBの金融環境への統制力が弱まるな​ど、悪影響が生じかねないと結論付けています。
    • アフリカ主要経済国のナイジェリアと南アフリカで、ステーブルコイン需要が高まっており、利用者の間では一段の普及を望む声が多いことが調査で分かったと報じられています(2026年2月19日付ロイター)。ステーブルコインは途上国での送金の迅速化・低コスト化につながるものの、テザーやUSCDなど代表的なステーブルコインは99%が米ドルにペッグしており、経済のドル化や資本逃避といったリスクもあります。調査によれば、過去1年間にステーブルコイン保有量を増やしたという回答は半数以上にのぼり、発展途上国でその傾向が最も顕著で、ナイジェリアと南アフリカでは、約80%が既にステーブルコインを保有していると回答、そのうち75%以上が今後1年間でさらに保有量を増やす意向を示したといいます。非保有者層では、保有を開始したいという割合が低・中所得国で高所得国の約2倍となりました。ナイジェリアでは、支払いは通貨ナイラよりステーブルコインでの受け取りを希望する割合が95%にのぼりました。BVNKの共同創業者クリス・ハームズ氏は「従来の決済が不安定でコスト高の地域では既にステーブルコインによる決済が行われている」とした上で、既存の金融ツールとのさらなる統合が求められていると指摘しています。また、調査では、店舗やオンラインでのステーブルコインの受け入れが限定的で、日常的な購入や定額課金分野で普及の障壁となっていることも明らかになっています。
    • 中国人民銀行(中央銀行)や国家外貨管理局は、ステーブルコインに関する規制を発表しました。人民元の安定を確保する狙いで、個人や法人が関係当局の承認がないまま人民元に連動するステーブルコインを発行するのを禁じる内容です。共同声明は、法定通貨に連動するステーブルコインについて「法定通貨と同じ法的地位を有しているわけではない」と明記した上で、暗号資産に関連する事業活動は「違法な金融活動」だと指摘、金融機関に対し、暗号資産関連企業に銀行業務や決済サービスを提供しないよう警告しています。今回の規制強化が、人民元の安定を揺るがすリスクを排除するための措置であることを示唆した形となります。一方、中国政府は2025年末、民間の商業銀行に対し、CBDC「デジタル人民元」を保有する顧客へ利息を分配することを承認しました。ロイターの報道でニューヨーク大法科大学院のウィンストン・マー非常勤教授は、中国人民銀行はデジタル人民元のみを合法的な通貨として位置付けており、世界の暗号資産取引所で流通している民間のステーブルコインと差別化を図るための禁止措置だと分析しています。中国政府は長年、暗号資産に対して厳しい姿勢を取ってきた経緯があります
    • 関連して、香港の中央銀行に当たる香港金融管理局(HKMA)は2026年3月、ステーブルコインの発行免許の付与を初めています。現地では初の取り組みで、アジア有数の国際金融センターである香港も出遅れまいと動いているものです。香港は金融取引で中国本土への主要な玄関口であり、中国政府が暗号資産規制をめぐり、より穏健な姿勢を試す実験場として香港を活用するのではないかとの観測もありましたが、中国当局が暗号資産の規制を緩和する意図はないと、これまで以上に強調していることから、その期待感は薄らいでいます。当初は77社・団体が関心を示していましたが、正式申請は36件にまで減り、最終的に発行免許を取得するのは数社にとどまる可能性が高いとされます。

    2026年2月28日付日本経済新聞「米国の仮想通貨法案、業界待望の脱「グレーゾーン」へ」は大変興味深い内容でした。報道によれば、米国で暗号資産の規制上の分類を明確化する「クラリティー法案」が議論されており、成立すれば、どの監督当局が規制するかが曖昧な「グレーゾーン」状態が解消される見通しで、暗号資産に投資しやすくなり、価格や関連株を押し上げるとの見方もあるといいます。クラリティー法案は、主流な暗号資産を含むブロックチェーン(分散型台帳)技術を使うデジタル資産の規制上の分類を明確化し、米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)の管轄権を整理することを目指しており、特定の投資家に支配されずに分散保有されている暗号資産であれば、「証券」ではなく「商品」としてCFTCが監督当局になるという内容が盛り込まれる方向です。本コラムでも注視してきましたが、バイデン前政権では消費者保護を重視し、SECが既存の連邦証券法にのっとり事業者の不正行為に厳しい処罰を与えてきました。業界側は規制体系が曖昧なまま裁量的な取り締まりが実施されていると反発し、明確なルールづくりを求めていました。米国では2025年7月、ステーブルコインを対象とした初の包括的な連邦法「GENIUS法」が成立し、普及機運が急速に高まりました。暗号資産全体を対象とするクラリティー法案が成立すれば「暗号資産業界への影響力はGENIUS法を上回る広範なものとなる」(米投資銀行ベンチマークのマーク・パーマー氏)とみられています。クラリティー法案は2025年7月に米連邦議会の下院を通過しましたが、米上院で議論が膠着している状況です。争点の一つがステーブルコインの交換業者が顧客の残高に応じて利子相当の報酬を提供することの是非で、GENIUS法ではステーブルコインの発行体が保有者に利息を提供することを禁止していますが、発行体の関連会社や交換所に対する明示的な禁止規定がなく、コインベース・グローバルなどの米大手交換所は、新規顧客の獲得を目的に米銀の平均的な預金金利を上回る報酬を付与している実態があります。銀行側は、預金利息よりもステーブルコイン利回りに魅力があれば預金が大量に流出しかねないと警告、GENIUS法の「抜け穴」が許しているステーブルコインの報酬制度を、クラリティー法案で制限するよう求めているものです。

    ロイターによれば、米国とイスラエルによるイラン攻撃後の数時間に、イランの暗号資産取引所から資金流出が急‌増したと、ブロックチェーン分析企業2社が明らかにしたということです(ただし急増の背景を​特定できないとしています)。米チェイナリシスに⁠よれば、攻撃開始後の1時間にイランの​暗号資産取引所で資金流出が急増し、の​べ200万ドルを超えたといいます。ロイターが最初に攻撃を報じたのは2月28日午後3時15分ごろ(日本時間)で、ブロック​チェーン解析を手がける英エリプテ​ィックによれば、イラン最大の暗号資産取引所ノ‌ビテ⁠ックスの資金流出額は同午後8時~9時の間に289万ドルでピークに達し、前日の1時間当たり最大流出額の約8倍を記録したといいます。チェイナリシ​スによれば、イラ⁠ンの暗号資産取引所からは2月28日から3月1日にかけて全体で1030万ドル(約16億2000万円)相当の暗号資産​が流出、チェイナリシスは、この数日の資​金移動の主体や理由は不明としていますが、個人のウォレットに移し替えられたほか、政府が引き出した可能性についても言及しています。背景には、経済が崩壊することへの警戒感から通貨リアルへの信用が低下、インフレや経済制裁などで現金が使いにくくなるとし、資産を守るためとして暗号資産への需要が高まっていると考えられます。イランでは2026年1月、反政府デモを背景にインターネット接続が遮断され、この間、ビットコインの取引も低調になりましたが、接続開始後に取引が加速、同2月28日~3月2日の期間の1時間当たりの取引量は、最大で同年の平均の8~9倍程度に膨らんだとしています。

    金融庁は、暗号資産交換業のサイバーセキュリティ対策を強化する方針案を公表、不正アクセスによる暗号資産の流出被害に備えて交換業者に必要な人員の確保を求めるなど、監督当局としての方向性を初めてとりまとめました。安全な取引環境を整え、投資家保護を図る狙いがあります。金融庁は暗号資産を金融商品として位置づける金融商品取引法の改正案を2026年の国会に提出する予定で、法改正を前に方針案を作成し、同3月11日まで意見募集(パブリックコメント)を実施しています。金融庁は流出事案を受けて交換業者が顧客の暗号資産をインターネットに接続しない「コールドウォレット」で保管しているかなど、顧客資産の管理体制を重点的にモニタリングしています。方針は(1)交換業者による自助(2)業界の共助(3)当局の公助の3本柱でサイバーセキュリティ対策の取り組みを強化するとしています。交換業者に関連業務の人員確保や外部監査の導入など、事務ガイドラインが求める水準の引き上げを検討、業界には自主規制機関による監査能力の向上や、情報共有機関への積極的な参加などを促すとしています。金融庁は代表的なサイバー攻撃事例の攻撃手法や対応策を分析して交換業者に共有、定期的に実施するサイバーセキュリティ演習に、3年以内にはすべての交換業者が参加することもめざす考えです。本コラムでも継続的に取り上げていますが、暗号資産の流出被害は多発しており、2024年5月にDMMビットコインから482億円相当のビットコインが流出、2025年2月には世界各国で取引所サービスを展開するBybitから14億6000万ドル(約2200億円)相当の暗号資産が盗まれ、2025年12月にはブロックチェーン(分散型台帳)上の運用サービスであるヤーン・ファイナンスが攻撃を受けて300万ドル相当の暗号資産が流出したことも明らかになりました。暗号資産の市場に対して不信感が広がって投資家が離れ、代表的なビットコイン価格の下落にもつながっている状況で、2025年に開いた暗号資産の法規制のあり方を検討する金融審議会(首相の諮問機関)の作業部会でも不正流出時の対応について議論が重なり、責任準備金の積み立てを交換業者に求めるほか、システム業者向けには届け出制を導入するとしています。

    ▼ 金融庁 「暗号資産交換業等におけるサイバーセキュリティ強化に向けた取組方針(案)」の公表について
    ▼ (別紙2)PDF暗号資産交換業等におけるサイバーセキュリティ強化に向けた取組方針(案)(概要)
    • 暗号資産については、国内外の投資家において投資対象と位置付けられる状況が生じているとされている。一方、ビットコイン誕生以降、全世界で暗号資産の流出に繋がるサイバー攻撃が数多く発生。
    • 特に近年の暗号資産流出事案については、必ずしも署名鍵の盗難が原因ではなく、ソーシャルエンジニアリングや外部委託先への侵入など、間接的な攻撃を含む巧妙な手法が用いられる傾向。また、外貨獲得を目的とする国家の関与が疑われるサイバー攻撃が発生していることも指摘されている。こうした中、「暗号資産制度に関するワーキンググループ」報告書においては、暗号資産交換業者がサイバーセキュリティの高度化に向けて切磋琢磨していくべきとされた。
    • 金融庁として、暗号資産交換業者等のサイバーセキュリティをさらに強化するため、個別業者の自助の取組及び業界全体の共助の取組を促すとともに、公助の観点から一定の支援策を講じることとし、取組方針として公表
    • ⾃助の着実な実施
      • 各暗号資産交換業者によるサイバーセキュリティ対策の取組(自助)の着実な実施を促す。
        • 各事業者のサイバーセキュリティ態勢について、重点的にモニタリングを行い、業界横断的に実態把握と分析を実施
        • 暗号資産交換業者向け事務ガイドラインで求めるサイバーセキュリティ水準の引上げを検討(例えば、サイバーセキュリティに係る人的構成、外部監査、委託先管理の水準等)
      • 共助の促進
        • サイバーセキュリティには個社単独では対応しきれない課題があることを踏まえ、業界全体の取組(共助)を促す。
          • 自主規制機関に対して、サイバーセキュリティに関する自主規制の整備・会員への監査能力向上を図るべく、体制整備を慫慂
          • 暗号資産交換業者による情報共有機関(JPCrypto-ISACなど)への積極的な参加を通じた業界全体としての情報共有機能の強化を慫慂
        • 公助の取組
          • 当局においても必要な後押し(公助)に取り組む。
            • 国内外の暗号資産交換業者等への過去のサイバー攻撃事例の分析調査を実施(ブロックチェーン「国際共同研究」プロジェクト)
            • 金融庁による金融業界横断的なサイバーセキュリティ演習(Delta Wall)における暗号資産交換業者向けのシナリオを継続的に改善
            • 脅威ベースのペネトレーションテスト(TLPT)を暗号資産交換業者のうち数組織に対して実施し、その有用性を実証

    関連して、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は、会員事業者のセキュリティレベル向上に役立つ国内外の情報をとりまとめています。ハッキングによる不正流出などの根絶に向け、業界全体でセキュリティに関する知見を共有して対策レベルを底上げする狙いがあります。JCBAのセキュリティ・システム部会が、金融庁や警察庁、国際機関のサイバーセキュリティに関する最新情報などを一元化し、一覧としてとりまとめ、犯罪者集団による最新の攻撃手法や事業者の対応事例なども集約、今後は継続的に情報を更新、拡充するとしています。また、ガイドブックとしての整理や、AIを活用したチャットボットの開発なども検討し、会員が情報を活用しやすくなるよう利便性を高める方針です。個人や機関投資家にとって暗号資産が投資対象としてより身近になるため、業界全体で安全対策を強化していく必要性が高まっていることに対応するものです。

    高市首相の名前を冠した暗号資産「SANAE TOKEN(サナエトークン)」について、高市首相が「私は全く存じ上げない。国民の皆様が、誤認されることのないよう、申し上げることといたしました」と注意を呼びかけました。同トークンの発行団体は、トークンの発行を中止すると発表しています。有識者による検証委員会を設置して再発防止策の策定を進め、所有者に補償を行う方針を示していました。

    ②IRカジノ/依存症を巡る動向

    愛知県は、常滑市の中部空港周辺にカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致を検討していることに関し、事業者から提案や意見の募集を始めたと発表しました(3月19日まで)。IRの整備や運営に関心がある事業者が対象で、希望に応じてヒアリングを行い、専門家による第三者委員会で提案の妥当性について評価していくとしています。愛知県が公表した実施方針案によれば、2026年秋から2027年春までの事業者選定を想定し、ギャンブル依存症対策も強化するとしています。愛知県は2017年から誘致を検討し、IR活用の調査研究を進めていましたが新型コロナウイルス感染拡大で中断、大村知事が誘致の検討を再開すると明らかにしていました。知事は記者会見で、愛知県の外国人旅行者数が東京都や大阪府に約6~8倍の差をつけられていると説明、世界中から人々を呼び込む拠点となる「国際観光都市を早急に実現する必要がある」と誘致の意義を強調しています。また、若者の東京圏流出が人口減少に拍車をかけているとして、IR整備により「若者が愛知で暮らしたいと思えるような魅力増進の契機にしたい」と語りました。また、候補地の中部空港周辺エリアについては、中部空港が近い将来24時間運用化される見通しであることや、リニア中央新幹線の建設工事が進んでいることなどから「国際観光都市を実現するためのポテンシャルが非常に高い」と評価しています。国はIR実施法で立地区域を全国で最大3カ所としており、現在は大阪府・市の計画だけが認定されています。国は追加選定に向け、自治体からの申請を2027年5月6日から11月5日まで受け付ける方針を示しています。大阪IRでカジノは施設面積の3%以内に抑えるものの、当初は年間売上高の8割を稼ぐ計画となっています。大阪府・市や事業者はカジノで稼いだ収益をMICE(国際会議や展示会)施設に再投資し、観光資源を増やしてリピーターの獲得につなげる「ラスベガス型」の戦略を描いていますが、初期投資の重みが再投資の妨げになれば「カジノ頼り」からの脱却は遠のくことになります。以前の誘致当時より競争環境は厳しい状況にあり、日本のIRの未来を占うとして、大阪の成否が注目されています。

    2026年2月23日付日本経済新聞によれば、米ニューヨーク市で、IRの初進出を巡り議論が巻き起こっているといいます。ギャンブル依存症や地域生活への影響を懸念する声が根強い中、ニューヨーク市になぜIRが必要なのかについて、誘致を進めてきた州上院議員が「住民が周辺州へギャンブルに出向くため、相当額の税収を失ってきた。州内にお金をとどめ、雇用を生み出すことが先決だ」と述べていることが背景あるようです。2010年代以降、米国東海岸の州では製造業の衰退と2008年の金融危機による財政難を背景にカジノの合法化が相次ぎました。「ある州がカジノを合法化すると、ほかの州からお客を取ってどんどん豊かになる。取られた州は対抗して合法化する。このドミノ現象の最後がニューヨークだった」(国際カジノ研究所所長の木曽崇)との指摘は説得力があります。また、ニュージャージー州は米東海岸でいち早く1976年にカジノを合法化し、一時は多くの観光客をひき付けたものの、2004年、隣のペンシルベニア州でスロットカジノが合法化されると新しい設備と地理的な近さから客が流れ、足元の街の訪問者はピークから半減、雇用が減り住民も離れた街の暴力犯罪率は2019~24年の平均値で全米平均の約4倍に上るなど「負のスパイラル」に陥ってしまったといいます。IRの長期的な運営の難しさを感じさせる実態です。

    闇カジノ、闇スロット、オンラインカジノ等に関する最近の報道から、いくつか紹介します。

    • 神奈川県警生活保安課と伊勢佐木署などは、横浜市中区福富町仲通の「闇スロット店(闇スロ)」といわれるゲーム機賭博店を摘発、これまでに常習賭博容疑で、自称社長らを逮捕するとともに、スロット台など98台を押収しています。福富町では2025年も「闇スロ」が摘発されており、同課では深く根付く賭場の根絶に向け、背後関係の全容解明に全力を注いでいます。報道によれば、県内随一の歓楽街として知られる福富町の一角にある5階建ての雑居ビルの4階にはショーパブの看板が掲示されていましたがそれはダミーで、その隣にある防火扉こそが、闇スロット店の入り口で、ストライカーで広げた隙間に、油圧ドアブローカーを差し込んで扉を開けると、店内に従業員5人のほか、客13人がいたといいます。約250平方メートルのフロアには実にスロット88台、パチンコ5台、バカラゲーム機3台、ブラックジャック1台が設置されていました。午後3時から翌朝の9時までが営業時間で、平均で一日80人弱、年間延べ2万8千人の客が出入りしていたとみられ、開業時に別の店の利用者にショートメールなどで知らせて顧客を獲得し、やがてその知人らへと広がっていったとみられています。また、客が4階まで上がってくると、防火扉付近にある防犯カメラで担当者が顔を確認、すでに来たことがある者であれば扉を開けるが、なじみにならなければ一人では入店できない仕組みになっていたといました。2025年1年間で客が賭けた総額は約30億6千万円に上り、店側の売り上げは4億円を超えていたといい、開業資金の出どころや収益金の流れなどの背後関係や、これまでに摘発した店との関係について調べを進める方針です。
    • 福岡市のマンションの一室にあった、24時間営業のカジノ店で、客と賭博をした疑いで、店のオーナーら男女4人が常習賭博の疑いで逮捕されました。報道によれば、店は24時間営業をしていて、来店した客は、店内に設置された4台のパソコンから海外のサイトに接続し、バカラやスロットなどの賭博をしており、店の広告などは一切なく、常連客からの紹介で他の客が来店しており、1日に10人ほどが利用していたとみられています。道仁会傘下組織が関与したとされる別の賭博店を捜査する中で、今回の店舗を把握したということです。関係先からは合わせて2000万円以上の現金が押収されていて、売り上げが暴力団の資金源になっていた可能性があるとみてられています。
    • 全国でスロット賭博店を運営する男ら3人が逮捕された事件で、愛知県警は、稲川会三次団体の事務所を家宅捜索しました。神奈川県横浜市にあるスロット賭博店「ロイヤル」などを運営するグループのトップとみられる容疑者ら男3人は、他の者と共謀して不特定の客に常習的に賭博をさせた疑いが持たれています。容疑者らの関係先の家宅捜索などから暴力団とのつながりが浮上したということで、警察は賭博店の売上の一部が暴力団に流れていたとみています。
    • オンラインカジノで賭博をしたとして、宮城県警は、賭博容疑でプロ野球楽天の浅村栄斗選手とコーチ2人を書類送検しました。3人は容疑を認めています。スマホを使って海外のオンラインカジノサイトに接続し、賭博をした疑いがもたれています。

    ジャーナリストの石川一洋氏と慶応大教授の廣瀬陽子氏が、BS日テレの「深層NEWS」に出演し、ロシアによるウクライナ侵略の長期化がロシア国内に与える影響について議論、石川氏は、ロシア国内で物価高が続いていることに触れ、侵略を続けることは「(自国の)将来を食いつぶしている」と主張しました。ロシア国内では戦費調達のためにオンラインカジノ合法化案が浮上する中、廣瀬氏は合法化された場合「依存など様々な社会問題を増やし、大きな悪影響になりうる」と指摘しています。

    ③犯罪統計資料から

    例月同様、令和8年(2026年)1月の犯罪統計資料(警察庁)について紹介します。

    ▼ 警察庁 犯罪統計資料(令和8年1月分)

    令和8年(2026年)1月の刑法犯総数について、認知件数は61277件(前年同期56736件、前年同期比+8.0%)、検挙件数は22072件(21019件、+5.0%)、検挙率は36.0%(37.0%、▲1.0P)と、認知件数、検挙件数がともに増加している点が注目されます。刑法犯全体の7割を占める窃盗犯の認知件数が増加していることが挙げられ、窃盗犯の認知件数は40180件(38422件、+4.6%)、検挙件数は12782件(12409件、+3.0%)、検挙率は31.8%(32.3%、▲4.0P)となりました。なお、とりわけ件数の多い万引きについて認知件数は9173件(8743件、+4.9%)、検挙件数は5490件(5297件、+3.6%)、検挙率は59.8%(60.6%、▲0.8P)と大幅な増加が継続しています。その他、凶悪犯の認知件数は6688件(6442件、+3.8%)、検挙件数は5970件(5710件、+4.6%)、検挙率は89.3%(88.6%)、粗暴犯の認知凶悪犯の認知件数は621件(562件、+10.5%)、検挙件数は505件(434件、+16.4%)、検挙率は81.3%(77.2%、+4.1P)、粗暴犯の認知件数は5193件(4426件、+17.3%)、検挙件数は3741件(3364件、+11.2%)、検挙率は72.0%(76.0%、▲4.0P)、知能犯の認知件数は6344件(4918件、+29.0%)、検挙件数は1508件(1369件、+10.2%)、検挙率は23.8%(27.8%、▲4.0P)、とりわけ詐欺の認知件数は5983件(4568件、+31.0%)、検挙件数は1252件(1137件、+10.1%)、検挙率は20.9%(24.9%、▲4.0P)、風俗犯の認知件数は1330件(1356件、▲1.9%)、検挙件数は1195件(1116件、+7.1%)、検挙率は89.8%(82.3%、+7.5P)などとなっています。なお、ほとんどの犯罪類型で認知件数が増加しているほどには検挙件数が伸びず、検挙率が低調な点が懸念されます。また、コロナ禍において大きく増加した詐欺は、アフターコロナにおいても増加し続けています。とりわけ以前の本コラム(暴排トピックス2025年7月号)でも紹介したとおり、コロナ禍で「対面型」「接触型」の犯罪がやりにくくなったことを受けて、「非対面型」の還付金詐欺が増加しましたが、コロナ禍が明けても「非対面」とは限らないオレオレ詐欺や架空料金請求詐欺なども大きく増加しています。さらに、SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺では、「非対面」での犯行で、(特殊詐欺を上回る)甚大な被害が発生しています。

    また、特別法犯総数については、検挙件数は4319件(3965件、+8.9%)、検挙人員は3244人(3105人、+4.5%)と検挙件数、検挙人員ともに増加する結果となりました。犯罪類型別では、入管法違反の検挙件数は4871件(5667件、▲14.0%)、検挙人員は3298人(3807人、▲13.4%)、軽犯罪法違反の検挙件数は56入管法違反の検挙件数は233件(292件、▲20.2%)、検挙人員は174人(203人、▲14.3%)、軽犯罪法違反の検挙件数は392件(339件、+15.6%)、検挙人員は403人(338人、+19.2%)、迷惑防止条例違反の検挙件数は277件(358件、▲22.6%)、検挙人員は191人(232人、▲17.7%)、ストーカー規制法違反の検挙件数は123人(80人、+53.8%)、検挙人員は89人(66人、+34.8%)、児童買春・児童ポルノ法違反の検挙件数は218件(261件、▲16.5%)、検挙人員は130人(120人、+8.3%)、犯罪収益移転防止法違反の検挙件数は352件(310件、+13.5%)、検挙人員は242人(244件、▲0.8%)、銃刀法違反の検挙件数は330件(267件、+23.6%)、検挙人員は268人(235人、+14.0%)などとなっています。減少傾向にある犯罪類型が多い中、犯罪収益移転防止法違反等が大きく増加している点が注目されます。また、薬物関係では、麻薬等取締法違反の検挙件数は843件(536件、+57.3%)、検挙人員は497人(402人、+23.6%)、大麻草栽培規制法違反の検挙件数は9件(5件、+80.0%)、検挙人員は7人(4人、+75.0%)、覚せい剤取締法違反の検挙件数は544件(492人、+10.6%)、検挙人員は342人(319人、+7.2%)などとなっています。大麻の規制を巡る法改正から1年が経過しましたが、大麻事犯の検挙件数がここ数年、減少傾向が続いていたところ、2023年に入って増加し、2023年7月にはじめて大麻取締法違反の検挙人員が覚せい剤取締法違反の検挙人員を超え、その傾向が続いています(今後の動向を注視していく必要があります)。また、覚せい剤取締法違反の検挙件数・検挙人員ともに大きな減少傾向が数年来継続していたところ、最近、あらためて増加傾向が見られています(覚せい剤は常習性が高いため、急激な減少が続いていることの説明が難しく、その流通を大きく支配している暴力団側の不透明化や手口の巧妙化の実態が大きく影響しているのではないかと推測されます。言い換えれば、覚せい剤が静かに深く浸透している状況が危惧されるところです)。なお、麻薬等取締法違反が大きく増加している点も注目されますが、2024年の法改正で大麻の利用が追加された点が大きいと言えます。それ以外で対象となるのは、「麻薬」と「向精神薬」であり、「麻薬」とは、モルヒネ、コカインなど麻薬に関する単一条約にて規制されるもののうち大麻を除いたものをいいます。前述したとおり、コカインについては、世界中で急増している点に注意が必要です。また、「向精神薬」とは、中枢神経系に作用し、生物の精神活動に何らかの影響を与える薬物の総称で、主として精神医学や精神薬理学の分野で、脳に対する作用の研究が行われている薬物であり、また精神科で用いられる精神科の薬、また薬物乱用と使用による害に懸念のあるタバコやアルコール、また法律上の定義である麻薬のような娯楽的な薬物が含まれますが、同法では、タバコ、アルコール、カフェインが除かれています。具体的には、コカイン、MDMA、LSDなどがあります。

    また、来日外国人による重要犯罪・重要窃盗犯国籍別検挙人員対前年比較について、総数38人(21人、+81.0%)、ベトナム11人(4人、+175.0%)、中国8人(7人、14.3%)、ブラジル5人(0人)などとなっています。ベトナム人の犯罪が中国人を大きく上回って増え続けている点が最近の特徴です。

    一方、暴力団犯罪(刑法犯)罪種別検挙件数・人員対前年比較の刑法犯総数については、検挙件数は379件(629件、▲39.7%)、検挙人員は238人(309人、▲23.0%)となりました。犯罪類型別では、暴行の検挙件数は32件(30件、+6.7%)、検挙人員は26人(23人、+13.0%)、傷害の検挙件数は45件(67件、▲32.8%)、検挙人員は43人(63人、▲31.7%)、脅迫の検挙件数は14件(17件、▲17.6%)、検挙人員は13人(21人、▲38.1%)、恐喝の検挙件数は14件(16件、▲12.5%)、検挙人員は17人(17人、±0%)、窃盗の検挙件数は145件(256件、▲43.4%)、検挙人員は29人(59人、▲50.8)、詐欺の検挙件数は60件(141件、▲57.4%)、検挙人員は42人(63人、▲33.3%)賭博の検挙件数は0件(9件)、検挙人員は11人(1人、+1000.0%)などとなっています。とりわけ、詐欺については、2023年7月から減少に転じていたところ、あらためて増加傾向にありましたが、ここにきて減少に転じている点が特筆されます。ただし、資金獲得活動の中でも活発に行われていると推測される(ただし、詐欺は薬物などとともに暴力団の世界では御法度となっています)ことから、引き続き注意が必要です。

    さらに、暴力団犯罪(特別法犯)主要法令別検挙件数・人員対前年比較の特別法犯について、特別法犯全体の検挙件数は225件(242件、▲7.0%)、検挙人員は111人(151人、▲26.5%)となりました。犯罪類型別では、入管法違反の検挙件数は0件(1件)、検挙人員は0人(1人)、軽犯罪法違反の検挙件数は5件(2件、+150.0%)、検挙人員は5人(1人、+400.0%)、迷惑防止条例違反の検挙件数は3件(2件、+50.0%)、検挙人員は1人(2人、▲50.0%)、暴力団排除条例違反の検挙件数は1件(0)、検挙人員は1人(1人、±0%)、銃刀法違反の検挙件数は7件(3件、+34.6%)、検挙人員は4人(1人、+300.0%)、麻薬等取締法違反の検挙件数は70件(52件、+34.6%)、検挙人員は27人(26人、+3.8%)、大麻草栽培規制法違反の検挙件数は1件(1件、±0%)、検挙人員は0人(0人)、覚せい剤取締法違反の検挙件数は108件(141件、▲23.4%)、検挙人員は50人(69人、▲27.5%)、麻薬等特例法違反の検挙件数は6件(7件、▲14.3%)、検挙人員は2人(6人、▲66.7%)などとなっています(とりわけ覚せい剤取締法違反や麻薬等取締法違反については、前述のとおり、今後の動向を注視していく必要があります)。なお、参考までに、「麻薬等特例法違反」とは、正式には、「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」といい、覚せい剤・大麻などの違法薬物の栽培・製造・輸出入・譲受・譲渡などを繰り返す薬物ビジネスをした場合は、この麻薬特例法違反になります。なお、法定刑は、無期または5年以上の懲役及び1,000万円以下の罰金で、裁判員裁判になります。

    (8)北朝鮮リスクを巡る動向

    国の公安又は利益に係る犯罪等の取締り及びこれらの犯罪に関する情報収集並びに重大事案への対処を担う警備警察の取組等について紹介する「焦点~令和7年の治安の回顧と展望」から、北朝鮮に関連する記述を紹介します。本コラムで継続的に北朝鮮の動向を見ていますが、より俯瞰的に現状が把握できる内容となっています。

    ▼ 警察庁 焦点~令和7年の治安の回顧と展望
    • 北朝鮮をめぐる情勢 軍事関係
      • 北朝鮮は、令和3年(2021年)に発表した「国防科学発展及び武器体系開発5カ年計画」に基づく軍備増強を進めている。金正恩党総書記は、令和6年(2024年)12月末に開催された朝鮮労働党中央委員会第8期第11回全員会議拡大会議において、令和7年(2025年)の軍事面の課題として、軍の戦争遂行能力向上や民間防衛部門の戦争準備を指示するとともに、自衛的戦争抑止力の強化等を実現するための諸課題を提示した。
      • 北朝鮮は、令和6年(2024年)に続き令和7年(2025年)も多種多様なミサイルの発射を繰り返したほか、発射プラットフォームの多様化に注力した。金正恩党総書記は、同年1月、「新たな炭素繊維複合材料」を使用したとする「新型極超音速中長距離弾道ミサイル」の試験発射を参観し、ミサイルの性能について「いかなる稠密な防御障壁も効果的に突き破り、相手に甚大な軍事的打撃を加えることができる。」と言及した。
      • また、同年4月、北朝鮮は新型駆逐艦で超音速巡航ミサイル、戦略巡航ミサイルや対空ミサイルの試験発射等を行い、金正恩党総書記は、「強力な攻撃能力を前提とする主動的かつ攻勢的な防御体系を確立することが重要」と述べた。
      • 北朝鮮は、令和6年(2024年)に続き、核開発にも注力している。北朝鮮メディアは令和7年(2025年)1月、金正恩党総書記が核物質生産基地と核兵器研究所を現地指導したと報道した。金正恩党総書記は、「党第8回大会が核兵器研究・生産部門に提示した5カ年計画期間の課題が完璧に遂行されるべき今年の闘争は極めて重要」とした上で、「兵器級核物質生産計画を超過遂行して国の核の盾を強化する上で画期的な成果を収める」ことを要求し、核開発や量産を推進していく方針を示した。
      • 同年9月に開催された最高人民会議第14期第13回会議では、「我が方が核保有国へと変遷することとなったのは、我が国家の生存か死滅かという分かれ道で行った必須不可欠の選択であった」とし、「「非核化」なるものは絶対にあり得ない」と強調した。
    • 対米関係
      • 金正恩党総書記は、令和6年(2024年)12月、朝鮮労働党中央委員会第8期第11回全員会議拡大会議において、米国は「反共を国是としている最も反動的な国家的実体」であるとし、「最強硬対米対応戦略」を表明するなど、対決姿勢を鮮明化した。
      • その一方で、米国のトランプ大統領が、令和7年(2025年)8月の米韓首脳会談等において、金正恩党総書記との関係について良好であると言及してきたことに対し、同年9月、金正恩党総書記は、最高人民会議第14期第13回会議において、「個人的には現米国大統領トランプに関する良い思い出を持っている」とし、「米国が非核化の執念を払い落とし、真の平和共存を望むのなら、我々も米国と向き合って立つことができない理由はない」と述べ、トランプ大統領が意欲を見せる米朝首脳会談実現に向けた事実上の条件を示した。
    • 対韓国関係
      • 令和7年(2025年)6月、韓国大統領選挙が行われ、「共に民主党」の李在明氏が第21代大統領に就任した。李在明大統領は北朝鮮との関係について、「対話と協力を通じて朝鮮半島の平和を構築する」として、同月、北朝鮮向け宣伝放送を中止するなど、南北間の緊張緩和に向けた措置を指示した。これを受け、北朝鮮は翌日、韓国向け騒音放送を中断したが、金与正党副部長は、同年7月に談話を発表し、「我が方は、ソウルでいかなる政策が樹立され、いかなる提案が出されても興味がなく、韓国と対座することも、議論する問題もないという公式の立場をいま一度明確に明らかにする」と表明したほか、同年8月には、北朝鮮外務省主要局長との協議会において、「韓国は我が国家の外交相手となり得ない」と改めて言及し、韓国との対話には応じない姿勢を示した。
      • また、金正恩党総書記は、同年9月、最高人民会議第14期第13回会議において、北朝鮮は「韓国と対座することはなく、何も一緒に行わないであろう」とし、「一切、相手にしないであろうことを明確にする」と述べ、「断固として統一は不必要」と強調した。
    • 対ロシア関係
      • 北朝鮮は、ロシアによるウクライナ侵略の開始以降も一貫してロシアを支持しており、令和6年(2024年)6月には、有事の際の相互援助条項を含む「包括的戦略的パートナーシップ条約」を締結し、幅広い分野における協力を強化している。
      • 北朝鮮は、令和7年(2025年)4月、ロシアに続いてクルスク州への派兵を公表した。また、金正恩党総書記は、同年6月、プーチン大統領の委任を受けて訪朝したショイグ安全保障会議書記と会見し、「ウクライナ問題をはじめとする全ての深刻な国際政治問題でロシアの立場と対外政策を無条件で支持」すると表明したほか、同月、再度訪朝したショイグ安全保障会議書記との会見において、クルスク州に工兵1,000人、軍事建設要員5,000人を派遣することに合意した。
      • 両者は、金正恩党総書記が同年9月、中国北京で行われた露朝首脳会談において、ロシアに対する全面的な支持を表明するとともに、露朝間の長期的な協力計画について詳しく討議し、関係を引き続き高い水準へと導くことを確認するなど、極めて密接な関係を維持している
    • 対中国関係
      • 北朝鮮と中国間では、国交樹立75周年に当たる令和6年(2024年)を「中朝親善の年」と定めるも、目立った高官交流や関連行事が行われていなかった。しかし、令和7年(2025年)1月、在北朝鮮中国大使館、在中国北朝鮮大使館それぞれにおいて新年会が開催され、双方幹部が出席したほか、同年7月の中朝友好協力相互援助条約締結64周年に際しては、在中国北朝鮮大使館が宴会を催し、全人代常務委員会副委員長らが招かれた。
      • また、金正恩党総書記は、同年9月、「抗日戦争勝利80周年」記念式典に出席するため、中国・北京を6年ぶりに訪問し、習近平国家主席と会談した。会談において金正恩党総書記は、朝中関係を不断に深化、発展させることは「確固不動の意志だ」と強調するとともに、中国の「立場と努力について全面的に変わることなく支持して」いくと述べるなど、中朝関係を強化する動向が見られた。
    • 内政・経済関係
      • 金正恩党総書記は、令和6年(2024年)1月、最高人民会議第14期第10回会議の施政演説において、現代的な地方工業工場の建設を毎年20郡で実行し、10年以内に全ての市・郡で人民の基本的な生活水準を一段階引き上げるとする「地方発展20×10政策」を協力に推し進めると表明しており、令和7年(2025年)2月までに、全ての対象地域で地方工業工場が完工した。
      • さらに、金正恩党総書記は、令和6年(2024年)8月、地方工業工場建設と並行して、保健施設、科学技術普及拠点及び糧穀管理施設を建設することを指示し、翌年2月に、江東郡病院及び総合奉仕所の建設を開始した。
      • また、北朝鮮は、令和5年(2023年)以降、中国及びロシアからの公式訪問者や公館員の受入れを開始し、令和6年(2024年)2月にはロシアからの観光客の受入れを再開するなど、段階的に入国規制を緩和させてきた。同年12月には、国境都市のロシア・ハサン駅と北朝鮮・豆満江駅を結ぶ定期旅客列車の運行が再開され、令和7年(2025年)5月には、ロシア・ウラジオストクと北朝鮮・羅先市羅津をつなぐ観光列車の運行も開始した。さらに、同年6月には、世界最長となる平壌とモスクワをつなぐ直通鉄道が5年ぶりに再開したほか、同年7月には平壌・モスクワ間の直行航空路の運営も再開するなど、観光を含めた人的往来を拡大した
    • 北朝鮮IT労働者問題
      • 国連安全保障理事会北朝鮮制裁委員会専門家パネルは、これまでの国連安全保障理事会決議に基づく対北朝鮮措置に関する報告書において、北朝鮮は、IT労働者を外国に派遣し、彼らは身分を偽って仕事を受注することで収入を得ており、これらが北朝鮮の核・ミサイル開発の資金源として利用されていると指摘した。
      • 我が国においても、北朝鮮IT労働者が日本人になりすまして、日本企業等が提供する業務の受発注のためのオンラインプラットフォームを利用して業務を受注するなどし、収入を得ている事例が確認されている。
      • 実際、令和7年4月には、北朝鮮IT労働者とみられる者による、いわゆるクラウドソーシング会社の不正なアカウント登録に際し、自動車運転免許証の画像情報、銀行口座情報を提供したとして日本人男性2人を私電磁的記録不正作出・同供用幇助罪で検挙した(警視庁)。
      • また、北朝鮮IT労働者が情報窃取等の北朝鮮による悪意あるサイバー活動に関与している可能性も指摘されており、その脅威は一層高まっている状況にある。
      • こうした北朝鮮IT労働者の活動に対して、我が国は、令和7年8月、米国及び韓国とともに、「北朝鮮IT労働者に関する共同声明」を発出し、北朝鮮IT労働者による手口の巧妙化及び標的拡大を指摘するとともに、三か国の連携及び官民連携の強化へのコミットメントを再確認した。また、同月、警察庁、外務省、財務省及び経済産業省は、令和6年3月に公表した「北朝鮮IT労働者に関する企業等に対する注意喚起」を更新し公表した。

    前述の「焦点」の記述に関連し、韓国の聯合ニュースなど複数のメディアは、米国が北朝鮮との前提条件なしの対話に引き続きオープンだとする米ホワイトハウスのコメントを伝えています。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は、米国が北朝鮮に対する「敵対的政策」を撤回すれば、良好な関係を築けない理由はないと述べたことへの反応です。具体的には、2021年1月以来5年ぶりに開催され、先ごろ閉会した第9回朝鮮労働党大会において、金総書書記は過去5年間の総括報告で、米国が北朝鮮を核保有国と認めて敵視政策を撤回すれば、「良好な関係を築けない理由はない」と述べ、対話再開へ含みを持たせたものです。金総書記はあわせて核・ミサイル開発を強化する方針も強調しています。また、世界情勢について、「米国の覇権政策と横暴で武力衝突が相次ぎ、混沌とした方向に突き進んでいる」、「核保有こそが帝国主義的な侵略の野望に終止符を打てる唯一の手段だ」、「米国が最後まで対決姿勢を貫くなら我々も比例した対応を一貫して行う。手段と方法は十分にある」、「朝米関係の展望は米国側の態度に懸かっている」などと述べています(トランプ米大統領への直接的な言及はありませんでしたが、トランプ大統領は北朝鮮を核保有国と認めるかのような発言をしたことがあります。歴代の米政権は北朝鮮を核保有国とは認めておらず、北朝鮮側としては「核保有国」との地位を認めるなら対米交渉に応じると、米側に譲歩を促す狙いがあるとみられています)。特に2026年1月の米軍によるベネズエラ攻撃と同国のマドゥロ大統領の拘束は北朝鮮に衝撃を与えたとの見方があります。北朝鮮が同氏拘束の翌日に「最も重大な主権の侵害だ」と反発する談話を発表したのはその証左と言えます。今回の総括では「核保有こそが帝国主義的な侵略の野望に終止符を打つことができる唯一の手段だ」と唱え、核開発を推進する正当性を強調、核兵器の高度化を憲法に明記したとも明かしています。背景に核兵器の保有が対米交渉の切り札になるとの変わらぬ発想が透けています。

    米イスラエル両軍がイランの最高指導者ハメネイ師を殺害した軍事作戦を受け、金総書記が「強い衝撃」を受けている可能性があると指摘されています(2026年3月9日付自自通信)。北朝鮮の指導部排除を狙う「斬首作戦」に対する抑止力確保のため、北朝鮮が核兵器への固執を一段と強めるとの懸念も広がっているといいます。報道で韓国政府系シンクタンク世宗研究所の鄭成長副所長は「北朝鮮は、トランプ米大統領を本当に予測困難な人物と見ているだろう」と説明、ただ、事実上の核兵器保有国である北朝鮮への同様の攻撃は「不可能だ」と分析しています。金総書記は2026年2月の党大会で、米国との対話に含みを持たせていましたが、今回のイラン攻撃を受け米国への不信感が一層高まり、対話再開はより難しくなる可能性が高まりました。北朝鮮は核を体制の「保証」に不可欠と位置付け、米本土を狙う大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発も進めてきました。2022年には核使用の条件を定めた法令で、金総書記らへの攻撃には「核打撃が自動的に即時断行される」と規定、米シンクタンク「韓米経済研究所」のエレン・キム学術部長は、日韓両国が「北朝鮮の核と軍事的脅威の最前線にある」とし、米国の軍事作戦のリスクはイランより高いと強調、中国やロシアの「後ろ盾」もあり「戦略的にも危険な選択だ」と指摘しています。

    韓国については、左派の李政権が進める融和政策を「欺瞞であり、粗末だ」と一蹴、「協議すべきことは全くなく、同胞という範疇から永遠に排除する」と対話を拒絶しています。金総書記は韓国を「永遠の敵として扱う」と明言、「韓国とつながる南部国境線を可及的速やかに要塞化する」との方針も示しました。さらに、「韓国に対する軍事的基準は変化し、抑止力の先制攻撃を含む全ての物理力の使用は理論的・技術的に実現される」と、韓国に対する核の先制使用を示唆したとも取れる発言をし、「韓国の卑劣な行動が我々の安全環境を損なう場合、我々は任意の行動を開始でき、その延長線上に韓国の完全崩壊の可能性は排除できない」と、激しい敵対心をあらわにしています。また、韓国が持つ民主主義や文化の力に対する強い恐怖感を隠さず、「陰険にも和解と協力の機会を通じて我々の内部に自らの文化を流布させ、それを通じた変化を謀り、ひいては我々の体制の崩壊を企ててきた」「究極的に朝鮮半島を『自由民主主義』の資本主義反動体制に変身させる野望を抱いている」などと指摘、金総書記が恐れるのは、Kポップやドラマなどに代表される文化や韓国の豊かさ、自由で民主的な制度が、北朝鮮の人々に及ぼす影響で、北朝鮮は韓国文化の流入に厳しい対策を取ってきています。2020年には、韓国文化に接した住民を厳格に処罰する「反動思想文化排撃法」を制定、ドラマを見た人で死刑になった例も伝えられています。一方、脱北者の証言によれば、隠れて韓国文化に触れる人は少なくなく、厳しい取り締まりによっても、韓国文化の流入に歯止めをかけられない状況へのいらだちが金総書記の言葉には込められているといえます。2025年9月から2026年1月にかけて韓国の民間人3人がドローン(無人機)を4回にわたって北朝鮮に飛ばしたことでは「信頼できて共生できる隣人ではないことを明白に示した」と述べています。一方、韓国統一省は、「北朝鮮の態度に一喜一憂せず、平和共存に向けた政策を一貫して進める」との立場を表明しています。

    前述の「焦点」でも指摘されているとおり、5年前の前回党大会からの大きな変化はウクライナを侵略するロシアとの関係強化です。韓国軍の推計でこれまで1万5千人近くの兵士をロシアに派遣、北朝鮮は見返りにロシアから軍事技術の提供を受けたとされ、ロシア依存は一層強まるとみられます。中朝関係は新型コロナウイルスへの対応やロシアとの関係強化で一時冷え込んでいましたが、2025年に入って改善基調にあり、中国側の発表によれば、2025年の中朝貿易総額は1~12月の各月で前年同月比プラスとなり、2024年比で26%増えました。外貨獲得を見据えた外国人観光客の受け入れに向けた近隣国との交通網整備も活発になっており、2025年6月に北朝鮮東部・江原道の「元山葛麻海岸観光地区」で建設していたビーチリゾートを完成させました。なお、2021年党大会では国連制裁に加え、新型コロナウイルスや災害の影響で経済が停滞し、各分野での目標を達成できなかったと認めていたところ、今回は5年間の経済政策や地方振興を通じた成果を強調しました。なお、今回目立ったことは世代交代です。朝鮮労働党では2021年の前回党大会で総書記職が復活し、金氏が就任、今回、再選が決まりましたが、新たな党中央委員138人と中央委員候補111人も選出、中央委員は過半数の73人が入れ替わり、このうち新たに中央委員となったのは51人で、世代交代が鮮明となったものです。なお、金総書記の妹、金与正氏が党の総務部長に就任していることも明らかとなりました。金与正氏はこれまで宣伝扇動部の副部長を務め、対外的なメッセージの発信などを担っていましたが、総務部は金総書記の方針を党組織全体に伝達し、進捗を管理するなど党内実務において重要な役割を果たすとされます。

    さらに、新たな国防5か年計画を策定、水中発射型の大陸間弾道弾(ICBM)やAIを使った無人攻撃機、敵国の衛星を攻撃するための特殊兵器などの開発を進め、軍事技術力を大きく増強する方針を掲げました。新たな「国防5カ年計画」では、「既に開発された新型兵器の実戦配備を急ぐことが、今後の5カ年計画の重要な課題となる」と述べ、今後は新型兵器開発以上に運用体制の確立を重視する方針だとみられています。北朝鮮はこの5年間で米本土全域に届くとされる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発や核弾頭が搭載可能な極超音速ミサイルなど、ミサイル開発を着実に進め、韓国・峨山政策研究院は「主要な核兵器の多くはすでに2024年までに開発と試験評価を終え、5カ年計画に基づくミサイル開発の工程がほぼ完了した」と分析、一方、短距離ミサイルは実戦配備が進んだものの、それ以外のより射程の長いミサイルについては「十分な実戦的能力を達成していない」と評価、戦術核弾頭も実証段階には入っておらず、ICBMの核弾頭が大気圏に再突入できるだけの性能もまだ確立していないとみられ、党大会で決定された新たな国防計画では、地上及び水中発射型のICBMの実戦配備も挙げられており、今後さらにミサイル発射実験が加速する可能性が高いといえます。また、「海軍の核武装化」も重視しており、原子力潜水艦(原潜)の保有を新5カ年計画に盛り込んでいます。さらに、新たな計画では軍事偵察衛星についても「進化した」形で開発を続けると明記されました。金総書記は2023年12月に党中央委員会拡大総会で2024年に軍事偵察衛星を3基打ち上げる計画を示しましたが、2024年5月に打ち上げに失敗して以降、新たな動きを見せていません。また、新たな計画にはAIを活用した無人攻撃や衛星を攻撃する特殊兵器など現代戦に備えた装備の開発を進めることも盛り込まれました。こうした路線に影響を与える新たな要素として、前述のとおり、ロシアのウクライナ侵攻を契機とした露朝の軍事関係の急速な深化があり、北朝鮮はロシアへの兵力派遣の見返りとして軍事技術の提供を受けているとされ、戦力向上の速度が加速する恐れがあります。首都平壌の金日成広場で党大会を記念した軍事パレードが行われ、党機関紙・労働新聞(電子版)には、金総書記と共に観覧する「ジュエ氏」とされる娘の写真が多数掲載されています。韓国・聯合ニュースによれば、ICBMなどの戦略兵器は確認されなかったということです。

    2026年2月25日付朝日新聞の記事「正恩氏の総書記推戴は「劇場政治」 北朝鮮元外交官が語る党大会の裏」では、2019年9月に韓国に亡命した北朝鮮の劉現祐元駐クウェート臨時代理大使の分析が紹介されており、興味深い内容でした。具体的には、「「独裁国家ではないと強調するための劇場政治に過ぎない」と語ります。劉氏はそのうえで、米朝首脳会談は必ず行われるだろうという見通しを示しました」、「党大会は、北朝鮮最大の意思決定の場です。なかでも重要なのが党総書記の推戴と党規約の改正です」、「独裁国家ですから、金正恩の総書記推戴は当然予想されたことです。人事も、すべて党大会前に党政治局によって決められています。それでも、独裁ではなく、党による集団指導体制を強調するために、「200万人の党員の意思による推戴」だと演出しているのです。合法性を得るための劇場政治だと言えます」、「党大会は今後5年間の政策を示すため、市民も多少関心は持ちます。政策によって、予算がどこに集中し、生活にどう影響するのかと考えるからです。しかし、過去に党大会が開かれて生活がよくなったことがありません」、「(核実験実施などを受けた)2017年以降の制裁は、以前の制裁と全く異なる厳しいものでした。北朝鮮の銀行は海外に送金ができなくなり、輸出物の95%が制裁対象になりました。経済は完全にマイナス基調になりました」、「原子力潜水艦も軍事偵察衛星も非常に高度な技術で、保有する国も多くありません。ただ、北朝鮮が核開発を始めた時も、「北朝鮮のような小国が核開発できるわけがない」と言われました。北朝鮮は、時間はかかりますが、計画したことはやり通します。軽く見てはいけないと思います」、「現在、金正恩体制の脅威になるため、韓国文化を流入させないようにしていますが、外国文化に親しんだ経験がある人々が幹部になれば、少しずつ社会が変わっていくでしょう。社会指導階層も利権が必要です。金正恩から家や金をもらい、利害関係が一致すれば、運命共同体になります。幹部になるほど、金正恩政権に正統性がないことをすでに認識しています。恐怖政治の実態も、外国に出たエリートは知っています。彼らは北朝鮮が発展するためには、世襲制度ではだめだと考えています」、「北朝鮮は、韓国を最大の脅威と考え、(韓国から)得られる利益はないとも思っています。韓国は国連加盟国ですから、制裁に参加しなければなりません。人道支援ができる程度でしょう。ただ、韓国の李在明政権が和平に向けて努力している姿勢は基本的に正しいと思います。お互いに平和を管理できるよう努力すべきです」、「「ロシアや中国と関係改善をしているので、北朝鮮は米朝関係の改善を急いでいない」という指摘がありますが、金正恩はトランプ米大統領と会うと思います米国と関係改善をして、制裁を解除してもらわない限り、経済的にマイナスだからです。長期的にみた場合、金正恩体制が危機に陥ります。生活の質がずっと落ち続ければ、労働党と金正恩に対する市民の信頼が落ち、離反が起きます。北朝鮮は非核化交渉には応じないとしており、核軍縮交渉を目指すでしょう。トランプ氏は3月末から訪中しますが、中国は米中首脳会談にメディアや国際社会の注目を集めたいと考えているはずです。トランプ氏の訪中から少し過ぎた後、トランプ氏と金正恩は別途会うことになるでしょう」といったもので、説得力があります。

    2026年2月24日付日本経済新聞の記事「小泉悠・東大准教授「ロシアは戦闘経験を極東で活用」 日本に脅威」も興味深いものでした。具体的には、「この戦争は日本にとって決してひとごとではない。ロシアで実戦経験を積んだ北朝鮮兵が帰国しており、現代戦における戦闘手法を最も実地で学んだ軍の一つが北朝鮮軍になりつつある。その知見が韓国や日本に向けられる可能性を考えれば、安全保障上の懸念は大きい。最近、北方領土周辺でロシアが軍事演習を行った際、対ドローン戦を想定した訓練も実施したようだ。戦争から帰還した兵士が指導役を務めたとされる。ロシアは戦争での実戦経験をほかの部隊でも活用しており、日本にとって新たな脅威となり得る。日本はウクライナに学ぶべきだ。ウクライナはロシアという大国の正規軍による電子戦を長期間にわたり経験してきた。現代においてこれほど長期にわたって戦闘を経験した国はなく、経験の蓄積が豊富だ。ウクライナと緊密に連携し、その経験から教訓や対策を学ぶことで防衛力や抑止力の強化につなげる必要がある」というものですが、北朝鮮が大きな犠牲を伴いつつも、(実戦を通じた)軍事面での底上げが確実に図られており、日本にとっての脅威が増していることを痛感させられます(もっと危機感を持つべきだといえます)。なお関連して、韓国紙によれば、ウクライナの越境攻撃を受けたロシア西部クルスク州の奪還作戦に参加した北朝鮮兵のうち8000~1万人が残留し、現在もロシア軍を支援しているといいます。北朝鮮はロシアに派遣した兵士の一部が帰還したと明らかにしていましたが、現地に残る兵士の規模はこれまで明らかになっていませんでした。報道によれば、今もクルスク州にいる北朝鮮兵らは、ウクライナ国境地域への砲撃や偵察などに当たっているといい、ウクライナ軍の情報当局者は、北朝鮮に帰還した兵士は約3000人とみているということです。一方、国連で北朝鮮の人権問題を担当するサルモン特別報告者は、ウクライナの捕虜となった北朝鮮兵士2人を本国に送還しないよう呼び掛けています。サルモン氏は、北朝鮮に送還されれば拷問を受ける恐れがあると指摘、第三国への送還か、自国への亡命受け入れがウクライナにとっての選択肢だと述べています。ウクライナは2025年1月、北朝鮮兵2人を捕虜にしたと公表、2人はメディアなどに韓国行きの希望を伝え、韓国政府は受け入れる意向を示しており、米国や韓国が北朝鮮との対話に意欲を示していることに関しては、「北朝鮮を孤立から引き出す機会」だと肯定的に評価しつつ、人権に関する議論も併せて行うべきだと訴えています。また、北朝鮮メディアによれば、ウクライナに侵略するロシアを支援するために派遣され戦死した北朝鮮兵の遺族に、平壌市内の住居が提供されたと報じています。「明星通り」と命名された地域に高層、中層のマンションが建設され、先日完工式が開かれ、出席した金総書記は遺族の生活を全面的に支える考えを示しています。ロシアへの支援が長期化する中、軍の士気を高める狙いがあると考えられます。式にはロシアに派遣されていた軍部隊や工兵らも参加、金総書記は演説で遺族への哀悼の意を示し、完工した喜びよりも「申し訳ない気持ち」の方が勝ると述べています。

    直近の核・ミサイル開発の動きをいくつか紹介します。

    • 2026年3月、北朝鮮の朝鮮中央通信(KCNA)は、就役を控えている5000トン級の駆逐艦「崔賢」から複数の艦対地戦略巡航ミサイルを試射したと報じています。金総書記が現場を視察したといいます。駆逐艦は就役前で、性能を確認したとみられています。KCNAは試射について「成功裏に実施した」と伝え、金総書記は「(試射は)駆逐艦の作戦能力を評価する上で重要な核心的要素だ」と強調、「海軍の核武装化は満足のいく形で進められている」と述べています。北朝鮮は今後、5000トン級かそれ以上の駆逐艦を毎年2隻建造するとの目標を掲げていいます。
    • 党大会を前に軍需工業部門の労働者が「600ミリ大口径放射砲(多連装ロケット砲)」を贈呈する式典が平壌で開かれ、金総書記が出席し、「今後も敵を大いに不安にさせる国防技術の成果を示し続ける」と演説、AI技術を取り入れたミイル開発の進展を強調しています。KCNAによれば、金総書記はロケット砲について「精度と威力の点で高精度弾道ミサイルと実質的に変わらない」とし、「特別な攻撃、つまり戦略的任務の達成に適している」と述べています。また、「AI技術と複合誘導システム」を組み込んでいるとしています。
    • 国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は、北朝鮮が北西部の寧辺に建設中の新施設について「外装が完成し、内部設備の工事が進行中とみられる」と報告、首都平壌近郊カンソンにあるウラン濃縮施設と電力供給や冷却設備の特徴が似ていると指摘、状況の「注視を続けている」と述べています。北朝鮮のウラン濃縮施設を巡っては、寧辺とカンソンにある既存施設が稼働を続けていることについて「深刻な懸念」を改めて表明、一方で、北東部豊渓里の核実験場は核実験をする準備が整った状態を維持しており「重大な変化の兆候は見られない」と報告しています。

    北朝鮮に向けてドローン(無人機)を飛ばし軍事情報を漏えいさせたとして、韓国警察は、30代の大学院生ら3人を一般利敵容疑などで送検しました。一般利敵罪は軍事上の利益を侵害した場合などに適用されるもので、無人機が北朝鮮側で墜落したことにより「韓国軍の情報が漏れ、南北間の緊張が高まったほか、軍の監視体制が変化するなど軍事的利益が侵害された」としています。3人は無人機制作会社を経営、2025年9月から2026年1月にかけて計4回、北朝鮮に向けて無人機を飛ばしたほか、韓国軍海兵隊の一部部隊を無断で撮影していた疑いがあるといいます。無人機には北朝鮮の開城市と平山郡の上空を飛行して、韓国に戻ってくるルートが設定されていたといいます。警察は、無人機が防空網に検知されないことを宣伝し、経済的利益などを得る目的があったとみています。3人のうち大学院生と会社代表の男性は、2022年に尹錫悦前政権下の大統領室で勤務した経験があり、国家情報院の職員や軍情報司令部の現役軍人から、大学院生が金銭を受け取っていたことも判明しており、警察は事件との関連を調べています。なお、本件については、金与正氏が「韓国と接する国境全域に対し、警戒強化措置を取ることになる」と警告したほか、韓国の鄭東泳統一相が、北朝鮮への無人機侵入が確認されたとして「遺憾の意」を表明し、再発防止策を講じると明らかにしたことについて、「高く評価する」と述べたことが注目されました。

    3.暴排条例等の状況

    (1)暴力団排除条例に基づく逮捕事例(愛知県)

    飲食店から用心棒代などを受け取ったとして、愛知県警は、愛知県暴力団排除条例(暴排条例)違反の疑いで、六代目山口組二次次団体「平井一家」総裁、同組構成員、会社員の3人を逮捕しました。報道によれば、3人は共謀し2025年12月日、暴力団排除特別区域に指定されている豊橋市内の飲食店で、店主の80代の男性に用心棒代などの名目で正月盆栽を販売し、3万円を受け取ったといい、数十年前からみかじめ料の受け取りが常態化していたとみられています。

    ▼ 愛知県暴排条例

    飲食店については、同条例第二十二条(特別区域における特定事業者の禁止行為)第2項において、「特定事業者は、特別区域における特定事業に関し、暴力団員に対し、顧客その他の者との紛争が発生した場合に用心棒の役務の提供を受けることの対償として、又はその特定事業を行うことを暴力団員が容認することの対償として、利益の供与をしてはならない」と規定され、暴力団員については、第二十三条(特別区域における暴力団員の禁止行為)第2項において、「暴力団員は、特別区域における特定事業に関し、特定事業者から、顧客その他の者との紛争が発生した場合に用心棒の役務の提供をすることの対償として、又はその特定事業を行うことを容認することの対償として、利益の供与を受けてはならない」と規定されています。そのうえで、第二十九条(罰則)において、「次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する」として、飲食店については、「二 相手方が暴力団員であることの情を知って、第二十二条第一項又は第二項の規定に違反した者」、暴力団員は「三 第二十三条第一項又は第二項の規定に違反した者」が規定されています。

    (2)暴力団対策法に基づく再発防止命令発出事例(埼玉県)

    埼玉県川口市内の社交飲食店にみかじめ料を要求し、反復して違反行為を行う恐れがあるとして、埼玉県公安委員会は、住吉会傘下組織幹部に対し、暴力団対策法に基づく再発防止命令を発出しています。報道によれば、幹部は2025年9~10月、川口市内の社交飲食店10事業者の経営者らに対し、みかじめ料を要求したとして、2025年11月に9件、2026年1月に1件、川口署長から中止命令を受けていたといいます。再発防止命令は類似の行為を禁止するもので、従わない場合3年以下の拘禁刑、500万円以下の罰金が課されることになります。なお。過去に同じ組織の組員に対して同様の中止命令を出しており、埼玉県警は組織的な犯行とみているといいます。

    ▼ 暴力団対策法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)

    暴力団対策法第九条(暴力的要求行為の禁止)において、「指定暴力団等の暴力団員(以下「指定暴力団員」という。)は、その者の所属する指定暴力団等又はその系列上位指定暴力団等(当該指定暴力団等と上方連結(指定暴力団等が他の指定暴力団等の構成団体となり、又は指定暴力団等の代表者等が他の指定暴力団等の暴力団員となっている関係をいう。)をすることにより順次関連している各指定暴力団等をいう。以下同じ。)の威力を示して次に掲げる行為をしてはならない」として、「二人に対し、寄附金、賛助金その他名目のいかんを問わず、みだりに金品等の贈与を要求すること」が規定されています。そのうえで、第十二条(暴力的要求行為等に対する措置)において、「公安委員会は、第十条第一項の規定に違反する行為が行われた場合において、当該行為をした者が更に反復して同項の規定に違反する行為をするおそれがあると認めるときは、当該行為をした者に対し、一年を超えない範囲内で期間を定めて、当該行為に係る指定暴力団員又は当該指定暴力団員の所属する指定暴力団等の他の指定暴力団員に対して暴力的要求行為をすることを要求し、依頼し、又は唆すことを防止するために必要な事項を命ずることができる」と規定されています。

    (3)暴力団排除条例に基づく再発防止命令発出事例(神奈川県)

    神奈川県公安委員会は、横浜市内の社交飲食店の店長らに因縁をつけて現金を要求したとして、暴力団対策法に基づき、稲川会傘下組織幹部に再発防止命令を発出しています。

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